離婚問題

夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(22)ー夫の児童虐待をどう証明すればよいか

2022.07.11更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.「児童虐待」の位置付けの確認


 たまに、私のところにご相談に来られる方の中には、夫の児童虐待をしっかりと証明できれば監護権を確実に獲得できるので、児童虐待の証明だけに全力を注ごうと考えている方を見かけます。
 確かに、児童虐待をしっかりと証明できれば、監護権の争いで大きくリードできることは間違いないのですが、監護権の争いの中では、現在の監護状況と別居前の監護実績といった点も非常に重視されます。そのため、児童虐待にばかり目を奪われて、他の対策が疎かにならないよう注意する必要があります。

以下では、どのような証拠が児童虐待の証明として効果的なのかを解説していきます。

 

 

3.一番強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。
そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、監護権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

4.その次に確実なのは録音データ


夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

 

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

 

5.LINEやメール


 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

 

6.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。

例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

 

7.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

8.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

9.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。

 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で監護権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

10.まとめ


・児童虐待は監護者を決めるにあたって重要なポイントではあるが、それだけで監護者が決まるわけでもないので、他の判断要素を疎かにしてはいけない。
・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。
・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。
・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。
・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。
・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

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