離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(2)
2015.08.24更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき
前回のブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。
そこで、今回は、離婚する際に決めるべきことの一つとして、親権について掲載いたします。
離婚届を提出する際には、お子様の親権者をご夫婦のどちらにするのかを決めない限り、離婚届は受理されませんので、親権を決めないまま離婚すると言うことはできません。
では、ご夫婦のいずれを親権者に決めるのがよいのでしょうか。
2.親権とは?
では、このあまり聞き慣れない「親権」とはどのような権利なのでしょうか。
多くの方は、(未成年の)「お子様を育てて行く権利」とお考えですが、親権の内容の半分のみ理解されているということになります。
すなわち、親権とは、(未成年の)お子様を養育し育てて行くという意味の「身上監護権」と、お子様の財産を管理して行くという意味の「財産管理権」の2つの権利から構成されています。
このように「親権」は、お子様の今後に重要な関わりを持ってゆく権利ですので、慎重にご夫婦で話し合う必要があります。
以下、親権のお話し合いをする際に陥りがちな誤解等についてご説明してゆきます。
3.離婚の有責性とは切り離して親権の話はしましょう。
例えば、奥様が他の男性と不倫しており、旦那様がそのことを知って夫婦関係が悪化してしまった場合、奥様は親権者としてふさわしくないと言うことになるのでしょうか。
確かに、奥様が他の男性と不倫をしているという場合、奥様の貞操観念や道徳観に疑問がつくことは否定できません。旦那様が、このような行為をする人間には、娘の教育上、娘の親権者としてふさわしくないとおっしゃることにも一理あります。
ただ、この点は一時措いて、まず、親権者を決める際には、ご夫婦どちらが親権者になる方が、お子様にとって幸せなのかという視点を持って考えて欲しいと思います。
前述のように奥様が不倫をした場合でも、娘様との会話の中に耳を疑うような発言が多いだとか、娘様の教育上明らかに望ましくないといった事情がない限り、奥様の不倫という事態そのものだけで親権者としてふさわしくない、ということには直結しないと思います。
たまに、離婚の有責性、すなわち、離婚の原因をご夫婦のどちらが作ったのかという視点ばかりを強調して、親権者を決めたがる方もいらっしゃいますが、まずは、お子様の幸せを一番に考えて親権者を決めていただきたいと思います。
もちろん、不倫された旦那様からしてみれば、奥様が不倫をしたことで傷ついているのに、離婚する際にお子様も奥様に取られると言うことは納得できないということもあると思います。しかし、奥様憎し、だから、奥様に何も与えるつもりはない、だから、親権も譲るつもりはない、という発想ではなく、お子様の幸せをお考えいただき、一時的な感情によらずに親権について決めていただきたいと思います。
4.一時的な事情で親権者を決めてはいけません。
また、私がご相談を受けたことがあるケースとしては、仕事の事情で当面2年間はご自身でお子様の養育をしてゆくことが難しいので、旦那様を親権者とした上で、2年後に親権者変更をしたいとのお話しをされる方がいらっしゃいました。
つまり、今は、奥様の勤務時間が長いため、お子様を引き取って生活することが難しいが、今後2年ほど時間があれば仕事の引継も完了し、時間短縮勤務が可能な職場が見付かると言った場合に、親権者を旦那様として離婚するというのです。逆に、旦那様が現在は仕事が多忙だけれども、社内制度の変更で近い将来自宅勤務が認められる可能性が高いという場合に、取りあえず、奥様を親権者とするといったケースのご相談を受けたこともあります。
それでは、このような場合に、親権者を旦那様または奥様と指定してしまって良いのでしょうか。
このようなご相談をされる方には、最終的には、後から親権者を変更すればよいと考えている方が多いのですが、一度親権者を旦那様または奥様と指定してしまいますと、そう簡単に変更することはできません。
そうすると、最初の約束では、短期的に親権を預けるつもりであったのに、結局相手がお子様の親権を手放さず、親権変更の紛争に発展したり、親権変更の紛争で負けてしまうという事態も起こり得ます。
ですので、目下自分自身でお子様を引き取って生活することが難しいという場合でも、相手に親権を委ねるべきではありません。
このような場合には、ご自身でお子様を引き取る環境が整った後に離婚をしたり、ご自身を親権者に指定した上で、相手方にお子様の生活面での協力を求めているという形にするといったことが考えられます。
いずれにしましても、離婚の際に一度相手方に親権を委ねてしまいますと、裁判所もその点を重要視する傾向にあります(逆に言うとその後の親権者変更はかなりハードルが高いと言えます)ので、そのこと自体が重大な決断にあたるという認識を持って親権者を決めるのがよいと思います。
5.お子さんに親権者を選ばせることはオススメしません。
離婚の際、お子様が15歳以上の場合、お子様の意見を聴くと言うことは構わないと思います。家庭裁判所にてお子様の監護に関わる審判をする際には、裁判所は、「お子様が15歳以上の場合には」お子様の意見を聴かなければならないとされています(家事事件手続法152条2項)ので、法律も15歳という年齢を一つの節目と考えています。
では、お子様が15歳未満の場合、例えば、まだ小学生であるとか、小学生入学前という場合にはどうでしょうか。
これは、私の私見になりますが、お子様に親権者を選ばせるというのは極めて酷な選択を迫ることになりますので、望ましくないと考えています。
ご夫婦が離婚する際には、離婚後の生活の意味合いをお子様にどのように伝えるのかについても試行錯誤することが通常です。それだけ離婚と言うことがお子様にとってはデリケートな問題ですし、お子様にとって、父親と母親が一緒にいると言うことはいわば当然のこととも言えますので離婚の意味を理解することが難しいからです。
このようなことも考えますと、お子様にどちらの親と生活したいのかと言うことを尋ねるのは望ましくないというのが私の考え方です。
6.親権については離婚協議書にはどのように表現するの?
親権者をご夫婦のいずれとするのかについては離婚届にも記載するのですが、離婚の際の重要な決めごとになりますので、離婚協議書にも記載しておくべきだと思います。
その場合の記載方法としては「甲と乙は、甲乙間の未成年の長男○○(平成○年○月○日生)の親権者を乙とし、今後同人において監護養育する」といった表現をします。
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雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
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