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DV保護命令にDV夫は従うか?

2019.08.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>>「DV・モラハラの連鎖を断ち切る!!」DV・モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.DV保護命令とは?


 

 DV保護命令とは、DV夫があなたに接触すべく付きまといや徘徊することを禁止したり(接近禁止命令と言ったりします)、一定期間DV夫に自宅から退去させる(退去命令と言ったりします)裁判所からの命令になります。

 DV保護命令を発令させるためには、保護命令の申立書を提出し、裁判所はDV夫からも事情を聴く必要があります。

 

 

2.そもそもDV保護命令の効力は?


 

 あなたは、DV夫と共に生活し、夫からの理不尽な要求や非難等を浴びせられ、とてもではないが、裁判所の保護命令に従うとは思えないという方もいらっしゃると思います。

 私のところに相談に来られる方も、「夫は自分の考えを絶対曲げないので」とか「夫は自分が一番だと考えているので、とても保護命令に従うとは思えない」ということをおっしゃる方は多いです。

 

 それでは、保護命令の実効性を検討する前提として、保護命令にどのような効力が認められるのかについて解説します。

 

(1)罰則の存在

 DV保護命令に違反した場合、1年以下の懲役、100万円以下の罰金という罰則が設けられています。

 要するに保護命令に違反した場合、刑事罰を科すことができるということです(刑事裁判を経る必要がありますが)。

 

 もちろん、DV夫があなたに対して暴力を振るったり脅迫をした場合には、暴行罪や脅迫罪として処罰の対象になるのですが、このような暴行や脅迫に至らなくとも、保護命令に違反した場合、要するに、あなたの新しい住まいの周りを徘徊しただけで、上記のような保護命令違反の処罰が可能になっているのです。

 このことは、保護命令の実効性を確保する手段としてはかなり強力なものと言えます。

 

(2)警察との連携

 上記の通り、保護命令に違反した場合、それだけで刑事罰の対象になりますから、保護命令の制度には警察も密接に連携して対応してくれます。

 通常は、保護命令が発令されると、その日の当日に警察官がDV夫に対して直接電話連絡をし、保護命令を遵守するよう伝えてくれますし、近日中に(または当日)警察署に来るように指示され、呼び出される形でDV夫は警察署で話をすることになります。

 

 当然、DV夫が接近してきていると疑われる事情が発生した場合には、警察は親身に対応してくれます。

 このような警察との密接な連携は、DV夫に対する牽制の効果としては大きいです。

 

 

3.結局DV夫に知られない場所に引っ越す必要があることがほとんど


 

 上記の通り、保護命令の効力は強いのですが、限界もありますので、いずれにせよ、DV夫に知られない場所に引っ越す必要が出てくるケースがほとんどです。

 まず、保護命令を申し立てた際、裁判所は必ず夫側からも事情を聴く必要があります。保護命令は上記の通り強力な手段なのですが、他方で、夫側の行動の自由を制限するものになりますので、必ず夫側の言い分を確認する必要があるからです。

 

 その前提として、裁判所は夫側に、こちら側が提出した保護命令申立書や証拠類を事前に送っておく必要があります。こちらの言い分が分からないと夫側も十分な反論ができないからです。

 そのため、少なくとも、夫側に保護命令申立書が送られてきてから保護命令が発令されるまでの期間は、あなたは夫に知られないような場所に避難しておく必要が出てきます。夫が保護命令申立のことを知った場合、間違いなく、あなたに対して強く立腹するでしょうから、身を隠して身の安全を確保する必要があるからです。

 

 また、保護命令が発令したとしても、接近禁止命令についていいますと有効期間は6か月ですので、有効期間経過後、DV夫があなたに対してコンタクトを図る危険性があります。

 そのため、いずれにせよ、保護命令があったとしても、あなたとしては、夫側に所在を知られないような場所に転居する必要があるのがほとんどです。

 

 

4.DV夫はDV保護命令に従うか?


 私が担当した事件を見ておりますと、DV夫は、保護命令に従っています。DV夫も、警察に逮捕されてしまうと、非常に不便な生活を強いられますし、場合によっては仕事を辞めざるを得なくなってしまいますので、渋々保護命令に従わざるを得ないと考えるようです。

 また、前述のように、保護命令が出るようなケースですと、奥様の方も、DV夫が知らない場所に避難することがほとんどですから、DV夫がコンタクトを取ろうとしても、「居場所が分からないから接触できない」というのが実態だというケースも多いです。

 

 

5.まとめ


・保護命令に違反した場合には刑事罰があり、効果は強い。

・保護命令が発令した場合、警察と密接に連携して対応できる。

・保護命令が発令された場合でもあなたのみの安全を守るためには、結局、DV夫に知られない場所に転居する必要性が生じる。

・保護命令が出ると、DV夫側も渋々従うことが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV保護命令を申し立てた方が良いかの5個のチェックポイント

2019.08.23更新

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1.DV保護命令とは?


 

 DV保護命令とは、DV夫があなたに接触するために付きまといや徘徊することを禁止したり(接近禁止命令と言ったりします)、一定期間DV夫に自宅から退去させる(退去命令と言ったりします)裁判所からの命令になります。

 

 DV保護命令を発令させるためには、保護命令の申立書を提出し、裁判所はDV夫からも事情を聴く必要があります。

 DV保護命令が発令されますと、警察も連携して対応してくれますので、実効性の高い手段になります。

 

 

2.DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイント


 

 DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイントは主に以下の5個のポイントがあります。

 

①DV夫の危険性の程度

 まず、一番検討しなければならないのは、保護命令の対象になる夫の危険性の程度ではないかと思います。

 普段から手や足が出ることが多かったという場合には、これまで怪我することが少なかったとしても危険性は高いと思いますし、他方で、これまでの長期間の婚姻生活の中で暴力を振るってきたのは1回だけという場合には、保護命令を申し立てるほどではないかもしれません。

 

 このような危険性の程度は、以下のような要素を総合的に検討して判断して下さい。
・暴力の頻度や回数
・暴力を振るってきた期間
・暴力の内容・程度
・凶器使用の有無
・あなたが負った怪我の程度
・暴力を振るうシチュエーション(飲酒すると暴力してくるとか)
・DV夫の気質や疾患の有無(特に、精神疾患等を抱えていないか)

 

 なお、たまに豹変するけれども普段は優しい旦那なので大丈夫という発想は危険ですので、前述のような要素を慎重に検討して、危険性を判断して下さい。

 また、保護命令の申立まではしなくとも、警察署から警告してもらえば十分であるというケースもあります。そのような場合には、あなたの方で自宅の最寄りの警察署に相談に行ってもらい、警察官の方からDV夫を警察署まで呼び出してもらい、直接注意してもらったり、DV夫から誓約書を提出させるという方法で済ませて一旦は様子を見ることもあります。

 

 
②現住居の安全性

 例えば、あなたが現在シェルターに居住しているというような場合には、現住居の安全性は非常に高いということになりますので、敢えて保護命令の申立までする必要性に乏しいということになる可能性もあります。

 他方、実家という場合、相手にこちらの所在は分かってしまっているのですが、ご実家のご両親等もいるため、実家で暴力まで振るう危険性は高くないというケースもあると思います。

 ただ、相手にこちらの住所が知られてしまっている場合には、裏を返すと相手がこちらの現住居付近を訪れることはできてしまうことになりますから、現住居を知られているか否かが、現住居の安全性の判断にあたって一番のポイントではないかと思います。

 

③弁護士費用の負担

 DV保護命令の申立をする場合、ご本人だけで申立をすることは難しいため、通常は、弁護士を立てて申請することになります(あなた自身の身の安全のためにもそうすべきかと思います。)

 そして、通常は、保護命令の申立事件は、離婚事件等とは別の事件として別途弁護士費用が発生することが多いため、あなた自身の負担が増えます。

 そのため、弁護士費用の負担についても保護命令申立の一つの判断材料にすべきかと思います。

 

④手持ち証拠の確認

 DV保護命令は申立をすれば簡単に認められるというものではなく、あなたが暴力を受けたことの証明をする必要があります。診断書や怪我をしたときの怪我の写真等の客観的な証拠が一切ない場合、保護命令が認められる可能性は残念ながら低いと言わざるを得ません。

 なお、暴言のみと言う場合にも、保護命令が認められることがありますが、あなたの生命や身体に危害を加えるような暴言がなされる必要がありますし、その暴言について録音データが複数存在しないと難しいことが多いかと思います。

 いずれにせよ、保護命令事件の審理に耐えられるような証拠の有無はしっかりと検討する必要があります。

 

⑤有効期限

 保護命令は、一度認められると半永久的に効力が認められるというものではありません。

 接近禁止命令は6か月、退去命令についても2か月が有効期間とされています。

 接近禁止命令、退去命令いずれについても再度申立をすることはできますが、当初の保護命令の有効期間中に相手方に何も問題行動がないという場合には、認められないことも多いです。

 そのため、上記のように有効期間が限定されるということは認識した上で、保護命令を申し立てる必要があります。

 

 

3.保護命令を申し立てるかは慎重に検討する必要がある


 事実としてあなたがDV夫から頻繁に暴力被害を受け続けてきたような場合、保護命令を申し立てて身の安全を確保したいと思うでしょう。しかし、前述のように、証拠が不十分ですと、折角保護命令を申し立てても、保護命令が認められないということもあります。

 そのため、申立をする前に、しっかりと保護命令発令という結論を得られるかを慎重に見極める必要があります。

 なお、前述の接近禁止命令が認められるとしても、退去命令までは認められないというケースもあります。

 そのあたりも、事前にしっかりと見極めた上で、申立を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。

 保護命令が認められるかどうかは、専門的な検討が必要になりますので、弁護士に相談して見極めるようにして下さい。

 

 

4.まとめ


・DV保護命令を申し立てた方が良いかどうかは以下の点を考慮して判断すべきである。

 ①DV夫の危険性の程度

 ②現住居の安全性

 ③弁護士費用の負担

 ④手持ち証拠の確認

 ⑤保護命令の有効期間

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ夫との別居準備(1)―別居先は近場が良いか遠くが良いか?

2019.07.29更新

弁護士秦

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1.別居先選び


 

 モラハラ夫との生活に強い恐怖感・不快感や倦怠感を持つようになった場合、別居や離婚が頭によぎるようになると思います。

 夫側に改善を要求したものの、一時的にしか改善されない、もしくは、改善すらされない、酷いケースですと、改善しないばかりか、これまでの被害が余計に悪化していくというケースすらあります。

 このような状況ですと、あなたは夫との生活を断念し、離婚の前提として別居を真剣に考えていくことになると思います。別居先の検討要素等について、以下の通り詳しく解説していきます。

 

 

2.別居先は近くがよいのか遠くがよいのか?


 

 別居といった場合にまず考えなければならないのは、別居先の問題だと思います。

 具体的な細かい場所はともかく、別居先選びにあたって大きな視点で、今の自宅の近くが良いのか、遠い場所の方が良いのかという点を検討する必要があります。

 

 別居先を近場とするのがよいのか遠隔地にするのがよいのかは、詳しくは、以下のような要素を総合して検討してみてください。

 

①同居中の夫の行動や言動等

 もちろん、同居中の夫からの暴力が日常的であったような場合には、できる限り遠隔地に転居した方が安全でしょうし、他方、夫のモラハラは無視が主体的であったという場合には、さほど遠隔地にまで転居しなくて良いかもしれません。

 夫の危険性とも言えますが、危険度の高低によって、別居先選択は大きく影響すると思います。

 また、モラハラ夫があなたにどのくらい執着しそうなのかによっても別居先選択の方向性は大きく影響します。この点は、同居中のあなたに対する監視や行動制限がどの程度のものだったのかによって見極めることができます。

 

②経済的問題

 仮に、夫の側から婚姻費用として生活費をもらうことを意図していたとしても、残念ながら、DV・モラハラ夫から生活費を回収するためには時間がかかってしまうこともあります。

 そのため、あなた自身の現在の収入に不安がある場合には、まずは実家に避難して、経済的な不利をカバーするというケースも多くあります。

 いずれにしましても、経済面は、今後のあなたの生活にとって非常に重要な要素なので、今後のあなたの生活が経済的に立ちゆかなくならないよう慎重に別居先を選ぶ必要があります。

 

③お子様の意見や教育面

 お子様が小学校高学年以上になると、小学校での友人が重要な存在になるというケースも多くあります。また、離婚や別居でただでさえお子様に心理的影響を与えるので、せめて教育環境は変化させたくないと考えることは、あり得ることかと思います。同じ学区内で引っ越すとなるとどうしても近場に引っ越す形になってしまうと思います。

 そのため、お子様の意見や教育面も、別居先選びの検討要素になります。

 ただ、最初は転校を嫌がっていたけれども、実際転校してみるとスムーズに馴染むことができたということも多いようです。

 

 

3.実際皆さんは近場と遠隔地どっちに転居したのか?


 

 私が担当している事件を見ておりますと、比較的自宅近くに別居した方もいれば遠隔地に別居した方もいます。別居先をどのように決めたのかについては、色々なご意見がありましたので、以下で説明を交えながら、詳しくご紹介いたします。

 

(1)夫が暴力を振るうので、シェルターに避難した。

 夫がモラハラにとどまらず、直接あなたに対して暴力を振るうようなケースですと、あなたの居場所が知られることそのものが身の危険を生じさせることになります。

 シェルターに避難することができれば、あなたが住んでいる場所を知られるリスクはほとんどなくなりますので、夫が暴力を振るうようなケースでは、シェルターに避難するケースも多いです。なお、シェルターにいられる期間は限られていますので、その方は、シェルター退所後は母子寮に転居して暮らしています。

 

(2)夫が暴力を振るうので、遠隔地を別居先にした。

 様々な事情からシェルターでの生活を選択しなかった場合や、一時はシェルターに避難した場合でも、通常シェルターにいられる期間は限られていますので、その後に、全く夫が知らない場所に引っ越す(前述の母子寮だけでなく、都営住宅等に転居なさる方などもいます)というケースなどです。

 夫が暴力を振るうようなケースでは、前述同様相手にこちらの居場所を知られないようにする必要がありますので、夫が居場所を探っても分からない場所に別居するのです。

 夫に居場所を推測されないようにする必要がありますので、あなたの実家や親戚の家の近く等は避けることが多いです。

 

(3)夫が暴力を振るうので、遠くの親戚の家に仮住まいさせてもらうことにした。

 これまでの説明同様夫が暴力を振るうため、どこか遠くに別居する必要があるけれども、通常の借家だと家賃が高いという場合などに、遠くの親戚の家に住まわせてもらうということもあります。

 ただ、親戚の家の所在を夫が知っていては避難の意味がありませんので、例えば、親戚名義の建物だけれども、親戚本人は住んでいないし、夫にも所在が発覚していない場所に避難するケースなどです。

 

(4)経済的な問題もあって実家に戻ることにした。

 別居を決断したけれどもすぐにしっかりとした収入を得ていくことが難しいとか、小さいお子さんがいらっしゃって実家の協力が必要だということで、実家に避難するケースです。これらの事情がある場合には、実家への避難が最有力候補になることも多いと思います。

 

 ただ、実家に避難する場合、モラハラ・DV夫に居場所を把握されるリスクが非常に高いので、以下のような要素を総合的に検討して判断するのがよいと思います。

(メリット1)家賃負担を軽減でき、経済的負担を抑えることができる。

(メリット2)お子様がいる場合など実家の協力が期待できる。

(メリット3)モラハラ・DV夫も、こちらの実家には頭が上がらないので、実家にいることで安全性が増す。

(デメリット1)居場所がバレやすく、玄関先で騒がれるケースなどもある。

(デメリット2)元々実家との折り合いがあまり良くないと、家庭内がぎくしゃくするリスクがある。

(デメリット3)お子様の通学先や通園先の当たりがつけやすくなるため、通学途中や通園途中の連れ去りのリスクが生じる。

 

(5)子どもを夫に会わせる手間等も考え、それほど遠くない場所に引っ越した。

 夫が直接の暴力を振るうわけではなく、また普段はほとんど暴言等を発しないというような場合には、自宅近くに引っ越すというケースもあります。

 夫が子どもを可愛がっており、子どもも懐いているという場合、無理に引き離すことはあまり望ましくありませんし、夫と子どもとの関係が良好であれば、円満な離婚につながる可能性もあるので、自宅近くに転居するのです。

 このような場合、引っ越し先が近距離なため、夫が頻繁に引っ越し先まで来て入り浸ると言ったケースが生じやすいため、こちらの離婚意思や別居意思をしっかり伝えておくなどして、半同居状態のような格好にならないよう注意が必要です。

 

 また、夫が普段から暴言ばかりではないとしても、感情的になるとどのような行動に出るか分からないという場合には、例えば、①まずは、2週間程度実家に転居して様子を見て、②ほとぼりが冷めた頃に自宅近くの別居先に避難し、そこで生活を落ち着かせるという方法を取ることもあります。このような場合には、①の別居開始の時点で早めに弁護士から夫宛に通知を送り、夫が感情的な行動に出ないよう予め牽制しておくという方法を取ることも多くあります。

 

(6)子どもの学校を転校したくなかったので自宅近くに住むことにした。

 このケースも、夫が直接の暴力を振るうわけではなく、また普段はほとんど暴言等を発しないというような場合が想定されます。

 特にお子さんが小学校高学年で、ほとんどの同級生が同じ公立中学校に進学するといった環境ですと、お子さんの教育環境に配慮して、学区が変わらない範囲で転居すると言うことです。

 なお、学校と習い事いずれが重要なのかを見極めて検討する必要があるケースもあります。何を言っているのかと言いますと、例えば、学校に馴染んでいるというよりも、実際には、同じサッカークラブの友人と仲が良いという場合、①そのサッカークラブに通い続ける前提で近場に転居するという選択肢もありますが、他方で、②サッカークラブ等ですと、モラハラ夫が見学や観戦に来てしまうリスクが高いということを考慮して、敢えて遠隔地に転居するという選択肢もあるのです。

 

 もちろん、お子さんの教育環境は重要ですが、お子さん自身は夫との接触を強く嫌がっているといった場合には、あまり住居が近いと、夫から面会交流を頻繁に求められるリスクも高くなりますので、そのようなリスクも考慮しながら引っ越し先を検討する必要があります。

 

 

4.まとめ


・別居先選びの検討要素として重要なものは①夫の同居中のDVやモラハラの状況・程度、②あなたの今後の経済面、③お子様の意見や教育面といった点になる。

・モラハラ・DVの案件では、別居先として以下のようなところが選ばれている。

 ①シェルター

 ②遠隔地の親戚の家(夫に居場所が全く判明していない場所)

 ③実家

 ④自宅近くの賃貸マンションを借りた

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック6】手紙の有効性

2019.07.22更新

弁護士秦

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1.なぜ手紙?


 

 このブログのタイトルを見た方の中には、「なぜ手紙?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

 どうして直接会って話が出来ないのか?仮に直接会って話が出来ないとしても、メールやメッセンジャー、LINEなどメッセージを伝える方法はいくらでもあると思うのも当然のことかと思います。

 

 まず、直接会って話をすることについては、もちろん、奥様があなたと会って話をしても良いと言うことでしたら、会って直接あなたの言葉を伝えた方が良いと思います。

 ただ、奥様が調停を起こしているという事態を考慮すると、直接会うことは難しいかもしれません。

 そのため、会って話をするという形にこだわり過ぎてしまいますと、あなたの方から何も伝えられずに時間だけが過ぎていくということになりかねません。

 

 それでは、メール等はどうでしょうか。

 メールはすぐにメッセージを伝えることが出来るのですが、スマートフォンのメール等ですと、「あなたの本気度」は伝わりにくいように感じます。メール等はどうしても気軽に送るイメージが強いからです。

 そのため、あなたの本気度を伝えるためにも手紙というやや古典的な方法が考えられるのです。

 

 

2.手紙の有効性


 

 端的に申しますと、残念ながら、私が携わった事件で、手紙が決定的な役割を果たしたことはありません。

 私が代理人に立つケースでは、奥様の側も弁護士を付けており、離婚の覚悟が強いケースばかりだからなのかもしれませんが、上記のような傾向にあります。

 ただ、奥様と直接会えないという状況下では、手紙は有効策となり得ますので、あなたが何かメッセージを伝えたいと強く願っているのでしたら、手紙を書く方法というのもあり得るかと思います。

 

3.手紙の内容


 

 私が事件を担当しておりますと、「手紙を書きたいので添削して欲しい」との依頼を受けることもあります。その場合、多少の問題となる表現等は削除等しますが、あまりそれ以上の修正等はしないようにしています。

 そうしないと、その手紙は、「あなたが書いた手紙」ではなく「弁護士が書いた手紙」になりかねないからです。

 

 内容としては、このように夫婦がすれ違ってしまった経緯についてのあなたなりの考え方、反省や今後の改善等について記載することが多いと思います。家族での楽しかった思い出や夫婦の馴れ初め等について記載することもあります。

 手紙の内容は人それぞれなのですが、①あなたは悪くないとか、奥様を批判するような内容、②思い出話についても、奥様が不機嫌になったエピソードを含む内容を書いてしまう方もいます。このような内容は、更に奥様を感情的にしてしまうリスクがありますので、避けるべきかと思います。

 

 

3.渡すタイミングと相手


 

 手紙を渡すのであれば早いタイミングがよいと思います。

 そのため、奥様と直接会って話が出来ない場合でも、例えば義両親とは会えるという場合には、義両親に託すという方法を考えても良いかもしれません。

 また、奥様が弁護士を立てている場合、弁護士に渡すという方法もあります。ただ、弁護士によっては、この手の手紙は一切渡さないようにしているという信条の先生もいますので、そのリスクを回避するためには、調停の席で調停委員から奥様に直接意見を聴いてもらうという方法の方が良いときもあります。

 

 

4.奥様は手紙を読んでくれるのか


 私の経験上、奥様が手紙を読んでくれるかは確率的に半々という印象です。

 そのため、手紙を書いても読んでもらえないかもしれないという気持ちを持ちつつ、手紙を書いた方が良いと思います(奥様が読んでくれるという期待が大きすぎると、読んでくれなかったときのショックが大きいため)。

 

 

5.まとめ


・メールよりも手紙の方が、真剣度が伝わりやすい。

・手紙の内容は、あなた自身が思い悩んで書くしかない。

・手紙は早めに渡した方が良い。

・奥様が手紙を読んでくれないこともある。

 

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突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック5】調停への臨み方

2019.07.08更新

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1.調停なんて初めて


 

 突如離婚調停の書類が届き、そこには、裁判所に行かなければならない日時が指定されている。あなたは「調停なんて初めて」「裁判所に行くことも初めて」といった方が多いのではないでしょうか。

 離婚調停は人生で何度も経験するものではありませんから、調停が人生初という方が大半でしょう。

 そんなあなたの緊張を少しでも和らげるべく、調停の席での振る舞い方等について以下の通り解説致します。

 

 

2.「とりあえず話を聞きに行ってみよう」という姿勢は厳禁


 率直に言いますと、奥様が提出した調停申立書を読んでも、奥様がなぜ離婚したいのかの理由等はほとんど分かりません。そのため、まずは「調停に出席して家内が何を言っているのか確認してみよう」と考える方も多いかと思います。

 しかし、これでは、対応が後手に回ってしまいますので、このような姿勢は厳禁です。

 奥様と一緒に生活している中で、奥様が不満に思っている点等は、ある程度察しがつくと思いますので、奥様が離婚したい理由をある程度想像した上で対応を検討しておく必要があります。

 

 

3.まずは、別れたいのか、別れたくないのかを予め決めておく


 

 離婚調停申立書が届いている以上、奥様は離婚の意思が固いと考えてよいと思います。

 そこで、あなたとしても奥様が離婚理由として言ってきそうなところを想像しながら、あなた自身も別れたいのか、別れたくないのかについては事前に決めておいた方が良いです。

 多くの方にとって調停は初めての体験でしょうから、ただでさえ緊張してしまい、調停委員に伝えたいこともきちんと伝えきれないということも多いと思います。

 そのため、少なくとも離婚したいのか離婚したくないのかという一番重要な点だけはしっかりとあなたの気持ちを固めておくべきだと思います。

 

 

4.色々と悩み過ぎない


 心配だから色々なサイトを見てしまうというのはある程度仕方ないのですが、各サイトによって書きぶりが違うなどして、あまり色々なサイトを見てしまいますと、余計に悩んでしまうという事態に陥りかねません。

 調停の臨み方について詳しく書いてあるサイトを2,3個見れば、おおよそのところは分かりますので、それ以上のサイトを見るのはオススメしません。

 また、サイトによっては、今後の見込み等について書いてあるサイトもありますが、あなたの事件は世界で一つしかないあなただけの事件なので、そのようなサイトの記事に影響されすぎないようにして下さい。

 

 

5.確認したいことは予めメモしておく


 例えば、奥様が突如別居し、離婚調停の書類だけが届いたといったケースの場合、何が何だか分からないまま調停に出席するというケースもあると思います。

 そのような場合に、「とりあえず調停に行ってみよう」という姿勢では、あなたに不利に手続が進んでしまうリスクがあります。

 

 離婚調停なので離婚するかどうかが大きな問題であることは間違いないのですが、あなたなりに確認したい点、気になる点があると思いますので、その様な点は予め箇条書きでメモをしておくのがよいと思います。

 ただ、調停の時間は限られていますので、確認したい点が沢山ありますと確認しきれずに終わってしまうということになりかねません。

 

 そのため、確認したい点は多少絞り込んだ方が良いですし、その中でも優先順位に応じて聞く順番は予め決めておいて下さい。

 例えば、①子どもといつ会えるのか、②子どもは新しい学校になじめているのか、③子どもの習い事はどうしていくつもりなのか、④そちらの生活費はいくら払えばいいのか……というように、確認したい事項を箇条書きにして、優先順位を付けてみて下さい。

 このような準備をすることで、あなた自身の頭の整理にもつながると思います。

 

 

6.当日の臨み方


 

 調停委員は、あなたの表情や口調をよく見ています。

あなたがあまり感情的になってしまいますと、それが「あなたの普段の姿」と誤解されてしまう虞があります。

 そのため、調停委員の誤解を受けないように、冷静に話をするようにして下さい。

 少なくとも調停委員に対して喧嘩腰になることは厳禁です。

 

 もちろん調停の席ではあなたの気分を害するような内容の話も出てきますので、そのときに常に冷静でいることは難しいと思いますので、多少声が大きくなってしまうことは仕方がないと思います。その際にも、すぐに切替えて冷静に戻る姿勢が重要だと思います。

 また、調停委員は随所で大事な話をしますので、必要に応じてメモを取るようにして下さい。もちろんメモばかり取っていては話が進まなくなってしまうため避けるべきですが、何もメモを取っておりませんと肝心なことを聞き逃してしまうと言うことになりかねません。

 

 

7.当日の服装


 

 特にラフすぎる服装でなければ、普段の服装で構いません。スーツでなければならないということもありません。

 

 

8.まとめ


・調停なんて初めてという方の方が多い。

・とりあえず調停に行ってみようと言う姿勢は厳禁である。

・まずは、別れたいのか別れたくないのかは最低限事前に決めておく。

・色々なサイトを見すぎて悩みすぎないように注意。

・確認したい点等は予めメモにまとめておく。

・調停当日は冷静に話をし、大事な内容はメモを取る。

・当日の服装はラフすぎなければ普段着で構わない。

 

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突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック4】簡単に復縁を諦めない

2019.06.24更新

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 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。>「理不尽な離婚に対してNO!」旦那様側の夫婦関係総合サイトはこちら<になります。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.まずは復縁難易度のチェック


 

 実は、一口に奥様から調停を起こされたと言っても、状況に応じて復縁の難易度は変わってきます。具体的には以下の事情は特に大きな要素と言えます。

(1)まだ夫婦が同居中かどうか

(2)奥様が弁護士を雇っているか

 

 まず、奥様が調停を起こしてきたけれども、まだ同居して生活しており、近い将来別居する様子がないという場合、調停を起こされたと言ってもまだ復縁の可能性は多少なりとも上がると思います。

 

 逆に、奥様が弁護士を立てているという場合、弁護士費用を支払ってでも別れたいということですから、一般的に復縁の可能性は下がると言えます。

 まずは、上記の二つの事情をもとに、あなたの復縁難易度が上がるのか下がるのか検討してみて下さい。

 

 

2.そもそも奥様が調停を起こしてきたことの意味合いとは


 

 奥様が調停を申し立ててきたと言うことは、一般的には「真剣に離婚について話をしたい」という意味合いに捉えるべきだと思います。

 なお、あくまで調停は話し合いの手続ですから、判決で無理矢理別れさせられてしまうという誤解はしないで下さい。調停の席で判決が言い渡されることはありません。

 

 上記の様に奥様は離婚に真剣に向き合って調停という手続を利用しているはずですので、「安易に手続きを取った」という可能性は低いと思います。

 そのため、上記の様にまだ同居中であって、奥様が弁護士を雇っていなかったとしても、奥様は真剣に離婚の話し合いをしたい意向だという認識は持つ必要があります。

 

 

3.復縁を諦めるべきか


 

 奥様が真剣に離婚したいという気持ちなので、あなたとしても、「喧嘩別れの様な形にしたくない」という考えが頭をよぎることもあるかもしれません。

 もちろん、あなた自身も夫婦の関係が上手く行っておらず、逆に自分の方から離婚を持ちかけようと思っていた、と言う様な場合でしたら、特に離婚を争う必要はないと思います。

 

 しかし、あなた自身今離婚してよいのか迷いがあるということなら、簡単に復縁を諦めない方が良いと思います。今は奥様が感情的になって「離婚!」「離婚!」と言っているけれども、ほとぼりが冷めれば、ヨリを戻したいと言ってくる可能性も皆無ではありませんし、夫婦の間にお子様がいる場合、お子様の気持ちも考慮する必要があります。

 そのため、私の方からは、「離婚するのは簡単にできるけれども、一旦『離婚』と言ってしまうと、話を元に戻すことはできなくなりますよ」とアドバイスさせていただくことが多いです。もし離婚するにしても、3年後や5年後後悔する様な形の離婚だけはしたくないものです。

 

 

4.調停委員がやたらと離婚を勧めてくるのだが?


 

 あなたの方から見ていると、調停委員がやたらと離婚を勧めてくる様に見えてしまい、調停委員が中立な立場ではなく、「奥様の味方」になっているのではないかと感じる場面もあると思います。

 しかし、実際、調停委員は、お互いの話をまとめるために、奥様に対しては全く逆のことを話していることもありますので、安易に「調停委員が奥様の味方になっている」と考えない方が良いと思います。調停委員が、お互いの言い分をただ相手に伝えるだけのメッセンジャーの役割しか果たさなければ、話し合いがまとまるはずもありません。そのため、調停委員の役割として、あなたに多少厳しめのことを言うのも致し方ない面があります。

 

 また、離婚調停の大半は、夫婦円満ではなく、離婚の調停成立という形で解決されていますので、調停委員も自分でも強く意識しないうちに、離婚を勧めているというケースは多くあります。

 

 

5.まとめ


・調停手続に突入してしまったとしても、①同居中なのか、②奥様が弁護士を立てているのかによって復縁難易度は異なる。

・奥様が調停を申し立ててきたことは『真剣に離婚の話し合いをしたい』というメッセージと受けとめる必要がある。

・離婚するかどうかは、将来後悔しない様慎重に検討する必要がある

・調停委員が離婚を勧めてくるのは、立場上致し方ない面がある。

 

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突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック3】調停の場は白黒つける場所ではない

2019.06.17更新

弁護士秦 

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1.調停は裁判じゃない


 

 突如裁判所から調停の通知が来てしまいますと、「自分が裁かれてしまうのか?」という不安に陥る方も多いと思います。

 しかし、調停は、裁判とは根本的に違います。

 

 離婚調停とは、一般的には、ご夫婦間で直接のお話し合いが難しい時に、家庭裁判所の調停委員を間に入れてご夫婦間の話し合いを円滑に行いお互いの合意を目指す手続などと言われたりします。

 要するに、裁判所という場所で手続を行うけれども、あくまで当人同士の話し合いを基本にした手続だと言うことです。

 

 一般的な裁判は、証拠を提出して、原告と被告のどちらの言い分が正しいかを裁判官に決めてもらう手続ですので、この点で調停と裁判とは大きな違いがあります。

 

 

2.要するに、調停の場は白黒つける場所ではないということ


 

 前述の様に、調停は、裁判とは異なりますので、その場で白黒つける場所ではありません。旦那様の側の代理人をしておりますと、以下の様に誤解されている方もいらっしゃいますので、具体的に解説していきます。

 

(1)【よくある誤解1】家内を完膚無きまでに打ち負かせたい

 例えば、奥様がこちらに無断で別居した上で、弁護士を立ててきたとなると、こちらも臨戦態勢に入ってしまい、「相手をぎゃふんと言わせたい」と考える方もいます。

 もちろん、奥様が好き勝手の主張をしている場合、それをなすがままにしておくべきではないのですが、相手を「やっつける」ような体制で臨むのは危険です。

 

 まず、あなたが奥様との復縁を望んでいるという場合、奥様を徹底的に批判する態度で臨んでしまいますと、奥様は余計あなたへの気持ちが離れてしまいかねません。

 逆に、あなたも奥様との離婚を希望していた場合、奥様もあなたも離婚を希望しているため、この点を大きな争点とする必要性がなくなります(要するに、調停は話し合いの手続ですから、離婚については「お互いの話し合いが済んでいる」という扱いになりますので、敢えて奥様を徹底的に非難して、奥様の気持ちを逆なでする必要がないのです)

 

(2)【よくある誤解2】家内に落ち度があることの証拠を徹底的に集める

 例えば、奥様から送られてきたメールやSNSのメッセージにて、奥様が感情的になっている発言等を事細かに集めてくる方もいます。

 しかし、前述の通り、調停は話し合いの手続ですので、細かな証拠を収集しても、ほとんど調停委員は目を通してくれません(「お話しだけ伺わせて下さい」と言って引き取ってしまうと思います)。

 

 もちろん、証拠集めは、離婚裁判を視野に入れた場合には有効な手段なのですが、裁判にならずに調停で解決するケースも数多くありますから、今から「裁判ありき」で準備をしておくのではなく、目の前の調停に全力で挑む方が良いと思います(要するにまだ調停のステップなので、裁判ありきで準備を進めるのは「気が早過ぎる」ということです)。

 

(3)【よくある誤解3】調停委員に分かってもらうために長文の事実経過を準備しなくちゃ

 調停の手続は、調停委員が進行の指揮をしますので、もちろん、調停委員に、こちらの言い分を理解しておいてもらう必要がありますし、間違っても調停委員を敵に回す様な態度や言動は避けた方が良いです。

 

 ただ、あまりに長文の言い分を準備しても、調停委員は多数の事件を抱えておりますので消化不良を起こしてしまうだけです。

 また、長文の書類を準備してしまうと勢い奥様への非難の文言も増えかねません。そうしますと、奥様との感情的対立を招きかねません。

 そのため、あまり長文の経過説明等は避けた方が良いです。

 

(4)【よくある誤解4】調停委員が正解を出してくれる

 調停委員は、あなたと奥様の話の架け橋をしてくれる人物ですが、あくまで公正中立な立場に立ちますので、基本的に夫婦のどちらか一方の味方をする様な発言はしません。

 よく調停委員が、夫婦どちらの言い分が正しいか正解を出してくれると誤解している方もいますが、調停委員は、正解は出してくれません。

 

 よく使う調停委員のフレーズとしては「旦那さんの言うことは分からないでもないんですが、調停は過去の事実がこうだったと判断する場所じゃないんです」とか「旦那さんのおっしゃることを奥さんにも伝えましたが、奥さんはあくまで離婚を強く希望しているようです」といったものになります。

 従って、調停委員であったら分かってくれる、こちらが正しいと調停委員が分かってくれれば、調停委員は家内を説得してくれる、という考え方は間違いです。

 

(5)【よくある誤解5】家内が言ってきたことに対しては逐一反論する必要がある

 最近は減ってきているのですが、こちら側の方で、奥様が離婚したい理由が不明確であると主張した場合に、調停委員の要請で、奥様側から離婚したい理由を書き連ねた書類を提出してくるケースがあります。

 このような書面を受け取りますと、一語一句に至るまで、全て反論し尽くしたいと考える方もいますが、それをやってしまいますと、反論合戦になってしまいまして、冷静に話し合いをする環境が失われてしまいます。

 そのため、奥様の言い分全てに逐一反論する、事実を突きつけるという対応は避けた方が良いです。

 

 

3.調停では「正しさ」ばかりを追求すべきではない。


 

 もちろん、悪いことをしてもよい、婚姻中悪いことをしたとしても許される、という意味ではありません。ただ「正しさ」ばかりを追求しても、奥様からすると「窮屈」に感じてしまうと思います。

 

 そもそも、あなたは、奥様が「正しい」から結婚したのですか?奥様は、あなたが「正しい人」だから結婚したのですか?それは違うと思います。

 男女の関係なので、お互いの長所・短所も見つめながら、一緒に生活していきたいと考えたから結婚したのです。

 

 離婚のときの話し合いもそうです。

 「俺は間違っていない」「お前が間違っている」という姿勢では、奥様への非難に終始してしまい、結局仲直りの道は閉ざされてしまいます。

 あなたが離婚を考えていたとしても、奥様と「喧嘩別れ」の様に離婚するよりは、少しでも、しこりが少ない形で離婚できた方が良いと思います。

 その意味では、調停では「正しさ」ばかりを追求すべきではないと思います。

 

 

4.まとめ


・調停は裁判とは異なる。

・調停は白黒つける場所ではない。

・調停では「正しさ」ばかりを追求する姿勢は望ましくない。

 

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突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック2】答弁書等の書き方

2019.06.03更新

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  神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.まずは調停申立書を読み解くこと


 

 調停申立書は簡単に目を通しただけでは見落としてしまうような項目も複数ありますので、しっかりと読み解く必要があります。

 この調停申立書をしっかりと読み解くことが答弁書等作成の大前提になるからです。

 

 

2.まず何を裁判所に提出すればよいかを把握する


 

 裁判所から送られた書類には色々な書類が入っているため、整理する必要があるのですが、あなたが提出しなければいけないのは、①答弁書(夫婦関係調整)、②進行に関する照会回答書(相手方用)、③連絡先等の届出書の3つになります。

 

 それぞれの書類の意味合いについて概説しますと以下の通りになります。

 まず、答弁書は、奥様からの離婚調停申立に対してどのように考えるかを記載する書類になりまして、あなたが提出する書類の中で一番重要な書類になります。

 

 「進行に関する照会回答書」は、今後の調停事件の進め方について、あなたの意見を記載する書面になります。裁判所としては、あなたに裁判所に出席してもらわないことには調停を進められないわけですから、あなたが調停に出席できるか、出席できない場合、いつなら出席できるのか等について、あなたの意見を求めているのです。

 

 最後に「連絡先等の届出書」は、裁判所からの今後のあなたへの連絡方法を記入する書類になります。

 このように「進行に関する照会回答書」と「連絡先等の届出書」は、事務連絡文書ですので、そこまで重要な書類ではありません。ただ、裁判所としても事件の整理にあたって必要な書類ですので、必ず調停期日の1週間前までには提出するようにして下さい。

 

 

3.答弁書の書き方


 

(1)そもそも答弁書は出した方が良いのか

 たまに私が質問を受ける中には「調停の日に裁判所に行って話をすればいいから、こんなもの出す必要ありますか?」とか「相手は弁護士を付けているから素人が書面を書くと揚げ足を取られそうだから、出さない方が良いんじゃないですか?」とか、「そもそも、調停は家内の我が儘で始まったことなので、調停の日に行く必要はないし答弁書なんか出す必要もないですよね?」といった意見を聴くことがあります。

 

 ただ、弁護士としては「極力答弁書は提出した方が良いですよ」という返答になります。と言いますのは、答弁書を提出しないと、調停委員は、あなたがどのように考えているのかがさっぱり分からないということになってしまいますし、裁判所としては、1週間前までに答弁書を提出して欲しいと要請しているわけですから、答弁書を提出しないという行動は、「裁判所の要請には従えない」という誤ったメッセージを送ることになりかねません。当然調停委員の印象も悪くなってしまいます。

 

 なお、調停手続に一切欠席すると言う人もいるようですが、調停の席に着かないと、相手の言い分が分からなくなってしまいますし、奥様は蔑ろにされたと感じてしまいますので、得策とは思えません。

 いずれにせよ、答弁書を提出しないと言うことにはデメリットしかないので、必ず事前に裁判所に提出するようにして下さい。

 

(2)答弁書を書き始める前に

 あなたの人生にとって裁判所から書類が届くという事態は稀な経験だと思いますので、調停申立書を受け取った瞬間に、焦ってしまう、何も考えられなくなってしまうだとか、逆に奥様に対する怒りの感情を抑えられないと感じてしまうなど、冷静でいられなくなってしまうことは普通のことです。

 ただ、だからといって、そのときの感情にまかせて答弁書を記載しては絶対にいけません。

 答弁書は裁判所に提出する書類で、奥様側も目にする可能性が高い書類ですので、慎重に記載する必要があるのです。

 

 そして、離婚はあなたの人生にとって1回や2回しかない重要な出来事ですので、答弁書を書き始める前に、冷静になってじっくりと離婚した方が良いのか、復縁した方が良いのかを考えてみて下さい。

 そのときには奥様への愛情がどのくらい残っているのか、これまでの夫婦の接し方、家族行事の様子、お子様との関係性等に色々と考えを巡らせた上で、結論を出して下さい。

 そして、その結論が出てから、答弁書を書き始めて下さい。ただ、いつまでも結論が出ないからといって答弁書を裁判所に提出しないわけには行きませんので、どうしても結論が出ない場合でも答弁書は提出して下さい。その場合の書き方についても後述します。

 

(3)答弁書の書き方

 1)まずは、離婚するかどうかにチェックを入れる。

  離婚で構わないと考えるか、離婚したくないと考えるかについては慎重に検討してもらうとして、その結論が出た場合には、答弁書の最初の項目である「円満に調整してほしい」「離婚したい」「検討中」のいずれかのチェックボックスにチェックを入れる必要があります。

  なお、離婚するか迷っている場合には、絶対に「離婚したい」にチェックは入れないで下さい。たまに、家内がここまで強く離婚を求めてくるなら「仕方ないかな」と諦めてしまって、「離婚したい」にチェックしてしまう人もいるのですが、そうすると、調停手続は、離婚の条件を決めるだけの手続になってしまいます。

  迷っていて結論が出ていないという場合には、最低限「検討中」にチェックして下さい。

 

 2)意見覧の記載

 「円満に調整してほしい」「離婚したい」「検討中」のチェックボックスのすぐ下に「意見」の覧があります。1行だけしか記載できない仕様になっていますが、あなたの意見があれば記載して下さい。

 例えば、円満に調整してほしい場合「子どものためにもしっかりと円満な家庭を築いていきたいと思っています」や「先日の夫婦喧嘩では乱暴な言葉を使ってしまいましたが反省しているのでやり直すチャンスをもらいたいです」といった形で簡潔に記載します。

 

 なお、調停委員に伝えたい項目が沢山ある場合には、答弁書に「別紙」を設けて、円満調整に向けての意見等を記載する方法や、答弁書とは別に陳述書を作成するといった方法もあります。ただ、あまり詳しい事情を記載してしまいますと、逆に奥様を刺激するという危険性もありますので、極力「意見」の覧に収まる範囲で記載した方が良いと思います。

 

 3)円満に調整してほしい場合

  この場合、「(付随申立について)」と書かれている以降の(1)から(7)については特に記載せず、大きく斜線を引いてもらう形で結構です。

  親権や養育費等は、離婚することが決まった場合に決定する事項ですので、あなたが離婚を希望しないのに親権等について意見を述べるというのは行動として矛盾してしまいます。ですので、(1)から(7)の箇所には斜線を引いておくのです(なお、空欄で提出してしまうと、裁判所の方から「書き漏れですか?」という問い合わせが来てしまうことがありますので、斜線を引いておいた方が良いでしょう)

 

 4)こちらも離婚に応じる場合

  この場合、「(付随申立について)」と書かれている以降の(1)から(7)についてもしっかりと記載する必要があります。

  奥様がお子様を育てていくことに不安がある場合には、あなた自身が親権者になるという意見を出すべきかもしれませんし、お子様と会えていない場合には、面会交流についての意見等も述べる必要があります。

 

  ただ、考えなければいけない項目が多すぎて整理が付かないという場合には、「検討中」にチェックを入れて、とりあえずは調停の席で話を聞きながら考えると言うことでも良いと思います。

  一番大事なのは、離婚の条件もあなたの人生にとって非常に重要な事項ですので、安易に妥協せず、投げやりにもならず、今後あなたが後悔しない選択をすべきということです。

 

 5)離婚するかどうか「検討中」の場合

  この場合、円満に調整してほしいという気持ちの方が優勢の場合、現時点では「検討中」にチェックせず「円満に調整してほしい」にチェックを入れた方が良いと思います。

  「検討中」としてしまうと、「条件次第では離婚も考える」と読めてしまいますので、円満に調整してほしいという気持ちがどちらかというと強いという場合「円満に調整してほしい」にチェックした方が、あなたの心境により近い表現になるからです。

 

  逆に、離婚の気持ちの方が優勢という場合でも、離婚という決断を決めかねているという場合には、現時点では「検討中」と記載して下さい。

  先ほども説明しましたように、現時点で「離婚したい」にチェックしてしまいますと、調停の場では離婚の付随条件を決めていくという流れになってしまうからです。離婚の気持ちが優勢だとしても決めかねているという場合には「検討中」にチェックするのがあなたの心境により近い表現になると思います。

 

 6)「2 申立書の『申立ての理由』について」の覧

  まず、同居日と別居日は、離婚原因や財産分与にも絡む重要な日付ですので、奥様が記載してきた同居日と別居日の記載に誤りがないかしっかりと確認して下さい。

  皆さん離婚するかどうかや離婚の付随条件にばかり頭がいってしまい同居日と別居日については「だいたいこんなもんでしょ」と簡単に回答してしまうこともあるのですが、重要な日付ですのでしっかりと確認する必要があります。

 

  次に「申立の動機」に対する意見については、奥様の主張が事実無根だという場合には、簡潔にあなたの意見を記載して下さい。例えば、暴力を振るったことがないのに調停申立書に「暴力を振るう」とチェックされている場合には、そのような事実がないことを記載することになります。

  なお、あなたの希望として夫婦円満を希望する場合、あまり奥様の申立動機に対して詳しい反論をしてしまいますと、そのことが夫婦不和の原因にもなりかねませんので、いわゆる「書き過ぎ」には注意して下さい。

 

 7)「3 その他」の覧について

  ここには、これまで記載した中で記載しきれなかった事項について記載することになります。

  よくありますのは、夫婦として円満を希望しているけれども、お子様と面会できていないことだけは不満があるので、お子様との面会について協議させてほしいとか、お子様の登校や学業成績について心配しているので、確認したい、といった要望を記載することになります。

 

(4)「進行に関する照会回答書」の書き方

 1)「1 別紙期日通知書の期日に出席できますか」

  まず、期日通知書の日時に出席できるか、あなたの日程を確認して記入して下さい。

  なお、「第1回期日には出席した方が良いですか?」という質問をよく受けますが、あなたの方でも弁護士を立てる予定で、弁護士の都合がつかないような場合には、第1回期日は欠席にして下さい(弁護士だけ欠席で、あなた本人のみは出席ということは通常せず、あなたも弁護士も欠席することになります)。

  逆に、あなたの仕事の都合がつき、調停期日にはあなた自身でまずは対応してみたいと考えているような場合、第1回期日は出席するようにして下さい。

 

 2)「2 最初の期日に欠席する場合、その後の期日について希望曜日をお書き下さい」

  あなたが第1回期日に出席できる場合、この「2」は空欄のままで大丈夫です。

  あなたが第1回期日に出席できない場合には、なるべく沢山候補日を記入して下さい。なお、調停の時間は、午前中は午前10時(但し、相手方は10時30分集合の場合あり)から12時頃まで(延長の可能性あり)、午後は午後1時30分(但し、相手方は2時00分集合の場合あり)から3時30分頃まで(延長の可能性あり)になりますので、その時間帯を視野に、出席できる日付を複数記入して下さい。

 

 3)「調停での話合いは円滑に進められると思いますか」

  この覧は参考程度の記載項目ですので、あまり神経質にならずに記載してもらって大丈夫かと思います。

  なお、離婚するかどうかや、その付随条件で意見対立が激しいようであれば「進められないと思う」にチェックして下さい。

  奥様の言い分が今一はっきりしない場合には「分からない」にチェックする形で問題ありません。

 

 4)「4 申立人の暴力等がある場合には、記入して下さい」

  あなた自身が奥様から暴力を受けた経験がある場合には記入して下さい。夫婦喧嘩がヒートアップして多少お互いに手を出し合う形になったというような話であれば、とりたてて記載しなくてもよいと思います。

  この記載項目は、例えば妻側が凶器を持参してくる危険性等もあるという場合には、調停委員も身の安全を考えなければならないといった問題もありますし、あなた自身に危害が加わらないような配慮も検討しなければならないので、設けられている項目だからです。

 

 5)「5 裁判所に配慮を求めることがあれば、その内容をお書き下さい」

  これは、前述の「4」の延長なのですが、相手からの暴力を受ける危険性等がある場合に、集合時間を相手とずらすなどの配慮を求めるといった記載をします。

 

(5)「連絡先等の届出書」の書き方

 あなたが裁判所からの書類を受け取りたい場所と、電話番号を記載する書類になります。

 通常は「申立書記載の住所のとおり」にチェックを入れ、あなたの携帯電話番号を記入することになると思います。

 

 

4.まとめ


・答弁書を書き始める前に、まず調停申立書を読み解く必要がある。

・答弁書を書き始める前に、「あなたにとって」離婚した方が良いかをしっかりと考える必要がある。

・答弁書には、離婚で後悔しないと決断しきっている場合以外には「離婚したい」とは記載しない。

・離婚したい場合と夫婦円満を目指す場合とで答弁書の書き方は異なるので注意しながら記載する必要がある。

・「同居日」と「別居日」の覧は軽視されがちだが、重要な日付なのでしっかりと確認して記載する必要がある。

・調停期日の1週間前までに届くように、答弁書、「進行に関する照会回答書」、「連絡先等の届出書」を提出する必要がある。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

突如離婚調停の相手方にされてしまった方へ-【調停テクニック1】調停申立書の読み方

2019.05.27更新

弁護士秦

 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。>「理不尽な離婚に対してNO!」旦那様側の夫婦関係総合サイトはこちら<になります。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

  神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.突如裁判所から離婚調停の書類が届いた。


 

 こちらとしては、一旦冷却期間を置いた上で、または、他の身内等を交えた上で今後の夫婦関係についてしっかりと議論しようと考えていたのに、無断で奥様が調停の申立をしており、裁判所から調停期日のお知らせが届いてしまうと大きなショックを受けることと思います。

 なかなか、奥様の調停申立という現実を受け入れられないという方も多いかもしれません。

 ただ、「過去こうしておけばよかった」と後悔ばかりをしていても、今後の夫婦関係にとってメリットは少ないと思いますので、まずは、奥様が申立をした調停申立書の内容を読み解く必要があります。

 

 

2.まずは、調停申立書を取り出す。


 

 裁判所から送られてきた書類は何枚もの紙が入っており理解しにくいかと思います。そこの中からまずは、調停申立書を取り出す必要があります。

 右上の方に「夫婦関係等調整調停申立書 事件名(離婚)」と書いてある書類が入っていると思いますが、それがいわゆる離婚調停申立書になります。奥様か、奥様が雇った弁護士の(赤い)判子が押されている書類が離婚調停申立書です。

参考までに、最高裁判所ホームページ上の調停申立書記載例はこちらになりますので、必要に応じてご参照下さい(なお、こちらの最高裁のサイトは、離婚調停を申し立てる側からの記載方法の解説になりますので、ご留意下さい)。

 

 

3.離婚調停申立書を読み解く


 

 離婚調停申立書に記載されている情報は限られているのですが、そこから読み取ることができる情報はありますので、読み取れる情報は全て読み取っておく必要があります。以下では、離婚調停申立書を読み解く上でのチェックポイントについて解説します。

 

(1)奥様が弁護士を雇っているかどうかのチェック

 調停申立書を見れば、奥様が現時点で弁護士を雇っているのか雇っていないのかを知ることができます。

 調停申立書1頁目の右上の方に(赤い)判子が押されている箇所があると思うのですが、①その判子が奥様のものであれば、現時点で弁護士を雇っていない、②その判子が弁護士のものであれば、既に弁護士を雇っているということが分かります。

 相手が弁護士を雇っているという場合、こちらも弁護士を雇うことを考えた方が良いので、まず最初に確認しておきたい項目になります。

 

(2)申立人の住所欄

 奥様が自身の居場所をこちらに秘密にしているケースですと、調停申立書の申立人(奥様)の住所欄を見れば、奥様の居場所を探ることができると考える方も多いのですが、残念ながらほとんどの場合、現在の居場所を書いていることはありません(もちろん、こちらに奥様の居場所を明かしているケースでは、現住所を住所欄に記載することの方が多いです)。

 そのため、申立人住所欄を見ても、奥様の住所は分からないことが多いです。

 

 実際上の記載方法としては、夫婦が一緒に住んでいたときの自宅住所が記載されていることが多く、「虚偽記載」ではないかと思われる方もいると思いますが、裁判所の実務ではこのような便法が認められておりますので、この点を追求してもあまり効果がないのが実情と言えます。

 なお、申立人が希望すれば、申立書に現住所を記載しないという手法について、裁判所は特に綿密な審査等はせずに認める扱いですので、「妻の住所欄に現住所が書かれていない」イコール「裁判所が、妻の言い分をそのまま認めた」ということはありませんので、この点はご安心下さい。

 

(3)2頁目の「申立の趣旨」

 調停申立書の2頁目を開きますと、上から中央あたりまで縦線が一本伸びており、その右側に何箇所かチェックが入っていると思います。このチェック部分に書かれている項目が、奥様が調停の「議題」にしたいと考えている項目になります。合わせて、奥様のご意見もそこに書かれていますので、これを見れば、奥様の要望の概要をつかむことができます。

 

 以下詳しく各項目に対して解説していきます。

①離婚について

奥様は今回の調停で離婚を求めていますので、そのことに対してあなたがどのように返答するかについては慎重に検討する必要があります。

奥様が調停まで申し立てているので「諦めます」とおっしゃる方もいますが、離婚はあなたの人生にとっても1度や2度しかないような重要な事柄ですので、後で後悔しないよう離婚すべきかどうかは慎重に検討する必要があります。

 

なお、あなたが調停の席で一度でも「離婚も仕方ないと思います」と発言してしまうと、離婚することが前提で話がドンドン進んでいってしまいますので、この点の発言は慎重さが求められます。

また、あなたとして離婚に断固反対ということでしたら、調停の場では親権や養育費・財産分与の議論はしないというスタンスになります。親権や養育費・財産分与は、離婚する場合に決定すべき事項なのであって、離婚しない場合には決める必要がない項目になるからです。
お子様のことについて

 

②調停申立書の「申立の趣旨」「(1)」~「(3)」にはお子様のことが書かれています。

   奥様が親権獲得を希望しているのであれば、親権を獲得することを前提として、あなたに養育の支払いを求める内容になっていると思いますので、親権を奥様に渡してよいのか、養育費の金額は、あなたの収入から支払い可能な金額なのかどうか等について検討する必要があります。

   なお、養育費に関しては「相当額」の覧にチェックが入っている場合がありますが、これは、「裁判所の実務で一般的に用いられる算定表の数字で構わない」と言う意味になりますので、あなたの方でもインターネット等にて算定表の数字を確認して、支払い可能な数字なのかを確認してみて下さい。

   ちなみに、奥様側が積極的にお子様とあなたとの面会を希望していない場合には「(2)」の項目に何もチェックが入っていません。そのため、逆にあなたの希望としてお子様に会いたいという希望が強い場合には、調停の場などで強く面会交流を求めていくことになります。

 

③財産分与について

 財産分与とは、夫婦として同居生活を送っている間に蓄えた財産を折半するというものです。

 この点の奥様の要望は「申立の趣旨」の「(4)」に記入されます。ただ、この項目には「相当額」にチェックが入っていることが多いです。「相当額」の意味合いについては、通常「別居時の夫婦の財産を半分にして欲しい」という趣旨で用いられることが多いです。

 財産分与はお互いが財産状況を開示しないと正確な数字を算出できないため、「相当額」と記入することが多いのが実態です。

 

④慰謝料について

   慰謝料とは、夫婦として同居生活を送っている間に精神的苦痛を受けた場合、それを慰謝すべき金額として要求するものです。通常は、あなたが不倫をしたり、奥様に暴力を振るったような場合にのみ発生するものになります。

   この点の奥様の要望は「申立の趣旨」の「(5)」に記入されます。

   この慰謝料額については、500万円だとか1000万円だとかの高額の金額が記入されていることもありますが、奥様側が感情的に金額を記載しているというケースも多くありますので、そのような場合、こちらとしてすぐに金策に走らなければいけないと言うことはありません。

 

⑤年金分割について

   年金分割とは、離婚するまでの婚姻期間中の年金加入記録を折半するというもので、実務的には0.5で折半することが定着しておりますので、「申立書の趣旨」の「(6)」にも「0.5」の覧にチェックが入っていることが通例かと思います。

 

(4)2頁目の「申立の理由」

①上段について

 「申立の理由」の上段には「同居を始めた日」と「別居をした日」の覧があります。これらの日付は財産分与の判断等にあたって重要な日付になりますので、奥様の記入に間違いがないかしっかりと確認して下さい(こちらが離婚に応じないという場合、財産分与の議論に応じる必要はないのですが、こちらが答弁書を作成するにあたっても「同居を始めた日」と「別居をした日」に間違いがないかはいずれにせよ記入が不可欠になりますので、これらの日付が正確かはしっかりと確認しておく必要があります)。

 

②下段について

 ここに「申立ての動機」の動機がチェックされていますが、これらが「奥様が離婚したいと考えている理由」の部分になります。

 普段あまり聞き慣れないものとして「8 精神的に虐待する」という項目がありますが、これは、いわゆるモラハラ行為等を指しており、代表的なものは暴言や物を壊すといった行動になります。

 

 いずれにしましても、このチェック項目だけでは、奥様の不満の概要は分かっても、いつのどのような行動が問題になっているのかといった具体的内容が何も分かりません。なぜこのような簡単な記入に限定しているのかというと、あまり詳しい内容を記載してしまうと、夫婦間の感情的対立が激化する危険性がありますので、簡略な記載に限定しているのです。

 あなたの方としては、調停期日当日には、各項目について詳しい説明を求められることもありますので、心当たりがある項目については、記憶喚起を図っておく必要があります。

 

 

4.まとめ


・調停申立書の1頁目の赤い判子が押されている箇所を見れば、奥様が弁護士を雇ったか雇っていないかが分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の趣旨」を見ると、奥様が希望する離婚条件が分かる。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」上段の同居開始時期と別居日は重要な日にちなのでしっかりと確認する必要がある。

・調停申立書2頁目の「申立の動機」下段に、奥様が離婚を希望する理由が書かれているが、抽象的なので、詳しい内容は調停期日まで分からない。

 

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【絶対に離婚したくない(3)】現状の立ち位置を知ろうーケース別復縁難易度

2019.05.13更新

弁護士秦

 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。

※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※

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1.ケース別復縁難易度って?


 

 私は、離婚回避・夫婦関係修復のご相談を受けることも多いのですが、ご相談を受けた時点で、どこまで状況が悪化しているのか、一定のケース分けができることに気付きました。

 もちろん、以下は、ケースごとの難易度を目安としてお示しするものであって、「このケースであれば夫婦関係修復確実」などと保障するものではありませんので、この点はご留意の上ご覧いただければと思います。

 

 

2.ケース分け


 

 あなたが起こっている事態に応じて、離婚に向けての深刻度を類型化することができますので、具体的には以下のようにケース分けして解説していきます。

 

①相手(妻又は夫)から別居の提案があった(実際にはまだ別居していない)

②相手から離婚の提案があった(まだ別居はしていない)

③相手から別居の提案があって、こちらも応じたので、現在別居中

④相手から別居の提案があって、話し合いが決裂、相手が突如別居を開始した

⑤相手から何の提案もなく突如別居を開始した

⑥家庭裁判所から離婚調停の書類が届いた(相手は弁護士を付けていない)

⑦相手(別居中)の弁護士を名乗る人物から書留郵便(内容証明)が届いた

⑧家庭裁判所から離婚調停の書類が届いた(相手は弁護士を付けている)

 

 なお、これら①から⑧は相手が順を追ってこのような手続きを踏むというわけではなく、いきなり⑤と⑧から手続が進むと言うこともあります。そのため、現在あなたが置かれている状況が①から⑧のどの状況なのかを確認して、該当の解説をご覧下さい。

 

 

3.【ケース①または②】相手から、別居または離婚の提案があった


 

 上記のケース分けで①または②に該当するケースです。実際に相手が別居を開始していない段階ですので、上記のケース分けの中では深刻度が一番低い類型になります。

 上記の③から⑧にまで発展していない段階ですので、あなたが対応を誤らなければ十分夫婦関係の修復も期待できる段階と言えます。

 

 ただ、この段階でも、真剣に相手が離婚を切り出してきている場合や、両親等も交えた話し合いを提案してきているような場合には、あなたも空いての声に真剣に耳を傾けないと、別居を実行されてしまうリスクもありますので、その意味では慎重な対応が必要になります。

 また、ここでのあなたの対応が相手を更に傷つけてしまいますと、別居や離婚を決断させる引き金になってしまう可能性もありますので、その点に注意する必要があります。

 

 なお、相手から別居の提案が出されただけというケース(①のケース)と、更に踏み込んで離婚の提案までなされたケース(②のケース)とでは、②の方が多少深刻度が高いということになります。

 また、相手からこのような提案がなされるのが今回が初めてではない、という場合には、深刻度は増しますので、この点にも注意が必要です。

 

 

4.【ケース③】相手から別居の提案があって、こちらも応じたので、現在別居中


 

 何か別居の引き金になるような出来事が起こって、お互いに冷却期間を置いた方が良いということで、あなたも承諾して別居を開始したというケースです。

 例えば、あなたがついカッとなって奥様に手を出したところ、当たり所が悪くて怪我をしてしまったというときに、お互いに話し合いをして、一時的に奥様が実家で暮らすことにしたというようなケースとか、旦那様があまりに仕事が忙しく、そのストレスで家庭内でもイライラすることが多いので、話し合って、一旦、旦那様だけ社員寮で暮らすことにしたといったケースがこれに当たります。

 いわゆる「ほとぼりが冷めるまで別居する」という内容ですので、あなたが対応を誤らなければ夫婦関係修復も期待できる段階と言えます。

 

 このようなケースでは先ほども解説しましたとおり、別居の引き金になるような出来事が起きていることが多いので、あなた自身もそのような出来事を振り返り、そのこととしっかりと向き合って対応する必要があります。

 ちなみに、相手のことを疑い始めてしまいますとキリがないのですが、残念ながら、冷却期間のための別居だと言いつつ、実際には、そのまま戻ってこないというケースもあります。そのような場合には、相手が別居したいということは伝わってくるものの、別居したい理由があいまいだというケースが多いので、そのような場合には、「別居前にじっくりと話し合おう」ということで、あまり別居に応じない方が望ましいと言えます。

 

 

5.【ケース④】相手から別居の提案があって、話し合いが決裂、相手が突如別居を開始した


 

 このケースは、相手から別居の提案があったという点ではケース③と同じですが、話し合いが上手く行かず、相手が別居を独断で実行したケースになります。

 このような相手の行動心理としては、「話をしていても埒があかないので、最終的には承諾を得ずに別居を始めた」という心理だと思いますので、上記ケース①から③よりも慎重な対応が必要になります。

 

 このようなケースでは、あなたが直接相手と話をすることが相手を刺激する危険性もありますので、相手のご両親や共通の知人と話をするなど交渉窓口を変更することも視野に入れた方が良いかもしれません。

 もちろん、別居後も相手から連絡があり、あなたからの連絡に対して相手からの返答もあるようでしたら、相手との直接の話し合いを模索してみても良いかもしれません。それが逆効果になりそうな場合や、相手との直接の話し合いを模索してみたけれども、なかなか難しいという段階で他の方を間に入れることを検討してみて下さい。

 

 

6.【ケース⑤】相手が何の提案もなく突如別居を開始した


 

 このケースは、相手が突如別居を始めたという点はケース④と同じですが、相手が事前に別居の提案をしてこなかったケースになります。

 このような相手の行動心理としては、「直接話をしていても埒があかないので、承諾を得ずに別居を始めた」という心理だと思いますので、上記ケース④よりも慎重な対応が必要になることが多いと思います。

 

 ただ、ケース④よりも深刻度が高いかというと、事前に話し合いをするかは、相手の性格やこれまでのご夫婦での話し合いや夫婦関係等による影響もありますので、あまり深刻度はケース④と変わらないというケースもあります。

 このケースでも、あなたが直接相手と話をすることが相手を刺激する危険性もありますので、相手のご両親や共通の知人と話をするなど交渉窓口を変更することも視野に入れた方が良いかもしれません。

 

 なお、あなたとしては、相手が何の相談もなく勝手に出ていったことに対する怒りの感情を持つかもしれませんが、そのような怒りの感情に支配されて行動してしまいますと、夫婦関係修復の道は遠のいてしまうと思いますので、冷静な対応が必要かと思われます。

 

 

7.【ケース⑥】家庭裁判所から離婚調停の書類が届いた(相手は弁護士を付けていない)


 

 このケースは、あなたが普段通りに生活していたところ、突如離婚調停の通知が郵便で届いてしまったというケースになります。

 このケースは更に、①相手が別居した上で、暫くしてから裁判所の書類が届いたケースと、②相手が同居しながら(家庭内別居のまま)裁判所の書類が届くケースに分けることができます。このケース⑥-①の方が、⑥―②よりも深刻度が高いことの方が多いのですが、相手としては色々な事情があってケース⑥-②を選ばざるを得なかったということもあります。例えば、別居資金が不足しているとか、お子様の学区を変更しない場所で別居先を見付けることができなかった、この自宅に住み続けたいとの要望が強いといった事情が考えられます。そのような事情がある場合には、ケース⑥-①もケース⑥-②も深刻度はあまり変わらないと思います。

 

 このケースでは相手が弁護士を立てていないものの、裁判所での話し合いを希望している段階ですので、離婚意思が強いケースが多いと思います。

 この段階にまで発展してしまっていますと夫婦関係修復の難易度はかなり高いと思いますので、夫婦関係修復を希望するのであれば、誠意をもって調停に臨むことをオススメします。

 

 

8.【ケース⑦または⑧】相手が弁護士を付けた


 

 相手が弁護士を付けて離婚を要求してきたケースです。弁護士が手紙を送ってくるケース(ケース⑦)と、弁護士の判子が押された調停書類が裁判所から届くケース(ケース⑧)とがあります。

 ケース⑦とケース⑧どちらの深刻度が高いのかという点ですが、一般的にはケース⑧の方が深刻度が高いのですが、事件の方針として交渉から着手するか調停から着手するかは弁護士の普段の事件処理方法によるところも大きいので、必ずしも深刻度に差があるとは限りません(より分かりやすく言いますと、弁護士によっては「離婚事件は常に離婚調停の申立からスタートする」という事件処理をしている弁護士もいるということです)。

 

 このケース⑦または⑧になりますと、相手は弁護士にお金を払ってでも離婚したいという決意を持っているわけですから、離婚の覚悟は相当固いと考えた方が良いと思います。

 また、この段階にまで発展してしまっていますと、奥様が専門家である弁護士を付けているので、あなたとしてもミスが起きないよう弁護士を立てることを考えた方が良いと思います。

 

 

9.まとめ


・夫婦関係の悪化の状況に応じて復縁難易度には差が生じる。

・一般的には以下の数字が大きくなるほど復縁難易度は上がる傾向がある。

①相手から別居の提案があった(実際にはまだ別居していない)

②相手から離婚の提案があった(まだ別居はしていない)

③相手から別居の提案があって、こちらも応じたので、現在別居中

④相手から別居の提案があって、話し合いが決裂、相手が突如別居を開始した

⑤相手から何の提案もなく突如別居を開始した

⑥家庭裁判所から離婚調停の書類が届いた(相手は弁護士を付けていない)

⑦相手(別居中)の弁護士を名乗る人物から書留郵便(内容証明)が届いた

⑧家庭裁判所から離婚調停の書類が届いた(相手は弁護士を付けている)

・上記の①から⑧はあくまで目安なので、ご家庭の状況によっては復縁難易度に差が生じ得る。

 

 

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