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【今からできる】モラハラ・DV夫との離婚対策(1)―早期の離婚実現のために

2021.08.30更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.【今からできる】離婚対策とは?


 今回は、あなたがまだモラハラ・DV夫と同居中だということを前提に、どのような準備をしておけば、早期離婚実現に役立てられるのかという観点から解説していきます。
 既に別居してしまったという方にも参考にはなりますが、主として、今も同居している方を対象にしておりますのでご注意ください。

 

 

2.【対策①】まずは、モラハラがどのようなものなのかをしっかりと知る


 一言で「モラハラ」と言っても様々な形態があります。
 また、モラハラ=暴言と誤解なさっている方も多いです。
 そのため、まずは、モラハラの意味をしっかりと理解することが大事です。
モラハラ夫の行動や言動には共通点も多いのですが、項目が多くなってしまうものですから、まずは、モラハラ夫はどのようなキャラクターの人が多いのかについてご紹介し、その後に、具体的にどんな行動・言動がモラハラにあたるのかをご紹介します。

(1)モラハラ夫の性格(キャラクター)の共通項とは?
 モラハラ夫は以下の様な性格(キャラクター)の方が多い様に感じますので、まずは、あなたの旦那様に当てはまるものがないか確認してみて下さい。

①何でも自分優先である。
②マイルールや独自のこだわりがある(しかも、一般の人が理解しにくいルールであることが多い)
③自分の非を認めない。
④嫉妬深い、執念深い。
⑤あなたやお子様に対する束縛やルールが多い。
⑥他人を信用せず、友人が少ない。
⑦スイッチが入ると急変する。
⑧メンタルが弱い、または、メンタルが弱いふりをする。

 上記の①から⑧のうち、2,3個以上当てはまる場合には注意信号と言えます。

 なお、これらの項目のうち沢山の項目に当てはまる方が、「より深刻」と言えなくもないのですが、あてはまる項目は少なくても、ひどいモラハラ夫ということもありますので、「該当する項目の数が少なければ問題が少ない」というわけではないので、ご留意下さい。

(2)モラハラ夫の「モラハラ発言」「モラハラアクション」とは?
 モラハラの定義である「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」と言われてもピンと来ない方が多いのではないでしょうか。そこで、一定の類型化をするとモラハラとは以下の様に分類できるのではないかと思います。以下のうち、どの項目に該当するかチェックして整理すると、あなたのモラハラ被害を客観視できると思います。

①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)

②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)

③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)

④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)

⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)

⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)

⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)

⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。

⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。

⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)

⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う

⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。

⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)

⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

⑳生活費を渡さない。

 この20項目のうち、5,6個以上当てはまる場合には、要注意とお考えいただいた方がよいと思います。直接当てはまらない場合でも、「ニアピン」のような項目が7,8個以上ある場合にも、要注意とお考えいただいた方がよいと思います。

 なお、これらの項目のうち沢山の項目に当てはまる方が、「より深刻」と言えなくもないのですが、あてはまる項目は少なくても、ひどいモラハラ夫ということもありますので、「該当する項目の数が少なければ問題が少ない」というわけではないので、ご留意下さい。
 

 

3.【対策②】説得を試みるべきかを検討する


 夫の側が少しはあなたの言葉に耳を傾けてくれるというような場合には、何も告げずに別居したり、いきなり弁護士を頼んだりせずとも、夫側を説得して離婚できるかもしれません。
 他方で、あなたの方から別居や離婚を口にすると、モラハラ・DV夫が逆上して、モラハラ・DVがより一層悪化する危険性もあります。
 そのため、まずは、あなたの口から直接別居や離婚を夫側に伝えることが良いのかを、あなたの両親等身近な人と相談して検討してみるのが良いと思います。
 その際に、あなたと夫の二人で話し合っても議論が進展しなさそうだと感じるのであれば、お互いの両親を交えたり、知人を間に入れて話し合うほうが良いこともありますので、そのような方法も検討してみてください。

 

 

4.【対策③】離婚に向けての証拠準備


(1)公的機関の記録を収集しておく
 これまでの夫からのモラハラやDVであなた自身身の危険を感じることがあったような場合には、あなた自身病院の受診を受けたり、過去に警察に相談したことがあったかもしれません。
 そのような場合には、別居を待たずに、その病院から診断書をもらっておくとか、警察に110番通報記録や相談記録のコピー開示を要請しておくといった準備をしておいたほうが良いでしょう。これらの記録は保存期間がありますので、あまり古い記録については、年数を経てから開示申請しても、保存期間切れになってしまうこともあります。この点は十分注意が必要です。
 これらの記録を読み返すと、いつどのようなトラブルがあったのかを思い出すきっかけにもなると思います。

(2)公的機関への相談をする
 これまでに公的機関への相談をあまりしてこなかった場合でも、現状あなたやお子様が身の危険を感じるような場合には、その内容を今からでも警察や子育て支援センター等に相談するということも考えてみてください。
 このように相談しておけば、安心感が高まりますし、相手の危険な行動等について公的機関の記録を残すことができます。

(3)録音等の証拠収集
 モラハラ・DV夫の暴言がひどいという場合には、スマートフォンや録音機器でその音声を録音しておいたほうが良いです。
 また、夫からの暴力で怪我をさせられたというような場合には、病院に受診し、その怪我についても写真を撮っておくようにして下さい(なお、怪我の写真は怪我の部位だけではなく、あなたの顔も映るような形にしておくのが良いです)

(4)過去のメールやLINE等の確認
 夫がメールやLINEであなたのことを中傷等してきたというような場合には、そのメールやLINEの内容は証拠になり得ます。
 機種変更する前の携帯電話に保存していたりすることもありますので、遡って確認する必要が出てくることもあります。
 そのようなメールは、スクショを取ってデータとして保存しておくのが良いと思います。LINEについては文字データに変換して保存しておくと便利です。

(5)日記やメモはあまり証拠にならない
 モラハラの証拠といった場合に、手書きのメモを事細かに残している方や、問題行動があった日に日記帳に記載しているという方もいらっしゃいます。
 ただ、これらの証拠はあまり有効打にならないことが多いです。
 なぜなら、その日記をいつ書いたのかの証明ができないからです(極端な話、実際には別居後に思い出しながら書いていても、「当時から記入していたものだ」と豪語することも可能になってしまうからです)

 そのため、証拠が日記やメモだけという場合には、これから別居までの間に他の証拠を集められるようなら集めるようにした方が良いです。

 

 

5.【対策④】夫側が反省しているようであれば誓約書や謝罪文を取っておく


 こちらが強く言うと、夫側が翌日は反省しているというようなケースもあると思います。
そのような場合には、夫自身に自分の問題行動を自筆で書かせて、そのことを反省していることや、二度と同じことをしないといった内容を自筆で書かせておくということも有効です。
 このようなことをしておけば、その時に夫婦間でトラブルになったこと、夫側自身もそのことを自覚していることの証拠になりますし、その後も同様の行動が繰り返されるようであれば、こちらの離婚理由を多少なりとも強める効果が見込めます。

 

 

6.【対策⑤】夫側の財産の在処を確認しておく


 いざ別居をすると、夫側は、財産を隠して、なるべく財産分与の金額を少なくしようとしてくることが多いです。

 そのため、同居中に、夫側の財産の在処を把握しておくことが必要です。

 夫側の財産の把握にあたっては、夫宛の郵便物を確認するのが端的です(郵便物を勝手に開けてしまうことは避けた方が良いのですが、金融機関等からの封筒の外側には銀行名や証券会社名が書かれていることが多いので、どの銀行に預金を預けているのか、どの証券会社で株取引をしているのかが分かることが多いのです)

 

 

7.事前の準備がその後の離婚に向けての活動に活きてくる


以上のような準備を入念に進めておけば、いざ別居をして弁護士に相談する際にも、要点を踏まえた相談ができるようになりますので、弁護士の活動を円滑化できると思います。
また、相手にも自身の問題行動を多少なりとも自覚させておくことができれば、相手が復縁を断念して、離婚に向けての協議に応じてくる可能性も高まります。

 

 

8.まとめ


・【今からできる離婚に向けての対策①】モラハラの意味をしっかりと理解する
・【今からできる離婚に向けての対策②】相手の説得を試みるべきかを検討する
・【今からできる離婚に向けての対策③】モラハラ等の証拠固めをする
・【今からできる離婚に向けての対策④】夫側が反省しているようであれば誓約書や謝罪文を取っておく

・【今からできる離婚に向けての対策⑤】夫側の財産の在処を把握しておく

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ・DV夫からの付きまとい等を防止する9個の手段

2021.08.23更新

弁護士秦
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1.無事に別居に成功しても、その後、つきまとわれることが不安


 モラハラ夫・DV夫と別居する場合、事前にそのことを知らせてしまうと、別居そのものを妨害されたり、モラハラ・DV被害が悪化する危険性があるため、そのことを知らせずに別居を開始するというケースも多くあります。
 ただ、別居そのものは成功しても、こちらの所在を知られないかという点は大きな心配事の一つだと思います。
 そこで、今回は、そもそも、こちらの居場所を知られないためにどのような方法があるのか、また、付きまとい等を防止するためにはどのような方法があるのかといった点について解説していきます。

 

 

2.こちらの居場所を知られないようにするための方法


 同居中にモラハラ被害・DV被害を受けてきた場合、こちらの転居先を知られないことは非常に重要です。そこで、まずは、こちらの別居先をモラハラ夫側に知られないようにどのような工夫等をしているのかについて、以下の通り、解説します。
(1)別居先選び
 まず一番大事になってくるのは別居先選びということになります。
 経済的な理由から実家を別居先にせざるを得ないという場合、その別居先を先方に隠し通すということは難しいことが多いです(一般的には、旦那側は、別居先として奥様の実家を最初に思い浮かべるため)。

 先方に絶対に別居先を知られたくない、しかし、経済的な理由から一般のアパートを借りたりもできないという場合には、区役所等経由でシェルターに避難するという方法もあります。シェルターは基本的に所在そのものが秘密にされていますので、こちらの居場所を知られないためには一番安心とも言えます。
 ただ、シェルターでは、携帯電話の使用が禁止されていたり、外部の親族との連絡も禁止されていたりと規律がやや厳しいのが難点です。また、ある程度年齢の大きなお子様と一緒にシェルターに避難することはできないことが多いです。
 そのため、消去法的に、あなたの名義でアパートを賃借せざるを得ないというケースもあります。

 その場合も、あなたがモラハラ・DV夫と直接連絡を取り合っている状況が続くと、夫側は執拗にあなたの居場所を聞き出そうとしてくることが非常に多いので、別居と同時に弁護士を雇って、弁護士を連絡窓口にするケースが多いです。

(2)住民票をどうするか
 住民票については、あなたの勤め先やお子様の学校との関係で、特に移動しなくても支障がないということでしたら、移動しないままにしておくのが一番安全です。
 他方で、あなたの勤め先との兼ね合い、お子様の学校との兼ね合いで住民票を移動せざるを得ないという場合には、同時にDV支援措置をかけなければいけません。要するに、夫も含め第三者があなたの住民票等を見られなくするのです。
 DV支援措置を取る場合には、事前に警察やDV相談センターへ相談して証明を得る必要があります。

 DV支援措置については、区役所で相談すると詳しく教えてくれることが多いので、そのようにご対応下さい。

(3)健康保険についての注意
 一般的には、夫側の方があなたよりも収入が高いので、お子様の健康保険は夫側の保険に加入していることが多いと思います。また、あなたのお勤め先との関係では、あなた自身も夫側の保険に加入していることもあると思います。
 そのような場合、数か月に1回程度の頻度で、あなたやお子様の受診歴が夫側に送られてしまいます。
 そのため、あなたの今のお住まいの近くの病院にかかってしまいますと、その病院の名前から夫側がある程度あなたの居住圏を把握してしまうリスクがあります。
従って、あなたやお子様が医療機関を受診する場合には、元々の自宅近くの病院を受診するか、その健康保険組合が対応してくれるのであれば、夫側に受診歴を送らないように申請しておく必要があります。

 

 なお、健康保険組合に詳しい事情を伝えると、夫の健康保険から強制的に脱退することも可能なのですが、この手段を取りますと、あなたが直接健康保険組合宛てにDVの相談をしていることが夫側に知られてしまいます。具体的には、健康保険組合から夫に対して直接「奥様からこのような申告がなされていますので、脱退届を提出して下さい。届を提出しなければ強制的に脱退することになります」といった連絡がなされてしまうのです。当然ながら、夫は、「うちの健康保険組合に余計な話をした」ということで激怒することが多いので、この手段は最終手段だとお考え下さい。

 

(4)裁判所の書類は、旧住所を用いることが多い

 離婚調停を起こす場合など、調停申立書にあなたの住所を記載する欄があるのですが、その欄には、旧住所(モラハラ・DV夫と一緒に住んでいた住所)を記載することが多いです。

 それ以外にも、陳述書など、あなたの住所やお子様の小学校名等を記載する欄があるのですが、いずれも「秘匿」と記載するなどして対応します。

 裁判所の書類は、裁判所側だけではなく、夫側も見ることができる書類が多いので、注意しながら対応する必要があります。 

 

 

3.付きまといを防止するための方法


 別居先としてあなたの実家を選んだ場合や、あなたの勤め先を変更できないため、夫側に勤め先は知られているというような場合には、夫が実家を急に訪れたり、あなたの勤め先にやってくるというケースもあります。
このような付きまといを防止するためにはどのような手段があるかについて解説します。

(1)夫がDV夫で、その客観的証拠もあるなら保護命令が一番安心
 同居中の夫の問題行動がモラハラだけではなく、直接的な暴力等の場合で、あなたが怪我をした診断書や打撲の写真等がある場合、DV防止法上の保護命令を申し立てる方法が一番効果的です。
 この保護命令というのは、6か月間あなたに近付くこと等を禁止する命令(接近禁止命令)になります。
 6か月間という期間限定にはなりますが、この命令の内容は警察にも共有されますので、格段に警察に相談しやすくなりますし、警察も厳格に対応してくれます。
 このように安心な反面、裁判所も安易に保護命令は出してくれませんので、あなたが怪我をした診断書や打撲の写真等の客観的証拠を要求されることが多く、これがないと認められにくいという点が難点と言えます。
 また、保護命令は6か月という期間に限定されますので、この6か月間の間に夫側が特段大きな問題を起こさない場合には延長が認められないというのも短所の一つと言えます。

(2)警察への相談
 前述のようなDV防止法の保護命令は認められないとしても、あなたが夫と一緒に生活していた際によく怒鳴られていたり、脅迫されていたというような場合には、警察に相談すると、親身に相談に乗ってくれます。
 警察署によって対応は異なるのですが、どうしても、夫の付きまといに不安があるというような場合には、別居の前に事前に警察に相談に行き、警察の方から夫に電話をしてもらうということもあります。

 ただ、夫からあなたへの暴言等をお子様の前でも発しているとか、直接お子様への暴言等があると、警察は児童相談所に相談しなくてはならないということになって、状況がこちらの予期せぬ方向に進むこともあります。
 児童相談所が介入してくると、職員がお子様と直接話をしたいといった話になり、別居したばかりで不安定なお子さまが傷つくということもありますので、児童相談所の介入を避けたいというときには、児童虐待に絡む話はあまり警察に申告しないほうが良いかもしれません(もちろん、夫からの悪質な児童虐待等があった場合には積極的に相談すべきですが)

(3)ストーカー規制法に基づく警告
 前述のように事前に警察に相談に行き、警察から夫に対して「奥さんが探さないで欲しいと言っているので探したり付きまとったりしないように」と注意していても、あなたの勤め先を夫側が訪れて来たり、あなたに頻繁にメール等を送り続けるというような場合には、警察に相談して、ストーカー規制法に基づく警告を発してもらうという方法もあります。
 ただ、ストーカー規制法に基づく警告については、警察署によってはあまり積極的ではないこともあります。

 なお、モラハラ・DV夫側は、あなたではなく、「子供に会いたくて連絡を取っている」といった形で言い訳をするケースもあります。この場合、ストーカー規制法違反とすることは難しく、迷惑防止条例違反で警察に対応してもらうことになります(残念ながら、迷惑防止条例違反ですと、ストーカー規制法違反よりも、一層警察の動きが鈍いケースが多いです)

(4)弁護士を経由した警告
 あなたが既に弁護士に依頼している場合には、相手の問題行動が認められた次第すぐに弁護士から警告を発するという方法もあります。
 警察からの注意等ですと、旦那側を刺激し過ぎてしまうおそれがありますし、ことが大きくなりすぎる危険性もありますので、弁護士からの警告だけで、夫側が付きまとい等を中止するようであれば、あまり警察に頼り過ぎないほうが良いかもしれません。

 

(5)その都度裁判所と情報共有する

 残念ながら、モラハラ・DV夫の付きまとい行為を直接防止する裁判手続きを取ることは難しいケースが多いです。

 ここでお話したいのは、調停手続き中といった場合に、調停の席や調停の合間の場合には、書面で裁判所側にも情報共有するということです。

 当然ながら、調停委員としても、冷静に話し合いをする環境を整えたいと考えますので、それに反するような行動については注意してくれることが多いです。

 モラハラ・DV夫側も、付きまとい行為をしていることで、調停委員の印象を悪くすると不利に働くことから、今後の付きまとい等を控えることが多いです。

 

 

4.基本的には粘り強く対応するしかない


 付きまとい行為を繰り返すモラハラ・DV夫は、一旦は収まっても、(残念ながら)ほとぼりが冷めたところで再発するというケースもあります。

 そのため、その都度、弁護士経由で警告書を送るなどして、粘り強く対応せざるを得ないこともあります。

 ただ、毅然とした対応を続けていくと、いつまでも付きまとい行為が続くというケースは非常に少ないので、毅然とした対応を取り続けることになります。

 

 

5.まとめ


・こちらの居場所を知られないためには以下のような方法・注意点がある
① シェルター等別居先の慎重な選定
② 住民票を移動しないという選択
③ あなたやお子さんの病院の受診先には注意が必要

④裁判所に提出する書類には旧住所を記載することが多い。
・付きまといを防止するためには以下のような方法・注意点がある
① DV防止法に基づく保護命令(接近禁止命令)
② 警察への相談
③ 警察からのストーカー規制法に基づく警告
④ 弁護士からの警告

⑤(調停中の場合など)裁判所に情報共有して牽制する

 

 

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モラハラ夫とは離婚すべきか?

2021.08.09更新

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1.モラハラ夫とは離婚すべきか?


 私は、モラハラ・DVの関係でのご相談を受けることも多いものですから、ご相談の際に「私みたいなケースですと離婚した方がいいんですかね?」という質問を受けることもあります。
 その場合、私の方からは「それを決めるのはあなた自身なので、私の方で決めることはできません」といった回答をすることが多いです。
 無責任な回答のようにも見えますが、離婚するかどうかは、今後のあなた自身の人生に関わる重要な問題ですから、私の方で決められる話ではありません。そのため、「あなたの人生に関わる重要なお話なので、あなた自身で決めて欲しいんです」とお話するようにしているのです。

 

 

2.モラハラの重症度?


 このような回答をすると、「皆さんどうなさっているんですか?」とか「私のケースって皆さんのケースと比べてどうなんでしょうかね?」といった再質問を受けることも多いです。
 そのため、私のご相談に来られた方には、おおよそのモラハラ被害の重症度をお話することもあります。ただ、初回の無料相談ですと、時間が限られているというところもありますし、正確な数値化が難しいというところもありますので、「100点満点の中での○○点です」といった点数化まではしていません。

 要するに、深刻なものだと感じたときには、私の方からも、「それなりに深刻なものだと感じます」とお伝えしますし、逆に、そこまで重くはないと感じたときには「残念ですが、当事務所にいらっしゃる方はもっと重い方の方が多い印象です」といったご回答をすることもあります。
 あくまで重症度の目安をお伝えするというイメージになります。

 

 

3.「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」というわけではない!


(1)必ずしも相関関係にはないこと
 ここまで説明をしますと、皆さん、「私の場合重症なのかしら?」ということを気になさると思います。そして、「重症だと言われたら別れなくっちゃ」と考える方も多いと思います。
 ただ、そこまで単純に割り切れる話ではありません。
 弁護士の目から見ても重症と思われるケースですと、率直に言って同居生活を続けていくことはオススメできませんので、私の場合、目の前の相談者の方には「重症と思われますので、同居を続けることはオススメしません」と率直にお伝えすることが多いです。

 しかし、それでも離婚まではしたくないという方も相当数いらっしゃるのも事実です。大きな要因としては以下のようなものがあると思います。
①その人の感じ方の問題
②お子様のことを考えての結論
③今後の生活の問題
以下、それぞれについてご説明します。

(2)その人の感じ方の問題
 より分かりやすく言いますと、許容性とか寛容性といったお話になります。
 どんなに言われようと受け流すことができたり、逆に、必要な範囲で言い返すことができるので、離婚という最終決断まではしなくてもやっていけるといったことです。
 このことは逆も然りでして、重症とまでは言えないケースでも、そのことで、気に病んでしまっているとか、心身に不調が生じているというような場合には、今後の同居継続は見直した方が良いかもしれません。

(3)お子様のことを考える
 片親にすると子供に不憫であるといった話です。このことは、お子様が旦那様にどのくらい懐いていて、また、旦那様の方もお子様とどのように接しているのかといった点も大きく影響すると思います。
 ただ、最近は離婚される方も増えてきていますので、片親だと子供が差別されるということは以前よりもかなり減ってきているように感じます。
 また、モラハラやDVによってあなたの心身に不調をきたしているようなケースですと、これ以上我慢はしない方が良いとアドバイスさせていただくことも多いです。

(4)今後の生活のこと
 いざ離婚したとしても、今後の生活に大きな支障を来すようであれば、簡単に離婚できないということもあろうかと思います。
 金銭的なお話は、弁護士としても色々とアドバイスできるところでもありますので、必要に応じてシミュレーションさせていただくこともあります。
 なお、都内で部屋を新たに借りることは経済的に厳しいということでご実家を別居先に選択する方も多くいらっしゃいます。

 

 

4.「一旦は別居する」というのも一つの選択肢である。


 色々とインターネットの検索をしていると、「モラハラなので早く離婚した方が良い」と書いてあるサイトなどもあって、焦って相談に来られるという方もいます。
 ただ、仮にそれがモラハラだったとしても、即離婚または離婚しないの2択で考える必要はないと思います。
 要するに中間として一旦別居という選択肢があるからです。
 ご夫婦直接での話し合いが難しいようであれば、お互いのご両親に間に入ってもらうなどして、一旦別居の道筋をつけるということもあり得ると思います。

 別居をしてみると、あなた自身の体調の変化等についてもしっかりと認識できますし(大きな変化が生じる例としては、①別居することで同居中の窮屈な生活から解放されるとか、もしくは、②同居中の束縛が強かったため、別居することで一気に溜まっていた疲労が出て、しばらくは休養を取りたくなるとか)夫側の様子を見て、許せる気持ちになるかどうかも試すことができるからです。
 ただ、何度か別居を繰り返しているような場合には、夫側への効き目も薄くなっていると思いますので、いよいよ離婚を決断したほうが良いかもしれません。

 

 

5.まとめ


・モラハラの重症度は、受け手の感じ方の問題もあるため一概に点数化しにくい。
・「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」という相関関係では必ずしもない。
・離婚に踏み切るかは、①お子様のこと、②今後の生活の経済的問題等も考慮に入れて検討する必要がある。
・すぐに離婚ではなく、一旦別居という選択肢もある。

 

 

6.離婚の見込み、条件面などでご不安があれば、お気軽にご相談ください。


 離婚すべきか決めるにあたっても、離婚で裁判までしなくてはいけないのか、どんな条件で離婚できるのかをシミュレーションしておきたいという方もいると思います。
 そのような場合には、初回相談は無料ですのでお気軽にご相談ください。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

突如調停の相手方にされてしまった方へー【調停テクニック15】調停委員が言う「中立・公正」って?

2021.08.02更新

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1.調停委員からの最初の説明


 調停委員からは、調停手続きがどのような手続きなのかを説明するにあたり、以下のような説明をすることが多いです。(以下の一部であったり、他の説明等をすることもありますが、一般的には以下の内容が主となることが多いです)

 ①調停は判決のように裁判所が一定の結論を強制するものではなく、あくまで話し合いの手続である。
 

 ②調停委員はあくまで中立・公正な立場で手続きに関与する。
 

 ③今この場に出席しているのは男女1名ずつの調停委員だが、調停委員会としては裁判官も加わっており、3名で構成されている。ただ、裁判官は同時並行で複数の事件を担当しているので、通常はこの2名の 

  調停委員しか出席しないが、随時裁判官とも相談しながら手続を進めている。
 

 ④調停委員は守秘義務を負っており、また、調停手続きは非公開の手続なので、あなたがこの場で話した内容が外で漏れることはないので安心して話をしてもらって構わない。
 

 ⑤調停の手続はお互いに譲歩しないと決着しないことが多いので、協力願いたい。
 

 ⑥手続きの中で分からないことがあれば遠慮なく言って欲しい。
 

 ⑦調停室の中での会話の録音等は禁止されているので協力願いたい。
 

 ⑧調停が成立した場合、その調停の内容は確定判決と同様の効力がある。

 今回は、上記の②について解説していきます。

 

 

2.調停委員はバランスを考えて、お互いに逆のことを言うこともある。


 調停委員が言う「中立・公正」とは、どちらかの言い分だけを信用したり、どちらかだけの肩をもって手続を進めることはないという意味です。
 ただ、だからといって、お互いが述べる言い分を相手にただ伝えるだけでは、ただのメッセンジャーにしかならないので、一向に手続きが終息に向かいません。
 そこで、調停委員は、お互いに対して、逆のことを伝えてくることもあります。

 

 例えば、あなたが復縁を強く希望している場合でも、奥様側の様子を見て、「奥さんの離婚の覚悟はかなり固いですよ」「奥さんの様子を見ると、なかなか夫婦仲良くというのは難しく感じます」といった伝え方をしてくることが多いです(要するにあなたの意見と逆のことを伝えてくるということ)。
 ただ、このような言い方をしてくるから、調停委員が奥様の肩を持っているのかというと、調停委員は逆に奥様に対して「あなたの気持ちは、旦那さんに伝えましたが、旦那さんは復縁を強く希望しているようです」という伝え方をしていることが多いです(要するに奥さんに対しても奥さんの意見と逆のことを伝えるということ)。

 もちろん、この「逆」というのは、こちらが話していないことを相手に伝えるという意味ではなく、互いにとって簡単に受け入れにくいような話をするという意味です。
 このように、お互いに逆のことを伝えていることで、調停委員としてはバランスをとっていることも多いので、あなたの目の前で奥様の意見の話が多いからと言って、安易に「奥様の肩を持っている」とは考えないほうが良いかもしれません。

 

 

3.中立・公正でも、法律の解釈等については意見を述べることもある


 前述の通り、調停委員は中立公正な立場で話をするように努めますが、調停実務の一般的な取扱い等については、意見を述べてくることが多いです。
 例えば、婚姻費用や養育費の金額については、一般に算定表に基づいて算出することが大半なので、調停委員も、「算定表だといくらになりますので、この数字を軸に検討してもらえませんか」といった意見を述べてくることもあります。
 もちろん、調停なので、このような調停委員の意見に従うか従わないかはあなたの自由です。
 ただ、前述の通り、調停委員の役割として、お互いの言い分の伝言役をするだけということでは、手続きは円滑に進みませんので、上記のような意見を述べて来たりするのです。

 

 

4.調停委員は過去の出来事について白黒つけないことが多い


 例えば、妻側が、裏付けの証拠等を提出してきた場合でも、調停委員は過去の出来事があったかなかったかを確定することはできませんので、「実際奥さんが言うような出来事があったかは分かりません」ということも多いです。
 多少裏付けの提出があっても、そのことで奥様側の肩を持つと中立性が損なわれてしまうからです。
 逆も然りでして、こちらの言い分を通そうと色々と証拠を提出しても、調停委員がこちらの言い分をそのまま受け入れてくれることは少ないです。そのため、白黒つける、こちらの言い分を一方的に認めさせるというような姿勢で調停に臨むのは避けたほうが良いです。

 

 

5.中立性に疑問がある場合には、そのことをしっかり伝えてしまってよい


 前述のように大半の調停委員は、中立に手続きを進めようと努めていることが多いのですが、ときに中立性に疑問がある場合もあります。

(1)こちらが弁護士をつけていない場合
 妻側が弁護士をつけて、こちらが弁護士をつけていない場合、どうしても弁護士がついている側(妻側)に配慮して手続きを進めていると感じることもあります。
 私が途中から調停に参加したケースでも、ご依頼者様から「先生が入ってから調停委員の態度がコロッと変わりましたよ」と言われることもあります。
 このような場合には、端的にこちらも弁護士を立てると、調停委員の態度が変わることも多くあります。

(2)中立性に疑問がある場合にははっきり言った方が良い
 弁護士から見ても、調停委員の中立性に疑問を持つ場合もあり、そのような場合には、「今の調停委員のご意見は強制ではないですよね」と発言するなどして牽制するようなこともあります。
 いずれにせよ、調停委員の意見が偏っていると感じるときには、タイミングを見てそのことを伝えたほうが良いです。

 

 

6.まとめ


・調停委員が言う中立公正とは、一方の肩をもって手続を進めないという意味である。
・ただ、調停の進行上、お互いに逆のことを伝えることもある。
・調停委員は法律解釈等については意見を述べることもある。
・調停委員は過去の出来事について白黒つけないことが多い。
・調停委員の中立性に疑問がある場合には、はっきり伝えてしまってよい。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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