【弁護士が解説】婚約破棄の正当な理由とは?
2018.07.17更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.婚約って?
婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。
法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。
婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。
2.婚約は簡単に破棄できない?
(1)実際どうなの?
インターネット記事などを見ていると、このような説明が多く見受けられるように思います。「相手から一方的に婚約破棄の話がされた場合、正当事由がないと、相手に慰謝料を請求できます」
このような文章を見ると、相手が「破棄する」と言えば、それ自体は認められてしまい、後はお金で解決するしかないようにも読めます。そのため、今一破棄そのものができるのかできないのかがはっきりしないのです。
(2)法律的には債務不履行という見方をする。
婚約が成立している場合、その男女は互いに誠実に交際する義務があります。そのため、相手が一方的に婚約を解消したいと言ってきて、こちらからの連絡に応じないようにすることは、この誠実交際義務に違反することになります。
このように約束したことを守らないことを、法律上は「債務不履行」などと読んだりします。相手の一連の言動や行動は、この「債務不履行」と評価されるのです。
そして、この誠実交際義務の債務不履行に対して、法律は、直接強制する手段を用意していません。「誠実に交際すること」というのは、本人の自発的意志に基づいて実施されなければ意味がありませんので、法律が強制することに馴染まないからです。
より分かりやすく言いますと、婚約は婚姻届の提出を目指した男女間の合意ですが、婚姻届を提出するという行為は他人が強制すべき内容ではありませんし、相手との愛情が失われた人に婚姻届の提出を義務付けることは望ましくないようにも見えると言うことです。
そして、実際に入籍している場合には、こちらも同意して離婚届にサインしないと離婚できませんが、婚約の場合、戸籍などの手続はしていませんので、こちらが同意していなくとも、相手が交際を拒絶することで婚約関係を解消したのと同様の状況が作り出せてしまうのです。
そのため、結局、婚約の破棄の問題は、慰謝料と言った金銭的な問題になってしまうのです。
3.それではどのような事情が婚約解消の正当な理由になるか?
(1)法律で離婚原因と定められている事情
民法770条には離婚を強制できる事情が列挙されており、その様な事情があれば、基本的には婚約解消にも正当な理由があるとされます。具体的には以下の通りです。
①相手が浮気した場合
②相手が生死不明になり3年が経過した場合
③相手が強い精神疾患にかかり、回復の見込みがないとき
④相手が頻繁に暴力をふるい、今後婚約関係を継続することが難しいとき
(2)社会常識的に今後の婚姻を断念してもやむを得ない事情がある場合
上記のような事情は、極端な事情でして、ある意味婚約解消が認められて当然のような内容と言えます。
他方で、それ以外の事情として婚約解消の正当な理由とされるかどうかは、その男女の交際状況や交際期間等も考慮しつつ、社会常識的にやむを得ないというような事情と言えるかどうかと言う点から判断されることになると思います。
判例上は、相手が結婚式直前に家出をして帰ってこなかったケースや相手に性的異常があるケースなどで婚約解消の正当な理由有りとされていますが、男女間のこれまでの交際状況や問題となった行為のタイミング等を総合的に考慮して判断していますので、単純に「相手に性的異常があれば婚約の正当理由があるとされる」と言うように一律に考えることはできません。
(3)では逆にどのような事情は「正当な理由」とみなされないのか?
よく挙げられる例としては、相性・方位が悪い、家風が合わないといった事情は婚約解消の正当理由にならないとされています。
また、判例を見ますと、親の反対や性格の不一致は、直ちに正当理由とはされていないようです。
ただ、性格の不一致と言った点は、より詳しく事情を聴いてみると、実は男性側のモラハラだったというケースなどもありますので、あなたが相手と結婚が無理だと考えた詳しい事情を確認していく作業が必要になります。
4.婚約解消の前に婚約が成立しているのか、婚約が継続しているのかの確認を!
あなたとしては婚約が成立していると考えていても、男女の交際の中での相手側からのリップサービスの類で、法律的には婚約とは言えないというケースもあります。
また、一度婚約したと言えても、関係が冷え込んで、自然解消していると思われるようなケースもあります。
このように現時点で婚約関係が残存していなければ、婚約の解消といった問題を考える必要もなくなります。
そのため、婚約解消の正当理由云々の検討よりも前に、現実に今婚約関係がそもそも残っていると言えるのかをしっかりと検討した方が良いでしょう。
5.まとめ
・婚約しているとお互いに誠実交際義務が発生する。
・相手が一方的に連絡を絶ったような場合には、誠実交際義務に違反するが、「誠実に交際せよ」と法律で強制することは難しい。
・結局、婚約解消に正当な理由がないと、慰謝料責任の問題になる。
・相手の浮気や暴力等は婚約解消の正当な理由になるが、他の事情が正当な理由になるかどうかはケースバイケースである。
・婚約解消の正当理由を検討し始める前に、現状も婚約関係が残っているのか、そもそも最初から婚約が成立していないと言えないかを検討する必要がある。
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