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【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(7)―かなり昔の虐待は影響しないのか?

2026.09.28更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.そもそも「児童虐待」って何だ?


児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義しています。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV

 親権の判断にあたっても、これらの5つが判断要素になりますが、特に上記の①の直接暴力と②の性的虐待が、重要性が高いです。

 

 

5.かなり昔の虐待は考慮されないのか?


 かなり昔の虐待ということは、通常は同居中の虐待だと思いますが、①判決で離婚した場合と②判決以外で離婚した場合とで検討要素が異なりますので、分けて解説します。

 なお、「①判決で離婚した場合」というのは、離婚裁判になり、判決の結論が出ているケースを意味します(要するに、離婚裁判になったけれども、判決ではなく和解で離婚した場合などは除外します)。

 これに対して「②判決以外で離婚した場合」というのは、前述のように離婚裁判になったけれども、和解で離婚したケースや、それ以外でも協議離婚や調停離婚した場合を指します。

 

 

6.【場合分け①】判決で離婚した場合


(1)以前の離婚判決でどのように認定されたか?

 判決で離婚した場合、モラハラ元夫の児童虐待について、裁判所がどのように事実認定したのかが重要なポイントになります。

 あなたが離婚裁判で児童虐待を主張したにもかかわらず、残念ながら、判決で児童虐待が認められなかったという場合には、改めて同居中の児童虐待を主張することは難しくなってくると思います(この場合には、別居後にモラハラ元夫から問題行動がなかったかという点に重点を置いて検討すべきことになります)。

 他方で、以前の離婚判決で児童虐待が認められた場合には、今後共同親権を争うにあたって非常に強い武器になります。

 

(2)以前の離婚判決で児童虐待が認められている場合、確実に共同親権を避けられるか?

 以前の離婚判決で児童虐待が認められた場合、そのことは共同親権を争っていくにあたって非常に強い武器になります。

 しかし、別居してから数年経過し、お子様とモラハラ元夫との関係が良好になっているような場合、直ちに必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければならない事情)があるとはされないと思います。このように一度判決が下っても、その後のお子様と元夫との関係性の変化の有無・程度が重要なポイントになります。

 

 

7.【場合分け②】判決以外で離婚した場合


 判決以外で離婚した場合、過去の児童虐待について、判決といった明確な児童虐待の証拠が残っていないということを意味します。

 そのような前提で、重要なポイントを整理すると以下のようになります。

 ①過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるかどうか

 ②証拠によって証明できる児童虐待の内容・悪質性等

 ③当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 ④当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 ⑤「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 ⑥単独親権決定以降の父子交流の内容

 ⑦単独親権決定以降の父子関係

以下詳しく解説していきます。

(1)【ポイント①】過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるか

 過去に児童虐待があったとしても、あなたの方としては、もう離婚が決着したということで過去の証拠を廃棄してしまっているという場合があるかもしれません。

 また、あまり年数が経過していると、今から警察への相談記録等を入手することは難しいことが多いです。

 このように、かなり古い虐待の話になると、「もうほとんど証拠が残っていない」という場合も多いと思いますが、虐待の証拠の有無は非常に重要なポイントになりますので、できる限り証拠はしっかりと探すように努力して下さい。

 くまなく証拠を探しても、ほとんど見つからないという場合には、虐待の証明が難しいという前提で、共同親権を阻止する作戦を練る必要があります。

 以下では、一定の児童虐待の証拠が残っていたという場合を想定して、解説していきます。

 

(2)【ポイント②】(証拠によって証明できる)児童虐待の内容・悪質性等

 次のポイントは、証拠によって証明した児童虐待の内容と悪質性になります。

 前述の通り、児童虐待とは、①お子様への直接暴力、②お子様への性的虐待、③ネグレクト、 ④お子様への著しい暴言等、⑤面前DVを意味しますが、中でも①と②は、一般的に、重大な児童虐待とされやすいです。

 そして、その虐待の頻度やしつこさ、攻撃性の強さなどから、より悪質なものかどうかが区分けされることになります。

 

(3)【ポイント③】当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 同居時の虐待がお子さんの心身に与えた悪影響の度合いも重要なポイントになります。当然ながら虐待によってお子さんがトラウマを抱えており、今もそれに苦しんでいるというような場合には、必要的単独親権事由があるものとして、共同親権にはならないものと思われます。

 逆に、お子さんが虐待を受けていた当時幼くて、当時の記憶がほとんど残っていないとか、または、かなりの年数を経て今はほとんど記憶に残っていないという場合には、必ずしも必要的単独親権事由があるとはされないケースもあり得ると思います。

 

(4)【ポイント④】当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方も重要なポイントになります。なお、ここでの「受け止め方」は虐待を受けていた当時の受け止め方と、今の受け止め方両方を検討すべき場合もありますが、より重要なのは「今の受け止め方」の方になります。

 モラハラ元夫が親権者としてかかわることがお子さんの福祉にかなうかどうかは、今のお子さんにとって有益なのかどうかという視点で検討すべきでしょうし、今の、成長したお子様なりの受け止め方が、より重要なポイントになるからです。

 

(5)【ポイント⑤】「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 離婚調停や離婚協議等単独親権だと決まってから現在までの年月の長さは、今後の調査の進め方等に影響する重要なポイントになります。

 一度単独親権と決まって1年以内とか早い段階での親権者変更の申立ての場合、お子さんの成長や考え方が大きく変わることはないと思いますので、本格的な調査等は行わないケースの方が多いかと思います。

 逆に単独親権と決まって5年以上が経過しているような場合には、当時よりお子さんは成長しておりますし、考え方もしっかりとしてきているでしょうから、本格的な調査を行うケースも多くなってくると思います。

 

(6)【ポイント⑥】単独親権決定以降の父子交流の内容

 単独親権決定後の父子関係は、基本的に親子交流でどのように接点を持ってきたのかで形成されていくことになりますので、この点も重要なポイントになります。

 当然ながら、お子さんの心情から、まだ直接交流に踏み出せていないような場合には、親権者変更にあたって元夫側に不利になります。

 

(7)【ポイント⑦】単独親権決定以降の父子関係

 単独親権決定以降の父子関係も親権者変更の判断にあたって重要なポイントになります。

 結局、親権者変更を認めるかどうかは、変更することがお子さんの福祉・利益にかなうかどうかという観点で判断されることになりますので、これまでに形成されてきた父子関係がどのようなものなのかが重要なポイントになるのです。

 

 

8.まとめ


・かなり昔の虐待が重視されるかどうかは、①判決で離婚した場合と②判決以外で離婚した場合の2通りに分けて検討する必要がある。

・判決で離婚した場合、その判決文に過去の虐待のことがどのように書かれているのかが非常に重要なポイントになる。

・判決以外で離婚した場合、以下の要素が重要な考慮要素になる。

 ①過去の児童虐待についてしっかりとした証拠があるかどうか

 ②証拠によって証明できる児童虐待の内容・悪質性等

 ③当該虐待がお子さんの心身に与えた影響の度合い

 ④当該虐待に対するお子さん自身の受け止め方

 ⑤「単独親権決定から」現在までの年月の長さ

 ⑥単独親権決定以降の父子交流の内容

 ⑦単独親権決定以降の父子関係

 

 

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・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
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浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

 

 

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(6)―夫の児童虐待をどのように証明すればいいのか?

2026.09.14更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて考える必要がある


 一口に「児童虐待」と言っても、モラハラ元夫と①同居していた時と②別居した後で分けて考える必要があります。

 その虐待が、同居中のものであれば、別居して年数がかなり経過して、父子関係がかなり改善したというケースもあり得るため、単純に虐待があれば、一切共同親権にはできない、とは言いにくくなるということです。

 逆に、別居後親子交流をしている中で「最近も児童虐待があった」ということになると、そのことは深刻な問題と捉えられることになります。

 それでは、どのような資料等が「児童虐待」の証拠になるのでしょうか?

 

 

5.離婚判決で虐待が認められていれば、それが最も「強力」


 離婚には、①協議離婚、②調停離婚と③裁判離婚(判決での離婚)がありますが、あなたがモラハラ元夫と離婚する際に、「③裁判離婚(判決での離婚)」した場合で、その判決の中で元夫の虐待を認めてくれている場合、「最も強力な証明」になります。

 離婚裁判の中では、あなたが虐待の証拠を提出し、モラハラ元夫側が反論などをした中で、それでも、裁判官が虐待を認めているわけですから、「最も強力な証拠」と評価できるのです。

 逆に、あなたがモラハラ元夫と離婚する際に、離婚裁判をしたけれども、「虐待があったと認めてくれなかった」という場合には、残念ながらあなたにとって不利な要素となってしまいます。

 また、裁判離婚した場合には、上記のように言えますが、あなたが離婚した手続きが、協議離婚であったり、調停離婚だった場合には、判決のように児童虐待があったかなかったかが明記されていないことが通常かと思います。

 このように協議や調停で離婚した場合には、当時どのような虐待の証拠があったのかを検討し直す必要が出てきます。

 

6.その次に強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。

そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、親権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

 

 

7.その次に確実なのは録音データ


夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

8.LINEやメール


 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

9.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。
例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

10.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 また、警察の記録等は保存期間が限られていますので、今から改めて記録開示を要求しても、警察の方に記録が残っていないというケースもありますので、ご注意ください。

 

11.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

12.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。
 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で親権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

13.まとめ


・一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて検討する必要がある。

・判決で離婚した場合で、かつ、判決文で虐待を認めてくれている場合、それが最も強力な証拠になる。

・逆に、協議離婚や調停離婚の場合、判決文のように虐待の有無を明記していないことが多いので、当時の証拠資料の検討し直しが必要になる。

・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。

・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。

・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

 

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<都営地下鉄>
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投稿者: 弁護士秦真太郎

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1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

今回は、児童虐待に焦点を当てて解説していきます。

 

 

4.一口に「児童虐待」と言っても、同居中と別居後に分けて考える必要がある


 一口に「児童虐待」と言っても、モラハラ元夫と①同居していた時と②別居した後で分けて考える必要があります。

 その虐待が、同居中のものであれば、別居して年数がかなり経過して、父子関係がかなり改善したというケースもあり得るため、単純に虐待があれば、一切共同親権にはできない、とは言いにくくなるということです。

 逆に、別居後親子交流をしている中で「最近も児童虐待があった」ということになると、そのことは深刻な問題と捉えられることになります。

 それでは、「児童虐待」とはどのような行動を指すのでしょうか?

 

 

5.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的には以下の通りです。

【児童虐待防止法より引用】

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

6.それぞれの詳しい解説


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。今回は、特に、親権紛争で重視されるような「児童虐待」について解説していきます。

(1)お子様への暴力
 前述の通り、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
 もちろん、このようにお子様に対して直接暴力を振るい、お子様に現実に怪我ができたり、怪我ができる可能性がある場合には、親権者として即不適格ということになろうかと思います。

 ここでの「怪我ができる可能性がある」というのは、それだけの強い威力の暴力ということですので、例えば、①DV夫がお子様を殴ったケースなどで、お子様がよけたので怪我をしなかったけれども、拳が壁に当たって壁が大きくへこんでしまったとか、②お子様が咄嗟に逃げたので怪我をしなかったけれども、DV夫が凶器を振り回したケースなどがこれに該当します。
 ただ、このようにお子様が怪我をする危険性があるような暴力でなくとも、お子様自身がDV夫からの暴力被害を記憶していて、そのことが理由でDV夫のことを怖がっているといった事情がある場合には、親権紛争においても、夫側に大きく不利な事情になります。

 

(2)お子様へのわいせつ行為

 夫側がお子様に対してわいせつ行為に及んだことがあったり、お子様自身にわいせつな行為をさせたことがあるような場合には、直接の児童虐待に該当しますので、親権者として即不適格ということになろうかと思います。
 親権紛争で争われる場合には、上記のような直接的な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。

 このようなケースでは、このような性的虐待についてどこまで客観的に証明できるのか、それがお子様にどこまでの悪影響を及ぼしているのかがキーポイントになってくるかと思います。なお、お子様の年齢によっては、性的虐待の意味合い等をお子様自身が十分認識できず、そのことについて自ら口に出して表現できないことも多いと思いますが、実際にはお子様の心の奥底に傷跡を残していることも多いので、小児心理の専門医に相談してケアをしていったほうが良いケースもあろうかと思います(当該医師から、性的虐待の後遺症が残っているような診断がなされた場合、その診断結果も重要な証拠になります)。

(3)ネグレクト
 上記の通り、児童虐待防止法にて「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」と規定されているものですが、いわゆるネグレクトのことを意味します。
 親権紛争では、同居中の言動や行動を問題にすることが多いので、ネグレクトは取り上げにくいというのが実際のところではないかと思います。

 例えば、あなたが週末出かけた場合で、夫が自宅でお子様の面倒を見ていた際、ネグレクトをしていたというようなケースですと、夫がそのようなことを繰り返していた場合、残念ながら、あなた自身に対しても、裁判所は「どうしてそんな夫にお子さんを任せて出かけたのか」ということで責められる危険性が高いのです。
 このように同居中の夫側のネグレクトは、あまり極端なものであった場合には、どうしてあなたが防止できなかったのか、ケースによっては、防止する意識が薄かったのではないか?とか、黙認していたのではないか?と裁判所から言われてしまい、あなた自身の育児の問題点とされてしまう危険性もあるのです。

(4)お子様への暴言・面前DV
 児童虐待防止法2条4号は、DV夫からお子様への直接の暴言と面前DVを児童虐待と定めています。以下では暴言と面前DVに分けて解説していきます。

ア 暴言
 児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義しています。要するに単なる暴言ではなく「著しい」暴言のみを対象にしているのです。
 ただ、その暴言が「著しい」ものなのかの区別は非常に難しく、こと親権紛争では、著しいものかどうかを問わず、暴言を受けることでお子様にどのような悪影響が生じてしまっているのかという観点を重視する傾向が強いです。実際のところ、DV夫が発した口頭の言動を細かく確定することは不可能に近いので、お子様自身がどう受け取ったのか、どう感じているのかといった観点から検討していく他ないのです。
 特に、お子様が①DV夫からの言動が怖かったとか、そのことで夜なかなか寝付けなかったといった話をしているとか、②DV夫の言動を真似て他の友人にそのような発言をしてしまったといった場合には、DV夫側は親権紛争で大きく不利になるケースが多いと思います。

イ 面前DV
 面前DVは、児童虐待防止法上、児童虐待と位置付けられているのですが、親権紛争では、あまり重視されない傾向が強いです。裁判所は、妻側に対する暴力は、夫婦間の問題と考える傾向が強く、そのことがストレートに監護者としての適格性に大きな影響を与えないと考える傾向が強いのです。
 もちろん、面前DVでお子様の心身に具体的な悪影響が生じてしまっているといったケースでは、そのような事情も親権紛争にあたって重視されますが、そうでない場合には、残念ながら、あまり重視されないとお考え下さい。

 

 

 7.児童虐待の有害性が残っているようであれば、必要的単独親権事由になる。


 虐待その他お子様の心身に害悪を及ぼす虞がある場合には、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければならない事情)があると評価されます。

 仮に、その虐待が同居時のものであったとしても、虐待からかなり年数が経っていたとしても、お子様がトラウマになっているといった事情がある場合には、お子様の心身に害悪を及ぼす虞があるものとして、共同親権に変更することは認められないことになると思います。

 

 

8.まとめ


・一口に「児童虐待」と言っても、同居中のものと別居後のものとは分けて考える必要がある。

・児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義している。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV
・親権紛争の中での児童虐待の重要性は、児童虐待防止法の定めとずれる部分もあるので注意が必要である。

・同居中の虐待であっても、お子様のトラウマになっているといった事情があれば、必要的単独親権事由があるものと評価される。

 

 

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