離婚問題

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(36)―調査報告書の重み

2022.12.05更新

弁護士秦 

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.調査報告書って何だ?


(1)調査報告書とは?
 調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものです。調査報告書は、家庭裁判所調査官が担当裁判官宛に報告するというスタイルを取っていますので、その内容を確認するには、弁護士が裁判所にて調査報告書のコピーをとってくる必要があります。

(2)調査報告書作成の流れ
 調査報告書がどのようなものなのかについては前述にて説明した通りですが、この説明だけでは、まだ今一つ理解しにくいと思いますので、時系列に沿って、より具体的にご説明しますと以下の通りです。
①裁判所の審判廷にて、裁判官が調査内容を宣言(調査発令などと言ったりします)
 合わせて次回審判期日を設定

②期日間で、調査官が必要な調査を実施

③調査官が調査報告書を書き上げて裁判官に報告

④弁護士がコピーをとって、あなたや夫側も調査報告の内容を把握

⑤調査報告の内容を踏まえて、次回審判期日で今後の進め方等を議論

(3)調査報告書はどのように章立てされているの?
 前述の通り、調査報告書は、期日の間に調査官が実施した調査経過や結果をまとめたものなのですが、監護者指定事件ですと、ボリュームが多いものですと30ページ近くに及ぶものもあって、最初から最後まで順に通読していると、概要は分かったけれども、詳しいところまでは理解が難しいということもあります。
 実際上、ボリュームが多い調査報告書でも、章立てがされていまして、特にあなたの関心が強い部分を何度か読み返すといったことをすると、より理解が進むと思います。
 具体的な章立ては、事件の内容によって順番が変わったりもするのですが、大きくは、以下のような章立てとすることが多いように感じます。
 なお、調査報告書では「第1章」「第2章」といった書き方はせず、ページトップに


 監護の経過


といった表記をして、このページ以降は「監護の経過」の調査結果を記載しているということが分かるようにしてあります。逆に言いますと、調査報告のページトップのタイトルを見れば、このページには何についての調査結果が書かれているのかが分かるようになっています。

 具体的な章立て(オーソドックスなパターンであって、タイトルの付け方や順序は調査官によって千差万別です)は以下の通りです。
①調査経過
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、調査官がいつ何を調査したのかということが分かる部分です(「令和4年4月10日 母及び母手続代理人弁護士と当庁において面接」というように端的にいつ何をしたのかだけが記載されています。

②関係者一覧
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、当事者やお子様、親族等を簡単に記載しています。稀に、調査官によっては、関係者一覧を省略するケースもあります。

③監護の経過
 これまでの育児における両当事者のかかわり方などを記載しています。お互いの言い分が食い違っている場合には、「父はこう説明した」「母の説明はこうであった」といった形で記載してあります。

④当事者双方の状況
 お子さんのことではなく、両当事者の現在の生活状況や心身の状況、経済状況等を記載しています。

⑤○○に対する当事者双方の主張
 どちらかの親からお子様に対する虐待が疑われるケースやお子様の障害や疾患等との付き合い方でお互いの言い分が大きく食い違っているような場合には、別に章立てして、詳しくお互いの言い分を記載することもあります。

⑥現在の未成年者の状況
 現在のお子様の登校(登園)状況、生活ぶり、面会交流の状況等について記載してあります。この箇所の記載は、現在お子様の育児を担っている奥様側の陳述内容をかいつまんで記載するケースが多いです。

⑦関係機関の調査結果
 調査官が小学校・保育園、病院や児童相談所から見聞きした内容が記載されています。なお、児童相談所等からの回答が書面で回答された場合には、調査報告書の末尾に回答書が添付されているケースが多いです。

⑧家庭訪問の結果
 調査官が、あなたの家を家庭訪問した際の様子等が記載されています。

⑨未成年者との面接結果
 調査官がお子様と1対1で話をした際の様子等が記載されています。

⑩調査官の意見
 今回の調査結果を踏まえ、今後どのような進行が望ましいといったことが記載されています。今後の手続の進め方を見極めるにあたって、最も重要な記載箇所です。
 このように「調査官の意見」が最も重要な記載箇所なので、当職は依頼者に対して、調査報告書はボリュームがあるので、最初から順番に読むのではなく、まず、最後の方の「調査官の意見」の箇所を先に読んでみて下さい、とお伝えすることもあります。

 

 なお、上記の章立ては、調査官が期日間に関係機関調査や家庭訪問、子の意向調査といった調査を一挙に進めてしまうケースでの章立てです。事案によっては、まずは、関係機関調査だけを先行して実施するというケースもあり、その場合には、調査報告書には関係機関調査の結果だけが記載されます。

 

 

3.調査報告書については、明確に結論が書かれてしまうケースが多い


 前述の通り、調査報告書は、家庭裁判所調査官が裁判官に対して結果報告するレポートです。このように聞くと、裁判官がそのレポートも参考にして結論を下すように捉えられがちですが、実際はそうではありません。
 前述の「調査官の意見」の章の中に結論、要するに、父母のどっちが監護者としてふさわしいといったことまで書き込まれてしまっているケースが大半です。
 そのため、それを受け取った裁判官は、よほどの事情がない限り、調査官の意見の通りに審判を下してしまいます。
 このように、調査報告書は非常に重みのある書類と言えます。

 

4.こちらの資料の準備


 前述の通り、調査報告書の中にほぼ結論が書きこまれてしまいますので、こちらの資料の準備も、調査着手前にほぼ出し尽くしてしまう必要があります(要するに、「調査報告書が出た後に、資料の補足などをしよう」というように悠長に構えていてはいけないということです)。
 このように監護者指定事件では、調査発令のタイミングを見極めながら、調査発令前、または、調査発令直後まで(遅くとも、調査官が本格的な調査に着手する前まで)に資料を出し尽くしてしまう必要があります。

 

 

5.まとめ


・調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものである。
・調査報告書はボリュームが多くなるケースも多いので、各章立てを意識して読み解くと理解が深まる。
・調査報告書の中でも「調査官の意見」の章が最重要である。
・調査報告書の中の「調査官の意見」の章には、父母のどちらが監護者としてふさわしいといった結論まで明記されるケースが多い。
・そのため、資料の提出は調査官の調査着手前までに出し尽くしてしまった方が良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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