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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(52)―職業は影響するか?

2023.05.29更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.旦那側が大手上場企業に勤めていて立場が安定しているという場合、有利になるのか?


 たまに私が相談に乗っておりますと、「夫は大手上場企業の部長職を務めていて定年までクビになることはまずないと思いますが、私はパートしかしていないので、とてもかなわないですよね?」という質問を受けることもあります。
 もちろん、職業の安定性は監護者指定にあたって全く無関係の事情ではありませんが、そこまで重視される事情でもありません。
 そのため、大手上場企業の部長VSパートスタッフだから太刀打ちできないということにはなりません。

 

 

3.逆に、旦那の仕事が忙しいという場合には、こちらに有利な要素になる


 旦那側が責任ある立場の場合、職を失うリスクは少ないかもしれませんが、その立場ゆえに、こちらに有利な事情になることもあります。例えば、以下のような場合には、旦那側がお子様に関わる時間を取りにくい事情になりますので、こちらに有利に働くことが多いです。

 ①旦那側は残業時間が長く、毎日帰宅するのは子供が寝た後の時間であることが多い。

 ②旦那側は急な休日出勤なども多く、休日すら予定が立てづらい。

 ③旦那側は出張が多く、一度出張すると4,5日自宅を空けることが多い。

 ④旦那側は仕事を最優先なので、平日の子供の発表会や保育参観などに参加したことは一度もない。

 ⑤旦那側は仕事を途中で抜け出してくるということができないので、子供が熱を出して早退等をした時に対応するのは常に私の方であった。

 

 

4.子供に豊かな教育を受けさせられるということは旦那側に有利な事情なのではないのか?


 これもたまに質問を受けることがありますが、旦那側の社会的地位、経済力などから、旦那側の方がお子様に豊かな教育を受けさせられるので、こちらに不利なのではないか?と質問されることもあります。
 今後の監護計画という面から、このような部分は無関係ではないのですが、あまり重視される項目ではないかと思います。
 なぜなら、裁判官は、お子様のことを考えた場合、①よりお子様が愛着を持つ親御さんに育ててもらった方が良い、②これまでお子様の育児に関わって来て、今後も安心して任せられる親御さんに育ててもらった方が良いという視点で考えることが多く、このような「もっと基礎的なこと」を重視することが多いからです。

 

5.結局、職業は監護者指定事件では全く考慮されないの?


 前述のように職の安定性とか経済力という点はあまり重視されないのですが、①看護師や②小児科医、③保育士という場合には、特にお子様の年齢が低いケースですと、考慮要素になることが多いです(逆に、それ以外の職業ですと、監護者指定事件との関係ではほとんど考慮されないことが多いと思います)。
 特に、看護師や小児科医の場合には、お子様の病気の際の対応やケアという面で、しっかりとした資格と経験を持っているということになりますので、重視される傾向が強いです。
 ただ、前述同様、例えば、小児科医であるがゆえに多忙過ぎてお子様と関わってこなかったという場合には、それほど有利な事情にはならないかと思います。
 また、どの程度考慮されるのかは、そのような資格で働いた勤務経験の長さ等が影響します。

 

6.まとめ


・職業の安定性・経済力はあまり大きな考慮要素ではない。
・逆に、社会的地位が高いがために多忙だという場合には旦那側に不利な要素になる。
・お子様に今後豊かな教育環境を準備できるという点はどれほど重視されない。
・但し、看護師や小児科医、保育士等は、考慮要素となることの方が多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(51)―旦那側は裁判官から保全を取り下げるよう言われたようだが、有利な状況なのか?

2023.05.15更新

弁護士秦

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.一口に監護者指定事件と言っても、実際の事件は3個同時並行で行われることが多い


 あなたのもとには突如裁判所から審判事件の通知が届いているのだと思いますが、その通知には、事件番号が3つ振られている事かと思います。要するに事件が3個同時に申し立てられた状態なのです。
 それでは、どうして事件が3個もあるのでしょうか。

(1)3つの事件の内訳
 監護者を争っていく場合には、よく「三点セット」などと称されることも多いのですが、事件を3つ同時に起こすのがオーソドックスです。その内訳は以下の通りです。
① 監護者指定審判申立事件
② 子の引渡し審判申立事件
③ 保全申立事件

 この3つの事件の概要ですが、①は、前述の「監護者」を設定してくれという事件になります。夫が監護者指定審判申し立てをしている今回のケースですと「夫をお子様の監護者に指定してくれ」というテーマの事件を起こしているという意味になります。
 次に、②は、夫が監護者になれば、夫がお子様を引き取って育てていくことになりますので、妻側にお子様を渡すよう要求する事件ということになります。
 最後の③は、一般的な審判事件よりも特に急いで結論を出してほしいと要求する事件ということになります。なお、保全事件の結論が先行して出されるケースもありますが、保全の結論は暫定措置ということになりまして、最終結論ではありません。

 

3.裁判官が保全取下げを求めた意図


 裁判官が保全取下げを求めた場合、手続きのどの段階で求めて来たのかによって、意味合いが大きく異なります。

(1)手続きの序盤で取下げを求めた場合
 手続きの序盤で裁判官が旦那側に保全の取下げを求めた場合、旦那側の敗訴濃厚というわけではなく、裁判官が「そんなに急いで決着をつける事件ではない」と考えている場合が多いです。
 即ち、前述の通り、保全事件とは、急いで決着をつけなければならないような事情があるときに、早く結論を出してもらう手続きになります。そして、これが認められるためには、奥様のところにお子様を預けておくと、虐待する危険性があるとか、海外転居してしまうとか、差し迫った事情が必要なことが多いです。
 裁判官の目から見て、このような「差し迫った事情」がないと感じた場合には、保全事件は取り下げさせて、本案事件でしっかりと事情を把握して結論を出したいと考えることは自然なことです。

 そのため、この時点での裁判官は「そんなに急ぎの事件とまでは言えなさそう」と考えているだけで、監護者事件の結論までは詳しく検討できていないということも多いということです。
 このように手続きの序盤で、裁判官が旦那側に保全事件の取下げを要請したからと言って、「奥様側が勝てそうだ」と考えないようにした方が良いと思います。

(2)手続きの終盤で裁判官が保全の取下げを要請した場合
 手続きの終盤になりますと、家庭裁判所調査官による調査が完了し、裁判官自身も事件の結論の見込みを立てていることが多いと思います。
 その上で、裁判官が旦那側に対して保全事件の取下げを要請したということは、あなたの勝訴の可能性が高いと評価して良いと思います(実際には、調査報告書が出来上がっていれば、その中に夫婦のどちらが監護者にふさわしいかが書き込まれることが多いため、それを読めば、結論の見込みは立つことが多いです)

 

4.旦那側が保全の取下げをしないとどうなるのか?


 旦那側が保全の取下げをしない場合、裁判官が結論を出すことになります。
 このようにして結論が出た場合、旦那側が素直にその結論に応じればよいのですが、応じない場合には、高等裁判所に即時抗告を申し立ててきます(要するに、家庭裁判所の判断が間違っているので、高等裁判所の目から見ておかしなところがないかを見極めて欲しいという申請をするのです(私は、分かりやすく「第2ラウンドの様なものです」とご説明することが多いです))。

 

5.まとめ


・監護者指定事件と一口に言っても、実際には以下の3つの事件が同時に審理されることが多い。
  ①監護者指定審判申立事件
  ② 子の引渡し審判申立事件
  ③ 保全申立事件

・手続きの序盤で裁判官が旦那側に保全の取下げを要請した場合、結論の見込みを立てずに要請しているケースが多い。
・逆に手続きの終盤で裁判官が保全取下げを要請した場合には、結論の見込みを立てた上で、要請していることが多い。
・旦那側が保全の取下げに応じない場合には、裁判官が結論を言い渡すことになる。
・旦那側が結論に不服がある場合、高等裁判所宛てに即時抗告(いわゆる「第2ラウンド」)をしてくる。

 

 

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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(50)―警察との関わり方

2023.05.01更新

弁護士秦

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神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.別居の前か後かによって関わり方の視点が異なってくる


 警察との関わり方については、別居の前か後かによって、望ましい関わり方が異なってきますので、分類して解説していきます。

(1)別居開始前の段階
 別居開始前の関わり方についての鉄則は、「夫からの虐待(疑いを含む)がある場合なるべく早くに警察に相談する」ということに尽きます。
 あまり大事にしたくないということで、警察への相談を躊躇う方も多いとは思いますが、あまり相談が遅れてしまいますと、監護者指定審判手続きの中で、あなた自身が「旦那側の虐待を見過ごしてきた」と評価されてしまうリスクがありますので、早めに相談することが得策です。

 なお、警察の目から見て旦那側の行動が危険だと認識した場合には、旦那側に誓約書(今回のような虐待行為に及ばないといった誓約書)を書かせることが多いので、その後の旦那の行動に対する抑止になることが多いです。
 また、警察が児童虐待の案件だと認識した場合には、警察から児童相談所に対して通告することが決まっていますので、児童相談所にも情報が共有され、その後、児童相談所も関わってくることになります。

(2)別居開始後の段階
 別居開始後は、旦那側がお子様と一緒に生活するという状況が解消されておりますので、「別居してから警察に初めて相談する」というケースは稀だと思います。
たまに、「これまでの出来事を警察の方にも記録しておいて欲しいので、警察を尋ねた方が良いのでしょうか?」という質問を受けることもありますが、あまり効果的ではないと思います。前述したように、警察を活用するにあたっては、児童虐待(疑いを含む)が行われている「真っ最中」でこそ効果が高いからです。

 ただ、別居後の最大の心配事は、旦那がこちらの居場所を探し回るのではないかという点、こちらの居場所を突き止めて押し掛けてくるのではないかという点かと思いますので、別居開始直後に警察に相談して、警察を経由して旦那側に探さないよう釘を刺してもらうとか、別居後何か起きた時に備えて警察に相談するという活用方法はあります。

 

 

3.児童相談所と警察どっちに頼った方が良いの?


 これまでの解説を読んでいて、ふと旦那から児童虐待が行われているケースの場合、結局、児童相談所と警察どちらに頼る方がより良いのか?という疑問が生じたかもしれません。この点について解説するにあたっては、児童相談所と警察の役割の違いについてお話した方が理解しやすいと思いますので、まず、役割の違いからお話します。

(1)児童相談所と警察の役割の大きな違い
 児童相談所の大きな使命は、お子様に取って安心・安全な環境を整えることです。これに対して、警察の使命は、怒ってしまった犯罪を捜査して犯人を処罰するための手続きを取ること、犯罪を未然に防止することです。
 児童虐待という場面に限ってみますと、児童相談所と警察署の役割が重複する場面もありますが、それぞれの役割には大きな違いがあります。
 例えばですが、激しい児童虐待が行われてしまい、そのことを奥様の方も防止しきれないという場合、児童相談所は、お子様の安全のために一時保護と言って児童相談所で一時匿うことを検討し始めることが多いです。これに対して、警察は、お子様を保護するという視点よりも、犯人である旦那様を逮捕したり処罰したりしようとします。

(2)結局どちらに頼った方が良いのか?
ア 暴力被害などがあなた自身にも及んでいる場合、より警察の対応を強めた方が良い
 旦那側があなた自身にも暴力を振るうなどしている場合、旦那側への処罰・牽制という視点を重視した方が良い気がします。
 そうしますと、どちらかというと児童相談所というよりも警察への力点を置いた方が良いと思います。
 あなた自身への暴力と児童虐待の両方がある場合、児童相談所はお子様の安全確保という観点から旦那側に指導等を行ってくれることが多いですが、警察から警告などをした方が、旦那側も「次は逮捕されるかもしれない」「今度同じことをすると処罰されるかもしれない」と考えることが多いので、牽制効果は大きいと思います。

イ お子様のケアの必要性が高い場合、より児童相談所の対応を強めた方が良い
 度重なる児童虐待によって、お子様が情緒不安定になってしまい、体調不良になってしまったり、不登校になってしまうなど、具体的な弊害が生じているような場合には、お子様のケアが非常に大事になります。
 そのため、より児童相談所の関与に力点を置いた方が良いと思います。

ウ 結局、児童相談所「OR」警察ではなく、児童相談所「AND」警察
 お子様への児童虐待が行われ、又は疑われるケースですと、児童相談所と警察のどちらかだけということではなく、「どちらも」ということになるケースが大半だと思います。
 ただ、両方が関与するにしても、前述の通り、どちらに力点を置くのかによって、対応のし方等が変わってきますので、そのあたりはメリハリをつけて対応した方がより良いかと思います。

 

 

4.警察への通報の意味合い


 たまに私が相談に乗っておりますと、奥様の方から「大変な事態が起きないと警察に相談するはずはないのですから、『通報した』イコール『大変な事態が起きた』ということは、調停委員や裁判官も分かってくれますよね?」という質問を受けることがあります。
 確かに、何もないのに警察に通報するということは考えにくいとは思いますが、警察に相談したということだけで、「大変な事態が起きた」と直接結びつけることは難しいと思います。

 通常は、調停委員等は、あなたが通報するに至る経緯などを詳しく確認し、旦那側にも事情を確認したうえで、当時どのようなことが起きたのかについてのイメージを持つことが多いと思います(要するに、「通報した」イコール「大変な事態が起きた」と単純に結びつけるのではなく、何があったから通報したのかという事情を正確に確認するということです)。
 そのため、「警察に通報したのだからもう安心だ」と考えるのではなく、警察への通報と合わせて、お子様が怪我をしたようなケースですと、怪我の部分の写真を撮ったり、病院を受診して診断書を取得するなど、しっかりと証拠集めをしておいた方が良いです。

 

 

5.被害届を出すべきか


 これは児童虐待というよりも、あなた自身が暴力被害を受けているケースで、警察から質問されることが多いのですが、暴力を受けた際に110番通報をして警察に臨場してもらうと、暴力の程度などによっては、警察から「奥さん被害届を出されますか?」と質問されます。
 旦那側にしっかりと懲りてもらうために被害届を出すこともなくはないのですが、被害届を出して旦那が逮捕・勾留されるということになりますと、職を失うリスク等があるため、被害届を出さずに済ませるというケースも多いです。

 なお、被害届を出すと、旦那側が釈放されたときに、あなたに対して逆恨みで一層暴力を振るうようになるというケースも多いので、被害届を出す場合には、通常、夫が逮捕されている間に、あなたは別居を開始してしまうというケースが多いかと思います。
 ちなみに、被害届を出さないと、「今回あったことは全てなしになってしまうのですか?」という質問を受けることも多いのですが、今回の暴力が全てなしになってしまうわけではありません(旦那側に刑事罰を科すという意味では、ハードルは上がってしまいますが、いずれにしても、「何もなかったことになる」ということではありません)。

 

 

6.警察に相談した記録は開示してくれるのか?


 あなたが警察に相談した内容は、概要を警察の方でまとめて記録化してくれています。そして、その記録については、あなたが個人情報の開示申請をすれば開示してくれます。
 ただ、警察側から相互暴力と捉えられてしまい、かつ、110番通報をしたのが旦那側という場合には、あなたからの開示申請は認められないこともあります。また、例えば、旦那からの暴力があって、あなたが実家のお母様に電話し、お母様が警察に通報したという場合には、あなたではなく、お母様からしか個人情報の開示申請ができないということもあります。

 このようにして開示された資料には、担当警察官の氏名等の情報は黒塗りになっていることが多く、また、旦那側の言い分は全て黒塗りになっています。そのため、あの時旦那がこう言っていたはずなので、それを警察の記録から証明したい、という場合、警察の記録から証明することはできません(黒塗りになっていて読めないため)。
 また、警察側は記録を開示してくれるのですが、開示に時間がかかることが多いです(3週間程度かかることが多く、警察が繁忙であったり、開示する記録が多いと1か月以上待たされることもあります)。そのため、早く警察の記録を取得したいという場合には、早めに警察に足を運んで開示申請をするということが必要になります。

 

7.まとめ


・児童虐待が行われている場合や疑われる場合、速やかに警察に通報すべきである。
・別居後は、特に別居直後、旦那側がこちらを探し回らないよう警察から伝えてもらう、というように活用することが多い。
・警察と児童相談所とでは目的が違うので、状況によってどちらにより力点を置くかは異なってくる。
・ただ、結局は、警察と児童相談所のどちらか、ということではなく、「どちらも」ということが多い。
・警察に通報したイコール「大変な事態が起きた」と単純に結び付けられるわけではない。
・被害届を出すかどうかは状況に応じて慎重に判断した方が良い。
・警察へ相談した内容は記録を開示してくれるが、旦那側の言い分は黒塗りになっている。

 

 

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