【弁護士が解説】モラハラ離婚)解決までにかかる期間はどのくらい?
2018.03.15更新
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1.やはり解決までにかかる期間はとても気になる
離婚の条件面で、親権を獲得できるのか、養育費や財産分与でいくらもらえるのか、慰謝料はもらえるのかどうか、といった点については、今後の生活に直結する問題なので、皆様の大きな関心事の一つだと思います。
そして、自分のモラハラ離婚の問題がどの程度の期間で解決するのかという点も重要な関心事だと思います。正式に離婚が成立するまでは、いわば中途半端な状態とも言えますので、このような状態から早く抜け出したいと考えるのは当然のことだと思います。
離婚の問題は、①協議離婚→協議離婚が上手く行かない場合に②調停離婚→どうしても調停離婚が上手く行かない場合に③裁判離婚という流れをたどりますので、最終解決が協議離婚で済むのか、調停離婚での解決なのか等手続がどこまで進むかに応じて、要する期間も異なってきます。
このような期間はケースによって様々なので一概には申し上げにくいのですが、各手続に応じてどの程度の期間を要するのかの目安と、どのような問題が争点になると長期化しやすいのかについて解説します。
2.協議離婚で解決する場合
協議離婚というのは、離婚届を役所に提出して解決する場合を言います。
たまに依頼者の中には、弁護士が間に入る場合には、協議離婚にはならない(調停離婚で手続を進める)と誤解されている方もいらっしゃいますが、基本的には、弁護士が間に入った場合にも、協議離婚による解決を目指すことが多いです。
では、協議離婚の場合、解決までにどの程度の期間を要するかというと、おおよそ2か月から6か月程度というのが一つの目安かと思われます。ただ、これもケースによりけりですので、一つの目安と考えて頂ければと思います。
通常、協議離婚で解決したという場合には、離婚条件について大きな対立はないことが多いのですが、協議離婚が長期化する傾向があるのは、①緻密な離婚協議書を作成する場合や②財産分与の対象が多くて整理に時間がかかる場合、③公正証書を作成する場合ではないかと思います。
補足しますと、「①緻密な離婚協議書を作成する場合」というのは、特にお子様との関わりが問題になることが多いのですが、例えば、離婚後のお子様と夫との交流について、直接会う頻度は2か月に一回までしか認めないけれども、メールのやり取りは週1回まで認める等々何をどこまで認めるのかについてきめ細かく記載する場合などが代表例です。きめ細かく離婚協議書の内容を詰めていかなければならなくなりますので、交渉に期間を要することが多いです。
③はどのようなケースなのかといいますと、特に養育費などの金銭の支払いに強制力を持たせたい場合が代表例です。その場合、公正証書を実際に作成するのは公証人になります。そのため、公正証書を作成する場合には、公証人との折衝や公証人に提出する資料なども必要になってくる関係で最終解決までの期間が延びる傾向にあります。
なお、モラハラ夫との離婚協議の場合、相手が自分の考え方に強く固執している場合も多く、協議離婚での解決は難しいケースも多いように思われます。
3.調停離婚で解決する場合
前述の協議離婚が上手く行かない場合、調停手続で離婚を目指すことになります。
特に相手がモラハラ夫で、離婚協議をしていても、話がうまく進展しない場合には、早期に調停を申し立てることが多いです。
調停での解決にどの程度の期間を要するかですが、これもケースによって千差万別なのですが、一般的にはどんなに早くとも調停がスタートしてから3か月、長い場合には1年、または1年を超えることもあるという回答になると思います。
それでは、モラハラ離婚の調停の場合、どのような問題で長期化しやすいのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
①離婚するかどうかの部分、または離婚原因の部分で対立が激しい場合
特に深刻なモラハラ夫のケースで多いのですが、モラハラ夫は基本的に自分が悪いことをしてきたという認識が薄いです。
そのため、こちらからモラハラを離婚原因に掲げると、モラハラ夫側からは、以下のような反発を受けることが多くあります。例えば以下のようなものです。
・妻の我慢が足りない。
・モラハラの原因を作ったのは妻の方である。
・そこまでひどいことをしていない。
・暴力をふるったわけではないから問題ない。
果ては、離婚調停の申立書の書き方が悪いとか、事細かに揚げ足を取ってくる場合もあります。
このようにモラハラ離婚そのものを争ってきたり、その詳しい離婚原因に強く反発してくる場合には、詳しい離婚条件を話し合う前の段階で調停手続がストップしてしまいますので、時間を費やしてしまう原因になりかねません。
なお、離婚する・離婚しないというところでお互いが意見を譲らない場合には、調停委員から早めに調停打ち切りを伝えられてしまうケースも多いです。調停打ち切りになってしまいますと、一旦調停の場での議論はできなくなってしまいますので、次は裁判を起こすという手順に進んでいくことになります。
②お子さんとの関係で嫌がらせをしてくる場合
モラハラ夫が離婚には応じたとしても、渋々合意したと言うことが多いため、何かしらの形で嫌がらせをしたいと考えてくる人もいます。例えば、以下のような形になります。
・実際自分では育てられないと分かっているのに親権獲得を希望してくる。
・親権は争わないが、今後の監護計画を事細かに聞いてくる。
・頻繁な面会交流を要求してくる。
・しきりに学校行事や習い事の発表会への参加を要求してくる。
・養育費を出し渋る。
モラハラ夫から上記のような要望が出された場合には、長期化要因になりますが、どの程度期間が延びるかは、夫側がどこまで執着してくるのかによっても大きく左右されます。
③財産分与の対象財産が多い場合、争点が多い場合
財産分与の対象財産が比較的少ない場合や、そもそも婚姻期間が短く財産分与の必要がない場合には、その分短期決着が見込めます。
他方で、財産が多い場合や、特有の争点が生じる場合には長期化要因になります。財産分与で争点となるケースというのは、①自宅購入時の頭金の金額・性質等に争いがある場合、②相手が一部の財産しか開示しない場合(対象財産の範囲に争いがある場合)、③婚姻前の財産の範囲や額に争いがある場合等になります。
特にモラハラ夫は、離婚する妻に対しては極力金銭を渡したがらないことが多いため、財産分与が大きな争いになるケースも多くあります。
④慰謝料が争点になる場合
モラハラも深刻な内容の場合には、相手に慰謝料を請求すべき場合もあります。
ただ、モラハラ夫は通常自身の行動を正当化してくることが多いため、慰謝料を支払わないばかりか、こちらが慰謝料を請求してきたことそのものに不満をぶつけてくることもあります。
この慰謝料の問題で対立する場合も紛争が長期化する要因になります。
4.裁判離婚で解決する場合
上記のような調停手続でも離婚が成立しない場合には、やむを得ず裁判を選択せざるを得なくなります。
裁判に要する期間については、それこそ千差万別であって一概に申し上げることは非常に困難です。
ただ、裁判を申し立てる前に、既に離婚協議、離婚調停を経ているため、訴訟提起の段階で数か月は経っていることが多いと思います。そして、裁判そのものがスタートしても、さらに1年近い期間が経過することは覚悟しなければならないと思います。そのため、弁護士が事件に着手してからのトータル期間で見ますと、①裁判の申立前に既に数か月、②裁判スタート後に1年というイメージですと、トータル期間として最低でも1年数か月は覚悟しなければならないというイメージになると思います。
なお、離婚訴訟を起こすとなると、裁判で勝てるだけの離婚原因があるのかという点の検討も必要になります。
具体的には、モラハラの証拠を精査・整理することはもちろんですが、ある程度別居期間を稼ぐという観点から、多少訴訟提起の時期を遅らせるという場合もあります。そのため、調停が成立してからすぐに裁判を起こすのではなく、調停終了から裁判の申立までに一定期間を空ける場合もあります。
裁判離婚の場合、原則として相手も徹底的に争ってくるケースが多いため、各離婚条件について反論や証拠集めの労を要するというように考えた方が良いと思います。
5.スピードよりも、「より良い解決」を!
たまに弁護士が間に入ったのだから早急に解決して欲しいという要望をお持ちの方もいらっしゃいますが、結論を急ぐあまりに十分納得できない内容で解決してしまうのでは本末転倒だと思います。
もちろん、離婚という問題を長期間抱えることは、それだけで心理的ストレスになると思いますので、早急な解決が望ましいことは間違いありません。
ただ、結論を急ぐあまりに不十分な内容で解決してしまうと、2年後、3年後に振り返ったときに後悔してしまうのではないかと思います。
そのため、解決を急ぎつつも、ご自身が納得いく解決を目指すことができればと考えております。
6.まとめ
・協議離婚はあまり長期化せずに解決できるケースが多い。
・ただ、協議離婚でも、離婚協議書に細かな内容を盛り込む場合や公正証書を作成する場合、長期化要因になることがある。
・調停離婚はいくつか長期化する項目があり、モラハラ夫の態度が大きく影響する。
・裁判離婚に発展した場合には、それなりの期間かかることを覚悟する必要がある。
・迅速な解決が望ましいが、迅速性よりも「より良い解決」の方が大事である。
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