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【夫から我が子への虐待(1)】これって児童虐待?(「しつけ」との線引きは?)

2024.01.29更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的な内容は以下の通りです。

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

2.それぞれの概要


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。そこで、以下、それぞれの意味について、概要をご説明いたします。

(1)身体的虐待
 厚生労働省のサイトなどでは「殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など」と具体例が書かれていますが、もちろん、身体的暴力に該当する行為は全て含みますので、これらの行動に限定されるわけではありません。
 なお、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。

 

(2)性的虐待
 厚生労働省のサイトなどでは「子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など」と具体例が書かれています。
 なお、実際には、上記のような露骨な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。これらの①や②のケースは、残念ながら、上記の露骨な性的虐待よりは悪質性が落ちるため、その言動の内容や鑑賞内容がかなり露骨なものであったり、執拗なものであったりしないと、直ちに「性的虐待には当たらない」ケースも多いので注意が必要です。

 

(3)ネグレクト
 厚生労働省のサイトなどでは「家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など」と具体例が書かれています。
なお、朝登校準備等で慌ただしく、お子様が朝食を食べずに出かけたことをもって、ネグレクトなどとおっしゃる方もいますが、児童虐待防止法は児童の心身の正常な発達を妨げるような「著しい」減食としていますので、直ちにネグレクトには該当しにくいかと思います。

(4)心理的虐待・面前DV
 厚生労働省のサイトなどでは「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など」と具体例が書かれています。
 なお、児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義していますので、多少のきつい言い方は、直ちに児童虐待には該当しないこともあります。

 

 

3.「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ではないこと


 上記のような児童虐待の解説をしますと、「夫は、機嫌が悪くなると子供に八つ当たりのようになるが、直接手をあげるわけではないから」とか「夫は、娘に対して、わいせつな冗談を言うけれど、児童虐待防止法の『性的虐待』とまでは言えないのかも」といった不安を持つ方もいらっしゃいます。
 ただ、上記の児童虐待防止法が禁止する児童虐待は、それ自体が犯罪に該当したり、直ちに児童相談所が対応しなければならないような「重大・深刻なケースばかりを想定しています」ので、「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ということにはなりません。

 

 

4.結局「しつけ」との線引きは?


 結局、児童虐待と表現するかどうかはともかくとして、許容限度を超えるような不適切な関わりと、しつけとの線引きはどこにあるのでしょうか。なお、「性的虐待」はあまりしつけとは関係性が薄いため、「性的虐待」との関連性は割愛させて頂きます。

(1)身体的暴力
 前述の通り児童虐待防止法は、お子様が怪我をするとか怪我性があるという点が、児童虐待に該当するかの大きな線引きになっています。
ただ、怪我をするかどうかを問わず、夫がお子様を殴ったり蹴ったりするような行動をとること自体、かなり不適切な関わりと言えると思います。これは怪我をするかどうかの問題ではないと思います。
なお、暴力については、
・息子の勉強の出来があまりに悪かったからだ
・まじめに勉強しているように思えなかったから、こうした
・約束を破ったので、体罰は必要悪だ
・嘘をつくような子には、ある程度懲らしめることが必要だ
・妻が言うことを聞かせられないので、やむを得ず私がこうしている
・俺が小さい頃はこのくらいのことは普通だった
・少し殴られるくらいの方が体が頑丈になるんだ
・嘘をつくことが癖のようになってしまっているので、体で覚えさせる必要がある
・生意気な態度をとるので、社会の厳しさを教えてやってるんだ
などと、夫側が暴力の正当化の理由を述べることもありますが、暴力自体が許されないものですので、どのような経緯・理由があっても、それが「適切」になることはないと思います。

(2)ネグレクト
 しつけとの関係でよく問題になるのは、体罰のような形で、例えば、①押し入れやトイレなど狭い場所や暗所に長時間閉じ込める、②些細な約束違反で食事を一切与えない・そのようなことが何度も続く、③お風呂で遊ぶことが好きなお子様も多いと思いますが、何日も入浴を禁じる、④室内がゴミ屋敷のようになっており、長期間そのような状態が継続している、といったものが具体例として挙げられると思います。

 なお、相手のネグレクトを指摘する場合には、あなた自身がそれを改善できなかった事情等も証明しなければならないという問題があります。
 例えば、あなたが仕事から帰って来ると、先に帰ってきていた夫が娘をトイレに閉じ込めていたというようなケースですと、あなたが気付いてから、娘様を救出するまでに長時間がかかってしまいますと、あなたが閉じ込めの共犯のようになってしまう恐れがあるということです。
 閉じ込めだけではなく、お子様への食事禁止、入浴禁止、室内の清掃禁止の状況についても、同様のことが言えます。
 そして、こちらから、夫の問題行動として指摘すると、逆に、夫の方から「子供に食事を与えていなかったのは妻の方だ」などと、逆にあなたの問題行動として指摘し返してくるケースもあります。
 いずれにしましても、ネグレクトは「夫婦の連帯責任」というように捉えられやすいので、十分注意が必要です。

(3)心理的虐待
 一口に心理的虐待と言っても範囲が非常に広いので、なかなか特定が難しいのですが、少なくともお子様への執拗な誹謗中傷やきつい責め立て、脅しといった行動が不適切であることは間違いがありません。
 「身体的暴力」の箇所で解説しました通り、心理的虐待の経緯や理由がどうであろうと、その行動が「適切」となることはないと思います。

 

 

5.まとめ


・「児童虐待」については児童虐待防止法に定義があり、大別すると①身体的暴力、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVに分けられる。
・児童虐待防止法上の「児童虐待」に該当しないからと言って「許される」ということにはならない。
・身体的暴力は、いかなる経緯・理由があっても基本的には不適切な行為と言える。
・ネグレクトを指摘する場合「夫婦連帯責任」と言われてしまうことが多いので注意が必要である。
・心理的虐待についても、その言動が悪質であったり執拗であったりすると、許容し得ない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(25)】こんなに小さい子供がいるのに離婚が認められることはあるのか?

2024.01.22更新

弁護士秦

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1.こんなに小さい子供がいるのに離婚が認められることはあるんですか?


 私が相談に乗っておりますと、特に女性側から「うちの子はまだ1歳なのに、そんな子供を見捨てていったような夫の離婚請求が認められてしまうんですか?」といった質問を受けることもあります。
 逆に、男性側から「うちの子はまだ小さく、日々大きく成長するので、それを見守れないのは本当につらい。妻の離婚を認めてしまうと連れ去り得のようになってしまい、おかしいんじゃないですか?」といった質問を受けることもあります。
 あなたからすると、大切な小さな命を授かって、お子様も含めた新しい家庭のスタートだというところで、別居や離婚だという話が急に出てくるわけですから、とても納得できないとお考えになるのは当然のことかと思います。
 以下では、小さなお子様がいらっしゃるといった事情がどのように離婚に影響するのかといった点を含め、解説していきます。

 

 

2.離婚の問題は、協議・調停・裁判のスリーステップで進む


 お子様と離婚との関係についてお話する前に、離婚の問題がどのようなステップで進んでいくのかについて簡単にご説明します。
 離婚についてご夫婦が同意している場合には、離婚届を提出さえすれば離婚することができます。
 そのため、通常は、まず、離婚協議を行い、離婚届を提出する形の離婚を目指します。
 このような当事者同士の話し合いが上手くいかない場合には、裁判所の離婚調停という手続きを取ります(なお、相手の弁護士のスタンスによっては、ほとんど話し合いはせずにいきなり調停を起こしてくる弁護士もいます)。

 離婚調停は、裁判所の中で行われる手続ではありますが、「話し合い」の手続ですので、離婚するかどうかについてお互いの意見が折り合わない場合には、調停で話をまとめることはできません。
 このように調停が不成立になってしまいますと、裁判で離婚すべきかどうかについて白黒つけていくということになります。
 なお、日本の法律では、調停前置主義が取られていますので、調停を経ずにいきなり裁判を起こすことはできません。
 このように、離婚の問題は、協議→調停→裁判というステップを踏んで進んでいくことになります。

 

 

3.協議・調停の際にはあなたの意思次第


 前述のような協議または調停のステップでは、あなたはあなた自身の気持ちを率直に述べて良いので、あなたが「絶対に離婚したくない」と考えているのでしたら、そのように発言することで問題ありません。
 前述の通り、調停は、裁判所内で手続きが行われるのですが、何らか強制を受ける手続きではありませんので、あなたが「絶対に離婚したくない」と発言している中で、離婚を強制されることはありません。

 

 

4.裁判になった場合


 相手が離婚裁判を起こしてきた場合でも、あなたが「絶対に離婚したくない」と考えているのでしたら、そのように主張することはもちろん自由です。
 しかし、離婚裁判は、裁判官が、「この夫婦は法律上離婚すべき事情がある」と判断してしまいますと、判決で離婚が認められてしまいます。つまり、あなたが離婚を拒否していても、離婚を強制されてしまうのです。
 そのため、離婚裁判がスタートした場合には、あなた自身が離婚の裁判で有利なのか不利なのかを弁護士に相談するなどして、今後の対応を慎重に見極める必要があります。

 

 

5.こんなに小さい子供がいるのに判決で負けてしまうことはあるのか?


 あなたからしてみると、こんな小さい子供がいるのに裁判官が離婚を命じることはあり得ないでしょう、とか、そんな無情な判決が出るはずない、とお考えになるかもしれません。
 しかし、離婚が認められるかどうかは、民法770条の離婚理由が認められるかどうかで判断されることになります。
 代表的なものは、不貞行為があったとか、暴力行為があって相手が怪我をしてしまったといった事情になるのですが、最終的には様々な事情を考慮して、離婚の当否について結論が出されます。特に重視されるのは以下の点です。
① 夫婦関係の悪化を示す事情としてどのような事情があるのか
② そのような事情についてどのような証拠があるのか
③ 別居期間がどの程度の期間に及んでいるのか
④ 同居期間の年数

 小さいお子さんがいらっしゃるということは、当時は、相手方もお子様を一緒に育てていこうという意識があったのでしょうから、上記の①の事情に影響する事情と言えます(別居付近でもそこまで夫婦の関係は悪化していなかったはずだという意味で、こちらに多少有利な要素になるという意味です)。ただ、夫婦の間での様々な事情の中の一つの事情という位置づけになりますので、「これが決め手で離婚しなくて済む」ということは難しいと思います。
 いずれにしましても、離婚裁判で勝てそうなのか負けそうなのかは、様々な事情を考慮しなくてはなりませんので、詳しくは弁護士に相談するなどして慎重に見極めた方が良いかと思います。

 

 

6.まとめ


・こんな小さい子供がいるのに離婚が認められるのか?というのは当事者の心情としては非常によく理解できる。
・離婚の協議・調停の手続きであれば、あなたが離婚したくないと言えば、離婚を避けられるので、小さいお子様の為にも離婚を回避するという方向で良い。
・離婚裁判になると、判決で離婚を強制される可能性がある。
・小さいお子さんがいるということは一つの事情にはなるが、それほど決め手となる事情にはなりにくい。
・離婚裁判で勝てそうか、負けそうかという点は、これまでの様々な事情を考慮して決められるので、弁護士に相談するなどして慎重に見極めた方が良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(24)】離婚裁判は避けるべきか、立ち向かっていくべきか

2024.01.08更新

弁護士秦

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1.離婚調停と離婚裁判の関係


 離婚裁判に対してどのように対応していくのかを解説する前に、離婚調停と離婚裁判の関係についてお話します。

(1)調停前置主義
 現在の離婚事件については、調停前置主義が取られていますので、いきなり裁判を起こそうと思っても、認められません。
裁判を起こす前に必ず調停を経なければならないものとされています(このようなシステムを調停前置主義と言います)。

(2)離婚については自動で審判には移行しない
 婚姻費用や面会交流についての調停は、調停で話し合いがつかない場合には、手続きは審判に移行します。審判手続きは調停手続きの延長なので、これまでに提出した資料はそのまま引き継がれて、調停委員長である裁判官がそのまま審理を担当することになります。
 これに対して、離婚調停については、調停が不成立になっても自動で審判に移行することはありません。つまり、離婚調停が不成立になると、そこで一旦手続きは終了し、離婚を希望する側は、改めて離婚裁判を起こす必要があります。調停と裁判との間には連続性がありませんので、調停で提出した資料は引き継がれませんし、基本的に担当裁判官も変更になります。

 

 

2.結局、離婚裁判って何だ?


 離婚裁判がどのような手続きなのかについては、下記のブログを参考にして下さい。
※離婚裁判って何だ?
 抽象的に、「離婚裁判になると大ごとだ」とか「離婚裁判は大変な手続きだ」と考えている方は多いのですが、具体的なところはよく分かっていないという方も多いので、上記のブログをご覧になって、しっかりと離婚裁判がどのようなものなのかの理解を深めていただければと思います。

 

 

3.調停で事件を終わらせるか、裁判をするか


 前述の解説で、離婚裁判がどのようなものなのかについてはある程度理解していただけたかと思います。
 ただ、実際に離婚裁判に臨むとなると、事前に予測していた以上の精神的負荷もありますので、以下で、離婚裁判のメリットとデメリットについてお話しします。

(1)【離婚裁判のメリット①】はっきりと白黒つけられる
 離婚裁判の一番のメリットは、「明確に結論が出る」ということかと思います。
 要するにあなたのご夫婦で、法律上離婚しなければならないような理由があるのかないのかということが明確に判決に書かれます。
 例えば、別居期間がまだ短いとか、相手が有責配偶者であるといった場合には、相手からの離婚請求に対して判決で「NO」と言ってもらえると、今後のこちらの動きに弾みがつく面もありますし、相手に対して「自分の行動が間違っていた」と自省を促すきっかけになることもあります。

(2)【離婚裁判のメリット②】相手の離婚理由が鮮明化する
 離婚裁判になると、相手もあなたと離婚したい理由を「出し惜しみなく」すべて主張していくことになります。
 離婚調停ですと時間に限界があることもあって、相手の本当の離婚理由がはっきりとしないとか、相手の離婚理由についてどのような証拠を保有しているのかが分からないというケースも往々にしてあります。
 これに対して、離婚裁判になると、相手方は、離婚理由について「出し惜しみなく」全て主張してきますので、相手の正確な離婚理由を把握できることもあります。

(3)【離婚裁判のメリット③】あなた自身が裁判所に行かなくて良い
 離婚調停の場合、調停期日には必ずあなたが出席していたと思います。
 これに対して、離婚裁判の場合、書面や資料に基づく主張が中心になりますので、代理人弁護士のみが出席し、あなた自身が出席する必要はありません(但し、最後の尋問手続きだけはご出席いただく必要があります)。
 私の依頼者の中には「調停の日が近くなると気が重くなります」とか「調停の前日はあまり良く眠れません」とおっしゃる方もいらっしゃって、調停に出席すること自体が大きな精神的負荷になっている方もいます。
 離婚裁判の場合には、弁護士だけが出席すればよいので、そのような精神的負担はありません。

(4)【離婚裁判のデメリット①】誤解や誇張に基づく主張が多い
 いざ離婚裁判に臨んだ場合に、私の依頼者がよく口になさるのが、「嘘ばかりが書かれている」ということです。
 相手も離婚で勝訴するために必死に離婚理由を絞り出しますので、残念ながら、誤解や誇張に基づいて言い分を述べてくるケースはかなり多い印象です。
 そうしますと、あなたとしては、相手のそのような誤解や誇張に基づく言い分を目にしなければならないものですから、それだけでも相当な精神的負荷になります。

(5)【離婚裁判のデメリット②】相手の言い分が書面化される
 前述の通り、離婚裁判は、書面中心で審理が進んでいきますので、込み入った事情などについても全て書面化して提出していくことになります。
 このことは、前述のように相手の主張する離婚理由が透明化されるというメリットがある反面、こちらも書面でしっかりと見せつけられるというデメリットもあります。
 しかも、その書面が前述の通り誤解や誇張に基づく言い分も多いものですから、「見るのが嫌になる」とおっしゃる方も多いです。

(6)【離婚裁判のデメリット③】紛争の長期化が避けられない
 離婚裁判終了までどの程度の期間がかかるのかについては、離婚の他の条件がどの程度争われるのかにもよるのですが、紛争がかなり長期化してしまうのは事実です。
 もちろん、あなたの方で「絶対に離婚したくない」という強い決意があるのでしたら、裁判期間は「避けられない期間」という位置づけもできるのですが、前述の通り、離婚裁判中、相手方からは心無い言葉などが繰り返し主張されますので、精神的につらい期間が長期的に続くという側面は否定できません。

 

 

4.最終的にどうするかはあなた次第


 これらのメリットとデメリットを総合的に考慮して、「やはり現状離婚には応じられない」とか「子どものためにも離婚に踏み切るべきではない」ということでしたら、離婚裁判に立ち向かっていくべきということになります。
 逆に、「これ以上の長丁場は避けたい」ということでしたら、離婚裁判に立ち向かっていくのではなく、調停段階で離婚に応じたり、離婚裁判の早期の段階で離婚に応じるというスタンスを取ることになります。
 もちろん、いずれの対応を取るのかについては、あなたの今後の人生にも関わる重大な決断ですので、じっくりと慎重に見極めて欲しいと思います。

 

 

5.いつ頃離婚裁判が起こされるか?


 前述の通り、離婚調停と離婚裁判とは別の手続きなので、離婚調停が不成立になってもすぐに離婚裁判を起こしてこない人もいます。ある程度別居期間を稼いでから離婚裁判を起こした方が有利だと考えて、一定期間を置いてから離婚裁判を起こす人もいるのです。
 なお、相手がいつ頃離婚裁判を起こすのかについては、離婚調停の終盤になると、先方の方から意見を言ってくるケースも多いです(このまま離婚調停が不成立になった場合には、即刻裁判を起こすということをアナウンスしてきたりするという意味です)

 

 

6.まとめ


・離婚調停と離婚裁判とは全く別の手続である(審判のように自動移行する手続きではない)。
・離婚裁判には以下のようなメリットがある。
① 明確に白黒つけることができる
② 相手の離婚理由が鮮明化する
③ あなた自身が裁判所に行かなくて良い(最終の尋問の際は別)
・離婚裁判には以下のようなデメリットもある。
① 誤解や誇張に基づく主張が多い
② 相手の言い分が書面化される
③ 紛争が長期化する
・今後どのように対応するかは慎重に検討した方が良い
・離婚調停が終わってもすぐに離婚裁判を起こさない人もいる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(23)】別居期間が長くなると離婚になるって本当?

2023.12.25更新

弁護士秦

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1.別居期間が長くなると離婚になるって本当?


 私が相談を受けておりますと、「別居期間が長くなると離婚になると聞きましたが、本当ですか?」と質問してくる方もいます。
 このような質問の趣旨として、別居期間が一定期間に達してしまうと、パートナーが離婚届を提出すると(あなたが署名押印しなくても)それが役所で受理されてしまうと誤解されている方も多くいますが、そういうことではありません。
 別居期間が長くなったとしても、あなた自身が離婚届に署名押印しない限り、勝手に離婚届が受理されるということはなく、あくまで裁判をしない限り、離婚は認められません。
 そのため、あなたの知らないところで、離婚届が受理されるということはありませんので、この点はご安心ください。
 なお、一概に「別居期間が長くなる」と言いましても、ケースによってどのくらいの期間を置けばいいのかといった点が異なってきますので、ケースに分けて解説していきます。

 

 

2.【ケース1】相手が有責配偶者の場合


 相手、すなわち離婚を要求してきている側が有責配偶者というケースです。
(1)有責配偶者って?

 まず、有責配偶者の意味を確認しておきますが、有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させる主な原因を作った配偶者のことを指します。
 このように書きますと、あなたにとって、婚姻関係を破綻させたのは相手の方だから、相手が悪いとおっしゃるかもしれませんが、そう単純な話ではありません。
 即ち、有責配偶者の「有責性」が認められるためには、①相手が第三者と浮気したとか、②あなたに暴力をふるって大怪我をさせたとか、③あなたの生活が直ちに立ち行かなくなることを認識しながら、何か月も生活費を渡さず生活を著しく困窮させたとかの特別な事情が必要になるのです。

 俗な言い方をしますと、相手が「非常に悪質と言えるような特別の事情があるケース」である必要があるのです。

 

(2)相手の有責性の証拠が必要

 また、このような事情については、しっかりとした裏付けが必要になります。

 たまに私のところに質問を受けることもあるのですが、「相手が他の異性と関係を持ったストレートな証拠はないんですが、二人でレストランに入った証拠はあるんです」と相談されることがあります。しかし、不貞の証拠としては、パートナーが他の異性と性的関係を持ったことの証拠が必要になりますので、それでは証拠不足になります。

 その意味で、「しっかりとした証拠」は皆さんがお考えよりもハードルが高いことも多いです。
 このような事情がしっかりと裏付けに基づいて認められるようでしたら、相手は有責配偶者ということになりますので、相手からの離婚請求は簡単には認められません。
 基本的には、未成年のお子さんがいる間は離婚請求が認められませんし、そうでなくとも、別居期間が7年程度は続かないと離婚請求は認められないと言われています。

 

 

3.【ケース2】あなたが有責配偶者の場合


 前述の通り、有責配偶者の条件はかなり厳しいのですが、あなたがそれに当てはまってしまう場合には、相手からの離婚請求は特段の別居期間がなくとも認められてしまいます(前述の通り、こちらが争った場合には、相手は離婚の裁判を起こす必要はあります)。
 なお、このような場合でよくご質問を受けるのが、「確かに私が浮気してしまったのは事実ですが、今からもう10年以上前の話なので関係ないんじゃありませんか?」とか「私が浮気したのは、夫のモラハラがひどく、家庭に居場所がなかったことが原因なので、このような場合は私だけの責任ではないと思います」といったものです。
 それぞれ解説していきます。

(1)有責行為がかなり以前の話の場合
 あなたの有責行為がかなり以前の事情だとしても、有責行為があったことは事実ですから、依然こちらがかなり不利だという状況に変化はありません。
 ただ、あまり古い話の場合、相手もあなたの有責行為を証明する十分な証拠を残せていない場合もあり、そのような場合には、証拠不十分として相手の離婚請求が認められなくなる可能性もあります。

(2)相手の行動や言動に影響されている場合
 相手の行動などが、それ自体有責行為と言えるようなひどい内容の場合は別として、そうでない場合には、残念ながら、あなたの有責行為が正当化される可能性は低いと思います。
 このようにお話しますと、「相手の問題行動はお咎めなしで、こちらのことばかり責められるのはおかしい」とおっしゃる方も多いのですが、仮に相手からのモラルハラスメントがあったとしても、そのことで浮気に及ぶ人が多いのかと言いますと、残念ながら少数だと思います。また、前述の通り、有責行為に該当する行為は、夫婦関係に重大な悪影響を及ぼすような事情ばかりですので、その責任が重たくなるのは致し方ない面があります。

 

 

4.【ケース3】どちらでもないケース


 上記の「ケース1」と「ケース2」のいずれでもないケースです。多少はどちらかに問題があったとしても、前述の「有責性」までは認められないケースです。
 実際に離婚が争われるケースでは、この「ケース3」の事案が大半を占めるのではないかと思います。
 このような場合、お互いに決定打がないため、いつまでも離婚が認められないということではなく、裁判を経る必要がありますが、一定の別居期間が経過すると、離婚を認める判決が言い渡されることになります。
 一定の別居期間が経過しますと、もう夫婦としてやり直すことは難しいだろうということで、離婚を認める判決が出てしまうのです。

 なお、この「一定の別居期間」というのは、これまでの同居期間やお子様の人数や年齢などが影響してきますが、3,4年の別居期間を指すことが多いです。
 ちなみに、同居期間が30年とか、かなり長期間の場合には、「別居期間が10年くらいないと離婚は認められませんよね?」などと誤解されている方もいますが、基本的には、別居期間3,4年のうち、「4年に多少近付くかもしれない」という程度の差とお考えになった方が良いと思います。

 

 

5.別居期間が重要視される理由


 これまで解説して参りました通り、別居期間がどの程度の年数に及んでいるのかという事情は、離婚裁判においては非常に重要な指標になります。
 その理由としては、①同居中の行動や言動は客観的な証明が難しいのに対して、別居期間は客観的に動かしがたい事情であること、②夫婦としての愛情が残っているようであれば、一旦別居しても再び同居を再開するはずであり、別居が長引いているということは、それだけ婚姻関係が傷ついていると一応言えることなどが挙げられます。

 まず、①について詳しく説明いたしますと、同居中の行動や言動は、普段の生活の中で録音機械で常に録音しているという人はまずいないと思いますので、どのような行動があったのか、言動があったのかを正確に証明することはほぼ不可能だと思います。また、離婚裁判の場になりますと、離婚を請求する方は、離婚するために事実をより相手に不利な内容で追及していきますし、離婚を請求された側は、逆に自分に有利な内容で主張を展開しますので、言い分が大きく食い違うということもままあります。
 そのため、裁判官としても、双方の言い分を聞いていても、どちらの方が正しいのかがよく分からない、ということが多いのです。
 そのような場合に、全てのケースで「判断ができない」としてしまいますと、いつまでも離婚が認められなくなってしまいます。

 他方で、別居期間は、お互いが一緒に寝泊まりしなくなった期間ということなので、お互いの認識が大きくずれないことの方が多いと思います。
 このように、別居期間は、客観的に動かしがたい事情として、裁判官が判断のよりどころにしやすい事情と言えるのです。
 また、②については、夫婦としてのコミュニケーションなどが取れているケースですと、パートナーの一方が家を出たとしても、コミュニケーションの結果、自宅に戻るというケースも多いので、裏を返すと、別居期間が長く続いているということは、夫婦関係がもうやり直せない状況に至っていると一応言えるということです。

 

 

6.まとめ


・別居期間が長くなってもそれだけで離婚できるということではなく、裁判を経る必要がある。
・相手が有責配偶者の場合、相手からの離婚請求はかなり認められにくくなる。
・逆にこちらが有責配偶者の場合、特段の別居期間がなくとも相手の離婚請求は認められてしまう。
・どちらにも有責性と言えるほどの大きな落ち度がない場合、3,4年の別居期間が経つと(裁判を経る必要があるが)離婚が認められることになる。
・このように別居期間が重要な指標になるのは、客観的に動かしがたい事情であること、それだけ長期間別居が続いていること自体が夫婦としてやり直せない状況と一応言えるということが理由である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(22)】(妻からの視点)もっと子供に会って欲しい場合どうすべきか

2023.12.11更新

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1.夫婦関係修復の作戦として面会交流を利用すると、夫側に見透かされることが多い


 私がご相談を受けておりますと、夫からの離婚請求意思を弱める作戦として面会交流させたいという話をなさる方が多いように思えます。
 確かに、面会交流を通して、夫側の心境変化に成功したケースも少なからずありますが、このような作戦であることが夫側に見透かされて、夫の離婚意思を余計に強めてしまいます。
 また、お話を聞いておりますと、①夫婦関係を修復できるようなら、なるべく沢山子供と会って欲しいけれど、②夫婦関係の修復が難しいようなら、なるべく子供に会わないで欲しい、ということをおっしゃる方もいます。そのようなお気持ちも分からないではないのですが、あまり途中から面会交流についてのこちらのスタンスが大きく変わりますと、こちらに不利に働くこともありますので、当初の段階でこちらのスタンスはある程度固めてから話を進めていくことが多いです。

 

 

2.面会交流調停はこちらから起こすこともできる


 たまに誤解されている方もいるのですが、面会交流調停はこちら(奥様)から申し立てることも可能です。
 そのため、夫側が面会交流に消極姿勢の場合には、こちらから面会交流調停を起こすこともあります。
 ただ、こちらから先行して面会交流調停を起こすと、夫側にもこちらの真意が伝わりにくくなってしまうと思いますので、通常は夫側が離婚調停を起こしてきた後に、時期を見てこちらから面会交流調停を起こすというパターンがオーソドックスだと思います。
 なお、夫婦円満調停と面会交流調停をこちらから先に起こしたいという方もいますが、あまり調停の手続きがスピーディーに進んでしまいますと、夫側からの離婚裁判を早める結果につながりかねませんので、夫からの離婚調停を待つべきケースの方が多いと思います。

 

 

3.「父親としての責任を果たせ」という姿勢は避けるべき


 これもよくあるお話なのですが、今後の夫婦関係がどうなっていくのかは分からないにせよ、子供と向き合うのは父親の責任なのだから、父親としての責任を果たせ、ということを強くおっしゃる方もいます。
 確かに、残されたお子様の心情のことも考えますと、おっしゃることは良く分かります。
 ただ、法律上、離婚した後の父親の責任というものは、一般的には養育費を支払う責任と捉えられる傾向が強く、面会交流までも当然に父親の責任とは言いにくいと思います。

 

 

4.夫側にとって重荷だと感じると逆効果


 前述のように夫側に対して、面会交流が父親の責任という形で強く要求しますと、夫側にとってはそのことが余計重荷に感じて、夫婦関係修復ではなく、むしろ離婚の意思を強めてしまうということもあります。
 また、同居していた時から夫側のお子様への関心が薄いようなケースですと、元々、お子様との面会交流を重荷に感じているという人も少なからずいます。
 そのため、面会交流の話も、夫側の捉え方や様子を踏まえながら、提案していくという方法もあります。

 

 

5.面会交流の条件などを緩やかにすると良い方向に進むことが多い


 お話を聞いておりますと、「父親としてもっと子供に会って欲しい」と言いつつも、その条件をかなり厳しく設定するという方もいます。例えば、もうお子様が小学校に上がっているのに、あなた自身の立会を必須にするとか、学校行事に夫婦そろって出席して欲しいといった具合にです。
 このように面会交流の条件を厳しく設定してしまいますと、夫側は余計に不信感を募らせがちですので、「まず会ってもらうこと」を優先する場合、条件面は多少緩やかにした方が良いかと思います。

 

 

6.まとめ


・夫婦関係修復の作戦として面会交流をセッティングすると夫側に見透かされてしまうことも多い。
・面会交流調停は妻側からも起こせるが、こちらが先行して調停申立はしない方が良い。
・父親としての責任を果たせという姿勢だとうまくいかないことが多い。
・夫側が重荷に感じるようであると、面会交流の提案時期等も慎重に検討した方が良い。
・面会交流の条件はあまり厳しめにしない方が上手くいくことが多い。

 

 

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【絶対に離婚したくない(21)】(夫からの視点)子供との面会交流への力の入れ具合

2023.12.04更新

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1.面会交流のトピックスの重み


 例えば、奥様が突如お子様を連れて別居を開始し、お子様と自由に会うこともできなくなったとした場合、あなたとしては今すぐにでもお子様の元気な姿を確認したいと思うかもしれません。
 このようにあなたにとってお子様のことが非常に大事だとしても、奥様が離婚の調停を起こしたようなケースでは、面会交流は離婚の一つの条件としてしか議論されなくなってしまいます。
 他方で、面会交流の議論にばかり時間を割いてしまうと離婚するかどうかという問題の議論が疎かになりかねません。
 そこで、今回は、面会交流というトピックの取り扱い方等について解説します。

 

2.夫婦関係修復を目指す以上、一定の配慮をしながら進めていく


 夫婦円満を目指すケースでも、面会交流を強く希望する場合には、面会交流調停を起こすことを私は推奨しています。
 但し、夫婦円満を最終ゴールとする場合には一定の配慮が必要です。

(1)【配慮1】夫婦関係の問題を置き去りにしないこと
 お子様に会いたいという気持ちが逸ることは致し方ないと思いますが、そのことばかりを話題にしてしまいますと奥様が置き去りになってしまいます。そうしますと、当然、奥様からも、夫婦円満の真剣度を疑われることになってしまいます。
 そのため、まずは、奥様と子供達が自宅に戻ってきてもらうこと、元の生活に戻ってきてもらうことを強く希望していることをしっかりと伝え、奥様が今すぐ戻ることが難しいという場合には、まずお子様だけでも会わせて欲しいという伝え方をするのがベターです。
 要するに、夫婦円満を第一目標にしていると言うことを言葉でしっかりと調停委員や奥様に向けて表明しておくことが重要です。

(2)【配慮2】調停を起こす前に奥様側の意向・事情を確認しておく
 こちらから面会交流調停を起こす場合には、事前に奥様側の意向を確認した方が望ましいのは当然ですが、そのことに加え、仮に今会わせたくないという場合には、会わせたくない理由も確認しておくのがベターです。
 そもそも、先方が面会交流について拒否姿勢ではない場合、敢えてこちらから調停を起こす必要性は薄まりますし、また、いきなり調停を起こすと相手も反発してくる危険性もありますので、これらの確認をしておいた方が良いです。

(3)【配慮3】面会交流頻度
 ケースによっては毎週末面会交流するというケースもなくはないのですが、限られた例外的なケースです。一般的には面会交流頻度は月1回程度というのがオーソドックスですので、当初はこれ以上の頻回を求めない方が、相手の生活に配慮している姿勢を示すことができて良いことが多いです。
 もちろん、奥様によっては、お子様をこちらに預ける方が自由な時間ができて都合がよいと考える方もいますので、そのような場合には、出来る限り面会交流に応じた方が良いと言うこともあります。

 

(4)【配慮4】できる限り、こちらから先に調停を仕掛けない

 大事なお子様の話ですから、相手と話がうまくいかない場合、急いで面会交流調停を起こしたいと考えることも自然なことかと思います。

 ただ、こちらから先に面会交流調停を起こしてしまいますと、奥様は、あなたから先制攻撃を受けたという風に捉えてしまう危険性があるのは事実です。

 そのため、できる限り、奥様の方からの離婚調停を待ってから、その調停に被せる形で面会交流調停を起こす方が望ましいことが多いです。

 

 

3.面会交流の話題を取り上げるタイミング


 奥様の側も、あなたとお子様との関係を案じている場合には、奥様の側から面会交流の話題が出ることもあります。
 当然ながら、奥様側から面会交流の提案が出た場合には、あなたとしても、早くお子様達に会いたい旨を伝え、早期に面会交流の調整に入った方が良いかと思います。
 しかし、実際には、奥様側から面会交流の話題が出ることは稀で、奥様の方が話題にしたい離婚や婚姻費用の話ばかり言ってくるということの方が多いと思います。
 その場合には、すぐに面会交流の話題を出すのではなく、しばらく様子を見てから、面会交流の件に言及した方が良いというケースもあります。あまり急いで面会交流の話を始めると、奥様側から見ると、自分の離婚の要望が認められない中で、夫の要望を飲むことに強く抵抗してくることも多いからです。
 そのため、ひとまずは夫婦関係の修復に全力を注ぎたいという場合には、まずは夫婦関係の話に焦点を絞って対応し、妻側が離婚調停を起こしてきたタイミングで、こちらから面会交流調停を起こすという対応をすることが多い気がします(調停になって初めて面会交流を話題にするという意味です)。

 

 

4.面会交流の場を関係修復の糸口にすることは?


 お子様がまだ小さい年齢だというような場合には、奥様が面会交流に立ち会うというケースも多くあります。そうなった場合、面会交流の場が、奥様と直接顔を合わせる接点になるということもあります。
 このような場を関係修復の糸口にしたいというお話が出ることもあります。
 確かに、面会交流の様子を見て、奥様の方が離婚を取り下げるというケースもありますが、これは、あなたがお子様と自然に接し、その様子を見て奥様が心境を変化させるというケースの方が多いと思います。また、少なくともお互いが弁護士を立てているような場合には、あまり面会交流の場で奥様と込み入った話をすることは避けた方が良いです。
 さらに、関係修復を狙っているというところが奥様に伝わってしまうと、奥様の目から見ると、「お子様をダシに使っている」と感じてしまい、夫婦関係は余計にこじれてしまうと思います。
 そのため、少なくとも面会交流であからさまに夫婦修復を狙っているような行動や言動は避けた方が良いかと思います。

 

 

5.まとめ


・夫婦円満を目指す以上、以下の点に配慮した方が良い。
 1)夫婦円満が第一目標であることをしっかりと調停の場で示すこと
 2)事前に相手の意向をしっかりと確認すること
 3)あまり頻回を求めないこと
・夫婦関係修復に全力を注ぐために、一旦面会交流の話題は封印するという対応を取ることもある
・面会交流の場を夫婦関係修復の糸口としてあからさまに利用することは避けた方が良い。

 

 

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【絶対に離婚したくない(20)】相手が浮気している可能性が高いが、どうすればよいか?

2023.11.20更新

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1.相手の浮気の話題が出ることは多い。


 弁護士にご相談されるケースでは、パートナーが突如家を出てしまったというケースが多いので、浮気を疑っている方も多いと思います。何も事情がなければ、あなたと直接話し合いをするはずなので、そのような話し合いを何もせずに出て行ったところから、「浮気しているんじゃないか?」と疑ってしまうのです。
 ただ、私が相談を受けたり、実際に担当したケースでは、相手が浮気している確たる証拠が得られないケースの方が大半です。
 パートナーが突然出て行ってしまったのですから、浮気を疑う気持ちもやむを得ないとは思いますが、実際に浮気しているケースはかなり少ないのではないかと感じることが多いです。

 

 

2.まずは浮気の証拠集め


 浮気の疑いがある場合、まずは、その証拠集めが非常に重要になります。
 なお、「浮気の証拠」というのは、俗な言い方になってしまいますが、パートナーが第三者と性交渉を持ったことの証拠でして、例えば、「第三者と二人で食事に行った」といった証拠ですと不十分ということになります。
 調査会社に依頼して調査してもらうという方法もありますが、かなりコストがかかってしまいますので、費用との相談ということになろうかと思います。

 また、パートナーの了解を得た上で、携帯電話やクレジットカードの明細書などを見ることができれば、そこから、浮気の証拠を得られる場合もあります。
 更に、パートナーとの会話を録音し、その中で浮気、すなわち第三者との性交渉を明確に自白した場合には、それも立派な証拠になります。
 このような証拠集めが重要になってくるのは、裁判などになった場合、相手が浮気の事実を否認してくるケースが多いからです。そうなった場合、こちらからしっかりとした証拠を突き付けないと、裁判所で浮気の事実を認めてもらうことができません。

 

 

3.浮気の証拠を掴んだらどうするべきか


 浮気の証拠をつかんだ後は、あなた自身今後夫婦関係を修復したいのか、離婚したいのかについてじっくりと考えて下さい。
 浮気が疑惑の段階では、夫婦関係を修復しようと考えていたとしても、証拠を通じて、パートナーが他の女性・男性と仲睦まじくしている様子を見て、「修復の気持ちがなくなってしまった」とか「修復しようとしていた自分が馬鹿らしく思えてきた」という方もいます。
 まずは、今後の生活、将来のことも見据えながら、あなたにとって離婚する方が良いのか、夫婦関係を修復する方が良いのかをじっくりと考えてみてください。

 

また、このような検討にあたっては、相手の考えも聞きたいということも多いと思います。

そのような場合には、配偶者に直接不貞のことを追及して、どう思っているのかを確認していくことになります。

もちろん、その際の配偶者の口ぶりなども、今後あなたがどうしていった方が良いのかを考えるにあたって重要な判断要素になると思います。

 

なお、このように追及する際に、不貞の証拠を突き付けるのが良いのか?と質問されることが多いのですが、弁護士としては「なるべく証拠は見せないで話をして下さい」とアドバイスすることが多いです。理由としては、①証拠を見せてしまうと、相手がそれに対して対策する危険性がある、②証拠収集ルートによっては、相手から「そこまでするなんて信じられない」という言いがかりを受けるリスクがある(例えば、「調査会社の調査報告書で浮気してることは分かってるんだよ」と伝えたところ、相手から「探偵雇うなんて信じられない。」とか「はなから疑っているから探偵を使ったんじゃないか。そんな人は信用できない」などと言い始めるリスクがあるという意味です)

 

 

4.夫婦関係の修復を希望する場合どうすべきか


(1)パートナーも修復を希望する場合
 夫婦関係の修復を希望する場合、パートナーに浮気の話を直接伝えて、パートナーの意見を聞くことから始めましょう。
 パートナーも修復を希望する場合、誓約書を作成するなどして、一旦は矛を収めるケースが多いと思います。その場合でも、パートナーから慰謝料をもらい、一つのけじめとすることもあります。
 不倫誓約書にどのような内容を盛り込むべきなのかについては、以下のブログも参考にしてみてください。

※【素人でも作れる!】弁護士が教える不倫誓約書作成完全ガイド

(2)パートナーが離婚を希望する場合
 パートナーが離婚を希望する場合、誓約書にサインを求めることは難しいと思いますので、相手の出方を見ながら、対応を検討していくことになります。
 なお、パートナーが「不倫相手にぞっこん」というような場合には、不倫相手に対して慰謝料請求をするという対応をすることもあります。
 また、パートナーの両親等に間に入ってもらい、冷静になってもらう働きかけをしてもらうこともあります。パートナーが浮気をしているのですから、その両親等もあなたに協力してくれることが多く、そのことでパートナーにも頭を冷やしてもらうことが期待できます。

 

 

5.浮気の確たる証拠があると、相手からの離婚請求は簡単に認められなくなる


私が相談に乗っていますと、浮気の証拠があると相手から慰謝料をもらえるという話は知っていても、相手からの離婚請求が認められにくくなる、ということについてはあまりご存じではない方もいらっしゃいます。
 しかし、相手が浮気をしている場合、有責配偶者という扱いになりますので、その離婚請求の難易度は非常に高くなります。
 このように浮気の証拠は、相手からの離婚請求を封じ込めるという役割も果たすのです。

 

 

6.どこまで争うかは応相談


 前述のように相手の浮気の確たる証拠がある場合、仮に相手が離婚裁判を起こしてきても、浮気の証拠を突き付けて、「離婚を認めない」という判決を獲得するという方法もあります。
 相手の身勝手な行動を戒める観点からは、そのような選択も十分あり得ると思います。
 しかし、離婚裁判にまで発展してしまいますと、現実的には夫婦関係の修復は難しいことが多く、離婚裁判の中で離婚に応じるという選択をなさる方がいるのも事実です。
 この点は、あなた自身の将来に関わる大切なお話ですので、弁護士とも相談しながら、どこまで争っていくのかは慎重に見極める必要があると思います。

 

 

7.まとめ


・相手の浮気を疑われる方は多いが、実際にその証拠を掴むことができたケースは少ない印象である。
・浮気の疑いがある場合、まずはその証拠集めをする必要がある。
・証拠がつかめた段階で、あなた自身夫婦関係を修復したいのかどうかを見つめ直す必要がある。
・相手も修復を希望した場合、相手に誓約書を書かせて矛を収めるケースが多い。
・相手が離婚を希望した場合、その出方を見ながら、こちらも対応を検討する必要がある。
・少なくとも、浮気の確たる証拠があれば、相手からの離婚請求は簡単に認められなくなる。

 

 

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【絶対に離婚したくない(19)】夫婦関係修復に要する期間はどのくらい?

2023.11.13更新

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1.非常に残念ながら夫婦関係修復そのものが難しいケースが多い


 あなたとしては、パートナーが突如出て行ってしまい、子供とも離れ離れ、または、子供を置いて行かれ、今後の生活に強い不安を感じるということも多いと思います。
 その様な中でこのような話をすることは心苦しいのですが、夫婦関係修復に努めても、残念ながら修復が成功しないケースも多々あります。

 もちろん、私が代理人として活動する場合には、修復のためにあらゆる方法を探っていきますが、それでも、最終的には離婚になってしまうことはかなり多いです。

 「夫婦関係修復期間」というお話をしますと、「この弁護士にお願いすれば、時間がかかっても夫婦関係を修復してくれるんだ」と誤解してしまう人もいるかもしれませんが、そのように簡単な話ではないということはまず頭に入れておいて頂ければと思います。

 

2.まず最初にお話するのは「焦らないこと」


 前述の通り、あなたとしては将来に対しての不安が強いので、早く夫婦関係を修復したいと考えるかもしれません。
 しかし、私の方からは、「焦らないこと」をオススメすることが多いです。
 残念ながら、あなたが弁護士に相談しようと考えているということは、「相当深刻な状況」のことが多いです。
 そのため、あまり焦ってしまいますと、夫婦関係の修復そのものが上手くいかなくなってしまうことも多いのです。
 このように、焦ると夫婦関係修復の可能性がゼロになってしまうこともありますので「焦らないこと」をオススメするのです。

 

3.修復ありきで強気に出ないこと


 私が相談に乗っておりますと、妻が突然出て行ってしまったとか、夫が弁護士を立てて離婚を突き付けてきたという場合でも、何故かご本人が強気で、「相手の離婚要求なんてねじ伏せてしまって下さい」とか「とても本気だとは思えませんので、軽くあしらって下さい」などと言ってくる方もいます。
 ただ、相手の「本気度」を見誤ってしまいますと、夫婦の関係は余計にこじれてしまって、夫婦関係修復の道が完全に閉ざされてしまうことも多くあります。
 非常に残念ながら、私が実際に担当したケースでも、夫婦関係の修復に導くことができたのは、「ほんの一握り」というのが実態です。
 そのため、夫婦関係修復そのものがそれなりに難易度が高いものだということはしっかりと自覚した上で対応していく必要があります。

 

 
4.修復までに要する期間はケースによってかなり差が大きい


 私が直接担当したケースや、私が相談を受け、ご本人が対応することで修復に結び付いたケースなどを見ておりますと、修復までに要する期間は、「かなりばらつきが大きい」というのが率直な感想です。
 ただ、手続きがどの程度進んでしまったのかに応じて、一定の傾向などをお示しすることはできますので、以下解説していきます。

 

5.【ケース1】相手が弁護士を立てずに対応したケース


 相手が突如別居を開始してしまったり、調停を起こしたりなどしたが、結局弁護士を立てなかったケースです。
 このケースですと、夫婦関係修復までにあまり期間を要しないケースも多い印象です。
 本当に短期間のケースですと、①妻の短期間の家出ということで1か月くらいで解決しました、とか、②夫の海外出張に同行するという大きな決断をすることになりましたが、同行して生活していくと円満な家庭を築けていますといったお話を伺うことも多いです。
 他方で、夫婦関係の軋轢が深く、①一旦はこのまま別居させて欲しいと言われてしまい半年は別居期間が続きました、とか、②調停委員からもあまり焦らない方が良いと言われてしまい、1年別居を経ての同居再開という条件になってしまいました、といったお話を聞くこともあります。

 

6.【ケース2】相手が弁護士を立ててきたケース


 相手が弁護士を立ててきたケースですと、残念ながら、夫婦関係修復の可能性が下がる傾向が強いです。
 相手も弁護士を立てているくらいですから、離婚の意思が強いことが多く、どうしても夫婦関係修復に向けての話し合いに進まないことが多いのです。
 私が実際に担当したケースでも、夫婦関係修復までの期間は様々という印象でして、①半年ほどの調停期間を経て無事に同居にまで結びつけられたというケースもあれば、②調停自体は4か月ほどで終了したのだけれども、そのあと2年ほどが経ってようやく家族同居にこぎ着けたというケースもあります。

 

7.【ケース3】相手が弁護士を立てて離婚裁判を起こしてきたケース


 はじめにお話しておきますが、離婚事件についてはいきなり裁判を起こすということはできません。特別な事情がない限り、まずは、離婚調停という手続きを踏んだ後でないと、離婚裁判を起こすことはできないのです。
 このようにして、相手が離婚調停を起こし、その後、離婚裁判まで起こしてきたという場合でも、相手の離婚請求棄却、要するに、裁判所から「現時点では離婚不相当」という結論を得たことはあります。
 ただ、その場合でも、夫婦関係の修復に結び付いたのかと言いますと、残念ながら、冷却期間が長引いているだけとなってしまうことが多いかと思います。
 離婚裁判はそれ自体がお互いにとって負担が大きく、結論として「現時点では離婚不相当」という結論を得ても、なかなか夫婦関係修復の道筋を描くことが難しいのです。

 

8.まとめ


・私の方からは、まず「焦らないこと」をお伝えすることが多い。
・修復ありきで強気に出ると、夫婦関係修復そのものの可能性がゼロになってしまうことが多いので、注意が必要である。
・修復期間はケースによって様々なので一概に期間を申し上げることは難しい。
・相手が弁護士を立てずに対応した場合、比較的、修復期間は短期間のケースが多い印象である。
・逆に、相手が弁護士を立ててきた場合には、修復そのものが難しいケースも多く、また、修復の期間はさまざまである。
・相手が弁護士を立てて離婚裁判を起こしてきた場合、仮に結論としてこちらが勝訴しても、修復の道筋は描きにくいことが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に離婚したくない(18)】弁護士を立てる場合のベストなタイミングは?

2023.10.30更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

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1.弁護士を立てるタイミングの見極めは大切


 私が相談を受けておりますと、いつ弁護士を立てるのが良いのか、そのタイミングについて質問を受けることも多いです。
 そして、弁護士によっては、「すぐに弁護士を立てた方が良い」と言ってくる弁護士も相当数いるのが事実です。
 ただ、よく考えてみますと、こちらはパートナーと夫婦関係を修復したいのであって、対立したいわけではありません。
 弁護士を立てるタイミングはケースによって様々なのですが、いくつか場合分けをして解説していきます。

 

 

2.【ケース1】相手がまだ弁護士を立てていない場合


 相手が別居をスタートさせてしまったとか、相手から離婚調停を起こされてしまったというような場合でも、まだ相手が弁護士を雇っていないようでしたら、こちらもまだ弁護士は立てない方が良いと思います。
 理由は大きく二つあります。
 まず、理由の一つ目は、弁護士の役割にあります。弁護士は、残念ながら相手と対立し、本人利益の最大化を図るという性格がありますので、相手の目から見て、「弁護士を雇って攻めてきた」と感じてしまうのです。あなたとしては、相手とケンカをしたいわけではなく、関係を修復したいわけですから、弁護士を立てることが、相手に誤ったメッセージになることは避けた方が良いと思います。

 もう一つの理由は、間に弁護士が入ることで直接の会話がしにくくなるということが挙げられます。
あなたが弁護士を雇うということは、あなたの窓口が弁護士になるということを意味しますので、相手とのやり取りは基本的に全て弁護士を通じて行うことになります。
 そのため、残念ながらあなたが相手と直接話をする機会が減ってしまう側面が否定できません。
 私が夫婦円満のケースを多数取り扱っておりますと、弁護士を雇わないことで、夫婦関係を無事修復できたというお話をなさる方も多くいらっしゃいます。

 

3.【ケース2】相手が弁護士を立てたが、まだ調停等は起こしてきていないケース


 このケースは、相手が弁護士を立てているものの、まだ調停といった裁判所の手続きにはなっていないケースです。
 既に相手が弁護士を立てているものの、まだ裁判所の手続きになっていないのですから、極力こちらは弁護士を立てないことをオススメすることが多いです。
 既に相手が弁護士を立ててしまっていますので、相手と直接話をすることは難しくなってしまっているのですが、かといって、こちらが弁護士を立てると、前述のように、相手の目から見て、敵対行動と捉えられかねません。
 そのため、極力こちらは弁護士を立てないことをオススメすることが多いのです。
 但し、相手は弁護士ですから、対応を誤りますと、今後の進行にも悪影響が生じる場合があります。

 そのため、相手の弁護士と直接電話で話をすると「言いくるめられそう」だとか「一方的に攻められて気落ちしてしまいそう」といった不安があるようでしたら、相手弁護士とのやり取りを書面に限定するという進め方をオススメしています。
 要するに、あなたの意見などは、書面にして郵送で相手の弁護士事務所まで郵送するのです。こうすることで、相手の弁護士と直接会話して、「余計な話をしてしまう」という心配はありません。

 

4.【ケース3】相手が弁護士を立てて調停などの手続きを取ってきた場合


 相手が弁護士を立てて、調停などの裁判所の手続きを踏んできたケースです。
 この場合には、裁判所の手続きが始まってしまっていますので、あなたも弁護士を立てることをオススメすることが多いです。
 裁判所の手続きが始まってしまいますと、弁護士なしで対応することはリスクが大きいと感じるからです。
 ただ、弁護士を雇うタイミングは別途相談とさせて頂くことが多いです。
 と言いますのは、相手が「調停を起こす」と話していても、なかなか実際の調停が始まらないというケースもありますので、そのような場合には、こちらが弁護士を雇うのは、家庭裁判所から調停の案内が来た後からにするというケースも多いです。
 いずれにしましても、裁判所の手続きとなると、あなたにとっても不安が大きいと思いますので、早めに弁護士に相談し、弁護士を雇うタイミングも含めてご相談なさることをオススメします。

 

5.上記の解説は、一般的なケースであって、あなたの場合当てはまらないこともあり得る


 以上のような解説は、一般的なケースの解説でして、あなたのケースで確実に当てはまるとは限りません。
 いずれにしましても、今後のことなどに不安があるような場合には、一度弁護士に相談だけはしてみることをオススメします。
 どうしても不安が大きいので早めに弁護士を雇うということもあり得るでしょうし、逆に、今は弁護士を雇わない方が良いことが分かって安心したということもあり得ると思います。

 

6.まとめ


・あなたが夫婦関係の修復をしたいという場合には、弁護士を雇うタイミングは慎重に検討する必要がある。
・少なくとも、相手がまだ弁護士を立てていない場合や、弁護士を立てていても裁判所の手続きに入っていない場合には、こちらが弁護士を立てることはあまりオススメしない。
・相手が弁護士を雇って調停を申し立ててきた場合には、こちらも弁護士を立てた方が良い。
・今後のことなどについて不安が大きいようであれば、早めに弁護士に相談だけでもしてみると良い。

 

 

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【絶対に離婚したくない(17)】セカンドオピニオンの活用法

2023.10.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。諦めるのはまだ早い、最後の最後まで離婚回避に尽力する弁護士の立場から詳しく解説していきます。
※実際の夫婦修復成功実績は文末の「関連記事」をご覧下さい※
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1.セカンドオピニオンとは?


 セカンドオピニオンとは、今雇っている弁護士の弁護活動や弁護方針などに疑問を感じ、別の弁護士の意見を聞いてみるというものです。
私は、夫婦関係修復の事件を多数取り扱っておりますので、夫婦関係修復の件でセカンドオピニオンを求められることも多くあります。

 

 

2.セカンドオピニオンの限界


 セカンドオピニオンは、現在あなたが雇っている弁護士よりも、より客観的に状況を把握する利点があります(あなたが雇った弁護士は、あなたと一緒に事件を戦っているため、どうしてもあなたの味方としての立場が表れてしまっていて、客観的な状況把握がしにくくなっていることもあります)。
 また、あなたが今雇っている弁護士の方針に疑問や不安があった場合、セカンドオピニオンで、その弁護士の方針に誤りがないと聞くことができれば、大きな安心材料になります。
 そのため、セカンドオピニオンは、「今雇っている弁護士と違う意見を聴く」ということではなく「今雇っている弁護士と同じ意見を聴いて安心する」というメリットもあります。
 ただ、セカンドピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限があることは否めません。

 

3.あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない


 たまに、今後の手続や結論への不安が強く、何人もの弁護士にセカンドオピニオンを繰り返しているという方もいます。
 前述のように、セカンドオピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、「弁護士によって少しずつ言うことが違う」と感じることも出てくるかと思います。
 そうなると「沢山の弁護士に話を聞いて、余計混乱した」とか「余計に不安が増してきた」ということにもなりかねません。
 そのため、セカンドオピニオンを求めるにしても、多くても2,3件程度にとどめておいたほうが良いと思います。

4.定期的アドバイザリーは?


 セカンドオピニオンからさらに進んで、今の弁護士を雇いながら、定期的なアドバイザリーをお願いしたいと依頼されることもあります。要するに、今の弁護士に引き続き弁護活動を行ってもらいながら、随時、私のセカンドオピニオンとしてのアドバイスを継続的に得られるようにする契約のことです。
 ただ、定期的アドバイザリーは、裁判所の法廷・調停室に足を運ばずに弁護士がアドバイザーになるというものですので、どうしても、裁判所が考えている方向性とずれてしまう側面が否定できません(実際に法廷に足を運ぶと、裁判官の発言や表情を直接見聞きできますので、アドバイザリーとして、そのような直接見聞きができないという点は大きなビハインドと言えます)。
 そのため、私自身は、そのような定期的アドバイザリーを引き受けることはしていません。
 他の弁護士も、「定期的アドバイザリーは引き受けない」という弁護士も多くいますので注意が必要です。

5.今雇っている弁護士を変えたほうが良いのか?


 セカンドオピニオンを受けていると、「今雇っている弁護士を変更したほうが良いのでしょうか?」という質問を受けることもあります。
 ご本人様が不満を述べられる事項としては以下のようなものがあります。
  ①今雇っている弁護士の返事が遅い。
  ②今雇っている弁護士の書面の作成が遅い。
  ③本当は打ち合わせをして話をしたいのに、忙しいからということで電話でしか話をしてくれない。
  ④こちらは夫婦関係を修復したいのに、離婚を勧められる。
  ⑤全体から見ると大きな事項ではないけれども、今雇っている弁護士の方針が理由なく変わることがある。
  ⑥一生懸命対応してくれているけれども、夫婦関係の事件をあまり取り扱ったことがない弁護士なので不安がある。

 ただ、私が詳しくお話を聞きますと、①や②については、そこまで弁護士の返事や書面作成が遅いわけではないと感じることも多いです。また、③から⑤についても、その弁護士として考えるところがあって、そのようにしていることも多い気がします。
 そのため、私が途中から交代して弁護につくことは、「ごく少数」という印象です。

6.セカンドオピニオンのタイミングは?


 今雇っている弁護士の弁護活動や弁護方針等について、複数疑問や不満を感じた場合には、「早めに」セカンドオピニオンを受けることをオススメしています。
 前述のように、セカンドオピニオンで私がお話を聞いておりますと、今雇っている弁護士の弁護活動等が許容範囲内と感じることが多いので、私の方から「特に大きな問題はないと思いますよ」とお話することで安心してお帰りになる方が多いからです。
 「今雇っている弁護士の言っていることは本当に正しいのだろうか?」という不安を持ったままですと、今後の対応にも不安が募っていくと思いますので、何か不安事等があれば早めにセカンドオピニオンの利用をお考え下さい。

 

7.インターネットで調べた情報を鵜呑みにしない


 今雇っている弁護士に不信を感じた場合、簡単な手段として、インターネットで検索したり、インターネット経由で質問してみるという方法があります。既に弁護士に不信を感じているので、また新しい弁護士に直接会って話をすることを負担に感じてしまう方も多く、インターネット検索等で調べられれば簡便で済みます。
 このようなインターネット検索を参考程度にするのは構わないと思いますが、その内容を鵜呑みにすることはオススメしません。
 インターネットで調べますと、あなたのケースと似たような事例で、大きな利益を得られたというような記事などを見かけることもあります。ただ、その事案はあくまであなたのケースと「似た事案」であって「同じ事案」ではありません。
 また、インターネットの情報は残念ながら法律的に十分精査されていない情報も多く、これを鵜呑みにすることはリスクが大きいのです。
 更に、インターネット上で質問できるサイトなどもありますが、そのようなサイトでは、あなたが持っている実際の資料などは見ないで回答しなくてはいけませんので、資料上の限界があります。
 いずれにしましても、インターネット上には様々な情報があふれていますので、ネット検索をして、それを鵜呑みにすることはかなり危険だと思います。

 

 

8.仮に弁護士を変更する場合の受任タイミング


 どうしても今雇っている弁護士への不信感が拭えないというような場合には、今の弁護士とは弁護士契約を解除して、私が交代で対応するということもあります。
 交代のタイミングとしては、今の調停が審判や訴訟になったときなどの節目の時にすることもありますし、早めに弁護士を切り替えたいということで早めに切り替えるということもありますので、ケースによって様々ではないかと思います。

 

 

9.まとめ


・セカンドオピニオンは客観的な意見を聴けることが多いが、時間的・資料的限界がある。
・あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない。
・定期的アドバイザリーについては、そもそも、そのような契約形態は引き受けないという弁護士も多いので注意が必要である。
・今雇っている弁護士を交代させたほうが良いというケースは稀である。
・今雇っている弁護士に不安などがあったときには、早めにセカンドオピニオンを受けた方が良い。
・セカンドオピニオンの代わりにインターネット検索するというのはリスクが高いのでオススメしない。
・弁護士を交代するタイミングはケースによって様々である。

 

 

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