離婚問題

モラハラ夫との別居準備(8)―置き手紙の活用法

2022.06.06更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.なぜ置き手紙なのか?


(1)モラハラ夫と別居する際、事前にモラハラ夫と話ができていて、〇月〇日に家を出るということの確認が取れているようでしたら、別に置き手紙を準備する必要はないかと思います。
 他方で、①モラハラ夫に多少別居話をしたが、議論が進展していないとか、②モラハラ夫に事前に伝えないほうが良いケースの場合には、別居時に置き手紙を活用することをオススメしています。

(2)何も残さずに別居することはトラブルの素である。
まず、置き手紙も何も残さずに別居を開始してしまいますと、モラハラ夫は、あなたの職場や実家、親族、果ては警察など様々なところに電話をかけまくったり、直接訪問してくることもありますので、少なくとも置き手紙くらいは残したほうが良いかと思います。
 モラハラ夫が「妻と子供が犯罪に巻き込まれた可能性が高い」などといって警察に相談しますと、捜索願が受理されてしまうケースもありますので、そのような混乱を避けるためにも、置手紙があったほうが良いでしょう。

(3)なぜメールやLINEだとダメなのか?
 私は、メールやLINEではなく、置き手紙をおススメしています。それは主に以下の理由からです。
① 手紙の方がこちらの真剣度が伝わりやすい
② 別居後のやり取りを回避しやすい
③ 送信間違い等がほぼ起きない

 詳しく説明していきますと、①につきましては、これだけメール等の通信機能が発展しておりますと、夫婦でやり取りをする際に手紙を利用することはかなり稀だと思います。そのため、置手紙の方が、「普段やらないことをやっている」という印象を深めることができると思います。
 次に、②につきましては、別居の旨等をメールやLINEで送ると、モラハラ夫側から即座に返事がなされたり、頻繁に連絡が来るなどして対応に苦慮するケースが多いです。何より、こちらからメールやLINEをすると、自分から「メール(またはLINE)を連絡手段として利用する」と言っているようなものなので、相手の誤解を強めてしまうと思います。

 LINE等ですと、可能性は低いのでしょうが、メール等ですと、特に、慌ただしく別居準備をしたケースなどでは、誤って他の人に送信してしまうといったこともあります。自宅の目立つところに置き手紙を残しておけば、それを他人が見ることはほとんどないかと思います。

 

 

2.置き手紙には何を書くか?


 置き手紙のボリュームをどの程度にするかは、あなた自身の考え方にもよるのですが、大きく分けると以下のようなことを盛り込むことが多いと思います。以下、詳しく解説していきます。

① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達と一緒に別居する旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先(担当弁護士の電話番号等)

 

 詳しく説明していきますと、①については、離婚を前提としていることはしっかりと伝えることが多いです。一旦冷却期間を置くための別居だと誤解されては困りますので、この点を明記するのです。
 次に、②につきましては、どこまで細かく記載するかはあなた次第です。ただ、あまり細かい事情を書いても、モラハラ夫がそのことを理解するとはとても思えませんので、簡潔に記載することが多いと思います(短い場合には、2,3行で済ませるケースも多いですが、しっかりと気持ちを伝えておきたいということで何十行も書く人もいます)。

上記の③については、夫側が「子どもが犯罪に巻き込まれたかもしれない」と言った余計な詮索等を防止するために盛り込むことが多いです。
 また、④については、前述の通り、納得いかないとモラハラ夫はあなたを探し回る人もいるため、くれぐれも探さないよう伝える文言です。
 なお、実際にはあなたは浮気などしていないのに、同居中から、夫があなたの浮気を執拗に疑っていたケースとか、あなたの居場所を伝えないと職場に迷惑がかかりそうだといったケースですと、④の箇所で「今後は実家で暮らします」というように、あなたの居場所を伝えてしまうケースもあります。
 ただ、このように書いてしまうと、モラハラ夫が実家に乗り込んでくることも多いので、どこまで書くかは慎重に検討したほうが良いと思います。

 最後の⑤については、あなたの別居先住所を伝えるという意味ではありません(ケースによっては、あなたの住所は絶対に伝えないほうが良いというケースも多いかと思います)。担当の弁護士が決まっているようでしたら、弁護士の連絡先を書いたり、「追って近日中に弁護士から手紙が届きます」と書いたりします。また、あなたのご実家のお父様に間に入ってもらう場合には「今後は父の携帯電話までご連絡下さい。私宛の直接の連絡はお控えください」と書いたりします。

 

 

3.置き手紙のボリュームは?

 


 

 置き手紙を作成する際、この際だからということで、かなり長い文章を考える方もいます。

 ただ、モラハラ夫は基本的に自分がしてきたことは間違っていないという発想の人が多いため、あなたが書いている内容を読めば読むほど怒りが湧いてくるという人が多いです(非常に残念な話ですが)。

 そのため、あまり長文にしてしまいますと、モラハラ夫が怒りを強めてしまうだけということにもなりかねませんし、また、あまり文章が長いと、あなたの伝えたいことが伝わりにくくなるという面があることも否定できません。

 そこで、置き手紙はあまり長くしないケースが多く、私がかかわったケースですと、A4の用紙に1枚か、どんなに長くても2枚までというケースが多いと思います(A4用紙1枚と言っても、半分か3分の1くらいは空白で、文章がぎっしり埋まっているというケースは少ないことが多いと思います)。

 

 

4.置き手紙は手書きが良いのか?


 私は、あまり長文でないようなら手書きをおススメしています。
 手書きの方があなた自身の気持ちとして別居・離婚を決意したというところをモラハラ夫にしっかりと伝えられると考えるからです(ただ、残念ながら、モラハラ夫は、こちらの真剣な気持ちをほとんど理解してくれないことの方が多いです)

 

 

4.まとめ


・別居の知らせは、メールやLINEではなく、置き手紙の方がオススメである。
・置き手紙には以下のようなことを書くことが多い。
① 離婚を前提とした別居であることの明記
② 別居を決意した理由の説明
③ 子ども達と一緒に別居する旨
④ くれぐれも探さないでほしい旨
⑤ 今後の連絡先
・置き手紙はA4用紙1枚くらいに収めてしまうことが多い。

・置き手紙は極力手書きの方がオススメである。

 

 

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モラハラ夫との別居準備(7)―事前にお子様にはどこまで話をしておいた方が良いか

2022.05.30更新

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1.お子様に別居のことをいつ、どこまで話すかは非常に悩ましい


 お子様がまだ乳幼児で、自分の意思を示すことができないという年齢でしたら、別居のことを伝えても理解できませんので、悩む必要はありません。
 他方で、お子様が自分の生活環境等を理解している場合、事前に何も伝えずに別居するというわけにもいかないでしょうから、いつ、どこまで話をするのかということは悩ましい問題になるケースも多いです。以下、詳しく解説していきます。

 

 

2.お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半


(1)お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半
お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、かなり周りのことを理解できる年齢になっておりますので、別居すること、今住んでいる自宅には戻らないことについては事前に話をし、その理解を得ておくケースが大半かと思います(離婚まで言及するかは、お子様のご様子にもよるかと思います)。
 特に、お子様が小学校高学年の場合、「別居は構わないけれども、小学校は変わりたくない」とか「今まで通り習い事は続けたい」もしくは「仲の良い友達とは引き続き会いたい」といった自分の意見が出てくることが多いため、その意見を無視して別居することは難しいと思います(お子様の意見を無視して別居すると、後から「自宅に帰りたい」といった意見が出て、親権争い等で不利になる可能性もあるという意味です)。

 その際に、お子様にどこまでの話をするのかという点ですが、お子様が小学校高学年の場合、普段のモラハラ夫の行動や言動はしっかりと認識していますので、詳しく説明しなくとも「お母さんは、お父さんと一緒に暮らしていくことが難しいから、この家を出て暮らすけれど、一緒に来る?」といった簡単な説明で済むケースも多いかと思います。
 なお、夫婦の紛争に関する話を事細かにお子様に話すのは好ましくないとされていますので、特に必要がない限り、あまり詳しい説明はしない方が良いと思います。

(2)別居の何週間前、何か月前くらいに話をするか
 これは、ケースによって皆さんそれぞれなのですが、①お子様自身の口から「こんなお父さんと一緒に暮らしたくないから早く離婚して欲しい」とか「お母さんが可哀想だから、早く別れて欲しい」といった積極的な言葉が出ている場合には、別居の2,3か月前とか、比較的早い段階から別居のことを伝えているケースが多いように感じます。

 逆に、別居のことをお子様に伝えるとお子様が頭を悩ませてしまいそうだとか、お子様は別居したくないという気持ちの方が強い場合には、いつ頃話をするかは悩ましい問題です。
 このような場合には、お子様にじっくり考えてもらうために、早い段階で別居の話を伝えておいた方が良いケースもある反面、早めに伝えると、お子様を通してモラハラ夫に別居の計画が発覚してしまい、夫が別居を妨害してくるリスクが高まるというジレンマがあります。
 そのため、お子様の性格やお子様とモラハラ夫との関係性等も考慮して、お子様に話をするタイミングを検討すべきことになろうかと思います。

(3)お子様が15歳以上の場合、事前に説明をして理解を得ておくことはほぼ必須
 前述の通り、お子様の年齢が小学校高学年以上の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半でしょうが、その中でも、特にお子様が15歳以上の場合には、その理解を得ておくことはほぼ必須になります。
 と言いますのは、お子様が15歳以上の場合、裁判所が親権者を決めるにあたっても、お子様の意見を確認することが必須事項となっておりますので、別居に際しても、より一層慎重に対応したほうが良いということになるのです。

 

 

3.お子様が小学校低学年以下の年齢の場合、お子様の理解力などに応じて検討する


 お子様が小学校低学年以下の場合でも、小学生の場合には、おおよその環境等の理解は進んでいると思いますので、少なくとも事前に別居のことは伝えるべきかと思います。
 ただ、小学校低学年以下の年齢ですと、お子様がモラハラ夫に別居のことなどを話してしまう危険性が高いので、あまり早い段階で話をしない方がよいかと思います。
 お子様が小学生未満の場合には、お子様の理解力に応じて、事前に別居のことを伝えるかどうかも含めて検討していくことになろうかと思います。

 

 

4.別居や離婚は、お子様にとっても「自分事」だという認識を持つことが大事


 別居や離婚は、あなたにとっても大きな不安事ですし、どうやったら円滑に離婚できるのかといったことで頭がいっぱいになってしまう方も多いと思います。
 ただ、別居で生活環境が変わるのはあなただけではありません。
 お子様も様々な悩みや不安を抱えることになると思いますので、別居や離婚は、あなた自身の「自分事」というだけではなく、お子様にとっても「自分事」なんだという気持ちをもって接するのが良いかと思います。

 

 

5.まとめ


・お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、お子様の理解を得た上で別居するケースが大半である。
・お子様が小学校高学年以上の年齢の場合、別居にあたっての詳しい説明は不要なことも多い。
・お子様が別居や離婚に賛成派の場合、比較的早い段階から別居のことを伝えているケースが多い。
・お子様が15歳以上の場合、事前に説明をして理解を得ておくことはほぼ必須である。
・お子様が小学校低学年以下の年齢の場合、お子様の理解力などに応じて検討する必要がある。
・別居や離婚は、お子様にとっても「自分事」だという認識を持つことが大事である。

 

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モラハラ夫との別居準備(6)―夫から「子どもの連れ去り」と言われないためにはどうすればよいか

2022.05.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.モラハラ夫と事前に話ができるようなら話しておく


 モラハラ夫との別居を検討する際、あなた自身の別居については応じるかもしれないけれども、「子どもは置いていけ」とか「子どもは連れて行くな」と言われそうだというご相談を受けることは多いです。
 そのため、もし事前にモラハラ夫側に話をし、夫側の理解を得られるようであれば、理解を得た上で別居するのが良いと思います。
 もちろん、あなた自身がモラハラ夫と単身で話をすることが難しいようであれば、あなたのご両親や親族等に間に入ってもらったり、同席してもらって話をするという方法もあります。

 

2.モラハラ夫の事前の同意がなければ「違法な連れ去り」になってしまうのか?


モラハラ夫側の了解を得ていなかったとしても、そのことだけで、違法な連れ去りになるということではありません。
モラハラ夫側の了解を得ずに別居したとしても、同居中夫側からのDVやモラハラにかなり苦しめられており、事前に話をすると別居を妨害される危険性があったとか、もしくは、旦那側からのDVやモラハラが強まる可能性が高かったなど、一定の事情があって別居を開始しているケースが大半だと思いますので、そのような場合には、相手の了解を得なくともやむを得ないと言えます。

 

 

3.違法な連れ去りに該当するかのポイントは?


 それでは、違法な連れ去りに該当するか否かのポイントはどのようなところにあるのでしょうか?

 一般的には以下のような要素を考慮して判断されるケースが多いので、詳しく解説していきます。

1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。

 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

 

2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃にいったお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。

 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います(但し、離婚訴訟の場合には、10歳くらいを一つの目安にすることが多いです)。

 

3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が10歳以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。

 そのため、一般的には、普段お子様の面倒を見てきた奥様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」とは評価されないケースが多いのが実情です。他方、普段お子様の面倒をほとんど見てこなかった旦那様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」のおそれがあると見られるケースが相対的に多いように感じます。

 

4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 奥様がお子様と無断別居したケース、要するに事前に旦那様に何も別居等の相談をせずに別居を開始したケースでは、旦那様側では「違法な連れ去りだ」と声高に主張なさる方も多いのですが、無断別居と言うだけでは、直ちに違法な連れ去りとは言えないことが多いです。
 「違法な連れ去り」かどうかは、前述のポイント1からポイント3までを総合考慮して決定することが多いです。

 

5)実態としては?
 ただ、結論から申し上げますと、奥様がこれまで主にお子様の育児に携わってきており、事情があってお子様と別居を開始したという場合には、その方法がよほどお子様の意思に反するといった事情がない限り、「違法な連れ去り」と認定される可能性は低いと思います。
 奥様によっては、しっかりと旦那に伝えてから別居すべきだったとかお悩みになる方もいらっしゃいますが、あまりこの部分で神経質になり過ぎない方が良いと思います。

 

 

4.どんなに慎重に進めようとしても、「連れ去り」と主張してくる夫は、そのように主張してくる


 前述の通り、可能なのであれば、モラハラ夫にも事前にお子様との別居についても相談しておくのが望ましいと言えます。
 ただ、このように相談し、モラハラ夫の同意を得た場合であっても、「連れ去り」と主張してくる人は結局「連れ去り」と主張してきます。例えば「一時帰省することは認めたが、別居までは認めてない」とか「妻が離婚を考えているとは全く考えなかった。少し頭を冷やすために別居したのだと思っていたから、これでは騙し討ちだ」などと言ってくる例です。
 そのため、「言ってくる人は結局言ってくるんだ」という発想もある程度は必要かもしれません。

 

 

5.結局しっかりとした事情があって、子供の意思も確認しているなら、慎重に夫の意見を確認するメリットってどこにあるの?


 前述の通り、やむを得ない事情があり、主に子育てを担ってきたあなたがお子様の意思を確認した上で別居するのであれば、それが違法な連れ去りと判断されるケースはほとんどないと思います。
 このような説明を致しますと、「それなら、わざわざリスクを冒して夫に事前に話をする意味・メリットはあるの?」と感じるかもしれません。
 弁護士として一番のメリットと感じますのは、モラハラ夫からの監護者指定審判等の手続を起こされるリスクを下げるという点だと思います。

 子の監護者指定の手続は別のブログで解説いたしますが、この手続きの申し立てを受けますと、かなりの書面や資料の準備と、家庭訪問等に備えた準備をしなければならず、育児をしながら準備していくことはかなりの負担になります。

 

 

6.まとめ


・旦那様の了解を経ずに別居したからと言って直ちに連れ去りになるわけではない。
・違法な連れ去りに該当するかは以下のような要素で判断することが多い
① 連れ去りの態様
② お子様の意思
③ それまでの監護状況
・別居前に事前に旦那側に話をしておくことが望ましいが、状況による。
・どんなに慎重に進めても「連れ去り」と主張してくる夫は結局その主張をしてくる
・「連れ去り」といった形で問題が複雑化すると、夫側が監護者指定審判の申立てをしてくるリスクが高まる。

 

 

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モラハラ夫との別居準備(5)―【持ち物リスト】別居の時に何を持って出れば良いか?

2022.05.09更新

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1.別居時の持ち物を点検する理由


 モラハラ夫側が離婚に同意してくれなくとも、夫婦間の冷却期間として別居については同意しているという場合には、別居時の持ち物についてあまり神経を使う必要がないかもしれません(後日取りに行くことが比較的容易なので)。

 他方で、モラハラ夫側に事前に話をせずに別居する場合には、予め必要なものを持ち出しておいた方が無難と言えます。

 私が担当した事件では、別居後直ぐに旦那様が奥様の持ち物を全て勝手に処分してしまったといったケースや、別居後ほどなくして旦那様が自宅の鍵を交換してしまって自由に入れなくなってしまったケースなどもあります。

 このようなことも想定されますので、別居時の持ち物についてはできる限り漏れがないように注意する必要があります。
 他方で、余りあからさまに準備をしてしまいますと、折角夫に事前に別居話をせずに準備していたのに、別居を夫に察知されて、色々と追及されたり、妨害されるリスクもありますので、この点にも注意が必要です。

 以下では、持ち物リスト的な観点も含めて詳しく解説していきます。

 

2.別居時の持ち物        


 別居の際には、以下を参考に、詳しく荷物の整理をしてみると良いと思います。

(1)貴重品や普段の生活に必要なもの
・今後の生活にあてる当座資金

・あなた名義の預貯金通帳 ※繰越済みのものもあった方がベターです。

・お子様名義の預貯金通帳

・キャッシュカード、クレジットカードその他のカード類

・あなた名義の保険証券(生命保険、学資保険等)

・銀行届出印

・あなたの実印、印鑑登録カード

・運転免許証、パスポート

・健康保険証

・年金手帳、母子手帳

・(余裕がある様ならば)あなたの高価品(宝飾品や骨董品)や婚姻前の記念品

・常備薬・処方薬

・普段利用している手帳

・お子様の学校生活で利用する教材やノート等

・お子様の記念写真や、写真・画像のデジタルデータ

・ある程度の衣類
※どうしても処分されたくないもの等は別居時に持ち出したほうが良いですが、難しい場合には、その物の写真を撮っておく場合もあります(そうすると、後でモラハラ夫から勝手に処分された場合でも、処分されたことの証明になるため)

(2)モラハラの証拠となるような資料
・ボイスレコーダー(夫のモラハラ発言についてボイスレコーダーで録音を取ったことがあるようなケース)

・以前使用していた携帯電話及び充電器(以前の携帯電話にデータを保存していた場合)

・自宅PCに保管していたデータ類

・写真(モラハラ夫が物を投げて壁や家電を破損した場合に、破損部位を撮影した写真や、モラハラ夫からの暴力であなたが怪我をした時の怪我の写真等)

・子育て支援センターや警察からの開示資料(保存期間が経過してしまうと今後開示申請をしても入手できないこともあるため、既にお持ちであれば持って出た方が無難)

・あなたがつけていた日記等

(3)財産に関する資料
・直近の源泉徴収票

・直近3か月分の給料明細書

・夫の収入が分かる資料のコピー等がこちらの手元にあるようなら、その資料

・夫の資産のありかが分かる資料コピー等がこちらの手元にあるようなら、その資料

・その他財産に関する資料のコピー(不動産権利証のコピー等)

 上記は一例ですので、事件によっては、ほかにも持ち運んでおいた方がよい荷物があるケースもあります。また、今回の解説では、大がかりなものを持ち運ぶ余裕がないということを前提にしていますので、家具や家電類は含んでおりません。

 

 

3.荷物を持ち出すタイミング


 私がご相談を受け取りますと、「新型コロナウイルスの影響で、モラハラ夫が在宅勤務をしている日が多くて別居日がなかなか決めずらい」とか「モラハラ夫が在宅勤務をしているので、荷物の整理や、事前に荷物を送付することがやりづらい」というご相談を受けることも多いです。
 そのような場合でも、夫が出張に行っているタイミングがあるとか、夏期休暇や冬期休暇中、夫は一人で実家に帰るということで、そのようなタイミングで別居をスタートされる方も多いようです。

 また、大掛かりな引っ越し業者に頼むことが難しいという場合には、事前に何回か小分けにして段ボールを一つ一つコンビニ等から宅急便で送るとか、実家が近所なので、小分けした段ボールを何回かに分けて実家に一時保管しておくという進め方をする方もいます。

 

 

4.まとめ


・別居後夫が勝手に処分等してしまうリスクもあるので、別居の際には極力漏れなく荷物を搬出したほうが良い。
・搬出すべき荷物のカテゴリーとしては以下を意識して整理するとよい。
①貴重品や生活必需品等
②モラハラの証拠となるような資料等
③財産に関する資料等
・夫が在宅勤務をしている場合には、皆様工夫しながら荷物を整理しているようである

 

 

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モラハラ夫との別居準備(4)―別れ話をした時のモラハラ夫の反応は?

2022.05.02更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.別れ話をした時のモラハラ夫の反応は?


 あなたの方からモラハラ夫に別れ話をした時、どのような反応をするのか、ある程度想定して準備しておけると、あなた自身混乱することも少なくなるでしょうし、今後の離婚に向けての対策につながるケースもあります。
 そのため、以下では、私が直接担当した事件で、モラハラ夫がどのような反応を示すのか、夫の反応を踏まえて、どのような伝え方が良いのかといったことを詳しく解説していきたいと思います。

 

 

2.【ケース1】モラハラ夫が全く真剣に受け取ってくれない


 私が事件を担当していて、モラハラ夫の反応として一番多いと思われるのが、真剣に受け取らないという反応です。
 特に、あなたが専業主婦であったり、パート勤務で収入が少ないような場合には、「離婚しても自分の収入だけで生活できるはずがない」などと考えるモラハラ夫が多いようです。
 また、これは別れ話のタイミングにもよるのですが、夫婦喧嘩の際などに、別れる旨を話した場合には、モラハラ夫は、こちらが一時的な感情で離婚や別居を口にしたと誤解しているケースも多いです。
 このようにモラハラ夫が真剣に受け取らないという場合には、真剣に受け取るような伝え方をしていくのが良いと思います。例えば、お互いの両親を交えた大家族会議のような形式をとるとか、具体的な別居開始日を決定してしまって話をするとか、もしくは、別居開始後に改めて話をするといった方法が考えられます。

 

 

3.【ケース2】モラハラ夫が急に神妙になる・謝ってくる


 モラハラ夫は、家庭内ではモラハラ発言等ばっかりであっても、家庭の外では、まるで別人のように社交的にふるまうというような人物も多いです。そのようなモラハラ夫の共通点としては、「自分がどのように行動すると自分に有利になるのか」と言ったことを計算できるということです。
 そのため、あなたが真剣に別居や離婚のことを伝えると、一旦はあなたを落ち着かせたほうが良いと考え、モラハラ夫は神妙になったり、急に謝ってくるのです。

 このような場合によく質問を受けるのが「今は神妙にしているけれども、演技なので長続きしませんよね?」といったご質問です。
 私は実際にあなたの夫に直接会ったことも直接話したこともないため確証をもってお話しできないのですが、「これまでのモラハラ行為の重症度に応じて推測するしかありません」とお答えすることが多いです。これまでのモラハラの重症度が重い場合には、残念ながら、今は神妙にしていても長続きしなかったり、モラハラ行為が再燃する確率が高いと言えますし、逆に、これまでのモラハラの重症度がそこまで重くない場合には、モラハラ行為が再燃する確率は高くはないかもしれません。

 なお、モラハラ夫がこれまで一度も謝ったことがなかったような場合には、今回初めてモラハラ夫が謝ってきたことであなたも嬉しくなってしまい、安心してしまうということもありますが、残念ながらそれが演技の可能性もありますので、今後も多少なりとも用心しながら生活したほうが良いと思います。

 

 

4.【ケース3】モラハラ夫が猛反発してくる


 重症のモラハラ夫でよくあるケースですが、あなたが真剣に別れ話をしたことで、猛反発してくるケースです。
 そもそも、モラハラ行為をする人間は、自分が悪いことをしていないと考えている人が多いです。「あなたが俺を怒らせるのが悪い」「怒らせる原因を作ったのはあなただ」「あなたの家事があまりに不十分なので注意しただけで、感謝されても責められる謂れがない」といった発想です。
 このようにモラハラ夫としては何も悪いことをしていないと考えていますので、突如あなたから離婚や別居を突き付けられて、信じられない思いや、もっと家族円満にできるようあなたの方が努力すべきだなどと強く反発してくるのです。

 このような場合、あなた一人でこれ以上別れ話を進展させていくことは難しいですし、あなたのモラハラ被害が拡大していくだけなので、他の親族の協力を得るなど話の持って行き方や、離婚に向けての手順等をしっかりと検討していったほうが良いと思います。

 

 

5.【ケース4】表面的に波風を立てないようにしつつ離婚準備を始める


 表面的にモラハラ夫側の動きが見えにくくなるので、一番油断がならないケースです(ただ、私が実際に担当した事件でも、このように対応するモラハラ夫はごく少数です)。

 例えば、①表面的にはこちらへの圧が大きく軽減されたが、子供への関わりが非常に積極的になったケース(最悪離婚になっても、新件を獲得すべく準備しているケース)、②表面的にはモラハラ発言等が大きく減ったが、預金をインターネットバンキングに変更したり、これまで置いてあった共用スペースから勝手に移動し始めた(最悪離婚になっても、財産分与でなるべくお金を渡したくないので、財産隠ぺいを目論んでいるケース)といったものが考えられます。
 モラハラ夫はこちらの予想以上に計画的に準備を開始している可能性もありますので、十分用心する必要があります。

 

 

6.上記のケースはあくまで代表例であること


 上記で詳しく解説したケースはこれまで私が直接担当した事件での実際の事例なのですが、あくまで代表的なものに過ぎません。
 そのため、前述のケースの枠に入らない反応を示すケースもあると思います。
 また、前述のケースは、必ずしも、どれか一つのみが当てはまるということではありません。複数が当てはまるというケースも往々にしてありますので、この点も留意が必要です。

 

 

7.まとめ


・私が担当した実際のケースにてモラハラ夫の反応としては以下のようなものがある。
 ①全く真剣に受け止めない
 ②急に神妙になる・謝罪してくる
 ③猛反発してくる
 ④表面的には波風を立てないようにしつつ離婚準備を進める
・これらはあくまで代表例なので、違うケースもあり得るし、複合的なケースもあり得る。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

モラハラ夫との別居準備(3)―別居前にモラハラ夫にどこまで話をしておいた方が良いか

2022.04.18更新

弁護士秦

 

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1.事前にモラハラ夫に相談した方が良いか?


モラハラ離婚のケースで一番悩まれるのは、離婚することや別居することを事前に相手に伝えるべきかという問題だと思います。
 何も言わずに別居してしまうと、後から何を言われるか分からないし、他方で、事前に話してしまうとその際にどのような暴言・態度を受けるか分からないと言うことで、悩まれている方が多いです。

 基本的に、モラハラの内容がDVの一歩手前といえる様な深刻な内容の場合には、事前に離婚や別居を切り出さずに別居を開始した方が良いことが多いと思います。事前に話をすると重大な被害につながりかねないため、自分の身の安全を守るためにも、事前に話をしないのです。また、度重なるモラハラで精神的に不調を来しているというような場合にも、無理に事前に話をしない方がよいと思います。

 他方で、モラハラ被害がそこまで大きくはないという場合には、事前に離婚や別居を切り出した方が良いケースの方が多いかと思います。ただ、この場合にも、相手がどのような行動に出るか予測できないという場合には、事前に別居話や離婚話をするか慎重に検討する必要があります。

 事前に何も相談せずに別居を開始してしまうと「悪意の遺棄」になってしまい、後から離婚しづらくなるのではないかと考えている方もいます。しかし、モラハラ被害防止というきちんとした理由がある場合、事前に相談せず別居したからと言って離婚にあたって不利になることはほとんどありません。
 ただ、事前に何も伝えておかないと、①こちらの真意がいつまでもモラハラ夫に伝わらない、②離婚協議を始めても、先方の反発が強くて手続が大きく遅延していってしまうというリスクもありますので、事前に話ができるようなら、極力話はしたほうが良いと思います。

 以下では、基本的な注意点について詳しく解説していきます。 

 

 

2.モラハラ夫から猛反発される危険性が高いなら、事前に話さないほうが良いかもしれない


 前述の通り、モラハラ被害がどの程度のものなのか、あなた自身の体調面を考慮して、事前に話をするかどうかは決めたほうが良いと思いますが、モラハラ夫がどのような反応を示すのかということも考慮要素にしておいたほうが良いと思います。

 

 と言いますのは、こちらから別居話をした際に、モラハラ夫が猛反発してくることが強く予測される場合には、「話をしたことで余計に別居しづらくなる」という事態に陥りかねませんので、そのような場合には、事前に話をしない方が良いかもしれません。
 モラハラ夫が猛反発し始めた場合、そんな中で別居を開始すると、「こちらが大反対している中で勝手に出ていった」と言われるリスクが高まってしまうと思います。

 

 

3.何も伝えないというのも気が引けるので嘘をつくのはどうか?


 これもよくご相談を受けるのですが、以下のようなご質問を受けることも多いです。
① 本当は別居を開始するつもりだが、夫が反発しないように「連休中子供を連れて実家に帰省する」と伝えて家を出るのはどうか?(結局は、そのまま実家から自宅に帰らない)
② 本当は離婚したいのだが、「今後家族が仲良く生活していけるよう前向きな別居をしたい」と伝えて家を出るのはどうか?

 

結論から申しますと、積極的に虚偽を述べることは混乱のもとになりますので、あまりオススメしません。
なお、上記の②のケースの場合、敢えて「前向き」と伝える必要もありませんので「あなたとの結婚生活がしんどい。今すぐ離婚したいと言えるかは少し考えたいので、少し距離を置いて考えさせてほしい」といった伝え方の方が良いかと思います。
特にモラハラ夫は、こちらの話を自分にとって都合が良いように誤解しやすい人が多いので、普段の連休中のただの帰省だとか、復縁を予定した別居というように話してしまいますと、モラハラ夫が変な期待をしてしまい、今後余計に混乱する気がします。

 

 

4.仮に伝える場合、どう伝えるか?


 モラハラ夫を目の前にすると、頭が真っ白になってしまうとか、上手く話せる自信がないという方も多いと思います。
 そのため、夫婦2人だけの話し合いではなく、あなたのご両親や親族等も間に入れて話をするというケースも相当数あります。
 また、夫婦二人きりで話すことは良いとしても、自宅内だと怖いので、喫茶店とか他の人の目があるところで話をするというケースもあります。

 

 

5.仮に伝える場合、どこまで伝えるか。


 一番シンプルなのは、一緒に生活していることが精神的につらいので一旦別居したいという伝え方かと思いますが、モラハラ夫は自分が悪いことをしてきたという自覚がない人が多いため、「どうしてそのように言われるのかが分からない」とか「思い当たるところがない」という反応を示されることもあります。
 そのため、どうして別居したいのか、どうしてモラハラ夫と一緒にいることが精神的につらいのかの理由についてもある程度説明していく必要があろうかと思います。
 詳しい内容を口頭で伝えることが難しいという場合には、手紙等の形で渡すという方法もあろうかと思います。

 

 いずれにせよ、どこまで伝えるのかは別にして、あなたの中で離婚したい理由・事情を詳しくまとめておいた方が良いと思います(あなたにとっては、つらいことを思い出す作業にはなりますが、まとめておくと、話をするときに、言いそびれてしまうというリスクを軽減できると思います)

 

 

6.伝える前の準備


 あなたの方から別れ話を切り出すと決意した場合、どのように話を持って行ったほうが良いか、どこまで話をするのかという点についてはしっかりと準備することが多いと思いますが、その前に別の準備が必要になります。
 と言いますのは、こちらが別れ話をすると、先方は、最悪離婚になっても良いように自分名義の資産を隠し始めるといったケースがあるのです。
 そのため、別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要になります。

 

 

7.まとめ


・モラハラの被害が深刻な場合には、事前に別居のことを伝えないほうが良いことが多く、逆に、深刻とまでは言えない場合には、伝えたほうが良いことの方が多い。
・モラハラ夫が猛反発しそうなら、事前に話をしないほうが良いかもしれない。
・嘘を伝えることはあまり望ましくない。
・仮に伝える場合でも、夫婦二人だけの席で伝えづらいというときには親族等の協力を得ることも多い。
・仮に伝える場合、別居したい理由の説明も必要になると考えておいた方が良い
・別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(1)ーまず何をすべきか

2022.04.04更新

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1.「何が起きているのかが飲み込めない」という方も多いのでは?


 あなたはお子様と一緒に家を出て、今後先方に対して離婚の意思を突き付けようと考えていたといったところではないかと思います。つまり、あなたとしては、あなたの方から離婚に向けて主導的に動こうと考えていた矢先に、むしろ、夫側から先に監護者指定事件を起こされたということで驚いているというのが率直な心境かと思います。

 

 

2.そもそも「監護者」って何だ?


まず、「監護者」と言われても、そのような用語を聞くのも初めてという方も多いのではないかと思います。
そのため、まずは、監護者というのがどのようなものなのかについて理解する必要があります。

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

3.まずは、弁護士探し


 夫側から送られてきた監護者指定審判申立書を読むことも大事なのですが、それよりも、急いで弁護士を探すことをオススメします。
 監護者指定審判事件は、特殊性が高い事件になりますので、ご本人様だけで乗り切ることは非常に難しいと思います。そのため、まずは弁護士を探し、事件を依頼するということに最優先で取り組む必要があります。
 もちろん、既に離婚のことで依頼している弁護士がいるとか、正式な依頼はしていないけれども相談している弁護士がいるということでしたら、その弁護士に事情を早めに伝えて下さい。

 

 

4.弁護士探しのポイント


 弁護士探しのポイントは、何よりも監護者指定審判事件という特殊な事件について「詳しい」弁護士なのかという点になります。
 率直に申しますと、離婚事件についてよく取り扱う弁護士であっても、監護者指定事件はほとんど取り扱ったことがないとか、一度も担当したことがないという弁護士もいますので、できれば、これまでにも監護者指定事件を何回か取り扱ったことがある弁護士を探したほうが良いと思います。

 ただ、私が相談を受けておりますと、沢山の弁護士に相談し過ぎて、ご本人様でも、よく分からなくなってしまっているという方をお見かけすることもあります。
 そのため、「何人かの弁護士に会ってみて決める」ということだとしても、せいぜい5,6人の弁護士に相談してみて、その中から選ぶということの方が良いかと思います。
 特に監護者指定事件は、保全事件を同時に申し立てられていることが多く、事件の進行は早いことが多いので、あまりゆっくりと弁護士選びをしていると、準備の時間が足りなくなってしまいかねません。

 

 

5.監護者指定審判申立書を読むにあたって


 前述の通り、じっくりと夫側の書面を読むよりも前に弁護士探しを優先したほうが良いと思います。
 そのため、あなたが監護者指定審判申立書にじっくり目を通すのは、弁護士にお願いした後ということでも構いません(それだけ、弁護士探しを急いだほうが良いということです)。
 なお、監護者指定審判申立書を読み込むにあたっては、申立書の内容も当然大事なのですが、どのような証拠資料が添付されているのかということの方が大事です。

 そのため、監護者指定審判申立書を読み解くにあたっては、どのような証拠が添付されているのかをしっかりと把握し、それに対して、あなたの方ではどのような反論資料を提出できるのかという簡単なイメージを持っているとベストです。
 それ以上の詳しい指示は、弁護士がアドバイスしてくれますので、弁護士のアドバイスに従って準備をすれば大丈夫です。

 

 

6.後は弁護士のアドバイスに従ってしっかりと準備をしていくこと


 あなたの方で正式に依頼する弁護士が決まりましたら、あとは、その弁護士からのアドバイスに従って、反論の主張を組み立てたり、証拠集めをするなどの準備をしていくことになります。
 監護者指定事件は、迅速に手続きが進みますので、場合によってはご実家のご両親に無理を言って育児を分担しながら、短期集中で準備に取り掛からなければならないこともあります。
 どこまでの準備が必要になるのかは、事件によって異なってきますので、詳しくは依頼した弁護士に相談して下さい。

 

 

7.まとめ


・監護者指定審判の申立てがなされた場合、まずは、「監護者」の意味を理解すること
・何よりも急いでやらなくてはならないのは、弁護士探しになる。
・弁護士選びにあたっては、監護者指定審判事件に詳しい弁護士に依頼するのがベストである
・監護者指定審判申立書を読み解くにあたっては、添付の資料の内容の方が重要なことが多い。
・監護者指定事件に対応するにあたっては「短期集中」で取り掛かる必要があることが多い。

 

 

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>夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(3)ー夫はどういうつもりでこんな手続きを取ってきたのか?

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>夫が突然監護者指定審判を申し立ててきた(6)ー子の監護者指定審判の「手続」の特徴は?

 

 

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モラハラ夫との別居準備(2)―そもそも、「別居」という選択をすべきか

2022.04.01更新

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1.「別居」と言っても大まかに二通りの「別居」がある


 「別居」と一口に言いましても、大まかには、以下の二通りがあります。
  ①離婚を決意して、もう自宅には戻らないという意味での別居
  ②まだ離婚を決意しきれておらず、冷却期間としての別居
 以下では、この二通りについて、それぞれ詳しく解説していきます。

 

 

2.離婚前提での別居


 私のところにご相談に来られる方は、既に離婚の決意を固めてご相談に来られる方も多いですが、まだ悩んでいるという方も相当数います。
 そして、「秦弁護士はモラハラに詳しいと聞いていますので、私が離婚したほうが良いか教えて下さい」とか「このような状況だと離婚したほうが良いと思いますよね?」と質問を受けることも多いです。
 ただ、離婚するかどうかはあなた自身の人生に関わるお話ですので、私が決めることはできません。
 そうはいっても、モラハラ夫と離婚したほうが良いのかどうかは、大きく以下のような検討事項がありますので、参考になさって下さい。

 

 

3.モラハラの重症度?


 離婚するかどうかはあなた自身が決める事であって、私で決められる話ではないとお話しますと、「皆さんどうなさっているんですか?」とか「私のケースって皆さんのケースと比べてどうなんでしょうかね?」といった再質問を受けることも多いです。
 そのため、私のご相談に来られた方には、おおよそのモラハラ被害の重症度をお話することもあります。ただ、初回の無料相談ですと、時間が限られているというところもありますし、正確な数値化が難しいというところもありますので、「100点満点の中での○○点です」といった点数化まではしていません。
 要するに、深刻なものだと感じたときには、私の方からも、「それなりに深刻なものだと感じます」とお伝えしますし、逆に、そこまで重くはないと感じたときには「残念ですが、当事務所にいらっしゃる方はもっと重い方の方が多い印象です」といったご回答をすることもあります。

 あくまで重症度の目安をお伝えするというイメージになります。

4.「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」というわけではない!


(1)必ずしも相関関係にはないこと
 ここまで説明をしますと、皆さん、「私の場合重症なのかしら?」ということを気になさると思います。そして、「重症だと言われたら別れなくっちゃ」と考える方も多いと思います。
 ただ、そこまで単純に割り切れる話ではありません。
 弁護士の目から見ても重症と思われるケースですと、率直に言って同居生活を続けていくことはオススメできませんので、私の場合、目の前の相談者の方には「重症と思われますので、同居を続けることはオススメしません」と率直にお伝えすることが多いです。

 

 しかし、それでも離婚まではしたくないという方も相当数いらっしゃるのも事実です。大きな要因としては以下のようなものがあると思います。
①その人の感じ方の問題
②お子様のことを考えての結論
③今後の生活の問題
以下、それぞれについて詳しくご説明します。

 

(2)その人の感じ方の問題
 より分かりやすく言いますと、許容性とか寛容性といったお話になります。
 どんなに言われようと受け流すことができたり、逆に、必要な範囲で言い返すことができるので、離婚という最終決断まではしなくてもやっていけるといったことです。
 このことは逆も然りでして、重症とまでは言えないケースでも、そのことで、気に病んでしまっているとか、心身に不調が生じているというような場合には、今後の同居継続は見直した方が良いかもしれません。

 

(3)お子様のことを考える
 片親にすると子供に不憫であるといった話です。このことは、お子様が旦那様にどのくらい懐いていて、また、旦那様の方もお子様とどのように接しているのかといった点も大きく影響すると思います。
 ただ、最近は離婚される方も増えてきていますので、片親だと子供が差別されるということは以前よりもかなり減ってきているように感じます。
 また、モラハラやDVによってあなたの心身に不調をきたしているようなケースですと、これ以上我慢はしない方が良いとアドバイスさせていただくことも多いです。

 

(4)今後の生活のこと
 いざ離婚したとしても、今後の生活に大きな支障を来すようであれば、簡単に離婚できないということもあろうかと思います。
 金銭的なお話は、弁護士としても色々とアドバイスできるところでもありますので、必要に応じてシミュレーションさせていただくこともあります。
 なお、都内で部屋を新たに借りることは経済的に厳しいということでご実家を別居先に選択する方も多くいらっしゃいます。

 これらの点を踏まえて、じっくりとモラハラ夫と離婚すべきか、離婚を目指して別居すべきかを検討してみて下さい。

 

 

5.離婚を前提としない別居


 前述のような要素を考慮して、あなた自身モラハラ夫と決別すると固く決意できれば良いですが、決めきれないということもあると思います。
 そのような場合には、無理に離婚を急ぐ必要もないと思いますので、一旦別居という選択をする人もいます。

 離婚するか決めきれていないけれども別居するという選択には以下のような意義等があります。
  ①あなた自身の体調が悪く、一旦離れて体調を回復したい。
  ②モラハラ夫のひどい行動・言動があったので、反省させるために一旦別居する。
  ③夫婦喧嘩が絶えず、自宅にいると冷静に考えをまとめられないので、冷静に考えるために別居する。
  ④自宅という場所から一旦抜け出して、これまでの生活を客観的に見つめ直すために別居する。
  ⑤モラハラ夫の本当の気持ちを確かめるために別居する。(例えば、夫婦喧嘩の時などに、モラハラ夫は「もう離婚だ」ということを口にするが、それが真意なのかを確かめるために一旦別居するといったケースです)

 なお、夫婦としての再生の道を諦めていないのでしたら、別居ではなく、モラハラ夫の両親その他の親族等にも間に入ってもらって話し合いをするとか、夫婦カウンセリングを受けるという選択をする方もいますので、そちらも検討してみて下さい。

 

 

6.まとめ


・「別居」には、大まかに離婚前提の別居と、離婚するか悩みながらの別居の二通りがある。
・「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」という相関関係では必ずしもない。
・離婚前提の別居に踏み切るかは、①夫のモラハラが許容限度内なのか、②お子様のこと、③今後の生活の経済的問題等も考慮に入れて検討する必要がある。
・離婚するか悩んでいる時点で、一旦別居するという選択もある。
・ただ、離婚するか悩んでいる場合、「別居」ではなく、親族等に間に入ってもらって話し合いをしたり、夫婦カウンセリングを受けるといった手段もある。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(14)】こちらの面会交流姿勢はどこまで考慮されるか?

2022.03.21更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、妻側の面会交流姿勢にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.面会交流姿勢は、親権紛争の際と監護権紛争の際とではもつ意味合いが異なる。


 一般的に監護者指定の判断要素と親権者の判断要素とはほとんど異ならないと解説されることが多いです。
 監護者というのは、親権という権利の中の、お子さんの身の回りの世話等を行う権利を切り出したような権利というイメージですので、両者の判断要素が似通ってくるのは当然と言えば当然です。
 しかし、実務的には、監護者指定審判等では、妻側の面会交流姿勢がかなり重視されている印象でして、裁判官から直接、面会交流を強く打診してくること等も多くあります(もちろん、裁判官からのこのような打診を拒絶したからと言って、それだけで監護者の指定が覆るということはあまりないのですが、裁判官から直接打診されると断りにくいのも事実です)。
 これに対して、親権の指定の場面では、裁判官が直接面会交流を打診してくるようなケースは稀で、実務の運用上、大きな差があるという印象です。

 

 

3.親権紛争における面会交流姿勢の持つ意味合い


 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 ただ、この7個の要素の中でも、優先順位はあり、面会交流姿勢は、優先順位としては低めになると思います。
 もちろん、面会交流姿勢以外の判断要素において夫婦の実力が伯仲するというケースはあり、そのようなケースですと、面会交流姿勢の持つ意味合いは相対的に高くなりますが、そのような特殊なケースでなければ、やはりほかの要素の持つ意味合いの方が高いです。

 

 
4.それでは、理由もなく面会交流を拒否して良いのか?


 ただ、そうだからと言って理由もなく面会交流を拒否して良いというわけではありません。
 お子様自身がお父さんである夫と会いたいと切望しているような場合にまで、これを制限することが子の福祉にかなうとは思えません。
 また、面会交流できない期間が長期化していくと、夫側も態度を硬化させていき、紛争の長期化を招きかねません。
 そのため、お子様自身、夫との面会交流を希望しており、これを拒否する合理的な理由がなければ、面会交流には応じた方が良いことの方が多いと思います。

 

 

5.まとめ


・監護者指定事件では、面会交流姿勢は事実上重視される傾向だが、親権者指定では、それほど大きく重視されることはない。
・少なくとも親権を判断する際の7個の考慮要素の中では相対的に重要性は下がる。
・そうはいっても、理由もなく面会交流を拒否することは望ましくない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(13)】夫の児童虐待をどう証明すればよいか?

2022.03.14更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、児童虐待にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.「児童虐待」の位置付けの確認


 たまに、私のところにご相談に来られる方の中には、夫の児童虐待をしっかりと証明できれば親権を確実に獲得できるので、児童虐待の証明だけに全力を注ごうと考えている方を見かけます。
 確かに、児童虐待をしっかりと証明できれば、親権の争いで大きくリードできることは間違いないのですが、親権の争いの中では、現在の監護状況と別居前の監護実績といった点も非常に重視されます。そのため、児童虐待にばかり目を奪われて、他の対策が疎かにならないよう注意する必要があります。

 

以下では、どのような証拠が児童虐待の証明として効果的なのかを解説していきます。

 

3.一番強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。

そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、親権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

 

 

4.その次に確実なのは録音データ


 

夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。
(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

5.LINEやメール


 

 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

6.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。
例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

7.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

8.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

9.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。
 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で親権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

10.まとめ


・児童虐待は親権者を決めるにあたって重要なポイントではあるが、それだけで親権者が決まるわけでもないので、他の判断要素を疎かにしてはいけない。

・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。

・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。

・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

 

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