離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(7)
2015.09.28更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき
これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。
今回は、前回ご説明させていただきました財産分与について引き続き説明させていただきます。
2.財産分与って、どういう財産が対象になるの?
財産分与という場合、どのような財産が対象になるのでしょうか。前回ご説明いたしましたとおり、相続などで一方の配偶者が取得した財産は財産分与の対象にはなりません。以下では、夫婦共同生活の間に築いた財産であることを前提にお話しさせていただきます。
なお、別居時点のご夫婦の財産で価値があるものは基本的に全て財産分与の対象になります。
ですので、以下の説明は、財産分与の対象としてチェック漏れがないかどうかの確認用、また、各財産の評価方法の注意点等の確認用としてご活用下さい。
①まず、大きな財産としては、土地・建物といった不動産があります。
これは、自宅に限らず、投資用マンションなどとして購入したものも含みます。
不動産の評価につきましては、近隣の不動産業者に対して「値段によっては自宅を売却するかもしれないので、無料で簡易査定書を作って欲しい」と依頼すれば無料で簡易査定書を作ってくれますので、その金額を参考にするのがよいと思います。
なお、住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンの額は不動産の価値から差し引かれます。
②次に、自動車・二輪車があります。
自動車については年式があまり古いものは価値が付かないことが多いのですが、高級車や外車については年数が経っていても価値がつくことがありますので、財産分与の対象にすることも検討されて下さい。
なお、自動車の評価については、その自動車を購入したディーラーに相談してみるとおおよその価値を教えてくれますので、参考になります。
自動車等についても、ローン残がある場合には、自動車の価値から差し引かれることになります。
③預貯金
普通預金だけではなく、定額預金・定期預金・貯蓄預金いずれも財産分与の対象になります。
なお、お子様の名義の預金は、お年玉などを貯蓄している預金などは財産分与の対象外です。
財産分与の対象になるのは、別居日時点の預金残高になります。
④積立金
勤め先の財形貯蓄等の積立金も財産分与の対象になります。
財産分与の対象になるのは、別居日時点の積立残高(それまでの利子を含む)になります。
⑤保険
別居日時点にご夫婦がかけていた保険(生命保険、入院保険(積立式の場合)、学資保険等)も財産分与の対象になります。
なお、保険については別居日時点の解約返戻金(かいやくへんれいきん)が基準になります。その保険をかけている保険会社に対して「平成○年○月○日(別居日)の解約返戻金の金額を教えて欲しい」と電話をかければ、その金額を教えてもらえます。
掛け捨ての保険は財産分与の対象外です。
⑥金融商品
証券会社を通じて取引をしている株式・投資信託・FXその他の金融商品は、別居日時点のものは財産分与の対象になります。
なお、上場株式のみではなく、家業として会社を経営している場合のその会社の株式も財産分与の対象になります。
また、信用金庫に預金を持つ際には、信用金庫に対する出資を求められますが、その出資が夫婦同居中に行われた場合には財産分与の対象になります(ただし、その出資額は数千円程度と少額なことが多いです)。
⑦宝飾品・ブランド品等の高級品・骨董品等
宝飾品・ブランド品または骨董品などは値段が付かないことの方が多いと思いますが、値段が付くようなものは財産分与の対象になります。
⑧退職金
退職金を財産分与の対象に含めるかどうかは、婚姻期間の長さ、退職までの年数等の事情によりますが、定年年齢までかなりの期間がある場合には、財産分与の対象に含めないことの方が多いように思われます。
⑨家財道具等
家財道具や家電は、ほとんど値段が付かないことが多いでしょうから、通常は財産分与の対象品目には掲げないことが多いです。
⑩借金
先ほど住宅ローンや自動車ローンが差し引かれることについては触れましたが、夫婦共同生活から生じた債務は財産分与の対象になります。
ただし、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合、マイナス分の分与は行いません。
8.その他に差し引くものは?
前述の通り、夫婦共同生活の期間中に取得した財産であっても相続財産などの財産は、どの方が独自に取得した財産ですので財産分与の対象外になります。
また、独身時代にパート収入を貯金した預金なども、夫婦になる前の蓄えですから、財産分与の対象外になります。
9.財産分与の割合って?
実務の現状をお話しいたしますと、財産分与ではご夫婦で折半(分与割合5割)とするのが通常です。
多少奥様の家事が不十分であったり、旦那様の家事を一切していない期間があったとしても、分与割合は5割とされることが多いように思われます。
10.どうやって分けるの?
前述の通り「(別居時のご夫婦の財産-特有財産-婚姻前からの財産)÷2」という計算方法で、財産分与の金額は計算できますが、不動産をご夫婦のどちらが取得するのか、自動車はどうするのかなどについて決めなければなりません。
この場合にも、ご夫婦の話し合いでいずれがどの財産を取得するのかを決める必要がありますが、その際には以下のような点にも十分ご注意下さい。
①自宅を奥様の名義に変更する場合の注意点
自宅を奥様の名義にする場合、奥様はその自宅に住み続けることができます。
しかし、ご自宅に住宅ローンの残がある場合、住宅ローンは通常旦那様の名義で借りているため、旦那様が支払い続けなければなりません(通常銀行は、住宅ローンの名義変更を認めないことの方が多いです)。
旦那様からしてみれば、離婚後自分が住んでいない場所の住宅ローンを支払い続けなければならないと言うことに納得できるのかという切り口からの検討が必要になります。
また、旦那様が住宅ローンの支払いをストップしてしまった場合、その家は担保に入れられていますので、例え奥様に名義変更していても銀行が競売にかけることができますので、その意味では不安定な立場に置かれます。
財産分与にあたっては、このような点も注意する必要があります。
②学資保険等の名義変更
学資保険などはお子様の今後のためにかけていることが多いため、親権を取得した奥様の名義に変更するというケースも多いと思います。
ただ、学資保険は旦那様の名義で契約している場合、保険会社が奥様への名義変更を認めないこともありますので(旦那様のような定期収入がなければ保険加入を認めないというケースがあります)、この点は注意が必要になります。
11.離婚協議書に「財産分与」はどう表現するの?
例えば、財産分与によって不動産の名義を変更する場合には「甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を分与する。甲は、乙に対し、当該不動産について、本日財産分与を原因とする所有権移転登記手続をする。登記手続費用は、乙の負担とする。」といった書き方をします。
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