夫(元夫)との面会交流を拒否したい気持ちを裁判所はどこまで理解してくれるか?
2021.01.11更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
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1.夫(元夫)からの面会交流要求は断固拒否したい
離婚前、離婚後を問わず、奥様の方から、旦那様にお子様を触らせたくない、触れ合ってほしくないというお話を聞くことは多いです。
確かに、奥様からしますと、仕事をしながら、一人でお子様を育ててらっしゃる方も多く、そんな中、以下のような理由から夫に会わせたくないとお感じになるのももっともかと思います。
・「夫のために貴重な週末の時間を割きたくない」
・「こちらは必死に子育てをしているのに、何もしないくせに良いとこどりをすることは許せない」
・「子供は父親よりも友達と遊んでいる方が楽しいと感じている」
・「そもそも、夫は同居中も子供に対して無関心だったから、今更会いたいという理由が分からない」
2.裁判所の基本的な考え方
それでは、上記のような理由から、面会交流を一切拒否することはできるのでしょうか。
残念ながら、裁判所は、面会交流一切拒否は認めてくれないことの方が多いです。
最近の裁判所が面会交流に積極的に取り組む根拠は以下のようなものです。
①父親と実際に接することで父親からの愛情を実感し、安心感・自信を持つことにつながる。
②自分のルーツ(根っこ)を知ることで多面的な成長が期待できる。
もちろん、後述の通り、児童虐待の場合等例外的なケースはあります。ただ、児童虐待等がない場合、裁判所側は面会交流に積極姿勢のことが多いです。
そのため、裁判所側の積極姿勢を突き崩すだけの事情が必要になることが多いです。詳しくは後述します。
3.例外的なケース
(1)児童虐待のケース
前述の通り、裁判所が面会交流を積極的に進めるのは、別に夫側の肩を持っているからではなく、そのことがお子様の件残な成長にとって良いと考えているからです。
そのため、同居中、夫側がお子様を殴ったり蹴ったりするなどの児童虐待のケースですと、面会交流を実施することはお子様にとって利益にはなりません。
そのため、児童虐待のようなケースですと、そのことで面会交流を禁止させられるというケースもあります。
(2)理由があってお子様がしっかりと拒否の意思を示しているケース
前述のような虐待とまでは言えなくとも、夫からの暴言にお子様が悩まされていたとか、夫からの性的言動や行動に悩まされていたというような経緯があり、それを踏まえ、お子様が面会交流を強く拒否しているようなケースですと、面会交流を禁止させられるケースもあります。
なお、お子様の意思確認は、お子様自身がしっかりと面会交流の意味等について理解して自分の気持ちを表現する必要がありますので、あまり幼いお子様の意見を確認しようとしても難しいです。そのため、10歳前後以上というのがお子様の意思確認の一つの目安とされることが多いです(少なくとも15歳以上の場合には裁判所は必ずお子さまの意向を確認します)。
ちなみに、お子様が父親と会いたくないと表面的に発言していても、その理由があいまいであったり、母親から言わされている様子があるという場合には、面会交流させるべきという結論になることもあります。
4.それでは児童虐待等でない場合、面会交流を認めなくてはいけないのか?
面会交流を認めるかどうかは、実際にお子様の面倒を見ているあなた自身が決めることですので、誰かに面会を強制される話ではありません。
ただ、上記のような理由のみで面会交流を拒否し続けられるかと言いますと、裁判所側は快く思わないのも事実です。
そのため、実際の調停では、以下のような理由を根拠に面会交流拒否の姿勢を貫くことが多いです。
(1)お子さんの体調不安定等
例えば、別居後に偶然お子さまが夫と遭遇したといったケースで、その翌日などに以下のような悪影響が出ることがあります。
①急に朝起きられなくなって登園を渋り始めた
②発熱したので病院に連れて行ったが明確な病名が分からなかった
③ふと涙を流して、どうしたのかと尋ねると、「ママと離れ離れになっちゃう」と子供が言った
④子が保育園で今までにないような暴力的な発言をしてしまった
このような悪影響が短期間で済めばいいのですが、長期に及ぶケースもあります。
悪影響の程度が大きかったり、長期に及ぶような場合には、そのような具体的な事情を説明して面会交流を拒否するというケースもあります。
(2)【お子様が乳幼児の場合】あなた自身の体調悪化等
例えば、裁判所の勧めで致し方なく試験的に面会交流を実施したとします。お子様が乳幼児の場合、夫側にお子様を託すのは不安ですから、あなたが立ち会うというケースも多くあります。
そのような場合に、あなた自身が体調を大きく崩したというようなケースですと、それを理由に面会交流を拒否するというケースもあります。
特に、お子様が乳児で、あなたとの愛着が非常に強い場合には、あなたが離れた席での面会交流が困難ということになりますので、あなたの体調悪化も面会交流拒否の大きな理由になり得ます。
ただ、抽象的に体調が悪化したというだけではなく、内科や心療内科を受診するなどして診断書が発行されていると、一層面会交流を拒否しやすくなります。
ちなみに、診断書等を持って行き面会交流拒否姿勢を示したとしましても、裁判所によっては第三者機関を通じた面会交流を勧めてくることもありますので、そのような場合の対応について慎重に検討すべき場合もあります。
以上のお話は、お子様が乳幼児の場合のケースでして、例えばお子さまが小学生以上の年齢になりますと、あなた自身の体調不良を理由に面会交流を拒否することは難しいです。
5.婚姻費用や養育費との関係
面会交流の問題と生活費の問題は全く別の問題です。
しかし、こちらが面会交流を拒否しますと、夫側は「それならお金は渡さない」という対応をすることも多いです。
もちろん、夫のこのような態度に怯んではいけないのですが、他方で、生活費の支払いが一切ないと生活に困るという事態にもなりかねませんので、相手が生活費の問題を絡めてきた場合には、慎重な対応を要するケースも多いです。
6.まとめ
・面会交流を断固拒否したいというニーズは案外多い
・しかし、裁判所は基本的に面会交流に積極姿勢なことが多い。
・児童虐待のようなケースでは、面会交流を拒否できる場合もある。
・理由があってお子様が面会交流を拒否する意思が明確な場合には、面会交流を拒否できる場合がある。
・夫側と接触した後にお子様が体調を崩したとか、お子様が乳幼児のケースであなた自身が体調を崩してしまったというような場合には、面会交流を拒否できるケースもある。
・夫側が生活費の問題と絡めるような場合には、慎重な対応が必要になるケースもある。
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