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【今からできる】モラハラ・DV夫との離婚対策(5)―慰謝料対策

2021.10.25更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.【今からできる】離婚対策とは?


 今回は、あなたがまだモラハラ・DV夫と同居中だということを前提に、どのような準備をしておけば、慰謝料の問題に向き合うことができるのかという観点から解説していきます。
 既に別居してしまったという方にも参考にはなりますが、主として、今も同居している方を対象にしておりますのでご注意ください。

 

 

2.【今からできる慰謝料請求の対策①】慰謝料請求というものがどういうものかを理解する


 私のところにご相談に来られる方の中には、たまに財産分与と慰謝料、養育費の問題が十分に区別できていない方もいらっしゃいます。
 慰謝料請求とは、夫側の行動や言動であなたが精神的に傷ついたというときに、これを慰謝するお金(慰謝料)を請求できるというものです。
 なお、あなたが精神的に傷ついていれば請求できるというものではなく、①夫側の行動や言動が原因で精神的に傷ついたと言える必要があるますし(いわゆる因果関係の問題)、②夫側の行動や言動が離婚に直結する原因と言える必要もあります。

 まず、①につきましては、仮にあなたが精神的に傷ついていたとしても、例えば、職場のトラブルが原因だったり、あなたの他の親族との相続トラブルが原因であるような場合には慰謝料の問題にはならないということです。
 次に、②につきましては、夫のモラハラ等があったけれども、それが原因なのではなく、お子さんの教育方針の違いが直接の離婚原因だというときには、慰謝料の問題にはならないといったことを意味します。

 

 

3.【今からできる慰謝料請求の対策②】慰謝料請求に向けての証拠準備


(1)公的機関の記録を収集しておく
 これまでの夫からのモラハラやDVであなた自身身の危険を感じることがあったような場合には、あなた自身病院の受診を受けたり、過去に警察に相談したことがあったかもしれません。
 そのような場合には、別居を待たずに、その病院から診断書をもらっておくとか、警察に110番通報記録や相談記録のコピー開示を要請しておくといった準備をしておいたほうが良いです。
 これらの記録を読み返すと、いつどのようなトラブルがあったのかを思い出すきっかけにもなると思いますし、これらの記録には保存期間があります。後になって病院に問い合わせをしても、保存期間が経過していて入手できなかったということもありますので、早めに問い合わせをしておくと安心です。

(2)公的機関への相談をする
 これまでに公的機関への相談をあまりしてこなかった場合でも、現状あなたやお子様が身の危険を感じるような場合には、その内容を今からでも警察や子育て支援センター等に相談するということも考えてみてください。
 このように相談しておけば、安心感が高まりますし、相手の危険な行動等について公的機関の記録を残すことができます。

 ただ、この点は誤解なさっている方も多いのですが、過去のことを警察に相談しても、あまり効果がありません。昨日今日起こったことなどを相談すれば、現行犯に近い形なので、一定の効果があるのですが、あまり昔のことを相談して、記録化しても、あまり効果がないのです。

(3)録音等の証拠収集
 モラハラ・DV夫の暴言がひどいという場合には、スマートフォンや録音機器でその音声を録音しておいたほうが良いです。
 また、夫からの暴力で怪我をさせられたというような場合には、病院に受診し、その怪我についても写真を撮っておくようにして下さい(なお、怪我の写真は怪我の部位だけではなく、あなたの顔も映るような形にしておくのが良いです)

(4)過去のメールやLINE等の確認
 夫がメールやLINEであなたのことを中傷等してきたというような場合には、そのメールやLINEの内容は証拠になり得ます。
 機種変更する前の携帯電話に保存していたりすることもありますので、遡って確認する必要が出てくることもあります。
 そのようなメールは、スクショを取ってデータとして保存しておくのが良いと思います。LINEについては文字データに変換して保存しておくと便利です。

(5)日記やメモはあまり証拠にならない
 モラハラの証拠といった場合に、手書きのメモを事細かに残している方や、問題行動があった日に日記帳に記載しているという方もいらっしゃいます。
 ただ、これらの証拠はあまり有効打にならないことが多いです。
 なぜなら、その日記をいつ書いたのかの証明ができないからです(極端な話、実際には別居後に思い出しながら書いていても、「当時から記入していたものだ」と豪語することは可能になってしまうからです)

 

 

4.【今からできる慰謝料請求の対策③】夫側が反省しているようであれば誓約書や謝罪文を取っておく


 こちらが強く言うと、夫側が翌日は反省しているというようなケースもあると思います。
そのような場合には、夫自身に自分の問題行動を自筆で書かせて、そのことを反省していることや、二度と同じことをしないといった内容を自筆で書かせておくということも有効です。
 このようなことをしておけば、その時に夫婦間でトラブルになったこと、夫側自身もそのことを自覚していることの証拠になりますし、その後も同様の行動が繰り返されるようであれば、こちらの慰謝料原因を強める効果が見込めます。

 

 

5.【今からできる慰謝料請求の対策④】慰謝料請求にどこまでこだわるのかの見極め


 同居中これだけひどいことをされ続けてきたのですから、慰謝料請求にこだわりたいと思われる方も多く、それはある意味当然のことだと思います。
 ただ、モラハラ夫等は自身の行動が正しかったと本気で誤解している人が多いものですから、慰謝料請求にこだわるといつまでも離婚協議・調停が進捗しなくなってしまうということもあります。
 また、非常に残念なことに、仮に裁判になった場合には慰謝料請求のハードルは高いことの方が多いです。
 そのため、どこまで慰謝料請求にこだわっていくのかについては、ある程度気持ちを固めておいたほうが良いかもしれません。

 

 

6.まとめ


【今からできる慰謝料請求の対策①】慰謝料がどのようなものか理解する
【今からできる慰謝料請求の対策②】慰謝料請求の証拠固めをする
【今からできる慰謝料請求の対策③】夫の側から謝罪文や反省文を得ておく
【今からできる慰謝料請求の対策④】慰謝料請求にどこまでこだわるのかの見極めをしておく

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【今からできる】モラハラ・DV夫との離婚対策(4)―確実に財産分与を確保するために

2021.10.11更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.【今からできる】離婚対策とは?


 今回は、あなたがまだモラハラ・DV夫と同居中だということを前提に、どのような準備をしておけば、確実に財産分与を確保できるのかという観点から解説していきます。
 既に別居してしまったという方にも参考にはなりますが、主として、今も同居している方を対象にしておりますのでご注意ください。

 

 

2.【確実に財産分与を確保するための対策①】財産分与というものがどのようなものなのかの知識をつけておく


(1)財産分与というのはそもそもどんな話なのか
 財産分与というのは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを取り決めると言うことです。
 婚姻生活中は、離婚することを見越して準備しているという夫婦はいないと思いますので、通常夫婦の財産は均等ではないことが多いと思います。例えば、奥様が専業主婦で、旦那様が仕事をしているという場合、旦那名義の預金はそれなりの額貯まっているとしても、奥様の預金はそれほど貯まっていないというケースもあると思います。

 そんなときに、旦那側が「これは俺の名義の預金だから離婚の時には、びた一文お前には渡さない」としてしまいますと、内助の功があった奥様にとって酷な話になってしまいます。
 そこで、離婚の時には、夫婦どちらの名義になっているかを問わず、婚姻中に築いた財産は半分ずつに清算すべきだというのが財産分与の基本的な考え方になります。

(2)慰謝料とは別問題なのでご注意
離婚に伴うまとまったお金の問題と言うことで、慰謝料の問題と混同している方が多いのですが、財産分与と慰謝料は別の問題とお考え下さい。
即ち、慰謝料というのは、相手に浮気や暴力といった一方的有責性がある場合に、こちらが受けた精神的苦痛を慰謝させるものになるのに対して、財産分与は、このような有責性の問題を抜きにして、夫婦の財産を清算しようという話になりますので、別次元の話と言うことになるのです。
(一昔前には、「財産分与の慰謝料的要素として、慰謝料分も考慮する」といった議論をすることもありましたが、最近は、財産分与は財産分与、慰謝料は慰謝料として話し合うのがオーソドックスです)。

(3)実際問題どのような手順で検討する話なのか
 厳密に財産分与の計算をする場合には、①対象財産の特定→②財産の評価→③総合計額の算出→④分与方法の検討という手順を踏むことになります。

 以下具体的に解説いたします。
①対象財産の特定
 財産分与は夫婦で築いた財産を分ける仕組みですので、夫婦で築いた財産以外の財産は対象外になります。
 例えば、独身時代に貯めていた預金や相続で取得した財産は対象外になります。
 対象財産として代表的なものは、婚姻中に購入したご自宅、自動車、預貯金、生命保険や学資保険、株式等になります。
 まずは、夫婦で築いた財産としてどのようなものがあるかを割り出して行く作業をすることになります。

②財産の評価
 預貯金などは金額が明らかなので問題は少ないのですが、例えば自宅などはいくらになるのかおおよその評価額を調べる必要があります(住宅ローンが残っている場合、通常はローン残高は差し引いて評価することが多いです)。
 他にも、生命保険等については今解約したらいくらになるのかを保険会社に問い合わせる必要があります(実際には解約しませんが、いくらの価値があるかを確認するために、保険会社に「今解約した場合いくらになるか教えて下さい」と電話するのです。

③総合計額の算出
 上記のように各財産の価値を算出することができた場合、それらの数字を全て足し算して総合計額を算出していくことになります。

 例えば、旦那さん名義の資産がご自宅(評価額3000万円、ローン残高2400万円)、学資保険(解約返戻金額200万円)、預金(3つの通帳の残高合計が300万円)で、奥さん名義の資産が預金のみ(2つの通帳の残高合計が100万円)というケースですと、総合計額は(3000万円-2400万円)+200万円+300万円+100万円で、総合計は1200万円になります。
 この総合計額を算出する際には、旦那さんの資産だけではなく、あなたの資産分も加算する必要がありますので、ご注意下さい。

④分与方法の検討
 前述の例ですと、総合計額が1200万円になりますので、あなたの取り分は半額の600万円になります。

 このような600万円の取り分で何を取得するか、あなたの希望を検討することになります。
 即ち、自宅の価値が600万円なので、自宅を取得し、同時に住宅ローンの名義もあなたに変更するという方法もあり得ますし、逆に、自宅は旦那さんに渡して、旦那さん名義の学資保険をこちらに名義変更し、旦那さんの預金額全額を取得するという方法もあります。
 要するに、取り分の範囲で何を要求していくのかという問題です。

 

3.【確実に財産分与を確保するための対策②】夫側の財産をしっかりと把握しておく


 別居した後に離婚の話をしておりますと、夫側は自身の財産を少なく申告してくるケースが非常に多いです。
 こちら側で夫の資産がどこにあるのかを把握しておかないと、あまり財産分与を獲得できないということになりかねませんので、同居中に夫側の財産をしっかりと把握しておくことが重要です。
 それぞれの財産項目について注意点等を解説します。

(1)不動産
 自宅が持ち家の場合、自宅を隠すことは不可能ですので、あまり問題になり得ません。
 他方で、旦那側が投資用マンションを持っているというような場合には、そのマンションの所在等を把握しておく必要があります。

(2)預貯金
 預金残高を気になさる方が非常に多いのですが、残高ではなく、銀行名と支店名の把握に努めてください。銀行名は分かっても支店名が分からないと、財産分与対象から外れてしまうこともあります。
 また、紙の通帳だけではなく、インターネットバンキングをしているということも多いので、インターネットバンキングがある銀行名と支店名の把握も重要です。

(3)保険
 旦那さん名義の生命保険や年金保険等のことです。
 これらの保険は実際に解約しなくとも、積み立て式の場合には一定の金銭的価値がありますので、財産分与の対象になります。
 どの保険会社のどのような保険(いわゆる保険の種類)に加入しているのかの把握が必要になります。

(4)夫の給料明細から分かるもの
 夫の勤め先を経由して蓄えている財産は見落としがちです。
 例えば以下のようなものがあります。
① 勤め先を経由して財形を積み立てている
② 勤め先を経由して保険に加入している
③ 勤め先を経由して年金基金等に加入している

④勤め先を経由して従業員持ち株制度に加入している
これらの掛け金等は給料天引きになっていますので、給料明細書を見れば、どのようなものに加入しているのかを把握できることが多いです。

(5)退職金
 まだ夫の年齢が若いような場合には、定年退職がまだまだ先だということで退職金を見落としがちです。
 また、勤め先から退職金がもらえる予定だが、それと合わせて勤め先経由で確定拠出年金を掛けているケースもあります。
 確定拠出年金も把握できるようであれば、運用会社を把握しておいた方が望ましいです。

(6)株式
 旦那側が株式を保有している場合には、証券会社からの案内に加えて、その株式の発行会社から株主総会招集通知が届くなどしていますので、それらを見るとどの証券会社を通じてどのような株式を保有しているのかを把握できます。
 これらの書類は基本的に郵便物で届きますので、夫宛ての郵便物を見ていれば、だいたいの株式は把握できます。

(7)自動車
 それほど購入時期が古くない自動車についても資産価値が認められますので、財産分与対象になります。

 

 

4.【確実に財産分与を確保するための対策③】特有財産の証明準備


 特有財産とは、①結婚前からあなたが持っていた財産や②結婚中に親族からの相続や贈与でもらった財産のことを言い、これらの財産は財産分与の対象から外すことができます。
 ただ、特有財産であることをしっかりと証明しないと、夫の側が財産分与に含めたいと希望してくることもありますので、今からでも特有財産の証拠集めができるのであれば収集しておいた方が良いと思います。

 特に婚姻期間が長い場合には、上記①の独身時代の財産状況を証明しようと思っても、銀行が取引明細書を発行してくれない(あまり古いものだと銀行は明細書を発行できないと言ってきます)ということもあります。そのような場合には、繰り越し前の通帳を探し当てるしかないということもありますので、早めに準備を開始しておくことに越したことはありません。 

 

 

5.まとめ


【確実に財産分与を確保するための対策①】財産分与の知識をつける
【確実に財産分与を確保するための対策②】旦那の財産を把握する
【確実に財産分与を確保するための対策③】特有財産の証明準備をする

 

 

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