離婚問題

DV夫から婚姻費用(生活費)は取れるか。

2019.09.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>>「DV・モラハラの連鎖を断ち切る!!」DV・モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.旦那の性格からして「ビタ一文払わない」と言ってきそう


 

 DV夫は、基本的に自己中心的な考え方をしている人が多いので、こちらから生活費を要求しても「勝手に出て行っておきながら、生活費なんて払うつもりはない」だとか「お前が戻ってくれば今まで通り生活費は渡すからすぐに帰ってこい」といったことを平気で言ってくる人も多いです。

 ただ、あなた自身、もしくは、お子様がいらっしゃる場合には、あなた達の生活の問題でもありますので、相手の反発が予想されるとしても、必要な生活費は要求していく必要があります。 

 

 

2.生活費をいくら要求すべきか


 

(1)何か参考になる数字はないの?

 相手に生活費を要求する場合、いくらぐらいが妥当なのか?相場はいくらぐらいなのか?というのが気になるところかと思います。

この点は、実務では婚姻費用算定表で計算することが一般的です。

 

 裁判所がオフィシャルにて公表している算定表は下記の通りになりますので参考になさって下さい。

 家庭裁判所:算定表

 なお、離婚成立前の生活費は、法律用語としては「婚姻費用」と言いまして、離婚成立後は「養育費」になります。算定表をご覧になる際にも、「婚姻費用」の表をご覧下さい。

 

 

(2)算定表の数字をそのまま要求するのがよいか?

 上記の算定表の数字はあくまで基礎値となる数字です。あなたやお子さんの生活上、標準的な家庭よりも余分にお金がかかっている場合には、その分の加算を要求したり、敢えて算定表ではなく、一緒に生活していた時の生活費と同額という形で請求するといったケースもあります。

 なお、ここでの「標準的な家庭よりも余分にお金がかかっている場合」というのは、教育関係費や医療費で問題となることが多いです。たまに、「うちの子はよく食べる子で食費が高額なんです」といった話をなさる方がいますが、そのことで婚姻費用を加算させることは難しいことが多いです。

 

 例えば、教育関係費で言いますと、幼稚園の費用、習い事の費用、私立学校の学費や通学のための交通費などが問題になることが多いです。

 医療費については、あなたやお子様が持病を抱えているとか、夫からのDVやモラハラのトラウマ等で心療内科への定期通院が必要だといったケースが問題になりやすいです。

 これら教育関係費や医療費が余分にかかっている場合には、一定範囲で加算を要求するケースが多いです。

 いずれにしましても、一度あなたが要求した数字は、今後の交渉にあたって非常に重要ですので、あまり低めの数字を提示すべきではありません。

 

 

3.相手にどのような方法で要求するか


 

 相手はDV夫ですので、あなたが直接話をするということは危険を伴います。

  ましてや婚姻費用を請求するのは、あなたが別居を開始した後と言うことになりますので、相手は非常に感情的になっている危険性もあります。

 そのため、婚姻費用を要求する場合でもご実家のご両親その他の親族等を経由して伝えるとか、あなたが直接矢面に立たない形で請求した方が良いと思います。

 

 

4.相手が支払いを拒んできた場合


 

 上記のように身内等を間に入れても話が進まない場合や、間に入れる的確な人物がいないという場合には、家庭裁判所に対して婚姻費用分担調停を起こすことも検討せざるを得ません。

  そして、至急生活費を得たいという場合には、早めに調停を申し立てることをオススメします。但し、突如調停を起こしますと、DV夫側が強く反発する可能性もありますので、少なくとも一度は「生活費を払ってくれないのであれば、裁判所に調停を起こすことを考えている」という最後通告をした方が良いと思います。

 DV夫は自分の考えが絶対に正しいと考えている人が多いので、簡単に婚姻費用を支払ってこないことの方が多いと思います。そのため、早期に婚姻費用分担調停を申し立てるケースの方が多い傾向にあります。

 

 

5.婚姻費用分担調停で話がまとまらなかったらどうなる?


 

 せっかく調停を起こしたのに、相手が調停に出席しないとか、調停に出席はしたけれども一切支払いに応じないというケースもあります。

 

 このようなケースを懸念して、「最初から調停なんて起こさない方が良い」と考えている方もいますが、これは大きな誤解です。

 と言いますのは、婚姻費用分担調停は、調停がまとまらなかった場合、手続は審判に移行し、最終的に裁判所がきちんとした金額を決めてくれるのです。

 そのため調停が上手く行かなくても、あなたが泣き寝入りしなければならないと言うことは、あまりないと思います。

 

 別居中であっても、あなたやお子様の生活費を払うのはDV夫の当然の務めになりますので、積極的に婚姻費用分担調停を活用して下さい。

 

 

6.審判が出たのに夫が婚姻費用を支払わない場合どうすればよいか。


 審判で夫側が支払う婚姻費用の額が明確に決まったのに、それでも婚姻費用を支払わないという場合には、まず、裁判所に連絡をして、裁判所経由で支払うよう伝えてもらう(履行勧告や履行命令)という方法があります。

 ただ、それでもDV夫が支払いを拒むような場合には、給料の差押えと言った強制手段を取ることになります。相手の勤め先が分かっていれば、このように最終的には差押えによって回収できます。

 

 

7.実際にお金をもらえるまでにどのくらいかかる?


 婚姻費用は、あなたの生活費に関わる問題ですので、裁判所も極力早めに手続を進めてくれます。

 しかし、法律的な論点が発生しますと、どうしてもその解釈等で争いが生じますので、時間がかかってしまうことになります。

 

 例えば、①別居後もこちらの生活費の一部がDV夫側の口座から引き落とされている場合(例えば、あなたの携帯電話代やお子様の習い事の費用、学校給食費等)、②DV夫が転職等を繰り返しており、収入の判断が難しい場合、③お子様の私立学校の学費があり、その負担割合で争いがある場合等には、時間がかかる傾向があります。

 婚姻費用分担調停を起こしても、第1回期日は1か月以上先になりますし、通常は第1回期日で審判移行することはまずありませんので、争いが少ないケースでも審判の結論が出るまでには4,5か月はかかってしまうのではないかと思います。もちろん、上記のような争点が多い場合等には、もっと期間がかかってしまうことになります。

 

 

8.早く離婚したい場合には、婚姻費用にはあまりこだわらない方が良いか?


 私がDVの案件を扱っていますと、奥様の側から、「早く離婚したいので、婚姻費用の請求にはこだわらない」とか「婚姻費用を請求すると相手を刺激して解決に時間がかかる危険性が高いので、請求したくない」とおっしゃる方も相当数います。

 ただ、婚姻費用を請求しなかったとしても、DV夫側は「勝手に出て行ったんだから当たり前だ」などといって、他の問題でもめるというケースも多いです。

 また、DV夫が相手の場合、離婚による最終解決までにかかる期間は残念ながら長期化しやすい印象です。

 そのため、あなた自身十分な収入があるなどのケースは別として、そうでない場合には、婚姻費用をしっかりと要求するケースが大半ではないかと思います。

 

 

9.まとめ


・いくら婚姻費用を要求するかは、裁判所の算定表を一つの目安とするのがよい。

・相手への婚姻費用の要求は両親その他の身内等を介して請求した方が良く、あなたが直接DV夫と話をしない方が良い。

・DV夫が支払いを拒否するようであれば早めに婚姻費用分担調停を起こした方が良い。

・調停で話がまとまらなかった場合、審判で裁判所が妥当な金額を正式に決めてくれる。

・DV夫が審判結果にも従わない場合には、最終的には給料差押え等で回収していくことになる。

・審判での最終の結論が出るまでには早くとも4,5か月はかかることの方が多い。

・早く離婚したい場合でも、しっかりと婚姻費用を要求した方が良いことの方が多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV夫から子供を守る方法

2019.09.09更新

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1.DV夫から子供を守りたい


 

 DV夫があなたに対しても暴言を吐くけれども、子供に対する暴言の方がひどい、ときには暴力を振るうというような場合には、あなた自身というよりも、まずは、お子様の身の安全を最優先に確保したいと考えるのは当然のことです。

 なお、奥様によっては、自分は暴力を受けても耐えられるけれども、子供が暴力を受けるのは不憫でならないという方もいらっしゃいます。もちろん、お子様への暴力を防止する必要もありますが、あなた自身の身の安全もとても大切ですので、あなた自身の身の安全という視点も必ず忘れずにお考え下さい。

 

 

2.同居したままお子様の身の安全を確保する


 

(1)警察への通報が最も現実的な手段

 別居に踏み切ってもその後の生活力に不安があるとか、今すぐ離婚したいというところまでは気持ちが固まっていない等の理由で、早急な別居を躊躇っている場合、DV夫と同居しながらお子様の身の安全を図っていく必要があります。

 その場合には、DV夫がお子様に暴力を振るうようなケースですと、躊躇せずに警察に通報するということが重要ではないかと思います。

 

 警察に通報すると、DV夫を刺激してしまうと不安に思われたり、仕返しが怖いという方も多いと思いますが、その場その場で対処しておきませんと、DV夫からの暴力はエスカレートする一方ですから、躊躇せずに通報するということは大事なことではないかと思います。具体的な相談方法ですが、DV夫がお子様に直接暴力を振るっているタイミングや暴力を振るい終わったばかりのタイミングであれば、警察に110番通報をして臨場してもらう形を取ることになると思いますし、110番通報をしようとしても夫に妨害されるような場合ですと、暴力の翌日などにあなたとお子様とで警察署に出向いて相談するという形を取ることになると思います。

 なお、あなた自身が身を呈してお子様を守るという方もいらっしゃると思いますが、お子様への直接の暴力は防止できたとしても、お子様に対して、お母さんであるあなたが暴力を受けているという場面を見せる形になってしまいますから、お子様にとっても精神的負担が大きいと思います。また、あなた自身の身の安全の問題もあります。

 

 ちなみに、警察に相談すると、被害届を提出するか質問されることが多いです。しっかりと処罰してもらって懲りさせるという観点から被害届を提出する場合もありますし、逮捕等になると職を失うリスクもあることから、一旦は被害届は出さないという場合もあると思います。

 

 ただ、いずれにしましても、DV夫と同居したままですと、警察に通報して対処することにも限界がありますから、DV夫からの暴力の頻度が増してきたような場合には、速やかに別居を考えるということの方が現実的ではないかと思います。

 

(2)児童相談所の一時保護について

 警察に対して夫のお子様に対するDVを通報すると、警察の方から児童相談所に対して通告が行われます。

 そうすると、児童相談所の方からも事情を聴かれ、児童相談所の方で一時保護(要するに一時的にお子様を預かる)という事態に陥る危険性があります。

 

 児童相談所で保護されている分には、お子様の身の安全は確保されるのですが、他方で、①一時保護中は、現在通学している小学校に通うことができなくなる、②面会交流の頻度も限定されることが多く、あなた自身自由にお子様に会えなくなるリスクが高い、③一時保護の後、児童養護施設等での保護に移行した場合、離婚等の解決まで保護が解除されないリスクがあるといった難点もあります。

 

 特に、別居や離婚等について夫婦の意見の対立が深く、そのことが夫婦ケンカやお子様への暴力の原因になっているような場合には、児童相談所側も簡単には一度預かったお子様を帰してくれないというケースもありますので、児童相談所への対応という点では十分注意が必要になります。「一時保護」の「一時」という言葉で、「数日保護してくれるのかな?」と想像するかもしれませんが、一度一時保護されますと、(数日どころではなく)なかなか戻してもらえないというケースも多いので注意して下さい。

 

 

3.別居した上でお子様の身の安全を確保する


 

 前述しましたとおり、DV夫のお子様への暴力の頻度が増してきているような場合には、あまり期間を置かずに別居するという形の方が現実的な選択肢と言えます。

 

(1)別居先の安全性確保

 簡単に言いますと、相手方にこちらの住所を知られないということです。

 最も安全性が高いのはシェルターということになりますが、お子様の年齢が高い場合にはシェルターには入れないということもありますので、詳しくは最寄りの市役所や区役所に相談してみて下さい。

 

 なお、一時シェルターに避難できたとしても、シェルターにいられる期間は限定されていますので、シェルターを出た後の住居について検討しなければいけません。

 いずれにせよ、相手に知られないような住所に移り住むことが非常に重要になります。

 お子様の身の安全を最大限に優先するのであれば、学校を転校することはもちろんのこと、習い事等も一旦やめた上で、別居先近くの習い事に通わせるという形にする必要があります。

 

 ちなみに、実家が遠隔地の場合、実家に避難するということも考えてよいかもしれませんが、DV夫からの暴力がひどいような場合には、全くDV夫が知らない場所の方が安全性が高いです。

 

(2)保護命令の申立

 DV夫がお子様のみならずあなたにも暴力を振るって来るという場合には、あなた自身の保護命令を申し立てるのと同時にお子様への接近も禁止する旨の保護命令を同時に発令してもらうという方法が考えられます。

 この場合には、あなた自身が暴力被害を受けた診断書や写真等の客観的証拠と共に、お子様も同様に被害を受けた証拠が必要になりますので、保護命令の審理に耐えられるだけの証拠の準備ができるのかということが重要な鍵になります。

 なお、お子様への接近禁止の命令のみを申し立てることはできませんので、必ず、あなた自身への接近禁止等の命令と一緒で申立をする必要があります。

 

 

4.お子様の心理的ケア


 DV夫が全く知らない新天地に転居して新しい生活をスタートすれば、一定の身の安全は確保できますが、お子様の心理的ケアも大事です。

 転居して暫くの間は、お子様も、DV夫が追いかけて来るのではないか?こちらの居場所がバレてしまったらどうしようという不安を抱くことも多いと思います。新天地での慣れない環境でのストレスと、DV夫に居場所がバレるかもしれないというストレスを抱えながらの生活はお子様にとっても大変だと思いますので、その心理的ケアのために児童精神科等を受診する必要があることもあります。

 なお、前述のような警察の通報等を通じて児童相談所にも相談できる体制が整っている場合には、児童相談所に在籍する児童心理士のアドバイスなどを受けると、より的確にお子様の心理状態を把握し得る場合もあります。前述の通り、一時保護ということになるとデメリットも多いのですが、一時保護に至らず、児童相談所と上手に付き合っていけるようでしたら、色々と相談しながらお子様の心理的ケアなどを図れると思います。

 

 

5.まとめ


・同居しながらお子様の身の安全を守るためには、警察への通報が重要である。

・ただ、警察に通報すると、警察経由で児童相談所に情報が共有されるリスクがあるため、注意が必要である。

・同居しながらお子様の身の安全を確保することには限界もあるので、暴力が頻繁な場合には速やかに別居した方が良い。

・別居後は、別居先をDV夫に知られないということが再重要である。

・あなた自身が保護命令を申し立てた上で、合わせてお子様への接近禁止等の命令を申し立てる方法もある

・別居後は、お子様の心理的ケアも大事である。

 

 

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DV保護命令にDV夫は従うか?

2019.08.23更新

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1.DV保護命令とは?


 

 DV保護命令とは、DV夫があなたに接触すべく付きまといや徘徊することを禁止したり(接近禁止命令と言ったりします)、一定期間DV夫に自宅から退去させる(退去命令と言ったりします)裁判所からの命令になります。

 DV保護命令を発令させるためには、保護命令の申立書を提出し、裁判所はDV夫からも事情を聴く必要があります。

 

 

2.そもそもDV保護命令の効力は?


 

 あなたは、DV夫と共に生活し、夫からの理不尽な要求や非難等を浴びせられ、とてもではないが、裁判所の保護命令に従うとは思えないという方もいらっしゃると思います。

 私のところに相談に来られる方も、「夫は自分の考えを絶対曲げないので」とか「夫は自分が一番だと考えているので、とても保護命令に従うとは思えない」ということをおっしゃる方は多いです。

 

 それでは、保護命令の実効性を検討する前提として、保護命令にどのような効力が認められるのかについて解説します。

 

(1)罰則の存在

 DV保護命令に違反した場合、1年以下の懲役、100万円以下の罰金という罰則が設けられています。

 要するに保護命令に違反した場合、刑事罰を科すことができるということです(刑事裁判を経る必要がありますが)。

 

 もちろん、DV夫があなたに対して暴力を振るったり脅迫をした場合には、暴行罪や脅迫罪として処罰の対象になるのですが、このような暴行や脅迫に至らなくとも、保護命令に違反した場合、要するに、あなたの新しい住まいの周りを徘徊しただけで、上記のような保護命令違反の処罰が可能になっているのです。

 このことは、保護命令の実効性を確保する手段としてはかなり強力なものと言えます。

 

(2)警察との連携

 上記の通り、保護命令に違反した場合、それだけで刑事罰の対象になりますから、保護命令の制度には警察も密接に連携して対応してくれます。

 通常は、保護命令が発令されると、その日の当日に警察官がDV夫に対して直接電話連絡をし、保護命令を遵守するよう伝えてくれますし、近日中に(または当日)警察署に来るように指示され、呼び出される形でDV夫は警察署で話をすることになります。

 

 当然、DV夫が接近してきていると疑われる事情が発生した場合には、警察は親身に対応してくれます。

 このような警察との密接な連携は、DV夫に対する牽制の効果としては大きいです。

 

 

3.結局DV夫に知られない場所に引っ越す必要があることがほとんど


 

 上記の通り、保護命令の効力は強いのですが、限界もありますので、いずれにせよ、DV夫に知られない場所に引っ越す必要が出てくるケースがほとんどです。

 まず、保護命令を申し立てた際、裁判所は必ず夫側からも事情を聴く必要があります。保護命令は上記の通り強力な手段なのですが、他方で、夫側の行動の自由を制限するものになりますので、必ず夫側の言い分を確認する必要があるからです。

 

 その前提として、裁判所は夫側に、こちら側が提出した保護命令申立書や証拠類を事前に送っておく必要があります。こちらの言い分が分からないと夫側も十分な反論ができないからです。

 そのため、少なくとも、夫側に保護命令申立書が送られてきてから保護命令が発令されるまでの期間は、あなたは夫に知られないような場所に避難しておく必要が出てきます。夫が保護命令申立のことを知った場合、間違いなく、あなたに対して強く立腹するでしょうから、身を隠して身の安全を確保する必要があるからです。

 

 また、保護命令が発令したとしても、接近禁止命令についていいますと有効期間は6か月ですので、有効期間経過後、DV夫があなたに対してコンタクトを図る危険性があります。

 そのため、いずれにせよ、保護命令があったとしても、あなたとしては、夫側に所在を知られないような場所に転居する必要があるのがほとんどです。

 

 

4.DV夫はDV保護命令に従うか?


 私が担当した事件を見ておりますと、DV夫は、保護命令に従っています。DV夫も、警察に逮捕されてしまうと、非常に不便な生活を強いられますし、場合によっては仕事を辞めざるを得なくなってしまいますので、渋々保護命令に従わざるを得ないと考えるようです。

 また、前述のように、保護命令が出るようなケースですと、奥様の方も、DV夫が知らない場所に避難することがほとんどですから、DV夫がコンタクトを取ろうとしても、「居場所が分からないから接触できない」というのが実態だというケースも多いです。

 

 

5.まとめ


・保護命令に違反した場合には刑事罰があり、効果は強い。

・保護命令が発令した場合、警察と密接に連携して対応できる。

・保護命令が発令された場合でもあなたのみの安全を守るためには、結局、DV夫に知られない場所に転居する必要性が生じる。

・保護命令が出ると、DV夫側も渋々従うことが多い。

 

 

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DV保護命令を申し立てた方が良いかの5個のチェックポイント

2019.08.23更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>>「DV・モラハラの連鎖を断ち切る!!」DV・モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.DV保護命令とは?


 

 DV保護命令とは、DV夫があなたに接触するために付きまといや徘徊することを禁止したり(接近禁止命令と言ったりします)、一定期間DV夫に自宅から退去させる(退去命令と言ったりします)裁判所からの命令になります。

 

 DV保護命令を発令させるためには、保護命令の申立書を提出し、裁判所はDV夫からも事情を聴く必要があります。

 DV保護命令が発令されますと、警察も連携して対応してくれますので、実効性の高い手段になります。

 

 

2.DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイント


 

 DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイントは主に以下の5個のポイントがあります。

 

①DV夫の危険性の程度

 まず、一番検討しなければならないのは、保護命令の対象になる夫の危険性の程度ではないかと思います。

 普段から手や足が出ることが多かったという場合には、これまで怪我することが少なかったとしても危険性は高いと思いますし、他方で、これまでの長期間の婚姻生活の中で暴力を振るってきたのは1回だけという場合には、保護命令を申し立てるほどではないかもしれません。

 

 このような危険性の程度は、以下のような要素を総合的に検討して判断して下さい。
・暴力の頻度や回数
・暴力を振るってきた期間
・暴力の内容・程度
・凶器使用の有無
・あなたが負った怪我の程度
・暴力を振るうシチュエーション(飲酒すると暴力してくるとか)
・DV夫の気質や疾患の有無(特に、精神疾患等を抱えていないか)

 

 なお、たまに豹変するけれども普段は優しい旦那なので大丈夫という発想は危険ですので、前述のような要素を慎重に検討して、危険性を判断して下さい。

 また、保護命令の申立まではしなくとも、警察署から警告してもらえば十分であるというケースもあります。そのような場合には、あなたの方で自宅の最寄りの警察署に相談に行ってもらい、警察官の方からDV夫を警察署まで呼び出してもらい、直接注意してもらったり、DV夫から誓約書を提出させるという方法で済ませて一旦は様子を見ることもあります。

 

 
②現住居の安全性

 例えば、あなたが現在シェルターに居住しているというような場合には、現住居の安全性は非常に高いということになりますので、敢えて保護命令の申立までする必要性に乏しいということになる可能性もあります。

 他方、実家という場合、相手にこちらの所在は分かってしまっているのですが、ご実家のご両親等もいるため、実家で暴力まで振るう危険性は高くないというケースもあると思います。

 ただ、相手にこちらの住所が知られてしまっている場合には、裏を返すと相手がこちらの現住居付近を訪れることはできてしまうことになりますから、現住居を知られているか否かが、現住居の安全性の判断にあたって一番のポイントではないかと思います。

 

③弁護士費用の負担

 DV保護命令の申立をする場合、ご本人だけで申立をすることは難しいため、通常は、弁護士を立てて申請することになります(あなた自身の身の安全のためにもそうすべきかと思います。)

 そして、通常は、保護命令の申立事件は、離婚事件等とは別の事件として別途弁護士費用が発生することが多いため、あなた自身の負担が増えます。

 そのため、弁護士費用の負担についても保護命令申立の一つの判断材料にすべきかと思います。

 

④手持ち証拠の確認

 DV保護命令は申立をすれば簡単に認められるというものではなく、あなたが暴力を受けたことの証明をする必要があります。診断書や怪我をしたときの怪我の写真等の客観的な証拠が一切ない場合、保護命令が認められる可能性は残念ながら低いと言わざるを得ません。

 なお、暴言のみと言う場合にも、保護命令が認められることがありますが、あなたの生命や身体に危害を加えるような暴言がなされる必要がありますし、その暴言について録音データが複数存在しないと難しいことが多いかと思います。

 いずれにせよ、保護命令事件の審理に耐えられるような証拠の有無はしっかりと検討する必要があります。

 

⑤有効期限

 保護命令は、一度認められると半永久的に効力が認められるというものではありません。

 接近禁止命令は6か月、退去命令についても2か月が有効期間とされています。

 接近禁止命令、退去命令いずれについても再度申立をすることはできますが、当初の保護命令の有効期間中に相手方に何も問題行動がないという場合には、認められないことも多いです。

 そのため、上記のように有効期間が限定されるということは認識した上で、保護命令を申し立てる必要があります。

 

 

3.保護命令を申し立てるかは慎重に検討する必要がある


 事実としてあなたがDV夫から頻繁に暴力被害を受け続けてきたような場合、保護命令を申し立てて身の安全を確保したいと思うでしょう。しかし、前述のように、証拠が不十分ですと、折角保護命令を申し立てても、保護命令が認められないということもあります。

 そのため、申立をする前に、しっかりと保護命令発令という結論を得られるかを慎重に見極める必要があります。

 なお、前述の接近禁止命令が認められるとしても、退去命令までは認められないというケースもあります。

 そのあたりも、事前にしっかりと見極めた上で、申立を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。

 保護命令が認められるかどうかは、専門的な検討が必要になりますので、弁護士に相談して見極めるようにして下さい。

 

 

4.まとめ


・DV保護命令を申し立てた方が良いかどうかは以下の点を考慮して判断すべきである。

 ①DV夫の危険性の程度

 ②現住居の安全性

 ③弁護士費用の負担

 ④手持ち証拠の確認

 ⑤保護命令の有効期間

 

 

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2019.07.29更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<になります。

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1.別居先選び


 

 モラハラ夫との生活に強い恐怖感・不快感や倦怠感を持つようになった場合、別居や離婚が頭によぎるようになると思います。

 夫側に改善を要求したものの、一時的にしか改善されない、もしくは、改善すらされない、酷いケースですと、改善しないばかりか、これまでの被害が余計に悪化していくというケースすらあります。

 このような状況ですと、あなたは夫との生活を断念し、離婚の前提として別居を真剣に考えていくことになると思います。別居先の検討要素等について、以下の通り詳しく解説していきます。

 

 

2.別居先は近くがよいのか遠くがよいのか?


 

 別居といった場合にまず考えなければならないのは、別居先の問題だと思います。

 具体的な細かい場所はともかく、別居先選びにあたって大きな視点で、今の自宅の近くが良いのか、遠い場所の方が良いのかという点を検討する必要があります。

 

 別居先を近場とするのがよいのか遠隔地にするのがよいのかは、詳しくは、以下のような要素を総合して検討してみてください。

 

①同居中の夫の行動や言動等

 もちろん、同居中の夫からの暴力が日常的であったような場合には、できる限り遠隔地に転居した方が安全でしょうし、他方、夫のモラハラは無視が主体的であったという場合には、さほど遠隔地にまで転居しなくて良いかもしれません。

 夫の危険性とも言えますが、危険度の高低によって、別居先選択は大きく影響すると思います。

 また、モラハラ夫があなたにどのくらい執着しそうなのかによっても別居先選択の方向性は大きく影響します。この点は、同居中のあなたに対する監視や行動制限がどの程度のものだったのかによって見極めることができます。

 

②経済的問題

 仮に、夫の側から婚姻費用として生活費をもらうことを意図していたとしても、残念ながら、DV・モラハラ夫から生活費を回収するためには時間がかかってしまうこともあります。

 そのため、あなた自身の現在の収入に不安がある場合には、まずは実家に避難して、経済的な不利をカバーするというケースも多くあります。

 いずれにしましても、経済面は、今後のあなたの生活にとって非常に重要な要素なので、今後のあなたの生活が経済的に立ちゆかなくならないよう慎重に別居先を選ぶ必要があります。

 

③お子様の意見や教育面

 お子様が小学校高学年以上になると、小学校での友人が重要な存在になるというケースも多くあります。また、離婚や別居でただでさえお子様に心理的影響を与えるので、せめて教育環境は変化させたくないと考えることは、あり得ることかと思います。同じ学区内で引っ越すとなるとどうしても近場に引っ越す形になってしまうと思います。

 そのため、お子様の意見や教育面も、別居先選びの検討要素になります。

 ただ、最初は転校を嫌がっていたけれども、実際転校してみるとスムーズに馴染むことができたということも多いようです。

 

 

3.実際皆さんは近場と遠隔地どっちに転居したのか?


 

 私が担当している事件を見ておりますと、比較的自宅近くに別居した方もいれば遠隔地に別居した方もいます。別居先をどのように決めたのかについては、色々なご意見がありましたので、以下で説明を交えながら、詳しくご紹介いたします。

 

(1)夫が暴力を振るうので、シェルターに避難した。

 夫がモラハラにとどまらず、直接あなたに対して暴力を振るうようなケースですと、あなたの居場所が知られることそのものが身の危険を生じさせることになります。

 シェルターに避難することができれば、あなたが住んでいる場所を知られるリスクはほとんどなくなりますので、夫が暴力を振るうようなケースでは、シェルターに避難するケースも多いです。なお、シェルターにいられる期間は限られていますので、その方は、シェルター退所後は母子寮に転居して暮らしています。

 

(2)夫が暴力を振るうので、遠隔地を別居先にした。

 様々な事情からシェルターでの生活を選択しなかった場合や、一時はシェルターに避難した場合でも、通常シェルターにいられる期間は限られていますので、その後に、全く夫が知らない場所に引っ越す(前述の母子寮だけでなく、都営住宅等に転居なさる方などもいます)というケースなどです。

 夫が暴力を振るうようなケースでは、前述同様相手にこちらの居場所を知られないようにする必要がありますので、夫が居場所を探っても分からない場所に別居するのです。

 夫に居場所を推測されないようにする必要がありますので、あなたの実家や親戚の家の近く等は避けることが多いです。

 

(3)夫が暴力を振るうので、遠くの親戚の家に仮住まいさせてもらうことにした。

 これまでの説明同様夫が暴力を振るうため、どこか遠くに別居する必要があるけれども、通常の借家だと家賃が高いという場合などに、遠くの親戚の家に住まわせてもらうということもあります。

 ただ、親戚の家の所在を夫が知っていては避難の意味がありませんので、例えば、親戚名義の建物だけれども、親戚本人は住んでいないし、夫にも所在が発覚していない場所に避難するケースなどです。

 

(4)経済的な問題もあって実家に戻ることにした。

 別居を決断したけれどもすぐにしっかりとした収入を得ていくことが難しいとか、小さいお子さんがいらっしゃって実家の協力が必要だということで、実家に避難するケースです。これらの事情がある場合には、実家への避難が最有力候補になることも多いと思います。

 

 ただ、実家に避難する場合、モラハラ・DV夫に居場所を把握されるリスクが非常に高いので、以下のような要素を総合的に検討して判断するのがよいと思います。

(メリット1)家賃負担を軽減でき、経済的負担を抑えることができる。

(メリット2)お子様がいる場合など実家の協力が期待できる。

(メリット3)モラハラ・DV夫も、こちらの実家には頭が上がらないので、実家にいることで安全性が増す。

(デメリット1)居場所がバレやすく、玄関先で騒がれるケースなどもある。

(デメリット2)元々実家との折り合いがあまり良くないと、家庭内がぎくしゃくするリスクがある。

(デメリット3)お子様の通学先や通園先の当たりがつけやすくなるため、通学途中や通園途中の連れ去りのリスクが生じる。

 

(5)子どもを夫に会わせる手間等も考え、それほど遠くない場所に引っ越した。

 夫が直接の暴力を振るうわけではなく、また普段はほとんど暴言等を発しないというような場合には、自宅近くに引っ越すというケースもあります。

 夫が子どもを可愛がっており、子どもも懐いているという場合、無理に引き離すことはあまり望ましくありませんし、夫と子どもとの関係が良好であれば、円満な離婚につながる可能性もあるので、自宅近くに転居するのです。

 このような場合、引っ越し先が近距離なため、夫が頻繁に引っ越し先まで来て入り浸ると言ったケースが生じやすいため、こちらの離婚意思や別居意思をしっかり伝えておくなどして、半同居状態のような格好にならないよう注意が必要です。

 

 また、夫が普段から暴言ばかりではないとしても、感情的になるとどのような行動に出るか分からないという場合には、例えば、①まずは、2週間程度実家に転居して様子を見て、②ほとぼりが冷めた頃に自宅近くの別居先に避難し、そこで生活を落ち着かせるという方法を取ることもあります。このような場合には、①の別居開始の時点で早めに弁護士から夫宛に通知を送り、夫が感情的な行動に出ないよう予め牽制しておくという方法を取ることも多くあります。

 

(6)子どもの学校を転校したくなかったので自宅近くに住むことにした。

 このケースも、夫が直接の暴力を振るうわけではなく、また普段はほとんど暴言等を発しないというような場合が想定されます。

 特にお子さんが小学校高学年で、ほとんどの同級生が同じ公立中学校に進学するといった環境ですと、お子さんの教育環境に配慮して、学区が変わらない範囲で転居すると言うことです。

 なお、学校と習い事いずれが重要なのかを見極めて検討する必要があるケースもあります。何を言っているのかと言いますと、例えば、学校に馴染んでいるというよりも、実際には、同じサッカークラブの友人と仲が良いという場合、①そのサッカークラブに通い続ける前提で近場に転居するという選択肢もありますが、他方で、②サッカークラブ等ですと、モラハラ夫が見学や観戦に来てしまうリスクが高いということを考慮して、敢えて遠隔地に転居するという選択肢もあるのです。

 

 もちろん、お子さんの教育環境は重要ですが、お子さん自身は夫との接触を強く嫌がっているといった場合には、あまり住居が近いと、夫から面会交流を頻繁に求められるリスクも高くなりますので、そのようなリスクも考慮しながら引っ越し先を検討する必要があります。

 

 

4.まとめ


・別居先選びの検討要素として重要なものは①夫の同居中のDVやモラハラの状況・程度、②あなたの今後の経済面、③お子様の意見や教育面といった点になる。

・モラハラ・DVの案件では、別居先として以下のようなところが選ばれている。

 ①シェルター

 ②遠隔地の親戚の家(夫に居場所が全く判明していない場所)

 ③実家

 ④自宅近くの賃貸マンションを借りた

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

性格の不一致だけでは離婚理由にならない?の実際

2019.04.01更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.性格の不一致は離婚理由になるか?


 

 「離婚理由」という場合、大きく分けて二つの意味があります。一つめは、相手に離婚を切り出す理由になるかという意味、二つめは、裁判で勝てるだけの理由になるかという意味です。 

 

 まず、一つめの離婚理由という意味で言いますと、あなた自身性格の不一致で夫との今後の生活に限界を感じているという場合、『性格の不一致』は立派な離婚理由になります。ただし、実際に相手に離婚を切り出すとなると、具体的にどのような夫の言動や動作から今後一緒にやっていけないと感じたのかをしっかりと整理して旦那に話す必要が出てくると思います。

 

  次に、「裁判で勝訴できるだけの理由」という意味での離婚理由になるかというと再度詳しく検討していく必要があります。

 と言いますのは、離婚裁判ですと、裁判所が強制的に離婚を命じることができるのですが、本来離婚するかどうかは当人同士の意思に委ねるべき話ですから、「裁判で勝てるだけの離婚理由」というのは法律で厳格に制限されているのです。そのため、本当に性格の不一致以外に一切離婚理由が存在しないという場合、「裁判で勝てるだけの理由とは言えない」と言われてしまうリスクが非常に高くなってしまいます。 

 

 

2.別に裁判をしたいわけではないんだけれど…


 

 私の経験上離婚のケースで大半は裁判にまで行かずに調停または協議で解決しています。

 そのため、あまり裁判ということで身構えて考えて頂く必要性は少ないと思います。

  しかし、少数ですが相手の反発が大きく裁判を避けられないと言うこともありますので、事前に裁判になることを考えながら準備を進めていけると安心です。

 

 

3.そもそもそれってモラハラでは?


 

 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージを持たれる方も多いと思います。しかし、あなた自身がモラハラの意味をしっかりと理解していませんと、あなたの本当の離婚理由を見極めることはできませんし、夫からも軽く見られてしまう可能性があります。本当はモラハラなのに、モラハラの意味がよく分からないがために離婚できないということは絶対に避けなければいけません。 

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。

 

 これだけではなかなかピンと来ないと思いますので、ある程度類型化して整理しますと、以下のようにまとめられると思います。

 

①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)

②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)

③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)

④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)

⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)

⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)

⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)

⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。

⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。

⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)

⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う

⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。

⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)

⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

  夫との日常生活の中で、上記のようなモラハラ行為のいくつかを実際に体験しているのではないでしょうか。そうしますと、あなたの離婚理由は「性格の不一致」ではなく「モラハラ被害」になる可能性があります。

 

 

4.モラハラ内容の整理


  上記のようなモラハラの項目に当てはまる場合、夫婦生活の中で具体的にどのようなエピソードがあったのかをしっかりと思い出す必要があります。

具体的には5W1Hの要領で「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「何故」「どのように」したのかを思い出すようにして下さい。特にモラハラ夫から心ない言葉を浴びせられたという場合、具体的なセリフまで思い出すのが望ましいです。

 このようにして思い出す作業を通じて、あなたとしても離婚の意思を固めることができると思いますし、夫側にも詳しい話をしやすくなると思います。

 

 

5.いざ離婚という場合どのように手続を進める必要があるか


 

 通常、離婚は直接あなたの口から夫側にしっかりと伝える必要があります。そして夫婦でしっかりと話ができるようでしたら離婚に向けた話し合いをしてみて下さい。

 当人同士での話し合いが難しい場合、身内や友人等間に入ってくれる人間を探して、話し合いをすることも検討してみると良いでしょう。

 その様な身内等を入れての話し合いも難しいという場合には、家庭裁判所への調停も検討対象になります。調停は裁判所で行われる手続になりますから、不安があるようでしたら弁護士に依頼することもいよいよ考えなければなりません。 

 

 

6.まとめ


・性格の不一致も、そのことであなたが夫とやっていけないと考えるのであれば、離婚を切り出すに当たっては十分な理由になる。

・ただし、相手が激しく抵抗してきて離婚裁判も視野に入れなければならない場合、離婚裁判に耐えられるかの検討が必要な場合もある。

・性格の不一致のつもりでも、実際にはモラハラというケースも多いので、その様な観点から検討する必要がある。

・モラハラの項目に当てはまる場合、その具体的エピソードを5W1Hの要領で思い出していくと良い。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

東京家庭裁判所入り口・女性刺殺事件の報を受けて

2019.03.20更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

本日、東京家庭裁判所入り口付近にて女性が刺殺されるという痛ましい事件が発生してしまいました。被害女性の方及びご遺族の方々には心よりご冥福をお祈りいたします。

 

1.現場に居合わせた身として、離婚事件の専門家としてどの様に思うか


 

 実は、私は本日東京家庭裁判所に事件の関係で向かっておりまして、偶然事件現場に遭遇しております。被害女性のご遺族の方々のご心境等を考えますと、私の方からは、当時の様子等についてこの場でお話しすることはできないのですが、現場に居合わせた身としまして、今回の様な事件が発生したことについては遺憾という他申し上げられないという気持ちです(なお、私は、今回の事件の加害男性や被害男性の代理人弁護士ではございませんし、その他の直接の事件関係者でもございません)。

 私は、モラハラ・DVを含めた離婚事件に力を入れております関係で、今回の事件について若干のコメントをさせて頂こうかと思います。

 

(1)私としては3重にショック

 1)やはり、今回被害者の方がお亡くなりになった、尊い命が失われたと言うことについて非常に大きなショックを受けております。

 2)次にショックを受けたのは、裁判所という公的な場で今回の様な凶行が行われたと言うことです。軽度のモラハラ加害者であれば、裁判所では恐縮するという人物も多いのですが、今後は「裁判所であっても何が起こるか分からない」という気持ちをさらに強めつつ事件処理にあたっていく必要があると感じております。

 3)最後にショックなのは、調停中ということです。調停は裁判所を間に入れた話し合いであって、いわゆる「裁判」とは異なります。調停中どの様なやりとりがあってこのような惨事が起きてしまったのか分かりませんが、このような話し合いの最中に事件が起きたことにはショックを禁じ得ません。

 

(2)東京家庭裁判所の保安検査について

 東京家庭裁判所正面にはセキュリティがひかれておりまして、いわゆる空港の入場時検査の様な手荷物検査、ゲート型金属探知器等があります。そのため、私が普段東京家庭裁判所を利用する際には、「裁判所建物内では凶器や危険物の処理が非常に難しい状況にある」という認識ではおりました。

 今回の事件は、このような検査手前の場所(「東京家庭裁判所建物内ではあるけれども保安検査のゲートの直前の場所」という意味です)が事件現場になっておりますので、上記の保安検査の不備等ではないのかと思います。

 

 今回のトラブル発生時に警備員の方々が適切に対応できていたのか等については、今後の報道等にて、事後的に検証されていく問題かと思います。

 

(3)特にDV離婚のケースでは常に調停時にトラブルが発生しないか神経を遣っている

 私はDV離婚のケースも取り扱いますので、被害女性の方と一緒に調停に臨む場面もあります。その場合に一番神経を遣いますのは、①家庭裁判所への出入りの際に加害男性から暴力その他の攻撃を受けないかという点と②家庭裁判所から出た後加害男性から尾行されないかという点になります。

 今回の様な事件が起きる前から、上記①②のトラブルが発生しない様、裁判所にも配慮を求め、裁判所にも対応してもらってきたのですが、今回の事件を受けて、他に対応できる点がないか慎重に考えていく必要があろうかと思っております。 

 

 

2.そもそも弁護士を立てているのに本人が裁判所に足を運ぶ必要があるのか?


 

 

 今回の東京家庭裁判所の刺殺事件において、加害者や被害者が弁護士を立てていたのかは分かりかねるのですが、私が対応している事件では基本的にご本人にも家庭裁判所にご足労願っております。それは以下の様な理由によるものです。

①これまでの夫婦関係の詳しい事情はご本人にしか分からないため、弁護士だけでは調停委員との受け答えに限界がある。

②これまでの夫婦関係の詳しい事情はご本人の口から話をしてもらった方が調停委員への印象力が大きい。

③調停を担当している調停委員の様子や調停の進め方などご本人にもしっかりと把握してもらった上で手続を進めたい(離婚するかどうかは人生に1度や2度しかない重要な出来事なので、その経過についてもしっかりと把握して欲しいと考えております)

④少なくとも離婚調停成立時にはご本人が出席していただかないと手続が完了しない。

⑤ご本人が調停に参加することで弁護士として新たな気付き等がある。

 

 ほとんどの弁護士は離婚調停に取り組むにあたって、ご本人にもご足労願っていると思いますが、私もそのような手続の進め方をさせていただいております。

 

 

3.今後どの様な配慮が必要になるか


 

 

 今回の事件を受けて、特にDV被害を受けてきた女性の方々は、より一層家庭裁判所に足を運ぶことに恐怖感をお持ちになったことと思います。

 そのため、まず、DVの明確な証拠が複数存在するケースでは、私の様な弁護士のみが調停の場に出席し、極力ご本人には裁判所まで足を運んでいただかないという方法が考えられます。

 この方法で、調停の道筋がつくようでしたら最後の調停期日のみご本人に出席していただいて調停を成立させるという方法が考えられます。他方、調停の道筋が到底就かなさそうという場合には、早めに調停手続に見切りをつけて、離婚裁判を起こすという方向での検討もできるかと思います。

 

 悩ましいのは、DVの明確な証拠が少ないというケースです。この場合、あまり早急に裁判に訴えることは敗訴のリスクがありますので、取り得ないということになります。このような場合に被害者の方の不安を軽減させながら、裁判所にご出席いただく方法が検討できないか慎重に裁判所とも協議していくほかないと思います。

 

 

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内縁解消調停が上手く行かなかった場合の裁判とは?

2019.03.11更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.内縁解消裁判という裁判はない


 

離婚の問題の場合、離婚調停が上手く行かなかった場合、離婚裁判を起こすことになります。そして、この離婚裁判の中で、養育費や財産分与、慰謝料の問題もセットで審理していくことが可能です。

これに対して、内縁の場合には「内縁解消の裁判」というものはありません。離婚の場合、相手が断固として離婚届にサインをしないければ、離婚することができませんから、どうしても離婚したい場合には、裁判所が言い渡す判決で離婚する他ありません。

 

これに対して、内縁の場合、最初から内縁関係は戸籍に登載されておりませんので、内縁解消届といった書類へのサインは必要ありません。そうすると、裁判所が内縁解消を命令しなくとも、同居を解消してしまえば事実上内縁は解消できてしまいますから、「内縁解消の裁判」というものはないのです。

そのため、内縁解消調停で解決しなかった問題は、それぞれ個別に審判や裁判を起こさなければならなくなります。

 

 

2.具体的にはどういう手続きを取るの?


 

先ほど説明しましたとおり、内縁解消の問題はそれぞれの問題について裁判や審判を起こす必要が出てきます。

具体的には、養育費や面会交流、財産分与、慰謝料といった問題が出てきますが、それぞれの事件を起こさなければならなくなるのです。離婚の場合には、「離婚裁判」という大本の手続が一つ出来上がりますので養育費や財産分与、慰謝料といった問題は、大本の手続である離婚裁判に付随する形で取り扱ってくれますので、この点が内縁解消と離婚の大きな手続の違いといえます。

 

より具体的に申しますと、養育費審判、面会交流審判、財産分与審判という3つの審判手続と、慰謝料訴訟という一つの裁判が乱立するような形になるのです。審判は同じ家庭裁判所で審理が行われますから、併合して手続を行うように求めることができますが、慰謝料の問題だけは裁判で行わねばならず、これは地方裁判所で審理を行う関係上、審判と一緒に審理してもらうということはできません。

 

 

3.審判・裁判と調停の違い


  調停と比較していくと裁判や審判がどのようなものか、概要を掴むことができると思いますので、まずは比較しながら概説いたします。

 

 審判・裁判と調停との間にはいくつもの違いがあるのですが、大きな違いとしては以下のような点が挙げられます。

①裁判は判決を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。

②裁判は原則公開法廷で行われますが、調停は非公開で行われます。

③裁判には控訴という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできません。

④裁判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではありません。

⑤裁判では基本的に当事者本人が出席する必要がありませんが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要があります。

 

 それぞれについて具体的に説明して行きます。

(1)裁判は判決を目指す

 冒頭でも説明しましたとおり、裁判は判決を得ることを目的としており、判決が言い渡されて、その内容が確定すると、不満のある当事者も判決の内容に従わざるを得なくなります。

 調停の場合には、相手の提案に納得が行かない場合には、納得いかない旨を述べれば調停は成立しませんので、相手の言い分を強要されることはありませんので、この点が裁判と調停の一番大きな違いと言えます。

 

(2)裁判は原則公開法廷で行われる

 調停は調停室という会議室のような部屋で行われるのですが、裁判は原則として法廷(テレビドラマなどに出てくるのは通常この「法廷」になります)で行われます。但し、裁判の途中から弁論準備手続という手続に入ることも多く、弁論準備手続は基本的に非公開で行われます。

 

(3)判決に対しては控訴という不服申立ができる(審判に対して即時抗告)

 離婚裁判の結論として判決が言い渡された場合でも、その判決に不満がある当事者は、控訴をして、その判決内容を争うことができます。

 これに対して、調停が成立した場合、後で気持ちが変わったとしても調停の内容を覆すことはできません(不服申立手段がありません)。

 なお、離婚裁判の中で当事者間の話し合いが上手くいった場合には、「和解」が成立することがありますが、この和解に対しては不服申立ができません。

 

(4)裁判では書類のやり取りが中心になる

 裁判では、最終的には裁判官が判決を書くことになりますので、当事者の言い分が不正確にならないように、お互いの言い分は準備書面といった書面に書き起こして主張してゆくことになります。

 調停の場合には、特に調停委員が希望する場合を除いて、言い分は調停室内で口頭にて述べられますので、この点も裁判との違いになります。

 

 このように裁判では本人の言い分が裁判官にきちんと届くように書面をまとめることが非常に重要になりますので、裁判期日当日というよりも当日よりも前の準備書面の準備が重要になります。

 実際上も、裁判期日当日は、短い時には5分程度で終わってしまうこともあります(「事前に書類を提出したとおりです」と発言するだけで終わってしまうこともあるからです)。

 

(5)裁判には原則本人は出席しなくて良いし、通常は出席しない

 内縁関係解消調停の場合、仮に弁護士が代理人に就いたとしても、本人が調停手続に出席する必要があります(弁護士も同席します)。

 これに対して、裁判の場合、代理人が法廷に出席すれば良く、本人が出席する必要はありません。

 裁判の場合、上記の通り、書類のやり取りが中心になりますので、期日当日本人に事実確認をする必要がなく、御本人に出席していただく必要はなくなるのです。

 

 

4.裁判の具体的イメージは?


  

 裁判というと、よくドラマでやる様な相手を証言台に立たせて尋問することをイメージする方も多いと思いますが、実際の裁判は少し違います。

 大きなイメージとしては、①お互いの言い分を言い尽くすステップ→②必要な証拠を出し尽くすステップ→③尋問手続→④判決という流れになります。この説明だけでは、今一ぼんやりとしか分からないと思いますので、より具体的にご説明します。

 

①お互いの言い分を言い尽くすステップ

 前述の通り、裁判は調停とは違って口頭で説明するのではなく書面を提出して説明していくことになります。要するに、養育費の金額が○円というのが正当だと考える根拠や慰謝料○円が正当だと考える根拠といった点を詳しく説明する書類を裁判所に提出するのです。

 このような説明書類はいったん説明すれば済む気もするのですが、このような説明書類に対しては相手も反論してきます。相手の反論に対して再反論し、また相手から反論がありと言ったやりとりを何度か繰り返していくことになります。

 

②必要な証拠を出し尽くすステップ

 上記の言い分を言い尽くすステップの中で通常は、裏付け証拠も一緒に提出していくことになります。例えば、相手からのモラハラがあった証拠として相手からのLINEを証拠で提出したり、と言った具合です。

 前述の言い分を再度振り返って、提出が漏れていた証拠などを発見することもありますので、最後に、証拠を出し尽くすステップが設けられるのが通常です。

 

③尋問のステップ 

 上記の様なやりとりを経て、ようやく尋問のステップに到着します。いわゆるドラマでよくやる証言台で相手から話を聞くステップです。

 このように尋問のステップは、かなり終盤で実施されるステップとお考えいただければよいと思います。

 なお、養育費や財産分与の審判などは金銭問題に的を絞った審判になりますので、通常は尋問は行われません。

 

④判決(決定)

 上記の様なすべてのステップが終わると、裁判所の方から判決が言い渡される期日が指定されます。お互いの言い分と証拠がすべて出そろったので、裁判官が、言い分や証拠をもとに判決文を書き上げるのです。前述の通り判決文には強制力がありますので、それには従う必要があります(但し、判決に不服がある場合には控訴することが可能です)。

 

 

5.ケースにもよるが弁護士としてはあまり裁判をオススメしない


 

 もちろんケースにもよりますので一概には言えないのですが、私が弁護士としての立場で申し上げさせてもらいますと、裁判はあまりオススメしません。大きな理由は以下の通りです。

 

①最終解決までに時間がかかる

 裁判の手続を進めますと細かな資料の提出を求められるなどして相当期間を要することが多いため、最終的な離婚までに時間がかかってしまいます。

 

②御本人にとって精神的負担が大きくなる

 ①の点にも増して、裁判になると御本人の精神的負担が大きくなります。

 といいますのは、裁判になりますとお互いが主張の出し惜しみをしなくなりますので、お互いに内縁生活でイヤだと思った点、傷ついた点、不十分であった点などを最大限主張してゆくことになるので、このような書面を見るたびに気持ちが滅入ってしまいます。

 

 相手の言い分が事実ならば多少はよいのですが、裁判になりますと誤解に基づく発言や当時のシチュエーションを無視した主張などがなされますので、余計に精神的な負担が大きくなります。

 もちろん当事者間の対立が激しく、相手が不合理な言い分に固執しているような場合などは裁判に手続を進める他ないでしょうが、そうでない場合には基本的に調停による決を目指す方が望ましいと思います。

 

 内縁関係解消調停が行き詰まるなどして、今後の進め方に不安があるような場合には早めに弁護士にご相談下さい。

 

 

6.内縁解消特有の問題


 

 内縁解消に伴う財産分与や慰謝料の紛争では、ほとんどのケースで、相手がそもそも最初から内縁関係は成立していないといった言い分が述べられます。そのため、こちらから内縁が成立しているという根拠を証拠と共に主張していかなければならないケースがほとんどです。

 また、仮に内縁が成立していたとしてもお互い納得の上で一旦解消しているから今更慰謝料は払わないという主張が展開されることもあります。その様な場合にはしっかりと内縁解消には至っていないといった事情を証拠と共に主張していかなければならないケースもあります。

 特に内縁の成立については慎重に判断しようと考える裁判官も多いため、難所の一つと言えます。

 

 

7.まとめ


・内縁解消裁判というカテゴリーの裁判は存在しない。

・結局内縁解消時の問題に関してはそれぞれの問題について個別に審判や裁判を起こす必要がある。

・裁判と調停を比較するとより手続を理解しやすいと思うが、具体的には大きく以下のような違いがある。

①裁判は判決を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。

②裁判は原則公開法廷で行われますが、調停は非公開で行われる。

③裁判には控訴という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできない。

④裁判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではない。

⑤裁判では基本的に当事者本人が出席する必要はないが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要がある。

・大きな裁判の流れとしては以下のようなステップで審理が進んでいく

①お互いの言い分を言い尽くすステップ→②必要な証拠を出し尽くすステップ→③尋問手続→④判決

・裁判には時間と心理的負担がかかるため極力避けた方が望ましい。

・内縁解消に伴う裁判の場合、相手が内縁を否定してくることがほとんどなので、その証明が必要になることが多い。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

内縁解消調停って何だ?

2019.03.04更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.内縁関係解消調停って何だ?


 

 内縁関係解消調停とは、一般的には、内縁夫婦が当人同士でお話し合うことが難しい時に、家庭裁判所の調停委員を間に入れて内縁解消時の条件等について話し合いをする手続などと言われたりします。

 しかし、この説明だけでは漠然としていてイメージを掴むことは難しいと思いますので、できる限り具体的に内縁関係解消調停というものがどのようなものなのかをご説明します。

 

 

2.そもそもこの調停は何を目指す調停なのか?


 

 通常この調停を起こす場合、内縁関係は成立しているけれども、相手が急に態度を豹変させたとか、連絡が取れなくなってしまったという場合に、内縁解消自体には合意しつつ、金銭面を含めた条件について話し合いをする手続になります。

 調停の席での話し合いが順調に進めば、内縁解消の条件等を調えることができます。

 ただ、相手が頑なに内縁関係の継続を希望するような場合、調停では解決しないという場合はあります。

 

 

3.調停を申し立てる前にすべきこと


 

(1)相手に最後通告を送る

 いきなり調停を起こしますと、裁判所からの封書が来て相手は驚いてしまうと思います。そのため、相手には最低1回は内縁関係解消調停を起こす旨の最後通告はしておいた方が良いと思います。

 このような最後通告を行うことによって、相手が話し合いに応じてくる可能性もありますので、極力事前に通告をしておいて下さい。

 

(2)相手が内縁関係を否定してきた場合に備えて証拠の準備

 相手が調停の場で、内縁関係の存在そのものを否定してくる可能性もあります。そのため、内縁関係を証明できる証拠があれば、事前に証拠集めをして、調停の場でも調停委員に見せられるように準備しておいた方が良いと思います。

 

 

4.調停委員ってどんな人?


 

 内縁関係解消調停は、裁判官1名と調停委員2名(男性1名、女性1名)の合計3名が間に入って執り行われます。と言っても、裁判官は複数の事件を担当していますので、実際に調停室で直接話をするのは基本的に調停委員2名と言うことになります。

 

 では、この調停委員というのはどういう人なのかと言うことですが、原則として40歳以上70歳未満の人で、社会生活上の豊富な知識経験や専門的知識を有する裁判所職員になります。弁護士、大学教授や裁判所書記官OBなどが調停委員になるなどしています。

 

 

5.内縁関係解消調停ってどこで行うの?


 

 内縁関係解消調停は家庭裁判所の建物内の一室で行われます。調停委員に、こちらの自宅などに出向いてもらって話し合いをするということはできません。

 

 テレビのドラマなどを見ていますと、いわゆる裁判所の法廷の場面が映し出されていますが、調停が行われるのは一般的な法廷ではなく、イメージとしては会議室のような場所で行われます。

 会議室と言っても何十人も座れるような広い会議室ではなく、6人掛け(いわゆる誕生日席2席を加えると8名が座れる程度)のテーブルが入って多少余裕がある程度の部屋とイメージしていただければ分かりやすいと思います。

 

 

6.内縁関係解消調停って何時行うの?


 

 調停が開催される期日は完全事前予約制なので、予め日時を決定しておき、その日に裁判所に足を運ぶという方式になります。

 調停が行われるのは平日の日中ということになりますので、土日祝日や夜間に調停を行うことはできません。そのため、平日お仕事をされている方は、調停の日はお仕事を休むか早退するなどして出席することになります。

 

 この調停期日は一方的に裁判所から決められることはなく、基本的にはご本人の都合を聞いて日時が決定されます(但し、第1回調停期日については、相手方の都合は聞かずに日時が決定されます)。

 

 ただ、担当調停委員によって担当曜日が決まっているのが一般的ですので、その曜日の中から日時を選択するという形式が一般的です。つまり、担当曜日が月曜日と木曜日というように決まっているという場合、月曜日か木曜日の中から期日を選択して行くことになります(逆に言うと水曜日を希望しても水曜日に調停を開催することは難しいということになります)。

 

 

7.1回の調停はどのくらいの時間がかかるの?


 

 1回の調停は2時間程度で終わります。ただ、話し合いの状況に応じて2時間よりも長くなったり短くなったりすることもありますので、2時間というのは一つの目安だと考えて下さい。

 

 

8.当日の調停の流れは?


 

 調停の流れは裁判所や調停委員によって差があるので画一的ではないのですが、一般的には以下のような流れで進むケースが多いです。

①内縁夫婦はそれぞれ別々の待合室で待機

        ↓

②調停委員に事件番号(またはお名前)を呼ばれるので、調停委員の案内で調停室に入室

        ↓ 

③内縁夫婦双方が揃った調停室にて調停委員から調停手続の概要を説明(第2回目の場合、前回の調停での話し合いのおさらい及びその日の調停での目標等の確認)

        ↓

④申立人のみが調停室に残って調停委員と話し合い(30分程度が目安)(相手方は待合室で待機)

        ↓

⑤申立人が調停室を退室し、入れ替わりで相手方が調停室に入室、相手方のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)

        ↓

⑥相手方が調停室を退室し、入れ替わりで申立人が調停室に入室、申立人のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(相手方は待合室で待機)

        ↓

⑦申立人が調停室を退室し、入れ替わりで相手方が調停室に入室、相手方のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)

        ↓

⑧内縁夫婦双方が揃った調停室にて調停委員と次の調停の日時を決定し、同時に次回までの宿題などの確認をする。

 

 なお、上記の③と⑧については、調停委員によっては内縁夫婦別々で確認を行うということもあります。

 

 

9.調停室内に入れるのは誰?


 

 よく自分一人で調停室に入っても上手に話ができるか不安があるので、ご自身のお姉様やお母様も同席させて欲しいとおっしゃる方もいます。

 しかし、調停の手続は非公開の手続(御本人以外の方の傍聴などが認められていないということです)ですので御本人以外が入室することはできません。

 なお、弁護士に事件を依頼した場合には、弁護士も調停室に同席することができますので、その点では安心です。

 

 

10.調停が開催される頻度は


 

 調停の期日の間隔は1か月程度になります。ただ、夏期や年末年始は調停を行わない時期がある関係で、この時期の調停の間隔は1か月以上空くことが多いです。

 

 

11.そもそも相手は調停に来るか?


 

 調停はあくまで裁判所を利用した話し合いの場になりますので、相手が法律的な出席義務を課されることはありません。

そうすると、相手が欠席するのではないかと不安に思われる方もいますが、家庭裁判所から封書が届きますので、相手も出席してくることの方が多いと思います。そのため、最初から「相手が出てこないかもしれない」と考えて調停を起こさないのではなく、相手も来る可能性が高いものとして調停は活用して行ければと思います。

 

 

12.調停が成立した場合の拘束力は?


 

 よく「調停が成立すると判決と同様の拘束力がある」と言われたりします。

そのため、例えば養育費をいくらだとか、財産分与をいくらと定めたのに、相手が約束を破った場合、強制執行をして強制的に取り立てることができるようになります。強制執行とは裁判所の手を借りて、相手の預金や給料からお金を取り立てることをいいます。

 そのため、調停での結論には強い効力が認められています。

 

 

13.まとめ


・内縁関係円満調整調停は、内縁夫婦の関係が円満な形を取り戻すことを目指す手続である。

・調停委員は40歳以上70歳以下の学識経験者等が就任する。

・内縁関係円満調整調停は、裁判所建物の中の会議室のような場所で行われる。

・調停は平日の午前または日中に行われる。

・1回の調停は合計2時間程度で終わる。

・2時間の調停では最初に手続の説明、その後交互に調停委員が本人から話を聞くなどし、最後に次回までの宿題等の確認を行うという手順で進むことが多い。

・調停室には本人しか入れない(弁護士が就いている場合は弁護士も入れる)

・調停は1か月に1回程度の頻度で開催される。

・相手は調停の席に出席する義務はないが、大体の人は出席してくることが多い。

・調停が成立した場合には判決と同じ効力が認められる。

 

 

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内縁解消時に踏むべき全手順

2019.02.18更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「本当に分かりやすい詳しいブログ解説」を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

  

1.大ざっぱに言うと内縁解消の問題には3つのステップがある


 

大ざっぱに言いますと、内縁解消の問題には3つのステップがあります。

 

①話し合いのステップ

      ↓

②内縁関係解消調停のステップ

      ↓

③各種裁判のステップ

 

一般的には皆さんどのような手順で手続を進めるのが多いのかを含めて、以下で詳しくご説明致します。

 

 

2.話し合いのステップ      


 

(1)まずは本人同士の話し合い 

最終的には内縁生活の精算を含めたお金のやり取り等を含めて全て話し合いで解決することをゴールとする手続です。

このような話し合いがまとまればよいのですが、話し合いがまとまらない場合には、「当人同士の話し合い」以外の方法を模索する必要があります。

  

(2)本人同士の話し合いがまとまらないとすぐに調停なのか?

 本人同士の話し合いがまとまらない場合、ご両親等の身内の方を交えて話をしたり、友人等に間に入ってもらって話をするというケースもあります。身内や友人を間に入れれば、感情的な議論を避ける効果がありますので、間に入ってくれるような的確な人物がいないか検討してみて下さい。

 上記のような的確な第三者が居ないという場合には、弁護士が間に入って話し合いをするケースもあります。弁護士を間に入れると、すぐに調停手続になると誤解されている方も多くいますが、弁護士が間に入ることで話し合いがまとまるケースもありますので、弁護士としては話し合いによる解決を目指すケースの方が多いと思います。

 

 (3)協議書は作った方が良い?

内縁解消の際には養育費や財産分与、慰謝料といったお金に関わる問題についても話し合いをしますので、その様な話し合いの結果は、「協議書」といった書面にまとめ、内縁夫婦双方の署名押印をして下さい。特に養育費などは、お子様が少なくとも成人するまで支払う必要があるお金になりますの で、きちんと協議書に金額を明記しておくと安心です。

 

 (4)内縁関係かどうかで対立することがかなり多い

 以上が一般的な内縁解消の話し合いの進め方になりますが、そもそも、お金の話を持ち出すと、相手が「あなたとの関係は内縁と呼べるような関係ではなかった」といったことを言い始める人も多いのが実情です。

 このような議論に発展する場合には、細かな内縁解消の条件についてまで話が進みませんので、いよいよ調停も視野に入れなくてはならなくなりますし、調停準備にあたっては内縁を証明できる資料がどこまであるのかの整理も必要になってきます。

 

(5)最後通告はしておいた方が良い

  身内の方や友人等が間に入っても内縁解消条件の話し合いがまとまらないケースや、間に入ってくれる的確な人物が居ないという場合には、本格的に弁護士を雇うことや調停を申し立てることを考えなければならなくなります。

 

 ただ、その場合にも、可能であれば「このまま話し合いが進まなければ弁護士を雇うことになるよ」という最後通告はしておいた方が良いと思います。このような最後通告をしますと、相手も諦めて譲歩してくる可能性もあるからです。

 

 また、相手が一時的に感情的になっていると思われる場合には、一旦相手が冷静になるように1,2か月期間を置くことで順調に話し合いができたというケースもありますので、一定期間間を置くという方法も検討の余地があります。

 

 

3.内縁解消調停のステップ      


 

 (1)話し合いの次の手続は内縁解消調停

上記のような話し合いのステップが全て上手く行かなかった場合、次のステップは内縁解消調停ということになります。

内縁解消調停となりますと、話し合いをベースにする手続とは言っても、裁判所において行われる手続になりますので、本格的に、弁護士に依頼するかを検討しなければならないタイミングでもあります。

 

内縁解消調停は、1か月に1回程度の頻度で裁判所の調停委員が間に入って話し合いが行われることになります。調停手続では原則として内縁夫婦本人同士が直接顔を合わせることはありませんので、その点は安心して手続を進められると思います(但し、最初の手続の説明や最後の調停条項の読み上げなど一時的に内縁ご夫婦同席となるケースもありますので、この点はご注意下さい)

 

なお、内縁解消の問題はほとんどが金銭問題のみになりますので、慰謝料請求訴訟等すぐに訴訟を起こすことができるのですが、内縁解消調停の枠組みの方が内縁解消に伴う条件を全て話し合うことができますので、通常は内縁解消調停を起こし、調停が上手く行かなかったときに訴訟という手順を取ります。

 

(2)内縁解消調停が不成立になった場合、すぐに裁判か?

  ちなみに、内縁解消調停手続で折り合いがつかなかった場合、すぐに裁判を起こすべきかについては慎重に検討する必要があります。

 裁判は互いに相手を中傷し合う場になりますので、心理的負担が大きいとともに、手続の終了まで時間がかかることが多いため、裁判をしないで済む場合には、 しない方が良いからです。

 

  そのため、どのタイミングで裁判を起こすのかについては、慎重な検討が必要になります。

 

 (3)分離合意の可能性の模索

 内縁解消の条件としては、主に、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割といった問題を話し合うのですが、慰謝料の問題は意見が食い違っているけれども、養育費や財産分与については意見の食い違いがほとんどないというケースもあります。その様な場合には、養育費や財産分与についてだけ調停を成立させ、慰謝料の問題だけを別の手続にするという方法を取ることもあります。

 後述するように、内縁解消の金銭問題は、それぞれの問題について審判や裁判の手続きが必要になりますので、その全てについて審判や裁判を起こすと、手続が分岐して手数が多くかかってしまいますし、最終的な解決までに時間がかかってしまう虞があるからです。

 

 

4.裁判のステップ      


 

上記の「内縁解消調停」も上手く行かない場合には、裁判の手続きに進むことになります。

 

  なお、離婚の場合には「離婚裁判」というものがありますが、内縁の場合には「内縁解消の裁判」というものはありません。離婚の場合、相手が断固として離婚届にサインをしないければ、離婚することができませんから、どうしても離婚したい場合には、裁判所が言い渡す判決で離婚する他ありません。

 これに対して、内縁の場合、最初から内縁関係は戸籍に登載されておりませんので、内縁解消届といった書類へのサインは必要ありません。そうすると、裁判所が内縁解消を命令しなくとも、同居を解消してしまえば事実上内縁は解消できてしまいますから、「内縁解消の裁判」というものはないのです。

 

 従って、裁判に移行するという場合には、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割といったそれぞれの問題について、それぞれ裁判・審判の手続を行う必要が出てきます。

裁判と調停との大きな差は、①調停委員会ではなく、裁判官が間に入る、②話し合いではなく判決(決定)という命令を得るために主張を戦わせて行くことになるという点です。なお、裁判においては、裁判期日で詳しく事情を聴かれることはあまり多くないので、ご依頼者様ご本人が出席する必要は基本的にありません。

 

このように裁判は、内縁解消の手続きの中でも最終ステップに位置付けられる手続になり、裁判官から最終結論が示されることになります。分かりやすく俗な言い方をさせていただきますと「白黒つける」手続になります。

 

ただ、内縁ご夫婦の問題になりますので、裁判官も最終的な判決言い渡しではなく、和解による解決を促してくることが多く、実際にも和解で解決するケースも少なくありません。

 

 

6.まとめ


 ・内縁解消の手続きには、①話し合い、②内縁解消調停、③審判や裁判という3つのステップがある。

・当人同士の話し合いが上手く行かなかったからと言って、すぐに調停ではなく、身内や友人を間に入れる方法や弁護士を間に入れて合意を目指すという方法もある。

・内縁解消調停に進む決意をした場合や、弁護士を雇う決意をした場合でも、最後に相手に最後通告はした方が良いことが多い。

・話し合いのステップが全て上手く行かなかった場合には、内縁解消調停の申立を考える必要がある。

・内縁解消調停で上手く折り合いがつかなかった場合でも、裁判を起こすタイミングは慎重に検討する必要がある。

 

 

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