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決定版!これがDVの証拠だ!

2017.10.25更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)真太郎です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>モラハラ・DV情報盛りだくさんの総合サイトはこちら<になります。

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1.DVで離婚したいのに、相手が事実を否定する可能性が高い


 

 DV加害者は自己中心的な人物が多いため、奥様の方から離婚を切り出すと、そのこと自体に「生意気だ」「絶対にお前の思い通りにさせない」といった形で強く反発してくることが多いです。

 

 また、DV加害者の特徴の一つですが、DV加害者は自分の暴力を「正しいこと」だと考えていることが多いので、「原因を作ったのは嫁の方だ」といった言い方をしてくることが多いのと、「DVというほどの暴力をふるっていない」と対抗してくることも多いです。

 

 そのため、これから相手と調停や裁判で離婚を争っていくという場合、DVの証拠がどの程度あるのか、どのようなものがあるのかというのは十分に検討していく必要があります。

 

 

2.やっぱり最も確実なのは診断書と写真


 

 法律用語で言いますと「客観的証拠」などと表現しますが、あなたが怪我をさせられた診断書や怪我の部位を撮影した写真は、DVの証拠として最も確実な証拠といえます。

 

(1)ただ、診断書につきましては、その内容にも注意が必要になります。

  まず、複数怪我を負った場合に、病院によっては、大きな怪我だけを記載し、小さな怪我は一切記録を残していないと言うことがありますので、診察を受ける際には小さな怪我を含めて全ての怪我を病院に申告することが重要です。

 

 次に、診断書の発行を受ける際には、治療期間も記載してもらうようにして下さい。例えば「左上腕打撲で当院通院中」だけだと、どの程度の怪我で、どの程度の期間通院すれば完治するのかが分かりません。そのため「左上腕打撲で加療2週間の見込み、現在当院通院中」といった形で、治療期間が分かると望ましいです。

 

 もう一つの注意点としては、病院に本当の怪我の原因を話すと言うことです。なかなか医者に対して「旦那に殴られた」といった話はしづらいのですが、「階段で転んだ」とか、「他人の喧嘩に巻き込まれた」と嘘の申告をしてしまいますと、カルテにその様に記載されてしまいます。相手が裁判で争い、病院にカルテの開示を求めると、カルテが裁判所に提出されることになりますので、裁判官は「本当は旦那の暴力ではなく、階段で転んだだけなのではないか?」と疑問に感じてしまう虞があります。

 

(2)次に写真ですが、怪我の部位のみの写真にしないよう注意が必要です。

 より分かりやすく言いますと、その写真にあなたの顔も写るようにして欲しいということです。よくありがちなのが、怪我を下手の甲の部分だけの写真や足の膝の部分だけの写真を撮っている人がいらっしゃいますが、これでは、その手や足があなたの手足なのか、実は他人の手足なのかが写真だけでは分かりません。裁判になると、相手は、「それは友人の写真で本人の写真じゃない」といった形で争われる原因になりかねません。

 

 そのため、写真は必ず複数撮影し、あなたの顔と怪我両方が写った写真と、怪我の部位をより拡大した写真を撮るようにして下さい。

 

 

3.警察への通報記録や女性センター等への相談記録


 

 先ほどお話ししましたとおり、診断書や写真が確実性の高い証拠と言えるのですが、次いで確実性が高い証拠としては、警察への通報記録や女性センター等への相談記録があります。

 旦那の暴力に対して警察に110番通報したことがある場合、その通報記録が警察の方に残りますので、申請をすれば、その開示を受けることができます。女性センター等への相談記録も同様です。

 

 なお、DVの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、110番通報簿については、警察の方で大して詳しい記載をしてくれていないという場合があり得るのと、プライバシー保護等の観点から開示資料に黒塗り部分が多いというケースもあります。そのため、どの程度DVの証明に役立つかという点に関しては、資料の内容を精査する必要があります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ110番通報なんてするはずないんだから、警察が来てくれただけで、DVの証拠になるでしょう?」とおっしゃる方もいますが、安易にその様に考えるのは危険です。

 例えば、旦那が酔っぱらって騒ぎ始めたのですぐ110番通報したが、警察が来たときには旦那は外出してしまっていたと言ったケースですと、記録としては「旦那不在」としか書かれませんのでDVの証拠にすることは難しいと思います。

 

 現状の裁判実務を見ますと、「警察を呼んだ」イコール「大変なことが起こった」とは考えないことが多く、結局は通報記録簿に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

4.録音データ


 

 録音データを記録している場合、通常は、診断書または写真の準備も調っていることが多いのですが、診断書・写真を補強するものとして、録音データも重要性が高い証拠と言えます。

 

 スマートフォン等で録音しておくと暴力時の打撃音等を録音することができる場合がありますし、DV旦那がどのように発言しながら暴力をふるったのかと言う点や暴力前の言葉のやり取りを拾うことができます。何より当時の雰囲気を、臨場感を持って伝えることができますので、当時の雰囲気を伝える証拠としては有力な証拠になり得ます。

 

 また、DV旦那が「嫁が挑発してきたから殴ったんだ」といった言い訳をする場合がありますので、録音データがあれば、暴力に至る経緯を詳しく証明できることもあると思います。

 

 

5.ラインやメール


 

 例えば、暴力をふるった翌日に旦那が暴力を詫びるメールを送ってきたとか、あなたの方から旦那に対して「昨日蹴られたところが痛むから、今日は保育園のお迎えに行けない」と言ったメールを送っている場合、それもDVの一つの証拠になります。

 

 ただ、このようなメールやラインのやり取りですと、暴力の程度が分かりにくいことが多いということには注意が必要です。

 

 また、ラインやメールの評価については、旦那から来たライン・メールの方が、あなたが送ったライン・メールよりも証拠の価値は高いです。と言いますのは、旦那が自分の暴力を認めるメールは、いわば自白の様なものですから、他の方が書いたライン・メール以上に価値が高いと言えるのです。

 

 これらの点を踏まえると、ライン・メールそのものを直接のDVの証拠にするというよりは、診断書や写真を第1の証拠とし、ライン・メールは補強として使うというイメージかと思います。なお、その場合、旦那が暴言を書き連ねているようなケースですと、そのライン・メールは、普段の旦那の横暴な態度を示す証拠になると思います。

 

 

6.物の被害



 

 DV旦那が投げつけてきたために大破したスマートフォン、旦那が殴りつけて空いた壁の穴、旦那が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 

 

6.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 

 例えば、熟年離婚のケースで、既に成人しているお子様が、当時のDVの様子を証言してくれるという場合、お子様はDVの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、DVに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の暴力を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては診断書や写真の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

 

7.DVの証拠が少ない、ほとんどないという場合

 


 

 

 

 もちろん、上記の様な診断書や写真があれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった旦那が豹変して暴力をふるってきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、旦那の暴力を受け入れられず、また元の優しい旦那に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。

 私の経験上、今ある証拠をもとにDV旦那を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 

 ただ、そのような場合、どのようにDV旦那と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

8.まとめ


・DVの証拠としては、診断書や写真が確実性が高いが、その内容については注意点もある。

・警察への通報記録や女性センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・録音データも当時の雰囲気を知るための有力な証拠になる。

・ラインやメールは書き込みの内容次第である。

・物の被害を写した写真は、直接DVの証明にすることは難しい。

・証言は、診断書等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・DVの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV離婚弁護士選びの6つのポイント

2017.10.16更新

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1.弁護士選びのコツとは?


 

 なかなか皆さん弁護士と接する機会が少ないかと思いますので、弁護士を探す場合に、どのような点に注意すればよいのか、何かコツはないのかと悩まれる方も多いと思います。

 

 そこで、今回はDVによる離婚を題材にして、弁護士選びの参考となるようなお話しをさせて頂きます。

 

 

2.女性弁護士の方が良いか男性弁護士の方が良いか


 

 特に女性の方で多いのですが、女性弁護士にご相談されるか男性弁護士にご相談されるかで悩んでいらっしゃる方もいます。

 弁護活動の「質」というと表現が適切なのかという問題もありますが、男性弁護士と女性弁護士とで「質」という意味での差はあまりないと思います。

 

 ただ、女性の方がよくおっしゃるのが、離婚の問題となりますと家庭内の機敏な話題も出てきますので、女性弁護士の方が相談しやすい、話しやすいという方はいます。

 

 他方で、DVのケースですと、DV旦那と交渉しなければなりませんので、女性弁護士では言い負けてしまうのではないかと心配される方もいます。

 

 しかし、上記の点は弁護士に対する一般的なイメージですので、逆に男性弁護士でも非常に話しやすいという先生もいれば、女性弁護士でもかなり力強く先方と交渉してくれる先生もいます。

 そのため、「女性弁護士が良い」とか「男性弁護士が良い」と間口を狭めてしまうのではなく、以下のような要素を考慮して検討してみるのがよいと思います。

 

 

3.DV問題に精通しているか


 

 DV離婚問題に関する弁護士選びにおいて一番重要なのは、DV問題に精通している弁護士かどうかという点ではないかと思います。要するに、これまでにDV離婚の事件の取扱件数がどの程度あるのかという点が非常に重要な判断要素になると思います。

 

 ここで注意して頂きたいのが、この事件取扱実績の判断において、単純に離婚問題の実績というのではなく「DV」離婚の実績がどの程度あるのかという点です。

 

 DVのケースですとDV旦那が法律事務所に乗り込んできたり、罵声を浴びせられたりと、普段の離婚事件とは異なる特殊性があります。また、一定期間DV旦那の接近を禁止するDV保護命令は特殊な手続になりますので、取り扱ったことのない弁護士ですと円滑に手続を進められない可能性があります。

 

 ただ、弁護士に相談した際に、その弁護士に対して「先生はDVのケースはよく取り扱うのですか?」と面と向かって質問しても、(実際取り扱ったことがないとしても)「1件もやったことはありません」という返事は返ってこないと思います。おそらく「モラハラのケースはよく取り扱いますよ」とか「離婚全体の相談件数が多いですから」といったお茶を濁した返答が返ってくると思います。

 

 そのため、その弁護士のホームページを見てDV事案の取扱実績がどの程度あるのか、DV問題に力を入れているのかは把握しておいた方が良いと思います。また、友人や知人から「以前DV離婚でお世話になったことがある」といった理由で紹介を受けた弁護士であれば、実績としては申し分ないかと思います。

 

 

4.直接会って相性の確認


 

 上記の通り、DV問題に詳しい弁護士が見つかった場合、実際その弁護士に会って話をしてみるのがよいと思います。

 直接会って話をすると、多少なりとも弁護士の人となり、対応の仕方が分かってくるからです。

 

 通常の離婚事件ですと、何件か弁護士に会ってみて、一番自分に合った弁護士に依頼することをお勧めするのですが、DVのケースでは、至急弁護士を選任したいというケースが多いと思います。

 

 そのため、その弁護氏が友人の紹介であり、かつ、あなた自身が直接会ってみて相性が合わないと言うことがなければ、そのまま、その弁護士に依頼するのでよいと思います。ただ、直接会って話をして、違和感を覚えた場合には、少なくとも、もう一件ぐらいは他の事務所の弁護士に相談してみることをお勧めします。

 

 

 
5.やっぱり気になる弁護士費用


 

 皆様は弁護士費用が高額に感じることが多いと思いますので、弁護士費用というのも重要な判断要素になります。

 

関連記事>>弁護士が内緒で教える、弁護士費用節約のコツ

 

ただ、弁護士費用が安ければ安いほど良いというわけでもないと思いますので、弁護士選びの優先順位としては、前述の①DV事件に対する専門性、②直接会って話してみた相性を優先して弁護士選びをした方が良いと思います。

 

 

6.弁護士事務所のロケーション


 

 あと私が相談を受けていて依頼者の方がよくおっしゃるのが、弁護士事務所のロケーションでしょうか。ご自宅の近く、職場の近くなど、弁護士事務所の近さも一つの考慮要素になると思います。

 

 特に、何か問題が起きた際には、できるだけ弁護士に直接会って面談をしたいという性格の方は、ご自宅又は職場の近くの弁護士事務所にご相談になるのが良いと思います。

 

 ただ、DVのケースですと、DV旦那は、あなたが弁護士事務所周辺を生活圏にしているのではないかと疑ってくることも多いため、あまりあなたの住居に近い場所の弁護士事務所に相談をすることは得策ではないかも知れません。

 

 

7.できれば、弁護士の忙しさの確認も


 

 最後になりましたが、弁護士の忙しさも確認できるようなら確認してみると良いと思います。ただ、単純に弁護士に対して「お忙しいですか?」と質問すると、ほとんどの弁護士は「忙しいです」と回答すると思いますので、その様な質問の仕方はあまり良くないと思います。

 

 オススメなのは、「先生にお願いした場合、相手に内容証明郵便の文案が出来上がるのにどれくらい日数がかかりますか?」という質問です。この回答が「1ヵ月くらいはかかります」という内容ですと、相当忙しいことが予想されますので、ご留意した方が良いかもしれません。

 

 

8.まとめ


●弁護士選びは男性・女性という枠を決めずに選んだ方が良いことが多い。

●DV離婚は特殊性が強いので、DV問題に精通した弁護士に依頼した方が良い。

●その弁護士に直接会って相性を確認した方が良い。

●弁護士費用も気にする必要があるが、優先順位を高めに考えるべきではない。

●弁護士事務所のロケーションも一つの考慮要素になりうる

●弁護士の忙しさも確認できるようなら確認した方が良い。

 

 

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DV被害者が陥りがちな5つの落とし穴

2017.10.02更新

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1.DV被害者が陥りがちな落とし穴って?


 

 私がDV離婚の問題を取り扱っておりますと、これから離婚したいという方だけではなく、離婚してしまったが離婚の条件決めで後悔しているというご相談を受けることもあります。

 また、これから離婚したいという方でも非常に自分を卑下してしまっているといったこともあります。

 

 そこで、以下私がDV離婚に関わる被害者の方と接して思うところをご紹介します。

 

 

 
2.「自分が悪い」の誤り


 

 この点は、私がDV被害者の方と接していて非常によく思う点です。

 通常私のところにDV被害者の方がご相談に来られる際には、ご親族や友人、区役所の女性相談員等だれかしらに相談して来られる方が多いのですが、ご親族等が「こんな事だったらもっと早く相談してくれていれば良かったのにねぇ。」とおっしゃるケースは多くあります。

 

 ご本人は、DV暴力を受けたこと自体はショックだけれども、自分が原因を作ってしまったのだから、まずは自分の行動を改めなければならないとか、自分が頑張れば幸せだった結婚生活に戻れるといった形で、夫婦関係の円満な状況を作るように努力を重ねているのです。

 自分が原因を作ってしまったと考えているDV被害者の方は、正直にDV旦那に謝罪したりしてしまうため、余計にDV旦那は増長し、DV被害が深刻になる、余計に家庭環境が悪化するというケースが多くあります。

 

 大体このようなケースでは、DV被害者の方が心身に限界を感じて親族に相談をして問題が顕在化するケースが多いです。そうすると、親族等からは「そんな暴力をふるう夫とは早く分かれた方が良い」とか「あなたが我慢することじゃないでしょ」と言われて徐々に自分の過ちに気付き始めるのです。

 

 そのため、旦那から殴る蹴るの暴力を受けた場合には、その経緯を含めて詳しく親族等に相談をし、客観的に見ておかしなことがないかを判断してもらった方が良いと思います。私はDVの問題をよく取り扱うので明確に断言しますが、暴力は絶対的に悪であり、どのような経緯があっても暴力が正当化されることはないと思います。

 「また旦那を怒らせてしまった私が悪い」だとか「旦那が怒らないようにもっと家事を頑張らなければいけない」という発想は誤りです。もっと自分に自信を持って大丈夫です。

 

 

 
3.「自分さえ我慢すれば良い」の誤り


 また、この話もDV被害者の方からよく聞くお話なのですが、特にお子様がいらっしゃる専業主婦の方でこのような発想をお持ちになることが多いです。

 離婚しても子どもと生活していくだけの収入がないし、離婚すると片親になってしまう子どもが不憫だという発想を持つのです。

 

 しかし、DVの頻度にもよりますが、DV暴力の頻度が多い場合で、旦那がお子様がいることを考えずに、お子様の目の前で平気で暴力をふるうような場合には、そのことがお子様に与える影響についても考える必要があります。

 

 自分の父親が母親に暴力をふるう様子を見て育った子どもは、そのことが当然のことだと感じてしまい、その健全な成長に大きな問題を生じさせる虞があります。また、お子様にとっては母親はかけがえのない存在ですので、母親が一方的に暴力をふるわれる様子を見て心を痛めることも多いと思います。

 そのため、あなた自身が我慢すればよいと言う問題ではないこと、度々暴力をふるわれていることをお子様が知り得る場合、そのお子様に悪影響を与えていることを考慮した方が良いと思います。

 

 また、あまりに我慢を重ねるとあなた自身の身体又は精神を疲弊させる原因にもなります。心身の不調を生じさせると家事や育児にも悪影響を及ぼしかねないということも考えておく必要があります。

 

 

 

4.身内にも相談できない、相談しない方が良い。の誤り


 

 私のところに相談に来られる方は、通常はご本人が身内に相談の上相談に来られる方が非常に多いです。ただ、中には「こんな話をすると両親が心配してしまうから」とか「両親に話をすると絶対離婚しなさいと言われてしまうため話ができない」といった理由でご両親ご兄弟等近しい身内にも、DVの件を相談していない方もいらっしゃいます。

 

近しい身内の方がどのように反応するのかという問題もありますので一概に相談することが正しいと言い切れませんが、基本的には近しい方には相談をした方が良いと思います。特にDVのケースですと、何度も暴力をふるわれるうちに、そのことに慣れてしまって感覚が麻痺してしまうということが良くあります。

 

 そのため、身内の方に限らず近しい方に相談することによって自分の置かれている立場を客観的に把握できるのです。

 また、DVの問題を1人で抱え込んでしまうと精神的にも辛いことが多いので、誰かに話をすることで少しは気が楽になるという面もあります。

 

 そのため、もし現状近しい方(親族や友人)の1人に対してすら相談をしていないという場合には、ご相談されることを私はオススメしています。

 

 

 
5.離婚を急ぐあまり離婚条件で相手の言いなりにならないこと。


 

 離婚協議、離婚調停と言った手続はいずれも、相手との交渉を基本とする手続ですから、最終的な離婚にたどり着くために、一定の譲歩を迫られることはあります。しかし、DVのケースで当人同士で話を進めますと、後で後悔してしまうような条件で離婚してしまうケースもありますので、注意が必要です。

 

(1)離婚を急ぐために親権を諦めてしまう

  私がご相談を受けるケースとしては、離婚した際に父親を親権者にしてしまったけれども、母親に変更できますかという相談を受けることがあります。事情を聴きますと、お子様は離婚後も母親が育てていくという口約束はして、親権者は父親にしたとか、また、どうしても旦那様が親権を譲らないため、お子様を旦那様に養育してもらい、親権も旦那様に渡して離婚したといったケースになります。

 

  しかし、離婚後の親権変更は難しいことが多く、また、父親に一度養育を委ねてしまいますと、その後お子様に会わせてもらえないといった問題が生じることがあります。

 

  あなた自身でお子様を育てていきたいという気持ちがあるのでしたら、安易に親権を諦めるべきではありません。

 

(2)離婚を急ぐために養育費を請求しない

 相手が離婚に応じて、親権もこちらに渡してくれるという場合でも、安易に養育費を諦めてしまいますと、今後の生活に不安を生じかねません。

 

 ただ、養育費につきましては、離婚後も養育費を受け取っていると、なかなかお子様を相手に会わせないということが難しくなりますので、相手との関係を絶つという意味では養育費を受け取らないという選択肢もあり得ると思います。

 いずれにしましても、養育費が無くとも今後の生活に不安がないかという点は慎重に検討して判断する必要があると思います。

 

(3)離婚を急ぐために慰謝料を請求しない。

  DV旦那から激しい暴力を受けてきた場合、当然慰謝料を請求する権利があります。今後の生活のことも考えますと、できるだけ多くの慰謝料を獲得しておきたいところです。

  そのため、簡単に慰謝料を諦めないで欲しいのですが、他方で、慰謝料と言いますと、相手が一方的に悪いという響きを含むため、DV旦那が余計に逆上してしまうこともあります。

 

  このように慰謝料を請求するデメリットがあることも事実ですので、今後の生活のことも考えながら、慰謝料を請求するのかどうか、請求する場合いくら請求するのか等について慎重に検討すべきかと思います。

 

 

 

6.まずは別居を先行させて落ち着いて考えられる環境を作ること

 DV旦那と同居して生活していると、何時どのように旦那が暴言を吐いてくるのか、暴力をふるってくるのかが分かりませんので、常に緊張した状態で生活を送っていると思います。

 しかし、このような極限状態ですと、離婚の際にどのようにすればよいのかと言ったことを冷静に考えることはほぼ不可能だと思います。

 

 また、別居を開始すれば旦那からの直接の暴力や暴言の被害を大きく減らすことができます。

 そのため、まずは先に別居を開始してしまうのが良い結果に結びつきやすいと思います。

 旦那に無断で別居することには問題があるのではないかと心配に思われる方もいるかもしれませんが、旦那からの暴力が原因で別居する場合、別居を批難される理由はありません。

 

 

7.まとめ


●DVの原因を作った私が悪い、という発想は完全に誤り

●自分さえ我慢すればよい、という発想も誤り

●身内にも相談できない、相談しない方が良い、という発想も誤り

●離婚を焦った結果、離婚条件で相手の言いなりにならないこと

●まずは別居を先行させて冷静に考えられる状況を作ることが重要である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

面会交流中の無理心中について

2017.09.22更新

 

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1.面会交流中の無理心中のニュース


 

 兵庫県伊丹市で平成29年4月に面会交流中父親が娘とともに無理心中するという非常に痛ましい事件が起きました。報道内容を拝見していますと、ご夫婦は離婚が成立し、離婚後に母親が娘を送り出して父親と面会交流(別居中の親がお子様と一緒に遊んだり、話したり、食事したりすることです)させていた際の事件とのことです。この事件では、父親が普段から暴力をふるう様ないわゆるDV夫ではなかった様で、母親も予測しなかった中での事件とのことで、母親の喪失感も著しい事件だったのではないかと思います。

 

 

2.面会交流の実務は?


 

 それでは、上記の様な痛ましい事件はどのようにして防げばよいのでしょうか。もっとも端的な回答は、「離婚後は子供に会わせない」という回答だと思います。

 

 しかし、現在の家庭裁判所の実務では、面会交流を積極的に推奨していますので、特別な事情がない限り「一切面会させない」ということは難しいのが現状です。私自身も上記の様な事件に接しつつも、お子様の健全な発達という面で考えると、極力面会交流は実施した方がよいと考えております。

 そして、実務的に申しますと、面会交流の頻度は1ヶ月に1回程度とされることが多い様に感じます。

 

 では、面会交流を拒否できる「特別な事情」とはどのようなものがあるのでしょうか。

 一般的には父親がお子様に対して直接暴力をふるい怪我をさせているケースなどがこれにあたります。ただ、面会交流を完全に拒否するとなると、このような暴力の証拠がないと難しいと言えます。たとえばお子様が怪我の治療をした診断書や怪我の箇所を撮影した写真の有無が重要なポイントになります。

 

 

3.児童相談所の活用


 

 上記の様な面会交流拒否が難しいとのお話は、調停や裁判といった裁判所における手続における位置づけです。

 児童虐待における現場で緊急的にお子様のみの安全を確保する必要があるケースでは、児童相談所にご相談されるのが即効性のある対処方法になります。父親からの暴力が激しい場合には、警察と児童相談所の両方に相談するのがよいでしょう。

 

 児童相談所の保護を利用しますと、お子様のみの安全という面では安心感が増すのですが、以下の様なデメリットもありますので注意が必要です。

①父親からの頻繁な暴力など問題が大きい場合、児童養護施設にて保護される形になることが多いため、1年といった長いスパンで施設での生活を強いられるケースもあります。そのため、普段通っている小学校への通学や友人と野接触が難しくなる面を捨て切れません。

②児童養護施設での保護になると、DV被害者である母親も子供と会うのに不便することがあります。

 

このようなデメリットもありますが、お子様の生命身体への緊急の危険がある場合には、児童相談所を活用することを躊躇すべきではありません。

 

 

4.シェルターでの保護


 

 DV旦那からの暴力に耐えかね、離婚・別居の意思を固めたという場合には、お子様とともにシェルターでの保護を受けるという方法もあります。

 このようにすれば、母親とお子様が離ればなれになることも避けられます。

 ただ、DV被害を受けている奥様は、旦那から執拗に責められているため、自分に自信がなくなっている方が非常に多く、旦那に何の断りもなく別居や離婚を決断することが難しいことも多くあります。そのような方は女性センターに相談されたり、身近な身内や親友に相談して、ご自身の客観的な立場を理解するのが第1歩だと思います。

 なお、シェルターで保護されながら離婚したいという場合には、ご本人で旦那と連絡を取ることはできませんし、連絡を取るべきでもありませんので、DV問題に詳しい弁護士を雇うことをおすすめします。

 

 

5.当初から暴力などがないケースにどう向き合うか


 

 これまで説明して参りましたのは、すでに同居中から父親のお子様へのDVがあるケースになります。今回の無理心中のケースの様に兆候がないケースで未然に事件を防止することは容易ではありません。

 ただ、未然防止が簡単ではないとしても、何もしないという選択肢はあり得ません。

 例えば以下の様なことが考えられるのではないかと思います。

 

①面会交流時の受け渡しを母親本人で行う。

 今回の様に離婚が成立した後ですと旦那に顔を合わせることは非常に苦痛を伴うことですが、実際にご本人で受け渡しをすれば、少なくとも面会交流会指示の父親の様子を直接見て確認することはできます。

 さらにこれを推し進めて全面会交流の課程に母親がすべて立ち会うという方法もあります。ただ、離婚が成立した後ですと、母親の精神的負担が大きく、現実的ではないことが多いと思います。

 

②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の様子を尋ねる

 例えば、離婚後父親が実家で生活しているという場合、祖父母が同居人ということになりますので、面会交流実施の前に、祖父母から父親の様子におかしな所がないか、思い詰めている様な様子がないかを確認することは実施しても良いかと思います。

 

③面会交流の場所を人目のあるところに限定する

 遊園地や公園など、人目のあるところですと、父親も不審な行動を取りづらいため、場所を指定するという方法もあります。ただ、今回の事件の様に約束した時間を過ぎてもお子様が帰ってこないといったケースでは、事件防止が難しいのが現実です。

 なお、さらに進んで祖父母の同席を促すという方法もあります。祖父母から見ますと可愛いお孫さんなので遊園地等に遊びに行く際に父親だけでなく祖父母も同行するというのは自然な形とも言えます。このような形態ですと父親が無理心中というシチュエーションは生まれにくいかと思います。

 

④お子さんから直接面会交流時の様子を尋ねる

 お子様の年齢にもよりますが、お子様が面会交流時の様子をきちんと母親に伝えられる様でしたら、そのときの様子を直接お子様から尋ねるという方法も考えられます。もちろん、お子様に根掘り葉掘り質問することは避けるべきでしょうが、何か異変がないかやんわりと尋ねることで事件の端緒を掴むことができるケースもあると思います。

 

6.まとめ


●面会交流の実務としては面会交流を積極的に推奨している

●お子様への直接のDVが見られる場合、児童相談所への相談やシェルターでの保護と言った手段がある。

●今回の様な痛ましい事故を少しでも少なくするため以下の様な工夫が考えられる。

 ①お子様の受け渡しを母親本人が行う。

 ②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の普段の様子を尋ねる。

 ③面会交流の場所を人目のある場所に指定する。

 ④面会交流の様子を直接お子様に尋ねる。

 

 

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DV離婚)離婚協議と離婚調停の分岐点

2017.09.18更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>モラハラ・DV情報盛りだくさんの総合サイトはこちら<になります。

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1.DV離婚の特殊性


 

 一口にDVと言いましても、幅のある表現でして、①相手が暴言を吐く、悪態をついてくる、②直接殴る蹴るの暴力まではなくとも物を壊す、物を床に投げつける、③直接殴る蹴るの暴力があると、いくつかの程度があります。

 

 上記のうち①ですと、その内容や程度如何では、夫婦同士の話し合いが可能なケースもありますので、その場合には、ご夫婦同士の話し合いが望ましいと言うこともあります。

 

他方、③のケースでは、奥様が離婚を切り出すとDV旦那が逆上して、暴力被害が拡大してしまうと言う危険性があります。②のケースでも、離婚を切り出すと突発的にてが出たというケースもありますので、注意が必要です。

 

私は、離婚のご相談を受ける際、DVと言った事情がない場合には、できる限り一度はご夫婦同士で話し合いをすることを強くオススメしています。当人同士が同井上で結婚したのですから、分かれる際にも一度は親権に話をした方がその夫婦にとって良いことだと感じるからです。

 ただ、前述のようにDVのケースですと、直接の話し合いがDV被害を拡大するリスクがありますので、ご本人同士の話し合いはオススメしないことが多いです。

 

 

2.離婚協議と離婚調停の分岐点


 

(1)親族や友人を間に入れる方法の検討

  DVのケースでも、旦那が普段は冷静に話をすることができる、だとか、目上の人間に対しては暴言を吐かないと言った場合には、誰か間に入って調整してもらうという方法もあり得ます。

 

 どなたかを間に入れることで冷静な話し合いができるようでしたら、早期の離婚につながることもあります。

 間に入ってもらう人物としては、あなたのお母様かもしれません、仲の良いお姉様かもしれません、職場の先輩、大学のゼミの同期、中学時代からの幼なじみ等、離婚という繊細な問題を打ち明けても良い人間で、力を貸してくれそうな人物を想像してみて下さい。

 

 そして、その様な人物が思い当たるのであれば、その人に相談してみることを考えてみて下さい。

 ただし、注意して欲しいのは、その様な人物が思い浮かんでも、すぐに相談するのではなく、その人に相談するのがよいかよく考えることです。

 

 よく聞きますのは、「親身に話に乗ってくれる人がいるけれども、旦那との接点がないから、その人を間に入れるのは、旦那が絶対拒否すると思う」だとか「うちの母には相談しているけれども、子供のためには絶対離婚など認めないという考えの人なので、離婚に賛同してくれなさそうである」とか「丁度間に入ってくれそうな人がいるけれども、口が軽いのですぐに噂が広まってしまいそうである」といった話です。

 

 相談したことでかえって事態が悪化してしまうことがないよう注意が必要です。

 ちなみに、間に入ってもらうにあたっては、夫婦の話し合いの席に同席してもらうという方法や、伝言役のような形でお互いの意見を伝達してもらう方法があります。また、ご両親に間に入ってもらう場合には、夫婦双方の両親も交えて大家族会議を開いて話し合うという方法も考えられます。

 

 

(2)DVであることに対する配慮

 前述のように、誰かを間に入れることで旦那が冷静でいられる場合はいいのですが、逆に間に入った人物に対して暴言を吐く危険性があるような場合には、誰かを間に入れるという方法は取れません。

 その場合には、いよいよ弁護士に依頼することも検討しなければならない段階と言えます。

 

 

(3)弁護士はどのタイミングで調停に切り替えるのか。

 これは弁護士として多数DVのケースを手がけてきた経験に基づくものなので一概には言いづらいのですが、以下のような要素を考慮して切替のタイミングを計っています。

 

①DV旦那がどこまで離婚に反対しているのか。

 調停切替の判断で一番重要な要素が、DV旦那の離婚に対する捉え方です。

 表面的には離婚に反対する意向を示していても、内心では、「弁護士まで出てきているぐらいだから、もう今まで通りの夫婦関係を取り戻すのは無理だ」と感じているような場合もあります。

 その様な場合には、粘り強く交渉をすれば協議離婚によって解決できる可能性もありますので、すぐに調停に切り替えるのではなく、できる限り離婚交渉の期間を取るようにすることが多くなります。

 他方で、DV旦那が離婚に断固拒否しており、その意思が非常に固いと思われるケースでは、早めに調停に切り替えることを考えます。

 

②ご夫婦の調停手続の捉え方

まず、奥様側から見ると、調停という手続が裁判所で行われるものですし、調停離婚する場合、戸籍に「協議離婚」ではなく「調停離婚」と書かれてしまうこともあって、極力調停にしたくないという方もいます。

その様な場合には、当然極力協議離婚の努力をして行くことになります。

他方、旦那側から見ると、調停という手続が裁判に準ずる重要な手続だという認識の方から、話し合いの場所が(裁判所に)変更されたに過ぎないという認識の方もいます。

まず、調停手続を重要な手続だと考えている旦那を相手にする場合、調停に進む場合には、できる限り丁寧なアナウンスをするようにしています。そうでないと、相手から無用な反発を受けることが多いからです。ただ、調停が深刻な手続のように考えている場合には、旦那側には「その様な手続を避けたいのであれば、離婚届にサインしてもらえませんか」という説得のし方をします。

他方、調停手続を深刻に考えていない場合には、こちらとしても調停申立のハードルは下がることになります。

 

③旦那がDVを認めているかどうか。

旦那がDVの事実を否定している場合には、調停申立前に極力DVの証拠集めをすることが多いです。診断書や怪我の写真と言った客観的な証拠があれば一番ですが、それがない場合でも、相手とのやり取りのラインやメールが証拠になることもありますので、相手が暴力を認めるラインやメールの有無等を確認して行くことになります。

このような、いわゆる証拠集めが必要になりますので、旦那がDVを完全に否定しているような場合には、それなりに準備に時間を要するケースが増えます。

 

 

3.まとめ


○一般の離婚のケースだと夫婦当人同士の話し合いをした方が望ましいが、DVのケースだと直接話し合うことが望ましくないケースの比率が増えてくる。

○間に誰かを入れて話をすることも一長一短でよく検討する必要がある。

○弁護士が調停に切り替えるかどうかは経験に基づき様々な要素を検討して判断している。

 

 

 

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DV加害者のよくある言い分と弁護士の対応方法

2017.09.11更新

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1.DV加害者の共通性


 

 私はDV離婚のケースを多数手がけていますので、DV加害者と直接話をする機会は多いのですが、その中でDV加害者の言い分・考え方として共通する部分も多いものですから、どのような言い分を述べるのかを紹介するとともに、これらに対して弁護士として私がどう応対しているのかを紹介致します。

 

 なお、弁護士に応じて相手との交渉の進め方は人それぞれだと思いますので、どのやり方が正解と言うことはないと思います。以下で紹介するのは弁護士秦がDV旦那とどのように向き合っているのかという私見だとお考え下さい。

 

 

2.【DV旦那のよくある言い分1】無断で出て行ったことに対するクレーム


 弁護士にご相談される際には奥様はDV旦那に無断で別居を開始しているというケースが大半です。ご相談の際に別居していなければならないと言うことはないのですが、遅くとも弁護士が事件に着手する前には別居を始めてもらうようにしています。

 

 そのため、DV旦那からよく言われるのは「仕事から帰ってきたら嫁の荷物がなくなっていて連絡も取れなくなった。こんな騙し討ちみたいなやり方はあんまりだ」とか「こんな事は随分前から計画しておかないとできないことだから計画的で悪質だ」といった言い分です。

 

 DV旦那と話をすると、大体最初に述べられることが多い言い分のように思えます。

 このような言い分に対しては、「確かに、あなたにとっては突然のことだと思われるかも知れませんけれども、奥様は、それだけの理由があって別居を始めたのだと思いますよ」というような説明の仕方をするのがオーソドックスです。

 

 このように話をしますと、DV旦那からは、嫁はどのように話をしているのか、とか、出て行った理由をきちんと話してもらわないと納得のしようがない、と言われますので、詳しい説明をして行くことになります。

 

 

3.【DV旦那のよくある言い分2】「本人と会いたい」「直接話がしたい」


 

 こちらの言い分も大概のDV旦那は主張してくるのですが、特に無断で別居を開始したような場合には、「こんなひどいやり方は許せないから、本人に説明に来させろ」と言われることもあります。

 

 また、こちらもよくあるのですが「本人と直接話をすれば離婚なんて言わないから、直接会って話をさせて欲しい」とか「弁護士が就いているって言うんだったら、弁護士同席でも構わないから本人と会わせろ」ということは言われることが多いです。

 ただ、奥様としては身の危険を感じて、自宅から逃げて居場所を隠しているのですから、DV旦那と面と向かって話をするというのは危険性が高過ぎます。

 

 そのため、私の方からは、本人は直接会って話をすることを怖がっている旨、私が窓口として必要な内容は本人に伝える旨をDV旦那にも話していくことになります。

 

 

4.【DV旦那のよくある言い分3】「嫁の居場所を教えろ」


 

 前述の「嫁に会わせろ」の延長線上と言うべきでしょうか、「嫁の居場所を教えろ」と言われることもあります。ただ、最近は警察の方もDVで女性が深刻な被害を受けないようかなり配慮するようになっていますので、警察の方から「奥さんは今シェルターにいるから絶対に居場所は教えられない」といった話をDV旦那に対してしていることが多いです。

 

 そのため、警察からその様に言われているケースなどでは、DV旦那もしつこく居場所を聞いて来るというケースはかなり減ってきているという印象です。

 

 もちろん、居場所を教えるよう聞かれた場合には、私の方からは「絶対に教えることはできない」と回答することになります。

 なお、弁護士に対して「居場所を教えろ」と言ってこない場合でも、奥様の両親や親戚・親友等にしきりに電話をかけて居場所を聞き出そうとしてくることはありますので、注意が必要です。

 

 

 
5.【DV旦那のよくある言い分4】「自分は暴力などふるっていない」


 

 この言い分については、「一切暴力をふるったことなどない」という言い分と、ある程度暴力をふるったことは認めつつ、「暴力と言うほど大したものではない」「軽く手が当たっただけだ」といった言い分とがあります。

 

 これに対しては、奥様が診断書や怪我の部分を撮影した写真等があれば、相手に対してこのような証拠があるので、暴力があったと考えられる旨を伝えていくことになります。

このような証拠がない場合には「私は奥様の弁護士なので、あくまで奥様の言い分に沿ってお話しをするしかない」というお話しをすることになります。

 

 

 
6.【DV旦那のよくある言い分5】「自分は悪いことをしたと思っていない」


 

 この言い分に関しては程度の差こそあれ、大体のDV旦那から言われる言い分です。

 「程度の差がある」というのは、一応暴力をふるったこと自体は悪いことをしたという気持ちがある人もいて、その場合には「確かに手を上げたことは悪かったと思うが、そのことには原因があることをちゃんと分かって欲しい」とか「嫁にこれだけのことをされれば誰だって暴力の一つぐらいふるいますよ」といった言い分になります。

 

 他方、利己的な性格が非常に強い人になりますと「嫁が約束を破るから暴力をふるっただけで、自分は何も悪くない。むしろ、約束を破り続けた嫁の方が悪い」とか「暴力と騒ぎ立てるが、悪いことをした嫁に対する体罰だから、問題ない」といった言い分です。

 

 このような言い分が出された場合、夫婦のどちらの方が悪いと行った話をしていても平行線になりますので、「ただ、奥様は暴力を凄く怖がっているようですよ」とか「弁護士を雇うぐらいだから、奥様も本気で離婚したいようですよ」といった説明をすることになります。

 

 

 
7.【DV旦那のよくある言い分6】「嫁は自分に都合がいい話ばかりしている」


 弁護士が離婚協議に着手する際には、まずは、DV旦那に対して内容証明郵便という郵便物を送るところから始めることが多いです。要するに通知文を送りつけることになりますが、この「通知文」には、旦那からのDVで離婚を決意したこと、ヨリを戻すつもりがないことを明記することになります。

 

 通知文に詳しい内容を書きますと、DV旦那から、様々な不満が寄せられて話し合いが難しくなりますので、上記の程度しか記載はしないのですが、それでも、DV旦那は「嫁は自分に都合がいい話ばかりしている」という不満が寄せられることが多いです。

 

 前述の通り、DV旦那は暴力をふるったことを悪いことをしたと思っていないか、それほど悪いことをしたと思っておらず、「原因を作ったのは嫁の方だ」と思っている人が大半です。

 そのため、DV旦那からすると、「嫁はどうせ詳しい経緯を話さないで、DV,DVと騒ぎ立てているんだ」と考えるようです。

 

 このようなDV旦那からの言い分に対して、私からは「夫婦の事細かなやりとりまでは分かりませんが、奥さんがあなたのことを怖がっていることは間違いありませんし、奥さんが別れたいという決意は固いですよ。」という話をします。

 

 

8.【DV旦那のよくある言い分7】嫁は騙されている


 

 この言い分も比較的よく出てくる言い分の一つかと思います。

 DV被害を受けている女性は、被害を最小限にとどめるために旦那の機嫌を取りながら、波風をなるべく立てないように生活していることが多いため、DV旦那から見ますと「嫁が俺のことを嫌っているはずがない」と思っている人も多くいます。

 

 また、奥様が突如別居を断行し、突如奥様の弁護士から連絡があると、DV旦那からすると「普段大人しい嫁が、こんな大胆なやり方を思い付くはずがない」とか「こんな大げさなことをするはずがない」と思うことも多いようです。

 

 事情は様々でしょうが、「離婚したいというのが本人の意思だとは思えない、本人の母親がけしかけているに決まっている」とか「以前から女性相談員に相談していたようだが、女性相談員は女性の味方だから、どのように言われたのか分かったものじゃない」と言った言い方をするのです。

 

 このような旦那の言い分に対しては、「直接ご本人と会って、直接お話しをして離婚の意思を確認しています。」というご説明を繰り返すことになります。

 

 

9.離婚による解決のために


 

 DV旦那は自分の考え方に固執して、こちらの言い分に対してほとんど耳を貸さないという人も多いため、協議離婚による解決が難しいというケースもあります(ただ、私の場合、ノウハウがありますので、皆様が思っているよりも協議離婚で解決したケースの件数は多いというイメージです)。

 

 その様な場合には、ズルズルと協議離婚の話をしておりますと最終的な解決が遅れることにもなりかねませんので、早い段階で見切りを付けて調停に移行することもあります。

 

 

 
10.まとめ


■DV旦那からは以下のような言い分が出ることが多いが、ノウハウを持った弁護士であれば、対応方法は確立している。

・無断で別居したことが許せない。

・本人と会いたい。

・嫁の居場所を教えろ

・自分は暴力などふるっていない

・自分は悪いことをしたと思っていない

・嫁は自分に都合がよい話ばかりしている。

・嫁は騙されている。

 

 

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弁護士はDV旦那とどのように敵対し、向き合っているのか

2017.09.04更新

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1.DV加害者との向き合い方


 私はDV離婚のケースを取り扱うことが多いものですから、DV旦那と生で話をしながら、どのようにすれば早期離婚を獲得できるのかという観点から試行錯誤を繰り返してきました(もちろん、これからも試行錯誤を繰り返さなければならないと考えています)。

 

 DV被害を受けた方がご相談に来られる際、よくおっしゃるのは「旦那は一度言ったことは絶対に変えないから、弁護士さんが間に入っても、離婚届にサインはしてくれないのではないかと思います」という話です。

 確かに、私がであったDV旦那の方は独自の価値観をお持ちで、それを頑固に曲げないという方が非常に多いように感じます。

 

 ただ、他方で、弁護士の心がけ次第で早期離婚を勝ち取ることができたケースもあり、私自身も当初の想定よりも早く離婚にこぎ着けたケースを担当しています。

 

 そこで、ここでは、弁護士がDV旦那とどのように向き合って手続を進めていくのかについてご説明します。

 なお、弁護士はそれぞれ自分が最も適切だと思う弁護方針で活動していますので、私のやり方が正しいと言うことではありません。以下は、イチ弁護士のDV旦那との向き合い方という意味で捉えて頂ければ幸いです。

 

 

2.【DV旦那との向き合い方1】メリハリを付ける


 

 DV旦那との向き合い方の一つが、まずは、メリハリを付けると言うことです。

 

 これは弁護士としての弁護方針にもよりますので、どの方法がよいとは言えませんが、弁護士によっては徹底的に相手と対立する、喧嘩するというやり方の先生もいらっしゃいます。しかし、私はその様な方法は取っていません。もちろん、こちらの要望として伝えなければならない点はしっかりと伝えますが、相手の言い分全てに対立していては、早期離婚の道を閉ざしてしまう恐れがあります。

 

 そこで、私は相手の言い分全てに対立するのではなくメリハリを付けて対応するようにしています。

 例えば、DV旦那から奥様の住所を尋ねられた際には絶対に回答しません。これに対して、奥様が離婚を決意した原因を聞かれた際には丁寧にご説明します。このように相手の質問や言い分に応じて臨機応変に対応するようにしています。

 

3.【DV旦那との向き合い方2】弁護士の牽制力を適度に使う


 

 通常、DV離婚の依頼を弁護士が受けた場合、DV旦那に対して通知を郵送するところから事件に着手します。

 DV旦那からすると、突如奥様との連絡が取れなくなったと思ったら、突如奥様の代理人を名乗る弁護士から手紙がやってくるということになります。

 

 DV旦那も弁護士から手紙が来ると多少は危機感を持つことが多いので、そのことによる牽制力を私は上手く利用するようにしています。

 弁護士なので様々な法的な手段を執れるということを誇示してしまいますと、相手は反発し「それならこちらも弁護士を立てて徹底的にやってやりますよ」というように言われてしまう虞がありますので、「適度に」牽制力を活用するようにしています。

 

 

4.【DV旦那との向き合い方3】できる限りこまめに相手と連絡を取る


 

 DV旦那は利己的な方が多いため、毎日のように私のところに電話をかけてくる方も多くいます。それに対しては、可能な限り毎日電話で話をするように配慮しています。

 

 DV旦那は短気な方が多いため、1日電話の折り返しが遅れただけで激怒する方もいるため、極力その様な事態を避けています。

 そして、私の出張の予定等でどうしても毎日電話することが難しい場合には、今週電話をするのは早くとも木曜日になるといったことを相手に必ず事前に伝えるようにしています。

 

 DV旦那によっては1日に2,3回電話をかけてくる方もいて、その都度対応しているとかなりの時間を取られてしまうのですが、粘り強く相手に同じ回答を繰り返すことで、相手の理解が多少深まると言うこともありますので、極力頻繁に話をするように努めています。

 

 

5.【DV旦那との向き合い方4】相手の話も丁寧に聞く


 

 これは、相手の話に共感するという意味ではありません。

 DV旦那は、自己の暴力を正当化するため、このような経緯があったから暴力をふるったんだとか、このような原因がなければ暴力などふるわなかったという話を必ずしてきます。

 

 暴力は絶対的悪ですので、どのような事情があっても許されるものではないのですが、相手が言い分を述べている際には、聞くだけは聞くようにしています。あまり簡単に話を打ち切ってしまいますと、DV旦那が感情的になる危険性がありますし、何より、その様な事情を聴いていますと今後の準備にも役立つからです。

 即ち、今DV旦那が言い分として述べている事情は、今後離婚調停、離婚裁判になっても必ず似通った主張を展開してきますので、これに対抗するための十分な準備ができるのです。

 

 メールやラインなど、相手とのやり取りが証拠になることもありますので、相手の言い分に対する反論証拠の準備も進めていくことになります。

 

 

6.【DV旦那との向き合い方5】早めに調停離婚への切替を判断する


 

 交渉をしているとDV旦那が非常に意固地で厚相をしていても協議離婚の見込みが非常に低いというケースもあります。

 その場合、あまり協議離婚に時間を費やしてしまいますと、調停離婚のスタートが遅れる結果、最終的な離婚が遅くなってしまうと言うことにもなりかねません。

 

 そのため、基本的には相手と粘り強く交渉して早期協議離婚を目指しますが、離婚届にサインする可能性が低いという場合には、早めに調停手続に切り替えるようにしています。

 

 

7.まとめ


○DV旦那と話をする際にはメリハリを付けて話をしている。

○弁護士の牽制力を適度に利用して話を有利に進めるようにしている。

○DV旦那とはこまめに連絡を取って話をするように努める。

○DV旦那の話も丁寧に聞き、こちらの反論準備に役立てる。

○交渉決裂の可能性が高い場合には、早めに調停に切り替える。

 

 

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DV夫との別居を決意!別居にあたっての8つの手順

2017.08.28更新

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1.事前にDV夫に相談した方が良いか?


 

DV離婚のケースで一番悩まれるのは、離婚することや別居することを事前に相手に伝えるべきかという問題だと思います。

 何も言わずに別居してしまうと、後から何を言われるか分からないし、他方で、事前に話してしまうとその際にどのような暴力を受けるか分からないと言うことで、悩まれている方も多くいます。

 

 基本的に、これまでこちらが怪我をするような暴力被害を受けたことがあるというケースでは、事前に離婚や別居を切り出さずに別居を開始した方が良いことが多いと思います。事前に話をすると重大な被害につながりかねないため、自分のみの安全を守るためにも、事前に話をしないのです。

 

 他方で、暴力被害を受けたことがあるけれども怪我をするほどのことではなかったとか、暴言のみという場合には、事前に離婚や別居を切り出した方が良いケースの方が多いかと思います。ただ、この場合にも、相手がどのような行動に出るか予測できないという場合には、事前に別居話や離婚話をするか慎重に検討する必要があります。

 

 事前に何も相談せずに別居を開始してしまうと「悪意の遺棄」になってしまい、後から離婚しづらくなるのではないかと考えている方もいます。しかし、DV被害防止というきちんとした理由がある場合、事前に相談せず別居したからと言って離婚にあたって不利になることはほとんどありません。

 

 DVのケースでは、別居後も親族・友人等どなたかの支援を受けながら生活していくことになると思いますので、事前に旦那に別居や離婚を切り出しておくべきかは、その親族や友人とも予め相談しておくと良いと思います。

 

 

2.絶対にこちらの動きを察知されないこと


 

 事前に旦那に別居を切り出さずに別居しようとする場合、別居の準備をしていることを相手に察知されないようにすることが非常に重要になります。これを察知されてしまうと、別居を妨害されたり、別居準備を進めていることを厳しく批難されることになりかねません。

 私が担当したケースでも、別居準備中に旦那に察知されてしまい、なかなか別居できなかったというケースもありますので、細心の注意が必要です。

 

 DV旦那に別居準備のことを知られてしまった原因としては、①旦那が奥様の携帯電話をこっそり盗み見ており、その中で発覚してしまったケース、②別居準備のために子どもの小学校天候の話等を現在の通学先小学校に相談していたところ、旦那が小学校に問い合わせて発覚したケース、③区役所に児童手当や保険切替の相談をしていたところ、旦那が区役所に問い合わせて発覚したケース等があります。

 

 別居準備中は別居先住所等の情報は最大限外部に知られないようにし、自身の携帯電話も旦那が勝手に見られないようにする等の注意を払って準備を進めていく必要があります。

 

 

3.親族・友人等の支援体制を整えること


 

 DVのケースですと別居に成功しても、旦那が別居先を突き止めてしまうのではないかと言うことで多かれ少なかれ不安を抱えながら生活していかなければならないというケースも多くあります。

 小さなお子様がいらっしゃる場合、お子様ご自身が上記のような不安を持つケースもあります。

 

 このようなことを考えますと、別居後に支援をしてくれる親族や友人を見付けておき、別居後に支援を受けつつ日々の生活を送っていければ安心感が非常に増すと思います。

 

 支援の輪が広ければ心強いとは思いますが、情報が拡散しますと、どこかで旦那が別居の情報を察知してしまう危険性が増して行くことになります。そのため、まずは、親身に相談に乗ってくれそうな両親その他の親族等に絞って支援を依頼することが現実的かもしれません。

 

 

4.置き手紙の活用


 

 別居の際には、自宅に置き手紙を残すことを私は推奨しています。古典的ですが、あなたが事故や事件に巻き込まれたわけではないことを伝えておく必要がありますし、執拗に居場所を探されないようする必要があるからです。

 

 置き手紙の内容は、旦那と一緒にやっていくことができないと考えたので別居を決断したこと、元気にしているので探さないで欲しい、といったことを簡単に記載しておけば構いません。

 

 私の依頼者の方からは「LINEやメールで伝えるのではダメですか?」と質問されることが多いのですが、置き手紙の方が無難なことが多いです。といいますのは、LINEやメールで伝えると、相手に対して「LINEやメールが連絡手段として生きている」と伝えるようなものなので、その後旦那からしつこくLINEやメールが来る危険性が増すからです。

 

 

5.捜索拒否願の提出


 

 DVのケースですと、旦那からの暴力について地元の警察に相談をしていることが多いと思いますので、事前に別居日を警察にも伝えておいて下さい。

 

 そして、突如別居を開始すると、旦那は警察署に捜索願を提出するケースが多いので、予めあなたの方から警察に対して「捜索拒否願」を提出しておいて下さい。

 

 捜索拒否願を提出しておけば、警察が捜索願を受理することはありませんし、旦那が警察に相談しに来た際に「奥さんがどこにいるかは教えられないが無事だから探すようなことはしないように」と伝えてくれますので、安心です。

 

 

6.住民票の移動は慎重に


 

 別居先に転居した際には、住民票を移動すべきかという問題があります。各種行政サービスを受けるにあたっては住民票を移動していた方が手続は円滑なことが多いですが、安易に移動してしまいますと旦那に居場所を知られる危険性が生じます。

 

 DV被害者として役所に申請を提出しておけば、旦那があなたの住民票を入手することはできなくなりますが、役所のミスで住所が発覚してしまうというケースも実際にはあります(ただ、最近はこのようなミスはほとんどなくなっていると聞きます)。

 そのため、行政サービスを受けるため等、その他現実の必要性が生じてから住民票は移動した方が安全だと思います。

 

 

7.早めに弁護士に依頼する


 

 DVで別居を開始し、相手にあなたの所在地を明かさずに離婚の交渉をするという場合、弁護士に依頼をして手続きを取るというのが最も現実的かと思います。

 

 もちろん、ご両親など間に入ってくれる人物がいて、旦那も目上の人には丁寧に応対するという場合には、ご両親等に間に入ってもらうことを依頼する方法もあります。

 ただ、相手がDV旦那の場合、あなたの居場所を執拗に尋ねてきたり、あなたと一目でも良いから会わないと離婚の協議には応じないという旦那も多くいます。

 

 その様なケースでは早めに弁護士に依頼して手続きを取った方が円滑に離婚できるケースが多いと思います。

詳しくは、関連記事>>DV離婚を弁護士に依頼するメリット&デメリット

 

 

8.別居時の持ち物リスト


 DVのケースでは、急いで別居を開始しなければいけないとか、そうでなくとも別居後の不安から気持ちを落ち着かせて荷物の整理ができないという方も多いと思います。

 

その様な方は、以下の関連記事を参照の上、荷物の整理をしてみて下さい。

関連記事>>「ついに別居を決意!これだけは持って出よう!」

 DVのケースですと、別居後程なくして旦那が奥様やお子様の荷物の大半を勝手に捨ててしまったというケースもありますので、注意が必要です。

 

 

9.まとめ


○事前に旦那に別居する旨を相談した方が良いかはケースによる。

○別居準備は絶対に旦那に察知されないように進める。

○別居にあたっては、親族・友人等の支援体制を整えた方が良い。

○別居の際は自宅に置き手紙を残す方が良い。

○警察には捜索拒否願を提出する。

○住民票の移動は時期を含めて慎重に検討した方が良い。

○DVのケースでは早めに弁護士に依頼した方が良い。

○別居の際には持って出る荷物についても検討しておく必要がある。

 

 

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DV離婚で調停に臨む際の5つの注意ポイント

2017.08.21更新

弁護士秦 

こんにちは、東京日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>モラハラ・DV情報盛りだくさんの総合サイトはこちら<になります。

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1.まずは調停がどのような手続なのかを理解する。


 

 DVのケースではご夫婦同士で話し合いができない、もしくは、離婚を切り出すとDV旦那が逆上する可能性が高いため、ご自身で離婚を切り出せないというケースも多くあります。

 

 その場合でも、弁護士が間に入る場合には、弁護士からDV旦那に通知を送り、協議離婚によって問題を解決できないかを模索していきます。

 ただ、弁護士が間に入っても協議離婚の目処が立たないというような場合には、弁護士が代理人となって離婚調停を申し立てていくことになります。

 

 DVのケースですと、調停にどのように臨めばいいのか奥様の方で非常に不安になられることが多いと思います。ただ、調停というものがどのような手続なのかが分かっておりませんと、その様な不安を払拭することはできませんので、まずは、きちんと把握しておく必要があります。

>>関連記事「離婚調停って何だ?」

 

 それでは、離婚調停というものがどのようなものか概要を掴んで頂いた上で、DV離婚の場合には、どのような心構えで臨む必要があるのか、また、どのような準備が必要なのかと言った点について、DV被害者側の立場から以下ご説明致します。

 

 

2.裁判所へのDVでの配慮要請


 

 まず、調停を申し立てる際に、この離婚調停事件がDVの事件であるということをキチンと裁判所に伝えておく必要があります。DV離婚調停事件においても基本的には弁護士同席のもとご本人にも裁判所に足を運んで頂く必要があります。

 そのため、何も裁判所の配慮がないと、裁判所にてDV旦那と遭遇してしまうと言った危険性が出てきます。

 

 このような事態を避けるために、事前に裁判所にDVのケースであることを強く伝えておく必要があるのです。

 このようにしておきますと、裁判所の方も調停の開始時間を旦那様と奥様とでずらしてくれたり、控え室の階数を別にしてもらうなど配慮を受けることができます。

 

 

3.原則弁護士代理を強くオススメする


 

私がDV離婚のご相談を受けた際には、弁護士を立てることをオススメすることが多いです。

DVのケースですと前述の通り、ご本人からDV旦那に対して離婚を切り出すことができないというケースが多くあります。その様な場合には、ご本人ではなく両親やその他の親戚、友人等に間に入ってもらうケースもないわけではありませんが、本人と話ができないことでDV旦那が逆上して話が余計に混乱すると言うこともあります。

そのため、明確なDVのケースですと、弁護士が間に入った方が、多少はDV旦那も冷静に話をすることができます。

 

また、DV旦那から更なる暴力等が行われる可能性も考慮しますと、その様な事態に迅速に対応する必要があります。具体的にはDV保護命令等を検討して行くことになりますが、予め離婚事件で弁護士が事情を把握しておりますと、保護命令等の手続も円滑に進めて行くことができます。

 

 

4.【調停の席で心がけること1】自分を責めない・卑下しない


 

私が相談を受けるDV被害者の方の傾向としましては、自分を責めてしまっている方が非常に多いという印象です。

自分が旦那の機嫌を損ねることを言ってしまったからいけないんだとか、家事が不十分だったために旦那を怒らせてしまったといった風に自分を責めてしまうのです。

しかし、暴力はどのような事情があっても許されないものですので、あなたが悪いと言うことは絶対にありません。確かに旦那の暴力には何らかの発端があるのは事実でしょうが、だからといって暴力が許されることにはならないのです。

 

また、DV旦那は、「何度言ってもお前がこれをしないから暴力をふるっているんだ」という言い方をして、あなたを悪者扱いしようとします。このように言って、あなたを支配しようとしているのです。あなたが自分自身を卑下するのは、DV旦那からのコントロールから脱し切れていない痕跡とも言えますので、まずは、そのようなDV旦那からのコントロールから抜け出すようにするのが重要だと思います。

調停の席でも、あまりあなたが自分自身を責めていますと、相手からつけ込まれる一因にもなりますので、まずは「自分自身を責めない」という気持ちをしっかりと持つよう心がけて下さい。

 

 

5.【調停の席で心がけること2】悩まない・相手の魅力的な言葉等に騙されない


 

次に、調停の席で強く心がけて欲しいのは、相手の魅力的な言葉等に騙されない、気持ちを揺らさないと言うことです。

DV旦那の中には、裁判所等の公的な場所では礼儀正しく振る舞うという人もいます。また口が達者と言う方もいるのが事実です。そのため、DV旦那も調停の席では、こちらが応じても良いような条件を提示してくることもあります。

 

ただ、ここでヨリを戻してしまいますと、これまでと同様のことが繰り返されることになりますので、自分が離婚したいんだという強い気持ちで臨むのがよいと思います。

 

もちろん、離婚にあたっては様々な条件についても話し合いますので、その個別の条件についてどのようにした方が良いのか悩むことはいけないことではありません。ここで申し上げたいのは、「離婚したい」というその気持ち自体がぶれないようにして欲しいという意味です。

 

 

6.まとめ


○DV調停と言うことを意識せず、まずは調停手続そのものをきちんと理解しておく。

○DV離婚調停では、裁判所にDV事件としての配慮を事前に要請しておく必要がある。

○DV離婚調停のケースでは弁護士に依頼した方が良いケースが多い。

○DV調停の席では、自分を責めないように話す必要がある。

○DV調停の席では、離婚に対する強い覚悟をもって離婚そのものを悩まないようにした方が良い。

 

 

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DVで協議離婚できるか?

2017.08.14更新

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1.協議離婚とは


 

 協議離婚とは、ご夫婦が離婚届に署名押印して役所に届け出ることで離婚が成立することを言います。

 ご夫婦同士の話し合いで離婚に合意した場合はもちろん、ご夫婦同士の話し合いが難しく、間に弁護士が入って協議離婚が成立することもあります。

 

 協議離婚は、調停離婚、裁判離婚と対比した用語として用いられますが、一番のメリットは、時間をかけずに離婚できるという点かと思います。

 

 これに対して、調停離婚ですと、家庭裁判所における調停手続で離婚する手続きになりますので、どうしても一定期間を要してしまいます(調停申立の準備が必要になりますし、申立をしても調停期日は1ヵ月以上後になります。また、1回の調停期日で結論が出ないことも多いです)。

 

 

2.DVだから協議離婚できないと言うことはない。


 

 DVのケースですと、DV被害者側が協議離婚を最初から諦めているケースも多くあります。

 「旦那に相談もせずに家を出てしまったので、凄く怒っていて、とりつく縞がないと思います」だとか「何度か離婚を切り出したことがあるのですが、まったく話し合いになりませんでした」といった形で諦めてしまっているのです。

 

 しかし、弁護士が間に入ることで、相手が態度を軟化させてくることはあります。弁護士を立てるということは、「本気で離婚したいと思っている」ということを意味しますので、そのことが相手にも伝わることが多く、相手も離婚も致し方ないと考えるのです。

 

 私が担当した事件でも、当初は協議離婚が難しいと思われても、実際ねばり強く相手と話をしたところ協議離婚が成立したケースは何件もあります。

>>関連記事「DV夫とスピード離婚(2ヵ月で離婚成立)」

 

 

3.協議離婚のために弁護士として心がけていること


 

(1)離婚原因の詳細を確認する

 DV被害者の方から詳しい離婚原因の聞き取りを致します。多くの場合は、DV被害の詳細になりますが、このような被害内容を共有することで、被害者の方に目線を近づけた上で弁護活動を行うことができると考えています。

 また、DV加害者である旦那様と直接話をする際には、「嫁はどうして離婚したいと言っているんですか?」という質問が必ず出ますので、それに回答する準備としての意味合いもあります。

 

 このような確認は当然のことの様に思えるかもしれませんが、弁護士は事件を多数抱えており、どうしても細かな事実関係の確認に手が回らないという先生もいらっしゃるようです。私の場合には、そのようなことはなく、きちんと詳細を確認する様に努めております。

 

(2)DV加害者に対してメリハリを付けて対応する

 DV旦那と話をする際に一番心がけているのはメリハリを付けるという点です。絶対に応じられない点については断固応じられない旨を明確に伝えますが、他方できめ細かく対応した方が良い点についてはきめ細かく対応すると言うことです。

 

 奥様が所在を明らかにせずに別居を開始した場合、DV旦那からは「嫁がどこにいるのか教えろ」とか「嫁と直接会って話をしないと離婚を決められない」という話が必ず出ます。これに対しては、居場所は絶対に教えられない、直接会うことも絶対にできないと回答し毅然と対応することになります。

 これに対して、詳しく奥様が離婚したい理由を知りたいという要望が出された場合には、その理由を細かめに説明して行くことになります。

 

 

4.調停に切り替えた方が良いケースでは早めに切り替える


 

 私が交渉に当たる場合、できる限り早めに離婚できるようにDV旦那と粘り強く話をして協議離婚を目指しますが、旦那様が離婚を拒絶する姿勢が強固な場合、早めに調停離婚に切り替えた方がよいということもあります。

 私が相手と直接話をしておりますと、協議離婚での解決が難しいという判断はできますので、その見極めができ次第調停離婚の手続きを取ることになります。

 

 

5.親権獲得が絡む場合


 

 特にお子様の親権について激しい意見対立があるようなケースですと、仮にDV旦那が離婚に応じたとしても、親権を譲らないと言うことも想定されますので、その場合には、早めに調停に切り替えた方が良いケースが多いと言えます。

 

 なお、たまに「早く離婚したいので親権は諦めた方が良いでしょうか?」とご質問される奥様がいらっしゃいますが、こちらについては、絶対に親権は諦めない方が良いという回答になります。

 今は一刻も早く離婚したいでしょうけれども、親権を渡してしまいますと、今後お子様と会うことにも不便を来す可能性がありますので、2年後、3年後には「親権を渡すべきではなかった」と思われる方が多いからです。

 

 

6.慰謝料請求とのバランス感覚


 

 特に深刻なDV被害を受けているケースですと、DV旦那に何のお咎めもなく離婚することには納得できないということも多いと思います。これまで長い期間に亘って暴力被害を受けてきたのですから、その様に考えるのも当然だと思います。

 

 ただ、DV旦那は自分の暴力が正当なものだと考えている人が非常に多いため、慰謝料を支払うことに強く抵抗してくるケースが多いのも事実です。

 そのため、ケースによっては慰謝料の金額を減額し、または慰謝料額をゼロにした上で、早期に離婚する方が良いというケースもあります。

 

 

7.まとめ


■DVであっても協議離婚できる。

■DV離婚の場合、弁護士としては被害者の方から詳しく事情を確認し共感することが重要である。

■DV離婚の場合、弁護士としては加害者とメリハリを付けて話をする。

■調停に切り替えた方が結果的に早く離婚できるケースでは早めに調停に切り替える。

■早く離婚したいからと言って親権を手放してはいけない

■早期離婚と慰謝料獲得とのバランスを考えなければならないケースは多い。

 

 

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