離婚問題

【弁護士が解説】モラハラで協議離婚できるか?

2017.12.04更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、モラハラ情報盛りだくさん!弁護士秦のモラハラ総合サイトは>>こちら<<になります。

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1.モラハラとは何だ?


 

 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。

 

 これだけではなかなかピンと来ないと思いますので、ある程度類型化して整理しますと、以下のようにまとめられると思います。

 

①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)

②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)

③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)

④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)

⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)

⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)

⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)

⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。

⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。

⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)

⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う

⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。

⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)

⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

 

 

2.協議離婚とは


 

 協議離婚とは、ご夫婦が離婚届に署名押印して役所に届け出ることで離婚が成立することを言います。

 ご夫婦同士の話し合いで離婚に合意した場合はもちろん、ご夫婦同士の話し合いが難しく、間に弁護士が入って協議離婚が成立することもあります。

 

 協議離婚は、調停離婚、裁判離婚と対比した用語として用いられますが、一番のメリットは、時間をかけずに離婚できるという点かと思います。

 

 これに対して、調停離婚ですと、家庭裁判所における調停手続で離婚する手続きになりますので、どうしても一定期間を要してしまいます(調停申立の準備が必要になりますし、申立をしても調停期日は1ヵ月以上後になります。また、1回の調停期日で結論が出ないことも多いです)。

 

 

3.モラハラだから協議離婚できないということはない。


 

 モラハラのケースですと、モラハラ被害者側が協議離婚を最初から諦めているケースも多くあります。

 

 「夫は自分の意見を絶対に曲げないので、こちらから離婚を言い出すと、絶対に反対してくると思います」とか「何度か離婚を切り出したことがあるのですが、その都度、激しく暴言を受けてきましたので協議離婚は難しいと思います」といった形で諦めてしまっているのです。

 しかし、弁護士が間に入ることで、相手が態度を軟化させてくることはあります。弁護士を立てるということは、「本気で離婚したいと思っている」ということを直接相手に伝える効果がありますし、弁護士まで出てくることで観念して、モラハラ夫も離婚も致し方ないと考えるのです。

 

 私が担当した事件でも、当初は協議離婚が難しいと思われても、実際ねばり強くモラハラ夫と話をしたところ協議離婚が成立したケースは何件もあります。

 

>>「DV夫とスピード離婚(2ヵ月で離婚成立)」

このケースはDVのケースですが、暴言もひどく、モラハラ離婚にも通じるものがあると思います。

 

 

4.協議離婚のために弁護士として心がけていること


 

(1)離婚原因の詳細を確認する

 モラハラ被害者の方から詳しい離婚原因の聞き取りを致します。多くの場合は、モラハラ被害の詳細になりますが、このような被害内容を共有することで、被害者の方に目線を近づけた上で弁護活動を行うことができると考えています。

 また、モラハラ加害者である夫側と直接話をする際には、「嫁はどうして離婚したいと言っているんですか?」という質問が必ず出ますので、それに回答する準備としての意味合いもあります。

 

(2)モラハラ夫に対してメリハリを付けて対応する

 モラハラ夫と話をする際に一番心がけているのはメリハリを付けるという点です。絶対に応じられない点については断固応じられない旨を明確に伝えますが、他方できめ細かく対応した方が良い点についてはきめ細かく対応すると言うことです。

 

 奥様が所在を明らかにせずに別居を開始した場合、モラハラ夫からは「嫁がどこにいるのか教えろ」とか「嫁と直接会って話をしないと離婚を決められない」という話が必ず出ます。これに対しては、居場所は絶対に教えられない、直接会うことも絶対にできないと回答し毅然と対応することになります。

 これに対して、詳しく奥様が離婚したい理由を知りたいという要望が出された場合には、その理由を細かめに説明して行くことになります。

 

 

5.調停に切り替えた方が良いケースでは早めに切り替える


 

 私が交渉に当たる場合、できる限り早めに離婚できるようにモラハラ夫と粘り強く話をして協議離婚を目指しますが、夫側が離婚を拒絶する姿勢が強固な場合、早めに調停離婚に切り替えた方がよいということもあります(交渉がずるずると延びてしまうよりも、調停に切り替えた方が結果的に早いということもあるのです)。

 私がモラハラ夫と直接話をしておりますと、協議離婚での解決が難しいという判断はできますので、その見極めができ次第調停離婚の手続きを取ることになります。

 

 

6.親権獲得が絡む場合


 

 特にお子様の親権について激しい意見対立があるようなケースですと、仮にモラハラ夫が離婚に応じたとしても、親権を譲らないと言うことも想定されますので、その場合には、早めに調停に切り替えた方が良いケースが多いと言えます。

 

 なお、たまに「早く離婚したいので親権は諦めた方が良いでしょうか?」とご質問される奥様がいらっしゃいますが、こちらについては、絶対に親権は諦めない方が良いという回答になります。

 今は一刻も早く離婚したいでしょうけれども、親権を渡してしまいますと、今後お子様と会うことにも不便を来す可能性がありますので、2年後、3年後には「親権を渡すべきではなかった」と思われる方が多いからです。

 

 

7.慰謝料請求とのバランス感覚


 

 特に深刻なモラハラ被害を受けているケースですと、モラハラ夫に何のお咎めもなく離婚することには納得できないということも多いと思います。これまで長い期間に亘ってモラハラ被害を受けてきたのですから、その様に考えるのも当然だと思います。

 

 ただ、モラハラ夫は自分の暴言等が正当なものだと考えている人が非常に多いため、慰謝料を支払うことに強く抵抗してくるケースが多いのも事実です。

 そのため、ケースによっては、奥様の側で、慰謝料の金額を減額し、または慰謝料額をゼロにした上で、早期に離婚することを希望される方もいらっしゃいます。

 

 

8.金銭面の条件は公正証書にする


 

 協議離婚する場合、離婚そのものは離婚届を提出するだけで決着します。

 ただ、お子様がいる場合には、夫側から養育費を支払わせる必要がありますので、金銭面の条件については、公正証書を作成することが多いです。

 弁護士が間に入って離婚条件を固める場合には、最低限、離婚協議書を作成し、合意した内容を書面化するのですが、離婚協議書だけですと、夫側が養育費の支払いをしなくなってしまった場合に、強制執行の権限が付与されません。

 そのため、しっかりと養育費をもらい続けるために、協議離婚した場合にも、養育費といった金銭面は公正証書を作成しておくのです。 

 

 

9.まとめ


・モラハラであっても協議離婚できる。

・モラハラ離婚の場合、弁護士としては被害者の方から詳しく事情を確認し共感することが重要である。

・モラハラ離婚の場合、弁護士としてはモラハラ夫とメリハリを付けて話をする。

・調停に切り替えた方が結果的に早く離婚できるケースでは早めに調停に切り替える。

・早く離婚したいからと言って親権を手放してはいけない

・早期離婚と慰謝料獲得とのバランスを考えなければならないケースは多い。

・養育費等金銭面については公正証書を作成することが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が解説】モラハラ証拠の決定版はこちら!

2017.12.01更新

弁護士秦

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1.モラハラを理由に離婚したいのに、相手が事実を否定している


 

 モラハラの形態は多様なのですが、もっとも典型的なモラハラである暴言に関して言いますと、口頭でのやりとりのため、旦那側が暴言を誤魔化してくるケースが非常に多くあります。

  相手がモラハラを否定しても離婚に応じてくれるというのであればまだ良いのですが、モラハラ夫でよくある言い分は「俺はそんなこと言ってないから離婚しない」「そもそも離婚する理由がない」と言ってくることです。  

 

 そのため、これから相手と調停や裁判で離婚を争っていくという場合、モラハラの証拠がどの程度あるのか、どのようなものがあるのかというのは十分に検討していく必要があります。

 

 

2.やっぱり確実なのは録音データ


 

 DVのケースですと、怪我を負わされるケースが多いため、診断書や怪我の部位を撮影した写真がもっとも確実な証拠と言えます。これに対して、モラハラの場合には目に見える怪我は残りませんので、診断書や写真を準備することはできません。

 そのため、相手がどのような雰囲気でどのような言葉を発したのか、こちらからの発言に対してどのように抵抗してきたのかと言ったところを正確に記録できますので、その意味で録音データは確実な証拠になるといえます。

 

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。

(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。

 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。

 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。

 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、あなたがどのように対応したのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

 

(2)録音データは複数あった方が心強い

 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。

 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、あなたの反応やお子様の反応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

 ちなみに、録音データを裁判所に証拠として提出する場合、そのデータだけではなく、文字起こしも一緒に提出する必要があります。

 そのため、録音データを証拠として提出する可能性がある場合には、早めに文字起こしを準備し始めておくということも必要になってきます。

 

 なお、たまに動画データを準備している方もいます。もちろん、動画を準備できるのであれば、それでも良いのですが、いくつか難点もありますので、注意が必要です。

動画撮影の一番の難点は、夫側に隠れて撮影することが非常に難しいということです。動画撮影されていることが分かっている場合、夫は、暴言などを発しなくなってしまい、折角の証拠収集のチャンスを逃してしまいます。次の難点は、動画ですと自宅内の色々なものが映り込んだりしてプライバシーの問題が生じかねないという点です。そのことで特に動画の証拠力が失われてしまうということではないのですが、夫側のプライバシーの問題が生じた場合、夫側はその動画撮影そのものの問題点を指摘し始めて議論が長引いてしまうケースも多いです。

 

 

3.LINEやメール


 

 例えば、夫があなたに対してLINEやメールにてモラハラ発言をしてきたというような場合、有力なモラハラの証拠になります。

 

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面が明らかにこちらを誹謗中傷する内容のような場合には、十分モラハラの証拠にはなります。

 

 メールやLINEに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやLINEをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 

 バックアップの方法としては、問題となるメールやLINEをスマートフォンで開き、スクリーンショットデータの形でパソコンにも残すといった方法がオーソドックスかと思います。LINEのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 なお、夫側とLINEでやり取りをしていると、夫側が過去のモラハラ発言を認めることもあります。このLINEも証拠になり得るのですが、その時の状況等にも左右されますし、どこまでのことを認めているのかによって証拠価値は変わってきます(例えば、あなた「2年前に随分ひどいこと言われたよね」→夫「あの時のことは謝ります。」のやり取りですと、抽象的過ぎて、残念ながらあまり証拠力は高くないです。これに対して、例えば、あなた「昨日何度も「死ね」って言われたけど、あんな言い方ってないんじゃない?」→夫「「死ね」なんて言葉を使うべきじゃなかった。酔った勢いなんだけど反省しています。」といったやり取りですと、モラハラ夫の具体的なフレーズなども出ていますので、証拠力は高いです)。

 

 更に、あなた自身が、モラハラ被害を受けた際に親友や親族に対してLINEやメールで相談してきたという場合、内容次第ではモラハラの証拠になり得ます。なお、どの程度モラハラの立証に役立つかは、LINEやメールの文面はもちろん、タイトル名、相談しているモラハラ被害の具体性、文面全体の位置づけ等を考慮する必要があります。

 

 

4.物の被害


 

 物に深刻な被害が生じた場合、モラハラと言うよりDVに近くなる様にも思えますが、モラハラの延長で、夫が投げつけてきた場合、破損した物は証拠になり得ます。例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 なお、壊されたものの現物については、「もう壊れているから捨ててしまった」とおっしゃる方も多いのですが、必ず写真を撮るなどして、物が壊れた状況を証拠に残した上で廃棄するようにして下さい。

 

 

5.女性センターや子育て支援センター等への相談記録


 

  モラハラ夫の暴言に悩まされている場合、その間に女性センターや子育て支援センターにご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、相談した際のやりとりがセンターの方に保管されていますので、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。

 

 なお、モラハラの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子育て支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、モラハラの件があまり記載されていないこともあります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ女性センターに相談するはずないんだから、相談をしているだけで、モラハラの証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。

 現状の裁判実務を見ますと、「女性センターに相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

6.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 

 例えば、熟年離婚のケースで、既に成人しているお子様が、当時のモラハラの様子を証言してくれるという場合、お子様はモラハラの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、モラハラに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親のモラハラを誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

 

7.日記


 他にほとんど証拠はないけれども、日記をつけていた、という方も相当数います。

 ただ、日記につきましては、残念ながら、あまり証拠として重視されないことが多いです。

 日記は、いつ作成したのかを客観的に証明することが難しいというのが最大の難点です。録音データであれば、プロパティーを開けば、作成日時が客観的に分かりますし、LINEやメールも、送信日時が記録されます。これに対して、日記については、仮に、手帳のカレンダー欄などに記載されていたとしても、その日に本当に記載したのか正確に判断することができません(これは非常に極端な例ですが、例えば、令和5年11月1日に離婚裁判が始まって、令和5年11月15日に令和元年の手帳を買ってきて、そこに今から書き込んで、「令和元年に書いたものです」と言い張る人も出てき得るということです。同じ令和元年の手帳なのですが、本当に当時書き込んだものなのか、もっと後に書き込んだものなのかは手帳だけを見ても分かりません)

 また、日記については、あなたの主観が反映されている可能性があるという問題点を指摘されることもあります。例えば、モラハラ夫から30分近く説教をされた場合、その後すぐに日記を書くにしても、30分の説教の内容を一言一句間違いなく思い出して日記化できる人はいないと思います。一定の記憶の範囲でしか日記は書き残せないので、正確性が問題になることも多いのです。

 

 

8.モラハラの証拠が少ない、ほとんどないという場合


 

 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった夫が豹変して暴言を吐いてきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、夫の暴言を受け入れられず、また元の優しい夫に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。

 私の経験上、今ある証拠をもとにモラハラ夫を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 

 ただ、そのような場合、どのようにモラハラ夫と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

9.まとめ


・録音データはモラハラの最有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・LINEやメールは書き込みの内容次第であるが、モラハラ発言などが直接書かれていれば有力な証拠になる。

・女性センターや子育て支援センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接モラハラの証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・日記は、あまり証拠としては重視されないことが多い。

・モラハラの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

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モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット&デメリット

2017.11.20更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、モラハラ情報盛りだくさん!弁護士秦のモラハラ総合サイトは>>こちら<<になります。

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1.そもそも、モラハラ離婚は弁護士に依頼した方が良いのか。


 

  詳しいメリット、デメリットは後述しますので、そちらをご覧いただければと思います。ただ、通常の離婚とは異なり、モラハラ離婚、特に夫があなたに対して激しい暴言を浴びせ、そのことで精神的に不調が生じているという場合には、弁護士に依頼されることをオススメしています。

 

 とは言いましても、皆様なかなか弁護士との接点もないでしょうから、以下に弁護士に依頼するメリットとデメリットを整理しました。今回は「モラハラ」による「離婚」という問題に特化して解説しますので、参考にして下さい。

 

 

2.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット1】直接やり取りしなくて済む


 

 モラハラ離婚を弁護士に依頼する最大のメリットは、あなたがモラハラ夫と直接やり取りをしなくて済むという点ではないかと思います。私のところに相談に来られるモラハラ被害者の方々も、「怖くて直接話をすることができない」「身の危険を感じる」「夫を前にすると言葉が出なくなる」とおっしゃる方は多いです。

 

 モラハラのケースでは、モラハラ夫がこちらの意見に耳を貸さない、理解しようとしないというケースが多いように思われますので、直接やり取りをするだけで精神的にすり減ってしまうと言うことが多いと思います。また、ご自身で離婚を切り出すと、夫側が逆上して、暴言被害が増えるリスクもあります。

 これに対して、弁護士に依頼すると、弁護士が窓口となって交渉をしますので、直接当事者間で話をする必要がなくなります。

 

 

3.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット2】相手の論法に巻き込まれない・丸め込まれない


 

 こちらも、私のところに相談に来られる方が、よくおっしゃることなのですが「夫は理屈っぽいので絶対に言葉ではかなわない」とか「普通に話をすると丸め込まれてしまう」、「結局夫が気に入る結論じゃないと納得しないので、いつまでも話が終わらない」といったことをおっしゃる方が多いです。

 

 モラハラ夫は、自分のしているモラハラ行為を完全に正当であると考えている人が非常に多く、そのため、自分の主張に強い自信を持っている人、自分の理屈を曲げようとしない人が多いというのが一つの特徴と言えます。

 そのため、ご本人で話をしたり、友人に間に入ってもらっても、相手が理屈を曲げないために、交渉が進展しないと言うことが往々にしてあります。

 

 これに対して、モラハラの問題に詳しい弁護士が間に入った場合、弁護士は、相手がどのような主張を展開してくるかある程度予測できますので、相手の論法に巻き込まれません。

 

 

4.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット3】常に道標がある安心感


 

 前述のようにモラハラ夫は、自信を持って自分の主張を展開してくることが多いため、聞いている方は、自分の考え方が間違っているのではないかと不安になってしまうことが多くあります。

 

 しかし、弁護士が間に入れば、常に弁護士のアドバイスを受けながら手続を進められますので、その様な不安もなく安心することができます。

 

 

5.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット4】裁判を視野に入れた準備


 

 モラハラのケースでも、大半のケースでは、少なくとも調停離婚までで決着しています。とは言いましても、モラハラ夫が無理な言い分を曲げないため、調停離婚もまとまらず、どうしても裁判離婚を避けられないというケースも出てくることがあります。

 

 前述のように、モラハラ夫は自分の主張に自信を持っている人が多いため、こちらから説得しても、理解しようとしないことが多いため、離婚協議や調停が上手く進捗しないケースもあるのです。

 

 離婚裁判になりますと証拠がない主張は認められにくくなってしまいますので、調停の進捗などを見て、裁判でも勝訴できるだけの証拠を集める作業などを進めて行くことができます。このような準備を進めておけば、調停が不成立になってしまった場合でも、スムーズに裁判の手続きにスイッチさせることができます。

 

 

6.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット5】避難先を知られずに手続ができる


 

 特にモラハラがひどいケースでは、ご自身で別居を開始しているか、別居を決意されていると思います。

 

 そして、相手からの暴言が過激であったり、執拗な場合、避難先を知られてしまいますと、モラハラ夫が押しかけてきて近所で騒ぎ始めるといったリスクもあります。

 

 さらに、モラハラ夫に避難先を隠したままにしておくと、モラハラ夫は、あなたの現住所を教えることが離婚の話し合いの前提条件だと言い放って話が進展しないこともあり得ます。

 

 この点、弁護士は守秘義務を負っていますので、弁護士がモラハラ夫に、あなの現住所等の情報を漏らす危険性はありません。当然、モラハラ夫は弁護士に対しても、執拗にあなたの現住所を聞き出そうとしてくることもありますが、弁護士は粘り強く住所を教えられない理由を説明して、局面を打開して行くことになります。

 

 

7.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するメリット6】相手の外面に騙されない


 

 これは、モラハラ問題に詳しい弁護士に言えることなのですが、私を含めてモラハラの問題を多数扱っている弁護士は、夫側がどれだけ外面が良くても、そのような外面には騙されません。どんなに外面が良くても、「家庭内では別の顔を持っている」とよく分かっているからです。

 逆に、モラハラの問題に疎い弁護士だと、夫の本質を見抜けずに、誤った方向に話を進めてしまうリスクもあります。

 モラハラ問題に詳しい弁護士であれば、そのようなこともなく、安心してお任せいただけます。 

 

 

8.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するデメリット1】弁護士費用の負担


 

 弁護士に事件を依頼することになりますので、どうしても弁護士費用がかかってきてしまいます。

 ただ、私がご依頼を受ける場合、いくら弁護士費用がかかるのかを明確にご説明しますので、ご安心してご依頼頂けます。

 

 

9.【モラハラ離婚を弁護士に依頼するデメリット2】結局調停には本人出席が必要


 

 私のところに相談に来られる方の中には、弁護士に依頼する場合、弁護士に全て手続を任せるので、ご自身で裁判所まで足を運ぶ必要はないと誤解されている方もいます。

 

 もちろん離婚協議の際に、ご自身で足を運んで頂く必要はありませんが、離婚の手続きが調停のステップに上がってしまった場合、調停の席にはご本人にも出席して頂く必要が出てきます。

 

 ただ、その場合にも、①必ず弁護士が同行しますし、②相手と同じ部屋で話し合いをするわけではありません。また、③裁判所で相手に遭遇するリスクを極力減らすよう裁判所とも連携して行きますので、裁判所でトラブルになるケースは少ないと思います。

 

 

10.まとめ


●モラハラ離婚を弁護士に依頼すると以下のようなメリットがある

 ①モラハラ夫と直接交渉等のやり取りをせずに離婚できる。

 ②弁護士が間に入るので、相手の論法に巻き込まれない

 ③随時弁護士のアドバイスを受けられるので、常に道標がある安心感を持てる。

 ④離婚裁判も視野に入れた準備を進めながら手続を進められる。

 ⑤避難先を知られずに離婚できる。

 ⑥夫の外面に騙されずに交渉してもらえる。

●モラハラ離婚を弁護士に依頼すると以下のようなデメリットがある

 ①弁護士費用がかかる。

 ②離婚調停にはご本人も出席しなければならない(弁護士同行)。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が解説】モラハラ被害者が陥りがちな5つの落とし穴

2017.11.13更新

弁護士秦 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)真太郎です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、モラハラ情報盛りだくさん!弁護士秦のモラハラ総合サイトは>>こちら<<になります。

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1.モラハラ被害者が陥りがちな落とし穴って?


 

 私がモラハラ離婚の問題を取り扱っておりますと、これから離婚したいという方だけではなく、離婚してしまったが離婚の条件決めで後悔しているというご相談を受けることもあります。

 

 また、これから離婚したいという方でも非常に自分を卑下してしまっているといったこともあります。

 そこで、以下私がモラハラ離婚に関わる被害者の方と接して思うところをご紹介します。

 

 

2.【落とし穴①】「自分が悪い」の誤り


 

 この点は、私がモラハラ被害者の方と接していて非常によく思う点です。

 ご本人は、自分が原因を作ってしまったのだから、まずは自分の行動を改めなければならないとか、自分が頑張れば幸せだった結婚生活に戻れるといった形で、夫婦関係の円満な状況を作るように努力を重ねているのです。

 

 自分が原因を作ってしまったと考えているモラハラ被害者の方は、正直にモラハラ夫に謝罪したりしてしまうため、余計に夫は増長し、モラハラ被害が深刻になる、余計に家庭環境が悪化するというケースが多くあります。

 そして、モラハラ夫の方も、あなたに対して「お前が悪いんだ」という言葉を繰り返し伝えてくるため、あなたも「そうなのかもしれない」「気を付けなければいけない」と考えてしまうのです。

 

 私は、モラハラのケースを多数取り扱っていて、モラハラ夫と直接対峙する場面も多いです。直接話をしていて感じることは、モラハラ夫は自分の発言や行動に異様なまでに自信を持っていることが多いです。あまりに自信満々に話されてしまいますと、「もしかするとそうなのかな?」と誤解してしまいそうになることもあるほどです。家庭内では、モラハラ夫は、何度も繰り返し、あなたに対して「俺が正しい」「おまえは間違っている」と言ってくるので、あなたの方としても「そうなのかもしれない」と思ってしまいます。

 しかし、ひどいモラハラ被害を受けている場合、夫のやっていることは完全に悪いことなのであり、何らかの発端があったとしても、「あなたが悪い」ということは絶対にありません。そのため、「原因を作った私が悪い」という発想は完全に誤りです。

 

 
3.【落とし穴②】「自分さえ我慢すれば良い」の誤り


 

 また、この話もモラハラ被害者の方からよく聞くお話なのですが、特にお子様がいらっしゃる専業主婦の方でこのような発想をお持ちになることが多いです。

 離婚しても子どもと生活していくだけの収入がないし、離婚すると片親になってしまう子どもが不憫だという発想を持つのです。

 

 しかし、モラハラの頻度にもよりますが、モラハラで夫が大声を上げる場合や、あまりに汚い言葉を使うような場合、それを聞いたお子様はどのように思うでしょうか。また、モラハラ夫はお子様に直接あなたの悪口を伝える場合もあります。お子様は聞きたくもない母親の悪口を聞かされることになるのです。このようなことがお子様の健全な成長にとって良いはずがありません。

 

 自分の父親が母親に頻繁に暴言を吐く様子を見て育った子どもは、そのことが当然のことだと感じてしまい、その健全な成長に大きな問題を生じさせる虞があります。また、お子様にとっては母親はかけがえのない存在ですので、母親が一方的に責められる様子を見て心を痛めることも多いと思います。

 

 そのため、あなた自身が我慢すればよいと言う問題ではないこと、度々暴言を浴びせられている場面をお子様が知り得る場合、そのお子様に悪影響を与えていることを考慮した方が良いと思います。

 

 また、あまりに我慢を重ねるとあなた自身の身体又は精神を疲弊させる原因にもなります。心身の不調を生じさせると家事や育児にも悪影響を及ぼしかねないということも考えておく必要があります。

 そもそも、夫婦の関係性は夫婦対等というのが基本的に正しい考え方でして、「夫が上で妻が下」とか「妻が我慢さえすればそれで問題がない」という構造は根本的に間違っています。

 いずれにしましても、「自分さえ我慢すれば良い」という考え方は誤っています。

 

 

4.【落とし穴③】「夫はいつもはやさしい人なんだ」の誤り 


 

 もちろん夫への愛情をもって結婚したのですから、夫のことを信頼している、信頼したい、と考えてしまうのは当たり前のことだと思います。

 特に、モラハラ夫は、突如大声で怒鳴りつけて来たり、責め立て、長い説教などをしたかと思うと、翌日には、何事もなかったかのようにふるまうとか、ありふれた夫婦の会話をしてくるということも多くあります。

 そうしますと、あなたとしては、モラハラ夫の怒鳴りつけ・責め立て・長時間の説教などは、「一時的なもの」であって、「普段の夫はいつもやさしい」として、問題が起きた時のことを心の奥底に閉じ込めてしまうこともあります。

 モラハラ夫から怒鳴りつけ・責め立て・長時間の説教を受けた記憶は、あなたにとっても、つらい・嫌な記憶ですから、「あまり長く覚えておきたくない」「むしろ忘れてしまいたい」という心理が働くこともあります。

 しかし、モラハラ夫の暴言等は、一定周期で繰り返されることが非常に多く、このようにモラハラ行為が繰り返される場合には「夫はいつもはやさしい」という考えは誤りというほかありません。

 

 

5.【落とし穴④】周りの人はみんな「あなたの夫はいい人だよ」という、の誤り


 

 これも私が相談に乗っていると、非常に良くあるケースなのですが、夫が家庭内ではモラハラし放題なのに、外面は非常に良いということも多くあります。

 そのため、仮に、あなたが共通の友人や知人に相談すると、友人等は「旦那さんそんな風には見えないんだけどな」とか「なんか旦那さんを怒らせることをしたんじゃないの?」と言われてしまう事があります。果ては、友人等から「こんなやさしい旦那さんと結婚できてよかったね」とか「こんな立派な旦那さんと結婚できて羨ましい」などと言われてしまい、あなたは余計に混乱してしまう事になります。

 

 「百聞は一見に如かず」ということわざもありますが、人間は自分が直接見たものを重要な情報と捉えがちなので、友人等からすると、モラハラ夫の外面を重視してしまい、本質を見誤ってしまっているのです。

 私が事件を担当したケースでは、裁判所の調停委員でさえも、モラハラ夫の外面に騙されてしまい、「奥さんの方がもっと我慢した方がいいんじゃないでしょうか?」と言われてしまったこともありますから、一般の方が騙されてしまうのも無理はありません。

 いずれにしましても、夫の外面が良いというケースでは、周りの知人・友人の意見はあまり参考にならないと思った方が良いと思います。

 

 

 
6.【落とし穴⑤】身内にも相談できない、相談しない方が良い。の誤り


 

 近しい身内の方がどのように反応するのかという問題もありますので一概に相談することが「正しい」と言い切れませんが、少なくともモラハラの程度が重度と言える様な場合には、近しい方には相談をした方が良いと思います。この「モラハラの程度が重度」と言えるかどうかの判断は難しいと思いますが、暴言を繰り返す、家のものを破壊する、大きな物音を立てると言った行動等がある場合には、重度と言って良いと思います。

 

 重度のモラハラのケースですと、何度も暴言を浴びせられるうちに、そのことに慣れてしまって感覚が麻痺してしまうということがよくあります。

 そのため、身内の方に限らず近しい方に相談することによって自分の置かれている立場を客観的に把握できるのです。

 

 また、モラハラの問題を1人で抱え込んでしまうと精神的にも辛いことが多いので、誰かに話をすることで少しは気が楽になるという面もあります。

 そのため、もし現状近しい方(親族や友人(夫側の友人とか共通の友人ではなく、あなた側の友人))の1人に対してすら相談をしていないという場合には、弁護士にご相談されることを私はオススメしています。

 

 なお、モラハラの問題はDVとは違って説明が難しいというケースも多く、相手に理解されにくいというケースもあります。特に友人の場合、前述の通り、モラハラ夫とも面識がある人の場合「(モラハラ夫のことを)そんな人には見えないんだけどなぁ」と違和感を持たれるリスクがあります。そのため、友人に相談する場合には、あまり夫側のことを詳しく知らない人物の方が良いと思います。

 

 また、同様に両親その他の身内に相談する場合にも、モラハラは目に見えないため「それはあなたの我が儘だから我慢すれば良いのよ」と言われてしまうこともあり得ます。

 

 そのため、モラハラの相談をする場合、その相談相手を慎重に選んだ方が良いと思います。そして、最初に相談した友人や身内が「もう少し頑張ってみたら」といってくるような場合には、一度モラハラの問題に詳しい弁護士の無料相談を受けてみることをオススメします。そうするとより客観的・正確にあなたのモラハラ被害の程度がどの程度なのかを把握できると思います。

 

 

7.離婚を急ぐあまり離婚条件で相手の言いなりにならないこと。


 

 離婚協議、離婚調停と言った手続はいずれも、相手との交渉を基本とする手続ですから、最終的な離婚にたどり着くために、一定の譲歩を迫られることはあります。しかし、モラハラのケースで当人同士で話を進めますと、後で後悔してしまうような条件で離婚してしまうケースもありますので、注意が必要です。

 

(1)離婚を急ぐために親権を諦めてしまう

  私がご相談を受けるケースとしては、離婚した際に父親を親権者にしてしまったけれども、母親に変更できますか?という相談を受けることがあります。事情を聴きますと、お子様は離婚後も母親が育てていくという口約束はして、親権者は父親にしたとか、また、どうしてもモラハラ夫が親権を譲らないため、お子様を夫側に養育してもらい、親権も夫側に渡して離婚したといったケースになります。

 

  しかし、離婚後の親権変更は難しいことが多く、また、父親に一度養育を委ねてしまいますと、その後お子様に会わせてもらえないといった問題が生じることがあります。

  あなた自身でお子様を育てていきたいという気持ちがあるのでしたら、安易に親権を諦めるべきではありません。

 

(2)離婚を急ぐために養育費を請求しない

 相手が離婚に応じて、親権もこちらに渡してくれるという場合でも、安易に養育費を諦めてしまいますと、今後の生活に不安を生じかねません。

 ただ、養育費につきましては、離婚後も養育費を受け取っていると、なかなかお子様を相手に会わせないということが難しくなりますので、相手との関係を絶つという意味では養育費を受け取らないという選択肢もあり得ると思います。

 いずれにしましても、養育費が無くとも今後の生活に不安がないかという点は慎重に検討して判断する必要があると思います。

 

(3)財産分与を諦めさせられる

 典型的なモラハラ夫の言い分ですが「おまえのわがままで別れるんだから財産分与は一銭もやらない」 と言い放ってくるケースもかなり多いです。

 しかし、財産分与は「夫婦としての総決算」ですから、何も要求できないというケースは非常に少ないと思います。

 財産分与をもらっておくと、今後の生活資金にもなり得るものですから、安易に諦めない方が良いです。

 

 

8.まずは別居を先行させて落ち着いて考えられる環境を作ること


 

 モラハラ夫と同居して生活していると、何時どのように旦那が暴言を吐いてくるのかが分かりませんので、常に緊張した状態で生活を送っていると思います。特にモラハラ夫はどんなことで怒り始めるのか予測が付きにくいため、常に気を張っていなければならず、その心理的負担は大きいです。

 しかし、このような極限状態ですと、離婚の際にどのようにすればよいのかと言ったことを冷静に考えることは難しいと思います。

 

 また、別居を開始すれば夫からの直接の暴言等の被害を大きく減らすことができます。

 

 そのため、まずは先に別居を開始してしまうのが、良い結果に結びつきやすいと思います。

 

 夫に無断で別居することには問題があるのではないかと心配に思われる方もいるかもしれませんが、旦那からのモラハラが原因で別居する場合、別居を批難される理由はありません。

 

 

9.体調を崩す前に行動するのがベスト


 

 モラハラ夫との共同生活という状態に居続けますと、ご自身の体に異変が生じてくることもあります。

 最初はモラハラ夫との生活が原因だとは気付かないことが多い様な小さな異変から始めることが多いです。例えば、①物忘れが多くなる、②家事やパート作業の効率が悪くなる、③朝起きられなくなるなどです。

 

 最初のうちは、「今日はちょっと体調が優れないな」といったレベルで異変が生じ始め、そのうち、体調悪化がひどくなっていくことがあります。例えば、嘔吐してしまう、急に体がこわばる、胃痛がする様になる、不眠になる、動悸や息切れが激しくなるといったものです。

 このような明確な体調変化が出てしまいますと、別居や離婚といった一定の行動を起こすことにも大きな体力を必要とすることが多くなってしまいますから、体調を崩してしまう前に、別居や離婚といった行動に移すのがベストと言えます。 

 

 

8.まとめ


・モラハラの原因を作った私が悪い、という発想は完全に誤り

・自分さえ我慢すればよい、という発想も誤り

・普段の夫はやさしい、という発想も誤り

・夫の友人や共通の友人が、「あなたの旦那さんはいい人」というから大丈夫、という発想も誤り

・身内にも相談できない、相談しない方が良い、という発想も誤り

・離婚を焦った結果、離婚条件で相手の言いなりにならないこと

・まずは別居を先行させて冷静に考えられる状況を作ることが重要である。

・別居といったアクションを起こすのは、実際に体調を崩してしまう前に行った方がよい。

 

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【弁護士が解説】モラハラは離婚理由になるか?

2017.10.30更新

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1.モラハラとは何だ?


 

 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。

 

 これだけではなかなかピンと来ないと思いますので、ある程度類型化して整理しますと、以下のようにまとめられると思います。

 

①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)

②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)

③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)

④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)

⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)

⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)

⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)

⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。

⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。

⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)

⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う

⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。

⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)

⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

 

夫婦で生活していると一度や二度は、夫側からこのような発言や行動が出たことがあるかもしれませんが、これらのことが「継続している」ということが重要な要素になります。

 

 

2.モラハラは離婚理由になるか?


 

 「離婚理由」という場合、大きく分けて二つの意味があります。一つめは、相手に離婚を切り出す理由になるかという意味、二つめは、裁判で勝てるだけの理由になるかという意味です。

 

 まず、一つめの離婚理由という意味で言いますと、モラハラは立派な離婚理由になります。ただし、実際に相手に離婚を切り出すとなると、具体的にどのようなモラハラ被害を受けてきたのか、という点をしっかりと整理して旦那側に話す必要が出てくると思います。また、親権に離婚したいと考えている場合には、こちらが本気だということが相手にも伝わるように話をする必要があります。

 

 関連記事>>離婚の切り出し方

 

 次に、「裁判で勝訴できるだけの理由」という意味での離婚理由になるかというと再度詳しく検討していく必要があります。

 と言いますのは、裁判で認められる離婚理由は法律で厳しく限定されているため、モラハラの内容や程度によっては、「裁判で勝てるだけの理由とは言えない」と言われてしまうリスクがあるからです。離婚裁判ですと、裁判所が強制的に離婚を命じることができるのですが、本来離婚するかどうかは当人同士の意思に委ねるべき話ですから、「裁判で勝てるだけの離婚理由」というのは法律で制限されているのです。

 

 

3.別に裁判をしたいわけではないんだけれど…


 

 モラハラ夫の特徴としては、こちらから離婚を突きつけると、これに反発してくるケースが非常に多いです。モラハラ夫はあなたのことを下に見ているケースが多いため、「生意気だ」といった感情を持つのです。または、全く逆に、こちらが別居を開始した時などは、旦那側が謝ってくるということもあります。自分に不利にならないようにという心理が働いて、体裁を整えてくるのです。

 実際上、私の経験ではモラハラ離婚のケースで裁判にまで行かずに調停または協議で解決することの方が多いです。

 

 しかし、少数ですが相手の反発が大きく裁判を避けられないと言うこともありますので、事前に裁判になることを考えながら準備を進めていく必要があるのです。「備えあれば憂いなし」ということです。

 

 

4.モラハラが「裁判で勝てるだけの離婚理由」と言えるために


 

 このように離婚裁判もある程度意識して準備を進めていくという場合、まず最も重要になりますのは裁判で戦えるだけの証拠があるのかどうかということになります。夫が自身のモラハラ発言やモラハラ行動をすんなり認めてくれればいいのですが、実際には「そんなことは言っていない」とか「そんなことはしていない」といった反論が返ってくることが多いです。

 夫婦の言い分が食い違っている場合、裁判官は何が真実か分からなくなってしまうので、証拠が必要になるのです。具体的にどのようなものが証拠になるのか概要を解説します。

 

 まず第1に、モラハラの言動について録音データがあると非常に心強いです。録音だと夫のモラハラ発言を正確に記録できますし、当時の臨場感をそのまま再生できるからです。

 そして、このような録音データは数が多ければ多いほどよいです。裁判でその全てを証拠にするわけではありませんが、数が多ければ、その分攻め手が増えるとイメージして下さい。

 

 第2に、相手がラインやメールでモラハラ発言に及んだという場合には、そのラインやメールも証拠になります。

 

 第3に、あなたがモラハラ被害を受けている最中に身内や友人に相談していたという場合、身内や友人に対して送ったラインやメールも証拠になり得ます。なお、その内容はある程度詳しい被害内容が書かれていないと裁判の証拠としては不十分になる可能性がありますのと、表現に誇張がないかという点に注意が必要になります。

 

 第4に、あなたがブログその他のSNSに旦那のモラハラ発言等をアップしてきたという場合、その内容によっては証拠になり得ます。

 このような証拠の整理は最初に行う必要があります。

 私が担当した事件について申し上げますと、暴言については全くといって良いほど証拠がないというケースもあります。ただ、その場合でも、離婚に向けての対処方法はありますので、諦めずに、ご相談にいらして下さい。

 

 

5.モラハラ内容の整理


 

 上記のようなモラハラの証拠の有無の整理がつきましたら、次に、あなたが受けたモラハラ被害の内容を整理していく必要があります。

モラハラの証拠がある場合でも、あなたが受けた被害の全てに関して証拠があるというケースは稀なので、あなたの体験そのものを書き出していくのです。

 

 私のところにご相談に来られる方のうち90%以上の方は、「夫のモラハラがひどいんです。だから離婚したいんです」とおっしゃるのですが、上記の通り「モラハラ」には色々な態様がありますので、あなたのケースでは具体的にどのようなモラハラがあったのかをきちんと整理しておく必要があります。

 

 まずは、前述したモラハラの項目にいくつ該当するのかを検討してみて下さい。

 

 次に、そのモラハラの具体的な内容を思い出してみて下さい。要するにモラハラ夫の詳しいセリフや行動を思い出す作業になります。

 

 最後に、そのモラハラがどの程度の頻度あったのか、いつ頃まであったのかを検討して下さい。

 

 あなたにとって思い出したくない事情を思い出す作業になりますので、非常に苦しく気の重い作業になると思いますが、離婚に向けて必要な作業だと考えて頑張ってみて下さい。1人で悶々と考えていると気が滅入ると言うことも多いと思いますので、身内の方と話ながら思い出していくとか、弁護士との打合せで整理するという方法もありますので検討してみて下さい。

 

 

6.モラハラは「白か黒か」ではない


 私が相談に乗っておりますと、「私のケースはモラハラですか?」という質問を受けることが非常に多いです。ご質問の趣旨としては、白か黒(完全悪)かをしっかりと見極めて欲しいというものです。
 しかし、残念なことに日本の法律はモラハラについての法整備が出来ておらず、法律で「モラハラ」とか「モラルハラスメント」という用語は出てきません。
 そのため、法律の線引きがない状態のため、「黒(完全悪)」とは言いづらいというのが実情です。

 もちろん、法律の線引きがなければ何でも許されるというわけではありませんし、モラハラの深刻さについて、私の方からは「モラハラは基本的に白か黒かではなく、グレーという位置づけになります」「モラハラの深刻さに応じてグレーの中にもグラデーションがあって、深刻なモラハラは黒に近付いていきますし、軽度のモラハラは白に近付いていきます」とご説明することが多いのです。
 このようなことも「モラハラ」の理解の参考にして頂ければと思います。

 

 

7.まとめ


・モラハラの詳しい意味については理解不足の方も多いので、まずはモラハラのきちんとした意味を理解する。

・モラハラは離婚を切り出すに当たっては十分な理由になる。

・離婚の話がもめそうだという場合、モラハラの証拠をきちんと準備しておいた方が良い。

・モラハラの証拠と一緒に、あなたのモラハラ体験も整理しておく必要がある。

 

 

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決定版!これがDVの証拠だ!

2017.10.25更新

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1.DVで離婚したいのに、相手が事実を否定する可能性が高い


 

 DV加害者は自己中心的な人物が多いため、奥様の方から離婚を切り出すと、そのこと自体に「生意気だ」「絶対にお前の思い通りにさせない」といった形で強く反発してくることが多いです。

 

 また、DV加害者の特徴の一つですが、DV加害者は自分の暴力を「正しいこと」だと考えていることが多いので、「原因を作ったのは嫁の方だ」といった言い方をしてくることが多いのと、「DVというほどの暴力をふるっていない」と対抗してくることも多いです。

 

 そのため、これから相手と調停や裁判で離婚を争っていくという場合、DVの証拠がどの程度あるのか、どのようなものがあるのかというのは十分に検討していく必要があります。

 

 

2.やっぱり最も確実なのは診断書と写真


 

 法律用語で言いますと「客観的証拠」などと表現しますが、あなたが怪我をさせられた診断書や怪我の部位を撮影した写真は、DVの証拠として最も確実な証拠といえます。

 

(1)ただ、診断書につきましては、その内容にも注意が必要になります。

  まず、複数怪我を負った場合に、病院によっては、大きな怪我だけを記載し、小さな怪我は一切記録を残していないと言うことがありますので、診察を受ける際には小さな怪我を含めて全ての怪我を病院に申告することが重要です。

 

 次に、診断書の発行を受ける際には、治療期間も記載してもらうようにして下さい。例えば「左上腕打撲で当院通院中」だけだと、どの程度の怪我で、どの程度の期間通院すれば完治するのかが分かりません。そのため「左上腕打撲で加療2週間の見込み、現在当院通院中」といった形で、治療期間が分かると望ましいです。

 

 もう一つの注意点としては、病院に本当の怪我の原因を話すと言うことです。なかなか医者に対して「旦那に殴られた」といった話はしづらいのですが、「階段で転んだ」とか、「他人の喧嘩に巻き込まれた」と嘘の申告をしてしまいますと、カルテにその様に記載されてしまいます。相手が裁判で争い、病院にカルテの開示を求めると、カルテが裁判所に提出されることになりますので、裁判官は「本当は旦那の暴力ではなく、階段で転んだだけなのではないか?」と疑問に感じてしまう虞があります。

 

(2)次に写真ですが、怪我の部位のみの写真にしないよう注意が必要です。

 より分かりやすく言いますと、その写真にあなたの顔も写るようにして欲しいということです。よくありがちなのが、怪我を下手の甲の部分だけの写真や足の膝の部分だけの写真を撮っている人がいらっしゃいますが、これでは、その手や足があなたの手足なのか、実は他人の手足なのかが写真だけでは分かりません。裁判になると、相手は、「それは友人の写真で本人の写真じゃない」といった形で争われる原因になりかねません。

 

 そのため、写真は必ず複数撮影し、あなたの顔と怪我両方が写った写真と、怪我の部位をより拡大した写真を撮るようにして下さい。

 

 

3.警察への通報記録や女性センター等への相談記録


 

 先ほどお話ししましたとおり、診断書や写真が確実性の高い証拠と言えるのですが、次いで確実性が高い証拠としては、警察への通報記録や女性センター等への相談記録があります。

 旦那の暴力に対して警察に110番通報したことがある場合、その通報記録が警察の方に残りますので、申請をすれば、その開示を受けることができます。女性センター等への相談記録も同様です。

 

 なお、DVの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、110番通報簿については、警察の方で大して詳しい記載をしてくれていないという場合があり得るのと、プライバシー保護等の観点から開示資料に黒塗り部分が多いというケースもあります。そのため、どの程度DVの証明に役立つかという点に関しては、資料の内容を精査する必要があります。

 

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ110番通報なんてするはずないんだから、警察が来てくれただけで、DVの証拠になるでしょう?」とおっしゃる方もいますが、安易にその様に考えるのは危険です。

 例えば、旦那が酔っぱらって騒ぎ始めたのですぐ110番通報したが、警察が来たときには旦那は外出してしまっていたと言ったケースですと、記録としては「旦那不在」としか書かれませんのでDVの証拠にすることは難しいと思います。

 

 現状の裁判実務を見ますと、「警察を呼んだ」イコール「大変なことが起こった」とは考えないことが多く、結局は通報記録簿に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

 

4.録音データ


 

 録音データを記録している場合、通常は、診断書または写真の準備も調っていることが多いのですが、診断書・写真を補強するものとして、録音データも重要性が高い証拠と言えます。

 

 スマートフォン等で録音しておくと暴力時の打撃音等を録音することができる場合がありますし、DV旦那がどのように発言しながら暴力をふるったのかと言う点や暴力前の言葉のやり取りを拾うことができます。何より当時の雰囲気を、臨場感を持って伝えることができますので、当時の雰囲気を伝える証拠としては有力な証拠になり得ます。

 

 また、DV旦那が「嫁が挑発してきたから殴ったんだ」といった言い訳をする場合がありますので、録音データがあれば、暴力に至る経緯を詳しく証明できることもあると思います。

 

 

5.ラインやメール


 

 例えば、暴力をふるった翌日に旦那が暴力を詫びるメールを送ってきたとか、あなたの方から旦那に対して「昨日蹴られたところが痛むから、今日は保育園のお迎えに行けない」と言ったメールを送っている場合、それもDVの一つの証拠になります。

 

 ただ、このようなメールやラインのやり取りですと、暴力の程度が分かりにくいことが多いということには注意が必要です。

 

 また、ラインやメールの評価については、旦那から来たライン・メールの方が、あなたが送ったライン・メールよりも証拠の価値は高いです。と言いますのは、旦那が自分の暴力を認めるメールは、いわば自白の様なものですから、他の方が書いたライン・メール以上に価値が高いと言えるのです。

 

 これらの点を踏まえると、ライン・メールそのものを直接のDVの証拠にするというよりは、診断書や写真を第1の証拠とし、ライン・メールは補強として使うというイメージかと思います。なお、その場合、旦那が暴言を書き連ねているようなケースですと、そのライン・メールは、普段の旦那の横暴な態度を示す証拠になると思います。

 

 

6.物の被害



 

 DV旦那が投げつけてきたために大破したスマートフォン、旦那が殴りつけて空いた壁の穴、旦那が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 

 

6.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 

 例えば、熟年離婚のケースで、既に成人しているお子様が、当時のDVの様子を証言してくれるという場合、お子様はDVの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、DVに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の暴力を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては診断書や写真の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

 

7.DVの証拠が少ない、ほとんどないという場合

 


 

 

 

 もちろん、上記の様な診断書や写真があれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった旦那が豹変して暴力をふるってきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、旦那の暴力を受け入れられず、また元の優しい旦那に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。

 私の経験上、今ある証拠をもとにDV旦那を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 

 ただ、そのような場合、どのようにDV旦那と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

8.まとめ


・DVの証拠としては、診断書や写真が確実性が高いが、その内容については注意点もある。

・警察への通報記録や女性センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・録音データも当時の雰囲気を知るための有力な証拠になる。

・ラインやメールは書き込みの内容次第である。

・物の被害を写した写真は、直接DVの証明にすることは難しい。

・証言は、診断書等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・DVの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

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DV離婚弁護士選びの6つのポイント

2017.10.16更新

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1.弁護士選びのコツとは?


 

 なかなか皆さん弁護士と接する機会が少ないかと思いますので、弁護士を探す場合に、どのような点に注意すればよいのか、何かコツはないのかと悩まれる方も多いと思います。

 

 そこで、今回はDVによる離婚を題材にして、弁護士選びの参考となるようなお話しをさせて頂きます。

 

 

2.女性弁護士の方が良いか男性弁護士の方が良いか


 

 特に女性の方で多いのですが、女性弁護士にご相談されるか男性弁護士にご相談されるかで悩んでいらっしゃる方もいます。

 弁護活動の「質」というと表現が適切なのかという問題もありますが、男性弁護士と女性弁護士とで「質」という意味での差はあまりないと思います。

 

 ただ、女性の方がよくおっしゃるのが、離婚の問題となりますと家庭内の機敏な話題も出てきますので、女性弁護士の方が相談しやすい、話しやすいという方はいます。

 

 他方で、DVのケースですと、DV旦那と交渉しなければなりませんので、女性弁護士では言い負けてしまうのではないかと心配される方もいます。

 

 しかし、上記の点は弁護士に対する一般的なイメージですので、逆に男性弁護士でも非常に話しやすいという先生もいれば、女性弁護士でもかなり力強く先方と交渉してくれる先生もいます。

 そのため、「女性弁護士が良い」とか「男性弁護士が良い」と間口を狭めてしまうのではなく、以下のような要素を考慮して検討してみるのがよいと思います。

 

 

3.DV問題に精通しているか


 

 DV離婚問題に関する弁護士選びにおいて一番重要なのは、DV問題に精通している弁護士かどうかという点ではないかと思います。要するに、これまでにDV離婚の事件の取扱件数がどの程度あるのかという点が非常に重要な判断要素になると思います。

 

 ここで注意して頂きたいのが、この事件取扱実績の判断において、単純に離婚問題の実績というのではなく「DV」離婚の実績がどの程度あるのかという点です。

 

 DVのケースですとDV旦那が法律事務所に乗り込んできたり、罵声を浴びせられたりと、普段の離婚事件とは異なる特殊性があります。また、一定期間DV旦那の接近を禁止するDV保護命令は特殊な手続になりますので、取り扱ったことのない弁護士ですと円滑に手続を進められない可能性があります。

 

 ただ、弁護士に相談した際に、その弁護士に対して「先生はDVのケースはよく取り扱うのですか?」と面と向かって質問しても、(実際取り扱ったことがないとしても)「1件もやったことはありません」という返事は返ってこないと思います。おそらく「モラハラのケースはよく取り扱いますよ」とか「離婚全体の相談件数が多いですから」といったお茶を濁した返答が返ってくると思います。

 

 そのため、その弁護士のホームページを見てDV事案の取扱実績がどの程度あるのか、DV問題に力を入れているのかは把握しておいた方が良いと思います。また、友人や知人から「以前DV離婚でお世話になったことがある」といった理由で紹介を受けた弁護士であれば、実績としては申し分ないかと思います。

 

 

4.直接会って相性の確認


 

 上記の通り、DV問題に詳しい弁護士が見つかった場合、実際その弁護士に会って話をしてみるのがよいと思います。

 直接会って話をすると、多少なりとも弁護士の人となり、対応の仕方が分かってくるからです。

 

 通常の離婚事件ですと、何件か弁護士に会ってみて、一番自分に合った弁護士に依頼することをお勧めするのですが、DVのケースでは、至急弁護士を選任したいというケースが多いと思います。

 

 そのため、その弁護氏が友人の紹介であり、かつ、あなた自身が直接会ってみて相性が合わないと言うことがなければ、そのまま、その弁護士に依頼するのでよいと思います。ただ、直接会って話をして、違和感を覚えた場合には、少なくとも、もう一件ぐらいは他の事務所の弁護士に相談してみることをお勧めします。

 

 

 
5.やっぱり気になる弁護士費用


 

 皆様は弁護士費用が高額に感じることが多いと思いますので、弁護士費用というのも重要な判断要素になります。

 

関連記事>>弁護士が内緒で教える、弁護士費用節約のコツ

 

ただ、弁護士費用が安ければ安いほど良いというわけでもないと思いますので、弁護士選びの優先順位としては、前述の①DV事件に対する専門性、②直接会って話してみた相性を優先して弁護士選びをした方が良いと思います。

 

 

6.弁護士事務所のロケーション


 

 あと私が相談を受けていて依頼者の方がよくおっしゃるのが、弁護士事務所のロケーションでしょうか。ご自宅の近く、職場の近くなど、弁護士事務所の近さも一つの考慮要素になると思います。

 

 特に、何か問題が起きた際には、できるだけ弁護士に直接会って面談をしたいという性格の方は、ご自宅又は職場の近くの弁護士事務所にご相談になるのが良いと思います。

 

 ただ、DVのケースですと、DV旦那は、あなたが弁護士事務所周辺を生活圏にしているのではないかと疑ってくることも多いため、あまりあなたの住居に近い場所の弁護士事務所に相談をすることは得策ではないかも知れません。

 

 

7.できれば、弁護士の忙しさの確認も


 

 最後になりましたが、弁護士の忙しさも確認できるようなら確認してみると良いと思います。ただ、単純に弁護士に対して「お忙しいですか?」と質問すると、ほとんどの弁護士は「忙しいです」と回答すると思いますので、その様な質問の仕方はあまり良くないと思います。

 

 オススメなのは、「先生にお願いした場合、相手に内容証明郵便の文案が出来上がるのにどれくらい日数がかかりますか?」という質問です。この回答が「1ヵ月くらいはかかります」という内容ですと、相当忙しいことが予想されますので、ご留意した方が良いかもしれません。

 

 

8.まとめ


●弁護士選びは男性・女性という枠を決めずに選んだ方が良いことが多い。

●DV離婚は特殊性が強いので、DV問題に精通した弁護士に依頼した方が良い。

●その弁護士に直接会って相性を確認した方が良い。

●弁護士費用も気にする必要があるが、優先順位を高めに考えるべきではない。

●弁護士事務所のロケーションも一つの考慮要素になりうる

●弁護士の忙しさも確認できるようなら確認した方が良い。

 

 

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DV被害者が陥りがちな5つの落とし穴

2017.10.02更新

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1.DV被害者が陥りがちな落とし穴って?


 

 私がDV離婚の問題を取り扱っておりますと、これから離婚したいという方だけではなく、離婚してしまったが離婚の条件決めで後悔しているというご相談を受けることもあります。

 また、これから離婚したいという方でも非常に自分を卑下してしまっているといったこともあります。

 

 そこで、以下私がDV離婚に関わる被害者の方と接して思うところをご紹介します。

 

 

 
2.「自分が悪い」の誤り


 

 この点は、私がDV被害者の方と接していて非常によく思う点です。

 通常私のところにDV被害者の方がご相談に来られる際には、ご親族や友人、区役所の女性相談員等だれかしらに相談して来られる方が多いのですが、ご親族等が「こんな事だったらもっと早く相談してくれていれば良かったのにねぇ。」とおっしゃるケースは多くあります。

 

 ご本人は、DV暴力を受けたこと自体はショックだけれども、自分が原因を作ってしまったのだから、まずは自分の行動を改めなければならないとか、自分が頑張れば幸せだった結婚生活に戻れるといった形で、夫婦関係の円満な状況を作るように努力を重ねているのです。

 自分が原因を作ってしまったと考えているDV被害者の方は、正直にDV旦那に謝罪したりしてしまうため、余計にDV旦那は増長し、DV被害が深刻になる、余計に家庭環境が悪化するというケースが多くあります。

 

 大体このようなケースでは、DV被害者の方が心身に限界を感じて親族に相談をして問題が顕在化するケースが多いです。そうすると、親族等からは「そんな暴力をふるう夫とは早く分かれた方が良い」とか「あなたが我慢することじゃないでしょ」と言われて徐々に自分の過ちに気付き始めるのです。

 

 そのため、旦那から殴る蹴るの暴力を受けた場合には、その経緯を含めて詳しく親族等に相談をし、客観的に見ておかしなことがないかを判断してもらった方が良いと思います。私はDVの問題をよく取り扱うので明確に断言しますが、暴力は絶対的に悪であり、どのような経緯があっても暴力が正当化されることはないと思います。

 「また旦那を怒らせてしまった私が悪い」だとか「旦那が怒らないようにもっと家事を頑張らなければいけない」という発想は誤りです。もっと自分に自信を持って大丈夫です。

 

 

 
3.「自分さえ我慢すれば良い」の誤り


 また、この話もDV被害者の方からよく聞くお話なのですが、特にお子様がいらっしゃる専業主婦の方でこのような発想をお持ちになることが多いです。

 離婚しても子どもと生活していくだけの収入がないし、離婚すると片親になってしまう子どもが不憫だという発想を持つのです。

 

 しかし、DVの頻度にもよりますが、DV暴力の頻度が多い場合で、旦那がお子様がいることを考えずに、お子様の目の前で平気で暴力をふるうような場合には、そのことがお子様に与える影響についても考える必要があります。

 

 自分の父親が母親に暴力をふるう様子を見て育った子どもは、そのことが当然のことだと感じてしまい、その健全な成長に大きな問題を生じさせる虞があります。また、お子様にとっては母親はかけがえのない存在ですので、母親が一方的に暴力をふるわれる様子を見て心を痛めることも多いと思います。

 そのため、あなた自身が我慢すればよいと言う問題ではないこと、度々暴力をふるわれていることをお子様が知り得る場合、そのお子様に悪影響を与えていることを考慮した方が良いと思います。

 

 また、あまりに我慢を重ねるとあなた自身の身体又は精神を疲弊させる原因にもなります。心身の不調を生じさせると家事や育児にも悪影響を及ぼしかねないということも考えておく必要があります。

 

 

 

4.身内にも相談できない、相談しない方が良い。の誤り


 

 私のところに相談に来られる方は、通常はご本人が身内に相談の上相談に来られる方が非常に多いです。ただ、中には「こんな話をすると両親が心配してしまうから」とか「両親に話をすると絶対離婚しなさいと言われてしまうため話ができない」といった理由でご両親ご兄弟等近しい身内にも、DVの件を相談していない方もいらっしゃいます。

 

近しい身内の方がどのように反応するのかという問題もありますので一概に相談することが正しいと言い切れませんが、基本的には近しい方には相談をした方が良いと思います。特にDVのケースですと、何度も暴力をふるわれるうちに、そのことに慣れてしまって感覚が麻痺してしまうということが良くあります。

 

 そのため、身内の方に限らず近しい方に相談することによって自分の置かれている立場を客観的に把握できるのです。

 また、DVの問題を1人で抱え込んでしまうと精神的にも辛いことが多いので、誰かに話をすることで少しは気が楽になるという面もあります。

 

 そのため、もし現状近しい方(親族や友人)の1人に対してすら相談をしていないという場合には、ご相談されることを私はオススメしています。

 

 

 
5.離婚を急ぐあまり離婚条件で相手の言いなりにならないこと。


 

 離婚協議、離婚調停と言った手続はいずれも、相手との交渉を基本とする手続ですから、最終的な離婚にたどり着くために、一定の譲歩を迫られることはあります。しかし、DVのケースで当人同士で話を進めますと、後で後悔してしまうような条件で離婚してしまうケースもありますので、注意が必要です。

 

(1)離婚を急ぐために親権を諦めてしまう

  私がご相談を受けるケースとしては、離婚した際に父親を親権者にしてしまったけれども、母親に変更できますかという相談を受けることがあります。事情を聴きますと、お子様は離婚後も母親が育てていくという口約束はして、親権者は父親にしたとか、また、どうしても旦那様が親権を譲らないため、お子様を旦那様に養育してもらい、親権も旦那様に渡して離婚したといったケースになります。

 

  しかし、離婚後の親権変更は難しいことが多く、また、父親に一度養育を委ねてしまいますと、その後お子様に会わせてもらえないといった問題が生じることがあります。

 

  あなた自身でお子様を育てていきたいという気持ちがあるのでしたら、安易に親権を諦めるべきではありません。

 

(2)離婚を急ぐために養育費を請求しない

 相手が離婚に応じて、親権もこちらに渡してくれるという場合でも、安易に養育費を諦めてしまいますと、今後の生活に不安を生じかねません。

 

 ただ、養育費につきましては、離婚後も養育費を受け取っていると、なかなかお子様を相手に会わせないということが難しくなりますので、相手との関係を絶つという意味では養育費を受け取らないという選択肢もあり得ると思います。

 いずれにしましても、養育費が無くとも今後の生活に不安がないかという点は慎重に検討して判断する必要があると思います。

 

(3)離婚を急ぐために慰謝料を請求しない。

  DV旦那から激しい暴力を受けてきた場合、当然慰謝料を請求する権利があります。今後の生活のことも考えますと、できるだけ多くの慰謝料を獲得しておきたいところです。

  そのため、簡単に慰謝料を諦めないで欲しいのですが、他方で、慰謝料と言いますと、相手が一方的に悪いという響きを含むため、DV旦那が余計に逆上してしまうこともあります。

 

  このように慰謝料を請求するデメリットがあることも事実ですので、今後の生活のことも考えながら、慰謝料を請求するのかどうか、請求する場合いくら請求するのか等について慎重に検討すべきかと思います。

 

 

 

6.まずは別居を先行させて落ち着いて考えられる環境を作ること

 DV旦那と同居して生活していると、何時どのように旦那が暴言を吐いてくるのか、暴力をふるってくるのかが分かりませんので、常に緊張した状態で生活を送っていると思います。

 しかし、このような極限状態ですと、離婚の際にどのようにすればよいのかと言ったことを冷静に考えることはほぼ不可能だと思います。

 

 また、別居を開始すれば旦那からの直接の暴力や暴言の被害を大きく減らすことができます。

 そのため、まずは先に別居を開始してしまうのが良い結果に結びつきやすいと思います。

 旦那に無断で別居することには問題があるのではないかと心配に思われる方もいるかもしれませんが、旦那からの暴力が原因で別居する場合、別居を批難される理由はありません。

 

 

7.まとめ


●DVの原因を作った私が悪い、という発想は完全に誤り

●自分さえ我慢すればよい、という発想も誤り

●身内にも相談できない、相談しない方が良い、という発想も誤り

●離婚を焦った結果、離婚条件で相手の言いなりにならないこと

●まずは別居を先行させて冷静に考えられる状況を作ることが重要である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

面会交流中の無理心中について

2017.09.22更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.面会交流中の無理心中のニュース


 

 兵庫県伊丹市で平成29年4月に面会交流中父親が娘とともに無理心中するという非常に痛ましい事件が起きました。報道内容を拝見していますと、ご夫婦は離婚が成立し、離婚後に母親が娘を送り出して父親と面会交流(別居中の親がお子様と一緒に遊んだり、話したり、食事したりすることです)させていた際の事件とのことです。この事件では、父親が普段から暴力をふるう様ないわゆるDV夫ではなかった様で、母親も予測しなかった中での事件とのことで、母親の喪失感も著しい事件だったのではないかと思います。

 

 

2.面会交流の実務は?


 

 それでは、上記の様な痛ましい事件はどのようにして防げばよいのでしょうか。もっとも端的な回答は、「離婚後は子供に会わせない」という回答だと思います。

 

 しかし、現在の家庭裁判所の実務では、面会交流を積極的に推奨していますので、特別な事情がない限り「一切面会させない」ということは難しいのが現状です。私自身も上記の様な事件に接しつつも、お子様の健全な発達という面で考えると、極力面会交流は実施した方がよいと考えております。

 そして、実務的に申しますと、面会交流の頻度は1ヶ月に1回程度とされることが多い様に感じます。

 

 では、面会交流を拒否できる「特別な事情」とはどのようなものがあるのでしょうか。

 一般的には父親がお子様に対して直接暴力をふるい怪我をさせているケースなどがこれにあたります。ただ、面会交流を完全に拒否するとなると、このような暴力の証拠がないと難しいと言えます。たとえばお子様が怪我の治療をした診断書や怪我の箇所を撮影した写真の有無が重要なポイントになります。

 

 

3.児童相談所の活用


 

 上記の様な面会交流拒否が難しいとのお話は、調停や裁判といった裁判所における手続における位置づけです。

 児童虐待における現場で緊急的にお子様のみの安全を確保する必要があるケースでは、児童相談所にご相談されるのが即効性のある対処方法になります。父親からの暴力が激しい場合には、警察と児童相談所の両方に相談するのがよいでしょう。

 

 児童相談所の保護を利用しますと、お子様のみの安全という面では安心感が増すのですが、以下の様なデメリットもありますので注意が必要です。

①父親からの頻繁な暴力など問題が大きい場合、児童養護施設にて保護される形になることが多いため、1年といった長いスパンで施設での生活を強いられるケースもあります。そのため、普段通っている小学校への通学や友人と野接触が難しくなる面を捨て切れません。

②児童養護施設での保護になると、DV被害者である母親も子供と会うのに不便することがあります。

 

このようなデメリットもありますが、お子様の生命身体への緊急の危険がある場合には、児童相談所を活用することを躊躇すべきではありません。

 

 

4.シェルターでの保護


 

 DV旦那からの暴力に耐えかね、離婚・別居の意思を固めたという場合には、お子様とともにシェルターでの保護を受けるという方法もあります。

 このようにすれば、母親とお子様が離ればなれになることも避けられます。

 ただ、DV被害を受けている奥様は、旦那から執拗に責められているため、自分に自信がなくなっている方が非常に多く、旦那に何の断りもなく別居や離婚を決断することが難しいことも多くあります。そのような方は女性センターに相談されたり、身近な身内や親友に相談して、ご自身の客観的な立場を理解するのが第1歩だと思います。

 なお、シェルターで保護されながら離婚したいという場合には、ご本人で旦那と連絡を取ることはできませんし、連絡を取るべきでもありませんので、DV問題に詳しい弁護士を雇うことをおすすめします。

 

 

5.当初から暴力などがないケースにどう向き合うか


 

 これまで説明して参りましたのは、すでに同居中から父親のお子様へのDVがあるケースになります。今回の無理心中のケースの様に兆候がないケースで未然に事件を防止することは容易ではありません。

 ただ、未然防止が簡単ではないとしても、何もしないという選択肢はあり得ません。

 例えば以下の様なことが考えられるのではないかと思います。

 

①面会交流時の受け渡しを母親本人で行う。

 今回の様に離婚が成立した後ですと旦那に顔を合わせることは非常に苦痛を伴うことですが、実際にご本人で受け渡しをすれば、少なくとも面会交流会指示の父親の様子を直接見て確認することはできます。

 さらにこれを推し進めて全面会交流の課程に母親がすべて立ち会うという方法もあります。ただ、離婚が成立した後ですと、母親の精神的負担が大きく、現実的ではないことが多いと思います。

 

②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の様子を尋ねる

 例えば、離婚後父親が実家で生活しているという場合、祖父母が同居人ということになりますので、面会交流実施の前に、祖父母から父親の様子におかしな所がないか、思い詰めている様な様子がないかを確認することは実施しても良いかと思います。

 

③面会交流の場所を人目のあるところに限定する

 遊園地や公園など、人目のあるところですと、父親も不審な行動を取りづらいため、場所を指定するという方法もあります。ただ、今回の事件の様に約束した時間を過ぎてもお子様が帰ってこないといったケースでは、事件防止が難しいのが現実です。

 なお、さらに進んで祖父母の同席を促すという方法もあります。祖父母から見ますと可愛いお孫さんなので遊園地等に遊びに行く際に父親だけでなく祖父母も同行するというのは自然な形とも言えます。このような形態ですと父親が無理心中というシチュエーションは生まれにくいかと思います。

 

④お子さんから直接面会交流時の様子を尋ねる

 お子様の年齢にもよりますが、お子様が面会交流時の様子をきちんと母親に伝えられる様でしたら、そのときの様子を直接お子様から尋ねるという方法も考えられます。もちろん、お子様に根掘り葉掘り質問することは避けるべきでしょうが、何か異変がないかやんわりと尋ねることで事件の端緒を掴むことができるケースもあると思います。

 

6.まとめ


●面会交流の実務としては面会交流を積極的に推奨している

●お子様への直接のDVが見られる場合、児童相談所への相談やシェルターでの保護と言った手段がある。

●今回の様な痛ましい事故を少しでも少なくするため以下の様な工夫が考えられる。

 ①お子様の受け渡しを母親本人が行う。

 ②父親に同居人が居る場合、同居人に父親の普段の様子を尋ねる。

 ③面会交流の場所を人目のある場所に指定する。

 ④面会交流の様子を直接お子様に尋ねる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV離婚)離婚協議と離婚調停の分岐点

2017.09.18更新

弁護士秦 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>モラハラ・DV情報盛りだくさんの総合サイトはこちら<になります。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.DV離婚の特殊性


 

 一口にDVと言いましても、幅のある表現でして、①相手が暴言を吐く、悪態をついてくる、②直接殴る蹴るの暴力まではなくとも物を壊す、物を床に投げつける、③直接殴る蹴るの暴力があると、いくつかの程度があります。

 

 上記のうち①ですと、その内容や程度如何では、夫婦同士の話し合いが可能なケースもありますので、その場合には、ご夫婦同士の話し合いが望ましいと言うこともあります。

 

他方、③のケースでは、奥様が離婚を切り出すとDV旦那が逆上して、暴力被害が拡大してしまうと言う危険性があります。②のケースでも、離婚を切り出すと突発的にてが出たというケースもありますので、注意が必要です。

 

私は、離婚のご相談を受ける際、DVと言った事情がない場合には、できる限り一度はご夫婦同士で話し合いをすることを強くオススメしています。当人同士が同井上で結婚したのですから、分かれる際にも一度は親権に話をした方がその夫婦にとって良いことだと感じるからです。

 ただ、前述のようにDVのケースですと、直接の話し合いがDV被害を拡大するリスクがありますので、ご本人同士の話し合いはオススメしないことが多いです。

 

 

2.離婚協議と離婚調停の分岐点


 

(1)親族や友人を間に入れる方法の検討

  DVのケースでも、旦那が普段は冷静に話をすることができる、だとか、目上の人間に対しては暴言を吐かないと言った場合には、誰か間に入って調整してもらうという方法もあり得ます。

 

 どなたかを間に入れることで冷静な話し合いができるようでしたら、早期の離婚につながることもあります。

 間に入ってもらう人物としては、あなたのお母様かもしれません、仲の良いお姉様かもしれません、職場の先輩、大学のゼミの同期、中学時代からの幼なじみ等、離婚という繊細な問題を打ち明けても良い人間で、力を貸してくれそうな人物を想像してみて下さい。

 

 そして、その様な人物が思い当たるのであれば、その人に相談してみることを考えてみて下さい。

 ただし、注意して欲しいのは、その様な人物が思い浮かんでも、すぐに相談するのではなく、その人に相談するのがよいかよく考えることです。

 

 よく聞きますのは、「親身に話に乗ってくれる人がいるけれども、旦那との接点がないから、その人を間に入れるのは、旦那が絶対拒否すると思う」だとか「うちの母には相談しているけれども、子供のためには絶対離婚など認めないという考えの人なので、離婚に賛同してくれなさそうである」とか「丁度間に入ってくれそうな人がいるけれども、口が軽いのですぐに噂が広まってしまいそうである」といった話です。

 

 相談したことでかえって事態が悪化してしまうことがないよう注意が必要です。

 ちなみに、間に入ってもらうにあたっては、夫婦の話し合いの席に同席してもらうという方法や、伝言役のような形でお互いの意見を伝達してもらう方法があります。また、ご両親に間に入ってもらう場合には、夫婦双方の両親も交えて大家族会議を開いて話し合うという方法も考えられます。

 

 

(2)DVであることに対する配慮

 前述のように、誰かを間に入れることで旦那が冷静でいられる場合はいいのですが、逆に間に入った人物に対して暴言を吐く危険性があるような場合には、誰かを間に入れるという方法は取れません。

 その場合には、いよいよ弁護士に依頼することも検討しなければならない段階と言えます。

 

 

(3)弁護士はどのタイミングで調停に切り替えるのか。

 これは弁護士として多数DVのケースを手がけてきた経験に基づくものなので一概には言いづらいのですが、以下のような要素を考慮して切替のタイミングを計っています。

 

①DV旦那がどこまで離婚に反対しているのか。

 調停切替の判断で一番重要な要素が、DV旦那の離婚に対する捉え方です。

 表面的には離婚に反対する意向を示していても、内心では、「弁護士まで出てきているぐらいだから、もう今まで通りの夫婦関係を取り戻すのは無理だ」と感じているような場合もあります。

 その様な場合には、粘り強く交渉をすれば協議離婚によって解決できる可能性もありますので、すぐに調停に切り替えるのではなく、できる限り離婚交渉の期間を取るようにすることが多くなります。

 他方で、DV旦那が離婚に断固拒否しており、その意思が非常に固いと思われるケースでは、早めに調停に切り替えることを考えます。

 

②ご夫婦の調停手続の捉え方

まず、奥様側から見ると、調停という手続が裁判所で行われるものですし、調停離婚する場合、戸籍に「協議離婚」ではなく「調停離婚」と書かれてしまうこともあって、極力調停にしたくないという方もいます。

その様な場合には、当然極力協議離婚の努力をして行くことになります。

他方、旦那側から見ると、調停という手続が裁判に準ずる重要な手続だという認識の方から、話し合いの場所が(裁判所に)変更されたに過ぎないという認識の方もいます。

まず、調停手続を重要な手続だと考えている旦那を相手にする場合、調停に進む場合には、できる限り丁寧なアナウンスをするようにしています。そうでないと、相手から無用な反発を受けることが多いからです。ただ、調停が深刻な手続のように考えている場合には、旦那側には「その様な手続を避けたいのであれば、離婚届にサインしてもらえませんか」という説得のし方をします。

他方、調停手続を深刻に考えていない場合には、こちらとしても調停申立のハードルは下がることになります。

 

③旦那がDVを認めているかどうか。

旦那がDVの事実を否定している場合には、調停申立前に極力DVの証拠集めをすることが多いです。診断書や怪我の写真と言った客観的な証拠があれば一番ですが、それがない場合でも、相手とのやり取りのラインやメールが証拠になることもありますので、相手が暴力を認めるラインやメールの有無等を確認して行くことになります。

このような、いわゆる証拠集めが必要になりますので、旦那がDVを完全に否定しているような場合には、それなりに準備に時間を要するケースが増えます。

 

 

3.まとめ


○一般の離婚のケースだと夫婦当人同士の話し合いをした方が望ましいが、DVのケースだと直接話し合うことが望ましくないケースの比率が増えてくる。

○間に誰かを入れて話をすることも一長一短でよく検討する必要がある。

○弁護士が調停に切り替えるかどうかは経験に基づき様々な要素を検討して判断している。

 

 

 

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