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【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(4)―当初約束した面会交流の内容を守れていないが、どれほど不利になるか?

2026.08.24更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.共同親権への親権者変更ではどのような点が重要視されるのか?


共同親権への親権者変更においては、以下の9個の要素が重要な考慮要素になるものと思われます。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 

5.当初の約束を守れていないという点はあなたにとって不利な要素になってしまう。


 離婚当初あなたがモラハラ元夫と約束した面会交流の内容を守れていないということになりますと、残念ながら、一定の不利な要素になってしまうことは事実です。

 具体的には、①モラハラ元夫からすると、その様な面会交流条件が守られるからこそあなたの単独親権に合意したという場合には、単独親権にする経緯の部分で問題になり得ますし、②その後の父子関係や父母の関係性という観点からも、あなたの方から父子の信頼関係や父母の信頼関係に一定の悪影響を及ぼしているとも評価できるからです。

 ただ、このことがどの程度不利になるかは、以下のような要素を考慮して検討する必要があります。

 ①どのような形で当初の約束がなされたか

 ②その約束の内容

 ③その様な約束をするに至る経緯

 ④その約束を守れなくなった経緯

 ⑤約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応 

 ⑥その後の約束違反の内容

 ⑦お子さんの希望

 ⑧今後の対応方針

以下でそれぞれについて解説していきます。

 

6.【ポイント①】どのような形で当初の約束がなされたか


 「どのような形で当初の約束がなされたか」というのは、それが①夫婦の話し合いの中で約束されたものなのか、②裁判所の調停手続きの中で約束されたものなのか、③裁判所の審判手続きの中で決まったものなのかという点と、④その約束内容について書面などがあるのか?ということです。

 上記の①から③で比較しますと、審判で決まった内容を守れていないという方が、責任が重いとみなされやすく、次に、調停、その次に、協議と責任が軽くなっていくイメージです。

 また、裁判所の手続きを利用していない場合には、面会交流の約束について当初から書面が作成されていなかったり、書面が作成されていても、不完全な内容の場合もあります。口頭約束であったり、不備のある書面の場合、「約束違反」とはならない可能性もあります。

 

 

7.【ポイント②】その約束の内容


 その約束の内容も、考慮要素の一つになります。

 調停や審判で面会交流の条件が定められた場合、その内容に不備があることは考えにくいのですが、元夫婦の話し合いで約束した内容には不備が含まれることもあると思います。

 例えば、毎週面会交流を実施するとか、モラハラ元夫側がお子さんといつでも自由にコンタクトをとって良いといった内容は、離婚後のお子様の生活などを考慮した時に、お子様にとって過剰なものと評価する余地があります。

 

 

8.【ポイント③】その様な約束をするに至る経緯


 そのような約束をするにあたって元夫婦でどのような話し合いがあったのか(経緯)は重要な考慮要素になります。

 例えば、モラハラ元夫側が当初単独親権を主張していたものの、あなたが毎月1回必ず合わせると約束するので、あなたに単独親権を譲ったというような事情がある場合、その内容を遵守していないというのは、それなりに大きな問題と評価されてしまう余地があります。

 逆に、モラハラ元夫は離婚のときには今後の面会交流についてほとんど関心を持っていなかったというような場合、形式的に約束に違反しているからと言って、そのことをあまり重大視すべきではないということになろうかと思います。

 

 

9.【ポイント④】その約束を守れなくなった経緯


 あなたが当初の約束を守れなくなったことには何か理由があると思いますので、そのような理由や経緯は重要な考慮要素になります。

 例えば、約束した交流日にお子さんが体調を崩して参加できなかったとか、習い事の都合でどうしても面会交流出来ない月が出てきてしまったといった場合には、やむを得ない事情で約束を守れなかったという評価になろうかと思います。

 逆に、離婚後元夫とお子さんとであまり接点を持ってほしくないと考えた、というような事情は、約束を守れなくなった合理的理由とは言いにくいと思います。

 なお、たまに、「元夫が養育費を払わなくなったので、子供に会わせないようにした」とおっしゃる方がいますが、養育費の支払いと面会交流は直接関係する内容ではありませんので、養育費が入ってこないからと言って面会交流させなくて良いということにはなりません。

 

 

10.【ポイント⑤】約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応


 その後のモラハラ元夫側の対応も重要な考慮要素になります。

 例えば、モラハラ元夫側がしきりにあなたに電話連絡等をしているのに、あなたが放置してしまったという場合には、あなたにとって不利な要素になってしまいます。

 逆に、その後、モラハラ元夫側からあなたにほとんど連絡がなく、突如今回の共同親権への変更申立がなされたというような場合には、あなたにとってそれほど不利な事情にはならないと思います。

 

 

11.【ポイント⑥】その後の約束違反の内容


 約束を守れなかったとは言っても、毎月2時間の交流の約束が毎月1時間半になってしまっているという程度でしたら、そこまで大きな約束違反ではないと思います。

 他方で、モラハラ元夫からあなたにしきりに電話連絡が来ているのにそれを放置し続けて、2年間一切面会交流させなくした、というような場合には、重大な約束違反に該当してしまうと思います。

 このような約束違反の内容も重要な考慮要素になります。

 

 

12.【ポイント⑦】お子さんの希望


 お子さんの年齢にもよりますが、面会交流は、子の福祉の観点から実行されるものなので、お子さんの希望も重要な考慮要素になります。

 なお、お子さんが希望するのだから、毎日でも交流するなどと言い出すモラハラ元夫もいますが、交流はお子さんの安定した生活があってこそ実施できるものですので、あまり過剰な内容にはすべきでないと思います。

 

 

13.【ポイント⑧】今後の対応方針


 今後あなた自身が考える対応方針も重要な考慮要素になります。

 あなたとしては、モラハラ元夫とお子さんをあまり関わらせたくないと考えるかもしれませんが、少なくともお子さんが元夫と会うことを希望しているような場合に、それを妨げるような対応は望ましくないかと思います。

 

 

14.結局、共同親権にどれほど悪影響になるか?


 当初の面会交流の約束を守れなかったからと言って、直ちに共同親権が認められるといったほどの重大な悪影響は及びにくいと思います。

 ただ、約束を守れていないことは事実ですので、今後の対応方針についてはじっくりと検討して、こちらに不利にならないよう対応する必要が出てくると思います。

 

 

15.まとめ


・当初の面会交流約束を守れていないことがどの程度のインパクトを持つかは、以下のような要素を考慮して検討されることになる。

 ①どのような形で当初の約束がなされたか

 ②その約束の内容

 ③その様な約束をするに至る経緯

 ④その約束を守れなくなった経緯

 ⑤約束を守らなくなった後のモラハラ元夫の対応

 ⑥その後の約束違反の内容

 ⑦お子さんの希望

 ⑧今後の対応方針

・当初約束を守れていないからと言って、即共同親権になるわけではないが、今後のことは慎重に検討した方が良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(3)―親権者変更が認められるかどうかの9個の重要ポイント

2026.08.17更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁止します)

 

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.親権者変更が認められるかどうかの9個の重要ポイント


 親権者変更の是非を判断するにあたっては、以下の9個のポイントが重要になってくると見込まれます。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 以下、それぞれについて解説していきます。

 

(1)当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 離婚するときの親権者を夫婦のどちらにするのかという点については、夫婦での話し合い又は調停の場での話し合いが行われていると思います。

 このような話し合いの経緯が一つの重要な要素になります。

 特に、協議離婚している場合には、その話し合いの中で間違った考えで相手の単独親権にしてしまったというようなパターンもあると思いますが、その様に話し合いの経過に重大な問題がある場合には、今後の親権者変更の議論は慎重に扱われることになります(ケースによっては、最初の親権者決めが意思表示の瑕疵ありとして無効なのではないか、という議論もあり得ると思います)。

 

 また、この点に関連して、あなたの単独親権がどのような手続きで決まったのか、という点も重要なポイントになります。

 ここでの「手続き」というのは、①協議、②調停、③裁判の3種類が考えられますが、③の裁判で親権者が決まった場合には、裁判所が慎重に検討した結果「あなたを単独親権者にするのがふさわしい」という結論が出ているわけですから、安易に親権者変更を認めるべきではないという方向の議論になることが多いと思います。

 他方で、①の協議で親権者が決まった場合、裁判所の中立的な検討を経ずに親権者が決まっていますので、その後の変更にあたって、改めて子の福祉という観点からの検討が必要になってくるケースも多くなると思います。

 

(2)そのように決まってからどれほどの年月が経過したか

 前述の通り、離婚の際に親権者を決める手続きとしては、①協議、②調停、③裁判の3種類があるのですが、いずれにせよ一度親権者を決めたのですから、例えば1年とか短期間で親権者を変更することは、子の生活の安定性といった観点からも望ましくありません(前述の通り、離婚協議に瑕疵があった場合は別ですが)。

 逆に、5年以上とか長期間が経過しますと、お子さんも成長し、その後の父子関係や母子関係にも変化が見られる可能性がありますし、生活状況が変化することも考えられます。その場合には、改めて家庭裁判所調査官の調査を実施して慎重に検討するという手順になることも想定されます。

 なお、単独親権者決定からの年月の長さを判断するにあたっては、その当時のお子さんの年齢も加味する必要があります。当時お子さんが2歳だったのが、今は5歳になっているということですと、お子さんの様子も大きく変化しているでしょうが、逆に当時お子さんが11歳だったのが14歳になったという場合、お子さんの様子にあまり劇的な変化は生じないものと思われるからです。

 いずれにしましても、単独親権者を決めてからどれほどの期間が経過しているのかという点は、今後の調査等にあたってどこまでの調査を実施するのかという点にも関わってくる重要な要素になると思います。

 

(3)従前の父子関係

 一口に「従前の父子関係」(モラハラ元夫とお子さんとの関係性)と言いましても、①同居中の父子関係と②別居以降の父子関係に分けて検討する必要があります。

 なお、①の同居中の父子関係において、モラハラ元夫が当時お子さんに対して暴力を振るっていたというような事情がある場合、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければいけない事情)があるということになりますので、共同親権への変更は基本的に認められません。

 いずれにせよ、同居中ですと日常生活の中でお子さんと関わっているのでしょうが、別居後になりますと面会交流等を通じての関わりになると思いますから、父親としての関わり方にも大きな変化が生じていると思います。このような変化がある中で、同居中・別居後ともに、お子さんの育児にどの程度どのように関わってきたのか、お子さんとの関係の良好さ、親密さ、熱心さ等が考慮要素になってくると思います(例えば、同居中はモラハラ元夫が熱心過ぎてお子さんが多少嫌がっている様子があったが、別居後の限られた関わりであれば、お子さんの負担が随分軽減されたというパターンもあれば、逆に、別居後だとモラハラ元夫側に取ってお子さんの普段の様子が分からないため、質問攻めにあってお子さんが疲弊している様子があるなどのパターンもあると思います)。

 また、相手がモラハラ元夫ですから、お子さんとの関わりの中でお子さんに対してもモラハラ行動や言動に及んでいないか、あなたに対する悪口等をお子さんに吹き込んでいないかといった点も考慮要素になってくると思います。

 

(4)従前の母子関係

 一口に「従前の母子関係」(あなたとお子さんとの関係性)と言いましても、①同居中の母子関係と②別居以降の母子関係に分けて検討する必要があります。

 同居中も別居後もあなたがお子さんの育児をメインで担ってきたという状況は変わらないと思いますが、別居後はモラハラ元夫がいない状況での生活になりますから、その後のお子さんとの関わり方にも一定の変化が生じているはずだからです。

 ここでも、同居中・別居後ともに、お子さんの育児にどの程度どのように関わってきたのか、お子さんとの関係の良好さ、親密さ、熱心さ等が考慮要素になってくると思います。

 

(5)父母の関係性

 あなたとモラハラ元夫との関係性も、共同親権の是非を検討するにあたって重要な考慮要素になります。

 そもそも、あなたがモラハラ元夫から身体的暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動の被害を受ける虞がある場合、必要的単独親権事由(必ず単独親権にしなければいけない事情)があるということになりますので、共同親権への変更は基本的に認められません。

 前述の通り、離婚後共同親権は、お子さんの重要な事柄について父母で話し合って子の福祉にかなうような結論を導くという制度ですから、そのような父母の話し合いの土台が整っていない場合には、必要的単独親権ということになるのです。

 

 いずれにしましても、父母が共同して親権を行使できるような関係性が構築されているのかという点が重要な考慮要素になります。

 また、このような信頼関係を推し量る要素として、これまでの面会交流についての連絡の様子、モラハラ元夫がしっかりと養育費を支払っているか、といった点も考慮要素になります。

 相手がモラハラ元夫ですから、父母の冷静な話し合いは期待できないことが多いとは思いますが、モラハラの証明は難しいことも多いので、親権者変更手続きの中でも立ち回り方に工夫が必要になってくると思います。

 

(6)あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 あなたの単独親権と決まった後は、基本的にあなたが単独でお子さんの育児を担っていると思いますので、その中で、親権者として不適切な行動や言動等がなかったのか、お子さんの成長に伴う関係性の変化の中で問題等が生じていないのかといった点が考慮要素になってくると思います。

 おそらく、この部分は、モラハラ元夫側が声高に主張してくる部分になってくると思いますので(俺の見ていないところで元妻が子供に手を上げた、と言ったことを主張してくるという意味)、しっかりと反論していく必要があります。

 

(7)父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 今問題になっているのは、モラハラ元夫の単独親権に変更するのか?という点ではなく、共同親権に変更するのが良いのか?という問題です。

 「親権」というと、どちらが育てるのが良いのか?という視点で考えがちですが、共同親権の場合、前述の重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)を父母が共同して決める方が良いのかの是非を検討する作業になります。

 そのため、このような重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)の決定に父親が関わることがどれほどお子さんにとってメリットのある話なのかという点が重要な考慮要素になります。

 例えばですが、お子さんが医師を目指して猛勉強しているといった場合に、父親である医師の意見を踏まえながら進学先等を決定したいという場合、父親の果たす役割は大きくなってくると思います(もちろん、その事情一つだけで共同親権になるというわけではないですが)。

 

(8)子供の意思

 お子さんの年齢が幼い場合、十分な判断能力も無いと思いますので、その意見を裁判所が考慮することはないと思います。

 調停や審判の場合、お子さんが就学年齢に達している場合(小学校に入学している場合)、お子さんの意思を確認することが多いと思います(15歳以上の場合には、その意思を確認することが必要的です)。

 このようなお子さんの意向・心情調査を実施することになった場合、お子さんの目から見た現状の生活(満足度)、父親・母親との関係性等基本的な事項の確認を行うと思いますが、それらの中に大きな問題がない場合、共同親権特有の事情の確認が重要になってくると思います。

 即ち、共同親権にすることが良いのかどうかについては、前述の重要事項(お子さんの進学や重大な医療行為等)について、父親が関与することが子の福祉にかなうかどうかの判断なのですから、意向・心情調査等においても、お子さん自身が上記重要事項に対して父親の関与を望んでいるのか、という点と、その理由が重要な考慮要素になると思います。

 

(9)今回の親権者変更手続きに至る経緯

 前述の通り、お子さんの重要事項について、父母が協力して話し合いができるのかという点が重要なポイントになりますので、今回の親権者変更手続きに至る経緯も、重要な考慮要素になります。

 親権者変更は、父母の同意だけでは実現できません(親権者変更届を提出すれば区役所で受け付けてくれるというシステムになっていません)ので、必ず調停等の手続きを経なければなりません。そのこととの兼ね合いで、事前の話し合いで共同親権にすることの合意ができているという場合、調停の席で、あなたの方で誤解等がないことの確認がとれれば、比較的スムーズに共同親権に変更できると思います(これがおそらく最もスムーズな手続きのやり方だと思います)。

 

 他方で、事前に何らの話し合い等もなく、いきなり調停を起こしてきたという、今回のようなケースの場合、父母が冷静に話し合える土台があるのかという点で疑問が生じると思います。

 このような観点から、今回の手続きに至る経緯も、考慮要素の一つになります。

 

 

5.まとめ


 親権者変更の是非を判断するにあたっては、以下の9個のポイントが重要になってくる。

 ①当初あなたが単独親権者になった経緯・手続き

 ②その様に決まってからどれほどの年月が経過したか

 ③従前の父子関係

 ④従前の母子関係

 ⑤父母の関係性

 ⑥あなたの単独親権と決まった後の事情の変化の内容・程度

 ⑦父親が関わることがどれほど子の福祉・利益にかなうか

 ⑧子供の意思

 ⑨今回の親権者変更手続きに至る経緯

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!今後モラハラ元夫は何をしてくるか!?】元夫が突然共同親権への親権者変更を申し立ててきた(2)―元夫はどういうつもりでこのような手続きを取ってきたのか?

2026.08.03更新

※離婚後共同親権は改正民法で初めて明記された制度ですので、現時点で実務の対応が定着しているわけではありません。本記事は弁護士秦の私見に基づく解説ですので、そのような前提でお読み下さい※

 

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1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚後共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので、「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
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  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

3.今回の事案設定


今回は、以下のような事案を前提に解説していきます。

  • 離婚そのものは暫く前に成立している
  • 離婚のときの親権者については、妻であるあなたに指定されている
  • その後もあなたがお子さんを育てている
  • 元夫が突如、共同親権への親権者変更の手続きを取ってきた

 

 

4.夫はどういうつもりで親権者変更手続きを起こしてきたのか?


それでは、モラハラ元夫は、どう言うつもりで共同親権への親権者変更手続きを起こしてきたのでしょうか。

 これを紐解く鍵として、私が担当した監護者指定事件でのモラハラ元夫側の考えが参考になりますので、以下で解説いたします。

(1)お子様の今後にしっかりと関わりたいというケース

 前述の通り、離婚後共同親権の中には、お子様の今後の進学や重大な医療行為などが含まれますので、それらのお子様にとって大事な内容について積極的に関わりたいという気持ちで親権者変更手続きを取っているケースもあると思います。

 ただ、相手はモラハラ元夫ですから、単にお子さんに対して熱心であるというだけではなく、①実際にはお子さんを支配したいという気持ちが強かったり、②元夫婦の関係としてあなたのことを下に見ていて「あなただけに任せられない」という気持ちの場合も考えられますので、注意が必要です。

 

(2)こちらの様子の確認を目的とするケース
 特に、こちらがシェルターに避難したり、そうでなくとも、こちらの所在を秘密にしているような場合、モラハラ元夫側としては、こちらの暮らしぶりやお子様が元気にしているのかを確認したくて手続きを取っているというケースもあります。

 どういうことかと申しますと、親権者変更手続きを進めて行く中で、当然ながら現在のお子様の様子が直接の議題になりますので、こちらもお子様達の様子を裁判所に伝えることが必要になります。その内容は一定限度でモラハラ元夫側に伝わりますから、そこでモラハラ元夫は「情報収集」しているということになるのです。

手続が進んでいく中で、裁判所から「子の監護に関する陳述書」という書面の提出を求められたり、あなたの家に家庭訪問するというパターンも多く(家庭訪問するのは、家庭裁判所調査官であって、モラハラ元夫があなたの家を訪問するわけではありません)、モラハラ元夫は、それらを通じて、お子様達の様子を確認できるという側面があります。

 このようなケースですと、こちらの生活ぶりやお子様の様子が分かった段階で、夫側が申立を取り下げて来たりすることもあります。

 

(3)面会交流実施を目的とするケース

今後の面会交流をどうしていくのかという点は、親権者を決めるにあたっての重要な要素の一つになりますので、親権者変更手続きの中でも、面会交流の件が議題に上ることが多いです。

裁判所の基本的な考え方は、たとえ夫婦が別居や離婚になったとしても、父親と子供との関係は今後も続いていくので、お子様が父親からの愛情を受ける機会として極力面会交流を推奨すべきと考えているからです。

 そのようなこともあって、モラハラ元夫側としては「共同親権者になること」が本命ではなく、「お子様との面会交流実現」を本命にしているケースもあるのです(このような場合、共同親権への親権者変更調停事件と一緒に面会交流調停事件が起こされるケースも多いかと思います)。

 

(4)嫌がらせとしか思えないケース
 例えば、こちらの別居先は実家で、特にこちらの所在を元夫側に秘密にしているわけではないとか、そもそも、元夫側がお子様に会いたいと思っていると感じられないというケース(離婚前から元夫がお子様を可愛がっていなかったとか)もあります。
 むしろ、離婚前、元夫にとって気に入らないことがあると、あの手この手を使って嫌がらせをしてきたという場合には、今回の親権者変更手続き自体が嫌がらせ目的ということもあります。

 

(5)そうは言っても、「寂しい」「孤立したくない」というケースもある

上記の通り、主たる4パターンをご紹介しましたが、いざ離婚して元夫が独身生活を送っていると、寂しさを募らせているとか、孤立したくないという方がいるのも事実です。

あなたやお子様がいると家庭内もある程度活気があるのですが、元夫側一人だけの生活だと「味気ない」とか「寂しい」と感じてしまうというところです。 

 

(6)新しい法律ができたから「ひとまず申し立ててみた」というケースも出てくるか?

 前述の通り、改正民法が施行されたのは令和8年4月1日のことですから、まだ離婚後共同親権のことを十分理解しないままの方もいると思います。

 そのため、モラハラ元夫は、ひとまず新しい制度を利用してみたというようなトーンで申立をしてくることも考えられます。

 

 

5.モラハラ元夫がいきなり「審判」の手続きを申し立ててきた場合


 一口に親権者変更手続きと言っても、①親権者変更調停手続きと②親権者変更審判手続きの2種類があります。

 通常は、①親権者変更調停手続きを取ることが多いと思いますが、いきなり②の親権者変更審判手続きを取ることも不可能なことではありません。

 それでは、モラハラ元夫がいきなり②の親権者変更審判手続きを取ってきたのはどのような理由に基づくのでしょうか。

 簡単に、調停と審判の違いをご説明しますと、調停というのはあくまで話し合いの手続きであるのに対し、審判というのは裁判所の結論(命令)を求める手続きになります。

 そのため、いきなり審判を申し立てたというのは、元妻と話合いをしている時間的余裕がないほどにお子さんが危険な状態にあるといった主張が述べられるケースが多いと思います(例えば、お子さんがあなたから虐待を受けているとか、ネグレクトを受けているといった主張が展開されることが多いように思えます)。

 当然ながら、モラハラ元夫の言い分は誇張であったり虚偽であることも多いと思いますので、しっかりと反論していくことが必要になります。

 

 

6.モラハラ元夫はなぜ「単独親権」への変更申立をしなかったのか?


 親権者変更という場合、モラハラ元夫とすれば「私が1人で子供を育てたい」ということで「私が単独親権者になりたい」という申立てをすることも可能です。

 しかし、今回、モラハラ元夫が申し立てたのは「共同親権への親権者変更」の手続です。

 モラハラ元夫の思惑としては、①自分一人でお子さんを育てる自信がないというパターンと、②単独親権への変更だと勝ち目がないと考えているパターンの二つが考えられます。特に、離婚してから数年が経過していますと、数年間元妻が1人でお子さんを育てている中で、モラハラ元夫が単独親権を獲得することは非常に難しいといえます。そのため、②の理由のように負け戦にならないよう、最初から、「共同親権」への変更を申し立てているのです。

 

 

7.モラハラ元夫側の思惑は思惑として、こちらは共同親権を回避するためにしっかりと準備を整えること


 前述のように元夫側の思惑は様々ですが、どんな思惑であろうと、こちらとしては、お子様のためにも共同親権になることは避けなければなりません。
 そのため、こちらとしては、しっかりと準備をして、しっかりと勝って行く必要があります。

 

 

8.まとめ


・元夫側の親権者変更申し立ての思惑
① 心底お子様の重要な事項に関わりたいと考えている
② あなたの生活やお子様の生活の様子確認がしたい
③ 本命は面会交流狙いである
④ ただの嫌がらせ目的である

⑤単純に寂しいということで申し立てている
⑥新しい制度が始まったのでひとまず申し立てたといパターンも考えられる

・夫側の思惑がどうであろうと、こちらはしっかりと準備してしっかりと勝って行く必要がある。

 

 

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