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【絶対に離婚したくない(29)】相手からの離婚調停(7)―調停委員はどこまで離婚を勧めてくるか?

2024.08.19更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.そもそも、調停委員ってどんな人がなるの?


 調停が始まると、調停室には男性1名、女性1名の調停委員が座っていて、色々と話を聞いてくれたり、相手の話を伝言してくれるのですが、その調停委員はどんな人なのかは気になるところです。

 調停委員のなり手としては、弁護士や司法書士、鑑定士、大学教授、元書記官、上場企業の元役員や元部長等々様々です。このように必ずしも家事事件の専門知識を有していない方が調停委員になることもありますので、細かな法律問題についてまではよく分からないという方もいらっしゃるのが現実です。ただ、基本的な調停の進め方や基本的な法律問題の知識は皆様お持ちですし、詳しい法律問題については裁判官の意見を聴くことが多いため、このような形でフォローされることが多いです。

 

 

2.調停委員はどこまで離婚を勧めてくるか 


 

 これは調停委員の方の個性が出る部分でもありますので、一概には申し上げられないのですが、強烈に離婚を勧めてくる調停委員がいるのも事実です。調停委員によっては、こちらのことを「女の敵」と言わんばかりに責め立ててくる調停委員もおりまして、対応に難儀することもあります(ただ、ここまで極端な対応をしてくる調停委員はごく少数ですが)。

 ここまで極端に離婚を勧めてこないまでも、大半の調停委員は離婚方向で話を進めたがる傾向が強いです。そもそも、離婚調停では、(夫婦円満ではなく)離婚で調停がまとまるケースが多いため、このような傾向が強まることはある程度致し方ない面があります。

 

 ただ、繰り返しになりますが、強烈に離婚を勧めてくる調停委員は全体から見るとかなり少数派です。

 たまに私が相談に乗っていますと「インターネットで見たんですが、調停委員がこちらの話を全然聞いてくれなくて、離婚条件の話ばかりされた、と書いてあったんですが、本当ですか?」とか「わざわざ妻(夫)は調停までやっているんだから、普通の調停委員は『諦めた方がいいんじゃない?』って言ってくるんですよね?」などと質問を受けることもあります。

 このような質問に対しては、「実態として、そこまで極端な進行をされることはごく稀ですので、ご安心ください」とお答えすることが多いです。

 

 

3.このような調停委員への対応方法は?


 一番の効果的な対処方法は、「離婚には応じられない」というしっかりとした意思と言葉を持って返答し続けることです。こちらが離婚すべきか悩んでいる姿勢を見せてしまいますと、調停委員の議論に巻き込まれてしまいますので、悩んでいる姿勢を一切見せないと言うことが一番大切になります。

 このようにこちらの一貫した姿勢を見せていると、調停委員も第2回調停期日以降は大きくトーンダウンするというケースも多いです。

 

 また、こちらが離婚したくないという話をすると大抵の場合、①その理由と②何か改善策として考えていることはあるか?と再質問されることが多いです。

 そのため、このような質問が出されることを見据えた上で、予め回答準備をしておく必要があります。

 

 なお、あまりに調停委員の圧が強いような場合には、私の方から「調停委員さん、今のお話は強制とかではありませんよね?念のための確認ですが」などと口を挟むこともあります。調停という手続きの性質上、調停委員は、こちらに何かを強制することはできませんから、調停委員も「別に強制ではありませんけど」と返答してきます。

 

 

4.離婚拒否はあなたの「わがまま」ではない

 


 調停委員からあまり強く言われてしまいますと、あなたの方としても、「自分がヨリを戻したいと考えていることは、「わがまま」なのかな?」とか「ひとりよがりなのかも」と感じてしまうことも多くあります。

 ただ、離婚してしまいますと配偶者は、法律上「他人」になってしまいます。

 これだけ離婚するかどうかはとても大切な話なのです。

 あなた自身の人生やお子様の人生にも関わる非常に大切な話なのですから、ヨリを戻したいと考えることは決してあなたの「わがまま」ではありません。

 

 

5.調停委員はどこまで離婚理由を話してくれるか?


 

 先ほど解説したような調停委員とは全く正反対で、調整型に徹する調停委員もいます。要するに、相手の方からはかなり詳しい離婚理由等を聞いているのに、その詳しい内容をこちらにあまり教えてくれない調停委員と言うことです。

 調停委員があまり詳しいことを語ろうとしない理由としては、①あまり詳細な離婚理由を伝えてしまいますと、こちらが感情的になってしまうと危惧している、②あまり詳細な離婚理由を伝えてしまいますと、こちらの言い分を全く信用していないといった不信感を招くおそれがあるといったことが考えられます。

 

 いずれにしましても、このような調整型の調停委員の場合には、大抵、こちらの言い分は親身に聞いてくれるのですが、こちらの言葉が調停委員の心に響いていないことも多いため、注意が必要です。

 このような調整型の調停委員を相手にする場合、親身に話を聞いてくれるため、こちらの感情を話しがちなのですが、そうではなく、過去にあった具体的事実について話をした方が効果的なことが多いです。

 

 

6.調停委員が注目しているかどうかはメモを取るかどうかで判断できる


 

 調停委員によってはほとんどメモを取らない調停委員もいるのですが、大体の調停委員は、こちらの言い分を詳しくメモすることが多いです。

 ただ、調停を重ねていくと、これまでと重複した話やこちらの感情に関わる話は段々と調停委員もメモを取らなくなっていきます。

 こちらの話を親身に聞いてくれるからと思って色々と話をしても、調停委員がほとんどメモしていないという場合には、調停委員は「あまり新しい話は出ていない」とか「今回の問題を解決するに当たって参考にならない」と考えている可能性がありますので、注意が必要です。

 

 

7.まとめ


・調停委員は色々な有識者がなる。

・ごく少数ではあるが、調停委員によっては強烈に離婚を勧めてくる調停委員もいる。

・いずれにせよ、離婚に応じたくないのであれば、離婚に応じないとはっきりと発言することが最重要である。

・ヨリを戻したい理由や改善策を質問されることもあるので、事前に準備しておくと安心である。

・ヨリを戻したいとの意見を述べることは決してあなたの「わがまま」ではない。

・調整型の調停委員だと奥様の離婚理由等の詳細を語ってくれないことも多いので注意が必要である。

・調停委員の関心の高さは、メモの量で分かることも多い。

 

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(28)】相手からの離婚調停(6)―改善策の組み立て方

2024.08.12更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.夫婦円満を希望している場合には、改善策は早めに示した方が良い


 既に調停書類があなたの手元に届いていると言うことですので、もう既に相当期間が経過してしまっているケースが多いと思います。

 その意味では、改善案は早めに示した方が良いです。

 早めに対応しませんと、相手方の気持ちは一層離れていく危険性があるからです。

 

 

2.大きな枠組みとしては当面別居前提の方が良い


 あなたとしては一刻も早く自宅に戻ってきて欲しいと思うかもしれませんが、そのような気持ちを正面からぶつけすぎてしまいますと、相手から見て「覚悟を持って別居をしたのに理解していない」とか「軽く見ている」と感じてしまうリスクがあります。

 そのため、改善案を示すにあたっても、まずは、当面別居でも致し方ないという姿勢で考えた方が良いです。

 

 

3.改善策の大きな視点は「感謝」と「反省」


 改善策を作成するに当たって私がよくアドバイスさせていただくのは「感謝」と「反省」というキーワードです。

 感謝というのは、同居中先方がいることで感謝すべきこと、感謝の気持ちを素直に伝えてこなかったこと等を記載することになります。他方、反省については、特に相手の方で離婚を思い立った事情に関しての反省を主に記載していくことになります。

 

 

4.「感謝」を視点にした改善策


 以下は一つの例ですので、実際に改善策を示すに当たっては、ご自身の同居中の生活での出来事をしっかりと振り返った上で検討していただいた方が良いです。

 

(1)妻から離婚調停を起こされたケース(あなたが夫側のケース)の例

 例えば、普段の奥様の家事・育児への感謝を視点にした場合、以下のような改善策が考えられます。

①週末も自宅でごろごろしており家事の手伝いが疎かになっていたという場合には、今後しっかりと家事の手伝いをすることを記載したりします。

②また、仕事が忙しく家庭にいられる時間が少なかったという場合には、業務量が少ない部署への異動届を出したとか、昨今の働き方改革の影響で残業が減ったので家族との時間を共有できるようになった旨を記載したります。

 

 また、週末も含めて奥様が家事で多忙で自分の時間を作ることができなかったような場合には以下のような改善策が考えられます。

①月1回は奥様が友人との会食等ができるよう時間を作る。

②奥様が以前習っていた習い事、今後始めたいような趣味がある場合には、それを応援する。

 他にも、こちらの家事のスキルを磨くために料理教室に通うようになったと言った点を記載することもあります。

 

(2)夫から離婚調停を起こされたケース(あなたが妻側のケース)の例 

 例えば、普段の夫側の仕事や経済面での感謝を視点にした場合、以下のような改善策が考えられます。

①夫の収入に甘え過ぎていたというような場合には、あなたの方でもパートで働くなどして経済的負担をしていくといったことを記載したりします。

②また、夫の仕事が忙し過ぎて過労気味だというような場合には、転職や部署移動などについても、相談に乗ることなどを記載したりします。

③合わせて、夫の収入に甘え過ぎて、普段の生活費支出が増えているようであれば、今後は節約に努めるといったことを記載したりします。

 

 

5.反省を視点にした改善策 


 

(1)推測しつつ改善策を提案する

 前述したとおり、改善策は出来る限り早めに提示した方が良いため、相手側から離婚理由等を尋ねる前に提示した方が良いと言うことになります。

そのため、相手が期待する改善策とずれる可能性はあるのですが、相手が考える離婚理由をある程度推測しながら、改善策を提示していくことになります。

 なお、このような推測に当たっては夫婦喧嘩の際に言われたこと、対立することが多かった点等を思い出しつつ、時には夫婦のLINEのやり取り等を振り返りつつ推測していくことになります。

 

 一例としては以下のようなものが考えられます。

①飲酒して夫婦喧嘩になることが多かったというような場合には、禁酒する。

②つい言い過ぎてしまうことが多いというような場合には、今後暴言を言わないこと、その旨の誓約書を作成する。

③業務が忙しく、仕事のイライラを家庭に持ち込んでいたという場合には、部署移動して業務負担を軽くする。

④小遣いが少ないとか家計の支出に疑義があるといった場合には、家計管理を相手に委ねる。

⑤育児に力を入れ過ぎていて相手のことを疎かにしていたというような場合には、家族で出かける機会を増やす。

 

(2)思い切ってクリニックに受診することも考えて良い

 このような反省を視点にした改善策としては、これまでに相手から心療内科に受診して欲しいと行った要望が出ていた場合には、クリニックに受診してしまうというのが端的な改善策と言えます。クリニックを受診して、明確な精神疾患等ではないとのお墨付きを得られるようであれば、こちらにとっても有利な材料にもなります。

 

 なお補足しますと、クリニック受診については以下のような言い分を相手がおっしゃっていることがあります。

①同居中DVやモラハラ発言等があったので、DV加害者プログラムを受講して欲しい

②感情の起伏が激しいので、アンガーマネジメントのプログラムを受講して欲しい

③性欲が旺盛であったりセクハラ発言が多かったので、セックス依存症等のおそれがあるので、受診して欲しい

④飲酒すると豹変するのでアルコール依存症の治療を受けて欲しい

 もちろん、クリニックに受診するから、相手の言い分を鵜呑みにするというのとは異なります。相手の言い分を真摯に受けとめつつ、医学的に客観的な診断を受け、ある意味「無実を証明する」ために受診するという視点で臨んだ方が良いと思います。

 

 また、何らかの加害者プログラムにすぐに受講するというのではなく、まずは、アンガーマネジメントのカウンセリングから受け始めるということでも良いと思います。

 まずは、行動を開始するということが重要だと思います。

 

(3)クリニックに行くと不利にならないか?

 クリニックに行くという話をしますと、「自分の非を認めることになって不利になりませんか?」という質問を受けることが多いです。

 ただ、例えば、一度や二度手を挙げてしまったことを認める前提であったり、多少声を荒げてしまったことを認める前提であれば、クリニックに行くこと自体が不利になる可能性は低いと思います。

 なお、奥様のキャラクターとして、こちらがクリニックに行ったことについて執拗に揚げ足取りしてくるような方のような場合には慎重な対応をした方が良いこともあります。

 

 

 6.どんな形で伝えるか


 

 あなた自身の気持ちを伝える方法としては、直筆の手紙をしたためて渡すという方法が一番効果的だと思います(現実的には、お互いに弁護士を立てているという場合には弁護士経由で渡すという形になります)。

 ただ、残念なことに、相手側が手紙を受け取らない、手紙を受け取っても、弁護士預かりのままになるというケースもあります。

 そのような場合には、離婚調停の答弁書に概要を示すなどの方法も試していくことになります。

 

 

7.あまり長文にし過ぎないこと


 

 手紙の方法で渡すとなると、あなたの思いが溢れてきて、ついつい長文になってしまうことがあります。

 ただ、あまり長文にしますと、あなた自身の気持ちを押しつけてしまう危険性がありますので、あまり長文にすることは望ましくありません。

 そのため、どんなに長くても手紙の分量としては、2,3枚程度にとどめるのがベターだと思います。

 

 

8.まとめ


・改善策はできるだけ早めに提示する方が良い。

・基本的な視点は当面別居前提の方が良い。

・改善策は「感謝」と「反省」を視点にすると良い。

・改善策は手紙にしたためて示すことが多い。

・手紙は長文にし過ぎないこと

 

 

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【絶対に離婚したくない(27)】相手からの離婚調停(5)―調停当日に向けての臨み方

2024.07.29更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※
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1.調停なんて初めて 


 

 突如離婚調停の書類が届き、そこには、裁判所に行かなければならない日時が指定されている。あなたは「調停なんて初めて」「裁判所に行くことも初めて」といった方が多いのではないでしょうか。

 離婚調停は人生で何度も経験するものではありませんから、調停が人生初という方が大半でしょう。

 そんなあなたの緊張を少しでも和らげるべく、調停の席での振る舞い方等について以下の通り解説致します。

 

 

2.「とりあえず話を聞きに行ってみよう」という姿勢は厳禁


 率直に言いますと、申立人側が提出した調停申立書を読んでも、奥様がなぜ離婚したいのかの理由等はほとんど分かりません。そのため、まずは「調停に出席して申立人側が何を言っているのか確認してみよう」と考える方も多いかと思います。

 しかし、これでは、対応が後手に回ってしまいますので、このような姿勢は厳禁です。

 申立人側と一緒に生活している中で、申立人側が不満に思っている点等は、ある程度察しがつくと思いますので、申立人側が離婚したい理由をある程度想像した上で対応を検討しておく必要があります。

 

 

3.弁護士との打ち合わせの実施


 あなたが既に弁護士を雇っている場合には、その弁護士との打ち合わせを実施して、調停当日までにどのような準備をしておくとよいのかを確認して下さい。

 事案によって抑えるべきポイントは異なりますので、あなたが雇った弁護士が一番的確なアドバイスをくれると思います。

 なお、まだ弁護士を雇っていないとか、ひとまず雇う予定がないという場合でも、弁護士の無料相談を利用するなどして、対応の仕方は相談しておいた方が安心です。事案に応じて対応の仕方やポイントは異なってきますので、あなたの事案に則したアドバイスをもらうようにして下さい。

 

 

4.調停は面接試験ではない


 皆さん初めての調停ということで緊張してしまうと思いますし、不安も多いと思います。

 ただ、調停は面接試験ではありません。

 たまに、「調停で間違ったことを言ってしまうと一貫の終わりだ」などと考えている方もいるのですが、そのようなことはありません。多少間違ったことを言ってしまったとしても、「緊張して言い間違えてしまいました」と伝えれば問題ないのです。

 

 

5.色々と悩み過ぎない


 心配だから色々なサイトを見てしまうというのはある程度仕方ないのですが、各サイトによって書きぶりが違うなどして、あまり色々なサイトを見てしまいますと、余計に悩んでしまうという事態に陥りかねません。

 調停の臨み方について詳しく書いてあるサイトを2,3個見れば、おおよそのところは分かりますので、それ以上のサイトを見るのはオススメしません。

 また、サイトによっては、今後の見込み等について書いてあるサイトもありますが、あなたの事件は世界で一つしかないあなただけの事件なので、そのようなサイトの記事に影響されすぎないようにして下さい。

 そして、調停当日の対応も同じでして、あなた自身が「相手がそこまで言うのであれば、離婚するかどうか悩んでしまいます」と言うような言葉を発してしまいますと、調停委員も対応に苦慮することもあります。あなた自身が復縁を強く希望しているようでしたら、「わかれたくないです」としっかりと話した方が、調停委員も安心すると思います。

 

 

6.確認したいことは予めメモしておく


 例えば、奥様が突如別居し、離婚調停の書類だけが届いたといったケースの場合、何が何だか分からないまま調停に出席するというケースもあると思います。

 離婚調停なので離婚するかどうかが大きな問題であることは間違いないのですが、あなたなりに確認したい点、気になる点があると思いますので、その様な点は予め箇条書きでメモをしておくのがよいと思います。

 ただ、調停の時間は限られていますので、確認したい点が沢山ありますと確認しきれずに終わってしまうということになりかねません。

 

 そのため、確認したい点は多少絞り込んだ方が良いですし、その中でも優先順位に応じて聞く順番は予め決めておいて下さい。

 例えば、①子どもといつ会えるのか、②子どもは新しい学校になじめているのか、③子どもの習い事はどうしていくつもりなのか、④そちらの生活費はいくら払えばいいのか……というように、確認したい事項を箇条書きにして、優先順位を付けてみて下さい。

 このような準備をすることで、あなた自身の頭の整理にもつながると思います。

 

 

7.当日の臨み方


(1)感情的にならない

 調停委員は、あなたの表情や口調をよく見ています。

あなたがあまり感情的になってしまいますと、それが「あなたの普段の姿」と誤解されてしまう虞があります。

 そのため、調停委員の誤解を受けないように、冷静に話をするようにして下さい。

 少なくとも調停委員に対して喧嘩腰になることは厳禁です。

 

 もちろん調停の席ではあなたの気分を害するような内容の話も出てきますので、そのときに常に冷静でいることは難しいと思いますので、多少声が大きくなってしまうことは仕方がないと思います。その際にも、すぐに切替えて冷静に戻る姿勢が重要だと思います。

 

(2)「何か演技をする」とかではなく自然体が一番

 たまに私が相談に乗っていますと、「調停の席では泣いた方が有利だと聞いたのですが、涙を流した方がいいのですか?」とか「調停委員を味方につけるためによい振る舞い方とかはありますか?」などと質問を受けることがあります。

 しかし、その場限りの対応は、調停委員にも見透かされてしまうことが多いので、自然体で話す方が結果的に良いことが多いです。

 前述の通り、あまり感情的になるのは控えた方が良いのですが、変に演技をしようとしない方が良いです。

 

(3)自分の正しさを証明しようとしない

 相手の言い分が身勝手なものの場合、どうしても、「こっちの言っていることの方が正しいんだ」「相手は嘘ばかりを言っている」と言いたくなってしまいます。

 しかし、あなたは、そんな身勝手な配偶者とヨリを戻したいと考えているのですから、自分の正しさを証明しようとすることは逆効果です(あなたの正しさが、配偶者を更に追い詰めてしまったり、息苦しくしてしまいかねません)。

 そもそも、調停は、お互いに一定の妥協をして話し合いを続けるという手続きですので、「私の言っていることが正しいんです」「正しいということを大前提に手続きを進めて下さい」と意固地になってしまいますと、手続きが円滑に進まなくなっていってしまいます。 

 

(4)必要な範囲でメモを取る

 また、調停委員は随所で大事な話をしますので、必要に応じてメモを取るようにして下さい。もちろんメモばかり取っていては話が進まなくなってしまうため避けるべきですが、何もメモを取っておりませんと肝心なことを聞き逃してしまうと言うことになりかねません。

 

 

8.当日の服装


 特にラフすぎる服装でなければ、普段の服装で構いません。スーツでなければならないということもありません。

「それだと広過ぎて分かりにくい」と言われることも多いので、イメージとしては、男性ですと、休日出勤するときの服装、女性ですと、小学校の保護者会に行く時の服装といった形で準備すれば問題ありません。

 

 

9.まとめ


・調停なんて初めてという方が大半である。

・とりあえず調停に行ってみようと言う姿勢は厳禁である。

・調停は面接試験ではない。

・色々なサイトを見すぎて悩みすぎないように注意。

・確認したい点等は予めメモにまとめておく。

・調停当日は感情的にならず冷静に話をする。

・調停当日は何か演技をするではなく、自然体で臨むと良い。

・調停では自分の正しさを証明しようという姿勢は控えた方が良い。

・調停の席では必要な範囲でメモを取った方が良い。

・当日の服装はラフすぎなければ普段着で構わない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(26)】相手からの離婚調停(4)―答弁書等の書き方

2024.07.22更新

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1.まず何を裁判所に提出すればよいかを把握する


 裁判所から送られた書類には色々な書類が入っているため、整理する必要があるのですが、あなたが提出しなければいけないのは、①答弁書(夫婦関係調整)、②子についての事情説明書(お子さんがいる場合限定)、③進行に関する照会回答書(相手方用)、④連絡先等の届出書の3つになります。なお、東京家庭裁判所ですと、この4つの書類なのですが、他の家庭裁判所の場合、書式の種類や形式が違うことがあります。そのため、あなたが調停を起こされた家庭裁判所が東京家庭裁判所ではない場合、書式が異なる場合がありますので、以下の解説は、「あくまで参考」としてお読みください。

 

 それぞれの書類の意味合いについて概説しますと以下の通りになります。

 まず、答弁書は、申立人からの離婚調停申立に対してどのように考えるかを記載する書類になりまして、あなたが提出する書類の中で一番重要な書類になります。

   次に、「子についての事情説明書」は、今回の夫婦の紛争との兼ね合いで、お子様の現状に関する概要を記載する書類です。答弁書の次に重要な書類になります。

 「進行に関する照会回答書」は、今後の調停事件の進め方について、あなたの意見を記載する書面になります。裁判所としては、あなたに裁判所に出席してもらわないことには調停を進められないわけですから、あなたが調停に出席できるか、出席できない場合、いつなら出席できるのか等について、あなたの意見を求めているのです。

 

 最後に「連絡先等の届出書」は、裁判所からの今後のあなたへの連絡方法を記入する書類になります。

 このように「進行に関する照会回答書」と「連絡先等の届出書」は、事務連絡文書ですので、そこまで重要な書類ではありません。ただ、裁判所としても事件の整理にあたって必要な書類ですので、必ず調停期日の1週間前までには提出するようにして下さい。

 

 

2.答弁書等の書き方


 

(1)そもそも答弁書は出した方が良いのか

 たまに私が質問を受ける中には「調停の日に裁判所に行って話をすればいいから、こんなもの出す必要ありますか?」とか「相手は弁護士を付けているから素人が書面を書くと揚げ足を取られそうだから、出さない方が良いんじゃないですか?」といった意見を聴くことがあります。

 

 ただ、弁護士としては「答弁書は提出すべきです」という返答になります。と言いますのは、答弁書を提出しないと、調停委員は、あなたがどのように考えているのかがさっぱり分からないということになってしまいますし、裁判所としては、1週間前までに答弁書を提出して欲しいと要請しているわけですから、答弁書を提出しないという行動は、「裁判所の要請には従えない」という誤ったメッセージを送ることになりかねません。当然調停委員の印象も悪くなってしまいます。

 

 なお、調停手続に一切欠席すると言う人もいるようですが、調停の席に着かないと、相手の言い分が分からなくなってしまいますし、相手は蔑ろにされたと感じてしまいますので、得策とは思えません。

 いずれにせよ、答弁書を提出しないと言うことにはデメリットしかないので、必ず事前に裁判所に提出するようにして下さい。

 

(2)答弁書を書き始める前に

 あなたの人生にとって裁判所から書類が届くという事態は稀な経験だと思いますので、調停申立書を受け取った瞬間に、焦ってしまう、何も考えられなくなってしまうだとか、逆に申立人に対する怒りの感情を抑えられないと感じてしまうなど、冷静でいられなくなってしまうことは普通のことです。

 ただ、だからといって、そのときの感情にまかせて答弁書を記載しては絶対にいけません。

 答弁書は裁判所に提出する書類で、申立人側も目にする可能性が高い書類ですので、慎重に記載する必要があるのです。

  なお、どうしても答弁書にどのように記載して良いのか判断ができないといった場合には、答弁書の書き方だけでも弁護士に相談してみる、ということも検討してみてください。

 

 (3)答弁書の書き方

 1)まずは、離婚するかどうかにチェックを入れる。

  あなたとしては相手とのヨリを戻したいと考えているのですから、「円満に調整してほしい」のチェックボックスにチェックを入れる必要があります。

  なお、調停の場で相手の離婚意思が固いようなら改めて考えてみようと思っている、という場合でも、現時点でヨリを戻したいと考えているのでしたら、「円満に調整してほしい」のチェックボックスにチェックを入れて下さい。 

 2)意見覧の記載

 「円満に調整してほしい」「離婚したい」「検討中」のチェックボックスのすぐ下に「意見」の覧があります。1行だけしか記載できない仕様になっていますが、あなたの意見があれば記載して下さい。

 例えば、円満に調整してほしい場合「妻に対する愛情もありますのでヨリを戻したいと考えています」とか「子どものためにもしっかりと円満な家庭を築いていきたいと思っています」や「先日の夫婦喧嘩では乱暴な言葉を使ってしまいましたが反省しているのでやり直すチャンスをもらいたいです」といった形で簡潔に記載します。

 

 なお、調停委員に伝えたい項目が沢山ある場合には、答弁書に「別紙」を設けて、円満調整に向けての意見等を記載する方法や、答弁書とは別に陳述書を作成するといった方法もあります。ただ、あまり詳しい事情を記載してしまいますと、逆に相手を刺激するという危険性もありますので、極力「意見」の覧に収まる範囲で記載した方が良いと思います。

 

 3)他の条件に関する部分

  あなたは夫婦のヨリを戻したいと考えているのですから、「(付随申立について)」と書かれている以降の(1)から(7)については特に記載せず、大きく斜線を引いて下さい。

  親権や養育費等は、離婚することが決まった場合に決定する事項ですので、あなたが離婚を希望しないのに親権等について意見を述べるというのは行動として矛盾してしまいます。ですので、(1)から(7)の箇所には斜線を引いておくのです(なお、空欄で提出してしまうと、裁判所の方から「書き漏れですか?」という問い合わせが来てしまうことがありますので、斜線を引いておいた方が良いでしょう)

 

 4)「2 申立書の『申立ての理由』について」の覧

  まず、同居日と別居日は、離婚原因も絡む重要な日付ですので、申立人が記載してきた同居日と別居日の記載に誤りがないかしっかりと確認して下さい。

  皆さん離婚するかどうかや離婚の付随条件にばかり頭がいってしまい同居日と別居日については「だいたいこんなもんでしょ」と簡単に回答してしまうこともあるのですが、重要な日付ですのでしっかりと確認する必要があります。

 

  次に「申立の動機」に対する意見については、申立人側の主張が事実無根だという場合には、簡潔にあなたの意見を記載して下さい。例えば、暴力を振るったことがないのに調停申立書に「暴力を振るう」とチェックされている場合には、そのような事実がないことを記載することになります。

  なお、あなたの希望として夫婦円満を希望する以上、あまり申立人側の申立動機に対して詳しい反論をしてしまいますと、そのことが夫婦不和の原因にもなりかねませんので、欄に収まる程度に簡潔に記載するようにして下さい。

 

 5)「3 その他」の覧について

  ここには、これまで記載した中で記載しきれなかった事項について記載することになります。

  よくありますのは、夫婦として円満を希望しているけれども、お子様と面会できていないことだけは不満があるので、お子様との面会について協議させてほしい、といった要望を記載することになります。

 

(4)「子についての事情説明書」の書き方

 1)「1 現在、お子さんを主に監護している人は誰ですか。」

  ここには、今現在お子さんを育てているのが、申立人なのか相手方(あなた)なのかをチェックして下さい。

 

 2)「2 お子さんと別居している父または母との関係について、記入してください」

  ここには、これまでの面会交流の様子を記載することになります。実際に実施されているのかどうか、及び、実施内容に鑑みて、チェックボックスにチェックを入れて下さい。

  なお、現状面会交流が実施できていない場合には、その理由など(「こちらから会わせて欲しいと希望しても妻側が同意してくれない状況です」とか、逆に「こっちから会って欲しいと伝えているのに、いつまでも夫側からの回答がありません」)を空欄部分に記入して下さい。

 

 3)「3 お子さんに対して、離婚等について裁判所で話し合いを始めることや、今後の生活について説明したことはありますか」

  別居のことや離婚のことなどについて、あなたの口からお子さんに直接説明したことがあるのかどうか、説明したことがあるようであれば、その内容などを記載することになります。

 

 4)「4 お子さんについて、何か心配していることはありますか」

  お子さんの健康や情緒、登校・登園状況、交友関係(友人とのトラブル等を含む)などについて心配していることがあるようであれば記入して下さい。

 

 5)「5 お子さんに関することで裁判所に要望があれば記入してください」

  面会交流のことやお子様の健康や情緒の関係で注記すべき事項などがあれば記載して下さい。

 

(5)「進行に関する照会回答書」の書き方

 1)「1 別紙期日通知書の期日に出席できますか」

  まず、期日通知書の日時に出席できるか、あなたの日程を確認して記入して下さい。

  なお、「第1回期日には出席した方が良いですか?」という質問をよく受けますが、あなたの方でも弁護士を立てる予定で、弁護士の都合がつかないような場合には、第1回期日は欠席にして下さい(弁護士だけ欠席で、あなた本人のみは出席ということは通常せず、あなたも弁護士も欠席することになります)。

  逆に、あなたの仕事の都合がつき、調停期日にはあなた自身でまずは対応してみたいと考えているような場合、第1回期日は出席するようにして下さい。

 

 2)「2 最初の期日に欠席する場合、その後の期日について希望曜日をお書き下さい」

  あなたが第1回期日に出席できる場合、この「2」は空欄のままで大丈夫です。

  あなたが第1回期日に出席できない場合には、なるべく沢山候補日を記入して下さい。なお、調停の時間は、午前中は午前10時(但し、相手方は10時30分集合の場合あり)から12時頃まで(延長の可能性あり)、午後は午後1時15分(但し、相手方は1時30分や45分集合の場合あり)から3時15分頃まで(延長の可能性あり)になりますので、その時間帯を視野に、出席できる日付を複数記入して下さい。

 

 3)「調停での話合いは円滑に進められると思いますか」

  この覧は参考程度の記載項目ですので、あまり神経質にならずに記載してもらって大丈夫です。

  なお、離婚するかどうかや、その付随条件で意見対立が激しいようであれば「進められないと思う」にチェックして下さい。

  申立人側の言い分の詳細が今一はっきりしない場合には「分からない」にチェックする形で問題ありません。

 

 4)「4 申立人の暴力等がある場合には、記入して下さい」

  あなた自身が申立人側から暴力を受けた経験がある場合には記入して下さい。夫婦喧嘩がヒートアップして多少お互いに手を出し合う形になったというような話であれば、とりたてて記載しなくてよいです。

  この記載項目は、例えば申立人側が凶器を持参してくる危険性等もあるという場合には、調停委員も身の安全を考えなければならないといった問題もありますし、あなた自身に危害が加わらないような配慮も検討しなければならないので、設けられている項目だからです。つまり、調停のときに関係者の身に危険があるかどうかの参考にする記入項目ですので、特に申立人が調停室で暴れるような危険性がなければ、この箇所の記載に神経質になる必要はありません。

 

 5)「5 裁判所に配慮を求めることがあれば、その内容をお書き下さい」

  これは、前述の「4」の延長なのですが、相手からの暴力を受ける危険性等がある場合に、集合時間を相手とずらすなどの配慮を求めるといった記載をします。

 

(6)「連絡先等の届出書」の書き方

 あなたが裁判所からの書類を受け取りたい場所と、電話番号を記載する書類になります。

 通常は「申立書記載の住所のとおり」にチェックを入れ、あなたの携帯電話番号を記入することになると思います。

 

 

3.まとめ


・答弁書は決して感情的に記載してはいけない。

・夫婦円満を希望する場合、答弁書にはあまり書き過ぎない方が良い。

・「同居日」と「別居日」の覧は軽視されがちだが、重要な日付なのでしっかりと確認して記載する必要がある。

・「子についての事情説明書」は答弁書に次いで重要な書類なので慎重に記載する必要がある。

・調停期日の1週間前までに届くように、答弁書、「子についての事情説明書」「進行に関する照会回答書」、「連絡先等の届出書」を提出する必要がある。

 

 

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>【弁護士秦の夫婦関係修復事例2◆夫側の事例◆】妻から申し立てられた夫婦円満調停で無事円満成立したケース

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(25)】相手からの離婚調停(3)―調停申立書の読み方

2024.07.15更新

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1.まずは、調停申立書を取り出す。


 

 裁判所から送られてきた書類は何枚もの紙が入っており理解しにくいかと思います。そこの中からまずは、調停申立書を取り出す必要があります。

 右上の方に「夫婦関係等調整調停申立書 事件名(離婚)」と書いてある書類が入っていると思いますが、それがいわゆる離婚調停申立書になります。申立人本人か、申立人が雇った弁護士の(赤い)判子が押されている書類が離婚調停申立書です。

参考までに、最高裁判所ホームページ上の調停申立書記載例はこちらになりますので、必要に応じてご参照下さい(なお、こちらの最高裁のサイトは、離婚調停を申し立てる側からの記載方法の解説になりますので、ご留意下さい)。

 【裁判所書式】離婚調停申立書記載例

 

 

2.離婚調停申立書を読み解く


 離婚調停申立書に記載されている情報は限られているのですが、そこから読み取ることができる情報はありますので、読み取れる情報は全て読み取っておく必要があります。以下では、離婚調停申立書を読み解く上でのチェックポイントについて解説します。

 

(1)申立人が弁護士を雇っているかどうかのチェック

 調停申立書を見れば、申立人が現時点で弁護士を雇っているのか雇っていないのかを知ることができます。

 調停申立書1頁目の右上の方に(赤い)判子が押されている箇所があると思うのですが、①その判子が本人のものであれば、現時点で弁護士を雇っていない、②その判子が弁護士のものであれば、既に弁護士を雇っているということが分かります。

 相手が弁護士を雇っているという場合、こちらも弁護士を雇うことを考えた方が良いので、まず最初に確認しておきたい項目になります。

 

(2)申立人の住所欄

 配偶者が自身の居場所をこちらに秘密にしているケースですと、調停申立書の申立人の住所欄を見れば、その居場所を探ることができると考える方も多いのですが、残念ながらほとんどの場合、現在の居場所を書いていることはありません(もちろん、こちらにその居場所を明かしているケースでは、現住所を住所欄に記載することの方が多いです)。

 そのため、申立人住所欄を見ても、その住所は分からないことが多いです。

 

 実際上の記載方法としては、夫婦が一緒に住んでいたときの自宅住所(住民票上の住所)が記載されていることが多く、「虚偽記載」ではないかと思われる方もいると思いますが、裁判所の実務ではこのような便法が認められておりますので、この点を追求してもあまり効果がないのが実情と言えます。

 なお、申立人が希望すれば、申立書に現住所を記載しないという手法について、裁判所は特に綿密な審査等はせずに認める扱いですので、「妻の住所欄に現住所が書かれていない」イコール「裁判所が、妻の言い分をそのまま認めた」ということはありませんので、この点はご安心下さい。

 

(3)2頁目の「申立の趣旨」

 調停申立書の2頁目を開きますと、上から中央あたりまで縦線が一本伸びており、その右側に何箇所かチェックが入っていると思います。このチェック部分に書かれている項目が、申立人が調停の「議題」にしたいと考えている項目になります。合わせて、申立人のご意見もそこに書かれていますので、これを見れば、申立人の要望の概要をつかむことができます。

 

 以下詳しく各項目に対して解説していきます。

①離婚について

相手は今回の調停で離婚を求めていますので、その項目にチェックがついています。

 

なお、あなたが調停の席で一度でも「離婚も仕方ないと思います」と発言してしまうと、離婚することが前提で話がドンドン進んでいってしまいますので、この点の発言は慎重さが求められます。

また、あなたとして離婚に断固反対ということでしたら、調停の場では親権や養育費・財産分与の議論はしないというスタンスになります。親権や養育費・財産分与は、離婚する場合に決定すべき事項なのであって、離婚しない場合には決める必要がない項目になるからです。

 

②調停申立書の「申立の趣旨」「(1)」~「(3)」にはお子様のことが書かれています。

前述の通り、あなたは夫婦のヨリを戻したいと考えていますので、離婚することを前提として、親権や養育費等の議論をする必要はありませんし、するべきでもありません。

ただ、申立書を読むと現状の申立人の考え方が読み取れますので、読み取る際の注意点という観点から解説します。

 

申立人が親権獲得を希望しているのであれば、親権を獲得することを前提として、あなたに養育の支払いを求める内容になっていると思いますので、親権を申立人に渡してよいのか、養育費の金額は、あなたの収入から支払い可能な金額なのかどうか等については考えておいても良いかと思います。

なお、養育費に関しては「相当額」の覧にチェックが入っている場合がありますが、これは、「裁判所の実務で一般的に用いられる算定表の数字で構わない」と言う意味になりますので、あなたの方でもインターネット等にて算定表の数字を確認して、支払い可能な数字なのかを確認してみて下さい。

ちなみに、申立人側が積極的にお子様とあなたとの面会を希望していない場合には「(2)」の項目に何もチェックが入っていません。そのため、逆にあなたの希望としてお子様に会いたいという希望が強い場合には、調停の場などで強く面会交流を求めていくことになります。

 

③財産分与について

 財産分与とは、夫婦として同居生活を送っている間に蓄えた財産を折半するというものです。

 この点の申立人の要望は「申立の趣旨」の「(4)」に記入されます。ただ、この項目には「相当額」にチェックが入っていることが多いです。「相当額」の意味合いについては、通常「別居時の夫婦の財産を半分にして欲しい」という趣旨で用いられることが多いです。

 財産分与はお互いが財産状況を開示しないと正確な数字を算出できないため、「相当額」と記入することが多いのが実態です。

 

④慰謝料について

 慰謝料とは、夫婦として同居生活を送っている間に精神的苦痛を受けた場合、それを慰謝すべき金額として要求するものです。通常は、あなたが不倫をしたり、相手に暴力を振るったような場合にのみ発生するものになります。

 この点の申立人の要望は「申立の趣旨」の「(5)」に記入されます。

 この慰謝料額については、500万円だとか1000万円だとかの高額の金額が記入されていることもありますが、申立人側が感情的に金額を記載しているというケースも多くありますので、そのような場合、こちらとしてすぐに金策に走らなければいけないと言うことはありません。

 

⑤年金分割について

 年金分割とは、離婚するまでの婚姻期間中の年金加入記録を折半するというもので、実務的には0.5で折半することが定着しておりますので、「申立書の趣旨」の「(6)」にも「0.5」の覧にチェックが入っていることが通例かと思います。

 

(4)2頁目の「申立の理由」

①上段について

 「申立の理由」の上段には「同居を始めた日」と「別居をした日」の覧があります。これらの日付は今後の夫婦関係調整にあたっての重要な日付になることもありますので、申立人の記入に間違いがないかしっかりと確認して下さい。

 

②下段について

 ここに「申立ての動機」の動機がチェックされていますが、これらが「申立人が離婚したいと考えている理由」の部分になります。

 普段あまり聞き慣れないものとして「8 精神的に虐待する」という項目がありますが、これは、いわゆるモラハラ行為等を指しており、代表的なものは暴言や物を壊すといった行動になります。

 

 いずれにしましても、このチェック項目だけでは、申立人側の不満の概要は分かっても、いつのどのような行動が問題になっているのかといった具体的内容が何も分かりません。なぜこのような簡単な記入に限定しているのかというと、あまり詳しい内容を記載してしまうと、夫婦間の感情的対立が激化する危険性がありますので、簡略な記載に限定しているのです。

 あなたの方としては、調停期日当日には、各項目について詳しい説明を求められることもありますので、心当たりがある項目については、記憶喚起を図っておく必要があります。

 

 

3.まとめ


・調停申立書の1頁目の赤い判子が押されている箇所を見れば、申立人側が弁護士を雇ったか雇っていないかが分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の趣旨」を見ると、申立人側が希望する離婚条件が分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」上段の同居開始時期と別居日は重要な日にちなのでしっかりと確認する必要がある。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」下段に、申立人側が離婚を希望する理由が書かれているが、抽象的なので、詳しい内容は調停期日まで分からない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(24)】相手からの離婚調停(2)―そもそも、離婚調停って何だ?

2024.07.08更新

弁護士秦

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1.まず、「離婚調停」がどんな手続きか把握する


 あなたは突如家庭裁判所から封筒が届いて混乱していると思いますが、調停に臨むにあたっては、「離婚調停」というものがどのような手続きなのかを把握する必要があります。
 離婚調停とは、一般的には、ご夫婦間で直接のお話し合いが難しい時に、家庭裁判所の調停委員を間に入れてご夫婦間の話し合いを円滑に行いお互いの合意を目指す手続などと言われたりします。

 調停手続きの大きなポイントは、①裁判所で手続きするけれども、裁判所から何らかの結論を強要される手続きではないということ、②あくまで話し合いの手続であるということになります。
 しかし、この説明だけでは漠然としていて離婚調停のイメージを掴むことは難しいと思いますので、できる限り具体的に離婚調停というものがどのようなものなのかをご説明します。

 

 

2.まずは、第1回期日対応の基本


 まず、調停手続きの概要の解説に入る前に、①そもそも、仕事の都合でどうしても第1回期日に参加できない場合どうすればよいか、②答弁書等の提出を要するかについてご説明します。
 仕事の都合で第1回調停期日に出席できない場合には、その旨を裁判所書記官に連絡するか、もしくは、進行に関する照会回答書が封書に同封されている場合には、同回答書に欠席である旨記載すれば問題ありません。
 次に、答弁書の提出ですが、こちらの基本的な考え方を示すことができますので、必ず提出するようにして下さい。

 それでは、以下にて調停手続きがどのような手続きなのかを解説していきます。

 

 

3.調停委員ってどんな人?


 離婚調停は、裁判官1名と調停委員2名(男性1名、女性1名)の合計3名が間に入って執り行われます。と言っても、裁判官は複数の事件を担当していますので、実際に調停室で直接話をするのは基本的に調停委員2名と言うことになります。

では、この調停委員というのはどういう人なのかと言うことですが、原則として40歳以上70歳未満の人で、社会生活上の豊富な知識経験や専門的知識を有する裁判所職員になります。弁護士、大学教授や裁判所書記官OBなどが調停委員になるなどしています。

 

 

4.離婚調停ってどこで行うの?


 離婚調停は家庭裁判所の建物内の一室で行われます。調停委員に、ご夫婦の自宅などに出向いてもらって話し合いをするということはできません。

 テレビのドラマなどを見ていますと、いわゆる裁判所の法廷の場面が映し出されていますが、調停が行われるのは一般的な法廷ではなく、イメージとしては会議室のような場所で行われます。
 会議室と言っても何十人も座れるような広い会議室ではなく、6人掛け(いわゆる誕生日席2席を加えると8名が座れる程度)のテーブルが入って多少余裕がある程度の部屋とイメージしていただければ分かりやすいと思います。

 

 

5.離婚調停って何時行うの?


 調停が開催される期日は完全事前予約制なので、予め日時を決定しておき、その日に裁判所に足を運ぶという方式になります。
 調停が行われるのは平日の日中ということになりますので、土日祝日や夜間に調停を行うことはできません。そのため、平日お仕事をされている方は、調停の日はお仕事を休むか早退するなどして出席することになります。

 この調停期日は一方的に裁判所から決められることはなく、基本的にはご夫婦の都合を聞いて日時が決定されます(但し、第1回調停期日については、相手方の都合は聞かずに日時が決定されます)。

 ただ、担当調停委員によって担当曜日が決まっているのが一般的ですので、その曜日の中から日時を選択するという形式が一般的です。つまり、担当曜日が月曜日と木曜日というように決まっているという場合、月曜日か木曜日の中から期日を選択して行くことになります(逆に言うと水曜日を希望しても水曜日に調停を開催することは難しいということになります)。

 

 

6.1回の調停はどのくらいの時間がかかるの?


 1回の調停は2時間程度で終わります。ただ、話し合いの状況に応じて2時間よりも長くなったり短くなったりすることもありますので、2時間というのは一つの目安だと考えて下さい。

 

 

7.当日の調停の流れは?


 調停の流れは裁判所や調停委員によって差があるので画一的ではないのですが、一般的には以下のような流れで進むケースが多いです。

①ご夫婦は別々の待合室で待機
        ↓
②調停委員に名前を呼ばれるので、その場(待合室内)で出席確認
        ↓
③申立人のみが調停室に残って調停委員と話し合い(30分程度が目安)(こちらは待合室で待機)
        ↓
④申立人が調停室を退室し、入れ替わりでこちら側が調停室に入室、こちら側のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)
        ↓
⑤相手方が調停室を退室し、入れ替わりで申立人が調停室に入室、申立人のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(相手方は待合室で待機)
        ↓
⑥申立人が調停室を退室し、入れ替わりで相手方が調停室に入室、相手方のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)
        ↓
⑦次の調停の日時を決定し、同時に次回までの宿題などの確認をして、その日の調停は終了

 

 

8.調停室内に入れるのは誰?


 よく自分一人で調停室に入っても上手に話ができるか不安があるので、ご自身のお姉様やお母様も同席させて欲しいとおっしゃる方もいます。
 しかし、調停の手続は非公開の手続(御本人以外の方の傍聴などが認められていないということです)ですので御本人以外が入室することはできません。
 なお、弁護士に事件を依頼した場合には、弁護士も調停室に同席することができますので、その面では安心です。

 

 

9.調停が開催される頻度は


 調停の期日の間隔は1か月程度になります。ただ、夏期や年末年始は調停を行わない時期がある関係で、この時期の調停の間隔は1か月以上空くことが多いです。

 

 

10.調停が成立した場合の拘束力は?


 よく「調停が成立すると判決と同様の拘束力がある」と言われたりします。
そのため、例えば養育費をいくらだとか、財産分与をいくらと定めたのに、相手が約束を破った場合、強制執行をして強制的に取り立てることができるようになります。強制執行とは裁判所の手を借りて、相手の預金や給料からお金を取り立てることをいいます。
 そのため、調停での結論には強い効力が認められています。

 

 

11.まとめ


・調停手続きは、裁判所の中で行われる話し合いの席である
・調停委員は、原則として40歳以上70歳未満の人で、社会生活上の豊富な知識経験や専門的知識を有する裁判所職員である。
・調停は、家庭裁判所の中の調停室(会議室のような形)で行われる。
・調停は平日日中に行われる。
・調停は交互に話を聞かれる形で進行する。
・調停期日の間隔は1か月から1か月半程度である。
・調停が成立すると、その内容には確定判決と同様の効力がある。

 

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(23)】相手からの離婚調停(1)―まず何をすべきか

2024.07.01更新

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1.まずは気持ちを落ち着かせる


 

 相手から離婚の調停を起こされてしまい、家庭裁判所からの書類が届くと、あなたも驚き、動揺してしまうと思います。

 裁判所から直接書類が届くなどと言うことは一般の方からしますと「人生初めてのこと」という方も多いと思いますので、当然の感想だと思います。

 ただ、このように動揺したままでいますと、冷静な対応をすることができず、後で後悔することにもなりかねません。

 

 そのため、まずは「気持ちを落ち着かせる」ということをアドバイスさせて頂くことが多いです。

 その際には、「何もしていないと余計に落ち着かない」という方も多いので、インターネットで検索するという方も多いと思いますが、検索の際には、弁護士が直接執筆した記事か弁護士が直接監修した記事を中心に確認してみてください(残念ながら、弁護士執筆・監修でない場合、誤った情報が記載されていることがあります)。

 また、気持ちを落ち着かせるために、ご両親や兄弟姉妹など身内の方に相談するという方もいるようです。

 

 

2.まずは場合分け


 

 一口に「相手から調停を起こされた」と言いましても、①配偶者本人が調停を申し立てているケースと②配偶者が弁護士を雇って調停を申し立てているケースの2種類があります。

 この①と②のどちらなのかによって、対応の仕方も変わってまいりますので、場合分けして解説します。

 なお、裁判所から届いた調停申立書の1ページ目に押されている判子を見れば、弁護士が就いているかついていないかを判別できます。配偶者本人の判子が押されている場合には、まだ弁護士が就いていないということになりますし、逆に、弁護士の判子が押されている場合には、もう弁護士が就いているということになります。

 

 

3.【ケース①】配偶者本人が調停を申し立てている場合に、まず何をすべきか


 

(1)まずは本人へのコンタクト

 今あなたの置かれている状況として、配偶者に連絡することができないとか、好ましくないように思われる、と言うような状況があれば別ですが、そうでない場合には、本人に直接コンタクトをとるのが端的だと思います。

 まだ同居中であれば、配偶者と直接話をすることは比較的容易だと思いますし、仮に別居していたとしても、唐突に調停を起こされたような場合には、直接コンタクトをとって、相手の真意や希望を確認した方が良いと思います。

 

(2)直接本人にコンタクトを取ることが難しい場合には、両親等事情を知ってそうな人物にコンタクトする

 前述のように、これまでの経過等を踏まえて、あなたが直接配偶者に連絡を取ると悪影響を及ぼしそうな場合には、直接の連絡は控えた方が良いかもしれません。

 その場合には、相手の両親や兄弟姉妹など、相手が普段から仲良くしていて、事情を知ってそうな人物にコンタクトをとることを考えてみてください。

 そのような人物にコンタクトをとって事情を確認することで、相手本人の真意や希望などを確認できる可能性がありますし、その人物を通じて、間接的に配偶者本人と話をすることができるかもしれません。

 

(3)相手に調停を取り下げてもらう

 相手と直接話をしたり、相手の両親などを介して話ができるようでしたら、敢えて調停の席で議論する必要性がありません。

 そのため、相手と話をして、相手が調停を取り下げてくれるようであれば、取り下げてもらった方が良いです。調停が取り下げられれば、一旦、調停の手続きは終了しますので、あなたが、調停のために裁判所に足を運ぶ必要もなくなります。

 

 

4.【ケース②】配偶者が弁護士を雇って調停を申し立てている場合、まず何をすべきか


 

(1)まず夫婦関係修復に詳しい弁護士に相談する

 相手が弁護士を雇って調停を起こしている場合、その弁護士が調停を取り下げてくれるという可能性は極めて低いです。

 また、相手が弁護士を雇っている状況ですので、こちらも専門的な知識を得て対応していく必要があります。

 そのため、まずは、夫婦関係修復に詳しい弁護士に相談する必要があります。

 なお、注意点が二つありまして、①一つ目が「弁護士だったら誰に相談しても良い」というわけではないこと、②二つ目が、すぐに依頼するかは慎重に考えた方が良いという点です。

 

(2)「弁護士だったら誰に相談しても良い」というわけではない

 残念ながら弁護士の中には、「これまで全く夫婦関係修復の事例を扱ったことがない」とか「夫婦関係修復というのは法律家(弁護士)のする仕事ではないと思う」といった弁護士もかなりの数います。更に残念なことに、弁護士によっては、あなたが夫婦関係修復を強く希望していても、「相手が強く離婚を希望しているようなら、修復は無理だろうから、良い条件で離婚した方があなたの利益になります」ということを言ってくる弁護士もいます。

 そのため、相談する場合には、夫婦関係修復に詳しい弁護士に相談する必要があります。

 

(3)すぐに依頼するかは慎重に考えた方が良い

 既に調停になってしまっていますので、こちらも弁護士を立てて臨んだ方が良いとは思います。

 ただ、率直なことを言いますと、依頼者と弁護士との間には相性があると感じることが多く、相性が悪い弁護士にお願いしてしまった場合、途中で弁護士を変更するという事態が生じかねません。

 その場合、またイチから新しい弁護士に事情を説明しなければならなくなりますし、弁護士費用の重複して支払わなくてはならなくなります。

 そのため、私は、すぐに弁護士の契約をするのではなく、慎重に検討した上で契約した方が良い旨をお伝えすることが多いです。

 

(4)気持ちをしっかりと持つ

 次に、当職がアドバイスさせて頂くことが多いのは「気持ちをしっかりと持つ」ということです。

 相手が弁護士を立てて、しかも調停を起こしてきたと聞いてしまいますと、「もうヨリを戻すのは無理かも」と思ってしまうときがあると思います。

 しかし、あなたが希望する夫婦円満・家族円満がお子様も含めた家族全体にとって良いことなのであれば、簡単にあきらめず、気持ちを強く持って臨むことが肝要かと思います。

 

(5)第1回調停期日の日程キープ

 まだあなたのスケジュール上、第1回調停期日として指定された日時に裁判所に行くことが可能なようでしたら、その日程はキープしておいて下さい。

 離婚調停を起こされると、どのように対応した方が良いのかとか、調停がどんな手続きなのかといった点で頭がいっぱいになってしまって、日程をキープすることを忘れてしまうという方もいらっしゃいますので、早めに日程をキープしておくと安心だと思います。

 

 

5.インターネット検索の注意点


 

 あなたにとっても調停というのは重要な手続きなので、色々とインターネットで検索してしまうと思います。

 ただ、前述の通り、弁護士が直接執筆もしくは監修したものでない場合、誤った情報が記載されている可能性があります。そのため、弁護士が直接執筆もしくは監修した記事を見るようにして下さい。

 また、私の方からは「いろいろと調べ過ぎない」ということをアドバイスさせて頂くことが多いです。

 

 と言いますのは、弁護士はそれぞれの経験に基づいて弁護活動を行いますし、それをインターネット記事等に記載していますので、「弁護士によって微妙に言うことが違っている」という場合があります。

 そのため、あまり沢山のインターネット記事を見ると、A弁護士の記事にはこう書いてあったのに、B弁護士の記事にはこう書いてあったということで混乱してしまうということが起きるのです。

 

 

6.まとめ


・相手が調停を起こしてしまった場合、まずは気持ちを落ち着かせるということが大事である。

・もし、相手がまだ弁護士を立てていない場合には、相手本人へ直接コンタクトを取ることを考えてみると良い。

・もし、相手と直接話をすることができた場合には、調停を取り下げてもらうと良い。

・相手が弁護士を雇っている場合、調停を取り下げてもらうことは極めて困難である。

・相手が弁護士を雇っている場合、まずは夫婦関係修復に詳しい弁護士に相談すべきである。

・合わせて第1回調停期日の日程はキープしておく必要がある。

・インターネット検索し過ぎると逆に混乱することもあるので、ほどほどにした方が良い。

 

 

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>【弁護士秦の夫婦関係修復事例1◆夫側の事例◆】婚姻費用分担調停と並行して協議し、夫婦円満で決着したケース

>【弁護士秦の夫婦関係修復事例2◆夫側の事例◆】妻から申し立てられた夫婦円満調停で無事円満成立したケース

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(22)】こんなに小さい子供がいるのに離婚が認められることはあるのか?

2024.01.22更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.こんなに小さい子供がいるのに離婚が認められることはあるんですか?


 私が相談に乗っておりますと、特に女性側から「うちの子はまだ1歳なのに、そんな子供を見捨てていったような夫の離婚請求が認められてしまうんですか?」といった質問を受けることもあります。
 逆に、男性側から「うちの子はまだ小さく、日々大きく成長するので、それを見守れないのは本当につらい。妻の離婚を認めてしまうと連れ去り得のようになってしまい、おかしいんじゃないですか?」といった質問を受けることもあります。
 あなたからすると、大切な小さな命を授かって、お子様も含めた新しい家庭のスタートだというところで、別居や離婚だという話が急に出てくるわけですから、とても納得できないとお考えになるのは当然のことかと思います。
 以下では、小さなお子様がいらっしゃるといった事情がどのように離婚に影響するのかといった点を含め、解説していきます。

 

 

2.離婚の問題は、協議・調停・裁判のスリーステップで進む


 お子様と離婚との関係についてお話する前に、離婚の問題がどのようなステップで進んでいくのかについて簡単にご説明します。
 離婚についてご夫婦が同意している場合には、離婚届を提出さえすれば離婚することができます。
 そのため、通常は、まず、離婚協議を行い、離婚届を提出する形の離婚を目指します。
 このような当事者同士の話し合いが上手くいかない場合には、裁判所の離婚調停という手続きを取ります(なお、相手の弁護士のスタンスによっては、ほとんど話し合いはせずにいきなり調停を起こしてくる弁護士もいます)。

 離婚調停は、裁判所の中で行われる手続ではありますが、「話し合い」の手続ですので、離婚するかどうかについてお互いの意見が折り合わない場合には、調停で話をまとめることはできません。
 このように調停が不成立になってしまいますと、裁判で離婚すべきかどうかについて白黒つけていくということになります。
 なお、日本の法律では、調停前置主義が取られていますので、調停を経ずにいきなり裁判を起こすことはできません。
 このように、離婚の問題は、協議→調停→裁判というステップを踏んで進んでいくことになります。

 

 

3.協議・調停の際にはあなたの意思次第


 前述のような協議または調停のステップでは、あなたはあなた自身の気持ちを率直に述べて良いので、あなたが「絶対に離婚したくない」と考えているのでしたら、そのように発言することで問題ありません。
 前述の通り、調停は、裁判所内で手続きが行われるのですが、何らか強制を受ける手続きではありませんので、あなたが「絶対に離婚したくない」と発言している中で、離婚を強制されることはありません。

 

 

4.裁判になった場合


 相手が離婚裁判を起こしてきた場合でも、あなたが「絶対に離婚したくない」と考えているのでしたら、そのように主張することはもちろん自由です。
 しかし、離婚裁判は、裁判官が、「この夫婦は法律上離婚すべき事情がある」と判断してしまいますと、判決で離婚が認められてしまいます。つまり、あなたが離婚を拒否していても、離婚を強制されてしまうのです。
 そのため、離婚裁判がスタートした場合には、あなた自身が離婚の裁判で有利なのか不利なのかを弁護士に相談するなどして、今後の対応を慎重に見極める必要があります。

 

 

5.こんなに小さい子供がいるのに判決で負けてしまうことはあるのか?


 あなたからしてみると、こんな小さい子供がいるのに裁判官が離婚を命じることはあり得ないでしょう、とか、そんな無情な判決が出るはずない、とお考えになるかもしれません。
 しかし、離婚が認められるかどうかは、民法770条の離婚理由が認められるかどうかで判断されることになります。
 代表的なものは、不貞行為があったとか、暴力行為があって相手が怪我をしてしまったといった事情になるのですが、最終的には様々な事情を考慮して、離婚の当否について結論が出されます。特に重視されるのは以下の点です。
① 夫婦関係の悪化を示す事情としてどのような事情があるのか
② そのような事情についてどのような証拠があるのか
③ 別居期間がどの程度の期間に及んでいるのか
④ 同居期間の年数

 小さいお子さんがいらっしゃるということは、当時は、相手方もお子様を一緒に育てていこうという意識があったのでしょうから、上記の①の事情に影響する事情と言えます(別居付近でもそこまで夫婦の関係は悪化していなかったはずだという意味で、こちらに多少有利な要素になるという意味です)。ただ、夫婦の間での様々な事情の中の一つの事情という位置づけになりますので、「これが決め手で離婚しなくて済む」ということは難しいと思います。
 いずれにしましても、離婚裁判で勝てそうなのか負けそうなのかは、様々な事情を考慮しなくてはなりませんので、詳しくは弁護士に相談するなどして慎重に見極めた方が良いかと思います。

 

 

6.まとめ


・こんな小さい子供がいるのに離婚が認められるのか?というのは当事者の心情としては非常によく理解できる。
・離婚の協議・調停の手続きであれば、あなたが離婚したくないと言えば、離婚を避けられるので、小さいお子様の為にも離婚を回避するという方向で良い。
・離婚裁判になると、判決で離婚を強制される可能性がある。
・小さいお子さんがいるということは一つの事情にはなるが、それほど決め手となる事情にはなりにくい。
・離婚裁判で勝てそうか、負けそうかという点は、これまでの様々な事情を考慮して決められるので、弁護士に相談するなどして慎重に見極めた方が良い。

 

 

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>【弁護士秦の夫婦関係修復事例1◆夫側の事例◆】婚姻費用分担調停と並行して協議し、夫婦円満で決着したケース

>【弁護士秦の夫婦関係修復事例2◆夫側の事例◆】妻から申し立てられた夫婦円満調停で無事円満成立したケース

>【弁護士秦の夫婦関係修復事例3◆妻側の事例◆】妻側からの夫婦円満調停申し立て-一旦は諦めたものの最終的に夫婦円満で解決したケース

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(21)】離婚裁判は避けるべきか、立ち向かっていくべきか

2024.01.08更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.離婚調停と離婚裁判の関係


 離婚裁判に対してどのように対応していくのかを解説する前に、離婚調停と離婚裁判の関係についてお話します。

(1)調停前置主義
 現在の離婚事件については、調停前置主義が取られていますので、いきなり裁判を起こそうと思っても、認められません。
裁判を起こす前に必ず調停を経なければならないものとされています(このようなシステムを調停前置主義と言います)。

(2)離婚については自動で審判には移行しない
 婚姻費用や面会交流についての調停は、調停で話し合いがつかない場合には、手続きは審判に移行します。審判手続きは調停手続きの延長なので、これまでに提出した資料はそのまま引き継がれて、調停委員長である裁判官がそのまま審理を担当することになります。
 これに対して、離婚調停については、調停が不成立になっても自動で審判に移行することはありません。つまり、離婚調停が不成立になると、そこで一旦手続きは終了し、離婚を希望する側は、改めて離婚裁判を起こす必要があります。調停と裁判との間には連続性がありませんので、調停で提出した資料は引き継がれませんし、基本的に担当裁判官も変更になります。

 

 

2.結局、離婚裁判って何だ?


 離婚裁判がどのような手続きなのかについては、下記のブログを参考にして下さい。
※離婚裁判って何だ?
 抽象的に、「離婚裁判になると大ごとだ」とか「離婚裁判は大変な手続きだ」と考えている方は多いのですが、具体的なところはよく分かっていないという方も多いので、上記のブログをご覧になって、しっかりと離婚裁判がどのようなものなのかの理解を深めていただければと思います。

 

 

3.調停で事件を終わらせるか、裁判をするか


 前述の解説で、離婚裁判がどのようなものなのかについてはある程度理解していただけたかと思います。
 ただ、実際に離婚裁判に臨むとなると、事前に予測していた以上の精神的負荷もありますので、以下で、離婚裁判のメリットとデメリットについてお話しします。

(1)【離婚裁判のメリット①】はっきりと白黒つけられる
 離婚裁判の一番のメリットは、「明確に結論が出る」ということかと思います。
 要するにあなたのご夫婦で、法律上離婚しなければならないような理由があるのかないのかということが明確に判決に書かれます。
 例えば、別居期間がまだ短いとか、相手が有責配偶者であるといった場合には、相手からの離婚請求に対して判決で「NO」と言ってもらえると、今後のこちらの動きに弾みがつく面もありますし、相手に対して「自分の行動が間違っていた」と自省を促すきっかけになることもあります。

(2)【離婚裁判のメリット②】相手の離婚理由が鮮明化する
 離婚裁判になると、相手もあなたと離婚したい理由を「出し惜しみなく」すべて主張していくことになります。
 離婚調停ですと時間に限界があることもあって、相手の本当の離婚理由がはっきりとしないとか、相手の離婚理由についてどのような証拠を保有しているのかが分からないというケースも往々にしてあります。
 これに対して、離婚裁判になると、相手方は、離婚理由について「出し惜しみなく」全て主張してきますので、相手の正確な離婚理由を把握できることもあります。

(3)【離婚裁判のメリット③】あなた自身が裁判所に行かなくて良い
 離婚調停の場合、調停期日には必ずあなたが出席していたと思います。
 これに対して、離婚裁判の場合、書面や資料に基づく主張が中心になりますので、代理人弁護士のみが出席し、あなた自身が出席する必要はありません(但し、最後の尋問手続きだけはご出席いただく必要があります)。
 私の依頼者の中には「調停の日が近くなると気が重くなります」とか「調停の前日はあまり良く眠れません」とおっしゃる方もいらっしゃって、調停に出席すること自体が大きな精神的負荷になっている方もいます。
 離婚裁判の場合には、弁護士だけが出席すればよいので、そのような精神的負担はありません。

(4)【離婚裁判のデメリット①】誤解や誇張に基づく主張が多い
 いざ離婚裁判に臨んだ場合に、私の依頼者がよく口になさるのが、「嘘ばかりが書かれている」ということです。
 相手も離婚で勝訴するために必死に離婚理由を絞り出しますので、残念ながら、誤解や誇張に基づいて言い分を述べてくるケースはかなり多い印象です。
 そうしますと、あなたとしては、相手のそのような誤解や誇張に基づく言い分を目にしなければならないものですから、それだけでも相当な精神的負荷になります。

(5)【離婚裁判のデメリット②】相手の言い分が書面化される
 前述の通り、離婚裁判は、書面中心で審理が進んでいきますので、込み入った事情などについても全て書面化して提出していくことになります。
 このことは、前述のように相手の主張する離婚理由が透明化されるというメリットがある反面、こちらも書面でしっかりと見せつけられるというデメリットもあります。
 しかも、その書面が前述の通り誤解や誇張に基づく言い分も多いものですから、「見るのが嫌になる」とおっしゃる方も多いです。

(6)【離婚裁判のデメリット③】紛争の長期化が避けられない
 離婚裁判終了までどの程度の期間がかかるのかについては、離婚の他の条件がどの程度争われるのかにもよるのですが、紛争がかなり長期化してしまうのは事実です。
 もちろん、あなたの方で「絶対に離婚したくない」という強い決意があるのでしたら、裁判期間は「避けられない期間」という位置づけもできるのですが、前述の通り、離婚裁判中、相手方からは心無い言葉などが繰り返し主張されますので、精神的につらい期間が長期的に続くという側面は否定できません。

 

 

4.最終的にどうするかはあなた次第


 これらのメリットとデメリットを総合的に考慮して、「やはり現状離婚には応じられない」とか「子どものためにも離婚に踏み切るべきではない」ということでしたら、離婚裁判に立ち向かっていくべきということになります。
 逆に、「これ以上の長丁場は避けたい」ということでしたら、離婚裁判に立ち向かっていくのではなく、調停段階で離婚に応じたり、離婚裁判の早期の段階で離婚に応じるというスタンスを取ることになります。
 もちろん、いずれの対応を取るのかについては、あなたの今後の人生にも関わる重大な決断ですので、じっくりと慎重に見極めて欲しいと思います。

 

 

5.いつ頃離婚裁判が起こされるか?


 前述の通り、離婚調停と離婚裁判とは別の手続きなので、離婚調停が不成立になってもすぐに離婚裁判を起こしてこない人もいます。ある程度別居期間を稼いでから離婚裁判を起こした方が有利だと考えて、一定期間を置いてから離婚裁判を起こす人もいるのです。
 なお、相手がいつ頃離婚裁判を起こすのかについては、離婚調停の終盤になると、先方の方から意見を言ってくるケースも多いです(このまま離婚調停が不成立になった場合には、即刻裁判を起こすということをアナウンスしてきたりするという意味です)

 

 

6.まとめ


・離婚調停と離婚裁判とは全く別の手続である(審判のように自動移行する手続きではない)。
・離婚裁判には以下のようなメリットがある。
① 明確に白黒つけることができる
② 相手の離婚理由が鮮明化する
③ あなた自身が裁判所に行かなくて良い(最終の尋問の際は別)
・離婚裁判には以下のようなデメリットもある。
① 誤解や誇張に基づく主張が多い
② 相手の言い分が書面化される
③ 紛争が長期化する
・今後どのように対応するかは慎重に検討した方が良い
・離婚調停が終わってもすぐに離婚裁判を起こさない人もいる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(20)】別居期間が長くなると離婚になるって本当?

2023.12.25更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
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1.別居期間が長くなると離婚になるって本当?


 私が相談を受けておりますと、「別居期間が長くなると離婚になると聞きましたが、本当ですか?」と質問してくる方もいます。
 このような質問の趣旨として、別居期間が一定期間に達してしまうと、パートナーが離婚届を提出すると(あなたが署名押印しなくても)それが役所で受理されてしまうと誤解されている方も多くいますが、そういうことではありません。
 別居期間が長くなったとしても、あなた自身が離婚届に署名押印しない限り、勝手に離婚届が受理されるということはなく、あくまで裁判をしない限り、離婚は認められません。
 そのため、あなたの知らないところで、離婚届が受理されるということはありませんので、この点はご安心ください。
 なお、一概に「別居期間が長くなる」と言いましても、ケースによってどのくらいの期間を置けばいいのかといった点が異なってきますので、ケースに分けて解説していきます。

 

 

2.【ケース1】相手が有責配偶者の場合


 相手、すなわち離婚を要求してきている側が有責配偶者というケースです。
(1)有責配偶者って?

 まず、有責配偶者の意味を確認しておきますが、有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させる主な原因を作った配偶者のことを指します。
 このように書きますと、あなたにとって、婚姻関係を破綻させたのは相手の方だから、相手が悪いとおっしゃるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。
 即ち、有責配偶者の「有責性」が認められるためには、①相手が第三者と浮気したとか、②あなたに暴力をふるって大怪我をさせたとか、③あなたの生活が直ちに立ち行かなくなることを認識しながら、何か月も生活費を渡さず生活を著しく困窮させたとかの特別な事情が必要になるのです。

 俗な言い方をしますと、相手が「非常に悪質と言えるような特別の事情があるケース」である必要があるのです。

 

(2)相手の有責性の証拠が必要

 また、このような事情については、しっかりとした裏付けが必要になります。

 たまに私のところに質問を受けることもあるのですが、「相手が他の異性と関係を持ったストレートな証拠はないんですが、二人でレストランに入った証拠はあるんです」と相談されることがあります。しかし、不貞の証拠としては、パートナーが他の異性と性的関係を持ったことの証拠が必要になりますので、それでは証拠不足になります。

 その意味で、「しっかりとした証拠」は皆さんがお考えよりもハードルが高いことも多いです。
 このような事情がしっかりと裏付けに基づいて認められるようでしたら、相手は有責配偶者ということになりますので、相手からの離婚請求は簡単には認められません。
 基本的には、未成年のお子さんがいる間は離婚請求が認められませんし、そうでなくとも、別居期間が7年程度は続かないと離婚請求は認められないと言われています。

 

 

3.【ケース2】あなたが有責配偶者の場合


 前述の通り、有責配偶者の条件はかなり厳しいのですが、あなたがそれに当てはまってしまう場合には、相手からの離婚請求は特段の別居期間がなくとも認められてしまいます(前述の通り、こちらが争った場合には、相手は離婚の裁判を起こす必要はあります)。
 なお、このような場合でよくご質問を受けるのが、「確かに私が浮気してしまったのは事実ですが、今からもう10年以上前の話なので関係ないんじゃありませんか?」とか「私が浮気したのは、夫のモラハラがひどく、家庭に居場所がなかったことが原因なので、このような場合は私だけの責任ではないと思います」といったものです。
 それぞれ解説していきます。

(1)有責行為がかなり以前の話の場合
 あなたの有責行為がかなり以前の事情だとしても、有責行為があったことは事実ですから、依然こちらがかなり不利だという状況に変化はありません。
 ただ、あまり古い話の場合、相手もあなたの有責行為を証明する十分な証拠を残せていない場合もあり、そのような場合には、証拠不十分として相手の離婚請求が認められなくなる可能性もあります。

(2)相手の行動や言動に影響されている場合
 相手の行動などが、それ自体有責行為と言えるようなひどい内容の場合は別として、そうでない場合には、残念ながら、あなたの有責行為が正当化される可能性は低いと思います。
 このようにお話しますと、「相手の問題行動はお咎めなしで、こちらのことばかり責められるのはおかしい」とおっしゃる方も多いのですが、仮に相手からのモラルハラスメントがあったとしても、そのことで浮気に及ぶ人が多いのかと言いますと、残念ながら少数だと思います。また、前述の通り、有責行為に該当する行為は、夫婦関係に重大な悪影響を及ぼすような事情ばかりですので、その責任が重たくなるのは致し方ない面があります。

 

 

4.【ケース3】どちらでもないケース


 上記の「ケース1」と「ケース2」のいずれでもないケースです。多少はどちらかに問題があったとしても、前述の「有責性」までは認められないケースです。
 実際に離婚が争われるケースでは、この「ケース3」の事案が大半を占めるのではないかと思います。
 このような場合、お互いに決定打がないため、いつまでも離婚が認められないということではなく、裁判を経る必要がありますが、一定の別居期間が経過すると、離婚を認める判決が言い渡されることになります。
 一定の別居期間が経過しますと、もう夫婦としてやり直すことは難しいだろうということで、離婚を認める判決が出てしまうのです。

 なお、この「一定の別居期間」というのは、これまでの同居期間やお子様の人数や年齢などが影響してきますが、3,4年の別居期間を指すことが多いです。
 ちなみに、同居期間が30年とか、かなり長期間の場合には、「別居期間が10年くらいないと離婚は認められませんよね?」などと誤解されている方もいますが、基本的には、別居期間3,4年のうち、「4年に多少近付くかもしれない」という程度の差とお考えになった方が良いと思います。

 

 

5.別居期間が重要視される理由


 これまで解説して参りました通り、別居期間がどの程度の年数に及んでいるのかという事情は、離婚裁判においては非常に重要な指標になります。
 その理由としては、①同居中の行動や言動は客観的な証明が難しいのに対して、別居期間は客観的に動かしがたい事情であること、②夫婦としての愛情が残っているようであれば、一旦別居しても再び同居を再開するはずであり、別居が長引いているということは、それだけ婚姻関係が傷ついていると一応言えることなどが挙げられます。

 まず、①について詳しく説明いたしますと、同居中の行動や言動は、普段の生活の中で録音機械で常に録音しているという人はまずいないと思いますので、どのような行動があったのか、言動があったのかを正確に証明することはほぼ不可能だと思います。また、離婚裁判の場になりますと、離婚を請求する方は、離婚するために事実をより相手に不利な内容で追及していきますし、離婚を請求された側は、逆に自分に有利な内容で主張を展開しますので、言い分が大きく食い違うということもままあります。
 そのため、裁判官としても、双方の言い分を聞いていても、どちらの方が正しいのかがよく分からない、ということが多いのです。
 そのような場合に、全てのケースで「判断ができない」としてしまいますと、いつまでも離婚が認められなくなってしまいます。

 他方で、別居期間は、お互いが一緒に寝泊まりしなくなった期間ということなので、お互いの認識が大きくずれないことの方が多いと思います。
 このように、別居期間は、客観的に動かしがたい事情として、裁判官が判断のよりどころにしやすい事情と言えるのです。
 また、②については、夫婦としてのコミュニケーションなどが取れているケースですと、パートナーの一方が家を出たとしても、コミュニケーションの結果、自宅に戻るというケースも多いので、裏を返すと、別居期間が長く続いているということは、夫婦関係がもうやり直せない状況に至っていると一応言えるということです。

 

 

6.まとめ


・別居期間が長くなってもそれだけで離婚できるということではなく、裁判を経る必要がある。
・相手が有責配偶者の場合、相手からの離婚請求はかなり認められにくくなる。
・逆にこちらが有責配偶者の場合、特段の別居期間がなくとも相手の離婚請求は認められてしまう。
・どちらにも有責性と言えるほどの大きな落ち度がない場合、3,4年の別居期間が経つと(裁判を経る必要があるが)離婚が認められることになる。
・このように別居期間が重要な指標になるのは、客観的に動かしがたい事情であること、それだけ長期間別居が続いていること自体が夫婦としてやり直せない状況と一応言えるということが理由である。

 

 

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