夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(13)ーこちらも弁護士を立てるべきか?
2020.10.12更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかりと戦って、しっかりと勝つ」をモットーに、以下詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.そもそも「監護者」って何だ?
離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。
親権とひとくくりに申しましても、親権には①身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)だけではなく、②お子様の財産管理権、③身分行為の代理権も含むとされています。
わかりやすく言いますと、監護権は、このような①から③の権利のうち、①だけを切り出した権利ということになります。
2.少なくとも相談だけでもすべき
監護者指定審判の申し立てを受けた際には、私は弁護士に依頼することを強くオススメしています。ただ、弁護士を正式に雇うということになりますと弁護士費用もかかりますので、少なくとも、まずは弁護士への相談は行うべきかと思います。
理由は以下の通りです。
(1)監護者指定事件の概要
弁護士を関わらせるべきかの解説に入る前に、まずは、監護者指定事件の概要についてご説明します。この事件は、以下の事件を3つセットで申し立てるのが通例です。
1)監護者指定
2)引渡し
3)保全処分
以下それぞれについて概説します。
1)は、夫婦共に親権を有する状態から、一方のみに監護権(お子様の身の回りの世話や教育方針等を決定する権利)を付与する手続です。
ただ、監護者が決まっただけでは、相手が任意に引渡に応じないケースもあります。そのため、合法的にお子様をこちらに引き戻させるために、2)の「引渡し」も請求するのです。
さらに、このようなケースは緊急性が高いということを口実に申立をしますので(あくまで夫側の言い分は、「子供を奥様に任せておけないからこちらで引き取って育てる必要がある」というものですので、早くお子様を取り戻したいという言い分を述べるということです)、保全処分、要するに緊急措置として暫定的に仮の監護者を定めて欲しい、暫定的に仮の引渡をして欲しいという申請も出すのです。
(2)【弁護士に相談したほうが良い理由1】審判手続きであること
審判手続きは調停手続きとは異なり、裁判所から審判(イメージとしては判決に似たものとお考えいただくと分かりやすいです)が出てしまいますが、子の審判が出てしまいますと、その内容に従わなければならなくなります。これを強制力などと言ったりしますが、強制力が発生してしまう以上、審理に慎重に対応する必要があるということになります。
そのため、審判手続きに提出する証拠や言い分については弁護士に相談しておくべきということになります。
(3)【弁護士に相談したほうが良い理由2】手続きが迅速に進むこと
前述の通り、監護者指定事件では保全処分も同時に申立が行われますので、審理手続きは非常に迅速に進むことが多いです。
そのため、弁護士のアドバイスもなく臨みますと、こちらの言い分が不十分なまま結論が出てしまうリスクがあります。
特に、監護者指定事件では、「子の監護に関する陳述書」の提出がほぼ必須なのですが、記載事項も多いため、専門家のアドバイスを経ずに期間内に陳述書を完成させることは難しいことが多いです。
(4)【弁護士に相談したほうが良い理由3】家庭訪問への事前準備
監護者指定事件では、家庭裁判所調査官の家庭訪問が、一つの重要な手続きになるのですが、事前に準備をしておきませんと、お子様の生活環境や衛生面、接し方等で不利な調査結果が出てしまうおそれがあります。
そのため、家庭訪問への事前準備という観点からも、弁護士に相談くらいはしておいた方が良いと思います。
(5)【弁護士に相談したほうが良い理由4】面会交流への対応方法
面会交流に応じるかどうかは監護者指定の最重要項目とまでは言えないのですが、面会交流を一切拒否する姿勢は裁判官も厳しく見る傾向があります。
そのような場合に、どのような形での面会交流を認めるのかといったところは非常に悩ましい問題です。
このように面会交流への対応方法は重要な問題になりますので、弁護士に相談しながら進められると安心感が高まります。
(6)母性優先、現状優先を過信するのは危険
いろいろとインターネットを調べてみますと、「お子様が小さい場合には母性優先で母親側が有利になります」とか「現状お子さまを育てていらっしゃる方が有利です」といった記事を見かけることがあります。
確かに現状監護優先ということは間違いがないのですが、そのことを過信しすぎてしまいますと、こちらに不利な審判が出されてしまうリスクは否定できません。
3.相談する弁護士選び
離婚問題を多数取り扱っている弁護士でも、監護者指定事件の経験は少ないという弁護士もいます。
そのため、相談する弁護士は、監護者指定事件の実績がある弁護士を選ぶ必要があります。
4.まとめ
・まずは、監護者指定事件がどのような事件なのかを理解する。
・監護者指定事件は、迅速に審理が行われる侵犯事件なので、少なくとも弁護士に相談は行っておいた方が良い。
・弁護士に相談すると、家庭訪問への対策や面会交流への対応方法についてもアドバイスを受けることが出来て安心である。
・母性優先、現状優先を過信するのは禁物である。
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