離婚問題

面会交流中の無理心中について

2017.09.22更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.面会交流中の無理心中のニュース


 

 兵庫県伊丹市で平成29年4月に面会交流中父親が娘とともに無理心中するという非常に痛ましい事件が起きました。報道内容を拝見していますと、ご夫婦は離婚が成立し、離婚後に母親が娘を送り出して父親と面会交流(別居中の親がお子様と一緒に遊んだり、話したり、食事したりすることです)させていた際の事件とのことです。この事件では、父親が普段から暴力をふるう様ないわゆるDV夫ではなかった様で、母親も予測しなかった中での事件とのことで、母親の喪失感も著しい事件だったのではないかと思います。

 

 

2.面会交流の実務は?


 

 それでは、上記の様な痛ましい事件はどのようにして防げばよいのでしょうか。もっとも端的な回答は、「離婚後は子供に会わせない」という回答だと思います。

 

 しかし、現在の家庭裁判所の実務では、面会交流を積極的に推奨していますので、特別な事情がない限り「一切面会させない」ということは難しいのが現状です。私自身も上記の様な事件に接しつつも、お子様の健全な発達という面で考えると、極力面会交流は実施した方がよいと考えております。

 そして、実務的に申しますと、面会交流の頻度は1ヶ月に1回程度とされることが多い様に感じます。

 

 では、面会交流を拒否できる「特別な事情」とはどのようなものがあるのでしょうか。

 一般的には父親がお子様に対して直接暴力をふるい怪我をさせているケースなどがこれにあたります。ただ、面会交流を完全に拒否するとなると、このような暴力の証拠がないと難しいと言えます。たとえばお子様が怪我の治療をした診断書や怪我の箇所を撮影した写真の有無が重要なポイントになります。

 

 

3.児童相談所の活用


 

 上記の様な面会交流拒否が難しいとのお話は、調停や裁判といった裁判所における手続における位置づけです。

 児童虐待における現場で緊急的にお子様のみの安全を確保する必要があるケースでは、児童相談所にご相談されるのが即効性のある対処方法になります。父親からの暴力が激しい場合には、警察と児童相談所の両方に相談するのがよいでしょう。

 

 児童相談所の保護を利用しますと、お子様のみの安全という面では安心感が増すのですが、以下の様なデメリットもありますので注意が必要です。

①父親からの頻繁な暴力など問題が大きい場合、児童養護施設にて保護される形になることが多いため、1年といった長いスパンで施設での生活を強いられるケースもあります。そのため、普段通っている小学校への通学や友人と野接触が難しくなる面を捨て切れません。

②児童養護施設での保護になると、DV被害者である母親も子供と会うのに不便することがあります。

 

このようなデメリットもありますが、お子様の生命身体への緊急の危険がある場合には、児童相談所を活用することを躊躇すべきではありません。

 

 

4.シェルターでの保護


 

 DV旦那からの暴力に耐えかね、離婚・別居の意思を固めたという場合には、お子様とともにシェルターでの保護を受けるという方法もあります。

 このようにすれば、母親とお子様が離ればなれになることも避けられます。

 ただ、DV被害を受けている奥様は、旦那から執拗に責められているため、自分に自信がなくなっている方が非常に多く、旦那に何の断りもなく別居や離婚を決断することが難しいことも多くあります。そのような方は女性センターに相談されたり、身近な身内や親友に相談して、ご自身の客観的な立場を理解するのが第1歩だと思います。

 なお、シェルターで保護されながら離婚したいという場合には、ご本人で旦那と連絡を取ることはできませんし、連絡を取るべきでもありませんので、DV問題に詳しい弁護士を雇うことをおすすめします。

 

 

5.当初から暴力などがないケースにどう向き合うか


 

 これまで説明して参りましたのは、すでに同居中から父親のお子様へのDVがあるケースになります。今回の無理心中のケースの様に兆候がないケースで未然に事件を防止することは容易ではありません。

 ただ、未然防止が簡単ではないとしても、何もしないという選択肢はあり得ません。

 例えば以下の様なことが考えられるのではないかと思います。

 

①面会交流時の受け渡しを母親本人で行う。

 今回の様に離婚が成立した後ですと旦那に顔を合わせることは非常に苦痛を伴うことですが、実際にご本人で受け渡しをすれば、少なくとも面会交流会指示の父親の様子を直接見て確認することはできます。

 さらにこれを推し進めて全面会交流の課程に母親がすべて立ち会うという方法もあります。ただ、離婚が成立した後ですと、母親の精神的負担が大きく、現実的ではないことが多いと思います。

 

②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の様子を尋ねる

 例えば、離婚後父親が実家で生活しているという場合、祖父母が同居人ということになりますので、面会交流実施の前に、祖父母から父親の様子におかしな所がないか、思い詰めている様な様子がないかを確認することは実施しても良いかと思います。

 

③面会交流の場所を人目のあるところに限定する

 遊園地や公園など、人目のあるところですと、父親も不審な行動を取りづらいため、場所を指定するという方法もあります。ただ、今回の事件の様に約束した時間を過ぎてもお子様が帰ってこないといったケースでは、事件防止が難しいのが現実です。

 なお、さらに進んで祖父母の同席を促すという方法もあります。祖父母から見ますと可愛いお孫さんなので遊園地等に遊びに行く際に父親だけでなく祖父母も同行するというのは自然な形とも言えます。このような形態ですと父親が無理心中というシチュエーションは生まれにくいかと思います。

 

④お子さんから直接面会交流時の様子を尋ねる

 お子様の年齢にもよりますが、お子様が面会交流時の様子をきちんと母親に伝えられる様でしたら、そのときの様子を直接お子様から尋ねるという方法も考えられます。もちろん、お子様に根掘り葉掘り質問することは避けるべきでしょうが、何か異変がないかやんわりと尋ねることで事件の端緒を掴むことができるケースもあると思います。

 

6.まとめ


●面会交流の実務としては面会交流を積極的に推奨している

●お子様への直接のDVが見られる場合、児童相談所への相談やシェルターでの保護と言った手段がある。

●今回の様な痛ましい事故を少しでも少なくするため以下の様な工夫が考えられる。

 ①お子様の受け渡しを母親本人が行う。

 ②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の普段の様子を尋ねる。

 ③面会交流の場所を人目のある場所に指定する。

 ④面会交流の様子を直接お子様に尋ねる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV離婚)離婚協議と離婚調停の分岐点

2017.09.18更新

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1.DV離婚の特殊性


 

 一口にDVと言いましても、幅のある表現でして、①相手が暴言を吐く、悪態をついてくる、②直接殴る蹴るの暴力まではなくとも物を壊す、物を床に投げつける、③直接殴る蹴るの暴力があると、いくつかの程度があります。

 

 上記のうち①ですと、その内容や程度如何では、夫婦同士の話し合いが可能なケースもありますので、その場合には、ご夫婦同士の話し合いが望ましいと言うこともあります。

 

他方、③のケースでは、奥様が離婚を切り出すとDV旦那が逆上して、暴力被害が拡大してしまうと言う危険性があります。②のケースでも、離婚を切り出すと突発的にてが出たというケースもありますので、注意が必要です。

 

私は、離婚のご相談を受ける際、DVと言った事情がない場合には、できる限り一度はご夫婦同士で話し合いをすることを強くオススメしています。当人同士が同井上で結婚したのですから、分かれる際にも一度は親権に話をした方がその夫婦にとって良いことだと感じるからです。

 ただ、前述のようにDVのケースですと、直接の話し合いがDV被害を拡大するリスクがありますので、ご本人同士の話し合いはオススメしないことが多いです。

 

 

2.離婚協議と離婚調停の分岐点


 

(1)親族や友人を間に入れる方法の検討

  DVのケースでも、旦那が普段は冷静に話をすることができる、だとか、目上の人間に対しては暴言を吐かないと言った場合には、誰か間に入って調整してもらうという方法もあり得ます。

 

 どなたかを間に入れることで冷静な話し合いができるようでしたら、早期の離婚につながることもあります。

 間に入ってもらう人物としては、あなたのお母様かもしれません、仲の良いお姉様かもしれません、職場の先輩、大学のゼミの同期、中学時代からの幼なじみ等、離婚という繊細な問題を打ち明けても良い人間で、力を貸してくれそうな人物を想像してみて下さい。

 

 そして、その様な人物が思い当たるのであれば、その人に相談してみることを考えてみて下さい。

 ただし、注意して欲しいのは、その様な人物が思い浮かんでも、すぐに相談するのではなく、その人に相談するのがよいかよく考えることです。

 

 よく聞きますのは、「親身に話に乗ってくれる人がいるけれども、旦那との接点がないから、その人を間に入れるのは、旦那が絶対拒否すると思う」だとか「うちの母には相談しているけれども、子供のためには絶対離婚など認めないという考えの人なので、離婚に賛同してくれなさそうである」とか「丁度間に入ってくれそうな人がいるけれども、口が軽いのですぐに噂が広まってしまいそうである」といった話です。

 

 相談したことでかえって事態が悪化してしまうことがないよう注意が必要です。

 ちなみに、間に入ってもらうにあたっては、夫婦の話し合いの席に同席してもらうという方法や、伝言役のような形でお互いの意見を伝達してもらう方法があります。また、ご両親に間に入ってもらう場合には、夫婦双方の両親も交えて大家族会議を開いて話し合うという方法も考えられます。

 

 

(2)DVであることに対する配慮

 前述のように、誰かを間に入れることで旦那が冷静でいられる場合はいいのですが、逆に間に入った人物に対して暴言を吐く危険性があるような場合には、誰かを間に入れるという方法は取れません。

 その場合には、いよいよ弁護士に依頼することも検討しなければならない段階と言えます。

 

 

(3)弁護士はどのタイミングで調停に切り替えるのか。

 これは弁護士として多数DVのケースを手がけてきた経験に基づくものなので一概には言いづらいのですが、以下のような要素を考慮して切替のタイミングを計っています。

 

①DV旦那がどこまで離婚に反対しているのか。

 調停切替の判断で一番重要な要素が、DV旦那の離婚に対する捉え方です。

 表面的には離婚に反対する意向を示していても、内心では、「弁護士まで出てきているぐらいだから、もう今まで通りの夫婦関係を取り戻すのは無理だ」と感じているような場合もあります。

 その様な場合には、粘り強く交渉をすれば協議離婚によって解決できる可能性もありますので、すぐに調停に切り替えるのではなく、できる限り離婚交渉の期間を取るようにすることが多くなります。

 他方で、DV旦那が離婚に断固拒否しており、その意思が非常に固いと思われるケースでは、早めに調停に切り替えることを考えます。

 

②ご夫婦の調停手続の捉え方

まず、奥様側から見ると、調停という手続が裁判所で行われるものですし、調停離婚する場合、戸籍に「協議離婚」ではなく「調停離婚」と書かれてしまうこともあって、極力調停にしたくないという方もいます。

その様な場合には、当然極力協議離婚の努力をして行くことになります。

他方、旦那側から見ると、調停という手続が裁判に準ずる重要な手続だという認識の方から、話し合いの場所が(裁判所に)変更されたに過ぎないという認識の方もいます。

まず、調停手続を重要な手続だと考えている旦那を相手にする場合、調停に進む場合には、できる限り丁寧なアナウンスをするようにしています。そうでないと、相手から無用な反発を受けることが多いからです。ただ、調停が深刻な手続のように考えている場合には、旦那側には「その様な手続を避けたいのであれば、離婚届にサインしてもらえませんか」という説得のし方をします。

他方、調停手続を深刻に考えていない場合には、こちらとしても調停申立のハードルは下がることになります。

 

③旦那がDVを認めているかどうか。

旦那がDVの事実を否定している場合には、調停申立前に極力DVの証拠集めをすることが多いです。診断書や怪我の写真と言った客観的な証拠があれば一番ですが、それがない場合でも、相手とのやり取りのラインやメールが証拠になることもありますので、相手が暴力を認めるラインやメールの有無等を確認して行くことになります。

このような、いわゆる証拠集めが必要になりますので、旦那がDVを完全に否定しているような場合には、それなりに準備に時間を要するケースが増えます。

 

 

3.まとめ


○一般の離婚のケースだと夫婦当人同士の話し合いをした方が望ましいが、DVのケースだと直接話し合うことが望ましくないケースの比率が増えてくる。

○間に誰かを入れて話をすることも一長一短でよく検討する必要がある。

○弁護士が調停に切り替えるかどうかは経験に基づき様々な要素を検討して判断している。

 

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV加害者のよくある言い分と弁護士の対応方法

2017.09.11更新

弁護士秦

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1.DV加害者の共通性


 

 私はDV離婚のケースを多数手がけていますので、DV加害者と直接話をする機会は多いのですが、その中でDV加害者の言い分・考え方として共通する部分も多いものですから、どのような言い分を述べるのかを紹介するとともに、これらに対して弁護士として私がどう応対しているのかを紹介致します。

 

 なお、弁護士に応じて相手との交渉の進め方は人それぞれだと思いますので、どのやり方が正解と言うことはないと思います。以下で紹介するのは弁護士秦がDV旦那とどのように向き合っているのかという私見だとお考え下さい。

 

 

2.【DV旦那のよくある言い分1】無断で出て行ったことに対するクレーム


 弁護士にご相談される際には奥様はDV旦那に無断で別居を開始しているというケースが大半です。ご相談の際に別居していなければならないと言うことはないのですが、遅くとも弁護士が事件に着手する前には別居を始めてもらうようにしています。

 

 そのため、DV旦那からよく言われるのは「仕事から帰ってきたら嫁の荷物がなくなっていて連絡も取れなくなった。こんな騙し討ちみたいなやり方はあんまりだ」とか「こんな事は随分前から計画しておかないとできないことだから計画的で悪質だ」といった言い分です。

 

 DV旦那と話をすると、大体最初に述べられることが多い言い分のように思えます。

 このような言い分に対しては、「確かに、あなたにとっては突然のことだと思われるかも知れませんけれども、奥様は、それだけの理由があって別居を始めたのだと思いますよ」というような説明の仕方をするのがオーソドックスです。

 

 このように話をしますと、DV旦那からは、嫁はどのように話をしているのか、とか、出て行った理由をきちんと話してもらわないと納得のしようがない、と言われますので、詳しい説明をして行くことになります。

 

 

3.【DV旦那のよくある言い分2】「本人と会いたい」「直接話がしたい」


 

 こちらの言い分も大概のDV旦那は主張してくるのですが、特に無断で別居を開始したような場合には、「こんなひどいやり方は許せないから、本人に説明に来させろ」と言われることもあります。

 

 また、こちらもよくあるのですが「本人と直接話をすれば離婚なんて言わないから、直接会って話をさせて欲しい」とか「弁護士が就いているって言うんだったら、弁護士同席でも構わないから本人と会わせろ」ということは言われることが多いです。

 ただ、奥様としては身の危険を感じて、自宅から逃げて居場所を隠しているのですから、DV旦那と面と向かって話をするというのは危険性が高過ぎます。

 

 そのため、私の方からは、本人は直接会って話をすることを怖がっている旨、私が窓口として必要な内容は本人に伝える旨をDV旦那にも話していくことになります。

 

 

4.【DV旦那のよくある言い分3】「嫁の居場所を教えろ」


 

 前述の「嫁に会わせろ」の延長線上と言うべきでしょうか、「嫁の居場所を教えろ」と言われることもあります。ただ、最近は警察の方もDVで女性が深刻な被害を受けないようかなり配慮するようになっていますので、警察の方から「奥さんは今シェルターにいるから絶対に居場所は教えられない」といった話をDV旦那に対してしていることが多いです。

 

 そのため、警察からその様に言われているケースなどでは、DV旦那もしつこく居場所を聞いて来るというケースはかなり減ってきているという印象です。

 

 もちろん、居場所を教えるよう聞かれた場合には、私の方からは「絶対に教えることはできない」と回答することになります。

 なお、弁護士に対して「居場所を教えろ」と言ってこない場合でも、奥様の両親や親戚・親友等にしきりに電話をかけて居場所を聞き出そうとしてくることはありますので、注意が必要です。

 

 

 
5.【DV旦那のよくある言い分4】「自分は暴力などふるっていない」


 

 この言い分については、「一切暴力をふるったことなどない」という言い分と、ある程度暴力をふるったことは認めつつ、「暴力と言うほど大したものではない」「軽く手が当たっただけだ」といった言い分とがあります。

 

 これに対しては、奥様が診断書や怪我の部分を撮影した写真等があれば、相手に対してこのような証拠があるので、暴力があったと考えられる旨を伝えていくことになります。

このような証拠がない場合には「私は奥様の弁護士なので、あくまで奥様の言い分に沿ってお話しをするしかない」というお話しをすることになります。

 

 

 
6.【DV旦那のよくある言い分5】「自分は悪いことをしたと思っていない」


 

 この言い分に関しては程度の差こそあれ、大体のDV旦那から言われる言い分です。

 「程度の差がある」というのは、一応暴力をふるったこと自体は悪いことをしたという気持ちがある人もいて、その場合には「確かに手を上げたことは悪かったと思うが、そのことには原因があることをちゃんと分かって欲しい」とか「嫁にこれだけのことをされれば誰だって暴力の一つぐらいふるいますよ」といった言い分になります。

 

 他方、利己的な性格が非常に強い人になりますと「嫁が約束を破るから暴力をふるっただけで、自分は何も悪くない。むしろ、約束を破り続けた嫁の方が悪い」とか「暴力と騒ぎ立てるが、悪いことをした嫁に対する体罰だから、問題ない」といった言い分です。

 

 このような言い分が出された場合、夫婦のどちらの方が悪いと行った話をしていても平行線になりますので、「ただ、奥様は暴力を凄く怖がっているようですよ」とか「弁護士を雇うぐらいだから、奥様も本気で離婚したいようですよ」といった説明をすることになります。

 

 

 
7.【DV旦那のよくある言い分6】「嫁は自分に都合がいい話ばかりしている」


 弁護士が離婚協議に着手する際には、まずは、DV旦那に対して内容証明郵便という郵便物を送るところから始めることが多いです。要するに通知文を送りつけることになりますが、この「通知文」には、旦那からのDVで離婚を決意したこと、ヨリを戻すつもりがないことを明記することになります。

 

 通知文に詳しい内容を書きますと、DV旦那から、様々な不満が寄せられて話し合いが難しくなりますので、上記の程度しか記載はしないのですが、それでも、DV旦那は「嫁は自分に都合がいい話ばかりしている」という不満が寄せられることが多いです。

 

 前述の通り、DV旦那は暴力をふるったことを悪いことをしたと思っていないか、それほど悪いことをしたと思っておらず、「原因を作ったのは嫁の方だ」と思っている人が大半です。

 そのため、DV旦那からすると、「嫁はどうせ詳しい経緯を話さないで、DV,DVと騒ぎ立てているんだ」と考えるようです。

 

 このようなDV旦那からの言い分に対して、私からは「夫婦の事細かなやりとりまでは分かりませんが、奥さんがあなたのことを怖がっていることは間違いありませんし、奥さんが別れたいという決意は固いですよ。」という話をします。

 

 

8.【DV旦那のよくある言い分7】嫁は騙されている


 

 この言い分も比較的よく出てくる言い分の一つかと思います。

 DV被害を受けている女性は、被害を最小限にとどめるために旦那の機嫌を取りながら、波風をなるべく立てないように生活していることが多いため、DV旦那から見ますと「嫁が俺のことを嫌っているはずがない」と思っている人も多くいます。

 

 また、奥様が突如別居を断行し、突如奥様の弁護士から連絡があると、DV旦那からすると「普段大人しい嫁が、こんな大胆なやり方を思い付くはずがない」とか「こんな大げさなことをするはずがない」と思うことも多いようです。

 

 事情は様々でしょうが、「離婚したいというのが本人の意思だとは思えない、本人の母親がけしかけているに決まっている」とか「以前から女性相談員に相談していたようだが、女性相談員は女性の味方だから、どのように言われたのか分かったものじゃない」と言った言い方をするのです。

 

 このような旦那の言い分に対しては、「直接ご本人と会って、直接お話しをして離婚の意思を確認しています。」というご説明を繰り返すことになります。

 

 

9.離婚による解決のために


 

 DV旦那は自分の考え方に固執して、こちらの言い分に対してほとんど耳を貸さないという人も多いため、協議離婚による解決が難しいというケースもあります(ただ、私の場合、ノウハウがありますので、皆様が思っているよりも協議離婚で解決したケースの件数は多いというイメージです)。

 

 その様な場合には、ズルズルと協議離婚の話をしておりますと最終的な解決が遅れることにもなりかねませんので、早い段階で見切りを付けて調停に移行することもあります。

 

 

 
10.まとめ


■DV旦那からは以下のような言い分が出ることが多いが、ノウハウを持った弁護士であれば、対応方法は確立している。

・無断で別居したことが許せない。

・本人と会いたい。

・嫁の居場所を教えろ

・自分は暴力などふるっていない

・自分は悪いことをしたと思っていない

・嫁は自分に都合がよい話ばかりしている。

・嫁は騙されている。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

弁護士はDV旦那とどのように敵対し、向き合っているのか

2017.09.04更新

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1.DV加害者との向き合い方


 私はDV離婚のケースを取り扱うことが多いものですから、DV旦那と生で話をしながら、どのようにすれば早期離婚を獲得できるのかという観点から試行錯誤を繰り返してきました(もちろん、これからも試行錯誤を繰り返さなければならないと考えています)。

 

 DV被害を受けた方がご相談に来られる際、よくおっしゃるのは「旦那は一度言ったことは絶対に変えないから、弁護士さんが間に入っても、離婚届にサインはしてくれないのではないかと思います」という話です。

 確かに、私がであったDV旦那の方は独自の価値観をお持ちで、それを頑固に曲げないという方が非常に多いように感じます。

 

 ただ、他方で、弁護士の心がけ次第で早期離婚を勝ち取ることができたケースもあり、私自身も当初の想定よりも早く離婚にこぎ着けたケースを担当しています。

 

 そこで、ここでは、弁護士がDV旦那とどのように向き合って手続を進めていくのかについてご説明します。

 なお、弁護士はそれぞれ自分が最も適切だと思う弁護方針で活動していますので、私のやり方が正しいと言うことではありません。以下は、イチ弁護士のDV旦那との向き合い方という意味で捉えて頂ければ幸いです。

 

 

2.【DV旦那との向き合い方1】メリハリを付ける


 

 DV旦那との向き合い方の一つが、まずは、メリハリを付けると言うことです。

 

 これは弁護士としての弁護方針にもよりますので、どの方法がよいとは言えませんが、弁護士によっては徹底的に相手と対立する、喧嘩するというやり方の先生もいらっしゃいます。しかし、私はその様な方法は取っていません。もちろん、こちらの要望として伝えなければならない点はしっかりと伝えますが、相手の言い分全てに対立していては、早期離婚の道を閉ざしてしまう恐れがあります。

 

 そこで、私は相手の言い分全てに対立するのではなくメリハリを付けて対応するようにしています。

 例えば、DV旦那から奥様の住所を尋ねられた際には絶対に回答しません。これに対して、奥様が離婚を決意した原因を聞かれた際には丁寧にご説明します。このように相手の質問や言い分に応じて臨機応変に対応するようにしています。

 

3.【DV旦那との向き合い方2】弁護士の牽制力を適度に使う


 

 通常、DV離婚の依頼を弁護士が受けた場合、DV旦那に対して通知を郵送するところから事件に着手します。

 DV旦那からすると、突如奥様との連絡が取れなくなったと思ったら、突如奥様の代理人を名乗る弁護士から手紙がやってくるということになります。

 

 DV旦那も弁護士から手紙が来ると多少は危機感を持つことが多いので、そのことによる牽制力を私は上手く利用するようにしています。

 弁護士なので様々な法的な手段を執れるということを誇示してしまいますと、相手は反発し「それならこちらも弁護士を立てて徹底的にやってやりますよ」というように言われてしまう虞がありますので、「適度に」牽制力を活用するようにしています。

 

 

4.【DV旦那との向き合い方3】できる限りこまめに相手と連絡を取る


 

 DV旦那は利己的な方が多いため、毎日のように私のところに電話をかけてくる方も多くいます。それに対しては、可能な限り毎日電話で話をするように配慮しています。

 

 DV旦那は短気な方が多いため、1日電話の折り返しが遅れただけで激怒する方もいるため、極力その様な事態を避けています。

 そして、私の出張の予定等でどうしても毎日電話することが難しい場合には、今週電話をするのは早くとも木曜日になるといったことを相手に必ず事前に伝えるようにしています。

 

 DV旦那によっては1日に2,3回電話をかけてくる方もいて、その都度対応しているとかなりの時間を取られてしまうのですが、粘り強く相手に同じ回答を繰り返すことで、相手の理解が多少深まると言うこともありますので、極力頻繁に話をするように努めています。

 

 

5.【DV旦那との向き合い方4】相手の話も丁寧に聞く


 

 これは、相手の話に共感するという意味ではありません。

 DV旦那は、自己の暴力を正当化するため、このような経緯があったから暴力をふるったんだとか、このような原因がなければ暴力などふるわなかったという話を必ずしてきます。

 

 暴力は絶対的悪ですので、どのような事情があっても許されるものではないのですが、相手が言い分を述べている際には、聞くだけは聞くようにしています。あまり簡単に話を打ち切ってしまいますと、DV旦那が感情的になる危険性がありますし、何より、その様な事情を聴いていますと今後の準備にも役立つからです。

 即ち、今DV旦那が言い分として述べている事情は、今後離婚調停、離婚裁判になっても必ず似通った主張を展開してきますので、これに対抗するための十分な準備ができるのです。

 

 メールやラインなど、相手とのやり取りが証拠になることもありますので、相手の言い分に対する反論証拠の準備も進めていくことになります。

 

 

6.【DV旦那との向き合い方5】早めに調停離婚への切替を判断する


 

 交渉をしているとDV旦那が非常に意固地で厚相をしていても協議離婚の見込みが非常に低いというケースもあります。

 その場合、あまり協議離婚に時間を費やしてしまいますと、調停離婚のスタートが遅れる結果、最終的な離婚が遅くなってしまうと言うことにもなりかねません。

 

 そのため、基本的には相手と粘り強く交渉して早期協議離婚を目指しますが、離婚届にサインする可能性が低いという場合には、早めに調停手続に切り替えるようにしています。

 

 

7.まとめ


○DV旦那と話をする際にはメリハリを付けて話をしている。

○弁護士の牽制力を適度に利用して話を有利に進めるようにしている。

○DV旦那とはこまめに連絡を取って話をするように努める。

○DV旦那の話も丁寧に聞き、こちらの反論準備に役立てる。

○交渉決裂の可能性が高い場合には、早めに調停に切り替える。

 

 

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雨宮眞也法律事務所

弁護士 秦(はた) 真太郎

TEL03-3666-1838|9:30~18:00

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東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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