離婚問題

【弁護士が解説】モラハラ証拠の決定版はこちら!

2017.12.01更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)真太郎です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、モラハラ情報盛りだくさん!弁護士秦のモラハラ総合サイトは>>こちら<<になります。

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1.モラハラを理由に離婚したいのに、相手が事実を否定している


 

 モラハラの形態は多様なのですが、もっとも典型的なモラハラである暴言に関して言いますと、口頭でのやりとりのため、旦那側が暴言を誤魔化してくるケースが非常に多くあります。

  相手がモラハラを否定しても離婚に応じてくれるというのであればまだ良いのですが、モラハラ夫でよくある言い分は「俺はそんなこと言ってないから離婚しない」「そもそも離婚する理由がない」と言ってくることです。  

 

 そのため、これから相手と調停や裁判で離婚を争っていくという場合、モラハラの証拠がどの程度あるのか、どのようなものがあるのかというのは十分に検討していく必要があります。

 

 

2.やっぱり確実なのは録音データ


 

 DVのケースですと、怪我を負わされるケースが多いため、診断書や怪我の部位を撮影した写真がもっとも確実な証拠と言えます。これに対して、モラハラの場合には目に見える怪我は残りませんので、診断書や写真を準備することはできません。

 そのため、相手がどのような雰囲気でどのような言葉を発したのか、こちらからの発言に対してどのように抵抗してきたのかと言ったところを正確に記録できますので、その意味で録音データは確実な証拠になるといえます。

 

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。

 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。

 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。

 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、あなたがどのように対応したのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

 

(2)録音データは複数あった方が心強い

 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。

 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、あなたの反応やお子様の反応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

 ちなみに、録音データを裁判所に証拠として提出する場合、そのデータだけではなく、文字起こしも一緒に提出する必要があります。

 そのため、録音データを証拠として提出する可能性がある場合には、早めに文字起こしを準備し始めておくということも必要になってきます。

 

 なお、たまに動画データを準備している方もいます。もちろん、動画を準備できるのであれば、それでも良いのですが、いくつか難点もありますので、注意が必要です。

動画撮影の一番の難点は、夫側に隠れて撮影することが非常に難しいということです。動画撮影されていることが分かっている場合、夫は、暴言などを発しなくなってしまい、折角の証拠収集のチャンスを逃してしまいます。次の難点は、動画ですと自宅内の色々なものが映り込んだりしてプライバシーの問題が生じかねないという点です。そのことで特に動画の証拠力が失われてしまうということではないのですが、夫側のプライバシーの問題が生じた場合、夫側はその動画撮影そのものの問題点を指摘し始めて議論が長引いてしまうケースも多いです。

 

 

3.LINEやメール


 

 例えば、夫があなたに対してLINEやメールにてモラハラ発言をしてきたというような場合、有力なモラハラの証拠になります。

 

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面が明らかにこちらを誹謗中傷する内容のような場合には、十分モラハラの証拠にはなります。

 

 メールやLINEに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやLINEをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 

 バックアップの方法としては、問題となるメールやLINEをスマートフォンで開き、スクリーンショットデータの形でパソコンにも残すといった方法がオーソドックスかと思います。LINEのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 なお、夫側とLINEでやり取りをしていると、夫側が過去のモラハラ発言を認めることもあります。このLINEも証拠になり得るのですが、その時の状況等にも左右されますし、どこまでのことを認めているのかによって証拠価値は変わってきます(例えば、あなた「2年前に随分ひどいこと言われたよね」→夫「あの時のことは謝ります。」のやり取りですと、抽象的過ぎて、残念ながらあまり証拠力は高くないです。これに対して、例えば、あなた「昨日何度も「死ね」って言われたけど、あんな言い方ってないんじゃない?」→夫「「死ね」なんて言葉を使うべきじゃなかった。酔った勢いなんだけど反省しています。」といったやり取りですと、モラハラ夫の具体的なフレーズなども出ていますので、証拠力は高いです)。

 

 更に、あなた自身が、モラハラ被害を受けた際に親友や親族に対してLINEやメールで相談してきたという場合、内容次第ではモラハラの証拠になり得ます。なお、どの程度モラハラの立証に役立つかは、LINEやメールの文面はもちろん、タイトル名、相談しているモラハラ被害の具体性、文面全体の位置づけ等を考慮する必要があります。

 

 

4.物の被害


 

 物に深刻な被害が生じた場合、モラハラと言うよりDVに近くなる様にも思えますが、モラハラの延長で、夫が投げつけてきた場合、破損した物は証拠になり得ます。例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 なお、壊されたものの現物については、「もう壊れているから捨ててしまった」とおっしゃる方も多いのですが、必ず写真を撮るなどして、物が壊れた状況を証拠に残した上で廃棄するようにして下さい。

 

 

5.女性センターや子育て支援センター等への相談記録


 

  モラハラ夫の暴言に悩まされている場合、その間に女性センターや子育て支援センターにご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、相談した際のやりとりがセンターの方に保管されていますので、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。

 

 なお、モラハラの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子育て支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、モラハラの件があまり記載されていないこともあります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ女性センターに相談するはずないんだから、相談をしているだけで、モラハラの証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。

 現状の裁判実務を見ますと、「女性センターに相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

6.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 

 例えば、熟年離婚のケースで、既に成人しているお子様が、当時のモラハラの様子を証言してくれるという場合、お子様はモラハラの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、モラハラに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親のモラハラを誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

 

7.日記


 他にほとんど証拠はないけれども、日記をつけていた、という方も相当数います。

 ただ、日記につきましては、残念ながら、あまり証拠として重視されないことが多いです。

 日記は、いつ作成したのかを客観的に証明することが難しいというのが最大の難点です。録音データであれば、プロパティーを開けば、作成日時が客観的に分かりますし、LINEやメールも、送信日時が記録されます。これに対して、日記については、仮に、手帳のカレンダー欄などに記載されていたとしても、その日に本当に記載したのか正確に判断することができません(これは非常に極端な例ですが、例えば、令和5年11月1日に離婚裁判が始まって、令和5年11月15日に令和元年の手帳を買ってきて、そこに今から書き込んで、「令和元年に書いたものです」と言い張る人も出てき得るということです。同じ令和元年の手帳なのですが、本当に当時書き込んだものなのか、もっと後に書き込んだものなのかは手帳だけを見ても分かりません)

 また、日記については、あなたの主観が反映されている可能性があるという問題点を指摘されることもあります。例えば、モラハラ夫から30分近く説教をされた場合、その後すぐに日記を書くにしても、30分の説教の内容を一言一句間違いなく思い出して日記化できる人はいないと思います。一定の記憶の範囲でしか日記は書き残せないので、正確性が問題になることも多いのです。

 

 

8.モラハラの証拠が少ない、ほとんどないという場合


 

 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった夫が豹変して暴言を吐いてきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、夫の暴言を受け入れられず、また元の優しい夫に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。

 私の経験上、今ある証拠をもとにモラハラ夫を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 

 ただ、そのような場合、どのようにモラハラ夫と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

9.まとめ


・録音データはモラハラの最有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・LINEやメールは書き込みの内容次第であるが、モラハラ発言などが直接書かれていれば有力な証拠になる。

・女性センターや子育て支援センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接モラハラの証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・日記は、あまり証拠としては重視されないことが多い。

・モラハラの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

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