夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(24)ーモラハラ夫はすごく外面が良いのだが大丈夫か?
2022.08.01更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.そもそも「監護者」って何だ?
(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。
(2)親権の意味のおさらい
そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)
(3)要するに監護権って?
上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。
(4)監護者指定審判とは?
離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。
2.調査官が夫の外面に騙されないか
私は、モラルハラスメントの問題も多数取り扱いますので、その中で、調査官がモラハラ夫の外面に完全に騙されてしまっているというケースを見かけることもあります。
特にモラハラ夫は、社会的ステータスが高く、職場等では理想的な対人関係を築いている人も多いため、調査官も、そのような外面に騙されてしまうのです。
このように調査官が夫の外面に流されてしまいますと、①こちらに対して「あたりが強い」ということになってしまったり、②強く面会交流を指示してくるなど実害となって表れてしまうこともあります。
特に、監護者指定事件は迅速に事件が進行することが多く、調査官が誤ったイメージで調査を実施してしまいますと、こちらに不利な結論になってしまう危険性すらあります。
3.調査官のイメージを変えるには、夫の家庭内での様子を端的に示すのが一番効果的
極端に外面が良いモラハラ夫は、そのことのストレスからか家庭内では非常に自己中心的・独断的にふるまう人も多いです。
あなたが離婚に向けて、そんなモラハラの証拠を集めていたのであれば、その証拠を突き付けて、夫の本性が分かる証拠を見せると、調査官のイメージを大きく変えることができます。
なお、何の裏付けもなく、夫は普段このように話しているとか、家庭内ではこのようなモラハラ夫だということを主張するだけでは、なかなか調査官のイメージを変えることは難しいので、できるだけモラハラの証拠を突き付けたほうがいいです。
4.イメージ作戦は早めに
調査官が直接夫とやり取りをするのは、通常は、第1回審判期日での審問か、もしくは、第1回審判期日以降の調査官面接のときになります。
そのため、第1回審判期日よりも前に、夫の家庭内での様子を端的に証拠化して、調査官がモラハラ夫の外面に騙されないようにしておくことが重要になります。
もちろん、第1回期日前の準備としては、夫側の監護者指定審判申立書に対して入念に反論することが一番大事なのですが、夫側のイメージ戦略についても、反論書の中でしっかりと言及し、証拠も提出しておくべきでしょう。
5.こちらのイメージを良くしておく必要はないか?
夫側のイメージというような話を致しますと、よく奥様の方から「こちらのイメージを良くするために何かしておいたほうが良いでしょうか?」という質問を受けることもあります。
ただ、審判で一番大切なのは、勝つためにどれだけ証拠資料を提出することができるのか、という点になりますので、あまりこちらのイメージという部分の対策は意識し過ぎないほうが良いかと思います(イメージというところを意識し過ぎてしまいますと、逆に後からボロが出てしまうということにもつながりかねないと思います)。
6.まとめ
・残念ながら、調査官によってはモラハラ夫の外面に騙されてしまうケースはある。
・家庭内でのモラハラの様子を証拠として提出して、誤ったイメージを持たれないようにする必要がある。
・このような証拠提出は第1回期日前までの方が良い。
・こちらのイメージはそこまで意識し過ぎないほうが良い。
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