離婚問題

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(23)―面前DVや面前モラハラはどこまで重視されるか?

2022.07.25更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.面前DV、面前モラハラって?


 面前DVとは、お子様の目の前だというのに、夫があなたに対して暴力を振るってくること等を意味します。面前モラハラとは、お子様の目の前だというのに、夫があなたに対して暴言を浴びせてくること等を意味します。
 面前DVとか面前モラハラという表現を使う際には、夫がお子様に対して直接暴力を振るったり、お子様に暴言を吐くことは「含まず」、あなただけが攻撃対象になっていることを意味することが多いです。

 

 

3.面前DV等は児童虐待なのでは?


 児童虐待防止法第2条第4号は、お子様の面前での夫から妻への暴力や妻の心身に有害な影響を及ぼす言動を「児童虐待」と定義しています。なお、暴言については、単なる誹謗中傷では足らず、妻の生命または身体に危害を及ぼし得る程度の発言であることが必要とされています。
 また、警察や児童相談所が介入しているケースですと、警察官や児童福祉司は「お子さんの前で暴力を振るったり、夫婦喧嘩することは、お子さんに悪影響を及ぼすのでやめてください」と言われることが多いと思います。

 

 

4.裁判所は、お子様への直接の虐待かどうかで強く線引きすることが多い


 前述の通り、面前DVや面前モラハラは、児童虐待防止法の児童虐待に該当するのですが、監護者指定事件では、夫の暴言などが直接お子様に向かっているかどうかという点が非常に重視されます。
 裏を返しますと、仮にあなたが暴力を受けていても、お子様が一切直接の暴力や暴言被害を受けていないという場合には、監護者指定事件の中ではあまり重視されないということになってしまうということです。
 そのため、DV夫やモラハラ夫の気性の粗さなどは、直接あなたに向けられたものであるという視点ではなく、お子様に向けられたものであるという視点から整理して主張・立証していく必要があります。
 もちろん、あなたとしては、「今は子供が被害に遭っていないけれども、子供が成長すると同じ被害を受けるかもしれないと思うので、すごく心配」という気持ちはよく分かりますが、監護者指定事件では、他にも監護者を決める重要な検討項目がありますので、面前DVや面前モラハラを大きく取り上げるというよりは、他の項目で有利な点をクローズアップすることの方が良いと思います。

 

 

5.発言そのものが性的虐待と捉え得る場合は別


 前述の通り、モラハラ夫の発言があなたに向けられたものの場合、残念なことに、監護者指定事件ではあまり重視されません。
 ただ、モラハラ夫があなたに対してした発言の中でも、それをお子様に聞かせてしまうこと自体が性的虐待に該当するケースはあり、その場合には、監護者指定事件でも重視されることはあります。
 一般的には、夫があなたの不倫を疑って口論になったとか、夫の不倫の中での口論での発言が問題になるケースが多いかと思います。
 要するに、例えば、お子様が女の子で、ある程度性知識などもあるのに、夫が妻に性的に露骨な発言を繰り返したり、性的に放送禁止用語に近い発言をするといったものがこれに含まれます。

 

 

6.まとめ


・面前DVや面前モラハラは、児童虐待防止法上の「児童虐待」に該当する。
・しかし、面前DV等だけでは、裁判所はあまり重視してくれないことが多い。
・ただ、面前モラハラの中でも、そのような発言をお子様に聞かせることそのものが性的虐待に該当するようなケースだと重視されることが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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