内縁解消調停が上手く行かなかった場合の裁判とは?
2019.03.11更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
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1.内縁解消裁判という裁判はない
離婚の問題の場合、離婚調停が上手く行かなかった場合、離婚裁判を起こすことになります。そして、この離婚裁判の中で、養育費や財産分与、慰謝料の問題もセットで審理していくことが可能です。
これに対して、内縁の場合には「内縁解消の裁判」というものはありません。離婚の場合、相手が断固として離婚届にサインをしないければ、離婚することができませんから、どうしても離婚したい場合には、裁判所が言い渡す判決で離婚する他ありません。
これに対して、内縁の場合、最初から内縁関係は戸籍に登載されておりませんので、内縁解消届といった書類へのサインは必要ありません。そうすると、裁判所が内縁解消を命令しなくとも、同居を解消してしまえば事実上内縁は解消できてしまいますから、「内縁解消の裁判」というものはないのです。
そのため、内縁解消調停で解決しなかった問題は、それぞれ個別に審判や裁判を起こさなければならなくなります。
2.具体的にはどういう手続きを取るの?
先ほど説明しましたとおり、内縁解消の問題はそれぞれの問題について裁判や審判を起こす必要が出てきます。
具体的には、養育費や面会交流、財産分与、慰謝料といった問題が出てきますが、それぞれの事件を起こさなければならなくなるのです。離婚の場合には、「離婚裁判」という大本の手続が一つ出来上がりますので養育費や財産分与、慰謝料といった問題は、大本の手続である離婚裁判に付随する形で取り扱ってくれますので、この点が内縁解消と離婚の大きな手続の違いといえます。
より具体的に申しますと、養育費審判、面会交流審判、財産分与審判という3つの審判手続と、慰謝料訴訟という一つの裁判が乱立するような形になるのです。審判は同じ家庭裁判所で審理が行われますから、併合して手続を行うように求めることができますが、慰謝料の問題だけは裁判で行わねばならず、これは地方裁判所で審理を行う関係上、審判と一緒に審理してもらうということはできません。
3.審判・裁判と調停の違い
調停と比較していくと裁判や審判がどのようなものか、概要を掴むことができると思いますので、まずは比較しながら概説いたします。
審判・裁判と調停との間にはいくつもの違いがあるのですが、大きな違いとしては以下のような点が挙げられます。
①裁判は判決を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。
②裁判は原則公開法廷で行われますが、調停は非公開で行われます。
③裁判には控訴という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできません。
④裁判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではありません。
⑤裁判では基本的に当事者本人が出席する必要がありませんが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要があります。
それぞれについて具体的に説明して行きます。
(1)裁判は判決を目指す
冒頭でも説明しましたとおり、裁判は判決を得ることを目的としており、判決が言い渡されて、その内容が確定すると、不満のある当事者も判決の内容に従わざるを得なくなります。
調停の場合には、相手の提案に納得が行かない場合には、納得いかない旨を述べれば調停は成立しませんので、相手の言い分を強要されることはありませんので、この点が裁判と調停の一番大きな違いと言えます。
(2)裁判は原則公開法廷で行われる
調停は調停室という会議室のような部屋で行われるのですが、裁判は原則として法廷(テレビドラマなどに出てくるのは通常この「法廷」になります)で行われます。但し、裁判の途中から弁論準備手続という手続に入ることも多く、弁論準備手続は基本的に非公開で行われます。
(3)判決に対しては控訴という不服申立ができる(審判に対して即時抗告)
離婚裁判の結論として判決が言い渡された場合でも、その判決に不満がある当事者は、控訴をして、その判決内容を争うことができます。
これに対して、調停が成立した場合、後で気持ちが変わったとしても調停の内容を覆すことはできません(不服申立手段がありません)。
なお、離婚裁判の中で当事者間の話し合いが上手くいった場合には、「和解」が成立することがありますが、この和解に対しては不服申立ができません。
(4)裁判では書類のやり取りが中心になる
裁判では、最終的には裁判官が判決を書くことになりますので、当事者の言い分が不正確にならないように、お互いの言い分は準備書面といった書面に書き起こして主張してゆくことになります。
調停の場合には、特に調停委員が希望する場合を除いて、言い分は調停室内で口頭にて述べられますので、この点も裁判との違いになります。
このように裁判では本人の言い分が裁判官にきちんと届くように書面をまとめることが非常に重要になりますので、裁判期日当日というよりも当日よりも前の準備書面の準備が重要になります。
実際上も、裁判期日当日は、短い時には5分程度で終わってしまうこともあります(「事前に書類を提出したとおりです」と発言するだけで終わってしまうこともあるからです)。
(5)裁判には原則本人は出席しなくて良いし、通常は出席しない
内縁関係解消調停の場合、仮に弁護士が代理人に就いたとしても、本人が調停手続に出席する必要があります(弁護士も同席します)。
これに対して、裁判の場合、代理人が法廷に出席すれば良く、本人が出席する必要はありません。
裁判の場合、上記の通り、書類のやり取りが中心になりますので、期日当日本人に事実確認をする必要がなく、御本人に出席していただく必要はなくなるのです。
4.裁判の具体的イメージは?
裁判というと、よくドラマでやる様な相手を証言台に立たせて尋問することをイメージする方も多いと思いますが、実際の裁判は少し違います。
大きなイメージとしては、①お互いの言い分を言い尽くすステップ→②必要な証拠を出し尽くすステップ→③尋問手続→④判決という流れになります。この説明だけでは、今一ぼんやりとしか分からないと思いますので、より具体的にご説明します。
①お互いの言い分を言い尽くすステップ
前述の通り、裁判は調停とは違って口頭で説明するのではなく書面を提出して説明していくことになります。要するに、養育費の金額が○円というのが正当だと考える根拠や慰謝料○円が正当だと考える根拠といった点を詳しく説明する書類を裁判所に提出するのです。
このような説明書類はいったん説明すれば済む気もするのですが、このような説明書類に対しては相手も反論してきます。相手の反論に対して再反論し、また相手から反論がありと言ったやりとりを何度か繰り返していくことになります。
②必要な証拠を出し尽くすステップ
上記の言い分を言い尽くすステップの中で通常は、裏付け証拠も一緒に提出していくことになります。例えば、相手からのモラハラがあった証拠として相手からのLINEを証拠で提出したり、と言った具合です。
前述の言い分を再度振り返って、提出が漏れていた証拠などを発見することもありますので、最後に、証拠を出し尽くすステップが設けられるのが通常です。
③尋問のステップ
上記の様なやりとりを経て、ようやく尋問のステップに到着します。いわゆるドラマでよくやる証言台で相手から話を聞くステップです。
このように尋問のステップは、かなり終盤で実施されるステップとお考えいただければよいと思います。
なお、養育費や財産分与の審判などは金銭問題に的を絞った審判になりますので、通常は尋問は行われません。
④判決(決定)
上記の様なすべてのステップが終わると、裁判所の方から判決が言い渡される期日が指定されます。お互いの言い分と証拠がすべて出そろったので、裁判官が、言い分や証拠をもとに判決文を書き上げるのです。前述の通り判決文には強制力がありますので、それには従う必要があります(但し、判決に不服がある場合には控訴することが可能です)。
5.ケースにもよるが弁護士としてはあまり裁判をオススメしない
もちろんケースにもよりますので一概には言えないのですが、私が弁護士としての立場で申し上げさせてもらいますと、裁判はあまりオススメしません。大きな理由は以下の通りです。
①最終解決までに時間がかかる
裁判の手続を進めますと細かな資料の提出を求められるなどして相当期間を要することが多いため、最終的な離婚までに時間がかかってしまいます。
②御本人にとって精神的負担が大きくなる
①の点にも増して、裁判になると御本人の精神的負担が大きくなります。
といいますのは、裁判になりますとお互いが主張の出し惜しみをしなくなりますので、お互いに内縁生活でイヤだと思った点、傷ついた点、不十分であった点などを最大限主張してゆくことになるので、このような書面を見るたびに気持ちが滅入ってしまいます。
相手の言い分が事実ならば多少はよいのですが、裁判になりますと誤解に基づく発言や当時のシチュエーションを無視した主張などがなされますので、余計に精神的な負担が大きくなります。
もちろん当事者間の対立が激しく、相手が不合理な言い分に固執しているような場合などは裁判に手続を進める他ないでしょうが、そうでない場合には基本的に調停による決を目指す方が望ましいと思います。
内縁関係解消調停が行き詰まるなどして、今後の進め方に不安があるような場合には早めに弁護士にご相談下さい。
6.内縁解消特有の問題
内縁解消に伴う財産分与や慰謝料の紛争では、ほとんどのケースで、相手がそもそも最初から内縁関係は成立していないといった言い分が述べられます。そのため、こちらから内縁が成立しているという根拠を証拠と共に主張していかなければならないケースがほとんどです。
また、仮に内縁が成立していたとしてもお互い納得の上で一旦解消しているから今更慰謝料は払わないという主張が展開されることもあります。その様な場合にはしっかりと内縁解消には至っていないといった事情を証拠と共に主張していかなければならないケースもあります。
特に内縁の成立については慎重に判断しようと考える裁判官も多いため、難所の一つと言えます。
7.まとめ
・内縁解消裁判というカテゴリーの裁判は存在しない。
・結局内縁解消時の問題に関してはそれぞれの問題について個別に審判や裁判を起こす必要がある。
・裁判と調停を比較するとより手続を理解しやすいと思うが、具体的には大きく以下のような違いがある。
①裁判は判決を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。
②裁判は原則公開法廷で行われますが、調停は非公開で行われる。
③裁判には控訴という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできない。
④裁判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではない。
⑤裁判では基本的に当事者本人が出席する必要はないが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要がある。
・大きな裁判の流れとしては以下のようなステップで審理が進んでいく
①お互いの言い分を言い尽くすステップ→②必要な証拠を出し尽くすステップ→③尋問手続→④判決
・裁判には時間と心理的負担がかかるため極力避けた方が望ましい。
・内縁解消に伴う裁判の場合、相手が内縁を否定してくることがほとんどなので、その証明が必要になることが多い。
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