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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(51)―旦那側は裁判官から保全を取り下げるよう言われたようだが、有利な状況なのか? | 雨宮眞也法律事務所

離婚問題

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(51)―旦那側は裁判官から保全を取り下げるよう言われたようだが、有利な状況なのか?

2023.05.15更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.一口に監護者指定事件と言っても、実際の事件は3個同時並行で行われることが多い


 あなたのもとには突如裁判所から審判事件の通知が届いているのだと思いますが、その通知には、事件番号が3つ振られている事かと思います。要するに事件が3個同時に申し立てられた状態なのです。
 それでは、どうして事件が3個もあるのでしょうか。

(1)3つの事件の内訳
 監護者を争っていく場合には、よく「三点セット」などと称されることも多いのですが、事件を3つ同時に起こすのがオーソドックスです。その内訳は以下の通りです。
① 監護者指定審判申立事件
② 子の引渡し審判申立事件
③ 保全申立事件

 この3つの事件の概要ですが、①は、前述の「監護者」を設定してくれという事件になります。夫が監護者指定審判申し立てをしている今回のケースですと「夫をお子様の監護者に指定してくれ」というテーマの事件を起こしているという意味になります。
 次に、②は、夫が監護者になれば、夫がお子様を引き取って育てていくことになりますので、妻側にお子様を渡すよう要求する事件ということになります。
 最後の③は、一般的な審判事件よりも特に急いで結論を出してほしいと要求する事件ということになります。なお、保全事件の結論が先行して出されるケースもありますが、保全の結論は暫定措置ということになりまして、最終結論ではありません。

 

3.裁判官が保全取下げを求めた意図


 裁判官が保全取下げを求めた場合、手続きのどの段階で求めて来たのかによって、意味合いが大きく異なります。

(1)手続きの序盤で取下げを求めた場合
 手続きの序盤で裁判官が旦那側に保全の取下げを求めた場合、旦那側の敗訴濃厚というわけではなく、裁判官が「そんなに急いで決着をつける事件ではない」と考えている場合が多いです。
 即ち、前述の通り、保全事件とは、急いで決着をつけなければならないような事情があるときに、早く結論を出してもらう手続きになります。そして、これが認められるためには、奥様のところにお子様を預けておくと、虐待する危険性があるとか、海外転居してしまうとか、差し迫った事情が必要なことが多いです。
 裁判官の目から見て、このような「差し迫った事情」がないと感じた場合には、保全事件は取り下げさせて、本案事件でしっかりと事情を把握して結論を出したいと考えることは自然なことです。

 そのため、この時点での裁判官は「そんなに急ぎの事件とまでは言えなさそう」と考えているだけで、監護者事件の結論までは詳しく検討できていないということも多いということです。
 このように手続きの序盤で、裁判官が旦那側に保全事件の取下げを要請したからと言って、「奥様側が勝てそうだ」と考えないようにした方が良いと思います。

(2)手続きの終盤で裁判官が保全の取下げを要請した場合
 手続きの終盤になりますと、家庭裁判所調査官による調査が完了し、裁判官自身も事件の結論の見込みを立てていることが多いと思います。
 その上で、裁判官が旦那側に対して保全事件の取下げを要請したということは、あなたの勝訴の可能性が高いと評価して良いと思います(実際には、調査報告書が出来上がっていれば、その中に夫婦のどちらが監護者にふさわしいかが書き込まれることが多いため、それを読めば、結論の見込みは立つことが多いです)

 

4.旦那側が保全の取下げをしないとどうなるのか?


 旦那側が保全の取下げをしない場合、裁判官が結論を出すことになります。
 このようにして結論が出た場合、旦那側が素直にその結論に応じればよいのですが、応じない場合には、高等裁判所に即時抗告を申し立ててきます(要するに、家庭裁判所の判断が間違っているので、高等裁判所の目から見ておかしなところがないかを見極めて欲しいという申請をするのです(私は、分かりやすく「第2ラウンドの様なものです」とご説明することが多いです))。

 

5.まとめ


・監護者指定事件と一口に言っても、実際には以下の3つの事件が同時に審理されることが多い。
  ①監護者指定審判申立事件
  ② 子の引渡し審判申立事件
  ③ 保全申立事件

・手続きの序盤で裁判官が旦那側に保全の取下げを要請した場合、結論の見込みを立てずに要請しているケースが多い。
・逆に手続きの終盤で裁判官が保全取下げを要請した場合には、結論の見込みを立てた上で、要請していることが多い。
・旦那側が保全の取下げに応じない場合には、裁判官が結論を言い渡すことになる。
・旦那側が結論に不服がある場合、高等裁判所宛てに即時抗告(いわゆる「第2ラウンド」)をしてくる。

 

 

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