東京家庭裁判所入り口・女性刺殺事件の報を受けて
2019.03.20更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。
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本日、東京家庭裁判所入り口付近にて女性が刺殺されるという痛ましい事件が発生してしまいました。被害女性の方及びご遺族の方々には心よりご冥福をお祈りいたします。
1.現場に居合わせた身として、離婚事件の専門家としてどの様に思うか
実は、私は本日東京家庭裁判所に事件の関係で向かっておりまして、偶然事件現場に遭遇しております。被害女性のご遺族の方々のご心境等を考えますと、私の方からは、当時の様子等についてこの場でお話しすることはできないのですが、現場に居合わせた身としまして、今回の様な事件が発生したことについては遺憾という他申し上げられないという気持ちです(なお、私は、今回の事件の加害男性や被害男性の代理人弁護士ではございませんし、その他の直接の事件関係者でもございません)。
私は、モラハラ・DVを含めた離婚事件に力を入れております関係で、今回の事件について若干のコメントをさせて頂こうかと思います。
(1)私としては3重にショック
1)やはり、今回被害者の方がお亡くなりになった、尊い命が失われたと言うことについて非常に大きなショックを受けております。
2)次にショックを受けたのは、裁判所という公的な場で今回の様な凶行が行われたと言うことです。軽度のモラハラ加害者であれば、裁判所では恐縮するという人物も多いのですが、今後は「裁判所であっても何が起こるか分からない」という気持ちをさらに強めつつ事件処理にあたっていく必要があると感じております。
3)最後にショックなのは、調停中ということです。調停は裁判所を間に入れた話し合いであって、いわゆる「裁判」とは異なります。調停中どの様なやりとりがあってこのような惨事が起きてしまったのか分かりませんが、このような話し合いの最中に事件が起きたことにはショックを禁じ得ません。
(2)東京家庭裁判所の保安検査について
東京家庭裁判所正面にはセキュリティがひかれておりまして、いわゆる空港の入場時検査の様な手荷物検査、ゲート型金属探知器等があります。そのため、私が普段東京家庭裁判所を利用する際には、「裁判所建物内では凶器や危険物の処理が非常に難しい状況にある」という認識ではおりました。
今回の事件は、このような検査手前の場所(「東京家庭裁判所建物内ではあるけれども保安検査のゲートの直前の場所」という意味です)が事件現場になっておりますので、上記の保安検査の不備等ではないのかと思います。
今回のトラブル発生時に警備員の方々が適切に対応できていたのか等については、今後の報道等にて、事後的に検証されていく問題かと思います。
(3)特にDV離婚のケースでは常に調停時にトラブルが発生しないか神経を遣っている
私はDV離婚のケースも取り扱いますので、被害女性の方と一緒に調停に臨む場面もあります。その場合に一番神経を遣いますのは、①家庭裁判所への出入りの際に加害男性から暴力その他の攻撃を受けないかという点と②家庭裁判所から出た後加害男性から尾行されないかという点になります。
今回の様な事件が起きる前から、上記①②のトラブルが発生しない様、裁判所にも配慮を求め、裁判所にも対応してもらってきたのですが、今回の事件を受けて、他に対応できる点がないか慎重に考えていく必要があろうかと思っております。
2.そもそも弁護士を立てているのに本人が裁判所に足を運ぶ必要があるのか?
今回の東京家庭裁判所の刺殺事件において、加害者や被害者が弁護士を立てていたのかは分かりかねるのですが、私が対応している事件では基本的にご本人にも家庭裁判所にご足労願っております。それは以下の様な理由によるものです。
①これまでの夫婦関係の詳しい事情はご本人にしか分からないため、弁護士だけでは調停委員との受け答えに限界がある。
②これまでの夫婦関係の詳しい事情はご本人の口から話をしてもらった方が調停委員への印象力が大きい。
③調停を担当している調停委員の様子や調停の進め方などご本人にもしっかりと把握してもらった上で手続を進めたい(離婚するかどうかは人生に1度や2度しかない重要な出来事なので、その経過についてもしっかりと把握して欲しいと考えております)
④少なくとも離婚調停成立時にはご本人が出席していただかないと手続が完了しない。
⑤ご本人が調停に参加することで弁護士として新たな気付き等がある。
ほとんどの弁護士は離婚調停に取り組むにあたって、ご本人にもご足労願っていると思いますが、私もそのような手続の進め方をさせていただいております。
3.今後どの様な配慮が必要になるか
今回の事件を受けて、特にDV被害を受けてきた女性の方々は、より一層家庭裁判所に足を運ぶことに恐怖感をお持ちになったことと思います。
そのため、まず、DVの明確な証拠が複数存在するケースでは、私の様な弁護士のみが調停の場に出席し、極力ご本人には裁判所まで足を運んでいただかないという方法が考えられます。
この方法で、調停の道筋がつくようでしたら最後の調停期日のみご本人に出席していただいて調停を成立させるという方法が考えられます。他方、調停の道筋が到底就かなさそうという場合には、早めに調停手続に見切りをつけて、離婚裁判を起こすという方向での検討もできるかと思います。
悩ましいのは、DVの明確な証拠が少ないというケースです。この場合、あまり早急に裁判に訴えることは敗訴のリスクがありますので、取り得ないということになります。このような場合に被害者の方の不安を軽減させながら、裁判所にご出席いただく方法が検討できないか慎重に裁判所とも協議していくほかないと思います。
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