【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるのか)
2017.12.05更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)真太郎です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、モラハラ情報盛りだくさん!弁護士秦のモラハラ総合サイトは>>こちら<<になります。
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1.モラハラの線引きは難しい
「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。
モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。
ただ、あなた自身が夫から受けた言葉がモラハラ行為といえる様なものなのか、そうではないのかをご本人で判断することは難しいのではないかと思います。
DVのケースですと、実際に怪我を負うことになりますから、どのような経緯や雰囲気があったとしても絶対に許される余地はありません。しかし、夫婦喧嘩の中での一部の言動を取り上げてみても、経緯次第では、モラハラとまでは言いにくいというケースもあり得るため、その線引きは難しいことが多いです。
2.モラハラの意味をしっかりと理解する
モラハラ夫の行動や言動には共通点も多いのですが、項目が多くなってしまうものですから、まずは、モラハラ夫はどのようなキャラクターの人が多いのかについてご紹介し、その後に、具体的にどんな行動・言動がモラハラにあたるのかをご紹介します。
(1)モラハラ夫の性格(キャラクター)の共通項とは?
モラハラ夫は以下の様な性格(キャラクター)の方が多い様に感じますので、まずは、あなたの旦那様に当てはまるものがないか確認してみて下さい。
①何でも自分優先である。
②マイルールや独自のこだわりがある(しかも、一般の人が理解しにくいルールであることが多い)
③自分の非を認めない。
④嫉妬深い、執念深い。
⑤あなたやお子様に対する束縛やルールが多い。
⑥他人を信用せず、友人が少ない。
⑦スイッチが入ると急変する。
⑧メンタルが弱い、または、メンタルが弱いふりをする。
上記の①から⑧のうち、2,3個以上当てはまる場合には注意信号と言えます。
(2)モラハラ夫の「モラハラ発言」「モラハラアクション」とは?
「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」と言われてもピンと来ない方が多いのではないでしょうか。そこで、一定の類型化をするとモラハラとは以下の様に分類できるのではないかと思います。以下のうち、どの項目に該当するかチェックして整理すると、あなたのモラハラ被害を客観視できると思います。
①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)
②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)
③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)
④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)
⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)
⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)
⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)
⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)
⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。
⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)
⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。
⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)
⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。
⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)
⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。
⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う
⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。
⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)
⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)
⑳生活費を渡さない。
この20項目のうち、5,6個以上当てはまる場合には、要注意とお考えいただいた方がよいと思います。直接当てはまらない場合でも、「ニアピン」のような項目が7,8個以上ある場合にも、要注意とお考えいただいた方がよいと思います。
3.許されないモラハラとは?
上記の分類をご覧になって、モラハラがどのようなものなのかイメージが具体的になってきたかと思います。それでは次の作業をしてみて下さい。
(1)上記の①から⑳のうち、あなたに当てはまるのがいくつあるかをチェックしてみて下さい。
(2)次に、チェックがついた該当項目について、いつ頃、どのような言葉・態度を受けたのかを箇条書きしてみて下さい。いわゆるモラハラ被害の概要をまとめる作業になります。頻繁にモラハラがあった場合には、どの程度の頻度であったか(週1回、月1回等)も書いて下さい。
このような作業は、忘れたい過去を思い出す作業になりますので苦しい作業になることが多いと思います。そのような場合には、あなたの体調にも配慮しながら、ゆっくりと時間をかけて作業をしてみて下さい。
なお、あくまで上記は箇条書きで作成していただければ結構ですので、詳しい長文にする必要はありません。モラハラ被害の概要を書き切った上で、あなた自身で当時のことを振り返ったときに、このような夫を許せるのか、一緒にやっていくことができるのかできないのかを考えてみて下さい。
上記のモラハラの項目にどのくらいの数当てはまるのかということは重要な判断要素なのですが、当てはまる項目が少なくても悪質なモラハラというケースも数多くあります。
例えば、10年の夫婦生活の中で、大半の期間夫に無視され続けている、といった様に、期間が長かったり、執拗であるといった場合には、当てはまる項目が少なくても、「許されないモラハラ」に該当します。
(A)それでは、あなたが書き出したものはどのように活用すればよいのでしょうか。
実は、あなたの書き出し作業そのものに重要な意味があります。
あなたが書き出し作業をしている際、以下の様な症状が出た場合には、ほぼ確実に「許されないモラハラ」と言えます。
①書いている最中涙が止まらなくなることが数多くあった。
②書いている最中、気持ち悪くなってしまったり、胃痛がしたり、息切れがしてしまった等体調を崩してしまった
このような体調変化があった場合には、重度のモラハラの可能性が高いので、離婚や別居を検討してみた方がよいと思います。
(B)大きな体調の変調がない場合でも、書き出したものをご自身でしっかりと見直してみる
書き出し作業の中で、上記の様な明確な体調の変調がないとしても、書き出したものをあなた自身の目でしっかりと見返す作業を行って下さい。見返すにあたっては「この人と一緒にやっていくことで自分が幸せになれるのか」「むしろ、この人と別れる方が幸せなのではないか」ということをじっくりと考えてみて下さい。
このようにして、あなた自身が一緒にやっていくことができないと感じる様であれば、それは間違いなく「許されないモラハラ」にあたります。
他方で、あなた自身では「一緒にやっていくことができない」とまでは言えないとか、判断が難しいという場合には、身内の方や親しい友人等に相談して、その意見を聞いてみるという方法もあります。モラハラ被害を受け続けてきたため、あなた自身の感覚が麻痺してしまっているというケースもありますので、身内や親友の意見を聞くと、あなた自身が置かれている立場を客観的に判断できる場合があります。
ただ、モラハラは、あなたが置かれた環境になってみないと理解されにくいということもありますので、身内や親友から見て「離婚するほどの話じゃないかもよ」と言われたとしても、あなた自身の今後の幸せ、お子様の今後の幸せになるかどうかは再度しっかりと考えてみて下さい。
4.許されないモラハラであったとしても離婚に踏み切るかはあなた次第
仮に、あなたが許されないモラハラ被害を受けていたとしても、離婚するかどうかはまた慎重に検討する必要があります。離婚すると今後の生活費の問題、お子様の捉え方等についても考慮しなければならないからです。
ただ、頻繁にモラハラ被害を受けている方が陥りがちな発想なのですが、「自分さえ犠牲になれば一家の平和が守られる」という発想は避けた方がよいと思います。極端なモラハラ被害はあなたの心身にまで被害を与え、今後の生活に支障が生じる場合もあります。そのようなことはあなたにとって幸せだとは到底思えないからです。
私の弁護経験上言わせていただきますと、あなた自身夫のモラハラが許されないものだと考えている様でしたら、ためらうことなく離婚した方が良い結果に結びつく様に感じます。
5.裁判で勝てるかどうかは別途検討が必要
上記の様にして、あなた自身にとって「許されないモラハラ」であったとしても、そのことで裁判に勝てると言うことにはなりません。
勿論、離婚の問題は裁判をせずに解決できれば、その方が良いのですが、相手が激しく抵抗してきた場合には、離婚裁判が避けられません。
そして、裁判で認められる離婚原因となりますと、法律で厳しく制限されているからです。また、裁判で戦っていくためには、モラハラの裏付けが必要になります。
そのため、夫との裁判を避けられないと考える様であれば、早めに弁護士に相談をして、どのような手順を踏むのがよいのか、裁判での勝訴の見込みを検討してみた方がよいと思います。
6.最後に注意点(モラハラは根本的に白か黒かで割り切れない問題)
前述のようにご検討して頂いて、あなたにとって「許されないモラハラ」なのか、そこまでには行かないレベルなのかについては、ある程度分かったかと思います。
しかし、そのことで、夫のしてきたことが黒(完全悪)か白かについては、決めつけないでもらいたいと思います。
前述で私が解説して参りましたのは、あなたにとって現状が離婚した方が良い状況なのか、そうでない状況なのか、ということでして、その結論と、法律的に黒か白かの問題とは別次元の問題なのです。
何を言っているのかと言いますと、残念なことに日本の法律はモラハラについての法整備が出来ておらず、法律で「モラハラ」とか「モラルハラスメント」という用語は出てきません。
そのため、法律の線引きがない状態のため、「黒(完全悪)」と決めつけることは難しいのです。
モラハラの深刻さについて、私の方からは「モラハラは基本的に白か黒かではなく、グレーという位置づけになります」「モラハラの深刻さに応じてグレーの中にもグラデーションがあって、深刻なモラハラは黒に近付いていきますし、軽度のモラハラは白に近付いていきます」とご説明することが多いのです。
このようなことも「モラハラ」の理解の参考にして頂ければと思います。
7.まとめ
・モラハラの詳しい意味については理解不足の方も多いので、まずはモラハラのきちんとした意味を理解する。
・まずは、あなた自身のモラハラ被害を分類し、整理する必要がある。
・あなたのモラハラ被害を整理した上で、あなたにとって許されないモラハラかどうかが重要である。
・あなたにとって許されないモラハラだとしても、離婚に踏み切るのかどうかはあなた次第である。
・あなたにとって許されないモラハラだとしても、離婚裁判で勝てるかどうかは別途検討が必要である。
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