内縁解消時に踏むべき全手順
2019.02.18更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「本当に分かりやすい詳しいブログ解説」を目指して解説していきます。
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1.大ざっぱに言うと内縁解消の問題には3つのステップがある
大ざっぱに言いますと、内縁解消の問題には3つのステップがあります。
①話し合いのステップ
↓
②内縁関係解消調停のステップ
↓
③各種裁判のステップ
一般的には皆さんどのような手順で手続を進めるのが多いのかを含めて、以下で詳しくご説明致します。
2.話し合いのステップ
(1)まずは本人同士の話し合い
最終的には内縁生活の精算を含めたお金のやり取り等を含めて全て話し合いで解決することをゴールとする手続です。
このような話し合いがまとまればよいのですが、話し合いがまとまらない場合には、「当人同士の話し合い」以外の方法を模索する必要があります。
(2)本人同士の話し合いがまとまらないとすぐに調停なのか?
本人同士の話し合いがまとまらない場合、ご両親等の身内の方を交えて話をしたり、友人等に間に入ってもらって話をするというケースもあります。身内や友人を間に入れれば、感情的な議論を避ける効果がありますので、間に入ってくれるような的確な人物がいないか検討してみて下さい。
上記のような的確な第三者が居ないという場合には、弁護士が間に入って話し合いをするケースもあります。弁護士を間に入れると、すぐに調停手続になると誤解されている方も多くいますが、弁護士が間に入ることで話し合いがまとまるケースもありますので、弁護士としては話し合いによる解決を目指すケースの方が多いと思います。
(3)協議書は作った方が良い?
内縁解消の際には養育費や財産分与、慰謝料といったお金に関わる問題についても話し合いをしますので、その様な話し合いの結果は、「協議書」といった書面にまとめ、内縁夫婦双方の署名押印をして下さい。特に養育費などは、お子様が少なくとも成人するまで支払う必要があるお金になりますの で、きちんと協議書に金額を明記しておくと安心です。
(4)内縁関係かどうかで対立することがかなり多い。
以上が一般的な内縁解消の話し合いの進め方になりますが、そもそも、お金の話を持ち出すと、相手が「あなたとの関係は内縁と呼べるような関係ではなかった」といったことを言い始める人も多いのが実情です。
このような議論に発展する場合には、細かな内縁解消の条件についてまで話が進みませんので、いよいよ調停も視野に入れなくてはならなくなりますし、調停準備にあたっては内縁を証明できる資料がどこまであるのかの整理も必要になってきます。
(5)最後通告はしておいた方が良い
身内の方や友人等が間に入っても内縁解消条件の話し合いがまとまらないケースや、間に入ってくれる的確な人物が居ないという場合には、本格的に弁護士を雇うことや調停を申し立てることを考えなければならなくなります。
ただ、その場合にも、可能であれば「このまま話し合いが進まなければ弁護士を雇うことになるよ」という最後通告はしておいた方が良いと思います。このような最後通告をしますと、相手も諦めて譲歩してくる可能性もあるからです。
また、相手が一時的に感情的になっていると思われる場合には、一旦相手が冷静になるように1,2か月期間を置くことで順調に話し合いができたというケースもありますので、一定期間間を置くという方法も検討の余地があります。
3.内縁解消調停のステップ
(1)話し合いの次の手続は内縁解消調停
上記のような話し合いのステップが全て上手く行かなかった場合、次のステップは内縁解消調停ということになります。
内縁解消調停となりますと、話し合いをベースにする手続とは言っても、裁判所において行われる手続になりますので、本格的に、弁護士に依頼するかを検討しなければならないタイミングでもあります。
内縁解消調停は、1か月に1回程度の頻度で裁判所の調停委員が間に入って話し合いが行われることになります。調停手続では原則として内縁夫婦本人同士が直接顔を合わせることはありませんので、その点は安心して手続を進められると思います(但し、最初の手続の説明や最後の調停条項の読み上げなど一時的に内縁ご夫婦同席となるケースもありますので、この点はご注意下さい)
なお、内縁解消の問題はほとんどが金銭問題のみになりますので、慰謝料請求訴訟等すぐに訴訟を起こすことができるのですが、内縁解消調停の枠組みの方が内縁解消に伴う条件を全て話し合うことができますので、通常は内縁解消調停を起こし、調停が上手く行かなかったときに訴訟という手順を取ります。
(2)内縁解消調停が不成立になった場合、すぐに裁判か?
ちなみに、内縁解消調停手続で折り合いがつかなかった場合、すぐに裁判を起こすべきかについては慎重に検討する必要があります。
裁判は互いに相手を中傷し合う場になりますので、心理的負担が大きいとともに、手続の終了まで時間がかかることが多いため、裁判をしないで済む場合には、 しない方が良いからです。
そのため、どのタイミングで裁判を起こすのかについては、慎重な検討が必要になります。
(3)分離合意の可能性の模索
内縁解消の条件としては、主に、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割といった問題を話し合うのですが、慰謝料の問題は意見が食い違っているけれども、養育費や財産分与については意見の食い違いがほとんどないというケースもあります。その様な場合には、養育費や財産分与についてだけ調停を成立させ、慰謝料の問題だけを別の手続にするという方法を取ることもあります。
後述するように、内縁解消の金銭問題は、それぞれの問題について審判や裁判の手続きが必要になりますので、その全てについて審判や裁判を起こすと、手続が分岐して手数が多くかかってしまいますし、最終的な解決までに時間がかかってしまう虞があるからです。
4.裁判のステップ
上記の「内縁解消調停」も上手く行かない場合には、裁判の手続きに進むことになります。
なお、離婚の場合には「離婚裁判」というものがありますが、内縁の場合には「内縁解消の裁判」というものはありません。離婚の場合、相手が断固として離婚届にサインをしないければ、離婚することができませんから、どうしても離婚したい場合には、裁判所が言い渡す判決で離婚する他ありません。
これに対して、内縁の場合、最初から内縁関係は戸籍に登載されておりませんので、内縁解消届といった書類へのサインは必要ありません。そうすると、裁判所が内縁解消を命令しなくとも、同居を解消してしまえば事実上内縁は解消できてしまいますから、「内縁解消の裁判」というものはないのです。
従って、裁判に移行するという場合には、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割といったそれぞれの問題について、それぞれ裁判・審判の手続を行う必要が出てきます。
裁判と調停との大きな差は、①調停委員会ではなく、裁判官が間に入る、②話し合いではなく判決(決定)という命令を得るために主張を戦わせて行くことになるという点です。なお、裁判においては、裁判期日で詳しく事情を聴かれることはあまり多くないので、ご依頼者様ご本人が出席する必要は基本的にありません。
このように裁判は、内縁解消の手続きの中でも最終ステップに位置付けられる手続になり、裁判官から最終結論が示されることになります。分かりやすく俗な言い方をさせていただきますと「白黒つける」手続になります。
ただ、内縁ご夫婦の問題になりますので、裁判官も最終的な判決言い渡しではなく、和解による解決を促してくることが多く、実際にも和解で解決するケースも少なくありません。
6.まとめ
・内縁解消の手続きには、①話し合い、②内縁解消調停、③審判や裁判という3つのステップがある。
・当人同士の話し合いが上手く行かなかったからと言って、すぐに調停ではなく、身内や友人を間に入れる方法や弁護士を間に入れて合意を目指すという方法もある。
・内縁解消調停に進む決意をした場合や、弁護士を雇う決意をした場合でも、最後に相手に最後通告はした方が良いことが多い。
・話し合いのステップが全て上手く行かなかった場合には、内縁解消調停の申立を考える必要がある。
・内縁解消調停で上手く折り合いがつかなかった場合でも、裁判を起こすタイミングは慎重に検討する必要がある。
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