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離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(3)

2015.08.31更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 前々回のブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 そこで、前回は、離婚する時の親権者の決め方について掲載しましたので、今回は、養育費について掲載いたします。

 

2.養育費の算定表で決まりなんじゃないの?

 

 養育費といわれましても、皆様、「相場ってどのくらいなの?」と思われる方が多いと思います。インターネットを検索していただきますと、養育費の算定表なるものを発見することができると思います、これは一つの相場観を示すものと言えますが、この基準というのは絶対的なものなのでしょうか。

 

結論から申しますと、算定表は一つの目安にはなりますが、必ずしも絶対的なものではありません。

 

 ですので、算定表の額を一つの目安としながらも、ご夫婦が話し合って養育費の額を決定するのがよいと思います。

 

 ただ、離婚調停や裁判になった場合、算定表によって計算された金額は重要な指標になりますので、ご夫婦の対立が激化した場合には、算定表で計算された額の持つ意味合いは大きくなると思われます。

 

3.お子様のための現在の支出額は参考にならないの?

 

 お子様の養育費というものは、親の生活水準と同程度の水準の生活を維持させるための費用とも言えますので、ご両親の収入というものが重要な指標になります。前述の算定表も、ご両親の収入を基礎としています。

 

 そのため、お子様の現在の支出額というのは参考にはなっても、そのことが直ちに養育費増額に直結する事情にはなりません。

 

 もちろん、この場合にも、旦那様が、お子様の支出に見合った養育費を支払うと同意すればよいのですが、旦那様のご収入に見合わないような高額な支出になるような場合には、養育費の額について合意することは難しいように思えます。

 

 また、離婚調停や裁判では、現在のお子様の支出額は、それほど重視されない傾向にあると思われます。

 

4.養育費の終期

 

 では、ご夫婦の話し合いで養育費を毎月○万円と決めることができた場合、養育費はいつまで支払うようにするか決める必要があります。

 

 そもそも、養育費というのは成人するお子様に対する生活費等のための支出なのだから、成人までとする決め方もあるでしょうし、大学卒業が一般的になってきているため、22歳までとする決め方もあると思いますので、ご夫婦でよく話し合って下さい。

 

5.特別出費についての協議条項

 

 前述のような養育費は、お子様の普段の生活費や教育費等に充てられるものですから、突発的な高額支出は含まれていません。例えばお子様が大学に入学される際の入学金や学費、縁起の良くない話で恐縮ですが、お子様が事故に遭われたり大病にかかることも絶対にないとは言い切れません。

 

 このような特別な出費については、具体的にどの程度の額になるのか、実際に発生するのかが未知数な部分がありますので、実際に発生した際に話し合うという決め方をしておくことが多いように思えます。

 

6.養育費として一括金を支払わせることについて

 

 養育費については、離婚後年月が経ちますと、回収が困難になりやすい傾向があると言えます。

 

 そのため、旦那様にそれなりの蓄えがある場合には、離婚の際に一括金として今後5年分の養育費を支払わせるという方法もあり得ます。

 

 ただし、旦那様にほとんど蓄えがないという場合には、一括金の支払いを約束しても実際の支払いは困難でしょうから、履行されない危険性があります。

 

 ですので、一括金の支払いは、離婚時に旦那様にそれなりの蓄えがある時に限って話し合いをした方がよいように思えます。

 

7.養育費の金額をスライド式にすることについて

 

 私の事件処理の感覚から申しますと、スライド式は、それほど定着してはいないように思えますが、もちろん、ご夫婦がスライド式とすることについてご納得されるのでしたら、その様な形での合意も可能です。

 

 このスライド式とは、例えば、

・平成35年3月までは月額7万円、

・平成35年4月から平成41年3月までは月額10万円、

・平成41年4月から平成47年3月までは月額12万円

といったように、時期に応じて養育費の額をスライドさせていく決め方です。

 これは、旦那様の今後の昇進や昇給に伴う収入増を折り込んだり、お子様の成長に応じて生活費・教育費等が増額することを見込んだりと言ったことで採用されることがあります。

 

8.離婚協議書には「養育費」についてどのように表現すればいいの?

 

 以下では、オーソドックスな書き方についてご案内いたしますが「甲は乙に対し、平成○年○月より長男○○が、満22歳に達する月まで、養育費として金○○万円の支払義務があることを認め、これを毎月末日限り、乙の口座(○○銀行○○支店普通預金No.○○○○○○)に振込送金して支払う。振込手数料は甲の負担とする。上記の他、長男○○の進学・病気・事故等特別の出費を要する場合には、その負担につき甲乙間で別途協議する。」といった表現をします。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(2)

2015.08.24更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 前回のブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 そこで、今回は、離婚する際に決めるべきことの一つとして、親権について掲載いたします。

 

 離婚届を提出する際には、お子様の親権者をご夫婦のどちらにするのかを決めない限り、離婚届は受理されませんので、親権を決めないまま離婚すると言うことはできません。

 では、ご夫婦のいずれを親権者に決めるのがよいのでしょうか。

 

2.親権とは?

 

 では、このあまり聞き慣れない「親権」とはどのような権利なのでしょうか。

 

 多くの方は、(未成年の)「お子様を育てて行く権利」とお考えですが、親権の内容の半分のみ理解されているということになります。

 すなわち、親権とは、(未成年の)お子様を養育し育てて行くという意味の「身上監護権」と、お子様の財産を管理して行くという意味の「財産管理権」の2つの権利から構成されています。

 

 このように「親権」は、お子様の今後に重要な関わりを持ってゆく権利ですので、慎重にご夫婦で話し合う必要があります。

 以下、親権のお話し合いをする際に陥りがちな誤解等についてご説明してゆきます。

 

3.離婚の有責性とは切り離して親権の話はしましょう。

 

 例えば、奥様が他の男性と不倫しており、旦那様がそのことを知って夫婦関係が悪化してしまった場合、奥様は親権者としてふさわしくないと言うことになるのでしょうか。

 

 確かに、奥様が他の男性と不倫をしているという場合、奥様の貞操観念や道徳観に疑問がつくことは否定できません。旦那様が、このような行為をする人間には、娘の教育上、娘の親権者としてふさわしくないとおっしゃることにも一理あります。

 

 ただ、この点は一時措いて、まず、親権者を決める際には、ご夫婦どちらが親権者になる方が、お子様にとって幸せなのかという視点を持って考えて欲しいと思います。

 

 前述のように奥様が不倫をした場合でも、娘様との会話の中に耳を疑うような発言が多いだとか、娘様の教育上明らかに望ましくないといった事情がない限り、奥様の不倫という事態そのものだけで親権者としてふさわしくない、ということには直結しないと思います。

 

 たまに、離婚の有責性、すなわち、離婚の原因をご夫婦のどちらが作ったのかという視点ばかりを強調して、親権者を決めたがる方もいらっしゃいますが、まずは、お子様の幸せを一番に考えて親権者を決めていただきたいと思います。

 

 もちろん、不倫された旦那様からしてみれば、奥様が不倫をしたことで傷ついているのに、離婚する際にお子様も奥様に取られると言うことは納得できないということもあると思います。しかし、奥様憎し、だから、奥様に何も与えるつもりはない、だから、親権も譲るつもりはない、という発想ではなく、お子様の幸せをお考えいただき、一時的な感情によらずに親権について決めていただきたいと思います。

 

4.一時的な事情で親権者を決めてはいけません。

 

 また、私がご相談を受けたことがあるケースとしては、仕事の事情で当面2年間はご自身でお子様の養育をしてゆくことが難しいので、旦那様を親権者とした上で、2年後に親権者変更をしたいとのお話しをされる方がいらっしゃいました。

 

 つまり、今は、奥様の勤務時間が長いため、お子様を引き取って生活することが難しいが、今後2年ほど時間があれば仕事の引継も完了し、時間短縮勤務が可能な職場が見付かると言った場合に、親権者を旦那様として離婚するというのです。逆に、旦那様が現在は仕事が多忙だけれども、社内制度の変更で近い将来自宅勤務が認められる可能性が高いという場合に、取りあえず、奥様を親権者とするといったケースのご相談を受けたこともあります。

 

 それでは、このような場合に、親権者を旦那様または奥様と指定してしまって良いのでしょうか。

 

 このようなご相談をされる方には、最終的には、後から親権者を変更すればよいと考えている方が多いのですが、一度親権者を旦那様または奥様と指定してしまいますと、そう簡単に変更することはできません。

 

 そうすると、最初の約束では、短期的に親権を預けるつもりであったのに、結局相手がお子様の親権を手放さず、親権変更の紛争に発展したり、親権変更の紛争で負けてしまうという事態も起こり得ます。

 

 ですので、目下自分自身でお子様を引き取って生活することが難しいという場合でも、相手に親権を委ねるべきではありません。

 

 このような場合には、ご自身でお子様を引き取る環境が整った後に離婚をしたり、ご自身を親権者に指定した上で、相手方にお子様の生活面での協力を求めているという形にするといったことが考えられます。

 

 いずれにしましても、離婚の際に一度相手方に親権を委ねてしまいますと、裁判所もその点を重要視する傾向にあります(逆に言うとその後の親権者変更はかなりハードルが高いと言えます)ので、そのこと自体が重大な決断にあたるという認識を持って親権者を決めるのがよいと思います。

 

5.お子さんに親権者を選ばせることはオススメしません。

 

 離婚の際、お子様が15歳以上の場合、お子様の意見を聴くと言うことは構わないと思います。家庭裁判所にてお子様の監護に関わる審判をする際には、裁判所は、「お子様が15歳以上の場合には」お子様の意見を聴かなければならないとされています(家事事件手続法152条2項)ので、法律も15歳という年齢を一つの節目と考えています。

 

 では、お子様が15歳未満の場合、例えば、まだ小学生であるとか、小学生入学前という場合にはどうでしょうか。

 

 これは、私の私見になりますが、お子様に親権者を選ばせるというのは極めて酷な選択を迫ることになりますので、望ましくないと考えています。

 

 ご夫婦が離婚する際には、離婚後の生活の意味合いをお子様にどのように伝えるのかについても試行錯誤することが通常です。それだけ離婚と言うことがお子様にとってはデリケートな問題ですし、お子様にとって、父親と母親が一緒にいると言うことはいわば当然のこととも言えますので離婚の意味を理解することが難しいからです。

 

 このようなことも考えますと、お子様にどちらの親と生活したいのかと言うことを尋ねるのは望ましくないというのが私の考え方です。

 

6.親権については離婚協議書にはどのように表現するの?

 

 親権者をご夫婦のいずれとするのかについては離婚届にも記載するのですが、離婚の際の重要な決めごとになりますので、離婚協議書にも記載しておくべきだと思います。

 

 その場合の記載方法としては「甲と乙は、甲乙間の未成年の長男○○(平成○年○月○日生)の親権者を乙とし、今後同人において監護養育する」といった表現をします。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(1)

2015.08.17更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.離婚を急ぎたい事情がある

 

 私が担当した事件でも、「旦那からの暴力が激しいため、一刻も早く離婚したい」であるとか「娘の進学に伴って、娘の入学先に近い場所に住みたいが、娘の入学前に旦那と別れたい」とか様々な事情で、早く離婚したいという方がいらっしゃいます。

 

 その様な場合、旦那様から離婚届にサインをもらえば、離婚はできますが、離婚届にサインするだけでは離婚に伴う様々な問題を棚上げすることになってしまいます。

 

 そして、離婚してしまいますと、旦那様は、法律上は「他人」ということになってしまうため、離婚前に約束していた話を反故にするということも多く見受けられます。

 

 そこで、賢く離婚する際には、離婚を急ぐ事情がありましても、離婚の際に決めるべき決めごとはきっちりと決めておく必要があります

 

2.離婚の際に決めるべき決めごとって?

 

 離婚の際に決めるべき決めごとは、以下のようなものがあります。

 

①親権者をご夫婦のいずれにするのか。

 

②養育費をいくらにするのか。

 

③面会交流をどのようにするのか。

 

④慰謝料または解決金をいくらにするのか。

 

⑤財産分与をどのようにするのか。

 

⑥年金分割をどのようにするのか。

 

⑦今後の事情変更の場合の連絡等

 

3.離婚の際の決めごとは、離婚協議書にまとめるべき

 

 前述のように、離婚の際に決めるべき決めごとは、それなりに項目がありますし、口頭ですと、後から「言った言わない」の話に発展してしまうため、離婚協議書という形で、書面を取り交わしておくべきです。

 

 以下では、離婚の際に決めるべき決めごととして先ほど列挙した内容について、具体的にご夫婦でどのような内容の話をすればよいのか、離婚協議書に実際に書く際には、どのように書くのかについて、今後ブログにて連載して参りますので、ご参照下さい。

 

4.「離婚すること」は離婚協議書ではどのように表現するの?

 

 離婚協議書においては、ご夫婦が離婚することを大前提にして、その離婚の条件について書き連ねた文章になりますから、通常は、離婚協議書の一番上の条項に、離婚することが記載されます。

 

 その書き方としては、例えば「甲と乙は、本日協議離婚することに合意したので、協議離婚届出用紙に各自署名押印の上、甲はその届出を乙に託し、乙は速やかにその届出をする。」といった書き方をします。

 

 なお、離婚届の提出者は、奥様に指定するのが一般的です。これは、離婚の際、奥様は、旧姓に戻すか、それとも婚姻中の氏を今後も利用するのかを検討した上で、婚姻中の氏を今後も利用したいという場合には、その旨戸籍課に届け出る必要があるからです。

 

 たまに離婚協議書を作成することに一生懸命になってしまい、離婚協議書及び離婚届にサインしたものの、離婚届の提出を失念してしまうという方もいらっしゃいますので、離婚届は、離婚協議書完成後早めにご提出された方がよいと思います。

 

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親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

2015.08.10更新

 

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1.親権とは?


 

 ご夫婦が円満な婚姻生活を送っている間は、「親権」という言葉を意識することは少ないと思います。それが、夫婦生活に亀裂が生じ始め、離婚を意識するようになった時、ご夫婦のお子様をどちらが育てて行くのか、ということで、「親権」というものを意識し始めるのかと思います。

 

 では、このあまり聞き慣れない「親権」とはどのような権利なのでしょうか。

 

 多くの方は、(未成年の)「お子様を育てて行く権利」とお考えですが、親権の内容の半分のみ理解されているということになります。

 すなわち、親権とは、(未成年の)お子様を養育し育てて行くという意味の「身上監護権」と、お子様の財産を管理して行くという意味の「財産管理権」の2つの権利から構成されています。

 

 

2.親権をどちらが取得するか。


 

 ご夫婦が離婚する場合には、未成年のお子様の親権者をどちらかに決定したのかを離婚届に書かなければなりませんので、親権者を決定しないまま離婚するということはできません。

 

 そして、親権をご夫婦のどちらが取得されるかは、第1次的には、ご夫婦の話し合いで決めるものとされていますが、話し合いがうまく行かないことも多くあります。

 

 離婚の事件は、ご夫婦の話し合いがうまく行かない場合、いきなり裁判を起こすことができず、まずは、家庭裁判所に調停の申立をしなければなりません。この調停が上手くまとまればよいのですが、調停もまとまらず、裁判に発展することもあります。

 

 

3.親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 


 

・ご依頼者様 : 30代後半の女性(Fさんといいます)

 

・ご依頼内容 : 旦那様が家庭のことを一方的に決めてしまうので離婚したい、親権は必ず獲得したいとのご依頼内容でした。

 

なお、この裁判の相手 : 40代前半の旦那様、お子様 : 小学校に通う息子様のお一人、家庭環境 : ご依頼時別居中でした。

 

 

4.私の弁護活動        


 

 この事件は、奥様の強い希望もあって、ほとんど離婚協議をせずに、離婚調停を申し立てました。このように離婚協議をほとんど行わなかったのは、旦那様は独自の価値観を持っており、自分と違う意見には全く耳を貸さないという性格の持ち主だったからです。

 

 調停の席では、Fさんの着るものに至るまで旦那様が一方的に決めてしまっており、Fさんとしては結婚生活が窮屈で仕方なかったこと、このようながんじがらめの対人関係では、息子にとっても悪影響しかないと思い、もう旦那様とヨリを戻す意思は全くないので離婚したいということを強く打ち出しました。

 しかし、旦那様は、Fさんの言い分は事実無根で、誤解が解ければやり直せるので、ヨリを戻したいということで一歩も譲りませんでした。

 

結局、離婚するかしないかという点についてお互いの言い分が平行線でしたので、調停は不成立になり、この離婚の問題は裁判で争われることになりました。

 

5.裁判で相手は親権を強くクローズアップしてきた


 

上記の通り、離婚調停の席で、旦那様は「離婚したくない」の一点張りでしたので、親権をどのようにするのかについて十分な議論はなされませんでした。ただ、調停の席で旦那様が、Fさんの育児に問題があるのかどうかについて大きくクローズアップしてくることはありませんでしたので、私の目算としては、親権はあまり大きく争われない可能性もあるとも思っておりました。

 

しかし、離婚裁判では、旦那様側は、離婚したくないという主張を展開した他、仮に離婚するにしても、息子の親権は自分が取得するという形で争ってきました。裁判になって突如旦那様が「Fは息子に対して児童虐待をしていた」などと主張し始めましたので面食らってしまいました。

 

旦那様側が親権について一歩も譲らない姿勢でしたので、これまでの養育環境やご夫婦のお子様への接し方、現在のお子様の養育環境・生育環境、今後の育児の方針等々ご夫婦で激しい主張の応酬をしました。特に旦那様が言う様な児童虐待など存在しないことを丁寧に説明しました。

その後、家庭裁判所調査官によるお子様の生育環境等の調査も行われました。このようにして、第1審である家庭裁判所だけでも、2年以上の審理期間を経て、判決が言い渡されました。

 

 第1審の判決では、奥様の養育環境・生育環境は、お子様の福祉にかなっているということで、こちらの言い分が認められ、奥様が親権を取得するという判決を得られたのですが、相手方である旦那様が納得されずに、高等裁判所への控訴、その後は最高裁判所への上告までされました。

 

 なお、日本の裁判は三審制になっておりまして、1回判決が出ても、判決に不満がある当事者は、2回不服申立をすることができます。最初の判決に対する1回目の不服申立を、法律用語としては「控訴(こうそ)」と言い、この控訴審の判決に対する不服申立(2回目の不服申立)を、「上告」と言います。

 

 「上告」は、判決に憲法違反があるといったケースしか認められませんので、「控訴」よりも格段に要件が厳しいこともあって、離婚の事件で最高裁まで争われるケースは稀だと思います。

 

 最終的には、上告事件は上告の要件を満たしていないという結論で終了しましたので、結局、こちらの言い分が認められ、奥様が親権を取得することができましたが、最終解決までに4年半程度を要しました。

 

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父親が親権を取得したケース

2015.08.05更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.親権とは? 


 

 

 ご夫婦が円満な婚姻生活を送っている間は、「親権」という言葉を意識することは少ないと思います。それが、夫婦生活に亀裂が生じ始め、離婚を意識するようになった時、ご夫婦のお子様をどちらが育てて行くのか、ということで、「親権」というものを意識し始めるのかと思います。

 

 では、このあまり聞き慣れない「親権」とはどのような権利なのでしょうか。

 

 多くの方は、(未成年の)「お子様を育てて行く権利」とお考えですが、親権の内容の半分のみ理解されているということになります。

 

 すなわち、親権とは、(未成年の)お子様を養育し育てて行くという意味の「身上監護権」と、お子様の財産を管理して行くという意味の「財産管理権」の2つの権利から構成されています。

 

 

2.親権をどちらが取得するか。 


 

 

 ご夫婦が離婚する場合には、未成年のお子様の親権者をどちらかに決定したのかを離婚届に書かなければなりませんので、親権者を決定しないまま離婚するということはできません。

 

 そして、親権をご夫婦のどちらが取得されるかは、第1次的には、ご夫婦の話し合いで決めるものとされていますが、話し合いがうまく行かないことも多くあります。

 

 それでは、ご夫婦の言い分が対立した時、最終的にはどちらが親権を取得する可能性が高いのでしょうか。

 もちろん、ご夫婦のお子様へのこれまでの接し方や養育方法、経済的自立性等々様々な要素が絡みますので、個別の事情によりますが、一般的には奥様が親権を取得されるケースの方が多いのが現状です

 

 

3.父親が親権を取得したケース


 

・ご依頼者様 : 40代前半の男性(Gさんと言います)

・ご依頼内容 : 奥様の浮気をきっかけにして夫婦関係がうまく行かなくなり、奥様に対して慰謝料を請求したいというご要望とともに、浮気を繰り返す様な女性に子供達を引き取らせることはできないので、親権を取得したいとのご依頼でした。

 

なお、この事件の相手 : 40代前半の奥様、お子様 : 小学校に通う娘様と保育園に通う娘様の合計お二人、家庭環境 : ご依頼時別居中でした。

 

 

4.私の弁護活動         


 

 このケースでは、Gさんは調停や裁判と言った大がかりな手続きは踏みたくないので、できる限り協議離婚で解決したいと強く希望されていました。そして、弁護士をつけたことはGさんから奥様に直接お話しされたとのことでしたので、私の方から直接奥様にお電話を差し上げてお話をさせていただきました。

 このケースでは、奥様も浮気を全面的に認めていましたので、Gさんの方で浮気の証拠を集めるといった作業は必要なく、離婚についても争いはありませんでした。しかし、慰謝料の金額と、お子様の親権が激しく争われました。

 

5.奥様の言い分         

 


 

 

 このご家庭では、Gさんがお仕事をされており、日中お子様の面倒を見ることができないことから、奥様からは、Gさんが親権を取得するとお子様に目が届かなくなるということをしきりにおっしゃっていました。

 

 ただ、このケースでは、Gさんのお母様がこれまで同居して生活しており、お子様も、このお婆さまに懐いているという事情もあり、旦那様も休日は積極的にお子様の世話をしていたという事情がありましたので、それらの点を丁寧にご説明し、また、今回の離婚の発端が奥様の浮気にあることも強く主張させて頂きました

 

 さらに、旦那様が親権を取得しても、奥様が希望する場合には柔軟にお子様との面会交流を認める意向であることもお伝えしました。

 

 これに対して、奥様は、浮気については申し訳ないことをしたけれども、今後二度と同じ過ちを繰り返さないので、お子様の幸せを第一に考えて親権者を決めてほしいと言ってきました。奥様の話しぶりは、自分の言い分を強く主張してくるというよりも、Gさんに考え直してほしい、お願いしたいという論調でした。

 

 Gさんとも再度お話ししましたが、お子様の幸せを第1に考えるのであれば、簡単に浮気などするはずがない、そのことをきちんと反省しているのであれば、きちんと責任を取って早めに離婚問題を解決させて欲しいとのご意見でした。

 そのため、その旨を奥様にも直接お伝えしました。

 最終的には、Gさんの意思が固いことが分かったからでしょう、奥様もGさんが娘様お二人の親権を取得することに同意して下さり、協議離婚が成立しました。なお、平行して慰謝料の額についても交渉を続けておりましたが、この点もお互いの同意が得られました。

 

 お互いが合意した内容を離婚協議書にまとめ、双方が署名押印して、協議離婚が成立しました。

 

6.親権の取得が本格的な紛争になりそうな事件はお早めに弁護士にご相談下さい。


 

 

 ご夫婦のいずれが親権を取得するのかについては、色々な要素が絡まって決定しますので、一般の方には理解しにくいものがあります。

 

 また、ご夫婦の間で話し合って決定するのなら良いのですが、裁判に発展する可能性があるような場合には、特に慎重に対応して行く必要があります。

 このような親権紛争の問題になりそうな事件については早めに専門の弁護士にご相談下さい。

 

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