裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース
2016.04.07更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
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1.親権が大きな争いになる場合どのような手続の流れになるの?
事件によっては、これまでの旦那様の言動等から、親権をご夫婦どちらに帰属させるかについて大きな争いになることが事前に予想できる事件もあります。
その様な場合には、最終的には裁判で決着を付けざるを得ないのですが、その基本的な流れは、以下の通りになります。
①相手との交渉の段階
私の方から相手に書面を送ったり、電話で話をしたり、場合によっては直接相手と面談して交渉を行う段階です。弁護士が離婚問題を取り扱う場合、通常は、このステップから事件に取り掛かるのが一般的です。
②調停の段階
話し合いで折り合いを付けることができない場合には、調停を申し立てることになります。調停は、裁判所の建物内で手続が行われ、調停委員が間に入ることになりますが、あくまでも当事者間の話し合いを基本とした手続になります。
そのため、調停委員は話し合いの促進を図ることはできますが、結論を命じるといった権限はありません。
③裁判の段階
調停での話し合いも上手く行かない場合には、裁判を起こすことになります。裁判は、最終的には判決を得る手続になりますので、調停のような話し合いの手続とは区別されます。
裁判所が言い渡した判決には拘束されることになりますので、不服のある当事者も従わなければならなくなります(ただし、1回目の判決に不満がある場合には、控訴といった不服申立ができます)
2.私が担当した事件
・ご依頼者様 : 30代前半の女性(Xさんといいます)
・ご依頼内容
旦那様が姑女の意見ばかりを尊重し、姑女の意見で全ての家庭に関する重要事項が決まるので、窮屈な生活が耐えられず、離婚したい、娘の親権は絶対に旦那には譲りたくないので弁護を依頼したいという内容でした。
なお、この事件の相手方 : 30代前半の旦那様、お子様 : 保育園に通園する娘様お一人、婚姻期間 : 5年程度、家庭環境 : ご依頼時別居中でした。
3.私の弁護活動
前述のような手順で、まずは、旦那様と交渉をすべく通知書を郵送しました。通知書には、Xさんが離婚を希望していること、離婚の条件を書き記しました。
そうすると、旦那様から電話連絡があり、中立な調停委員がいる場所で話がしたいとの希望がありましたので、私の方から調停を申し立て、調停手続で話が行われることになりました。
4.旦那様の言い分
旦那様の言い分は、Xさんは精神病を患っていて、ときに娘様につらく当たることもあるので、Xさんに娘様を託すことはできない。Xさんは常に場面場面で嘘をつくので、娘様の教育上も好ましくないといった独自の主張をして、旦那様ご本人が親権者になりたいと強く主張してきました。
5.私の弁護活動
まずは、Xさんご本人から、旦那様の言い分の真偽を確かめ、詳しく事実経過を確認する作業を行いました。Xさんが精神病だというのが全くのデタラメであり、旦那様の言い分が全く信用できないことが十分に分かりました。
その後は、調停の場で、こちらの言い分を述べるようにしました。
なお、この調停で、旦那様の翻意を図るために取った作戦は以下の通りです。
(1)娘様との面会交流を認めた
Xさんは、旦那様の身勝手な言い分にかなり怒っていらっしゃいましたが、Xさんとよく話をした上で、旦那様と娘様との面会交流を実施しました。
こうすることで、旦那様も、娘様が健康に生育していることを直接目で見て確認できますし、硬直的な意見を柔軟化できるかもしれないという思惑もありました。
旦那様は、娘様と面会交流できたことについては満足している様子でしたが、意固地な状態は続きました。
(2)家庭裁判所調査官の調査を頼んでみた
家庭裁判所調査官という専門家から見て、Xさんが親権者として適確であるとのお墨付きが出れば、旦那様も親権を諦める可能性がありましたので、私の方から調停委員に家庭裁判所調査官の調査を頼みました。
調停委員は、家庭裁判所調査官の調査に前向きでしたが、裁判官が反対の意向を示したため、結局調査は実施されませんでした。
5.調停不成立となり、裁判での争いになった。
結局、旦那様は自分の意見を全く曲げず、親権の帰属について裁判で争われることになりました。
裁判では、Xさんと旦那様いずれが親権者として適確かという点について、激しい議論の応酬がなされ、ときには、私の方から30頁を超える裁判書類を提出することもありました。
裁判の中でも、旦那様が妥協する様子は全くなく、裁判手続の中で家庭裁判所調査官の調査が実施されることになりました。
6.家庭裁判所調査官の調査
家庭裁判所調査官の調査は、大まかに以下のような項目で行われます。
①ご夫婦本人から別々に事情を尋ねる(ご夫婦それぞれの家庭環境についても質問を受けます)
②Xさんの自宅を訪問して娘様の家庭での様子を確認する
③保育園に連絡を取り、保育園での娘様の様子を確認する
上記①のヒアリングは、これまでの裁判で、こちらが徹底的に主張してきた部分のおさらいという面が強いため、あまり心配はいりませんが、自宅訪問や保育園への連絡については注意を払っておく必要があります。
そのため、Xさんには事前に家庭裁判所調査官が、どのような点に関心を持つ傾向にあるのかといった点をお話しし、十分に準備を行いました。
このような準備の成果もあって、家庭裁判所調査官の調査結果は、Xさんが娘様を育てて行くことが適確であるとの結果でした。
7.最終的には和解で解決
上記のような調査結果が出ましたので、裁判官が旦那様を強く説得し、旦那様も親権を譲る意向を示しました。
そのため、Xさんが親権を取得する形で裁判上の和解が成立し、解決しました。
なお、この「和解」という手続は、裁判の手続きは進行させながら、または、裁判の手続きを一時保留にした上で、当事者同士が話し合いをして、双方が納得できる場合に、「和解」という形で最終解決することをいいます。裁判は、判決を獲得するための手続なのですが、今回の様に、裁判官が和解を強く勧めてくることがあり、和解が成立した場合には、判決まで手続が進まずに解決することになります。
和解の場合には、離婚の条件をすべて約束した上で解決することになりますので、判決を得る必要がなくなるのです。
Xさんが初めて私の所にご相談に来られてから2年以上経過しての最終解決になってしまいましたが、Xさんはこの結論に満足されている様子でした。
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