【今からできる】モラハラ・DV夫との離婚対策(4)―確実に財産分与を確保するために
2021.10.11更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
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1.【今からできる】離婚対策とは?
今回は、あなたがまだモラハラ・DV夫と同居中だということを前提に、どのような準備をしておけば、確実に財産分与を確保できるのかという観点から解説していきます。
既に別居してしまったという方にも参考にはなりますが、主として、今も同居している方を対象にしておりますのでご注意ください。
2.【確実に財産分与を確保するための対策①】財産分与というものがどのようなものなのかの知識をつけておく
(1)財産分与というのはそもそもどんな話なのか
財産分与というのは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを取り決めると言うことです。
婚姻生活中は、離婚することを見越して準備しているという夫婦はいないと思いますので、通常夫婦の財産は均等ではないことが多いと思います。例えば、奥様が専業主婦で、旦那様が仕事をしているという場合、旦那名義の預金はそれなりの額貯まっているとしても、奥様の預金はそれほど貯まっていないというケースもあると思います。
そんなときに、旦那側が「これは俺の名義の預金だから離婚の時には、びた一文お前には渡さない」としてしまいますと、内助の功があった奥様にとって酷な話になってしまいます。
そこで、離婚の時には、夫婦どちらの名義になっているかを問わず、婚姻中に築いた財産は半分ずつに清算すべきだというのが財産分与の基本的な考え方になります。
(2)慰謝料とは別問題なのでご注意
離婚に伴うまとまったお金の問題と言うことで、慰謝料の問題と混同している方が多いのですが、財産分与と慰謝料は別の問題とお考え下さい。
即ち、慰謝料というのは、相手に浮気や暴力といった一方的有責性がある場合に、こちらが受けた精神的苦痛を慰謝させるものになるのに対して、財産分与は、このような有責性の問題を抜きにして、夫婦の財産を清算しようという話になりますので、別次元の話と言うことになるのです。
(一昔前には、「財産分与の慰謝料的要素として、慰謝料分も考慮する」といった議論をすることもありましたが、最近は、財産分与は財産分与、慰謝料は慰謝料として話し合うのがオーソドックスです)。
(3)実際問題どのような手順で検討する話なのか
厳密に財産分与の計算をする場合には、①対象財産の特定→②財産の評価→③総合計額の算出→④分与方法の検討という手順を踏むことになります。
以下具体的に解説いたします。
①対象財産の特定
財産分与は夫婦で築いた財産を分ける仕組みですので、夫婦で築いた財産以外の財産は対象外になります。
例えば、独身時代に貯めていた預金や相続で取得した財産は対象外になります。
対象財産として代表的なものは、婚姻中に購入したご自宅、自動車、預貯金、生命保険や学資保険、株式等になります。
まずは、夫婦で築いた財産としてどのようなものがあるかを割り出して行く作業をすることになります。
②財産の評価
預貯金などは金額が明らかなので問題は少ないのですが、例えば自宅などはいくらになるのかおおよその評価額を調べる必要があります(住宅ローンが残っている場合、通常はローン残高は差し引いて評価することが多いです)。
他にも、生命保険等については今解約したらいくらになるのかを保険会社に問い合わせる必要があります(実際には解約しませんが、いくらの価値があるかを確認するために、保険会社に「今解約した場合いくらになるか教えて下さい」と電話するのです。
③総合計額の算出
上記のように各財産の価値を算出することができた場合、それらの数字を全て足し算して総合計額を算出していくことになります。
例えば、旦那さん名義の資産がご自宅(評価額3000万円、ローン残高2400万円)、学資保険(解約返戻金額200万円)、預金(3つの通帳の残高合計が300万円)で、奥さん名義の資産が預金のみ(2つの通帳の残高合計が100万円)というケースですと、総合計額は(3000万円-2400万円)+200万円+300万円+100万円で、総合計は1200万円になります。
この総合計額を算出する際には、旦那さんの資産だけではなく、あなたの資産分も加算する必要がありますので、ご注意下さい。
④分与方法の検討
前述の例ですと、総合計額が1200万円になりますので、あなたの取り分は半額の600万円になります。
このような600万円の取り分で何を取得するか、あなたの希望を検討することになります。
即ち、自宅の価値が600万円なので、自宅を取得し、同時に住宅ローンの名義もあなたに変更するという方法もあり得ますし、逆に、自宅は旦那さんに渡して、旦那さん名義の学資保険をこちらに名義変更し、旦那さんの預金額全額を取得するという方法もあります。
要するに、取り分の範囲で何を要求していくのかという問題です。
3.【確実に財産分与を確保するための対策②】夫側の財産をしっかりと把握しておく
別居した後に離婚の話をしておりますと、夫側は自身の財産を少なく申告してくるケースが非常に多いです。
こちら側で夫の資産がどこにあるのかを把握しておかないと、あまり財産分与を獲得できないということになりかねませんので、同居中に夫側の財産をしっかりと把握しておくことが重要です。
それぞれの財産項目について注意点等を解説します。
(1)不動産
自宅が持ち家の場合、自宅を隠すことは不可能ですので、あまり問題になり得ません。
他方で、旦那側が投資用マンションを持っているというような場合には、そのマンションの所在等を把握しておく必要があります。
(2)預貯金
預金残高を気になさる方が非常に多いのですが、残高ではなく、銀行名と支店名の把握に努めてください。銀行名は分かっても支店名が分からないと、財産分与対象から外れてしまうこともあります。
また、紙の通帳だけではなく、インターネットバンキングをしているということも多いので、インターネットバンキングがある銀行名と支店名の把握も重要です。
(3)保険
旦那さん名義の生命保険や年金保険等のことです。
これらの保険は実際に解約しなくとも、積み立て式の場合には一定の金銭的価値がありますので、財産分与の対象になります。
どの保険会社のどのような保険(いわゆる保険の種類)に加入しているのかの把握が必要になります。
(4)夫の給料明細から分かるもの
夫の勤め先を経由して蓄えている財産は見落としがちです。
例えば以下のようなものがあります。
① 勤め先を経由して財形を積み立てている
② 勤め先を経由して保険に加入している
③ 勤め先を経由して年金基金等に加入している
④勤め先を経由して従業員持ち株制度に加入している
これらの掛け金等は給料天引きになっていますので、給料明細書を見れば、どのようなものに加入しているのかを把握できることが多いです。
(5)退職金
まだ夫の年齢が若いような場合には、定年退職がまだまだ先だということで退職金を見落としがちです。
また、勤め先から退職金がもらえる予定だが、それと合わせて勤め先経由で確定拠出年金を掛けているケースもあります。
確定拠出年金も把握できるようであれば、運用会社を把握しておいた方が望ましいです。
(6)株式
旦那側が株式を保有している場合には、証券会社からの案内に加えて、その株式の発行会社から株主総会招集通知が届くなどしていますので、それらを見るとどの証券会社を通じてどのような株式を保有しているのかを把握できます。
これらの書類は基本的に郵便物で届きますので、夫宛ての郵便物を見ていれば、だいたいの株式は把握できます。
(7)自動車
それほど購入時期が古くない自動車についても資産価値が認められますので、財産分与対象になります。
4.【確実に財産分与を確保するための対策③】特有財産の証明準備
特有財産とは、①結婚前からあなたが持っていた財産や②結婚中に親族からの相続や贈与でもらった財産のことを言い、これらの財産は財産分与の対象から外すことができます。
ただ、特有財産であることをしっかりと証明しないと、夫の側が財産分与に含めたいと希望してくることもありますので、今からでも特有財産の証拠集めができるのであれば収集しておいた方が良いと思います。
特に婚姻期間が長い場合には、上記①の独身時代の財産状況を証明しようと思っても、銀行が取引明細書を発行してくれない(あまり古いものだと銀行は明細書を発行できないと言ってきます)ということもあります。そのような場合には、繰り越し前の通帳を探し当てるしかないということもありますので、早めに準備を開始しておくことに越したことはありません。
5.まとめ
【確実に財産分与を確保するための対策①】財産分与の知識をつける
【確実に財産分与を確保するための対策②】旦那の財産を把握する
【確実に財産分与を確保するための対策③】特有財産の証明準備をする
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