離婚問題

【改正民法施行!!どうなる!?これからのモラハラ離婚(3)】親権の問題を後回しにして早期に離婚すべきか?

2026.03.01更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁じます)

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 今回は、このようなモラハラ夫と離婚することを考えている方を対象に、民法改正でどのように制度が変わったのかを解説していきます。

 

 

2.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

3.改正民法では親権者を決めずに離婚できるようになった


 これまでは、お子様の親権者を夫婦のどちらにするかを決めて、それを離婚届に記入しない限り、離婚届が受理されませんでした。

 しかし、改正民法の下では、親権者を決めなくても、以下の二つの条件を満たす限り、離婚届が受理される扱いになりました。

①親権者を夫婦のどちらにするのかという点について家庭裁判所の調停を起こすこと

②調停を起こしていることを証明する書類(調停係属証明書)を役所に提出すること

 

 それでは、モラハラ夫との離婚を考えた場合、親権を決めずに早めに離婚してしまった方が良いのでしょうか。以下で詳しく解説してきます。

 

 

4.親権者を決めずに早期に離婚してしまった方が良いのか?


 親権者を決めずに早期に離婚することのメリットとデメリットについては、以下のようなものが考えられます。

 

(1)メリット

①離婚という区切りができて気持ちの整理が付く

②旧姓に戻した生活をいち早く開始できる

③世間・周りの人に対して説明がしやすい

④子供達にも説明しやすい

⑤シングルマザーの公的支援を受けられる

⑥再婚に向けた活動が可能になる

⑦モラハラ夫が翻意する危険性を避けられる

 

(2)デメリット

①婚姻費用を得られなくなる

②(まだ別居を始めていない場合)別居の動きがしづらくなる

③モラハラ夫側の(費用支払い等の)モチベーションが下がりやすい

④モラハラ夫側に見返りを求められて話が複雑化する危険性がある

⑤親権についての紛争を調停にすることが必須になってしまう

⑥離婚そのものを激しく争って来られると、この手段は取れない

⑦最終決着までの期間はさほど変わらないというケースも十分考えられる

⑧年金分割で不利になる

 

以下で詳しく解説していきます。

 

 

5.【早期離婚のメリット①】気持ちの整理が付く


 私がモラハラ被害者の方からよく出るお話ですが、離婚の話がなかなか進まないことに非常にもどかしくお感じになる方は数多くいます。

 離婚の件については、モラハラ夫は、夫婦の仲は良かったとか、離婚しなければならないほど悪いことはしていないという言い分が出されることが非常に多く、離婚協議が全く進捗しないというケースも非常に多いです。

 親権の問題も絡んでくると一層交渉等に時間がかかってしまうことが多いので、民法改正で離婚だけでも先に決めることができれば「気持ちの整理が付く」とおっしゃるモラハラ被害者の方は多いと思います。

 

 

6.【早期離婚のメリット②】いち早く旧姓での生活をスタートできる


 最近は正式に離婚が成立する前でも、事情を話すと職場での旧姓使用を認めてくれることが多くなっています。

 ただ、離婚が正式に成立していませんので、あくまで「通称名」として旧姓を使うことを許可されているに過ぎず、正式なお名前として旧姓を使うことができるわけではありません。

 早期に離婚すれば、正式なお名前として旧姓に戻すことができますので、そのことは大きなメリットの一つと言えます。

 なお、お子様の氏ですが、親権について調停中という場合には、お子様の氏を今すぐにあなたの旧姓と同じにすることは難しいケースが多いのではないかと見込まれます(この点は、今後の実務の集積に委ねられていくことになるとは思いますが)。

 このようにお子様の氏を今のままにしなければならなくなると、あなたの氏とお子様の氏が分かれてしまい、母子の一体感が損なわれるという考え方もあるかもしれません。

 

 

7.【早期離婚のメリット③・④】世間やお子様への説明のしやすさ


 正式に離婚が成立していませんと隣近所などにも、「別居はしているけれども正式には離婚していない」という説明しかできませんでした。

 しかし、早期に離婚できますと、堂々と夫婦間では離婚が成立している旨を説明できるようになります。

 また、今の別居の中途半端な状況だと、お子様達への説明をしづらいとおっしゃる方も相当数います。正式に離婚すれば、お子様達にも「ママとパパは離婚したから、一緒に住んでいないんだよ」という説明しやすいとおっしゃる方も相当数います。

 

 

8.【早期離婚のメリット⑤】シングルマザーの公的支援を受けられる


 実際の公的支援の内容は、あなたがお住まいの地域によって内容・金額等が異なりますので、詳しくは役所で確認して欲しいのですが、少なくとも正式に離婚が成立していますので、シングルマザーとしていくつかの行政支援を受けられるようになると思います(まだ実務の対応が固まりきっていないため、役所によっては、親権者が正式に決まっていない段階では、シングルマザーの公的支援を出来ないと主張してくるところもあるかもしれません。そのあたりは役所の窓口で教えてくれますので、事前に正確な情報を得るようにして下さい)。

 

 

9.【早期離婚のメリット⑥】再婚活動が可能になる


 モラハラ被害を受け続けてきた方は、離婚しても「すぐに再婚活動する気になれない」という方が非常に多い印象です。

 ただ、ときにモラハラ夫との間でお子さんに恵まれたが、二人目のお子さんはモラハラ夫との間でもうけたくないという場合などでは、早めに再婚して、二人目のお子さんを授かりたいといった希望をなさる方もいます。その場合には、早めに離婚したいという方もいらっしゃいます。

 

 

10.【早期離婚のメリット⑦】モラハラ夫の翻意を避けられる


 モラハラ夫はその時々で言うことがコロコロ変わるということも多くあります。

 そのため、今モラハラ夫が離婚したがっているのでしたら、時機を逃さずに離婚した方が良いと感じるケースもあるかもしれません。

 ただ、このようにモラハラ夫自身があなたとの婚姻関係に強い未練がない場合、仮に今後「やっぱり離婚したくない」とモラハラ夫が言い始めたとしても、「それならこちらは離婚裁判を起こすだけです」と伝えれば、裁判はしたくないということで再び離婚に応じると言ってくる可能性はあります(そのため、今離婚に応じるメリットはあまり大きくないかもしれません)。

 

 

11.【早期離婚のデメリット①】婚姻費用を得られなくなる


 仮にあなたがモラハラ夫と別居していても、正式に離婚する前までは婚姻費用を請求することが可能です。

 よく婚姻費用と養育費を混同なさっている方もいますが、婚姻費用はあなたとお子様達の生活費をモラハラ夫に要求することで、逆に、養育費は、お子様達の生活費だけを要求することです。このようにあなた自身の生活費を含むかどうかで差があります。

 離婚してしまいますと、法律上、夫婦は他人同士ということになりますので、以後は、お子様達の生活費のみ(養育費)のみしか請求できなくなってしまいます。そして、婚姻費用の金額は養育費の金額よりも高額ですから、請求できる月々の金額が下がるということは、それなりの経済的ダメージと言えます。

 

 

12.【早期離婚のデメリット②】別居の動きがしにくい


 モラハラ夫との間で親権者について争いになっている状態ですと、あなたが別居しようとしても、モラハラ夫は「お前一人で出ていくのは構わないが、子供は置いていけ」などと言ってくることも多く、別居して新しい生活をスタートさせることが難しくなるという場面も想定されます。

 離婚が成立しても、その後の親権について調停中ということになりますと、調停手続きが進んでいる最中にモラハラ夫の強い反対を押し切ってお子さんと別居してしまうと、非難を受けるリスクが否定できないからです。

 

 

13.【早期離婚のデメリット③】モラハラ夫側のモチベーションが下がりやすい


 前述の婚姻費用のお話と多少関連するのですが、離婚に反対するモラハラ夫は、一定額の婚姻費用は支払ってくることもあります(残念ながら、断固支払いを拒否してくるモラハラ夫もいますが)。これは、婚姻費用を払わないと離婚で自分が不利になるという心理が働いていることが多いです(モラハラ夫が「離婚したくない」という場合、生活費を渡さずに妻側を苦しめることは矛盾する行動になるからです)

 しかし、早期に離婚してしまいますと、モラハラ夫からすると、法律上夫婦は他人同士なので、「他人にやる金はない」と言ってくるモラハラ夫はかなり増えそうです(要するに月々の生活費を出し渋るということです)。

 

 

14.【早期離婚のデメリット④】見返りを求められて話が複雑化するリスクがある


 モラハラ夫が一旦離婚に応じたものの、後から「本当は離婚したくなかった」とか「妻の言う通りに離婚してやったんだから、親権を争う」などと見返りのような話が出てくるリスクがあります。

 特にモラハラ夫は自分に都合が悪い展開になると、自分が優位に立てるような話を蒸し返してくる人間が多いので、話が複雑化するリスクがあります。

 

 

15.【早期離婚のデメリット⑤】親権の調停が避けられない


 前述の通り、親権を決めずに離婚届を提出する場合には、親権についての調停を起こしていることが絶対条件になります。その意味で、親権についても協議(裁判所の外での話し合い)で決めるということができません。

 たまに、夫婦の紛争や親子の紛争を調停に持ち込みたくないという希望を述べられる方もいますが、その場合には、離婚も親権もセットで協議を行うという手段しかとり得ないことになります。

 

 

16.【早期離婚のデメリット⑥】離婚について激しい争いがある場合


 モラハラ夫は同居しているときには「もう別居だ」とか「こんなことなら離婚だ」ということを口にするのですが、あなたの方から離婚を切り出すと、「別れたくない」と言ってくることが非常に多いです。

 前述の通り、親権について決めずに離婚するという制度は、話し合いで離婚することを前提としていますので、離婚するかどうかについて夫婦の意見対立が激しい場合には、この制度を利用することができません。

 

 

17.【早期離婚のデメリット⑦】最終解決までの期間はそれほど変わらないということも想定される


 離婚について先行して決めることができれば、そのことで他の離婚条件についての話し合い等に弾みがつきそうな印象はあります。

 ただ、モラハラ夫は自身の考えが絶対に正しいという人物が多いので、親権や面会交流・養育費、財産分与等、離婚に付随して決めなければならない項目一つ一つで激しい争いに発展するリスクがかなりあります。

 そのため、離婚は早く決まったけれども、「全て解決するまでにはかなり期間がかかってしまった」というケースもかなり多くなる気がします。

 

 

18.【早期離婚のデメリット⑧】年金分割で不利になる


 年金分割というのは、夫婦それぞれが婚姻中に支払ってきた年金保険料の内、厚生年金部分等の保険料支払い記録を互いに折半するという制度です。

 早期に離婚しますと当然折半する対象期間が短くなりますので、全てセットで離婚する場合と比較して不利になります。

 

 

19.結局どうするのが良いか?


 早期に離婚してしまいますと、婚姻費用を受け取れなくなるという点が、経済的に大きなデメリットになると思います。特に同居中専業主婦だったとか、パート勤務であまり収入がないという方にとっては、養育費分しか生活費がもらえなくなってしまうデメリットは大きいと思います。

 また、先に離婚が成立したとしても、親権が争われるケースですと、モラハラ夫は「お前一人で出ていくのは構わないが、子供は置いていけ」などと言ってくることも多く、別居して新しい生活をスタートさせることが難しいという場面も想定されます。

 そのため、制度としては親権を決めずに離婚するというシステムはあるのですが、実際には、これまでと同様「セットで離婚する」という進め方を取ることが多いのではないかと思います。

 

 

20.まとめ


・民法の改正で、親権について調停を起こすことで、離婚届だけを先行して提出するということが可能になった。

・この制度を利用するメリットとしては以下のようなものがある。

①離婚という区切りができて気持ちの整理が付く

②旧姓に戻した生活をいち早く開始できる

③世間に対して説明がしやすい

④子供達にも説明しやすい

⑤シングルマザーの公的支援を受けられる

⑥再婚に向けた活動が可能になる

⑦モラハラ夫が翻意するリスクを避けられる

・逆にデメリットとしては以下のようなものがある。

  • 婚姻費用を得られなくなる
  • 別居をスタートさせづらい
  • モラハラ夫側の(費用支払い等の)モチベーションが下がりやすい
  • モラハラ夫が見返りを求められて話が複雑化するリスクがある
  • 親権についての紛争を調停にすることが必須になってしまう
  • 離婚そのものを激しく争って来られるとこの手段は取れない
  • 最終決着までの期間はさほど変わらないというケースも十分考えられる
  • 年金分割で不利になる

・最終的には今まで通りセットで離婚するという進め方を取ることが多くなると思う。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!どうなる!?これからのモラハラ離婚(2)】結局「離婚後も共同親権」ってどういう意味なのか?

2026.03.01更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 今回は、このようなモラハラ夫と離婚することを考えている方を対象に、民法改正でどのように制度が変わったのかを解説していきます。

 

 

2.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

3.一緒に住んでいるときの「共同親権」はイメージしやすいけれども…


 夫婦仲が良く一緒に住んでいるときの「共同親権」というのは、夫婦がともにお子さんに対して権利を持つとともに責任を負うという意味で、イメージがつきやすいと思います。

 しかし、離婚してしまった後も共同親権と言われても、そのイメージがつきにくいという方も多いのではないでしょうか。

 そのような方に向けて、離婚した後も「共同親権」になるというのが、どういう意味合いなのかについて解説していきます。

 

 

4.改正法でも「共同親権が原則」というわけではない。


 離婚後の共同親権を認める民法改正の報道などを見て、離婚後も「原則的に共同親権になってしまう」と誤解なさっている方もいますが、そうではありません。

 今回の民法改正では、以前のように離婚後単独親権だけしか選択できなかったものを、「共同親権も選択可能にする」というものでして、離婚した後「単独親権」と「共同親権」どちらにするかはご夫婦の選択に委ねられています(どちらが原則という関係性はありません)。モラハラ夫は自分に有利になるように「離婚した後も共同親権にしなければならなくなった」とか「基本は共同親権だ」などと言い放ってくる可能性がありますが、そのようなことはありません。この点は十分ご留意下さい。

 

 

5.共同親権を選ぶと夫婦一緒に生活しないといけないのか?


 「共同親権」というと夫婦で一緒にお子さんのことを決めなくてはならず、離婚後も夫婦で共同生活を営まなければいけないようなイメージを持ってしまいそうですが、そうではありません。

離婚する場合、通常、ご夫婦の関係性が悪く、夫婦としてやっていくことが難しいから離婚するのでしょうから、その後も同居しなければならないというのは大きな矛盾となります。改正法も、離婚後はご夫婦が別々に暮らすことを前提に、共同親権を位置付けています。

 なお、離婚した後も「共同親権」を選ぶと、お子さんをご夫婦の間で行ったり来たりさせないといけないと誤解なさっている方もいますが(例えば、月曜から木曜は妻側、金曜から日曜は夫側でお子さんの面倒を見るといった形)、それも間違いです。詳しくは後述しますが、「共同親権」は、夫婦が同等にお子さんに関わるということを意味するわけでもありません。

 この点も、モラハラ夫は、「共同親権」の間違った解釈で、あなたに行動を求めてくる危険性がありますが、間違っているものは間違っているとしっかりと指摘することが大事です。

 

 

6.結局、共同親権って何なんだ?


(1)「離婚後共同親権」の法律的な意味合い

前述の通り、仮に、離婚後共同親権を選択したとしても、①夫婦が一緒に住まないといけないというわけではありませんし、②お子さんに半々で関わる制度というわけでもありません。

 そもそも、離婚する際には、ご夫婦は別々に暮らすことを前提に、お子さんが夫婦のどちらと一緒に住むのかを決めると思います。そして、その様に決めると、お子さんの日常的なことは一緒に住んでいる親が決めるということになると思いますので「共同親権」というのは、以下のような「お子さんにとって大事な事項を夫婦一緒に決める」という意味合いになります。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

 

(2)緊急時は別扱い

 前述のように、お子さんにとって重要な事項は、共同親権の場合には、夫婦で話し合って決める必要があるのですが、緊急の場合には、別扱いになります。

 例えば、DVや虐待から避難する場合には、あなたの一存で避難及び避難先をどこにするかということを決めて良いということになります。また、お子さんが大きな怪我をしてすぐに医療処置が必要な場合にも、あなたの方で医療処置を受けさせて構いません。

 

 

7.モラハラ夫との「共同親権」を選択することはかなり慎重に検討した方が良い


 詳しくは別のブログで解説しますが、改正民法が施行された後、モラハラ夫は同居中ほとんどお子さんの世話などしてこなかったにもかかわらず、いざ離婚になると「共同親権が良い」と主張してくることが予想されます。

 しかし、一度モラハラ夫との共同親権になってしまいますと、モラハラ夫は様々な場面であなたの生活に干渉してくるリスクがありますので、極力あなたの単独親権にする方が望ましいと思います。

 

 

8.まとめ


・改正法は、離婚した後も共同親権・単独親権どちらも選べるという制度であって、共同親権が原則系ではない。

・離婚した後共同親権だからと言って夫婦一緒に住まなければいけないわけではない。

・同様に離婚した後共同親権にしたとしても、お子さんを夫婦の家に半々行き来させないといけないというわけでもない。

・結局、離婚後共同親権というのは、以下のようなお子さんにとって重要な事項を夫婦一緒に話し合って決めるという制度である。

  • お子さんの転居(引っ越し先の決定)
  • 進路に影響する進学先の決定
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(預金口座の開設等)
  • 15歳未満のお子さんの氏の変更
  • 15歳未満のお子さんの養子縁組の代諾

・前述のように夫婦一緒に決めなければならない事項でも、緊急時には例外扱いが認められている。

・モラハラ夫と離婚する場合には、あなたの単独親権を選択した方が望ましいことが多いと思われる。

 

 

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<都営地下鉄>
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投稿者: 弁護士秦真太郎

【改正民法施行!!どうなる!?これからのモラハラ離婚(1)】改正民法で離婚のハードルは何か変わったのか?

2026.03.01更新

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神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

2.離婚のハードルには何か影響があるのか?


 モラハラ離婚したいと希望するあなたにとっては、改正民法施行によって、離婚のハードルが下がるのかどうかが非常に気になるところだと思います。

 結論から言いますと、今回の改正で、離婚理由についての法律の定めには何も変更が加えられませんでした。

 そのため、離婚のハードルについては、「今までと変化がない」というのが結論になります(親権や面会交流といったお子様に関わる話題については、大きな変化があったのですが、「離婚しやすさ」に限って言うと、変化がないという意味です)。

 

 このように改正民法施行でモラハラ離婚のハードルには変わりがないのですが、折角ですので、モラハラが離婚理由になるのかどうかについて、(以前から考えに変わりはないのですが)改めて解説いたします。

 

 

3.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。

 

 これだけではなかなかピンと来ないと思いますので、ある程度類型化して整理しますと、以下のようにまとめられると思います。

 

①直接こちらに暴言を吐く(「お前なんかと結婚したのは失敗だった」、「バカが移るから近付かないでくれ」等々)

②こちらに危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)

③家事や育児の些細な問題を執拗に責め立てる(「棚に埃が付いてたけど、ちゃんと掃除しているのか?」「いつも言っているけどお前の料理は味が濃すぎて食べれない」「小学校の教科書を忘れて行かせるなんて母親失格だ」等々)

④こちらの容姿を侮辱する(「まるでオランウータンみたいな顔してるよな」「足が太くてドラム缶かと思った」等々)

⑤金銭感覚が自分に甘く、こちらに対しては厳しい(しょっちゅう飲み会に出かけているのに、こちらがランチに行くというと不機嫌な態度を取る等々)

⑥こちらの意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(「お前みたいな考え方する奴今まで見たことがない」「お前の常識、世間の非常識」といった発言等々)

⑦自分の労働や給料を誇示してくる(「誰の給料で飯が食えてると思っているんだ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

⑧機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑨唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、いつも旦那の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑩相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れてくれない(トイレのドアをいつも開けっ放しで出てくるため、注意すると「その方が喚起になって良いんだ」と強弁する等)

⑪友人や親戚の前でこちらの悪口を言う。

⑫子供の前でこちらの悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

⑬一定期間意図的にこちらを無視してくる。

⑭こちらの行動を制限してくる(門限を23時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、生活が苦しいのにパート勤務に出ることを許してくれない、毎日の食事の献立を事細かに指定してくる等々)

⑮気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑯家庭の重要事項の決定(住居の購入、引越先の選定、自動車等の大きな買い物、子どもの進学や習い事等)をこちらに任せつつ、後から文句を言う

⑰性交渉の際の要望や要求が多い、性欲が旺盛であり対応に苦慮する。

⑱身内や友人を侮辱する(「お前の親は貧乏人だから価値観が合わない」「お前の友人は知識レベル低いよな」等々)

⑲異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「俺はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

 

夫婦で生活していると一度や二度は、夫側からこのような発言や行動が出たことがあるかもしれませんが、これらのことが「継続している」ということが重要な要素になります。

 

 

4.モラハラは離婚理由になるか?


 「離婚理由」という場合、大きく分けて二つの意味があります。一つめは、相手に離婚を切り出す理由になるかという意味、二つめは、裁判で勝てるだけの理由になるかという意味です。

 

 まず、一つめの離婚理由という意味で言いますと、モラハラは立派な離婚理由になります。ただし、実際に相手に離婚を切り出すとなると、具体的にどのようなモラハラ被害を受けてきたのか、という点をしっかりと整理して旦那側に話す必要が出てくると思います。また、親権に離婚したいと考えている場合には、こちらが本気だということが相手にも伝わるように話をする必要があります。

 

 次に、「裁判で勝訴できるだけの理由」という意味での離婚理由になるかというと再度詳しく検討していく必要があります。

 と言いますのは、裁判で認められる離婚理由は法律で厳しく限定されているため、モラハラの内容や程度によっては、「裁判で勝てるだけの理由とは言えない」と言われてしまうリスクがあるからです。離婚裁判ですと、裁判所が強制的に離婚を命じることができるのですが、本来離婚するかどうかは当人同士の意思に委ねるべき話ですから、「裁判で勝てるだけの離婚理由」というのは法律で制限されているのです。

 

 

5.別に裁判をしたいわけではないんだけれど…


 モラハラ夫の特徴としては、こちらから離婚を突きつけると、これに反発してくるケースが非常に多いです。モラハラ夫はあなたのことを下に見ているケースが多いため、「生意気だ」といった感情を持つのです。または、全く逆に、こちらが別居を開始した時などは、旦那側が謝ってくるということもあります。自分に不利にならないようにという心理が働いて、体裁を整えてくるのです。

 実際上、私の経験ではモラハラ離婚のケースで裁判にまで行かずに調停または協議で解決することの方が多いです。

 

 しかし、少数ですが相手の反発が大きく裁判を避けられないと言うこともありますので、事前に裁判になることを考えながら準備を進めていく必要があるのです。「備えあれば憂いなし」ということです。

 

 

6.モラハラが「裁判で勝てるだけの離婚理由」と言えるために


 このように離婚裁判もある程度意識して準備を進めていくという場合、まず最も重要になりますのは裁判で戦えるだけの証拠があるのかどうかということになります。夫が自身のモラハラ発言やモラハラ行動をすんなり認めてくれればいいのですが、実際には「そんなことは言っていない」とか「そんなことはしていない」といった反論が返ってくることが多いです。

 夫婦の言い分が食い違っている場合、裁判官は何が真実か分からなくなってしまうので、証拠が必要になるのです。具体的にどのようなものが証拠になるのか概要を解説します。

 

 まず第1に、モラハラの言動について録音データがあると非常に心強いです。録音だと夫のモラハラ発言を正確に記録できますし、当時の臨場感をそのまま再生できるからです。

 そして、このような録音データは数が多ければ多いほどよいです。裁判でその全てを証拠にするわけではありませんが、数が多ければ、その分攻め手が増えるとイメージして下さい。

 

 第2に、相手がラインやメールでモラハラ発言に及んだという場合には、そのラインやメールも証拠になります。

 

 第3に、あなたがモラハラ被害を受けている最中に身内や友人に相談していたという場合、身内や友人に対して送ったラインやメールも証拠になり得ます。なお、その内容はある程度詳しい被害内容が書かれていないと裁判の証拠としては不十分になる可能性がありますのと、表現に誇張がないかという点に注意が必要になります。

 

 第4に、あなたがブログその他のSNSに旦那のモラハラ発言等をアップしてきたという場合、その内容によっては証拠になり得ます。

 このような証拠の整理は最初に行う必要があります。

 私が担当した事件について申し上げますと、暴言については全くといって良いほど証拠がないというケースもあります。ただ、その場合でも、離婚に向けての対処方法はありますので、諦めずに、ご相談にいらして下さい。

 

 

7.モラハラ内容の整理


 上記のようなモラハラの証拠の有無の整理がつきましたら、次に、あなたが受けたモラハラ被害の内容を整理していく必要があります。

モラハラの証拠がある場合でも、あなたが受けた被害の全てに関して証拠があるというケースは稀なので、あなたの体験そのものを書き出していくのです。

 

 私のところにご相談に来られる方のうち90%以上の方は、「夫のモラハラがひどいんです。だから離婚したいんです」とおっしゃるのですが、上記の通り「モラハラ」には色々な態様がありますので、あなたのケースでは具体的にどのようなモラハラがあったのかをきちんと整理しておく必要があります。

 

 まずは、前述したモラハラの項目にいくつ該当するのかを検討してみて下さい。

 

 次に、そのモラハラの具体的な内容を思い出してみて下さい。要するにモラハラ夫の詳しいセリフや行動を思い出す作業になります。

 

 最後に、そのモラハラがどの程度の頻度あったのか、いつ頃まであったのかを検討して下さい。

 

 あなたにとって思い出したくない事情を思い出す作業になりますので、非常に苦しく気の重い作業になると思いますが、離婚に向けて必要な作業だと考えて頑張ってみて下さい。1人で悶々と考えていると気が滅入ると言うことも多いと思いますので、身内の方と話ながら思い出していくとか、弁護士との打合せで整理するという方法もありますので検討してみて下さい。

 

 

8.モラハラは「白か黒か」ではない


 私が相談に乗っておりますと、「私のケースはモラハラですか?」という質問を受けることが非常に多いです。ご質問の趣旨としては、白か黒(完全悪)かをしっかりと見極めて欲しいというものです。
 しかし、残念なことに日本の法律はモラハラについての法整備が出来ておらず、法律で「モラハラ」とか「モラルハラスメント」という用語は出てきません。
 そのため、法律の線引きがない状態のため、「黒(完全悪)」とは言いづらいというのが実情です。

 もちろん、法律の線引きがなければ何でも許されるというわけではありませんし、モラハラの深刻さについて、私の方からは「モラハラは基本的に白か黒かではなく、グレーという位置づけになります」「モラハラの深刻さに応じてグレーの中にもグラデーションがあって、深刻なモラハラは黒に近付いていきますし、軽度のモラハラは白に近付いていきます」とご説明することが多いのです。
 このようなことも「モラハラ」の理解の参考にして頂ければと思います。

 

 

9.まとめ


・改正民法施行で、モラハラ離婚の離婚しやすさには何も変化はない。

・モラハラの詳しい意味については理解不足の方も多いので、まずはモラハラのきちんとした意味を理解する。

・モラハラは離婚を切り出すに当たっては十分な理由になる。

・離婚の話がもめそうだという場合、モラハラの証拠をきちんと準備しておいた方が良い。

・モラハラの証拠と一緒に、あなたのモラハラ体験も整理しておく必要がある。

 

 

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