離婚問題

【絶対に夫に親権を渡したくない(12)】子供が不登校になっていることはどの程度不利になるのか?

2022.02.28更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、お子様の不登校にスポットライトを当てて解説していきます。
 なお、お子様の不登校については、①お子様が同居中から不登校だった場合と、②お子様が同居中は不登校ではなかった場合とで状況が異なりますので、場合分けして解説していきます。

 

 

2.お子様が同居中から不登校だった場合


 お子様が同居中から不登校だった場合、その責任があなたの方だけにあるというケースはごく少数だと思います。
 夫が頻繁にモラハラ発言に及ぶような場合、あなたに対して「専業主婦なんだから、子供を学校に行かせられないなんてありえない」とか「学校に行けないなんて子供を不幸にしている」とか色々と言ってくるかもしれませんが、逆に、夫側は奥様に育児を任せっきりにしていたので、このような事態になっているので、奥様だけの責任とは言えないと思います。

 ただ、同居中から不登校だった場合でも、別居後徐々に学校に行けるようになった方が、お子様のためになることは間違いありません。
 そうはいっても、お子様が学校に行くという状況を無理に作り出すことは、かえってお子様の負担を増やすことにもなりかねませんので、スクールカウンセラーやお近くの子供家庭支援センター、療育施設や小児心療内科等にもご相談されながら、お子様にとって最も良い方法を模索していくことが重要かと思われます。

 

 

3.お子様が同居中は不登校ではなかった場合


(1)どのように対策すべきか
 お子様が同居中は不登校ではなかったのに、別居後に不登校になったような場合、特に夫側からは、奥様の育児についての批判を強めていくと思いますし、親権獲得にあたっても重要なポイントになりますので、不登校になった原因をしっかりと究明していくことが重要になります。
 特に、夫との同居中は、家族全員が夫に従わざるを得ず皆が窮屈な生活を送っていたというような場合、同居中は、学校に行かないと夫から何を言われるか分からないという強迫観念から登校していたが、いざ別居すると、そのような強迫観念から解放されたが、他方で、力が抜けてしまって登校できなくなってしまうとか、同居中の心理的ストレスの影響が別居後に大きく表れるというケースもあります。

 同居中は登校していたのに、別居後不登校になったというような場合には、同居中の心理的ストレスが非常に大きかったというケースも多いので、スクールカウンセラーやお近くの子供家庭支援センター、療育施設や小児心療内科等にもご相談されながら、丁寧に不登校の原因を究明していく必要があります。
 このような原因究明の結果、お子様の不登校の原因が同居中の夫からの言動に起因するような場合、あなたの責任ではありませんので、不登校そのものが親権獲得にあたりあなたに不利になることはほとんどないかと思います。

(2)具体的にはどのような例がある?
 同居しているときは、学校に登校できていたのに、別居してから学校に登校できなくなってしまったケースとして、私自身が担当したケースとしては以下のようなものがあります(もちろん、実際にはもっと様々なケースがあると思いますが、私自身が担当した事件としての事例として以下のようなケースがあるという意味です)。
①夫側が非常に厳格な人間で、同居中は夫の目もあって不登校など許されるような雰囲気がなかったが、別居すると緊張の糸が切れたように登校できなくなってしまった。

②夫は妻に対して事あるごとに暴言を吐いており、妻が家庭内で一番立場が下であった。別居後も、そのような立場関係が引き継がれてしまい、子供が妻の言うことを全く聞かなくなってしまって登校も拒否するようになった。

③元々学校のカリキュラムが厳しく、お子様に合っていなかったが、別居後にその問題が一層顕在化して、不登校になった。

④別居後も新型コロナウイルス感染予防の観点から学校のオンライン授業期間が長く、自宅での生活が乱れてしまったせいで、いざ通常授業が始まっても登校できなくなってしまった

 

 

4.まとめ


・お子様の不登校の問題については、同居中から不登校だったかどうかが一つの大きなポイントである。
・同居中から不登校だった場合、別居後も不登校が続いても、そのことだけで親権者として不適格ということにはならない。
・同居中は登校していたのに、別居後不登校になった場合には、不登校になった原因の究明が非常に重要になる。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(11)】うちの夫は結構「育メン」なんだが大丈夫か?

2022.02.21更新

弁護士秦

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「夫側が育メンの場合」にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.育児負担がほぼ夫婦対等という場合、徹底的な準備が必要


 一概に育メンと言っても、実際には夫側の関わり方は多様でしょうし、その割合にも差が大きいのが一般的かと思います。
 例えば、週末の土日のどちらかは、夫側が食事の支度も含めてすべて担当するという関わり方であったり、共働きなので平日も含めてほぼ育児負担は対等だというケースもあると思います。
 特に、共働きで、かつ、平日も含めて育児負担がほぼ対等だというケースですと、親権について夫側が強く争ってくることも想定して、あなたの方でも徹底的に準備していく必要があります。
 なぜなら、別居前の育児の負担度合いが、親権者を決めるに当たって最も重視される要素だからです。

 ただ、具体的に何をどのように準備するのかという点を解説する前に、今あなたが置かれている状況によって、勝率が大きく変わってきますので、その点についてまずは解説します。

 

 

3.あなたが置かれている立場(あなたが現在お子様を育てているのかどうか)


(1)あなた自身がお子様を今育てているケースの場合
 以下は、あなた自身が現在お子様と暮らしており、お子様自身もその暮らしに大きな不満を持っていないという前提でのお話になりますが、しっかりと基本的な準備を整えておけば、勝訴の可能性はかなり高いと考えてよいと思います。

そして、この場合の基本的な対策の最重要ポイントになるのは、この現状の監護状況を極力長期化させることです。もちろん、お子様自身が夫側との生活を強く望んでいるのに、無理やりこちらとの生活を長期化させるようなことはしてはいけませんが、お子様自身も望んでいるようでしたら、現状の状況を長期・安定化させることは、お子様のためにもなります。
特に、夫側は監護者指定審判の申立をしてきたり、面会交流の機会を利用して、連れ去りやお子様への圧力を強めるといったことも考えられますので、夫側の対応に応じて、こちらも対策を練る必要があります。

 

(2)あなたがお子様と一緒に生活していない場合
まず、あなたが現在お子様を育てていない状況になった経緯が非常に重要になります。大きく分けると、①旦那側がお子様を連れ去ってしまったケースと、②(体調や仕事その他の理由で)あなた自身が旦那側にお子様の監護を委ねたケースの二つに分かれると思います。

ア 旦那側がお子様を連れ去ってしまったケース
 この場合、旦那側がお子様の育児を一手に担うという状況が長期化することを防止する必要があります(この状態を認めると、親権紛争で大きく不利になってしまうため)。
 そのため、この場合には、離婚や親権の紛争の前に、まずは、監護者指定・子の引き渡し審判の申し立てをしていくことになります。
 要するに、離婚が成立する前には夫婦がお子様の共同親権をお互いに持っていますが、その中でもお子様の実際の身の回りの世話をする方(監護者)を決めるよう裁判所に求めるのです。
 この監護者指定手続きで勝訴することができれば、今後の親権紛争でも一歩リードすることができます。
 監護者指定手続きの勝率については、①別居前の監護状況(要するに、夫婦どちらがメインで子育てに関わってきたのか)、②連れ去りの経緯、③お子様の意思等を考慮して決定しますので、一概にあなたが有利と言い切れるものではありません。
 いずれにせよ、監護者指定審判を申し立てるにあたっては、弁護士はほぼ必須になりますので、弁護士に頼む前に、あなたの具体的な事情を説明して、勝率等を尋ねてみたほうが良いと思います。

イ あなた自身が旦那に育児を委ねたケース
 この場合には、①あなたが育児を委ねた経緯・理由、②旦那側のみが育児を担ってきた期間がどのくらいの期間に及ぶのか、③現在はあなたがお子様を育てられる事情の詳細、④お子様の意思等を考慮して夫婦どちらが親権者として適格か判断されます。
 特に、旦那側のみで育児をしていた期間が長期間に及べば及ぶほどこちらには不利になっていきます。
 この点も、上記の①から④を含めた様々な事情を考慮して、親権者の適格性が決まりますので、詳しくは弁護士に相談することをオススメします。

 

 

4.どのような対策を取るべきか


(1)どのように対策すべきか
 あなたが現在お子様を育てている場合とそうでない場合の対応は上記の通りです。
 それでは、この点を一旦置いたうえで、どのような対策が必要なのかについて解説していきます。
 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 夫側が育メンだという場合でも、上記の7個のポイントが重要になることは変わりありません。
 そのため、それぞれのポイントに応じて対策を取っていく必要があります。
 上記の「1)現在の監護状況」については、既に前述したとおりです(あなたがお子様を育てているのかどうかで場合分けしてご説明いたしました)。
 特に、相手が育メンだという場合の対策では「2)(別居前の)監護実績」と「4)過去の児童虐待の有無・程度」が非常に重要なポイントになります。

(2)別居前の監護実績
 要するに、別居前に、育児をどのように分担して担ってきたのかというお話です。
 この別居前の監護実績の準備にあたっては、(お子様の年齢がまだ幼少の場合には)お子様の連絡帳が非常に重要な役割を果たします。特にきめ細かく保育園・幼稚園との連絡やり取りをしている場合、誰が連絡帳を記帳していたのか、誰が園への送迎をしていたのかといった点がかなり明確に分かるケースも多く、非常に有力な証拠とされることが多いです。
 また、あなただけがお子様と一緒に出掛けた際の写真、お子様に料理その他家事を手伝ってもらったとか、一緒に家事を行った写真などの証拠があれば、あなたの育児の実績を客観的に証明できますので、これも有力な証拠となり得ます。

(3)過去の児童虐待の有無・程度
 夫側が育メンという場合、お子様に熱心過ぎる反面、躾の範囲を超えて手が出るとか、怒鳴りつけるとか、度を越してしまっている場合もあります。
 いくらお子様とのかかわりが深いとは言っても、その関わり方が虐待に陥ってしまっているような場合には、夫側は親権者としてふさわしくありません。
 このような虐待の証明が容易であれが問題はないのですが、その証明が困難な場合、夫側は虐待の事実を認めないことも多いので、要注意です。
 夫側の暴力でお子様が怪我をなさっているのであれば、診断書や痣の写真、夫側が暴言を吐いているようであれば、その録音などがあると、暴力や暴言を直接証明できますので、非常に有力な証拠になります。
 このような明確な証拠がない場合でも、対策の方法はありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

5.まとめ


・育児負担がほぼ対等だったような場合には、徹底的な準備が必要になる。
・現状あなたが子育てを担っている場合、基本的な準備を怠らなければ勝訴の可能性は高い。
・現状あなたが子育てを担っていない場合には、大きく以下の2パターンがある。
① 旦那側が連れ去った場合→まずは、監護者指定審判事件の対応を要する。
② 旦那側にこちらから委ねた場合→その経緯等の詳しい事情の確認が必要になる。
・そのほかの対策としては「別居前の監護実績」と「過去の児童虐待の有無・程度」が重要なポイントになる。
・この二つのポイントについて、どこまでの証拠を揃えられるのかが非常に重要である。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(10)】夫が親権にこだわる思惑は何か?

2022.02.07更新

弁護士秦

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、夫側の思惑にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.大半のケースは、夫側のお子様への愛情の強さの表れというケースである


 今回のブログのタイトルが「夫が親権にこだわる思惑」としているため、実際にはお子様への愛情以外の理由で親権を主張する夫が多いという印象を与えてしまったかもしれません。
 ただ、実際、私が様々なケースを担当しておりますと、親権問題について激しく対立するケースでは、夫側がお子様への愛情の強さがゆえに争っているケースが大半だと感じます。いわゆる「夫が子供を溺愛している」というケースが多いということです。

 しかし、この「溺愛」というのが、あなたの方でも理解できるような形であったり、方法であれば、家庭内の不和には結びつかないのですが、理解しにくい形であったり、その方法に違和感を覚えるようなものだと、そのこと自体が離婚理由になることもあります。
 いずれにしましても、夫側がお子様を溺愛し、親権について一歩も譲らないというような場合には、離婚紛争について裁判まで視野に入れなければならないケースも多いです。

 

 

3.少数ながら「お子様への愛情」とは言えないケースとは?


 前述の通り、夫側が親権を激しく争ってくるケースでは、夫がお子様を溺愛しているケースの方が多いとは思いますが、そうではないケースも相当数あります。
奥様の目から見ていても、同居中に夫側がほとんどお子様の面倒を見たことがないとか、お子様と週末一緒に遊ぶこともほとんどなかったというようなケースですと、とても、お子様への愛情から親権を主張しているとは考えにくいです。
そのような場合、夫側の思惑としてはどのようなものがあるのでしょうか。

 私が取り扱った事件では、以下のようなケースがありました。

(1)【夫側の思惑1】とにかく勝ち負けで主張しているというケース
 男性心理として、何としても妻よりも優位に立ちたい、負けたくないという発想の男性は相当数います。その場合、とにかく勝ち負けで物事を考えますので、親権だけではなく、離婚すべきかどうかについても争ってくるケースが多いです。要するに、自分が悪くないということを証明したいと考えるのです(自分が悪くないので、離婚する理由がないし、自分が悪くないので、子供も自分の手元で育てるという発想のようです)
 このような発想が非常に強い人物ですと、「離婚に応じる」イコール「自分に悪いところがあったことを認める」という考え方になりますので、離婚を断固拒否してくることも多いです。親権を譲ることについても、「これを譲る」イコール「自分が子供に悪いことをしたことを認める」という考え方になり、激しく親権を争ってくることも多いです。

(2)【夫の思惑2】後継者としての期待
 特にお子様が男の子の場合、自分の後継者として自分の手元で育てていきたいと考えるのです。
 このケースは、夫側の両親も同じような意向を持っているケースが多く、むしろ、夫本人よりも夫の両親が、孫の親権を手放したくないと強く考えているケースもあります。
 夫側が会社を経営していたり、家業を営んでいる場合には、その仕事を子供に引き継がせたいというのもあるのでしょうが、特に家業のようなものがないケースでも、自分の名前を残しておきたいとか、昔ながらの家督承継のように、いわゆる家を継がせたいという発想で親権を主張してくるケースもあります。

(3)【夫の思惑3】夫の利己的な考え
 最後にご紹介するのは、夫側の利己的な考えによるものです。
 例えば、奥さんやお子様達が全員別居してしまいますと、夫側は広い部屋にたった一人取り残されることになっていますので、単純に寂しいので、子供と一緒に暮らしたいとか、老後の心配等があるので、子供に身の回りの世話を期待しているといったケースが該当します。

 

 

4.夫の思惑は、親権紛争に影響するか。


 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 そのため、夫側の思惑は、親権の判断にあたって直接影響を及ぼす事情ではありません。
 ただ、事前に夫側の思惑を予測できれば、例えば、面会交流の回数を多少融通することで、離婚裁判を避けられるとか、対応に幅を持たせることもできます。
 そのため、今後の手続の選択や対応方針を決定するにあたっては、夫側の思惑が分かるようならわかっていた方がベターと言えます。

 

 

5.まとめ


・夫が親権を強く争うケースの大半は、お子様への愛情の強さによるケースである。
・少数ながら、以下のような理由で親権を争ってくるケースもある。
 ①勝ち負けで物事を判断するがゆえに争ってくる
 ②後継者として期待している
③利己的な考え方で主張している
・ある程度夫側の思惑が分かると、今後の対応等の判断の参考になる。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(9)】こちらの体調はどこまで考慮されるか?

2022.01.31更新

弁護士秦

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、こちら(妻側)の体調面にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.妻側の体調はどこまで重視されるか?


(1)旦那側からどのような言い分が述べられるのか?
 旦那側が親権にこだわりを見せる理由は様々なのですが、親権を争っている以上、その理由付けをしていく必要があります。簡単に言いますと、旦那のもとでお子様を育てたほうが良いという理由付けをしなくてはいけませんので、裏を返すと「妻のところで育てていくことは不適当だ」という主張を展開してくるのです。
 概要ですが以下のような主張がなされたりします。
① 同居中から妻は飲酒量が多く、酔ってしまうと子供の面倒がおろそかになっていた
② 妻は疲労のためかボーっとしていることが多く、調理している食材を焦がしてしまったり、キッチンでボヤ騒ぎになってしまったこともある
③ 妻は持病持ちで、症状が出ているときは数日寝込んでしまうこともあったので、その間子供の面倒を見られるはずがない
④ 妻は精神疾患を患っており、感情の制御が利かないので、子供にきつく当たっていないか心配である
⑤ 妻は元々朝が弱く、専業主婦をしているときから朝食の準備をしたことがないし、子供の通学準備等をしたことすらも一切ないくらいである
⑥ 妻は元々体が弱く、そのため、一度も社会に出て働いた経験がないので、子供を一人で育てていけるとは思えない。
 上記をご覧いただくと分かりますように、半ば言いがかりに近いような主張もありますが、裁判所が、あなたの体調面で不安を感じてしまいますと不利に扱われる可能性もありますので、十分注意する必要があります。

(2)体調面はどこまで重視されるか?
 大まかに言いますと、あなたの体調面で医師の正式な診断が出ているかどうか、その症状が日常生活にどの程度の支障を及ぼすのかが大きなポイントになります。
 逆に言いますと、あなたが日常生活で多少体調を崩すことがあったとしても、「病院に行くほどではない」ということであれば、体調面が親権争いで悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
 他方で、医師の診断が出ており、現在も通院中であるといった場合には、慎重に臨む必要になります。特に裁判所の手続きの中で、裁判所側からあなたのカルテの開示を求められるような場合には、裁判所もあなたの体調について不安を持っているという証拠ですので、必要に応じてカルテの詳細をしっかりと説明するなど、十分な準備を整えていく必要があります。

(3)体調不安を払しょくするには、働いてしまうことが端的ではある
 あなたが夫と離婚しお子様との生活を希望している場合には、遅かれ早かれ仕事に就くことが必要になってくると思います。
 そして、例えばフルタイムで週5日働いているようであれば、裁判所もあなたの体調について不安に感じることは少ないと思います。
 ただ、お子様がまだ幼いような場合には、とても週5日も働くことができないということも多いでしょうし、「働く」ということを優先した結果、お子様の育児がおろそかになってしまっては本末転倒です。
 また、専業主婦をしていた期間が長い場合には、急に週5日も働くということは一般的に難易度が高く、長続きしないこともあります。そのことであなた自身が大きく体調を崩してしまっては元も子もありません。
 そのため、実際に働き始めるということは、体調不安を払しょくする切り札になり得るものの、お子様の年齢や状況、あなた自身の体調も考慮しながら慎重に検討する必要があります。

 

(4)夫からのモラハラ等が体調不良の原因だという主張は有効か?
 私は、親権争いの事件だけではなく、モラハラ・DV離婚のケースも数多く手がけますので、「夫と一緒にいると滅入ってしまうが、別居して生活するとかなり安心して体調も良くなってきています」とおっしゃる方も多いです。
 ただ、あなたの主治医が、あなたの体調不良の原因を夫からのモラハラと明確に断言してくれれば良いのですが、なかなかそこまでは断言してくれないケースの方が多いと思います。
 そうすると、いくらモラハラ被害を数多く訴えても、そのことが体調不良につながっているということを裁判所に理解してもらうことは難しいと思います。
 もちろん、そのモラハラの内容が暴力にまで発展しているなど程度が重いケースであれば、あなたの体調不良に直接関係すると判断される可能性も高いのですが、そこまでに至らないような場合には、あまり過去の経緯を体調面と絡めて主張することは有効ではないかもしれません。

 

3.神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切


 旦那側も親権獲得にあたって決定打になるような言い分がない場合には、こちらの体調面を執拗に責めてくるケースもあります。ただ、その内容が言いがかりに近いような内容の場合、そのことに神経質になり過ぎてしまいますと、余計にこちらは体調を崩してしまうと思います。
 詳しい内容は弁護士にご相談されたほうが良いとは思いますが、相談している弁護士から「旦那側の言い分は言いがかりに近いですよ」といったお話があるようなら、あまり夫側の言い分を真に受けずに、粛々と手続きを進めていったほうが良いと思います。

 

 

4.まとめ


・あなたの体調面が重要視されるかは、あなたの体調について正式な医師の診断が出ているかどうかが重要である。
・正式な病名がついているような場合には、その症状が日常生活にどのような支障を及ぼしているのかという点も重要になってくる。
・体調不安を払しょくするには、あなたが働き始めてしまうのが端的だが、お子様の年齢や状況、あなたの体調面にも十分配慮する必要がある。
・あなたの体調面に絡めて同居中のモラハラを主張することは、そのモラハラ等が重い場合には有効だが、そうではない場合有効とは言いにくい。
・神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切である。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(8)】親権紛争で子の心情調査は避けられないのか?

2022.01.17更新

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 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、お子様の心情調査にスポットライトを当てて解説していきます。

 

2.子の心情調査って何だ?


 子の心情調査が不可避なものかについて解説する前に、まずは、「心情調査」というのがどのようなものなのかについて解説します。
 子の心情調査とは、お子様の意向を家庭裁判所調査官が直接顔を合わせて確認する手続きのことを言います。
 「心情調査」と堅苦しい言い方をしますと、何かの脳波検査等をするのかとか、うそ発見器をつけられて話をするのか、とか色々と心配になってしまうかもしれませんが、要するに、お子様と調査官が面接をして、その内容を調査官が聞き取る・書き取るという手続きになります。

 私もこのような事件の担当をしておりますと、ご依頼者の方からいろいろとご質問を受けるものですから、その中から特によく質問を受ける内容等について、解説していきます。

 

(1)何歳くらいから心情調査を行うのか?
 実務の様子を見ておりますと、手続きが調停中と裁判中とでは、心情調査を行う年齢に開きがある印象です。
 東京家庭裁判所の調停事件での運用を見ておりますと、就学年齢(既に小学校に通っている年齢)に達した後ですと、一般的に心情調査を行っていると思います。
 これに対して、東京家庭裁判所の訴訟事件での運用を見ておりますと、10歳以上に達した後ですと心情調査を実施することが多くなっているという印象です。
 なお、お子様が15歳以上の場合には、必ず、そのお子様の意思を確認することが法律上義務付けられています。

 

(2)どのように行うのか?
 一般的には、お母様とお子様とで裁判所に来てもらい、家庭裁判所調査官とお子様の二人だけで話をして確認するケースが多いです(つまり、お母様はその場に立ち会えず、お母様だけ裁判所の待合室等で待っているという形をとる)。なお、お子様の様子の確認等の目的で調査官補が一緒に立ち会うこともあります。
 お子様がお二人、三人というケースでも、心情調査は、個別面接で行うことが多く、兄弟姉妹全員が一緒に調査官と面談するということは基本的にしません。

 

(3)どんなことを聞かれるのか?
 一般的には現在の生活状況のこと、別居の経緯とそのことについてのお子様の認識、別居前の生活状況、今後のこと等を尋ねられることが多いです。
 調査官はご夫婦のお互いの言い分を踏まえたうえで、お子様に確認したい事項をその場で全て確認することになりますので、所要時間は1時間程度になることが多いです(但し、心情調査の直前に交流場面調査を行っている場合や別居経緯等について夫婦の意見対立が少ないなどの事情がある場合には、30分程度ということもあります。一般的にはお子様の年齢が小さいほど調査時間を短めにしようと努める調査官が多い印象です)。

(4)学校を休まなくてはいけないのか?
 一般的には、①長期休暇(夏休みとか)が近い時期に心情調査を実施する場合には、長期休暇中に心情調査するという形が多いですし、②夕方の時間に心情調査を行うという形にして、極力通学に影響しない形で日程調整することが多いです。なお、裁判所は土日祝日は開いていませんので、平日での日程調整ということになります。

(5)事前にレクチャーしておいたほうが良いのか
 たまに、どのようなことを聞かれるのかを事細かに想定して、「こう聞かれたらこう答えて」というようにきめ細かく準備しようという方もいらっしゃいます。
 ただ、このようにきめ細かい準備をすると、お子様は調査官に対して「事前に決まっていること、覚えていることを話そう」と必死に考えてしまいますので、そのことを調査官に見破られてしまうことの方が多いです。
 心情調査は、お子様の面接試験ではありませんので、①今お父さんがあなたと一緒に暮らしたいということで裁判所の手続きになっている、②そのことで調査官という人があなたの気持ちを聞きたいと言っているので、思っていることを話してね、という程度の伝え方のほうが良いと思います。

(6)家庭訪問の時に一緒にやるのか?
 一般的には家庭訪問とは別日に、裁判所の一室で実施するケースの方が多いです。
 お子様もいきなり初対面の家庭裁判所調査官に対して、率直な意見を述べることは難しいと思いますので、家庭訪問の時に、いわゆる「顔合わせ」をし、その後に「別日」で改めて詳しい事情を確認するという形を取るということです。

 

3.子の心情調査は避けられないのか?


 前述の通り、お子様が既に小学校に通う年齢(または、10歳以上)に達している場合には、通常心情調査を行います(逆に、未就学(又は10歳未満)という場合には、お子様も自分の意思等を正確に表明できないことも多いので、心情調査は行わないということの方が多いです)。
 ただ、「お子様が調査官と面接する」と聞くと、面接試験を受けるようにイメージしてしまうかもしれませんが、特に調査官もお子様を問い詰めたりはしませんので、面接試験というのとは異なります。
 お子様にとっては心理的負担となる手続きではありますが、親権者が決まると、お子様は父親と母親どちらかと一緒に暮らしていかなければならず、このことは、お子様にとっても非常に大事なお話になります。そのため、裁判所も、お子様の意向を確認しておきたいということになるのです。

 

4.まとめ


・お子様が就学年齢に達していると、通常心情調査が実施される。
・心情調査は、お子様の面接試験というのとは性格が異なる。
・心情調査は、裁判所内の一室で調査官とお子様の二人が面接して行う形がオーソドックスである。
・心情調査の所要時間は1時間から1時間半程度のことが多い。
・心情調査の日程は学校の予定等にも極力配慮してくれる。
・心情調査はお子様の面接試験ではないので、細かいレクチャーはしない方が良い。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(7)】親権紛争で家庭訪問は避けられないのか?

2022.01.10更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、家庭訪問にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.家庭訪問は避けられないのか?


 夫側が親権獲得に強いこだわりを見せる場合、ほとんどのケースで家庭訪問を実施します。
 但し、例えば、夫側が実際には面会交流の交渉を有利に進めるために親権を争ってきていることが明らかなケースで、あなたの方でも面会交流で多少は妥協するという場合には、話し合い又は調停で解決して、家庭訪問まで進まないケースもあります。

 

3.実際の家庭訪問は?


(1)誰が来るのか?
 家庭訪問と聞くと、「実際誰が来るの?」というのが一番の疑問かと思います。
 家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問します。この家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所の手続きで必要な調査を行うことを主な業務とする裁判所職員のことを言います。
 家庭裁判所調査官は、心理学といった人間科学の知見を持っていますので、そのような知見を活かした調査を実施していくことになるのですが、その調査の一環として家庭訪問も実施するのです。

 通常は、家庭訪問の前に、調査官面接を実施するのですが、その調査官面接を担当した調査官が家庭訪問するケースが多いです。

(2)何をしに来るのか?
 イメージとしては、お子様の生活環境や普段の生活ぶりを確認しに来るということになります。
 いわゆる小学校の先生が自宅訪問に来た際には、母親であるあなたやお子様と話をして帰るというイメージだと思いますが、家庭裁判所調査官の調査は、現在の生活環境がお子様の福祉にかなうものかという観点から行いますので、より分かりやすく言いますと、より突っ込んだ調査になります。

 このように言いますと、「いろいろと根掘り葉掘り質問されるのか?」と身構えてしまいそうですが、たくさん質問されるというよりは、家庭訪問の際のお子さまの様子やあなたとお子様との接し方等について細かくチェックしているというイメージになります。
 実際の家庭訪問にはチェック項目があり、事前に対策を行っておく必要がありますので、詳しくご確認になりたい方は弁護士秦(はた)までお気軽にご相談ください。

4.家庭訪問の回数は1回だけ?


 通常、一つの離婚事件については、家庭訪問は1回というケースが多いです。
 但し、お子様に関して複数の事件が提起されていて、一回目の家庭訪問からかなり期間が空いているようなときには、再度家庭訪問が行われることもあります。
 例えば、旦那側から監護者指定審判の申立が行われ、その手続きの中で家庭訪問が行われ、その手続きは一旦終了したとします。その後、あなたの方から離婚調停を起こし、調停手続きを進めていたが、財産分与の整理に時間がかかってしまって2年ほどが経過、結局調停では決着がつかず、離婚訴訟で本格的な親権紛争に至った場合、その訴訟手続きの中で再度の家庭訪問が行われるということもあります。

 再度の家庭訪問が実施されるかどうかは、①1回目の家庭訪問からどれだけ期間が空いているか、②1回目の家庭訪問後のこちらの家庭環境の変化の程度(例えば、1回目の家庭訪問時には都会で暮らしていたが、この間実家での地方暮らしになったとか)、③旦那側が指摘するこちらの監護状況の問題点の内容、④1回目の家庭訪問でどこまでの調査を実施したかといった点を総合して検討されますので、詳しくは弁護士に相談してみて下さい。

 

5.家庭訪問が行われてしまうとこちらの所在がバレてしまう?


 あなたが旦那様に対して現住所を秘密にしている場合、家庭訪問を行うことで現住所がバレてしまうことを心配すると思います。
 ただ、実際こちらの住所を秘密にしている場合、家庭裁判所調査官も、調査報告書に盛り込む内容等をこちらに相談してくれることが多いので、家庭訪問をしたからと言って、こちらの住所がバレる可能性は非常に低いとお考え下さい。

 

6.まとめ


・旦那側が親権に強いこだわりを見せる場合、ほとんどのケースでは家庭訪問を実施する。
・家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問してくる。
・家庭訪問は、お子様の生活環境や生活ぶりを調査しに来る。
・同じ離婚事件で行う家庭訪問は1回きりのことが多い。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(6)】監護補助者の有無はどこまで重視されるか?

2021.12.27更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかりと戦ってしっかりと勝つ」をモットーに分かりやすく解説していきます。

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、監護補助者にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.監護補助者って何だ?


 監護補助者とは、字句の通りなのですが、あなたの育児を補助してくれる人のことを言います。
 今後継続してあなたのことを補助してくれる特定の人物になりますので、あなたの両親や兄弟姉妹・親戚等の親族が監護補助者になることが一般的です。
 なお、家事代行業者等は、育児の補助をしてくれることもありますが、こちらが対価を支払って依頼しているものですし、派遣される担当者の変更が生じることもありますので、基本的に監護補助者には当てはまりません。
 監護補助者については、あなた自身で適任者を探し、「子の監護に関する陳述書」などに、補助者の氏名・住所等を明記していくことになります。

 

3.監護補助者の有無等は重要か?


 たまに、旦那側は両親や兄弟など複数人監護補助者を立てているのに、こちらは、実家が遠方等の理由で監護補助者がいないというケースもあります。
 そのような場合多勢に無勢で、こちらの方が不利に感じてしまうこともあります。
 ただ、監護補助者はあくまで補助してくれる人物にとどまりますので、その有無や人数はあまり大きな判断要素にはなりません。
 もちろん、監護補助者がいれば、あなたが突発的な病気で体調を崩しているようなときも安心ですから、簡単に依頼できる親族等がいるような場合には、頼んでおくに越したことはありません。
 ただ、実家が遠方等で依頼することが難しいような場合には、無理に監護補助者をつける必要性は低いと思います。

 

4.重要な判断要素で拮抗していると重視されることもある


 前述の通り、監護補助者の有無等は、本来重要な判断要素ではありません。ただ、「全く考慮されない」というわけでもないことには注意が必要です。
 以前、他のブログに書かせて頂きましたが、監護者指定に当たっての重要な7個の判断要素は以下の通りです。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 多くの事件では、上記の7個の重要判断要素を総合して検討し、有利な方が勝訴するということになります。

 

 ただ、ケースによっては、この7個の重要判断要素を総合検討しても、裁判官が判断に迷うというケースがあります(例えば、過去の監護実績という点では夫婦同等程度で、別居が奥さん側がかなり強引だった、現在のお子さんの様子を見るとそれほど不安定ではないが、別居がかなり強引だったので、登校面でも多少支障がある、しかも、奥さんは旦那側との面会交流を断固拒否しているというように、お互いに有利不利な点が数多くあるため、裁判官が判断に迷っているといったケースです)。
 そのような場合には、裁判官は上記の重要判断要素ではない、他の点で優劣を決する場合があります。その時に監護補助者の有無が重視されることもあるのです。

 

 

5.重要性が増してくるケース


 前述の通り、基本的に監護補助者の有無は、それほど重要なポイントにはならないケースの方が多く、他の重要判断要素で拮抗している場合には、重視されるというような位置付けです。
 ただ、例えば、以下のような要素がある場合には、相対的に監護補助者の重要性が増してきますので、注意が必要です。
①あなたの体調があまり思わしくない場合
②お子様の人数が3人以上など多い場合
③お子様が障害や持病等を抱えている場合
④あなたの業務が多忙過ぎる場合

 

 

6.まとめ


・監護補助者の有無や人数は本来重要な判断要素とまでは言えない。
・ただ、重要な判断要素で拮抗しているときには重視されることもある。
・また、例えば、以下のような要素がある場合には、相対的に監護補助者の重要性が増してくる。
①あなたの体調があまり思わしくない場合
②お子様の人数が3人以上など多い場合
③お子様が障害や持病等を抱えている場合
④あなたの業務が多忙過ぎる場合

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(5)】こちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?

2021.12.13更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「こちら側が無職の場合」にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.こちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?


(1)こちらが専業主婦だと、夫側は「収入がない人間だと、子供の生活費を払えないのだから、子供と暮らしていく権利がない」とか「自分の方がしっかりとした定職と収入があるので、子供の将来のことを考えると、自分が子供を育てたほうが子供の将来にとって絶対にメリットが大きい」と言ってくるケースもあります。
 このように言われてしまいますと、あなたとしても親権を取れるのか不安に陥ってしまうと思います。
ただ、結論から申しますと、専業主婦であることは、親権者指定にあたって、そこまで重要な判断要素ではありません。

 

(2)重要なのは現在の収支が成り立っているかどうかという点
 親権紛争では、あなたの収支の状況も一判断要素として検討対象になります。
 そのため、最低限あなたの現状の収支バランス(例えば、月次の収支)が成り立っていることは必要になります。

 ただ、このような収支バランスを成り立たせる方法としては、一時実家に身を寄せて実家の支援を受けながら生活するとか、生活保護を受けながら生活するということでも構いません(現に、私が担当した事件でも、生活保護でも親権者に指定された事件はあります)

 

(3)現在あなたがお子様を育てているという状況は大きなアドバンテージになる。
もちろん、親権紛争にはしっかり準備して臨む必要があります。
 ただ、あなた自身の勝率といった場合、あなたが現在お子様と一緒に住んでいるということが大きなアドバンテージになっています。
 親権紛争においては、「今誰がお子様を育てているのか」という点を最も重視するからです(法律用語的には「現状の監護状況」などと言ったりします)。
 そのため、あなたが無職であるという事情よりも、「現状の監護」が重視されて判断されるのです。

 

3.重要な判断要素で拮抗していると重視されることもある


 前述の通り、あなたの経済状況は、本来重要な判断要素ではありません。ただ、「全く考慮されない」というわけでもないことには注意が必要です。
 以前、他のブログに書かせて頂きましたが、親権者指定に当たっての重要な7個の判断要素は以下の通りです。
1)監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 多くの事件では、上記の7個の重要判断要素を総合して検討し、有利な方が勝訴するということになります。

 ただ、ケースによっては、この7個の重要判断要素を総合検討しても、裁判官が判断に迷うというケースがあります(例えば、過去の監護実績という点では夫婦同等程度で、別居が奥さん側がかなり強引だった、現在のお子さんの様子を見るとそれほど不安定ではないが、別居がかなり強引だったので、登校面でも多少支障がある、しかも、奥さんは旦那側との面会交流を断固拒否しているというように、お互いに有利不利な点が数多くあるため、裁判官が判断に迷っているといったケースです)。
 そのような場合には、裁判官は上記の重要判断要素ではない、他の点で優劣を決する場合があります。その時に経済状況が重視されることもあるのです。

 

4.あまり弱気にならずに、徐々に準備を進めること


 旦那側から、「私が子供を育てれば留学をさせられる」「妻のところで育てさせると、子供が私立校に行くことは不可能なので教育の機会が損なわれる」などいろいろなことを言われてしまいますと、あなたも自信を無くしてしまうかもしれません。
 ただ、親権者として適格かどうかは、今日明日のお子様の子育て等を恙なくこなして、しっかりと育てていけるのかという視点で決しますので、経済力の問題は直接親権の優位性に影響しません。また、普段からお子様としっかりと接してきたあなたがお子様を育て続けたほうが、お子様にとっても幸せになることは明らかです。
 そのため、旦那側の色々な言い分に対してあまり不安を持ち過ぎず、あなた自身少しずつ仕事を始めていくなど、徐々に準備を進めていくことの方が重要になります。

 

5.まとめ


・あなたが専業主婦であるということは親権者指定にあたってはそれほど重要な要素ではない。
・むしろあなたの現状の収支バランスがとれていることの方が重要である。
・あなたが現実にお子様を育てているという事情は親権紛争で大きなアドバンテージになる。
・親権者指定の7個の重要判断要素で実力が拮抗している場合には、経済状況がある程度考慮されることもあるので注意が必要である。

 

 

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浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(4)】連れ去りになってしまうケースとは?

2021.12.06更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「連れ去り」という問題にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.「子の連れ去り」という主張をなされるケースは多い


 親権紛争では、とかく、旦那様に断りもなく別居したことや、事前に相談していたものの旦那様が反対している中での別居が「子の連れ去り」にあたるという主張がなされることが多いです。
 ただ、このように旦那様の側の了解を得ていなかったとしても、そのことだけで、違法な連れ去りになるということではありません。

 旦那側の了解を得ずに別居したとしても、同居中旦那側からのDVやモラハラに苦しんでおり、事前に話をすると別居を妨害される危険性があったとか、もしくは、旦那側からのDVやモラハラが強まる可能性が高かったなど、一定の事情があって別居を開始しているケースが大半だと思いますので、そのような場合には、相手の了解を得なくともやむを得ないと言えます。
 とはいっても、旦那側から「連れ去り」「違法」などと言われているのを放っておくわけにはいきませんので、旦那の主張に対してはしっかりと反論していかなければいけません。
 そのため、裁判所はどのようなケースを「連れ去り」と考えやすいのか、また、旦那側の言い分に対する反論の「ポイント」という観点から、以下でご説明いたします。

 

3.違法な連れ去りに該当するかのポイントは?


 それでは、違法な連れ去りに該当するか否かのポイントはどのようなところにあるのでしょうか?
 一般的には以下のような要素を考慮して判断されるケースが多いです。

1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。
 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃にいったお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。
 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います(但し、離婚訴訟の場合には、10歳くらいを一つの目安にすることが多いです)。

3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が10歳以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。
 そのため、一般的には、普段お子様の面倒を見てきた奥様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」とは評価されないケースが多いのが実情です。他方、普段お子様の面倒をほとんど見てこなかった旦那様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」のおそれがあると見られるケースが相対的に多いように感じます。

4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 奥様がお子様と無断別居したケース、要するに事前に旦那様に何も別居等の相談をせずに別居を開始したケースでは、旦那様側では「違法な連れ去りだ」と声高に主張なさる方も多いのですが、無断別居と言うだけでは、直ちに違法な連れ去りとは言えないことが多いです。
 「違法な連れ去り」かどうかは、前述のポイント1からポイント3までを総合考慮して決定することが多いです。

5)実態としては?
 ただ、結論から申し上げますと、奥様がこれまで主にお子様の育児に携わってきており、事情があってお子様と別居を開始したという場合には、その方法がよほどお子様の意思に反するといった事情がない限り、「違法な連れ去り」と認定される可能性は低いと思います。
 奥様によっては、しっかりと旦那に伝えてから別居すべきだったとかお悩みになる方もいらっしゃいますが、あまりこの部分で神経質になり過ぎない方が良いと思います。

 

4.結局、別居にあたっては旦那側の了解を得ておいたほうが良いのか?


 もちろん、事前に旦那側に話をできる環境が整っていれば、事前に話をしたほうが良いです。これは、あなたが旦那側と直接二人で話をすることが難しいとしても、あなたの両親や兄弟姉妹等を通せば多少冷静な話し合いができるという状況を含みます。
 事前に話をしておかないと、旦那側は離婚そのものにも強く抵抗してくることがあります。
 ただ、前述のように、事前に話をすることで混乱が生じるというケースも多くありますので、混乱を避けるためには、事前に話をしたり、了解を得ないという進め方もやむを得ないと思います。

 

 

5.まとめ


・旦那様の了解を経ずに別居したからと言って直ちに連れ去りになるわけではない。
・違法な連れ去りに該当するかは以下のような要素で判断することが多い
① 連れ去りの態様
② お子様の意思
③ それまでの監護状況
・別居前に事前に旦那側に話をしておくことが望ましいが、状況による。

 

 

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雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(3)】手続きの進行に応じてどういう準備が必要か?

2021.11.22更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「必要な準備事項」にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.実際のところ、妻側の勝率は?


(1)あなた自身がお子様を今育てているケースでの勝率
 以下は、あなた自身が現在お子様と暮らしており、お子様自身もその暮らしに大きな不満を持っていないという前提でのお話になりますが、①から④の点をしっかりと準備しておけば、勝訴の可能性はかなり高いと考えてよいと思います。

① しっかりと陳述書の準備を整える
② しっかりと家庭訪問に備える
③ 学校・保育園への調査に備える
④旦那側の言い分に対する反論をしっかりと実行する

 

(2)しっかり準備することが前提だとしても、どうして「勝訴の可能性が高い」のか?
 結論から申しますと、あなたが現在お子様と一緒に住んでいるということが大きなアドバンテージになっているからです。
 現状の親権者指定の手続きにおいては、「今誰がお子様を育てているのか」という点を最も重視します(法律用語的には「現状の監護状況」などと言ったりします)。
 そのため、今現在あなたがお子様を育てているという事情がかなり有利に働くのです。

3.勝訴を確実にするためにどのような準備をすべきか?


 前述の通り、あなたの方が有利だとしても、手続きの中でしっかりと必要な準備を整えていく必要があります。
 実際に必要な準備は、離婚に当たっての手続ごとに異なってきますので、大まかに以下の①から③の段階に応じて解説していきます。
①旦那側から監護者指定審判申立てを受けてしまい、審判手続き中の場合

②調停手続き中の段階

③訴訟手続きに突入した段階

 

 

4.旦那側から監護者指定審判申し立てを受けてしまった場合


 監護者指定審判とは、親権の中でもお子様の身の回りの世話等を行う身上監護権を取り出して、その監護者を決定する手続きです。
 一般的には、あなたの別居に不満を持っている旦那側から、監護者の指定及び子の引き渡しを求める手続きになります(要するに旦那側が自分で育てていきたいのでお子様を引き渡すよう求めてくる手続きということです)。
 この場合には、こちらから先行して離婚調停を起こしていたり、離婚調停の準備中でも、この監護者指定審判手続きが先行して進行していくことになります。

 この監護者指定事件は、今後の親権紛争の今後を占う試金石ともいえるような極めて重要な手続きになりますので、しっかりと勝っておくべき手続きということになります。
監護者指定事件は、通常保全事件が同時に申し立てられており、通常の事件よりも進行が速いこと、事件の専門性が要求されるため、あなたも弁護士を頼むことを強くオススメします。
それでは、以下、監護者指定手続き内において必要な準備について解説します。

(1)要点①)しっかりと陳述書の準備を整える
 正式名称は「子の監護に関する陳述書」という書類になるのですが、監護者指定手続きにおいて準備すべき書類の中でも、一番大事な書類がこの「子の監護に関する陳述書」になります。

 「子の監護に関する陳述書」には主に以下のような記載が必要になります。どの記載項目も大切ですので、しっかりと記載する必要があるのですが、その中でも特に「これまでのお子様とのかかわり方」の記載が非常に重要になりますので、しっかりと詳細に記載する必要があります。
 ・あなたの生活状況(学歴・職歴、現在の仕事の状況、経済状況、健康状態)
 ・お子さんの生活状況(生活歴、これまでのお子様とのかかわり方、生活スケジュール、健康状態、通園・通学状況)
 ・監護補助者(どのような方がサポートしてくれるのか)
 ・今後の監護計画(今後お子様をどのように育てていくのか)

(2)要点②)しっかりと家庭訪問に備える
 監護者指定審判手続き内での「家庭訪問」というのは、家庭裁判所調査官が直接あなたの自宅を訪問し、ご家庭内の様子やお子様の様子等を直接確認することを指します。
 大半の監護者指定審判手続きでは、家庭訪問が実施されるのですが、家庭訪問の日時はこちらの都合も踏まえて日程調整しますので(抜き打ちで家庭訪問が行われることはないという意味です)、家庭訪問に向けては事前にしっかりと準備しておく必要があります。

 実際の準備のポイントは、前述の「子の監護に関する陳述書」の内容を踏まえて、こちらにとって有利な点をしっかりとアピールし、こちらに不利になりそうな点をしっかりとカバーするという準備が必要になります。
 なお、家庭訪問の際には、監護補助者とも直接会って話をしたいと要望してくることもありますので、必要に応じてその準備も必要になります。

(3)要点③)学校・保育園への調査に備える
 特にお子様が小学校低学年よりも小さいご年齢の場合、小学校や保育園の調査が行われるケースが多いです。
 このような調査は、受け入れる小学校・保育園側の受け入れ体制にもよるのですが、通常は家庭裁判所調査官が直接小学校や保育園に足を運んで、担任教師・保育士や校長・園長から話を直接聞きたいという話になるケースが多いです。

 お子様が元気に登校・登園しており、小学校・保育園での様子にも特に大きな問題がないということでしたら、不安はないのですが、不登校・不登園、もしくは登校しぶり等がある場合には、事前に担任教師や担任保育士とも相談等をしておく必要があります。

(4)要点④)旦那側の言い分にしっかりと反論する
 上記の要点①から③の準備をしっかりとしておけば、基本的にはあなたの方が有利だと考えて大丈夫だと思います。
 ただ、同居中の家庭での状況や奥様のご体調、お子様の特性等、事件によっては、旦那側が主張した言い分が事件のカギを握るというケースも少なからずあります。
 そのため、上記の要点①から③をしっかりと押さえたから、それで準備完了ということではなく、相手の言い分に対する反論準備もしっかりと行う必要があります。

 

5.調停手続き内での準備


 前述のような監護者指定事件がなく、あなたの方から離婚調停を起こし、その離婚調停の手続進行中というステップです。
 離婚調停手続き中という場合、①旦那側が離婚拒否の姿勢なのか、②旦那側が離婚には応じる姿勢なのかによって進行が大きく異なります。

(1)旦那側が離婚拒否の姿勢の場合
 この場合、離婚が成立することを前提とする親権や財産分与といった話を前進させることができません。そのため、一般的には、あなたの方で離婚原因を詳しく説明したり、旦那側で復縁のための条件提示をするなどします。
 従って、ほとんど親権の話題は出ずに、調停が進捗します。
 もちろん、離婚以外に、あなたの方から婚姻費用分担調停を申し立てていれば、その件も議論になりますし、旦那側が面会交流を主張してきた場合には、面会交流条件等も議論対象になります。
 調停手続きの中で旦那側が離婚に応じる姿勢を見せればよいですが、終始離婚拒否の姿勢を貫いた場合には、(親権の議論はほとんどしないまま)離婚調停は不成立によって終了してしまいます。

(2)旦那側が離婚には応じる姿勢の場合
 この場合でも、夫婦で親権についての意見の対立が大きい場合には、通常、無理に親権の議論を進めようとするのではなく、財産分与の議論を先行して進めるケースが多いです。
 婚姻期間がそれなりの期間に及ぶ場合、どのような財産が財産分与対象になるのか、それをどう評価するのかといった点でお互いの意見が対立することも少なくなく、そのあたりの議論で期日を重ねていくことになるのです。
 このようにみると、あなたにとって一番心配な親権の問題が後回しになっていて不安に感じるかもしれません。しかし、このように時間が経てば経つほど、あなたは、お子様の監護実績を積み上げていくことができますので、一層有利になっていきます。そのため、財産分与などの議論をしている際には、財産分与の議論に集中して対応するという形で問題ありません。

 財産分与といった点の整理が終了した段階で、家庭裁判所調査官による調査を実施するかといった議論が出てきます。その後の進行は、大まかに①調停手続きの中で家庭裁判所調査官による詳しい調査を行う、②調停は裁判ではないので、詳しい調査を実施せずに調停を不成立にしてしまうという二つの進め方があります。
いずれにせよ、①のケースでも、財産分与等の整理が完了した段階で、前述の「子の監護に関する陳述書」の準備をしたり、家庭訪問への準備を進めれば問題ありません(これらの準備を要するという点では、親権の指定と監護者指定は類似しています)。
 前述の監護者指定事件は非常にスピーディーに手続きが進みますが、離婚調停事件は、親権以外の話題の整理を行った後、順を追って手続を進めていきますので、手続きの進行に応じて必要な準備を進めていけば問題ありません。
 そして、必要な準備は、監護者指定審判事件での準備事項と大きく変わりません。

 

 

6.訴訟手続き内での準備


 離婚訴訟がスタートした場合、序盤は、離婚の当否が争点になります。旦那側が離婚を特に争わない場合には、踏み込んだ議論をしないことが多く、旦那側が争う場合には、しっかりと離婚原因の主張・立証を展開していくことになります。
 その後は、財産分与の争点整理を行った後か、これと同時に並行で親権の主張整理を実施していくことになります。
 訴訟の場合も、順を追って手続を進めていきますので、手続きの進行に応じて随時必要な準備を進めていけば問題ありません。

 

 

7.まとめ


・旦那側から監護者指定事件を起こされた場合、以下の準備が必要である。
① しっかりと陳述書の準備を整える
② しっかりと家庭訪問に備える
③ 学校・保育園への調査に備える
④旦那側の言い分にしっかり反論する

・離婚調停手続き中で親権紛争になった場合、大まかに以下の二通りがある。
 ①旦那側が離婚に応じない場合、調停手続き中では親権の議論はほとんど進展せずに調停不成立になる。
 ②旦那側が離婚に応じる場合、調停手続き内で親権調査まで進むことの方が多い。(訴訟に持ち越しになる場合もある)

・離婚訴訟手続き中は、離婚の当否の議論後に準備を要する。

 

 

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