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決定版!これが不倫の証拠だ!

2015.11.13更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

特に夫婦関係に問題はないと思っていたのにふとしたことから旦那様の浮気が分かったということもあるかと思います。では、その様な旦那様の不倫については、どのように証明してゆけばよいのでしょうか。

 

 

 

1.浮気の証拠って?


 

 

法律上「浮気」については「不貞」などと表現しますが、これを証拠で証明するためには、端的には、旦那様が不倫相手と肉体関係を持ったことを証明する必要がありますたまに、「旦那からの愛情を感じなくなったのですが、旦那は浮気しているのではないでしょうか?」等抽象的なご質問を受けるときもありますが、肉体関係を伴うかなり決定的な証拠があった方が望ましいものと言えます。

 

しかし、肉体関係の直接の証明として、海外などでは、①ラブホテルの寝室に旦那と他の女性が着衣を纏わずに一緒に寝ている写真や②不倫相手の自宅の隣室から不倫相手と旦那が体を重ねている様子を撮影した写真などが証拠とされることもあります。しかし、プライバシーの問題もありますので、日本でこれだけ直接の証拠を入手することはほぼ不可能と言えます。

 

そこで、実際の裁判などで争う場合にも以下のような証拠が、不倫の証拠になり得ます。

 

○配偶者が他の女性と一緒に夜間にラブホテルに入った様子と翌朝出たところを撮影した写真

 

○ひとり暮らしの不倫相手の自宅に配偶者が宿泊したことを示す証拠

 

○ラブホテル利用が記載されたLINEやチャット、SNSの不倫相手とのやり取り

 

○ラブホテルでの待ち合わせや利用後の感想などについて記載した不倫相手とのメール

 

○配偶者が不倫相手と二人で宿泊を伴う旅行をしたことを示す証拠

 

○不倫相手が自身の裸等を自撮りした写真付きメールや写真データ

 

○配偶者本人が不倫を詳しく告白した録音テープ

 

○配偶者本人が不倫の経緯等について詳しく記載して署名押印した謝罪書面や誓約書

 

○不倫相手が不倫を詳しく告白した録音テープ

 

○不倫相手が不倫の経緯等について詳しく記載して署名押印した謝罪書面や誓約書

 

 

 

2.不倫の証拠として十分か十分ではないのか


 

 

このブログをご覧になっている方は、「一度も裁判所に行ったこともない」という方も多いと思います一般の方が考えているよりも裁判所が不倫の証拠として認めてくれる範囲は厳格ですので、ご自身では不倫の決定的な証拠をつかんだとお考えでも、実際には裁判の証拠としては十分ではないということもあります。

 

また、上述したような証拠をいくつも集められるというケースは非常に少なく、上記で例示した証拠の1つか2つしか集められないというケースが大半かと思われます。

 

その様に不倫の証拠は不倫の被害に遭われた奥様が集めて下さった貴重な証拠ですから、その証拠が不倫の証拠として十分なのかという点は非常に重要なポイントになります。また、一つのカテゴリーの証拠を大量に入手できる場合もありますが(たとえばチャットの詳細なやりとりを収集できたので、全体で数十ページ分になるとか)、証拠は量よりも質を重視する必要があると思いますので、この点の精査も必要になります。

 

以下では、各証拠の類型に応じて、注意すべきポイントを簡単にご説明いたします。

 

①写真

その写真に写りこんでいるのが誰なのか、どんな体勢なのか(後ろ姿なのか等)、どんな場面なのかという点も重要ですが、その写真の写り具合についても十分に注意を払う必要があります。

 

ホテルへの入退室の写真を例にしてみましても、被写体は歩いていますし、調査会社が撮影した場合には被写体に発覚しないように撮影しますので、一定のブレが生じることがあります。その程度が大きいものですと、裁判の際に、旦那様が髪型等を大きく変更して、「自分の写真ではない」と言い張る可能性が出てきます。

 

また、写真に日付を印字できるようでしたらカメラの機能として、日時を印字しておくと、後から写真撮影日時を争われるリスクは減ります。

 

 

②LINEやチャット、SNSの不倫相手とのやり取り

こちらについては、もちろん、その内容が非常に重要なのですが、チャット等は相手とのやり取りが重要なので、旦那様側のチャット内容だけではなく、不倫相手からの返事等全体の流れにも注意を払う必要があります。

 

また、そのやり取りから想定される場面についても注意して下さい。たまに不倫旅行に出かけたと思っていたら、大学のサークル仲間数人での旅行だったということが分かると言ったケースもあります。

 

さらに、旦那様が不倫相手のことをどのように呼んでいるのか、チャットの頻度等チェックすべき項目があります。

 

 

③旦那側からの誓約書や謝罪文

これについては人によって非常に両極端なように思われます。ある方は、旦那がもう不倫をしないと約束しているのだから、1行「もう今後浮気はしません」とだけ書かせたり、そうではなくても、B5便せん1枚程度のもので済ませる方もいれば、10枚以上の謝罪文を要求している方もいらっしゃいます。

 

あまり簡素なものは望ましくありませんが、浮気の経緯、浮気の期間や回数、今後についてどう考えているのかと言った点について具体的に書かせることが必要だと思います。

 

 

 

3.迷ったら弁護士に相談してみる


 

 

ご自身で証拠と向き合っていても、十分なのかどうかの結論が出ないということも多いと思います。

 

相手に対して不倫を理由として離婚を考えているだとか、慰謝料を取りたいという場合には、できる限り早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。特にチャットなどについては、内容に応じて不倫の証拠として十分なのかどうかの見極めが難しいケースも多いので、慎重な対応が求められます。

 

私は、初回法律相談を完全無料にて対応しております(ご相談の途中から有料になるとか、ご相談にお見えになったら弁護士に依頼しなければならないということは絶対にありません)ので、是非お気軽にご相談下さい。

 

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まずはお気軽にご相談ください


 

 

弁護士に会って相談することは、少し勇気のいることかもしれませんが、ほとんどの方が「弁護士と話をするのが初めて」という方ばかりです。

 

費用のことや依頼する場合の流れ、注意点など不安なことがあれば無料相談で解消いたします。

 

平日は夜間22時までご相談を受け付けておりますので、いつでもお気軽にご予約をいただければ幸いです。

 

 



 

雨宮眞也法律事務所

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV特集(5)―保護命令の要件

2015.11.06更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

前回に引き続きDVについてご説明してゆきたいと思いますが、今回は、DVの事件における保護命令の要件についてご説明いたします。

 

1.保護命令の要件は一般の方が思っているよりは厳しい

 

 DV被害者の方がご相談に来られる際、保護して欲しいので保護命令の申請をして欲しいと要望される方がかなりの数いらっしゃいます。

 

 だいたい、私のところにご相談に来られる方は、警察署やウィメンズプラザなどの配偶者暴力相談支援センターの支援を受けておられる方が大半なので、「保護命令」という言葉についてはご存じの方が多いです。

 

 ただ、保護命令の発動条件は法律で厳しく定められていますので、注意が必要です。

 

 なお、DVの保護命令の要件としてご夫婦もしくは内縁者という要件があるのですが、ここでは、内縁者の意義の説明は割愛させていただき、ご夫婦の問題であることを前提に説明させていただきます。

 

2.DV加害者からの暴力もしくは脅迫

 

 一方の配偶者から何の暴力も脅迫もなければ、そもそもDVではないので、当たり前の要件のようにも見えますが、そう簡単ではありません。

 

①客観的証拠の有無が非常に重要

 

 まず、暴力について説明しますと、暴力を受けたことを裁判所に対して証明しなければなりませんので、診断書や傷口部分を撮影した写真といった客観的証拠を求められることが多いです。最近は客観的証拠がなくても、保護命令を発令してくれるケースもありますが、少数ですので、基本的には客観的証拠が必要とお考えになった方がよいと思います。

 

 このことは、脅迫の被害を受けた場合も同様です。特に、これまで暴力を受けたことは一度もなく、脅迫を受けたことがあるのみというケースでは、録音テープなどの客観的証拠が必要不可欠になると思われます。

 

なお、「客観的証拠」というのは、ご本人の証言や目撃者の証言、ご親族や友人の証言といった「言葉による証拠」(これを「主観的証拠」と言ったりします)と区別される概念で、今回の場合には診断書や写真、録音テープなどが該当します。

 

②単なる暴言は除かれる

 

 DVの保護命令の要件は「脅迫」にあたる必要があり、この脅迫の内容としては、DV加害者の生命又は身体に危害を加える旨の告知でなければなりません。

 

 つまり、単なる誹謗中傷では足りず、「ぶっ殺してやる」といった形の危害を加える旨の発言がなければなりません。

 

③今後危害を受ける危険性が必要

 

 また、「今後も暴力によってDV被害者が危害を加えられる危険性がある」ということも要件になっています。

 

 この要件で実務上問題点となるのが、①直近の暴力の時期と②これまでの暴力の継続性だと思います。例えば、大怪我をさせられたことがあったとしても、それが2年も前の話でしたら、今後も暴力被害を受ける危険性が高いということを裁判所に納得してもらうことは難しいように思えます。また、最近暴力を受けたケースであっても、例えば、これまでの数十年にわたる婚姻期間で一度も暴力をふるったことがなかった旦那様が、リストラにあったことを理由に奥様から執拗に責め立てられて、カッとなって一度だけ暴力をふるってしまったという場合では、今後も暴力をふるう可能性は低いと判断される場合もあり得ます。

 

3.退去命令は一般的に更にハードルが高い

 

 上記のような保護命令の条件を満たした場合、接近禁止命令は発令されても、退去命令までは発令されないということは相当数あります。

 

 退去命令は、DV加害者に対して、2ヶ月間自宅に入るなと命じる内容になりますので、DV加害者にとっては一定期間生活の本拠に戻れないことになりますから、その不利益は大きいものがあります。

 

 そのため、退去命令発令については慎重になる裁判官が多いように感じます。

 

4.お子様やご親族様への接近禁止命令

 

 まず、お子様への接近禁止命令については、お子様を連れ戻す旨の言動その他DV被害者がDV加害者との面会を余儀なくされるおそれがある時にのみ認められます。

 

 そもそも、DV法は、DVの直接の被害者の保護を目的としていまして、お子様の直接の保護までは目的としていません。

 

 そのため、お子様が連れ去られるなどすれば、DV被害者としては、お子様を帰してもらうためにDV加害者との面会を余儀なくされるでしょうから、そういった場合(DV被害者本人がDV加害者との面会を余儀なくされることで更なる暴力を受ける危険性がある場合)にのみ、お子様への接近禁止命令が認められるのです。

 

 同様にご親族への接近禁止命令についても、その親族の住居に赴き粗野又は乱暴な言動をしており、DV被害者がDV加害者との面会を余儀なくされるような場合にのみ認められます。

 

 つまり、例えば、頻繁にDV加害者が、DV被害者の実家まで押しかけて、大声で叫ぶということを繰り返す場合、DV被害者としては実家にこれ以上迷惑をかけまいと、DV加害者に面会することを余儀なくされることになりますので、これを防止するという限度でご親族への接近禁止命令が認められるのです。

 

 たまにDV被害者ご本人やお子様はシェルターへ避難したけれども、DV被害者のご両親は、シェルターに入っていないという場合、そのご両親について接近禁止命令を申請して欲しいとのご相談を受けることがありますが、これはできません。

 あくまでDV被害者を直接の保護対象にしておりますので、DV被害者に対する接近禁止命令の申請とセットでなければ親族への接近禁止命令を申請することはできないのです。

 

4.そのほかの要件

 

 最後に形式的な要件にはなりますが、DV被害者の方は配偶者暴力相談支援センター又は警察署に一度は相談をしていることが必要であり(これに代えて公証人による宣誓供述書を用意することでも構いません)、また、ご親族の接近禁止命令をも申請する場合には、そのご親族の同意書を用意する必要があります。

 

5.DVの案件は発動条件も複雑なので専門家に相談するのが安心

 

 以上のように、DVの案件は保護命令の発動条件などが複雑ですので、専門家に相談して手続を進めてゆくのが安心だと思います。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV特集(4)―保護命令とは?

2015.10.30更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

前回に引き続きDVについてご説明してゆきたいと思いますが、今回は、DVの事件における保護命令というのがどのようなものなのかについてご説明いたします。

 

1.保護命令って? 

 

 簡単にご説明しますと、保護命令とは、DV加害者からの接触を断つために、一旦自宅からの退去を命じたり、DV被害者につきまとうことを禁止する命令を裁判所が発するという制度になります。

 

 たまに、弁護士がDV加害者の接触を断つための命令を発する制度であると誤解されている方がいらっしゃいますが、保護命令を発令するのは裁判所になります。弁護士は、保護命令を発令するよう裁判所に申立をする立場になります。

 

2.保護命令でどんなことができる?

 

 DV保護法における保護命令のメニューとしては以下のようなものがあります。

①2か月間DV加害者を自宅から退去させる(「退去命令」などと呼んだりします)

②6か月間DV被害者の付近につきまとうことを禁止する(「接近禁止命令」などと呼んだりします)

③6か月間DV被害者のお子様の付近につきまとうことを禁止する

④6か月間DV被害者のご親族の付近につきまとうことを禁止する

 

 ①の退去命令は、DV被害者が円滑に別居生活を開始できるよう、DV加害者を自宅から退去させ、DV被害者が自宅の荷物の整理や運び出しができるようにするための命令です。

 ②の接近禁止命令には通常、以下のような電話等による接触禁止も付加するのが一般的です。

 

1 面会を要求すること。

 

2 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知りうる状態に置くこと。

 

3 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

 

4 電話をかけても何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。

 

5 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。

 

6 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

 

7 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 

8 その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

 

 上記の通り保護命令のメニューは大まかには4つあるのですが、事件の性質に応じて、その内の1つないし2つの申立をするのが一般的です。

 

3.保護命令の効果

 

 直接的には、裁判所がDV加害者に対して前述のような接近禁止等を公的に命令することになります。

 

 そのため、一度保護命令が発せられると、DV加害者の方もDV被害者の周辺につきまとうということはケースとしては少ないと思います。

 

 ただ、万が一この命令に違反するようなことがあった場合刑事罰(具体的には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が課せられることになります。

 

 たまに、接近禁止命令は、DV被害者に近づけないようDV加害者を逮捕してくれる制度だと勘違いしている方がいらっしゃいますが、これは誤解です。DV加害者が保護命令に違反して付きまといを続けるなどした場合には逮捕されることもあり得ますが、命令に違反しない限りは、DV加害者も通常通りの生活を送ることが出来ます。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV特集(3)―DVにおける保護メニュー

2015.10.23更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

前回に引き続きDVについてご説明してゆきたいと思いますが、今回は、DVの事件における保護メニューとしてどのようなものがあるのかについてご説明いたします。

 

1.シェルター保護

 

 これは、弁護士が何かの申立をするという色彩のものではないのですが、DV被害者の方にとって一番重要なのは、DV加害者との接触を断つことだと思います。

 

 そのためにはシェルターを利用することが非常に有効です。

 

 配偶者暴力相談支援センターや警察署に相談すると、シェルターへの連絡も取ってくれますので、身の危険があるような場合には、シェルターの利用もご検討下さい。

 

2.弁護士による通知

 

 前述のシェルターへの避難は、その後、被害者の方がご本人でアパートを借りるなどして生活してゆくことが前提になっておりますので、ご実家での生活を希望されているとか、ご親戚の所有物件に転居したいといった場合には、あまり有効ではありません。

 

 また、既にDV加害者の知らないところに転居済みであれば、シェルターへ避難する必要性が薄いと言うこともあると思います。

 

 それらのような場合で、かつ、DV加害者がDV被害者の所在を探し回っているような場合には、それを牽制する意味も込めて、弁護士から通知を送るということが考えられます。

 

 この通知には、もちろん、離婚の意向と離婚の条件を記載するのですが、それに加えて、以下のようなことを記載して、被害者の方の安心感を持ってもらいます。

 

①被害者の所在を調べようとしないこと、

②弁護士が窓口になるので被害者と直接交渉しないこと、

③被害者は携帯電話の電話番号及びメールアドレスを着信拒否設定にしたので連絡が取れない状態であること

 

3.保護命令の申立

 

 詳しくは次回のブログでご説明いたしますが、前述のような弁護士からの通知を送っても、DV加害者が守らない危険性があるといった場合には、裁判所に保護命令を申し立てることを検討する必要があります。

 

 保護命令は、簡単にご説明しますと、DV加害者からの接触を断つために、一旦自宅からの退去を命じたり、DV被害者につきまとうことを禁止する命令を裁判所が発するという制度になります。一度DVの保護命令が発せられると、これに違反したDV加害者は、刑事罰が課されることもありますので、強力な手段になります。

 

4.暴力罪や傷害罪での告訴

 

 これは、DV行為について直接刑事罰を求めて行く手段になります。具体的には警察署に被害届を提出したり、告訴状を提出してゆくことになります。

 

 最近、警察署は、家庭内でのDVに対する意識が向上していますので、DV被害を受けた直後にDV被害者が直接警察署に相談に行くと、被害届の受付やDV加害者の逮捕につき積極的に動いてくれることが多くなっています。

 

 ただ、刑事告訴の難点は、DV加害者の拘束期間が長くなっていまいますと、失職の危険性が高まるという点にあります。

 

 DV加害者が失職してしまいますと、今後の婚姻費用や養育費の請求が難しくなる面がありますので、この点を考慮することが可能でしたら、検討要素に加えた方がよいと思います。

 

 なお、弁護士が事件を担当することになった場合に、刑事告訴状を作成することも可能ですが、前述のような失職の危険性も考慮して、DV被害者の方のみの安全確保という観点からはシェルターの利用か保護命令の申立を検討することが一般的かと思われます。

 

5.その後の離婚手続き

 

 通常、私などがDVの事件を担当することになった場合、保護命令の申立等だけではなく、離婚の手続きについてもお手伝いさせていただいております。

 

 前述した通知を送り、DV加害者が交渉に応じてくるようであれば、協議離婚によって事件を解決することも可能ですが、通常DV加害者の方は、交渉に応じない方が多いので、離婚調停を申し立てることの方が多いです。

 

 離婚調停で解決しない場合には、離婚訴訟を起こすことになります。

 

 いずれにしましても、離婚の最終結論が出るまで手続にお付き合いさせていただきますので、ご安心してご相談いただければ幸いです

 

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DV特集(2)―DV事件における弁護士の役割

2015.10.16更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

前回に引き続きDVについてご説明してゆきたいと思いますが、今回は、DVの事件における弁護士の役割についてご説明いたします。

 

1.直接DV加害者と接触しなくても済む

 

 DVの事件を弁護士に依頼した場合の最大のメリットは、直接DV加害者と接触しなくても済むという点かと思われます。

 

 DV被害を受けられていると、通常は配偶者と顔を合わせるだけできちんと話をすることもできなくなるという方も多いと思いますし、そうではなくとも直接話をすると言うことは大きな精神的ストレスになると思います。

 

 弁護士が介入した場合には、DV加害者に対して、以下のことをしっかりと伝えることができます。

①被害者の所在を調べようとしないこと、

②弁護士が窓口になるので被害者と直接交渉しないこと、

③被害者は携帯電話の電話番号及びメールアドレスを着信拒否設定にしたので連絡が取れない状態であること

 

 そして、被害者の方が、加害者が知らない場所に転居済みといった事情があれば、ほぼ加害者が被害者の方と接触することは不可能になります。

 
2.複数の保護メニューを適切に講じることができる

 

 DV被害における保護メニューについての詳細は、後日ご説明させていただきますが、弁護士は法律の専門家ですから当然に、法律上の保護メニューを適切に講じることができます。

 

 例えば、保護命令の申立をするにも、資料などが難解で、ご自身で裁判所に申請をするというのは非常に困難だと思いますので、このような場面で弁護士の活躍が期待できます。

 

 

3.弁護士に相談することによる安心感

 

 まず、法律の専門家に相談しているということで、ご自身の立場がより客観的に分かります

 

 といいますのは、仮に、DV被害者の方がご両親に相談して「これは酷い」という反応があったとしても、ご両親様は、他にDV被害者の方が知り合いにいるということはほとんどないと思います。そのため、一般的なDV被害よりも、今回のDV被害が酷いものなのかといった見極めをすることは難しいのが通常です。

 

 これに対して、弁護士は、DV被害者救済の事件を複数手がけていますので、他の被害事例の蓄積をもとに、今回のケースにおける被害の程度等を客観的に評価することができます

 

 そうすることで、今回のDV被害者の方にとっても、より客観的にご自身の立場を知ることができます。

 

 また、前述の複数の保護メニューの選択と同様ですが、ご自身が取るべき手続、今後の見通しがはっきりと分かりますので、その点で非常に安心感が持てると思います。

 

 インターネットなどを検索すれば、一定の情報を得られますが、慰謝料一つを取っても、金額に幅が大きいため「私はどのくらいの慰謝料をもらえるの?」ということもなかなか分かりにくいと思います。

 

 また、離婚調停手続きを取ったけれども、保護命令の申立をした方が良いのかどうか等本当に自分が進めている手続が最も適切な手続なのか、どうしても不安が生じてしまうと思います。弁護士が就いていれば、その様な不安はありません。

 

4.DV事件は弁護士介入の必要性が特に高い

 

 以上の通り、DV事件における弁護士の役割についてご説明いたしましたが、特にDV事件では、弁護士が介入する必要性が高いと思います。

 

 そのため、DV被害に逢われていて、ご家族での解決が難しい場合には、是非以下の無料相談をご利用されて下さい。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV特集(1)―DVかな?と思ったら

2015.10.09更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.DVってなんだ?

 

 DVとは、ドメスティック・バイオレンスの略称ですが、「旦那が奥さんに対して身体的暴力をふるうこと」を想像される方々が大半だと思います。

 

 一般的には、夫婦や恋人の一方が、他方に対して行う身体的・精神的・性的な暴力(ここでの「暴力」には、身体的暴力のみならず、言葉による暴力も含みます)などと言われます

 

 いわゆるDV法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)においては、配偶者・内縁者の一方から他方に対する身体的暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と定義されています。

 DV保護法は、保護命令といった制度の利用を想定して、一般的な意味よりもDVの範囲を限定しておりますので、以下では、DVについては「夫婦や恋人の一方が、他方に対して行う身体的・精神的・性的な暴力」という位置付けでご説明します。

 

 
2.DVかな?と思ったら

 

 よく恋愛もののテレビドラマなどを見ていても、奥様が旦那様に対して「信じられない」などと言ってビンタをする場面などを見かけますが、これも前述のDVに該当します。

 

 また、前述のようにDVには、言葉の暴力を含みますので、一般的なご夫婦の間でも、口げんかをしてしまうと、いわゆる暴言と言われる言葉を発してしまうこともあります。

 

 このようなDV被害を受けた場合、被害者側は、最初は、ショックを受けることが多いのですが、「自分が悪いことをしたのだからしょうがない」とか「私が変われば相手も変わってくれる」と考え我慢していくうちに、そのようなDVが常態化し、被害者側の感覚が麻痺してしまうということが往々にしてあります

 

 我慢がきく内はよいのですが、本人は我慢しきれているつもりでも、そのことが強い精神的ストレスになってメンタル面で不調を起こしたり(食欲がわかない、何事をするにも意欲が沸かない等々)、身体面でも変化が訪れる場合があります(疲れやすくなる、偏頭痛が治らない、動悸・息切れがする等々)。

 

 その様な体調の不調が起きた場合には、非常に危険な状態なのですが、その様な状態になる前でも、これまでの夫婦生活に違和感を持った場合には、信頼できる間柄の人に率直に相談するというのが非常に重要です。

 

 私がご相談を担当された被害者の方も「実家の母親に相談すると心配をかけるから、相談できなかった」といったことをおっしゃる方が非常に多いです。

 

 ですので、ご実家のご両親でも良いですし、兄弟姉妹でも、親しい友人でも良いので、これまでの夫婦関係をきちんと説明して、相談に乗ってもらうのが第1だと思います。

 

 迷惑をかけるかもしれないと思われている方が非常に多いのですが、DVの件でご協力して下さるご親族の方々は、ほとんどが「何でもっと早めに相談してくれなかったんだ。もっと早めに相談してくれていれば、こんなことにならなくて済んだのに」とおっしゃっています。

 

 このように他人の方に話を聞いてもらうことで、被害者の方が置かれている立場が客観的に把握できるようになりますので、とても良いことだと思います。

 

3.ご家族での解決に限界を感じたなら

 

 DVの程度が苛酷なものであった場合、ご家族での対処には限界があると思います。その場合には、配偶者暴力相談支援センターや最寄りの区役所・市役所の福祉課、警察署などに相談することをお勧めします。

 まずは、このような機関を利用して身の安全を確保することを第1に考え、ある程度精神的にも落ち着いた段階で弁護士への相談、離婚等についても視野に入れて検討するのがよいと思います。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(8)

2015.10.05更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 今回は、年金分割その他の事項について説明させていただきます。

 

2.年金分割

 

 年金分割とは、旦那様が加入していた厚生年金や共済年金についての婚姻期間中の保険料納付実績を分割する制度です。たまに、旦那様が65歳になった場合年金を200万円もらえる予定の場合、奥様がその半分である100万円をもらえる制度であると誤解されている方がいらっしゃいますが、そうではありません。

 

 あくまで、分割されるのは保険料納付実績ですし、分割対象期間は婚姻期間中のものに限定されますので、年金分割で得られる金額は、通常もっと少額になります。

 

 離婚協議書には、年金分割について「甲と乙との間の別紙記載の情報に係る年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定める」などと表現します。

 

 なお、年金分割にあたっては、社会保険事務所や国家公務員共済組合連合会に行き、年金分割のための情報提供通知書を取得しておく必要があります。

 

3.連絡先変更等の通知義務

 

 例えば、離婚協議書には「甲及び乙は、本件離婚後、第○条の養育費支払義務が終了するまで、住居所・勤務先・連絡先が変更になった場合並びに再婚した場合には、互いに、遅滞なく、相手方にその旨を通知しなければならない。」といった書き方をします

 

 離婚をしても養育費の支払いを受けるために、今後相手方と連絡を取る必要があるケースも出てきますが、その際に無断で引越しや携帯電話の番号を変更されますと連絡が取れなくなってしまいますので、そのことを防止するための定めになります。

 

4.清算条項

 

 離婚協議書には「甲及び乙は、本件離婚に関して、本協議書に定める他、互いに何らの債権債務のないことを確認する。」といった定め方をします。

 これは、離婚協議書に書いてあることが全てであり、それ以外のことを後から主張しないという内容の記載になります。

 

 この規定(法律用語としては「清算条項」という言い方をします)を入れますと、今後先方から何か協議書に書いていないことなどで別個の請求を受ける危険性はなくなりますが、他方で、こちらが記載しなければならない事項を書き漏らしていた場合に、今後請求できなくなってしまいますので、この清算条項を入れるかどうかは極めて慎重に検討して下さい。

 

5.医療保険

 

 この点は、通常、離婚協議書には書かないのですが、離婚する際にはご夫婦できちんと今後の手続について話し合っておく必要があります。

 

 即ち、通常婚姻中奥様は旦那様を世帯主とする健康保険に加入していることが多いと思いますが、離婚すると奥様はご自身の勤務先の健康保険に加入するか、定職に就いていない場合などには国民健康保険に加入する必要があります。

 

 また、お子様についても旦那様を世帯主とする健康保険に加入していると思われますので、離婚後奥様がお子様の親権者となる場合には、保険の切り替えが必要になります。

 

 このような保険の切り替えにおいて、旦那様の勤め先の健康保険から、国民健康保険に切り替える場合、旦那様の方で健康保険の資格喪失証明を取得した上でないと、奥様は健康保険の切り替えが出来ないのが通常です。

 

 ですので、離婚時には、保険の切り替えについてどのような書類が必要で、旦那様にきちんと書類作成を依頼しておくなど、今後の手続についてきちんと約束しておく必要があります。

 

6.荷物の引取 

 

 また、この点も通常離婚協議書には書かないのですが、荷物の引取については離婚時にきちんと話し合って決めておく必要があります。

 実際に荷物を引き取る際には、旦那様の方から「これは、こちらの費用負担で購入したものだから持っていくな」といった話が出されたり、逆に「これはもういらないから持っていってくれ」といったものが出てくることが多いので、どのものを引き取るのか等についてきちんと約束しておいた方がよいと思います。

 

 特にお子様の写真アルバムなどは、どちらに帰属させるかについて争いになることもありますので、きちんと話し合って決めておくようにして下さい。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(7)

2015.09.28更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 今回は、前回ご説明させていただきました財産分与について引き続き説明させていただきます。

 

2.財産分与って、どういう財産が対象になるの?

 

 財産分与という場合、どのような財産が対象になるのでしょうか。前回ご説明いたしましたとおり、相続などで一方の配偶者が取得した財産は財産分与の対象にはなりません。以下では、夫婦共同生活の間に築いた財産であることを前提にお話しさせていただきます

 

 なお、別居時点のご夫婦の財産で価値があるものは基本的に全て財産分与の対象になります。

 

 ですので、以下の説明は、財産分与の対象としてチェック漏れがないかどうかの確認用、また、各財産の評価方法の注意点等の確認用としてご活用下さい。

 

①まず、大きな財産としては、土地・建物といった不動産があります。

 これは、自宅に限らず、投資用マンションなどとして購入したものも含みます。

 

 不動産の評価につきましては、近隣の不動産業者に対して「値段によっては自宅を売却するかもしれないので、無料で簡易査定書を作って欲しい」と依頼すれば無料で簡易査定書を作ってくれますので、その金額を参考にするのがよいと思います。

 

 なお、住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンの額は不動産の価値から差し引かれます。

 

②次に、自動車・二輪車があります。

 

 自動車については年式があまり古いものは価値が付かないことが多いのですが、高級車や外車については年数が経っていても価値がつくことがありますので、財産分与の対象にすることも検討されて下さい。

 

 なお、自動車の評価については、その自動車を購入したディーラーに相談してみるとおおよその価値を教えてくれますので、参考になります。

 

 自動車等についても、ローン残がある場合には、自動車の価値から差し引かれることになります。

 

預貯金

 

 普通預金だけではなく、定額預金・定期預金・貯蓄預金いずれも財産分与の対象になります。

 

 なお、お子様の名義の預金は、お年玉などを貯蓄している預金などは財産分与の対象外です。

 

 財産分与の対象になるのは、別居日時点の預金残高になります。

 

積立金

 

 勤め先の財形貯蓄等の積立金も財産分与の対象になります。

 

 財産分与の対象になるのは、別居日時点の積立残高(それまでの利子を含む)になります。

 

保険

 

 別居日時点にご夫婦がかけていた保険(生命保険、入院保険(積立式の場合)、学資保険等)も財産分与の対象になります。

 

 なお、保険については別居日時点の解約返戻金(かいやくへんれいきん)が基準になります。その保険をかけている保険会社に対して「平成○年○月○日(別居日)の解約返戻金の金額を教えて欲しい」と電話をかければ、その金額を教えてもらえます。

 

 掛け捨ての保険は財産分与の対象外です。

 

金融商品

 

 証券会社を通じて取引をしている株式・投資信託・FXその他の金融商品は、別居日時点のものは財産分与の対象になります。

 

 なお、上場株式のみではなく、家業として会社を経営している場合のその会社の株式も財産分与の対象になります。

 

 また、信用金庫に預金を持つ際には、信用金庫に対する出資を求められますが、その出資が夫婦同居中に行われた場合には財産分与の対象になります(ただし、その出資額は数千円程度と少額なことが多いです)。

 

宝飾品・ブランド品等の高級品・骨董品等

 

 宝飾品・ブランド品または骨董品などは値段が付かないことの方が多いと思いますが、値段が付くようなものは財産分与の対象になります。

 

退職金

 

 退職金を財産分与の対象に含めるかどうかは、婚姻期間の長さ、退職までの年数等の事情によりますが、定年年齢までかなりの期間がある場合には、財産分与の対象に含めないことの方が多いように思われます。

 

家財道具等

 家財道具や家電は、ほとんど値段が付かないことが多いでしょうから、通常は財産分与の対象品目には掲げないことが多いです。

 

借金

 先ほど住宅ローンや自動車ローンが差し引かれることについては触れましたが、夫婦共同生活から生じた債務は財産分与の対象になります。

 ただし、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合、マイナス分の分与は行いません。

 

8.その他に差し引くものは?

 

 前述の通り、夫婦共同生活の期間中に取得した財産であっても相続財産などの財産は、どの方が独自に取得した財産ですので財産分与の対象外になります。

 

 また、独身時代にパート収入を貯金した預金なども、夫婦になる前の蓄えですから、財産分与の対象外になります。

 

9.財産分与の割合って?

 

 実務の現状をお話しいたしますと、財産分与ではご夫婦で折半(分与割合5割)とするのが通常です。

 

 多少奥様の家事が不十分であったり、旦那様の家事を一切していない期間があったとしても、分与割合は5割とされることが多いように思われます。

 

10.どうやって分けるの?

 

 前述の通り「(別居時のご夫婦の財産-特有財産-婚姻前からの財産)÷2」という計算方法で、財産分与の金額は計算できますが、不動産をご夫婦のどちらが取得するのか、自動車はどうするのかなどについて決めなければなりません。

 

 この場合にも、ご夫婦の話し合いでいずれがどの財産を取得するのかを決める必要がありますが、その際には以下のような点にも十分ご注意下さい。

 

自宅を奥様の名義に変更する場合の注意点

 

 自宅を奥様の名義にする場合、奥様はその自宅に住み続けることができます。

 

 しかし、ご自宅に住宅ローンの残がある場合、住宅ローンは通常旦那様の名義で借りているため、旦那様が支払い続けなければなりません(通常銀行は、住宅ローンの名義変更を認めないことの方が多いです)。

 

 旦那様からしてみれば、離婚後自分が住んでいない場所の住宅ローンを支払い続けなければならないと言うことに納得できるのかという切り口からの検討が必要になります。

 

 また、旦那様が住宅ローンの支払いをストップしてしまった場合、その家は担保に入れられていますので、例え奥様に名義変更していても銀行が競売にかけることができますので、その意味では不安定な立場に置かれます。

 財産分与にあたっては、このような点も注意する必要があります。

 

学資保険等の名義変更

 

 学資保険などはお子様の今後のためにかけていることが多いため、親権を取得した奥様の名義に変更するというケースも多いと思います。

 

 ただ、学資保険は旦那様の名義で契約している場合、保険会社が奥様への名義変更を認めないこともありますので(旦那様のような定期収入がなければ保険加入を認めないというケースがあります)、この点は注意が必要になります。

 

11.離婚協議書に「財産分与」はどう表現するの?

 

 例えば、財産分与によって不動産の名義を変更する場合には「甲は、乙に対し、本件離婚に伴う財産分与として、別紙物件目録記載の不動産を分与する。甲は、乙に対し、当該不動産について、本日財産分与を原因とする所有権移転登記手続をする。登記手続費用は、乙の負担とする。」といった書き方をします。

 

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離婚する際には離婚届にサインするだけで良いと思っていませんか?(6)

2015.09.21更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 今回は、財産分与について説明させていただきます。

 

2.財産分与って何?

 

 財産分与という用語は普段の生活ではあまり聞き慣れないと思います。この用語は、いくつかの性質があるとされていますが、中心的な意味合いは、「婚姻中の夫婦共同財産の清算を求める権利」と言えます。

 

 ご夫婦で共同生活を送っている場合でも、通常は、旦那様と奥様のいずれかが家計の管理をされることが多いので、いずれかの財産が多くなります。

 

 例えば、旦那様が家賃や生活費だけを奥様に手渡し、奥様が支払いをしていたという場合には、残りの給料は旦那様の預金に貯蓄されてゆくことになりますし、逆に旦那様がお小遣い制という場合には、給料の大半は奥様の預金に貯蓄されてゆくことになります。

 

 ただ、旦那様が離婚時に相当の貯蓄をしている反面、奥様の貯蓄はほとんどないという場合、そのまま離婚しますと奥様は今後の生活に困ってしまいますし、何より、旦那様は奥様の内助の功があるからこそ安心して外で働けるという面がありますので、何の清算もしないというのは不公平とも言えます。

 

 このような不公平を解消するものが財産分与になります。

 

 これまでにご説明しました「養育費」は、今後のお子様の生活費・教育費等の意味合いになりますし、「慰謝料」は、不倫や暴力といった大きな落ち度がある配偶者に対する請求になりますので、「財産分与」とは全く別の概念になります。

 

3.財産分与ってどうやって計算するの?

 

 私が財産分与についてご説明する際には「ご夫婦がお互いに別居当時の財産を一つのテーブルに全て載せて、それをご夫婦で折半するのが財産分与です。なお、財産分与の計算にあたっては、相続などで取得した財産は特有財産や婚姻前から持っていた財産は除かれます」と説明することが多いです。

 

 具体的な計算方法は、

(別居時のご夫婦の財産-特有財産-婚姻前からの財産)÷2

という計算になります。

 

4.現在の財産じゃなくて「別居時の」財産を基準にするの?

 

 今からお話しします「財産分与の基準日」というのは、その日付の財産を計算の基礎にするという意味です。例えば預金を例に取りますと、預金は給料の入金、光熱費や携帯電話料金の出金等で日々変動しています。このように財産の額が変動する場合、いつの時点の金額を基準にするのかを決めておく必要があります。これが「基準日」という概念になります。

 

 では、財産分与では、いつの時点の財産を基準にするのでしょうか。

 

 実務的には、現在持っている財産ではなく、別居時の財産を基準にするのが一般的です。離婚の前にご夫婦が別居している場合には、別居日と離婚日が大きくずれると言うことも珍しくありませんので、その様な場合、「別居日」なのか「離婚日」なのかという点は大きな問題になり得ます。

 

 なぜ、「別居時」を基準にするのかというと、そもそも、財産分与は夫婦で一緒に生活している場合には、夫婦が助け合って財産を築いてきたのだから、これを清算しようと言う概念ですから、ご夫婦が別居した後は、一般的には夫婦が協力し合って財産を築くことは難しいので、別居時が基準となるのです。

 

5.長く家庭内別居をしていた場合、「家庭内別居の開始日」が基準になるの?

 

 実際の別居や離婚の前に、夫婦の関係が冷め切ってしまい、同じ建物の中にいても旦那様は2階で暮らし、奥様は1階で暮らしており、お互いに全く顔も合わさないし、会話もしない、奥様が旦那様の家事をすることも全くないなど、家庭内別居が先行している場合、家庭内別居の開始日が基準になるのでしょうか。

 

 前述した財産分与の考え方からすると、完全な家庭内別居になってしまいますと夫婦が協力して財産を築いたとは言えないように思えます。従って、完全家庭内別居であることが証明できた場合には、完全家庭内別居の開始日が「基準日」になり得ると思いますが、この証明は極めて難しいので、(家庭内別居開始日ではなく)「別居日」が基準になることが多いように思えます。

 

6.「基準日」って夫婦で勝手に決めちゃダメなの?

 

 前述のような財産分与の計算方法で計算することは、別居時の財産関係を調べ直さなければならず手数がかかりますので、そこまでしなくても良いから早く離婚したいとお考えになる方もいらっしゃると思います。

 

 そこで、ご夫婦共に、「現在持っている財産を分ける方が簡単だ」(つまり、別居の時の財産まで計算するのは面倒だ)とお考えであれば、現在の財産を分けるという方法でも構いません。

 

 ただ、一度財産分与をしてしまいますと、後からその取消を求めること等は難しくなりますので、慎重に事を進めたいのであれば、必ず別居時の財産額も把握した上で、現在の財産を分けると合意した方がよいと思います。

 

財産分与についてはまだまだご説明したいお話しがございますので、次は次回のブログ更新時のご説明させていただきます。

 

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2015.09.14更新

 

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1.離婚する際にはきちんと決めごとをすべき

 

 これまでのブログにて、離婚する際には離婚届にサインするだけではなく、きちんと離婚の際に決めるべき決めごとについてはご夫婦で話し合って決めてから離婚すべきことを掲載させていただきました。

 

 今回は、慰謝料について説明します。

 

2.「慰謝料」って何だろう?

 

 「慰謝料」という用語は、ニュースなどでも比較的見かける用語だと思います。では、「慰謝料」とはどのような意味を持つ用語なのでしょうか。

 

 今回問題とする「慰謝料」というのは、相手の行動等によって受けた精神的ショックを穴埋めするために支払われるお金と理解していただくとよいと思います。

 

3.慰謝料って、どういう時に支払われるの?

 

 私が、離婚の際にご相談を受ける際、旦那様から酷い暴言の被害を受けたとおっしゃる方が非常に多いように思えます。また、旦那様が生活費を渡さない、趣味が異常であるといったご相談を受けることも比較的多いように思えます。

 

 では、このように奥様から見れば許せない、精神的ショックを受けたと言えば、直ちに慰謝料を請求できるのでしょうか。

 

 現状の実務を申し上げますと、暴力や不倫といった衝撃的なものでない限り、慰謝料は認められない傾向にあるといえます。もちろん、旦那様からの度重なる暴言で奥様が深刻なうつ病になってしまったとか、個別の事情によっては、慰謝料請求が認められるケースもありますが、基本的には難しいとお考えになっていただいた方がよいように思えます。

 

4.慰謝料の話はどのタイミングですればいいの?

 

 これは、相手の人柄にもよるところが大きいのでしょうが、相手が否定することを避けるために、できるだけ裏付けは取った上で話をした方がよいように思えます。

 

 何の裏付けも取らないで話をしてしまうと、相手は、「浮気なんてしていない」と言い張る可能性があり、慰謝料を得ることが難しくなるばかりか、離婚することすら覚束なくなる可能性もあるからです。

 

5.慰謝料の相場って?

 

 それでは、旦那様が不倫をしていて、そのことを旦那様自身が認めているとか、旦那様から暴力を受けて、暴力を受けた診断書と写真があるなどして、慰謝料が発生して然るべきという場合、いくらぐらいが相場といえるのでしょうか。

 

 私の弁護士10年の拙い経験の中でも、不倫慰謝料に関する質問の中で最も多い質問が慰謝料相場なのではないかと思います。慰謝料の金額は、各家庭の事情、不倫の態様等様々な要素によって決まりますので、一概にいくらと言うことはできません。

 

 ただ、私が取り扱った事件の慰謝料額を平均すると、200万円前後に近い数字になるのではないかと思います。ただ、繰り返しの説明になりますが、慰謝料額は個別の事件によって大きく異なりますので「200万円は確実にもらえるのですね」とか「200万円しかもらえないのですか」とお考えにならないようにして下さい。私が扱った事件でも数十万円しか慰謝料を得られなかった事件もありますし、逆に500万円以上の慰謝料を得られた事件もあります。

 

5.慰謝料は分割払いでも良いの?

 

 前述のように、不倫や暴力など一方当事者に大きな落ち度がない限り慰謝料の議論にはならないことが多いように思われますが、例えば慰謝料として100万円を支払うことには納得したが、分割払いにすることはできるのでしょうか。

 

 もちろんご夫婦で分割払いについて合意した場合には、その様にすることも可能です。ただ、旦那様からの今後の回収という面からは、できるだけ一括でその場で支払わせるのが得策と言えます。

 

6.離婚協議書に「慰謝料」はどのように表現すればいいの?

 

 例えば、「甲は乙に対し、慰謝料として金○○万円の支払義務があることを認め、これを平成○年○月末日限り、乙の口座(○○銀行○○支店普通預金No.○○○○○○)に振込送金して支払う。振込手数料は甲の負担とする。」といった表現をします。

 

 なお、慰謝料という表現ですと刺々しい表現になりますので、「解決金として金○○万円の支払義務があることを認め」という表現をすることもあります。

 

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