離婚問題

DV夫から婚姻費用(生活費)は取れるか。

2019.09.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。なお、>>「DV・モラハラの連鎖を断ち切る!!」DV・モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

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1.旦那の性格からして「ビタ一文払わない」と言ってきそう


 

 DV夫は、基本的に自己中心的な考え方をしている人が多いので、こちらから生活費を要求しても「勝手に出て行っておきながら、生活費なんて払うつもりはない」だとか「お前が戻ってくれば今まで通り生活費は渡すからすぐに帰ってこい」といったことを平気で言ってくる人も多いです。

 ただ、あなた自身、もしくは、お子様がいらっしゃる場合には、あなた達の生活の問題でもありますので、相手の反発が予想されるとしても、必要な生活費は要求していく必要があります。 

 

 

2.生活費をいくら要求すべきか


 

(1)何か参考になる数字はないの?

 相手に生活費を要求する場合、いくらぐらいが妥当なのか?相場はいくらぐらいなのか?というのが気になるところかと思います。

この点は、実務では婚姻費用算定表で計算することが一般的です。

 

 裁判所がオフィシャルにて公表している算定表は下記の通りになりますので参考になさって下さい。

 家庭裁判所:算定表

 なお、離婚成立前の生活費は、法律用語としては「婚姻費用」と言いまして、離婚成立後は「養育費」になります。算定表をご覧になる際にも、「婚姻費用」の表をご覧下さい。

 

 

(2)算定表の数字をそのまま要求するのがよいか?

 上記の算定表の数字はあくまで基礎値となる数字です。あなたやお子さんの生活上、標準的な家庭よりも余分にお金がかかっている場合には、その分の加算を要求したり、敢えて算定表ではなく、一緒に生活していた時の生活費と同額という形で請求するといったケースもあります。

 なお、ここでの「標準的な家庭よりも余分にお金がかかっている場合」というのは、教育関係費や医療費で問題となることが多いです。たまに、「うちの子はよく食べる子で食費が高額なんです」といった話をなさる方がいますが、そのことで婚姻費用を加算させることは難しいことが多いです。

 

 例えば、教育関係費で言いますと、幼稚園の費用、習い事の費用、私立学校の学費や通学のための交通費などが問題になることが多いです。

 医療費については、あなたやお子様が持病を抱えているとか、夫からのDVやモラハラのトラウマ等で心療内科への定期通院が必要だといったケースが問題になりやすいです。

 これら教育関係費や医療費が余分にかかっている場合には、一定範囲で加算を要求するケースが多いです。

 いずれにしましても、一度あなたが要求した数字は、今後の交渉にあたって非常に重要ですので、あまり低めの数字を提示すべきではありません。

 

 

3.相手にどのような方法で要求するか


 

 相手はDV夫ですので、あなたが直接話をするということは危険を伴います。

  ましてや婚姻費用を請求するのは、あなたが別居を開始した後と言うことになりますので、相手は非常に感情的になっている危険性もあります。

 そのため、婚姻費用を要求する場合でもご実家のご両親その他の親族等を経由して伝えるとか、あなたが直接矢面に立たない形で請求した方が良いと思います。

 

 

4.相手が支払いを拒んできた場合


 

 上記のように身内等を間に入れても話が進まない場合や、間に入れる的確な人物がいないという場合には、家庭裁判所に対して婚姻費用分担調停を起こすことも検討せざるを得ません。

  そして、至急生活費を得たいという場合には、早めに調停を申し立てることをオススメします。但し、突如調停を起こしますと、DV夫側が強く反発する可能性もありますので、少なくとも一度は「生活費を払ってくれないのであれば、裁判所に調停を起こすことを考えている」という最後通告をした方が良いと思います。

 DV夫は自分の考えが絶対に正しいと考えている人が多いので、簡単に婚姻費用を支払ってこないことの方が多いと思います。そのため、早期に婚姻費用分担調停を申し立てるケースの方が多い傾向にあります。

 

 

5.婚姻費用分担調停で話がまとまらなかったらどうなる?


 

 せっかく調停を起こしたのに、相手が調停に出席しないとか、調停に出席はしたけれども一切支払いに応じないというケースもあります。

 

 このようなケースを懸念して、「最初から調停なんて起こさない方が良い」と考えている方もいますが、これは大きな誤解です。

 と言いますのは、婚姻費用分担調停は、調停がまとまらなかった場合、手続は審判に移行し、最終的に裁判所がきちんとした金額を決めてくれるのです。

 そのため調停が上手く行かなくても、あなたが泣き寝入りしなければならないと言うことは、あまりないと思います。

 

 別居中であっても、あなたやお子様の生活費を払うのはDV夫の当然の務めになりますので、積極的に婚姻費用分担調停を活用して下さい。

 

 

6.審判が出たのに夫が婚姻費用を支払わない場合どうすればよいか。


 審判で夫側が支払う婚姻費用の額が明確に決まったのに、それでも婚姻費用を支払わないという場合には、まず、裁判所に連絡をして、裁判所経由で支払うよう伝えてもらう(履行勧告や履行命令)という方法があります。

 ただ、それでもDV夫が支払いを拒むような場合には、給料の差押えと言った強制手段を取ることになります。相手の勤め先が分かっていれば、このように最終的には差押えによって回収できます。

 

 

7.実際にお金をもらえるまでにどのくらいかかる?


 婚姻費用は、あなたの生活費に関わる問題ですので、裁判所も極力早めに手続を進めてくれます。

 しかし、法律的な論点が発生しますと、どうしてもその解釈等で争いが生じますので、時間がかかってしまうことになります。

 

 例えば、①別居後もこちらの生活費の一部がDV夫側の口座から引き落とされている場合(例えば、あなたの携帯電話代やお子様の習い事の費用、学校給食費等)、②DV夫が転職等を繰り返しており、収入の判断が難しい場合、③お子様の私立学校の学費があり、その負担割合で争いがある場合等には、時間がかかる傾向があります。

 婚姻費用分担調停を起こしても、第1回期日は1か月以上先になりますし、通常は第1回期日で審判移行することはまずありませんので、争いが少ないケースでも審判の結論が出るまでには4,5か月はかかってしまうのではないかと思います。もちろん、上記のような争点が多い場合等には、もっと期間がかかってしまうことになります。

 

 

8.早く離婚したい場合には、婚姻費用にはあまりこだわらない方が良いか?


 私がDVの案件を扱っていますと、奥様の側から、「早く離婚したいので、婚姻費用の請求にはこだわらない」とか「婚姻費用を請求すると相手を刺激して解決に時間がかかる危険性が高いので、請求したくない」とおっしゃる方も相当数います。

 ただ、婚姻費用を請求しなかったとしても、DV夫側は「勝手に出て行ったんだから当たり前だ」などといって、他の問題でもめるというケースも多いです。

 また、DV夫が相手の場合、離婚による最終解決までにかかる期間は残念ながら長期化しやすい印象です。

 そのため、あなた自身十分な収入があるなどのケースは別として、そうでない場合には、婚姻費用をしっかりと要求するケースが大半ではないかと思います。

 

 

9.まとめ


・いくら婚姻費用を要求するかは、裁判所の算定表を一つの目安とするのがよい。

・相手への婚姻費用の要求は両親その他の身内等を介して請求した方が良く、あなたが直接DV夫と話をしない方が良い。

・DV夫が支払いを拒否するようであれば早めに婚姻費用分担調停を起こした方が良い。

・調停で話がまとまらなかった場合、審判で裁判所が妥当な金額を正式に決めてくれる。

・DV夫が審判結果にも従わない場合には、最終的には給料差押え等で回収していくことになる。

・審判での最終の結論が出るまでには早くとも4,5か月はかかることの方が多い。

・早く離婚したい場合でも、しっかりと婚姻費用を要求した方が良いことの方が多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

DV夫から子供を守る方法

2019.09.09更新

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1.DV夫から子供を守りたい


 

 DV夫があなたに対しても暴言を吐くけれども、子供に対する暴言の方がひどい、ときには暴力を振るうというような場合には、あなた自身というよりも、まずは、お子様の身の安全を最優先に確保したいと考えるのは当然のことです。

 なお、奥様によっては、自分は暴力を受けても耐えられるけれども、子供が暴力を受けるのは不憫でならないという方もいらっしゃいます。もちろん、お子様への暴力を防止する必要もありますが、あなた自身の身の安全もとても大切ですので、あなた自身の身の安全という視点も必ず忘れずにお考え下さい。

 

 

2.同居したままお子様の身の安全を確保する


 

(1)警察への通報が最も現実的な手段

 別居に踏み切ってもその後の生活力に不安があるとか、今すぐ離婚したいというところまでは気持ちが固まっていない等の理由で、早急な別居を躊躇っている場合、DV夫と同居しながらお子様の身の安全を図っていく必要があります。

 その場合には、DV夫がお子様に暴力を振るうようなケースですと、躊躇せずに警察に通報するということが重要ではないかと思います。

 

 警察に通報すると、DV夫を刺激してしまうと不安に思われたり、仕返しが怖いという方も多いと思いますが、その場その場で対処しておきませんと、DV夫からの暴力はエスカレートする一方ですから、躊躇せずに通報するということは大事なことではないかと思います。具体的な相談方法ですが、DV夫がお子様に直接暴力を振るっているタイミングや暴力を振るい終わったばかりのタイミングであれば、警察に110番通報をして臨場してもらう形を取ることになると思いますし、110番通報をしようとしても夫に妨害されるような場合ですと、暴力の翌日などにあなたとお子様とで警察署に出向いて相談するという形を取ることになると思います。

 なお、あなた自身が身を呈してお子様を守るという方もいらっしゃると思いますが、お子様への直接の暴力は防止できたとしても、お子様に対して、お母さんであるあなたが暴力を受けているという場面を見せる形になってしまいますから、お子様にとっても精神的負担が大きいと思います。また、あなた自身の身の安全の問題もあります。

 

 ちなみに、警察に相談すると、被害届を提出するか質問されることが多いです。しっかりと処罰してもらって懲りさせるという観点から被害届を提出する場合もありますし、逮捕等になると職を失うリスクもあることから、一旦は被害届は出さないという場合もあると思います。

 

 ただ、いずれにしましても、DV夫と同居したままですと、警察に通報して対処することにも限界がありますから、DV夫からの暴力の頻度が増してきたような場合には、速やかに別居を考えるということの方が現実的ではないかと思います。

 

(2)児童相談所の一時保護について

 警察に対して夫のお子様に対するDVを通報すると、警察の方から児童相談所に対して通告が行われます。

 そうすると、児童相談所の方からも事情を聴かれ、児童相談所の方で一時保護(要するに一時的にお子様を預かる)という事態に陥る危険性があります。

 

 児童相談所で保護されている分には、お子様の身の安全は確保されるのですが、他方で、①一時保護中は、現在通学している小学校に通うことができなくなる、②面会交流の頻度も限定されることが多く、あなた自身自由にお子様に会えなくなるリスクが高い、③一時保護の後、児童養護施設等での保護に移行した場合、離婚等の解決まで保護が解除されないリスクがあるといった難点もあります。

 

 特に、別居や離婚等について夫婦の意見の対立が深く、そのことが夫婦ケンカやお子様への暴力の原因になっているような場合には、児童相談所側も簡単には一度預かったお子様を帰してくれないというケースもありますので、児童相談所への対応という点では十分注意が必要になります。「一時保護」の「一時」という言葉で、「数日保護してくれるのかな?」と想像するかもしれませんが、一度一時保護されますと、(数日どころではなく)なかなか戻してもらえないというケースも多いので注意して下さい。

 

 

3.別居した上でお子様の身の安全を確保する


 

 前述しましたとおり、DV夫のお子様への暴力の頻度が増してきているような場合には、あまり期間を置かずに別居するという形の方が現実的な選択肢と言えます。

 

(1)別居先の安全性確保

 簡単に言いますと、相手方にこちらの住所を知られないということです。

 最も安全性が高いのはシェルターということになりますが、お子様の年齢が高い場合にはシェルターには入れないということもありますので、詳しくは最寄りの市役所や区役所に相談してみて下さい。

 

 なお、一時シェルターに避難できたとしても、シェルターにいられる期間は限定されていますので、シェルターを出た後の住居について検討しなければいけません。

 いずれにせよ、相手に知られないような住所に移り住むことが非常に重要になります。

 お子様の身の安全を最大限に優先するのであれば、学校を転校することはもちろんのこと、習い事等も一旦やめた上で、別居先近くの習い事に通わせるという形にする必要があります。

 

 ちなみに、実家が遠隔地の場合、実家に避難するということも考えてよいかもしれませんが、DV夫からの暴力がひどいような場合には、全くDV夫が知らない場所の方が安全性が高いです。

 

(2)保護命令の申立

 DV夫がお子様のみならずあなたにも暴力を振るって来るという場合には、あなた自身の保護命令を申し立てるのと同時にお子様への接近も禁止する旨の保護命令を同時に発令してもらうという方法が考えられます。

 この場合には、あなた自身が暴力被害を受けた診断書や写真等の客観的証拠と共に、お子様も同様に被害を受けた証拠が必要になりますので、保護命令の審理に耐えられるだけの証拠の準備ができるのかということが重要な鍵になります。

 なお、お子様への接近禁止の命令のみを申し立てることはできませんので、必ず、あなた自身への接近禁止等の命令と一緒で申立をする必要があります。

 

 

4.お子様の心理的ケア


 DV夫が全く知らない新天地に転居して新しい生活をスタートすれば、一定の身の安全は確保できますが、お子様の心理的ケアも大事です。

 転居して暫くの間は、お子様も、DV夫が追いかけて来るのではないか?こちらの居場所がバレてしまったらどうしようという不安を抱くことも多いと思います。新天地での慣れない環境でのストレスと、DV夫に居場所がバレるかもしれないというストレスを抱えながらの生活はお子様にとっても大変だと思いますので、その心理的ケアのために児童精神科等を受診する必要があることもあります。

 なお、前述のような警察の通報等を通じて児童相談所にも相談できる体制が整っている場合には、児童相談所に在籍する児童心理士のアドバイスなどを受けると、より的確にお子様の心理状態を把握し得る場合もあります。前述の通り、一時保護ということになるとデメリットも多いのですが、一時保護に至らず、児童相談所と上手に付き合っていけるようでしたら、色々と相談しながらお子様の心理的ケアなどを図れると思います。

 

 

5.まとめ


・同居しながらお子様の身の安全を守るためには、警察への通報が重要である。

・ただ、警察に通報すると、警察経由で児童相談所に情報が共有されるリスクがあるため、注意が必要である。

・同居しながらお子様の身の安全を確保することには限界もあるので、暴力が頻繁な場合には速やかに別居した方が良い。

・別居後は、別居先をDV夫に知られないということが再重要である。

・あなた自身が保護命令を申し立てた上で、合わせてお子様への接近禁止等の命令を申し立てる方法もある

・別居後は、お子様の心理的ケアも大事である。

 

 

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