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【モラハラ・DV妻との別居準備(2)】そもそもこちらが家を出ないといけないのか?

2022.07.20更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚を前提に「別居」を選択する場合、そもそも、こっちが出ていかないといけないのか?


 あなた自身、離婚を前提にして別居の決断ができたとして、①自宅があなたの持ち家であるとか、②持ち家ではないが、あなたの借家名義であるという場合、あなた自身が出ていかなければならないのかについて違和感を覚えることだと思います。

 ただ、結論を申しますと、妻側を追い出すということは非常に難しく、現実的には、少なくとも一旦はあなたの方が別居せざるを得ないものと言えます。

 

 

2.どうして妻を追い出せないのか?


 妻を追い出せない大きな理由としては、①妻側の権利ないしあなたの側の義務の問題と②今後の離婚にあたってこちらが不利にならないための配慮という二つの視点があります。 

(1)妻側の権利ないしあなた側の義務の問題

 妻側の権利というのは、簡単に言いますと、妻側の移動の自由や生活場所選択の自由を指します。あなたの方から妻を自宅から退去させるということは、妻の側の「行きたい場所に行く自由」や「生活場所選択の自由」と直接衝突してしまいます。 

 また、民法752条は、夫婦の同居義務を課しています。もちろん、別居の正当な理由がある場合、あなたが自宅を出ること自体は同居義務違反の問題は生じにくいのですが、妻側を追い出す場合には、同居義務に直接衝突することになってしまいます。

 

 このようなご説明を致しますと、「夫側には生活場所選択の自由はないのか?」と疑問に感じてしまうかもしれませんが、もちろんあなたの方にもそのような自由はあります。ただ、それは、自宅に残る(要するに、妻側との同居生活を維持する)のか自宅を出て他の場所で暮らすのかのどちらかを選択する自由であって、結局は、妻側を追い出す根拠にはならないということです。

 

(2)今後の離婚にあたっての有利・不利の問題

 離婚原因の一つとして民法は、悪意の遺棄を規定しているのですが(民法770条1項2号)、これは、あなたが別居して、妻側の生活を顧みないというケースだけではなく、妻を追い出して極端に生活に困らせるといったケースも含みます。

 そのため、強引に妻を追い出そうとすると、悪意の遺棄に近くなってしまい、離婚がしにくくなるということも考えられます。

 

 

3.自宅についてはどう対処するのか?


 あなたの方が自宅を出る場合、あなたとしてはいつまでも自宅の家賃を負担できない、住宅ローンを負担できないというケースも多いと思います。そのような場合の対応方法について、借家と持ち家とに分けて解説します。

(1)借家の場合

 この場合には、一定の期間を区切って、妻側に借家名義を変更してもらうか、解約するというケースが多いと思います。

 なお、あまり短期間を設定して、実質的に妻を追い出すという方法ですと、前述のように「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いと思います。

 

(2)持ち家の場合

 持ち家の場合には、 一定の期間を区切って売却してしまうというケースが多いと思います。

 あなたとしては、自宅購入時には人生に一度の買い物ということで強い思い入れがあるかもしれませんが、妻側を説得して妻に穏便に出て行ってもらったとしても、あなたが戻ると、妻側に居場所を知られることになってしまいますので、モラハラ・DV被害が再燃することになりかねません。

 そのため、現実的な選択肢として売却するということになるのです。

 ただ、前述のように短期間を設定して、妻側の意見も聞かずに売却してしまうと、「悪意の遺棄」に該当し得ることになりますので、避けた方が良いです。

 

4.時間がかかりそうなので一旦同居したまま交渉するという選択をする人もいる


 妻からのモラハラやDVが激しい場合には、あまりオススメではないのですが、モラハラ・DV妻を追い出すことができず、他方で、折角の持ち家なのに自分が出ていくのも納得いかないという場合には、お互いに同居したまま離婚に向けた話し合い等を進めるというケースもあります。

 私が担当した事件でも、同居したまま離婚協議を行い、離婚協議が難航した際に、離婚調停まで同居したまま手続きを進めた事件もあります。

 但し、調停も上手くいかず、裁判をするという場合には、ほぼ別居が必須になってくると思います(同居したまま裁判を起こしても、離婚裁判の真剣度を裁判官から疑われてしまうという意味です)。

 

 

5.まとめ


・妻側の権利、今後の有利不利という観点から、妻側を追い出すことは難しい。
・自宅については、借家については、一定期間を区切って名義変更または解約、持ち家の場合には、一定期間を区切って売却するケースが多い。
・ただし、あまり短期間で自宅を処理しようとすると、離婚に向けた道のりが難航する危険性が高いので、慎重に検討する必要がある。
・お互いに同居したまま離婚調停までの手続を進めるというケースもある。 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【モラハラ・DV妻との別居準備(1)】そもそも、別居という選択をすべきか

2022.07.18更新

弁護士秦

 

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1.「別居」と言っても大まかに二通りの「別居」がある 


「別居」と一口に言いましても、大まかには、以下の二通りがあります。
  ①離婚を決意して、もう自宅には戻らないという意味での別居
  ②まだ離婚を決意しきれておらず、冷却期間としての別居
 以下では、この二通りについて、それぞれ詳しく解説していきます。

 

 

2.離婚前提での別居


 私のところにご相談に来られる方は、既に離婚の決意を固めてご相談に来られる方がかなり多いですが、まだ悩んでいるという方も相当数います。
 そして、「秦弁護士はモラハラに詳しいと聞いていますので、私が離婚したほうが良いか教えて下さい」とか「このような状況だと離婚したほうが良いと思いますよね?」と質問を受けることも多いです。
 ただ、離婚するかどうかはあなた自身の人生に関わるお話ですので、私が決めることはできません。
 そうはいっても、モラハラ・DV妻と離婚したほうが良いのかどうかは、大きく以下のような検討事項がありますので、参考になさって下さい。

 

 

3.モラハラの重症度?


 離婚するかどうかはあなた自身が決める事であって、私で決められる話ではないとお話しますと、「皆さんどうなさっているんですか?」とか「私のケースって皆さんのケースと比べてどうなんでしょうかね?」といった再質問を受けることも多いです。
 そのため、私のご相談に来られた方には、おおよそのモラハラ被害の重症度をお話することもあります。ただ、初回の無料相談ですと、時間が限られているというところもありますし、正確な数値化が難しいというところもありますので、「100点満点の中での○○点です」といった点数化まではしていません。
 要するに、深刻なものだと感じたときには、私の方からも、「それなりに深刻なものだと感じます」とお伝えしますし、逆に、そこまで重くはないと感じたときには「残念ですが、当事務所にいらっしゃる方はもっと重い方の方が多い印象です」といったご回答をすることもあります。

 あくまで重症度の目安をお伝えするというイメージになります。

 

4.「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」というわけではない!


(1)必ずしも相関関係にはないこと
 ここまで説明をしますと、皆さん、「私の場合重症なのかしら?」ということを気になさると思います。そして、「重症だと言われたら別れなくっちゃ」と考える方も多いと思います。
 ただ、そこまで単純に割り切れる話ではありません。
 弁護士の目から見ても重症と思われるケースですと、率直に言って同居生活を続けていくことはオススメできませんので、私の場合、目の前の相談者の方には「重症と思われますので、同居を続けることはオススメしません」と率直にお伝えすることが多いです。

 

 しかし、それでも離婚まではしたくないという方も相当数いらっしゃるのも事実です。大きな要因としては以下のようなものがあると思います。
①その人の感じ方の問題
②お子様のことを考えての結論
③今後の生活の問題
以下、それぞれについて詳しくご説明します。

 

(2)その人の感じ方の問題
 より分かりやすく言いますと、許容性とか寛容性といったお話になります。
 どんなに言われようと受け流すことができたり、逆に、必要な範囲で言い返すことができるので、離婚という最終決断まではしなくてもやっていけるといったことです。
 このことは逆も然りでして、重症とまでは言えないケースでも、そのことで、気に病んでしまっているとか、心身に不調が生じているというような場合には、今後の同居継続は見直した方が良いかもしれません。

 

 なお、「自分としてはまだ我慢できる」と感じていても、実際には、モラハラ・DV妻との同居環境の中にいることで正確に判断ができていないというケースもありますので、悩んだ時には家庭内の実情をご両親等に相談して、客観的な意見を聞いてみても良いかもしれません。

 

(3)お子様のことを考える

 お子様のことを考える場合、大きく二つの視点が必要になります。一つ目が、妻側が親権者になってしまい、こちらのお子様へのかかわりが薄くなってしまうという懸念、もう一つが、別居後、妻からの暴言や暴力がお子様に向かってしまわないかの危惧です。

 まず一つ目の点ですが、残念ながら、現在の日本の法律ですと、男性側が親権を獲得することは難しいケースが多いです。離婚後、妻が親権者になると、あなたが今後のお子様の養育に意見を言おうとしても、これに従わないというケースが非常に強く懸念されます。

 そして、これも非常に残念なことですが、モラハラ・DV妻は、こちらが別居すると、「もう一生子供には会わせない」といったことを口にすることもあります。そのため、面会交流のスタートまでに時間がかかってしまうというケースも相当数あります。

 次に、別居後の妻の攻撃が子供に向かうという点ですが、そのことを理由としてこちらが親権を獲得できれば一番良いのですが、現時点で妻側の攻撃がお子様に向いていないという場合、それだけを理由に親権を獲得することは難しいです。そうすると、残念ながら、妻側が親権を獲得する可能性が高いという前提で別居しなくてはならないので、その後にモラハラ・DV妻の攻撃が子供に向いて行く危険性を考慮する必要があります(そのような危険性を考慮して、一旦は別居を取りやめるという方もいらっしゃいます)

 

 これらの点を踏まえて、じっくりとモラハラ・DV妻と離婚すべきか、離婚を目指して別居すべきかを検討してみて下さい。

 

 

5.離婚を前提としない別居 


前述のような要素を考慮して、あなた自身モラハラ・DV妻と決別すると固く決意できれば良いですが、決めきれないということもあると思います。
 そのような場合には、無理に離婚を急ぐ必要もないと思いますので、一旦別居という選択をする人もいます。

 離婚するか決めきれていないけれども別居するという選択には以下のような意義等があります。
  ①あなた自身の体調が悪く、一旦離れて体調を回復したい。
  ②モラハラ・DV妻のひどい行動・言動があったので、反省させるために一旦別居する。
  ③夫婦喧嘩が絶えず、自宅にいると冷静に考えをまとめられないので、冷静に考えるために別居する。
  ④自宅という場所から一旦抜け出して、これまでの生活を客観的に見つめ直すために別居する。
  ⑤モラハラ・DV妻の本当の気持ちを確かめるために別居する。(例えば、夫婦喧嘩の時などに、モラハラ・DV妻は「もう離婚だ」ということを口にするが、それが真意なのかを確かめるために一旦別居するといったケースです)

 なお、夫婦としての再生の道を諦めていないのでしたら、別居ではなく、モラハラ・DV妻の両親その他の親族等にも間に入ってもらって話し合いをするとか、夫婦カウンセリングを受けるという選択をする方もいますので、そちらも検討してみて下さい。

 

 

6.まとめ


・「別居」には、大まかに離婚前提の別居と、離婚するか悩みながらの別居の二通りがある。
・「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」という相関関係では必ずしもない。
・離婚前提の別居に踏み切るかは、①妻のモラハラが許容限度内なのか、②お子様のこと等を考慮に入れて検討する必要がある。
・離婚するか悩んでいる時点で、一旦別居するという選択もある。
・ただ、離婚するか悩んでいる場合、「別居」ではなく、親族等に間に入ってもらって話し合いをしたり、夫婦カウンセリングを受けるといった手段もある。

 

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【モラハラ・DV妻との別居準備(3)】別居先は近場が良いか遠くが良いか

2022.07.18更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.別居先選び


 

 モラハラ・DV妻との生活に強い恐怖感・不快感や倦怠感を持つようになった場合、別居や離婚が頭によぎるようになると思います。

 妻側に改善を要求したものの、一時的にしか改善されない、もしくは、改善すらされない、酷いケースですと、改善しないばかりか、こちらを非難してくるというケースすらあります。

 このような状況ですと、あなたは妻との生活を断念し、離婚の前提として別居を真剣に考えていくことになると思います。別居先の検討要素等について、詳しくは以下の通りです。

 

 

2.別居先は近くがよいのか遠くがよいのか?


 

 別居といった場合にまず考えなければならないのは、別居先の問題だと思います。

 より分かりやすく言いますと、今の自宅の近くが良いのか、遠い場所の方が良いのかという問題です。

 

 別居先を近場とするのがよいのか遠隔地にするのがよいのかは、詳しくは、以下のような要素を総合して検討した方が良いと思います。

 

①同居中の妻の行動や言動等

 もちろん、同居中の妻からの暴力が日常的であったような場合には、できる限り遠隔地に転居した方が安全でしょうし、他方、妻のモラハラは無視が主体的であったという場合には、さほど遠隔地にまで転居しなくて良いかもしれません。

 妻の危険性とも言えますが、危険度の高低によって、別居先選択は大きく影響すると思います。

 

②経済的問題

 仮に、自宅の住宅ローンが残っている場合、妻側への婚姻費用の負担も考えると、経済的余力があまり生じないというケースもあると思います。

 また、夫婦は離婚するにしても、そのことで子供に迷惑を掛けたくないので、学費はしっかりと払っていくつもりだという場合も、学費を支払ってしまうと、経済的余裕はあまり生じないかもしれません。

 そのため、あなた自身の現在の収入に不安がある場合には、まずは実家に避難して、経済的な不利をカバーするというケースも多くあります。

 いずれにしましても、経済面は、今後のあなたの生活にとって非常に重要な要素なので、今後のあなたの生活が経済的に立ちゆかなくならないよう慎重に別居先を選ぶ必要があります。

 

③お子様との接点面

 お子様が中学生や高校生といった場合で、モラハラ・DV妻を通さずに直接連絡が取れるとか、良好な関係が築けているという場合には、お子様との接点を考えて、あまり遠くに引っ越さない方が無難だというケースもあると思います。

 一旦別居になっても、お子様の親権をしっかりと獲得したいという場合には、お子様の学校に対する希望も、別居先選びのの検討要素になります。

 

 

3.近場と遠隔地どちらを選ぶかの選択・実例


 

 私が担当している事件を見ておりますと、比較的自宅近くに別居した方もいれば遠隔地に別居した方もいます。別居先をどのように決めたのかについては、色々なご意見がありましたので、以下で説明を交えながら、詳しくご紹介いたします。

 

(1)妻が暴力を振るうので、遠隔地を別居先にした。

  妻が暴力を振るうようなケースでは、相手にこちらの居場所を知られないようにする必要がありますので、妻が居場所を探っても分からない場所に別居するのです。

 妻に居場所を推測されないようにする必要がありますので、あなたの実家や親戚の家の近く等は避けることが多いです。また、妻側に一切察知されないようにと言うことで、例えば自宅は東京にある場合に、東京都内ではなく、敢えて神奈川県にするなど、全く縁もゆかりもない場所を敢えて選んだという方もいらっしゃいました。

 

 特に新型コロナウイルスの流行に伴って、ほぼ在宅勤務の形になった方などもいらっしゃって、そのような場合には、「遠隔地に住んでも、ほとんど仕事に支障が出ない」ということで、遠隔地を選択するという方も増えてきている印象です。

 

(2)妻が暴力を振るうので、遠くの親戚の家に仮住まいさせてもらうことにした。

 これまでの説明同様妻が暴力を振るうため、どこか遠くに別居する必要があるけれども、通常の借家だと家賃が高いという場合などに、遠くの親戚の家に住まわせてもらうということもあります。

 ただ、親戚の家の所在を妻が知っていては避難の意味がありませんので、例えば、親戚名義の建物だけれども、親戚本人は住んでいないし、妻にも所在が発覚していない場所に避難するケースなどがあります。

 

(3)経済的な問題もあって実家に戻ることにした。

 別居を決断したけれども、住宅ローンの負担や子供の学費の負担なども考えて、ある程度の経済的余力を残しておきたいという観点から、実家へ避難したというケースです。

 

 ただ、実家に避難する場合、モラハラ・DV妻に居場所を把握されるリスクが非常に高いので、以下のような要素を総合的に検討して判断するのがよいと思います。

(メリット1)家賃負担を軽減でき、経済的である。

(メリット2)モラハラ・DV妻も、こちらの実家には頭が上がらないので、実家にいることで安全性が増す。

(メリット3)こちらの居場所が全く分からないと、モラハラ・DV妻が、職場まで来てしまったり、警察に捜索願を出すなど、どのような過激な行動に出るか分からないので、ある程度予測できるところに住んでいた方が、妻の過激な行動を抑止できる。

(メリット4)嫉妬深い妻の場合、こちらの居場所が分からないと浮気だと主張し始める危険性が高いが、実家に住んでいれば、浮気の疑惑を軽減できる。

(デメリット1)居場所がバレやすく、頻繁に訪れてきたり、玄関先で騒がれるケースもある。

(デメリット2)DV妻の暴力が苛酷な場合には、実家内に無理に乗り込んでくるなど身の危険を感じる場面が生じうる。

(デメリット3)子供の親権を本格的に争っていく場合、実家の協力が不可欠であるが、妻が乗り込んでくるなどして迷惑が掛かってしまうと、協力に消極的になってしまうリスクがある。

 

(4)近場への転居?

 お子様との接点といった観点からは、近場に転居するという選択肢も可能性としてはあり得るのですが、当職が担当したケースでは、近場に転居した方はいらっしゃいませんでした 。

 当職が見ておりますと、モラハラ・DV妻の行動や言動については、男性側からは声を上げにくい面があったり(残念ながら「男なんだからバシッと言いなよ」というような感じで真剣に受け止められないケース等が多いということです)、別居といった大きなアクションを起こすと逆上した妻が何をするか分からないと考えて、限界まで我慢してしまうケースが多い印象です。

 そうすると、近場に転居して、居場所が発覚することが怖いと考える方が多いのだと思います。

 

4.まとめ


・別居先選びの検討要素として重要なものは①妻の同居中のDVやモラハラの状況・程度、②あなたの今後の経済面、③お子様との接点・希望といった点になる。

・モラハラ・DVの案件では、別居先として以下のようなところが選ばれている。

 ①遠隔地の借家

 ②遠隔地の親戚の家(妻に居場所が全く判明していない場所)

 ③実家

 

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夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(22)ー夫の児童虐待をどう証明すればよいか

2022.07.11更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.「児童虐待」の位置付けの確認


 たまに、私のところにご相談に来られる方の中には、夫の児童虐待をしっかりと証明できれば監護権を確実に獲得できるので、児童虐待の証明だけに全力を注ごうと考えている方を見かけます。
 確かに、児童虐待をしっかりと証明できれば、監護権の争いで大きくリードできることは間違いないのですが、監護権の争いの中では、現在の監護状況と別居前の監護実績といった点も非常に重視されます。そのため、児童虐待にばかり目を奪われて、他の対策が疎かにならないよう注意する必要があります。

以下では、どのような証拠が児童虐待の証明として効果的なのかを解説していきます。

 

 

3.一番強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。
そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、監護権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

4.その次に確実なのは録音データ


夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

 

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

 

5.LINEやメール


 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

 

6.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。

例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

 

7.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

8.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

9.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。

 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で監護権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

10.まとめ


・児童虐待は監護者を決めるにあたって重要なポイントではあるが、それだけで監護者が決まるわけでもないので、他の判断要素を疎かにしてはいけない。
・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。
・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。
・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。
・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。
・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

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夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(21)ー勝つための秘訣は?

2022.07.04更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.勝つ為の秘訣は?


 結論から申しますと、監護者指定事件でのいわゆる「必勝法」のような簡単なものは存在しません。

 ただ、監護者指定事件は迅速性が求められ、時間が限られている中で要領よく準備をしなければならない関係で、よく感じる点をまとめると以下の通りです。
① 目先の文章にとらわれ過ぎないこと
② 何よりも「裏付け」という視点が大事
③ 手続が進んでいく中で状況が大きく変化する場合もあるので、臨機応変に対応すること

(1)目先の文章にとらわれ過ぎないこと
 監護者指定事件においては、夫側の言い分に対してしっかりと反論し、こちらの言い分を述べていく必要があります。
 ただ、夫側の文章があまりにこちらを悪く書いているときなどには、「夫をぎゃふんと言わせるくらいのきつめの文章を作って欲しい」とか「夫が15ページ文章を書いているので、こちらは最低でも2倍の30ページは文章を書いて提出して欲しい」と言ったことをおっしゃる方もいます。
 また、裁判官の気持ちを揺さぶる文章を作りたいので、表現方法を突き詰めて検討したいということを言うような人もいます。

 もちろん、こちらの言い分をしっかりと示すことは重要なのですが、その表現や分量といった形式面にとらわれ、そのことに時間を多く費やすことは得策とは言えません。
 監護者指定事件は準備の時間が限られていることが多いので、後述の「裏付け」の整理に時間を費やした方が良い結果に結びつくと思います。

(2)何よりも「裏付け」という視点が大事
 極端な言い方をしますと、監護者指定事件ではお互いに弁護士をつけていることが多いので、文章の表現力という面では大きな差は出ないことの方が多いです。そして、文章の表現力で勝敗が大きく変わるという事件はほとんどありません。
 むしろ、相手の言い分が間違っていると証明できる「裏付け」としてどれほどのものがどの程度あるのか、こちらの言い分が正しいと証明できる「裏付け」としてどれほどのものがどの程度あるのか、という整理の方がはるかに重要です。

(3)手続きの変化を読み取り臨機応変に対応すること
 手続きを進めていくと、①こちらが予測していなかったような証拠が夫側から提出されたり、②こちらの想定以上に裁判官が気にかけている争点が発見されたりと、事前の予測に反する展開になるケースもあります。
 特に監護者指定事件は、短期集中で審理が進んでいくケースが多いため、このような変化が生じることは、ままあります。
 そのような場合に、これまでの考え方に固執して手続きを進めてしまいますと、思わぬ結果となってしまうこともありますので、このような手続きの変化があった場合には、臨機応変に対応していく必要があります。

 

 

3.まとめ


・勝つための簡単な必勝法のようなものは存在しない。
・しかし、大きな視点としては以下のような点が重要である。
① 目先の文章にとらわれ過ぎないこと
② 何よりも「裏付け」という視点が大事
③ 手続が進んでいく中で状況が大きく変化する場合もあるので、臨機応変に対応すること

 

 

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【まとめサイト】夫が突然監護者指定審判を申し立ててきたー記事総覧

2022.06.24更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

夫から突然監護者指定申立を受けたケースを想定して、詳細な分析記事を執筆してきたのですが、既に第1弾から第34弾にまで及び、「一覧で秦弁護士のブログを読みたい」というご要望もございましたので、以下にまとめさせて頂きました。(実は、第35弾以降の記事も出来上がってはいるのですが、順次公開して参りますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします)

 

①夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(1)ーまず、何をすべきか

②夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(2)ー妻側の勝率は?

③夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(3)ー夫はどういうつもりでこんな手続きを取ってきたのか?

④夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(4)ー「連れ去り」になるケースって?

⑤夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(5)ー監護者として指定されるための6個のポイント

⑥夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(6)ー子の監護者指定審判の「手続」の特徴は?

⑦夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(7)ー監護者指定手続きでの「審判」って何だ?

⑧夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(8)ー証拠集めのポイント

⑨夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(9)ー証拠準備にかけられる時間は?

⑩夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(10)ー妻側であれば、大した準備をしなくても勝てるのか?

⑪夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(11)ー面会交流は避けられないのか?

⑫夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(12)ー監護補助者の有無はどこまで重視されるか?

⑬夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(13)ーこちらも弁護士を立てるべきか?

⑭夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(14)ー家庭訪問は避けられないのか?

⑮夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(15)ーこちらも離婚を決断しなければいけないのか?

⑯夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(16)ー子の心情調査は避けられないのか?

⑰夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(17)ー妻側の体調はどこまで重視されるか?

⑱夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(18)ー子供が不登校になってしまっていると、どの程度不利になるのか?

⑲夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(19)ーこちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?

⑳夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(20)ーどうして事件が3個もあるの?

㉑夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(21)ー勝つための秘訣は?

㉒夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(22)ー夫の児童虐待をどのように証明すればよいか

㉓夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(23)ー面前DVや面前モラハラはどこまで重視されるか

㉔夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(24)ーモラハラ夫はすごく外面が良いのだが大丈夫か?

㉕夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(25)ー「子の監護に関する陳述書」の書き方のコツ

㉖夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(26)ー審問や調査官面接に対してどこまで対策しておくべきか

㉗夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(27)ー1回家庭訪問をして問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?

㉘夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(28)ー「今後の監護計画」はどこまで重視されるか

㉙夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(29)ー裁判所はこれまでの監護実績についてどのように認定するのか

㉚夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(30)ーどのようなケースで保全の結論が先に出されるのか

㉛夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(31)ー監護者指定事件で重視される「児童虐待」とはどのようなものを指すのか?

㉜夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(32)ー子供へのモラハラはどの程度考慮されるか

㉝夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(33)ー弁護士へのセカンドオピニオンの活用法

㉞夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(34)ー夫から浮気を疑われていることはどこまで影響するか

 

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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(20)ーどうして事件が3個もあるの?

2022.06.20更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.どうして事件が3個もあるの?


 あなたのもとには突如裁判所から審判事件の通知が届いているのだと思いますが、その通知には、事件番号が3つ振られている事かと思います。要するに事件が3個同時に申し立てられた状態なのです。
 それでは、どうして事件が3個もあるのでしょうか。

(1)3つの事件の内訳
 監護者を争っていく場合には、よく「三点セット」などと称されることも多いのですが、事件を3つ同時に起こすのがオーソドックスです。その内訳は以下の通りです。
① 監護者指定審判申立事件
② 子の引渡し審判申立事件
③ 保全申立事件
 この3つの事件の概要ですが、①は、前述の「監護者」を設定してくれという事件になります。夫が監護者指定審判申し立てをしている今回のケースですと「夫をお子様の監護者に指定してくれ」というテーマの事件を起こしているという意味になります。
 次に、②は、夫が監護者になれば、夫がお子様を引き取って育てていくことになりますので、妻側にお子様を渡すよう要求する事件ということになります。
 最後の③は、一般的な審判事件よりも特に急いで結論を出してほしいと要求する事件ということになります。なお、保全事件の結論が先行して出されるケースもありますが、保全の結論は暫定措置ということになりまして、最終結論ではありません。

(2)まずは調停からではないのか?
 離婚の問題についてインターネットなどで調べていると、「いきなり裁判はできません、まずは調停から申し立てる必要があります」といった記事をみかけたこともあると思います。
 これは、法律用語でいうと「調停前置主義」というものなのですが、家庭裁判所で取り扱う事件が全て調停前置主義というわけではありません。
 監護者指定事件では、調停前置主義が採用されていませんので、いきなり審判を申し立てることができます。
 もちろん、調停前置主義でなかったとしても、敢えて調停を申し立てることは可能です。調停の方が話し合いで解決できるので、無用な対立を招きにくいというメリットがあります。
 しかし、監護者指定事件は、自分が子供を育てていきたいという事件ですので、その性質上、審判から申し立てるケースの方が圧倒的に多いかと思います。

(3)事件は3つバラバラに進むのか?
 上記の①から③の事件は、それぞれ深く関連していますので、バラバラに期日設定されるといったことはなく、同一期日で3つの事件を同時並行で処理します。
 但し、③の保全について、結論を急ぐ事情がある場合には、途中で③だけが分離されて、先に結論が出ることもあります。
要するに、例えば、以下のような進行といった具合です(※以下は一つの参考例です)。
〇第1回期日7月21日午前11時から①から③を同時審理
〇第2回期日8月16日午後2時から①から③を同時審理
〇9月5日に③の結論が発令
〇第3回期日9月24日午後3時は、①と②のみを審理
 このように保全事件の結論が先行するのは、例えば、結論を急がないと取り返しがつかなくなるケース(子供との国外移住を検討しているケースで、それを防止するために早く子供を取り戻させたほうが良いケースとか虐待がひどく速やかに子供を取り戻させるべきケース等)、申立人側の監護実績が圧倒的で、早く子供を申立人の元に戻してあげるべきケースなどです。
 このような特別な事情がない限り、保全事件の結論が先行するケースは少なく、①から③の事件について同時に結論が出ることの方が多いかと思います。

(4)準備する内容は、ほぼ一つで大丈夫
 よく事件が3つあると、事件が一つだけのケースよりも「3倍準備しなくちゃいけなくなる」と誤解されている方もいますが、事件は3つでも相互に強く関連している事件ですので、準備する内容は「ほぼ一つで大丈夫」と考えて問題ありません。ただ、保全事件がありますので、手続きは非常にスピーディーに進みますから、短期集中で準備しなければならなくなるケースは多いです。

 

 

3.まとめ


・監護者指定を申し立てる場合、以下の3つの事件を一緒に申し立てるのがオーソドックスである。
① 監護者指定審判申立事件
② 子の引渡し審判申立事件
③ 保全申立事件
・監護者指定事件は、いきなり審判から申し立てることも可能であり、審判からスタートという形の方がオーソドックスである。
・3つの事件は基本的に同時並行で処理される。
・事件は3つでも基本的な準備はほぼ一つで大丈夫である。

 

 

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モラハラ夫との別居準備(8)―置き手紙の活用法

2022.06.06更新

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1.なぜ置き手紙なのか?


(1)モラハラ夫と別居する際、事前にモラハラ夫と話ができていて、〇月〇日に家を出るということの確認が取れているようでしたら、別に置き手紙を準備する必要はないかと思います。
 他方で、①モラハラ夫に多少別居話をしたが、議論が進展していないとか、②モラハラ夫に事前に伝えないほうが良いケースの場合には、別居時に置き手紙を活用することをオススメしています。

(2)何も残さずに別居することはトラブルの素である。
まず、置き手紙も何も残さずに別居を開始してしまいますと、モラハラ夫は、あなたの職場や実家、親族、果ては警察など様々なところに電話をかけまくったり、直接訪問してくることもありますので、少なくとも置き手紙くらいは残したほうが良いかと思います。
 モラハラ夫が「妻と子供が犯罪に巻き込まれた可能性が高い」などといって警察に相談しますと、捜索願が受理されてしまうケースもありますので、そのような混乱を避けるためにも、置手紙があったほうが良いでしょう。

(3)なぜメールやLINEだとダメなのか?
 私は、メールやLINEではなく、置き手紙をおススメしています。それは主に以下の理由からです。
① 手紙の方がこちらの真剣度が伝わりやすい
② 別居後のやり取りを回避しやすい
③ 送信間違い等がほぼ起きない

 詳しく説明していきますと、①につきましては、これだけメール等の通信機能が発展しておりますと、夫婦でやり取りをする際に手紙を利用することはかなり稀だと思います。そのため、置手紙の方が、「普段やらないことをやっている」という印象を深めることができると思います。
 次に、②につきましては、別居の旨等をメールやLINEで送ると、モラハラ夫側から即座に返事がなされたり、頻繁に連絡が来るなどして対応に苦慮するケースが多いです。何より、こちらからメールやLINEをすると、自分から「メール(またはLINE)を連絡手段として利用する」と言っているようなものなので、相手の誤解を強めてしまうと思います。

 LINE等ですと、可能性は低いのでしょうが、メール等ですと、特に、慌ただしく別居準備をしたケースなどでは、誤って他の人に送信してしまうといったこともあります。自宅の目立つところに置き手紙を残しておけば、それを他人が見ることはほとんどないかと思います。

 

 

2.置き手紙には何を書くか?


 置き手紙のボリュームをどの程度にするかは、あなた自身の考え方にもよるのですが、大きく分けると以下のようなことを盛り込むことが多いと思います。以下、詳しく解説していきます。

① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達と一緒に別居する旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先(担当弁護士の電話番号等)

 

 詳しく説明していきますと、①については、離婚を前提としていることはしっかりと伝えることが多いです。一旦冷却期間を置くための別居だと誤解されては困りますので、この点を明記するのです。
 次に、②につきましては、どこまで細かく記載するかはあなた次第です。ただ、あまり細かい事情を書いても、モラハラ夫がそのことを理解するとはとても思えませんので、簡潔に記載することが多いと思います(短い場合には、2,3行で済ませるケースも多いですが、しっかりと気持ちを伝えておきたいということで何十行も書く人もいます)。

上記の③については、夫側が「子どもが犯罪に巻き込まれたかもしれない」と言った余計な詮索等を防止するために盛り込むことが多いです。
 また、④については、前述の通り、納得いかないとモラハラ夫はあなたを探し回る人もいるため、くれぐれも探さないよう伝える文言です。
 なお、実際にはあなたは浮気などしていないのに、同居中から、夫があなたの浮気を執拗に疑っていたケースとか、あなたの居場所を伝えないと職場に迷惑がかかりそうだといったケースですと、④の箇所で「今後は実家で暮らします」というように、あなたの居場所を伝えてしまうケースもあります。
 ただ、このように書いてしまうと、モラハラ夫が実家に乗り込んでくることも多いので、どこまで書くかは慎重に検討したほうが良いと思います。

 最後の⑤については、あなたの別居先住所を伝えるという意味ではありません(ケースによっては、あなたの住所は絶対に伝えないほうが良いというケースも多いかと思います)。担当の弁護士が決まっているようでしたら、弁護士の連絡先を書いたり、「追って近日中に弁護士から手紙が届きます」と書いたりします。また、あなたのご実家のお父様に間に入ってもらう場合には「今後は父の携帯電話までご連絡下さい。私宛の直接の連絡はお控えください」と書いたりします。

 

 

3.置き手紙のボリュームは?

 


 

 置き手紙を作成する際、この際だからということで、かなり長い文章を考える方もいます。

 ただ、モラハラ夫は基本的に自分がしてきたことは間違っていないという発想の人が多いため、あなたが書いている内容を読めば読むほど怒りが湧いてくるという人が多いです(非常に残念な話ですが)。

 そのため、あまり長文にしてしまいますと、モラハラ夫が怒りを強めてしまうだけということにもなりかねませんし、また、あまり文章が長いと、あなたの伝えたいことが伝わりにくくなるという面があることも否定できません。

 そこで、置き手紙はあまり長くしないケースが多く、私がかかわったケースですと、A4の用紙に1枚か、どんなに長くても2枚までというケースが多いと思います(A4用紙1枚と言っても、半分か3分の1くらいは空白で、文章がぎっしり埋まっているというケースは少ないことが多いと思います)。

 

 

4.置き手紙は手書きが良いのか?


 私は、あまり長文でないようなら手書きをおススメしています。
 手書きの方があなた自身の気持ちとして別居・離婚を決意したというところをモラハラ夫にしっかりと伝えられると考えるからです(ただ、残念ながら、モラハラ夫は、こちらの真剣な気持ちをほとんど理解してくれないことの方が多いです)

 

 

4.まとめ


・別居の知らせは、メールやLINEではなく、置き手紙の方がオススメである。
・置き手紙には以下のようなことを書くことが多い。
① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達と一緒に別居する旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先
・置き手紙はA4用紙1枚くらいに収めてしまうことが多い。

・置き手紙は極力手書きの方がオススメである。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ夫との別居準備(7)―事前にお子様にはどこまで話をしておいた方が良いか

2022.05.30更新

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1.お子様に別居のことをいつ、どこまで話すかは非常に悩ましい


 お子様がまだ乳幼児で、自分の意思を示すことができないという年齢でしたら、別居のことを伝えても理解できませんので、悩む必要はありません。
 他方で、お子様が自分の生活環境等を理解している場合、事前に何も伝えずに別居するというわけにもいかないでしょうから、いつ、どこまで話をするのかということは悩ましい問題になるケースも多いです。以下、詳しく解説していきます。

 

 

2.お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半


(1)お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半
お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、かなり周りのことを理解できる年齢になっておりますので、別居すること、今住んでいる自宅には戻らないことについては事前に話をし、その理解を得ておくケースが大半かと思います(離婚まで言及するかは、お子様のご様子にもよるかと思います)。
 特に、お子様が小学校高学年の場合、「別居は構わないけれども、小学校は変わりたくない」とか「今まで通り習い事は続けたい」もしくは「仲の良い友達とは引き続き会いたい」といった自分の意見が出てくることが多いため、その意見を無視して別居することは難しいと思います(お子様の意見を無視して別居すると、後から「自宅に帰りたい」といった意見が出て、親権争い等で不利になる可能性もあるという意味です)。

 その際に、お子様にどこまでの話をするのかという点ですが、お子様が小学校高学年の場合、普段のモラハラ夫の行動や言動はしっかりと認識していますので、詳しく説明しなくとも「お母さんは、お父さんと一緒に暮らしていくことが難しいから、この家を出て暮らすけれど、一緒に来る?」といった簡単な説明で済むケースも多いかと思います。
 なお、夫婦の紛争に関する話を事細かにお子様に話すのは好ましくないとされていますので、特に必要がない限り、あまり詳しい説明はしない方が良いと思います。

(2)別居の何週間前、何か月前くらいに話をするか
 これは、ケースによって皆さんそれぞれなのですが、①お子様自身の口から「こんなお父さんと一緒に暮らしたくないから早く離婚して欲しい」とか「お母さんが可哀想だから、早く別れて欲しい」といった積極的な言葉が出ている場合には、別居の2,3か月前とか、比較的早い段階から別居のことを伝えているケースが多いように感じます。

 逆に、別居のことをお子様に伝えるとお子様が頭を悩ませてしまいそうだとか、お子様は別居したくないという気持ちの方が強い場合には、いつ頃話をするかは悩ましい問題です。
 このような場合には、お子様にじっくり考えてもらうために、早い段階で別居の話を伝えておいた方が良いケースもある反面、早めに伝えると、お子様を通してモラハラ夫に別居の計画が発覚してしまい、夫が別居を妨害してくるリスクが高まるというジレンマがあります。
 そのため、お子様の性格やお子様とモラハラ夫との関係性等も考慮して、お子様に話をするタイミングを検討すべきことになろうかと思います。

(3)お子様が15歳以上の場合、事前に説明をして理解を得ておくことはほぼ必須
 前述の通り、お子様の年齢が小学校高学年以上の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半でしょうが、その中でも、特にお子様が15歳以上の場合には、その理解を得ておくことはほぼ必須になります。
 と言いますのは、お子様が15歳以上の場合、裁判所が親権者を決めるにあたっても、お子様の意見を確認することが必須事項となっておりますので、別居に際しても、より一層慎重に対応したほうが良いということになるのです。

 

 

3.お子様が小学校低学年以下の年齢の場合、お子様の理解力などに応じて検討する


 お子様が小学校低学年以下の場合でも、小学生の場合には、おおよその環境等の理解は進んでいると思いますので、少なくとも事前に別居のことは伝えるべきかと思います。
 ただ、小学校低学年以下の年齢ですと、お子様がモラハラ夫に別居のことなどを話してしまう危険性が高いので、あまり早い段階で話をしない方がよいかと思います。
 お子様が小学生未満の場合には、お子様の理解力に応じて、事前に別居のことを伝えるかどうかも含めて検討していくことになろうかと思います。

 

 

4.別居や離婚は、お子様にとっても「自分事」だという認識を持つことが大事


 別居や離婚は、あなたにとっても大きな不安事ですし、どうやったら円滑に離婚できるのかといったことで頭がいっぱいになってしまう方も多いと思います。
 ただ、別居で生活環境が変わるのはあなただけではありません。
 お子様も様々な悩みや不安を抱えることになると思いますので、別居や離婚は、あなた自身の「自分事」というだけではなく、お子様にとっても「自分事」なんだという気持ちをもって接するのが良いかと思います。

 

 

5.まとめ


・お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半である。
・お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、別居にあたっての詳しい説明は不要なことも多い。
・お子様が別居や離婚に賛成派の場合、比較的早い段階から別居のことを伝えているケースが多い。
・お子様が15歳以上の場合、事前に説明をして理解を得ておくことはほぼ必須である。
・お子様が小学校低学年以下の年齢の場合、お子様の理解力などに応じて検討する必要がある。
・別居や離婚は、お子様にとっても「自分事」だという認識を持つことが大事である。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ夫との別居準備(6)―夫から「子どもの連れ去り」と言われないためにはどうすればよいか

2022.05.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.モラハラ夫と事前に話ができるようなら話しておく


 モラハラ夫との別居を検討する際、あなた自身の別居については応じるかもしれないけれども、「子どもは置いていけ」とか「子どもは連れて行くな」と言われそうだというご相談を受けることは多いです。
 そのため、もし事前にモラハラ夫側に話をし、夫側の理解を得られるようであれば、理解を得た上で別居するのが良いと思います。
 もちろん、あなた自身がモラハラ夫と単身で話をすることが難しいようであれば、あなたのご両親や親族等に間に入ってもらったり、同席してもらって話をするという方法もあります。

 

2.モラハラ夫の事前の同意がなければ「違法な連れ去り」になってしまうのか?


モラハラ夫側の了解を得ていなかったとしても、そのことだけで、違法な連れ去りになるということではありません。
モラハラ夫側の了解を得ずに別居したとしても、同居中夫側からのDVやモラハラにかなり苦しめられており、事前に話をすると別居を妨害される危険性があったとか、もしくは、旦那側からのDVやモラハラが強まる可能性が高かったなど、一定の事情があって別居を開始しているケースが大半だと思いますので、そのような場合には、相手の了解を得なくともやむを得ないと言えます。

 

 

3.違法な連れ去りに該当するかのポイントは?


 それでは、違法な連れ去りに該当するか否かのポイントはどのようなところにあるのでしょうか?

 一般的には以下のような要素を考慮して判断されるケースが多いので、詳しく解説していきます。

1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。

 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

 

2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃にいったお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。

 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います(但し、離婚訴訟の場合には、10歳くらいを一つの目安にすることが多いです)。

 

3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が10歳以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。

 そのため、一般的には、普段お子様の面倒を見てきた奥様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」とは評価されないケースが多いのが実情です。他方、普段お子様の面倒をほとんど見てこなかった旦那様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」のおそれがあると見られるケースが相対的に多いように感じます。

 

4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 奥様がお子様と無断別居したケース、要するに事前に旦那様に何も別居等の相談をせずに別居を開始したケースでは、旦那様側では「違法な連れ去りだ」と声高に主張なさる方も多いのですが、無断別居と言うだけでは、直ちに違法な連れ去りとは言えないことが多いです。
 「違法な連れ去り」かどうかは、前述のポイント1からポイント3までを総合考慮して決定することが多いです。

 

5)実態としては?
 ただ、結論から申し上げますと、奥様がこれまで主にお子様の育児に携わってきており、事情があってお子様と別居を開始したという場合には、その方法がよほどお子様の意思に反するといった事情がない限り、「違法な連れ去り」と認定される可能性は低いと思います。
 奥様によっては、しっかりと旦那に伝えてから別居すべきだったとかお悩みになる方もいらっしゃいますが、あまりこの部分で神経質になり過ぎない方が良いと思います。

 

 

4.どんなに慎重に進めようとしても、「連れ去り」と主張してくる夫は、そのように主張してくる


 前述の通り、可能なのであれば、モラハラ夫にも事前にお子様との別居についても相談しておくのが望ましいと言えます。
 ただ、このように相談し、モラハラ夫の同意を得た場合であっても、「連れ去り」と主張してくる人は結局「連れ去り」と主張してきます。例えば「一時帰省することは認めたが、別居までは認めてない」とか「妻が離婚を考えているとは全く考えなかった。少し頭を冷やすために別居したのだと思っていたから、これでは騙し討ちだ」などと言ってくる例です。
 そのため、「言ってくる人は結局言ってくるんだ」という発想もある程度は必要かもしれません。

 

 

5.結局しっかりとした事情があって、子供の意思も確認しているなら、慎重に夫の意見を確認するメリットってどこにあるの?


 前述の通り、やむを得ない事情があり、主に子育てを担ってきたあなたがお子様の意思を確認した上で別居するのであれば、それが違法な連れ去りと判断されるケースはほとんどないと思います。
 このような説明を致しますと、「それなら、わざわざリスクを冒して夫に事前に話をする意味・メリットはあるの?」と感じるかもしれません。
 弁護士として一番のメリットと感じますのは、モラハラ夫からの監護者指定審判等の手続を起こされるリスクを下げるという点だと思います。

 子の監護者指定の手続は別のブログで解説いたしますが、この手続きの申し立てを受けますと、かなりの書面や資料の準備と、家庭訪問等に備えた準備をしなければならず、育児をしながら準備していくことはかなりの負担になります。

 

 

6.まとめ


・旦那様の了解を経ずに別居したからと言って直ちに連れ去りになるわけではない。
・違法な連れ去りに該当するかは以下のような要素で判断することが多い
① 連れ去りの態様
② お子様の意思
③ それまでの監護状況
・別居前に事前に旦那側に話をしておくことが望ましいが、状況による。
・どんなに慎重に進めても「連れ去り」と主張してくる夫は結局その主張をしてくる
・「連れ去り」といった形で問題が複雑化すると、夫側が監護者指定審判の申立てをしてくるリスクが高まる。

 

 

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