離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(6)
2015.09.21更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき
これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。
今回は、財産分与について説明させていただきます。
2.財産分与って何?
財産分与という用語は普段の生活ではあまり聞き慣れないと思います。この用語は、いくつかの性質があるとされていますが、中心的な意味合いは、「婚姻中の夫婦共同財産の清算を求める権利」と言えます。
ご夫婦で共同生活を送っている場合でも、通常は、旦那様と奥様のいずれかが家計の管理をされることが多いので、いずれかの財産が多くなります。
例えば、旦那様が家賃や生活費だけを奥様に手渡し、奥様が支払いをしていたという場合には、残りの給料は旦那様の預金に貯蓄されてゆくことになりますし、逆に旦那様がお小遣い制という場合には、給料の大半は奥様の預金に貯蓄されてゆくことになります。
ただ、旦那様が離婚時に相当の貯蓄をしている反面、奥様の貯蓄はほとんどないという場合、そのまま離婚しますと奥様は今後の生活に困ってしまいますし、何より、旦那様は奥様の内助の功があるからこそ安心して外で働けるという面がありますので、何の清算もしないというのは不公平とも言えます。
このような不公平を解消するものが財産分与になります。
これまでにご説明しました「養育費」は、今後のお子様の生活費・教育費等の意味合いになりますし、「慰謝料」は、不倫や暴力といった大きな落ち度がある配偶者に対する請求になりますので、「財産分与」とは全く別の概念になります。
3.財産分与ってどうやって計算するの?
私が財産分与についてご説明する際には「ご夫婦がお互いに別居当時の財産を一つのテーブルに全て載せて、それをご夫婦で折半するのが財産分与です。なお、財産分与の計算にあたっては、相続などで取得した財産は特有財産や婚姻前から持っていた財産は除かれます」と説明することが多いです。
具体的な計算方法は、
(別居時のご夫婦の財産-特有財産-婚姻前からの財産)÷2
という計算になります。
4.現在の財産じゃなくて「別居時の」財産を基準にするの?
今からお話しします「財産分与の基準日」というのは、その日付の財産を計算の基礎にするという意味です。例えば預金を例に取りますと、預金は給料の入金、光熱費や携帯電話料金の出金等で日々変動しています。このように財産の額が変動する場合、いつの時点の金額を基準にするのかを決めておく必要があります。これが「基準日」という概念になります。
では、財産分与では、いつの時点の財産を基準にするのでしょうか。
実務的には、現在持っている財産ではなく、別居時の財産を基準にするのが一般的です。離婚の前にご夫婦が別居している場合には、別居日と離婚日が大きくずれると言うことも珍しくありませんので、その様な場合、「別居日」なのか「離婚日」なのかという点は大きな問題になり得ます。
なぜ、「別居時」を基準にするのかというと、そもそも、財産分与は夫婦で一緒に生活している場合には、夫婦が助け合って財産を築いてきたのだから、これを清算しようと言う概念ですから、ご夫婦が別居した後は、一般的には夫婦が協力し合って財産を築くことは難しいので、別居時が基準となるのです。
5.長く家庭内別居をしていた場合、「家庭内別居の開始日」が基準になるの?
実際の別居や離婚の前に、夫婦の関係が冷め切ってしまい、同じ建物の中にいても旦那様は2階で暮らし、奥様は1階で暮らしており、お互いに全く顔も合わさないし、会話もしない、奥様が旦那様の家事をすることも全くないなど、家庭内別居が先行している場合、家庭内別居の開始日が基準になるのでしょうか。
前述した財産分与の考え方からすると、完全な家庭内別居になってしまいますと夫婦が協力して財産を築いたとは言えないように思えます。従って、完全家庭内別居であることが証明できた場合には、完全家庭内別居の開始日が「基準日」になり得ると思いますが、この証明は極めて難しいので、(家庭内別居開始日ではなく)「別居日」が基準になることが多いように思えます。
6.「基準日」って夫婦で勝手に決めちゃダメなの?
前述のような財産分与の計算方法で計算することは、別居時の財産関係を調べ直さなければならず手数がかかりますので、そこまでしなくても良いから早く離婚したいとお考えになる方もいらっしゃると思います。
そこで、ご夫婦共に、「現在持っている財産を分ける方が簡単だ」(つまり、別居の時の財産まで計算するのは面倒だ)とお考えであれば、現在の財産を分けるという方法でも構いません。
ただ、一度財産分与をしてしまいますと、後からその取消を求めること等は難しくなりますので、慎重に事を進めたいのであれば、必ず別居時の財産額も把握した上で、現在の財産を分けると合意した方がよいと思います。
財産分与についてはまだまだご説明したいお話しがございますので、次は次回のブログ更新時のご説明させていただきます。
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雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
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