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【改正民法施行!!どうなる!?これからのモラハラ離婚(3)】親権の問題を後回しにして早期に離婚すべきか?

2026.03.01更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。これまで20年以上モラハラ離婚に携わってきた経験に基づき、本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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(この記事は、弁護士秦のオリジナルの記事です。無断転載・無断複製を禁じます)

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 今回は、このようなモラハラ夫と離婚することを考えている方を対象に、民法改正でどのように制度が変わったのかを解説していきます。

 

 

2.改正民法施行


 離婚後共同親権等を主とした内容の民法改正は、法律そのものは令和6年5月17日に成立していたのですが、その施行(その法律が効力を発生すること)は令和8年とされていました。この改正は、離婚後単独親権のみとしていた民法の内容を大きく変更するものでしたので、その法律の内容を世間に広く周知し、また、実務的な対応を整備する観点から、法律の施行まで一定の期間を置くことになったのです。

 最終的に民法改正の施行日は令和8年4月1日に設定され、この日から効力が発生することになりました。

 

 

3.改正民法では親権者を決めずに離婚できるようになった


 これまでは、お子様の親権者を夫婦のどちらにするかを決めて、それを離婚届に記入しない限り、離婚届が受理されませんでした。

 しかし、改正民法の下では、親権者を決めなくても、以下の二つの条件を満たす限り、離婚届が受理される扱いになりました。

①親権者を夫婦のどちらにするのかという点について家庭裁判所の調停を起こすこと

②調停を起こしていることを証明する書類(調停係属証明書)を役所に提出すること

 

 それでは、モラハラ夫との離婚を考えた場合、親権を決めずに早めに離婚してしまった方が良いのでしょうか。以下で詳しく解説してきます。

 

 

4.親権者を決めずに早期に離婚してしまった方が良いのか?


 親権者を決めずに早期に離婚することのメリットとデメリットについては、以下のようなものが考えられます。

 

(1)メリット

①離婚という区切りができて気持ちの整理が付く

②旧姓に戻した生活をいち早く開始できる

③世間・周りの人に対して説明がしやすい

④子供達にも説明しやすい

⑤シングルマザーの公的支援を受けられる

⑥再婚に向けた活動が可能になる

⑦モラハラ夫が翻意する危険性を避けられる

 

(2)デメリット

①婚姻費用を得られなくなる

②(まだ別居を始めていない場合)別居の動きがしづらくなる

③モラハラ夫側の(費用支払い等の)モチベーションが下がりやすい

④モラハラ夫側に見返りを求められて話が複雑化する危険性がある

⑤親権についての紛争を調停にすることが必須になってしまう

⑥離婚そのものを激しく争って来られると、この手段は取れない

⑦最終決着までの期間はさほど変わらないというケースも十分考えられる

⑧年金分割で不利になる

 

以下で詳しく解説していきます。

 

 

5.【早期離婚のメリット①】気持ちの整理が付く


 私がモラハラ被害者の方からよく出るお話ですが、離婚の話がなかなか進まないことに非常にもどかしくお感じになる方は数多くいます。

 離婚の件については、モラハラ夫は、夫婦の仲は良かったとか、離婚しなければならないほど悪いことはしていないという言い分が出されることが非常に多く、離婚協議が全く進捗しないというケースも非常に多いです。

 親権の問題も絡んでくると一層交渉等に時間がかかってしまうことが多いので、民法改正で離婚だけでも先に決めることができれば「気持ちの整理が付く」とおっしゃるモラハラ被害者の方は多いと思います。

 

 

6.【早期離婚のメリット②】いち早く旧姓での生活をスタートできる


 最近は正式に離婚が成立する前でも、事情を話すと職場での旧姓使用を認めてくれることが多くなっています。

 ただ、離婚が正式に成立していませんので、あくまで「通称名」として旧姓を使うことを許可されているに過ぎず、正式なお名前として旧姓を使うことができるわけではありません。

 早期に離婚すれば、正式なお名前として旧姓に戻すことができますので、そのことは大きなメリットの一つと言えます。

 なお、お子様の氏ですが、親権について調停中という場合には、お子様の氏を今すぐにあなたの旧姓と同じにすることは難しいケースが多いのではないかと見込まれます(この点は、今後の実務の集積に委ねられていくことになるとは思いますが)。

 このようにお子様の氏を今のままにしなければならなくなると、あなたの氏とお子様の氏が分かれてしまい、母子の一体感が損なわれるという考え方もあるかもしれません。

 

 

7.【早期離婚のメリット③・④】世間やお子様への説明のしやすさ


 正式に離婚が成立していませんと隣近所などにも、「別居はしているけれども正式には離婚していない」という説明しかできませんでした。

 しかし、早期に離婚できますと、堂々と夫婦間では離婚が成立している旨を説明できるようになります。

 また、今の別居の中途半端な状況だと、お子様達への説明をしづらいとおっしゃる方も相当数います。正式に離婚すれば、お子様達にも「ママとパパは離婚したから、一緒に住んでいないんだよ」という説明しやすいとおっしゃる方も相当数います。

 

 

8.【早期離婚のメリット⑤】シングルマザーの公的支援を受けられる


 実際の公的支援の内容は、あなたがお住まいの地域によって内容・金額等が異なりますので、詳しくは役所で確認して欲しいのですが、少なくとも正式に離婚が成立していますので、シングルマザーとしていくつかの行政支援を受けられるようになると思います(まだ実務の対応が固まりきっていないため、役所によっては、親権者が正式に決まっていない段階では、シングルマザーの公的支援を出来ないと主張してくるところもあるかもしれません。そのあたりは役所の窓口で教えてくれますので、事前に正確な情報を得るようにして下さい)。

 

 

9.【早期離婚のメリット⑥】再婚活動が可能になる


 モラハラ被害を受け続けてきた方は、離婚しても「すぐに再婚活動する気になれない」という方が非常に多い印象です。

 ただ、ときにモラハラ夫との間でお子さんに恵まれたが、二人目のお子さんはモラハラ夫との間でもうけたくないという場合などでは、早めに再婚して、二人目のお子さんを授かりたいといった希望をなさる方もいます。その場合には、早めに離婚したいという方もいらっしゃいます。

 

 

10.【早期離婚のメリット⑦】モラハラ夫の翻意を避けられる


 モラハラ夫はその時々で言うことがコロコロ変わるということも多くあります。

 そのため、今モラハラ夫が離婚したがっているのでしたら、時機を逃さずに離婚した方が良いと感じるケースもあるかもしれません。

 ただ、このようにモラハラ夫自身があなたとの婚姻関係に強い未練がない場合、仮に今後「やっぱり離婚したくない」とモラハラ夫が言い始めたとしても、「それならこちらは離婚裁判を起こすだけです」と伝えれば、裁判はしたくないということで再び離婚に応じると言ってくる可能性はあります(そのため、今離婚に応じるメリットはあまり大きくないかもしれません)。

 

 

11.【早期離婚のデメリット①】婚姻費用を得られなくなる


 仮にあなたがモラハラ夫と別居していても、正式に離婚する前までは婚姻費用を請求することが可能です。

 よく婚姻費用と養育費を混同なさっている方もいますが、婚姻費用はあなたとお子様達の生活費をモラハラ夫に要求することで、逆に、養育費は、お子様達の生活費だけを要求することです。このようにあなた自身の生活費を含むかどうかで差があります。

 離婚してしまいますと、法律上、夫婦は他人同士ということになりますので、以後は、お子様達の生活費のみ(養育費)のみしか請求できなくなってしまいます。そして、婚姻費用の金額は養育費の金額よりも高額ですから、請求できる月々の金額が下がるということは、それなりの経済的ダメージと言えます。

 

 

12.【早期離婚のデメリット②】別居の動きがしにくい


 モラハラ夫との間で親権者について争いになっている状態ですと、あなたが別居しようとしても、モラハラ夫は「お前一人で出ていくのは構わないが、子供は置いていけ」などと言ってくることも多く、別居して新しい生活をスタートさせることが難しくなるという場面も想定されます。

 離婚が成立しても、その後の親権について調停中ということになりますと、調停手続きが進んでいる最中にモラハラ夫の強い反対を押し切ってお子さんと別居してしまうと、非難を受けるリスクが否定できないからです。

 

 

13.【早期離婚のデメリット③】モラハラ夫側のモチベーションが下がりやすい


 前述の婚姻費用のお話と多少関連するのですが、離婚に反対するモラハラ夫は、一定額の婚姻費用は支払ってくることもあります(残念ながら、断固支払いを拒否してくるモラハラ夫もいますが)。これは、婚姻費用を払わないと離婚で自分が不利になるという心理が働いていることが多いです(モラハラ夫が「離婚したくない」という場合、生活費を渡さずに妻側を苦しめることは矛盾する行動になるからです)

 しかし、早期に離婚してしまいますと、モラハラ夫からすると、法律上夫婦は他人同士なので、「他人にやる金はない」と言ってくるモラハラ夫はかなり増えそうです(要するに月々の生活費を出し渋るということです)。

 

 

14.【早期離婚のデメリット④】見返りを求められて話が複雑化するリスクがある


 モラハラ夫が一旦離婚に応じたものの、後から「本当は離婚したくなかった」とか「妻の言う通りに離婚してやったんだから、親権を争う」などと見返りのような話が出てくるリスクがあります。

 特にモラハラ夫は自分に都合が悪い展開になると、自分が優位に立てるような話を蒸し返してくる人間が多いので、話が複雑化するリスクがあります。

 

 

15.【早期離婚のデメリット⑤】親権の調停が避けられない


 前述の通り、親権を決めずに離婚届を提出する場合には、親権についての調停を起こしていることが絶対条件になります。その意味で、親権についても協議(裁判所の外での話し合い)で決めるということができません。

 たまに、夫婦の紛争や親子の紛争を調停に持ち込みたくないという希望を述べられる方もいますが、その場合には、離婚も親権もセットで協議を行うという手段しかとり得ないことになります。

 

 

16.【早期離婚のデメリット⑥】離婚について激しい争いがある場合


 モラハラ夫は同居しているときには「もう別居だ」とか「こんなことなら離婚だ」ということを口にするのですが、あなたの方から離婚を切り出すと、「別れたくない」と言ってくることが非常に多いです。

 前述の通り、親権について決めずに離婚するという制度は、話し合いで離婚することを前提としていますので、離婚するかどうかについて夫婦の意見対立が激しい場合には、この制度を利用することができません。

 

 

17.【早期離婚のデメリット⑦】最終解決までの期間はそれほど変わらないということも想定される


 離婚について先行して決めることができれば、そのことで他の離婚条件についての話し合い等に弾みがつきそうな印象はあります。

 ただ、モラハラ夫は自身の考えが絶対に正しいという人物が多いので、親権や面会交流・養育費、財産分与等、離婚に付随して決めなければならない項目一つ一つで激しい争いに発展するリスクがかなりあります。

 そのため、離婚は早く決まったけれども、「全て解決するまでにはかなり期間がかかってしまった」というケースもかなり多くなる気がします。

 

 

18.【早期離婚のデメリット⑧】年金分割で不利になる


 年金分割というのは、夫婦それぞれが婚姻中に支払ってきた年金保険料の内、厚生年金部分等の保険料支払い記録を互いに折半するという制度です。

 早期に離婚しますと当然折半する対象期間が短くなりますので、全てセットで離婚する場合と比較して不利になります。

 

 

19.結局どうするのが良いか?


 早期に離婚してしまいますと、婚姻費用を受け取れなくなるという点が、経済的に大きなデメリットになると思います。特に同居中専業主婦だったとか、パート勤務であまり収入がないという方にとっては、養育費分しか生活費がもらえなくなってしまうデメリットは大きいと思います。

 また、先に離婚が成立したとしても、親権が争われるケースですと、モラハラ夫は「お前一人で出ていくのは構わないが、子供は置いていけ」などと言ってくることも多く、別居して新しい生活をスタートさせることが難しいという場面も想定されます。

 そのため、制度としては親権を決めずに離婚するというシステムはあるのですが、実際には、これまでと同様「セットで離婚する」という進め方を取ることが多いのではないかと思います。

 

 

20.まとめ


・民法の改正で、親権について調停を起こすことで、離婚届だけを先行して提出するということが可能になった。

・この制度を利用するメリットとしては以下のようなものがある。

①離婚という区切りができて気持ちの整理が付く

②旧姓に戻した生活をいち早く開始できる

③世間に対して説明がしやすい

④子供達にも説明しやすい

⑤シングルマザーの公的支援を受けられる

⑥再婚に向けた活動が可能になる

⑦モラハラ夫が翻意するリスクを避けられる

・逆にデメリットとしては以下のようなものがある。

  • 婚姻費用を得られなくなる
  • 別居をスタートさせづらい
  • モラハラ夫側の(費用支払い等の)モチベーションが下がりやすい
  • モラハラ夫が見返りを求められて話が複雑化するリスクがある
  • 親権についての紛争を調停にすることが必須になってしまう
  • 離婚そのものを激しく争って来られるとこの手段は取れない
  • 最終決着までの期間はさほど変わらないというケースも十分考えられる
  • 年金分割で不利になる

・最終的には今まで通りセットで離婚するという進め方を取ることが多くなると思う。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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