離婚問題

【絶対に夫に親権を渡したくない(19)】面前DVや面前モラハラはどこまで重視されるか

2023.01.09更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「面前DV、面前モラハラ」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.面前DV、面前モラハラって?


 面前DVとは、お子様の目の前だというのに、夫があなたに対して暴力を振るってくること等を意味します。面前モラハラとは、お子様の目の前だというのに、夫があなたに対して暴言を浴びせてくること等を意味します。
 面前DVとか面前モラハラという表現を使う際には、夫がお子様に対して直接暴力を振るったり、お子様に暴言を吐くことは「含まず」、あなただけが攻撃対象になっていることを意味することが多いです。

 

 

3.面前DV等は児童虐待なのでは?


 児童虐待防止法第2条第4号は、お子様の面前での夫から妻への暴力や妻の心身に有害な影響を及ぼす言動を「児童虐待」と定義しています。なお、暴言については、単なる誹謗中傷では足らず、妻の生命または身体に危害を及ぼし得る程度の発言であることが必要とされています。
 また、警察や児童相談所が介入しているケースですと、警察官や児童福祉司は「お子さんの前で暴力を振るったり、夫婦喧嘩することは、お子さんに悪影響を及ぼすのでやめてください」と言われることが多いと思います。

 

 

4.裁判所は、お子様への直接の虐待かどうかで強く線引きすることが多い


 前述の通り、面前DVや面前モラハラは、児童虐待防止法の児童虐待に該当するのですが、親権紛争では、夫の暴言などが直接お子様に向かっているかどうかという点が非常に重視されます。
 裏を返しますと、仮にあなたが暴力を受けていても、お子様が一切直接の暴力や暴言被害を受けていないという場合には、親権紛争の中では、そこまで重視されないということになってしまうということです。
 そのため、DV夫やモラハラ夫の気性の粗さなどは、直接あなたに向けられたものであるという視点ではなく、お子様に向けられたものであるという視点から整理して主張・立証していく必要があります。
 もちろん、あなたとしては、「今は子供が被害に遭っていないけれども、子供が成長すると同じ被害を受けるかもしれないと思うので、すごく心配」という気持ちはよく分かりますが、親権紛争では、他にも親権者を決める重要な検討項目がありますので、面前DVや面前モラハラを大きく取り上げるというよりは、他の項目で有利な点をクローズアップすることの方が良いと思います。

 

 

5.発言そのものが性的虐待と捉え得る場合は別


 前述の通り、モラハラ夫の発言があなたに向けられたものの場合、残念なことに、親権紛争ではあまり重視されません。
 ただ、モラハラ夫があなたに対してした発言の中でも、それをお子様に聞かせてしまうこと自体が性的虐待に該当するケースはあり、その場合には、親権紛争でも重視されることはあります。
 一般的には、夫があなたの不倫を疑って口論になったとか、夫の不倫の中での口論での発言が問題になるケースが多いかと思います。
 要するに、例えば、お子様が女の子で、ある程度性知識などもあるのに、夫が妻に性的に露骨な発言を繰り返したり、性的に放送禁止用語に近い発言をするといったものがこれに含まれます。

 

 

6.まとめ


・面前DVや面前モラハラは、児童虐待防止法上の「児童虐待」に該当する。
・しかし、面前DV等だけでは、裁判所はあまり重視してくれないことが多い。
・ただ、面前モラハラの中でも、そのような発言をお子様に聞かせることそのものが性的虐待に該当するようなケースだと重視されることが多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(18)】こちらも弁護士を立てるべきか

2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかりと戦って、しっかりと勝つ」をモットーに、以下詳しく解説していきます。

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「こちらも弁護士を立てるべきか」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.少なくとも相談だけでもすべき


 親権の帰属が激しく争われる可能性が高い場合には、すぐに弁護士を雇うかどうかはともかくとして、最低限、弁護士に相談して意見を聞くことを強くオススメしています。弁護士を正式に雇うということになりますと弁護士費用もかかりますので、まずは弁護士への相談だけでもした方がよいと感じるのです。

 理由は以下の通りです。

(1)これから別居するという場合には、別居の方法やタイミングなどを相談する

 現状、夫と同居して生活をしているという場合には、どのように別居を切り出すべきか、もしくは、別居実行のどのくらい前に別居を切り出すべきかなど、別居を実行に移すにあたって検討すべき事項はいくつかあります。

 このような別居の方法等については、離婚問題の経験豊富な弁護士に相談すれば、「他の方はこのようになさっていますよ」とか「あなたの場合には、このような方法が良いと思いますよ」といった的確なアドバイスを受けられますので、安心して別居の準備を進めることができます。

 

(2)親権について勝訴の見込みを確認して置く

 激しい親権争いに発展するようなケースですと、夫側が様々なことを言ってくることが多く、あなたとしても、確実に親権を獲得できるか不安を抱えていることも多いと思います。

 そのため、どのようなことが争いになりそうなのか、夫側はどのような点を追及してきそうなのかといった点を弁護士に相談すると、あなたの勝訴のある程度の見込みを確認することができます。

 弁護士が、勝訴の可能性が高いと言ってくれた場合には安心材料になりますし、逆にこちらが不利な情勢だと分かった場合には、しっかりと対策していくことができますので、いずれにしましても、弁護士に相談することは有意義ということになります。

 

(3)面会交流への対応方法

 面会交流に応じるかどうかは親権者指定の最重要項目とまでは言えないのですが、面会交流を一切拒否する姿勢は裁判官も厳しく見る傾向があります。
 そのような場合に、どのような形での面会交流を認めるのかといったところは非常に悩ましい問題です。
 このように面会交流への対応方法は重要な問題になりますので、弁護士に相談しながら進められると安心感が高まります。

 

(4)その他のお子さんに関する事項の相談

 前述の面会交流の件もそうですが、それ以外にも、夫側と別居生活をしていると、お子さんとの関わりで対応に不安を感じることもあります。例えば、住民票を夫に無断で移しても大丈夫なのかといった点や、夫の勤め先が発行する健康保険証をそのまま利用してしまって問題がないのか、受験のために塾に通わせたいが夫に何も断らずに受験を決定して問題がないのかといった問題です。

 これらの問題についても、弁護士に相談して適切な対応が分かっていると今後も安心だと思います。

 

(5)母性優先、現状優先を過信するのは危険
 いろいろとインターネットを調べてみますと、「お子様が小さい場合には母性優先で母親側が有利になります」とか「現状お子さまを育てていらっしゃる方が有利です」といった記事を見かけることがあります。
 確かに現状監護優先ということは間違いがないのですが、そのことを過信しすぎてしまいますと、こちらに不利な結論が出されてしまうリスクは否定できません。

 

3.相談する弁護士選び


 親権の問題は、離婚問題と同時に紛争になりますので、離婚問題を多数取り扱っている弁護士に相談すると確実です。

 

 

4.いつ弁護士を雇うべきか


 

 監護者指定事件の場合には、スピード感と専門性が求められますので、「早めに弁護士を雇った方がよいです」とアドバイスすることが多いです。

 これに対して、親権紛争の場合には、①まだ夫婦の間で協議中の段階とか、②夫が弁護士を雇ってきたが、まだ暫く調停にはならなさそうといったように、まだしばらく時間をかけて手続きが進むというケースもあります。

 そのような場合には、焦って弁護士を雇うということではなく、一旦は弁護士への相談だけにとどめておいて、正式に雇うのを後回しにするというのも一つの方法です。

 もちろん、夫側が調停等を起こしてきたという場合には、裁判所の手続になりますので、弁護士を雇って対応した方がよいのですが、そうでなければ、相手の動向を見極めつつご本人で対応するということも十分あり得る選択肢だと感じます。

 

5.まとめ


・現在夫と同居中という場合には、別居の方法等を相談してみるという方法もある。
・弁護士に相談すると、あなたの親権獲得の可能性(勝訴の可能性)を教えてくれるので安心できる。
・弁護士に相談すると、面会交流への対応方法についてもアドバイスを受けることが出来て安心である。
・母性優先、現状優先を過信するのは禁物である。

・弁護士を雇うと費用がかかるので、いつ雇うかはしばらく様子を見て判断するという方法もある。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(17)】妻側であれば大した準備をしなくても勝てるのか?

2023.01.09更新

弁護士秦

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「女性側というだけで大した準備もいらないのか」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.妻側であれば親権紛争ではほぼ確実に勝てる?


 

 私は、他の弁護士が担当している事件についてのセカンドオピニオンを受ける事等もあるのですが、妻側だというだけで「親権は大丈夫なので、安心して下さい」とか「そんなに準備しなくても勝てるので、準備するだけ無駄です」などとアドバイスしている弁護士を見かけることもあります。
 特にお子さんの年齢が幼いような場合には、妻側が有利なことは事実です。

 

 しかし、親権紛争は、必ず夫婦どちらかを親権者と明確に定める手続きになりますので、「万が一にも負けられない」「負けてはいけない」事件になります。また、親権者の指定は複数の要素を総合して検討されますので、妻側であるというだけで安易に考えることは非常に危険だと思います。

 さらに、現状あなたがお子さんの面倒を見ているかどうかでまた情勢が変わってきます。
 以下では、①現在あなたがお子さんの面倒を見ていないケースと、②現在あなたがお子さんの面倒を見ているケースとで場合分けして解説します。

 

 

3.現在あなたがお子さんの面倒を見ていないケース


 (1)楽観視できない現状だということを認識する必要がある

 例えば、夫からのモラハラに耐えかねて、夫に黙って別居の準備をしていたところ、そのことが夫にバレてしまった、そうしたところ、夫が子供を連れて実家に行ってしまい、今はあなた一人で生活している、といったケースです。

 このようなケースですと、率直に言いますと、「妻側である」というだけで勝訴することはそう簡単ではないと考えてもらったほうが良いです。
 なぜなら、親権者指定で最も重視されるのは、現状お子さんを夫婦のどちらが育てているのか、そのような生活状況に問題がないのかという点だからです。

 旦那側の実家での生活がお子さんにとっても安定している状況の場合、残念ながらこちらが不利な状況にあると認識したほうが良いと思います。
 ただ、このようなケースでも十分戦っていく余地はあります。
具体的には、①旦那の別居前に育児を主に担当していたのが妻であるという点、②旦那の別居が子の連れ去りであるという点をしっかりと証拠をつけて戦っていくということになろうかと思います。

 

(2)夫側が監護実績を積み上げる前に監護者指定事件を起こす必要性

 あなたが離婚を視野に入れている場合、親権に目線が行きがちです。

 ただ、離婚や親権をイチから争っていますと、時間がかかってしまうケースが多いです。

 そのように時間をかけている間に、夫側は、お子様を一人で(または、監護補助者とともに)育てたという実績を積み上げていってしまいます。

 そのため、夫側が監護実績を積み上げていくことを阻止すべく、早期に監護者指定審判・子の引渡し審判及び保全事件を申し立てるケースが多いです。

 このような監護者指定事件の中で、夫側の連れ去りの違法性や連れ去り前の監護実績が認められれば、今後の親権紛争にあたっても、こちらにかなり有利に手続を進めることができるようになります。

 

 

4.現在あなたがお子さんの面倒を見ているケース 


 

 現状あなたがお子さんの面倒を見ている場合には、現在あなたがお子様の育児を担っていて、また、女性側ということもありますので、親権紛争において、あなたが有利なことは事実です。

 

 しかし、以前、他のブログに書かせて頂きましたが、親権者指定事件は以下の要素を重要な判断要素とし、総合的に検討されることが多いです。
1)過去の監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度

5)今後の監護計画
6)子供の意思
7)面会交流の姿勢

 従いまして、現在あなたがお子さんの面倒を見ており、お子さんが健全に成長していたとしても、他の要素で大きく不利な場合には、親権紛争で敗訴してしまうこともあり得ます。
前述の通り、親権紛争は、必ず夫婦どちらかを親権者と明確に定める手続きになりますので、「万が一にも負けられない」「負けてはいけない」事件になりますので、しっかりとした準備をして臨むことが必須になります。

 

 

5.まとめ


・あなたが現在お子様の面倒を見ていない場合には、妻側だということだけで有利だという発想は捨てたほうが良い。
・あなたが現在お子様の面倒を見ている場合、妻側が有利であることは事実だが、監護者は様々な要素を総合して検討するので油断は禁物である。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(16)】証拠集めのポイント

2023.01.09更新

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかりと戦って、しっかりと勝つ」をモットーに、以下詳しく解説していきます。

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「証拠集めのポイント」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.証拠集めって?


(1)そもそも親権者指定で重要なポイントは?
 一般的に親権者指定については以下の7個の項目が重要視されると言われています。
1)監護実績
2)別居の違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)今後の監護計画

6)子供の意思
7)面会交流への姿勢

 ケースによって、上記の7項目の中でも優先度に差が生じますので、一概にどれが一番重要ということは言いにくいのですが、特に監護実績については、最重要項目とされることが多いです。
 親権紛争においても、上記の7個の視点をもって証拠集めを検討する必要があるのですが、どこが大きな争点になっているのかに応じて、特に重点を置くべき項目が異なってきます。この点は詳しく後述いたします。

 

(2)文章の表現で勝ったつもりにならない。
 調停や裁判など、親権紛争においては、自身の優位性を示す文章を作成していく場面が出てきます。
 もちろん、裁判所に提出する書類になりますので、しっかりとした文章を作成する必要があります。
 ただ、この文章がしっかりとした文章であれば勝訴できるというものではありません。

 裁判所から見ますと、先方側、当方側いずれも他人ですから、それぞれの言い分を鵜呑みにすることはありません。そうすると、裁判所がどちらの言い分が正しいと判断するのかというと、それは、どのような証拠で裏付けられているかによって決定するのです。
 そのため、私もご依頼者様に「裏付け勝負ですよ」などとお話しすることがあるのですが、それだけ裏付けが重要なのです。

 

(3)どんな裏付けが重要なのか?
 前述の通り、親権紛争では、これまでの監護実績が非常に重要になりますので、その裏付けが重要です。

 具体的にはお子様が通う保育園の連絡帳や母子手帳が客観的裏付けになることが多いです。特に保育園の連絡帳は、前日の夕食に食べたものや、家庭で起きたことなどをその時々で記載していることも多く、過去の監護実績を知る重要な手掛かりになることが多いです。また、任意に作成した保育日誌についても、一定期間毎日記帳していたという場合には、当時の育児の状況を示す重要な証拠になることがあります。なお、普段のお子様との生活ぶりを確認する観点から、お子様の写真やお子様との家族写真等を確認したいと言ってくる裁判官もおりまして、そのような場合には、その写真の内容も重要な証拠になります。

 前述した親権者指定に当たって重要な7個のポイントのうち、「現在の監護状況」及び「お子様の意思」、「監護計画」は、手続きの中で家庭裁判所調査官が確認していくことになりますので、特段こちらから証拠を提出する必要性はあまりありません。

 また、「面会交流への姿勢」についても、あなたの意見を述べればよいのですから、何か特段の証拠が必要になるわけではありません。
 そのため、上記別居の違法性、同居中の児童虐待の有無について、裏付けが必要になります。ただ、別居の違法性につきましては、仮に旦那様の了解を得ずに別居を開始したとしても、やむを得ない事情があれば、それが違法とされることはありません。逆に旦那様からお子様への虐待行為があったという場合には、その裏付けは丁寧に提出していく必要があります。

 なお、虐待については、よく日記をつけてある、都度メモを取っています、とおっしゃる方も多いのですが、その都度つけたメモ等はあまり有効な証拠にはならないことが多いです。残念ながら、メモは、過去のその日付で書いたふりをすることができてしまいますので証拠性が低くなりがちなのです。
 そのため、暴力などの場合には診断書やお子様の怪我の写真、暴言であれば録音音声等が非常に有効な証拠になります。

 

 

3.反論証拠にとらわれ過ぎないこと


 親権紛争の際には通常旦那様の身勝手な言い分が並べられ、その証拠としてLINEやメールが添付されていることも多く、一つ一つに対して反論したくなることも多いです。
 もちろん、重要なポイントとなる証拠に対してはしっかりと反論していく必要があるのですが、反論にばかり目を奪われていますと、一番大事なこちらの監護実績の主張等が疎かになりがちです。
 そのため、前述のような、「過去の監護実績」「別居の違法性」「児童虐待の有無」という大きな視点を持ったうえで、裏付けの有無をまずはしっかりと検討すべきかと思います。そのようなときには、私の方から「木を見て森を見ず」にならないよう、細々とした点にばかり気を取られず、もっと大きな視点から反論準備をしていきましょうとお伝えすることも多いのですが、そのような視点での対応が肝要なことも多いです。

 

 

4.まとめ


・監護者指定のポイントとなる6項目のうち、まず裏付けが重要になるのは「過去の監護実績」についての裏付けである。
・こちらで作成した文章でしっかりとした文章を作り上げることができた場合、その文章だけで勝てるつもりになってしまうこともあるが、それは誤りである。
・「別居の違法性」「児童虐待の有無」という大きな視点についての裏付けも重要である。
・相手の言い分への反論証拠にこだわりすぎないよう注意が必要である。

 

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(15)】親権者はいつどのように決まっていくものなのか?

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「いつどのように決まっていくのか」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.離婚の方向性が決まらないと親権の話にならない


 私がご相談に乗っておりますと、お子さんの親権のことが非常に心配なので、親権の不安事で頭がいっぱいになっていて、離婚のことが疎かになってしまっている方もいらっしゃいます。
 ただ、親権の問題は離婚になって初めて問題になる話題ですので、夫側が頑なに離婚に応じないという姿勢の場合には、まず、どうやって離婚を実現していくのかという視点が重要になってきます。

 このようなご説明をしますと、「別居している場合には、離婚しなくても親権を決めないといけないんじゃありませんか?」という質問を受けることもありますが、日本の法律では、離婚しない場合には、共同親権とされておりますので、基本的に夫婦の一方を親権者と定めることはできません。
 そして、夫側が「離婚したくない」ということに強いこだわりを示す場合には、離婚すべきかどうかという点で離婚裁判にまで発展することもあります(親権について不安をお持ちの方は、親権について裁判になると誤解されている方も多いのですが、夫が「離婚したくない」と言い続けた場合には、離婚裁判の中で離婚の当否がまず最初の審査対象になるのです)。

 ちなみに、ここで説明して参りました「離婚の方向性が決まらないと親権の話にならない」というのは、夫側が「離婚で構わない」と意思表示しないと、親権の話にならないという意味ですので、この点は誤解のないようご留意ください(離婚届を提出してしまわないと親権の話にならないという意味ではありません)。

 

 

3.難しく考えなくとも、夫側の了解があれば済む話


 私のところに親権で思い悩んでご相談に来られる方は、「夫はこういう切り口で責めてくると思うんですが、どう反論すればいいでしょうか?」とか「実は、子供を責め過ぎてしまったことがあるのですが、そのことは不利になるのでしょうか?」など個別の様々な問題について、不安や疑問を抱いていることが多いです。
 ただ、親権の細々とした議論に入る以前に、親権についても、夫側が「親権は妻に譲る」と言ってくれれば済んでしまう問題です。
 もちろん、実際の紛争では、夫側が簡単に譲歩しないので、手続きが長期化してしまうことも多いのですが、大原則は、夫さえ争わなければ、そこで解決する問題なのです。

 

 

4.いつ親権が決まるか?


(1)協議離婚の場合
 協議離婚とは、区・市役所に離婚届を提出することで離婚することを指します。離婚届には親権者を定める欄がありますので、親権者を決めてしまわないと離婚することができません。
 逆に、夫婦で話し合って、夫も親権者をあなたにすることに合意して署名押印してくれれば、あなたが正式に親権者に決まります。
 なお、離婚届を提出する際には、養育費・面会交流・財産分与や年金分割のことは決めなくても構いません。ただ、離婚した後は、お金を出し渋る夫が非常に多いので、通常は、養育費や財産分与といったお金の大事なこともしっかりと決めてから離婚するケースが圧倒的多数です。

(2)調停離婚の場合
 離婚の話し合いが上手くいかなかった場合、離婚に向けて家庭裁判所に調停を起こすことになります。
 この調停においても、離婚することと親権者をあなたにすることについて夫が同意すれば、そのような前提で調停手続きは進んでいきます。
 ただ、調停の場合には、養育費・面会交流・財産分与や年金分割といった問題についても一緒に解決しようとしますので、離婚・親権の問題で夫婦の意見が一致しても、養育費・面会交流・財産分与や年金分割についての意見が対立している場合には、これらの問題についての議論が続いていくことになります。

 そのため、「調停の手続で親権者が決まるのは何時ですか?」と質問された場合、「調停の手続が最終決着する時です」というのが解答となります。養育費・面会交流・財産分与や年金分割についても、話し合いが決着した時に、調停成立となりますので、そのような最終段階で、親権者も決定するということになるのです。
 逆に、①夫側が調停の場でも「断固離婚には応じない」と言い続けた場合には、親権の議論に到達する前に調停は終了してしまいますし、②夫側が離婚には応じても、「断固親権は譲らない」と言い続けた場合にも、調停は終了してしまいます。このようなことを「調停不成立」と呼びますが、調停不成立になった場合には、残念ながら何も決まらないで、調停手続きが終了してしまうということになります。

(3)裁判離婚の場合
 これまでの説明と同様、離婚裁判の中でも、夫側が「妻に親権は譲る」と主張してきた場合、妻側が親権者となるという前提で裁判手続きは進行していくことになります。
 即ち、夫側が親権をあきらめていますので、家庭訪問といった調査官による調査を実施しないことが多いです。
 もちろん、調停の場でも、夫側は「親権を譲らない」と言っていたのですから、ほとんどのケースで、裁判でも親権が争われるのですが、ごく少数ですが、裁判になった場合には、あっさり親権を譲ってくるケースもあります。

 なお、仮に夫側が親権を争わなかったとしても、その時点ですぐに親権者が決定するのではなく、裁判所の判決が言い渡されるまで、正式には、親権者は決まりません。調停の時と同様、養育費・財産分与や年金分割といった問題点について全て決めるのと同時に親権も決まるのです。
 ちなみに、家庭裁判所が一度判決を下しても、不服がある当事者は、高等裁判所に控訴することができますので、控訴手続きが続く限り、離婚・親権いずれも正式には決まりません。

 なお、離婚裁判手続き中、裁判官が和解を勧めてくることも多く、当事者間の話し合いが上手くいけば、和解で手続きが終了することもあります。その場合には、調停の時と同様、和解成立時に正式に親権者も決まることになります。

 

 

5.どのように親権が決まるか?


 離婚協議はもちろん、離婚調停も結局は夫婦の話し合いの場ですから、夫婦のどちらが親権を獲得するのかという点で意見が対立すると、親権者を決定することはできません。その意味で「どのように親権者を決めるのですか?」と質問された場合、協議でも調停でも「夫婦の話し合いで決めることになります」という解答になります。
 なお、離婚調停手続きの中で家庭裁判所調査官が関わるケースも多いですが、この調査官が調停手続きの中で本格的な親権調査を実施することは稀です。本格的な調査を実施しても、調停が話し合いの手続であるため、調査結果の拘束力がなく、折角調査をしても無駄になってしまうからです。

 結局は、最初に申し上げました通り、調停でも夫婦の話し合いがつかない場合には、親権者は決まらないということになるのです。
 次に、裁判だとどうかと言いますと、前述の通り、夫側が裁判の時点で「親権をあきらめる」と言ってきた場合には、本格的な調査等は行わずに、あなたを親権者とする方向で手続きは進んでいきます。
 逆に、夫側が親権を争う場合には、家庭訪問や関係機関調査、子の心情調査といった一通りの調査を実施することになります(これらの調査は、家庭裁判所調査官が実施することになります)。そのため、あなたの方でも家庭訪問等への対応をしていく必要が出てきます。

 

 

6.まとめ


・協議離婚の場合、離婚届を区・市役所に提出した時に親権者が決まる。
・調停離婚の場合、調停が成立した時に親権者が決まる。
・裁判離婚の場合、判決が言い渡されたときに親権者が決まるが、判決に至る前に和解が成立すると、その時に親権者が決まる。
・裁判離婚で判決が言い渡されても、夫が控訴すると、最終決着するまで親権者は決まらない。
・協議離婚・調停離婚の場合、親権者は夫婦の話し合いで決まる。
・裁判離婚の場合でも、夫が親権をあきらめれば、本格的な調査をせずに親権者が決まることが多い。
・裁判離婚の際、夫が親権を本格的に争う場合、家庭訪問・関係機関調査・子の心情調査といった本格的な調査を実施して親権者を決める。

 

 

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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(39)ー夫はこちらの家事不十分を指摘してきそうだが、大丈夫か?

2023.01.09更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

 

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.同居中、家事不十分を指摘されることは多かった


 特に夫が潔癖症だとか、異常に几帳面という場合には、一緒に生活しているときに、家事不十分を指摘されるケースは多くあります。例えば以下のようなものです。

・お前が作る食事は薄味過ぎて食べられない。

・お前が作る食事は栄養バランスが偏ってる。

・子供にお菓子ばかり与えるな、普段の食事が食べられなくなる。

・どうして合成調味料・化学調味料を使って食事を作るんだ。

・家中埃だらけで汚い。

・週末オレが掃除しなければ、ゴミ屋敷になっていたぞ。

・(掃除が行き届いていないので)ルンバの方がお前よりも役に立っている。

・専業主婦なんだから毎日洗濯くらいしろ。

・(子供が少し服を汚しただけなのに)どうして汚い服を着させているんだ、子供が可哀想だろう。

・大したことをしていないのに、どうして毎日子供を寝かしつける時間が遅いんだ

このような発言そのものがモラハラ気質を含んでいるのですが、様々に言われるので、あなたも自信を無くしてしまっているというケースも多いと思います。

 

 

3.毎日の家事・育児をしていれば特に問題がない


 夫側からの指摘では、「家事が雑」「あまりに不器用」など、あなたの家事の仕方等について不満を述べられることも多いのですが、よほど特殊な家事の仕方をしているのでなければ、特に、そのように指摘されたからと言って、こちらが不利になるということはありません。
 また、お子様が病気にかかってしまい、その看病があったとか、事情があって一時的に家事や育児が行き届かなくなることもあると思います。そのようなケースでも、事情があってのものであって、一時的なものであれば、そのことであなたが不利になるケースはほとんどありません。

 さらに、洗濯や掃除なども、毎日必ず実施しなければならないというものではありませんので、例えば、洗濯物が貯まりっぱなしで、それが何日も何日も続くといった特別な状況に至っていなければ、それほど気にする必要はありません。

 

 

4.より重要なのは、夫と妻とで比較した場合に、「どちらの方がより家事や育児に関わってきたのか」という視点


 たまに、監護者指定事件では、より分かりやすくするために、裁判官自身が「直近1年間でのお子様の育児の割合は夫と妻で何対何くらいの割合でしたか?」と質問してくることもあります。
夫側は、こちらの家事不十分をしきりに指摘してきますが、それよりも、夫と妻とでどのくらいの作業分担をしていたのか、どちらの方がお子様に関わっていたのかということの方が重要です。

 

 

5.家事不十分の証拠


 監護者指定事件では、よく、こちらの家事不十分の証拠として、リビングの散らかった状態の時の写真などが提出されることもあります。
 ただ、お子様が小さい年齢の時などには、どうしてもお子様の動きに気を取られて、片付けが後回しになってしまうこともありますし、そもそも、片付けなどは夫婦で分担すべきものであって、夫の側に対しても「写真を撮っている暇があったらあなたが片付けて下さい」というレベルの話と言えます。

 

6.家事を十分やった証拠


 

 よく私がご相談に乗っていると、「夫は私の家事が不十分だったと強く主張してくると思いますので、それに対抗するために、こちらがちゃんと家事をしてきた証拠を出せないものでしょうか?」と質問を受けることも多いです。

 日々の生活の中で毎日育児日記をつけて来たとか、お子様がまだ保育園に通っていて、その連絡帳を克明につけ続けてきたといった場合には、それらの育児日記や連絡帳は有力な証拠になります。

 ただ、それ以上に毎日家事をしっかりやってきたことの証拠を集めるということは難しいと思います(きちんと夕食を手作りしてきたということで毎日夕食の写真を撮影すると言っても、その写真全てを裁判所に提出するのはボリュームが多くなり過ぎてしまいますし、昼食や朝食の写真まですべて撮影するのかというとキリがないと思います)

 前述の通り、家事や育児については、あなたと夫のどちらの方が多く担当していたのかという視点の方が大事ですので、家事を十分やった証拠を必死に集めるという必要はないと思います。

 

 

7.まとめ


・同居中、几帳面な夫から様々な指摘がなされているケースは相当数ある。
・だからと言ってあまり自信を無くさなくても良い。
・より重要なのは、家事・育児で夫と妻を比較してどっちの方が分担してきたのかという視点(分担割合)である。
・自宅の散らかった写真などはあまり有力な証拠にはならない。

・逆に、こちらが家事をしっかりとやったという証拠を集めることも難しいことが多い。

 

 

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【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

2023.01.03更新

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親権に関する記事を作成してきましたが、58記事になりましたので、一覧でご覧になれるように、まとめサイトを作りました。ご活用下さい(現在第59以降も作成中でして、出来上がりましたら掲載して参ります)。

 

①【絶対に夫に親権を渡したくない(1)】親権紛争では何が重視されるか?ー重要な7個のポイント

②【絶対に夫に親権を渡したくない(2)】妻側の勝率は?

③【絶対に夫に親権を渡したくない(3)】手続きの進行に応じてどういう準備が必要か?

④【絶対に夫に親権を渡したくない(4)】連れ去りになってしまうケースとは?

⑤【絶対に夫に親権を渡したくない(5)】こちらが専業主婦だとどの程度不利になるのか?

⑥【絶対に夫に親権を渡したくない(6)】監護補助者の有無はどこまで重視されるか?

⑦【絶対に夫に親権を渡したくない(7)】親権紛争で家庭訪問は避けられないのか?

⑧【絶対に夫に親権を渡したくない(8)】親権紛争で子の心情調査は避けられないのか?

⑨【絶対に夫に親権を渡したくない(9)】こちらの体調はどこまで考慮されるか?

⑩【絶対に夫に親権を渡したくない(10)】夫が親権にこだわる思惑は何か?

⑪【絶対に夫に親権を渡したくない(11)】うちの夫は結構「育メン」なんだが大丈夫か?

⑫【絶対に夫に親権を渡したくない(12)】子供が不登校になっていることはどの程度不利になるのか?

⑬【絶対に夫に親権を渡したくない(13)】夫の児童虐待をどのように証明すればよいか?

⑭【絶対に夫に親権を渡したくない(14)】こちらの面会交流姿勢はどこまで考慮されるか?

⑮【絶対に夫に親権を渡したくない(15)】親権者はいつどのように決まっていくものなのか?


⑯【絶対に夫に親権を渡したくない(16)】証拠集めのポイント


⑰【絶対に夫に親権を渡したくない(17)】妻側であれば大した準備をしなくても勝てるのか?


⑱【絶対に夫に親権を渡したくない(18)】こちらも弁護士を立てるべきか


⑲【絶対に夫に親権を渡したくない(19)】面前DVや面前モラハラはどこまで重視されるか


⑳【絶対に夫に親権を渡したくない(20)】モラハラ夫はすごく外面が良いのだが大丈夫か?


㉑【絶対に夫に親権を渡したくない(21)】「子の監護に関する陳述書」の書き方のコツ


㉒【絶対に夫に親権を渡したくない(22)】審問や調査官面接に対してどこまで対策しておくべきか


㉓【絶対に夫に親権を渡したくない(23)】1回家庭訪問をして問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?


㉔【絶対に夫に親権を渡したくない(24)】「今後の監護計画」はどこまで重視されるか


㉕【絶対に夫に親権を渡したくない(25)】裁判所はこれまでの監護実績についてどのように認定するのか


㉖【絶対に夫に親権を渡したくない(26)】親権紛争で重視される「児童虐待」とはどのようなものを指すのか?


㉗【絶対に夫に親権を渡したくない(27)】子供へのモラハラはどの程度考慮されるか


㉘【絶対に夫に親権を渡したくない(28)】弁護士へのセカンドオピニオンの活用法


㉙【絶対に夫に親権を渡したくない(29)】夫から浮気を疑われていることはどこまで影響するか


㉚【絶対に夫に親権を渡したくない(30)】お子さんの年齢に応じた手続きの特徴


㉛【絶対に夫に親権を渡したくない(31)】調査報告書の重み

㉜【絶対に夫に親権を渡したくない(32)】関係機関調査って何だ?

㉝【絶対に夫に親権を渡したくない(33)】夫の方が経済力があるが大丈夫か?

㉞【絶対に夫に親権を渡したくない(34)】夫側はこちらの家事の不十分を指摘してきそうだが大丈夫か?

㉟【絶対に夫に親権を渡したくない(35)】夫側は「妻が子供を虐待していた」と主張してきそうだが大丈夫か?

㊱【絶対に夫に親権を渡したくない(36)】夫側は「子どもは妻に洗脳されている」と言い出しそうだが大丈夫か?

㊲【絶対に夫に親権を渡したくない(37)】別居直前、夫の子供へのご機嫌取りが凄かったが大丈夫か?

㊳【絶対に夫に親権を渡したくない(38)】子供の学校は転校した方が良いのか?

㊴【絶対に夫に親権を渡したくない(39)】夫は、こちら(妻)の飲酒や喫煙を指摘してきそうだが大丈夫か?

㊵【絶対に夫に親権を渡したくない(40)】子供が「パパとママ3人で暮らしたい」と言い出しそうだが大丈夫か?

㊶【絶対に夫に親権を渡したくない(41)】子供に手をあげてしまったのだが敗訴確定なのか?

㊷【絶対に夫に親権を渡したくない(42)】手続き中、普段の生活の中でどこまで神経を遣うべきか

㊸【絶対に夫に親権を渡したくない(43)】別居先が実家の場合、夫側にそのことは伝えた方が良いのか?

㊹【絶対に夫に親権を渡したくない(44)】児童相談所との関わり方

㊺【絶対に夫に親権を渡したくない(45)】警察との関わり方

㊻【絶対に夫に親権を渡したくない(46)】職業は影響するか?

㊼【絶対に夫に親権を渡したくない(47)】精神疾患はどこまで手続に影響するか

㊽【絶対に夫に親権を渡したくない(48)】最近夫は完全在宅勤務になっているが、こちらに不利になるのか?

㊾【絶対に夫に親権を渡したくない(49)】夫による連れ去り事案なので、こちらに有利に働くか?

㊿【絶対に夫に親権を渡したくない(50)】夫は同居中ささいなことでも録音など証拠を取っていたが大丈夫か?

51【絶対に夫に親権を渡したくない(51)】保育園・幼稚園の連絡帳の位置付け

52【絶対に夫に親権を渡したくない(52)】夫から「妻はひどい『しかりかた』をする」と指摘されたが?

53【絶対に夫に親権を渡したくない(53)】手続き中、子供の友達付き合いの関係で注意すべき点はあるか?

54【絶対に夫に親権を渡したくない(54)】夫がやたらと細かいことを主張してきているが、どこまで対抗すべきか

55【絶対に夫に親権を渡したくない(55)】子供の勉強は夫が主に見ていたが、夫に有利に働くか?

56【絶対に夫に親権を渡したくない(56)】子供の遊びの面等では、夫の方が熱心に対応していた場合、夫に有利に働くか?

57【絶対に夫に親権を渡したくない(57)】子供の習い事の面では、夫の方が熱心に対応していた場合、夫に有利に働くか?

58【絶対に夫に親権を渡したくない(58)】夫はどうして離婚したくないなどと主張するのか?

 

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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(38)ー夫の方が経済力があるが、大丈夫か?

2022.12.26更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

 

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

 

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

2.夫の方が経済力があるというケースは非常に多い


 夫婦共働きというケースでも、奥様の方が収入が高いというケースは少数で、旦那側の収入の方が高額だというケースの方が多いと思います。
 また、結婚を機に、仕事を辞めて、専業主婦をしているという場合には、あなた自身の収入はゼロ、もしくは、パート勤務なので、大した収入がないというケースも多いと思います。
 このように、夫側の方が経済力が高い場合、特に、あなたが専業主婦で、ほとんど収入が無いような場合、監護者を決める時に、どのように影響するのでしょうか。

 

 

3.同居中、夫から散々言われていたので不安


 特にあなたが専業主婦の場合には、同居中に、夫側から「生活力がないから、お前が育てていけるはずがない」とか「仕事を辞めてこんなに立っているんだから、誰もお前のことを雇ってくれるはずがない」とか、散々に言われているケースもあります。
 そもそも、あなたが専業主婦になったのは、結婚や出産といった出来事があって、夫側とも相談しての結果なので、これを責められる謂れはなく、夫の発言そのものがモラハラ発言と言えるものです。
 ただ、夫からそのように言われていると、今後のことが不安になるのもよく分かるお話ですので、専業主婦であることが不利に働くのかという視点も踏まえて解説していきます。

 

 

4.キーポイントは家計が維持できていること


 監護者指定事件で重視されるのは、別居後の家計が維持できていることです。
 例えば、実家に転居し、実家の支援を受けることで、お子様の生活費も含めて家計を維持できているようでしたら、そのことで、不利に扱われることはほとんどありません。
 また、今は、貯蓄を切り崩して生活しているという場合でも、貯蓄が少なくなった段階で生活保護を申請して、生活保護費で暮らしていく予定だということでも、そのことで家計を維持できるのであれば、それほど大きく不利になるケースは少ないです。

 

 

5.家計維持にあたっては、婚姻費用も考慮して良い?


(1)夫側から婚姻費用が支払われている場合
 現在夫側から任意に婚姻費用の支払いがあり、今後の支払も期待できるような場合には、このような婚姻費用も家計維持にあたって考慮して差し支えありません。
 ただ、あなたが、夫との離婚を希望する場合、離婚した後は、養育費しかもらえなくなりますので、養育費しかもらえなくても家計を維持できるのか、といった点は考慮しておく必要があります。その際、児童扶養手当や児童育成手当等、行政の支援が期待できるような場合には、どのような支援が期待できるのか、いくらぐらい貰えるのかといった点を確認しておくと、より安心かと思います。

(2)夫側から婚姻費用が支払われていない場合
 これは、夫側の勝手な言い分ですが、「勝手に出て行ったやつには一銭も払わない」といったことを言ってくる夫もいます。
 そうやって婚姻費用がなかなか支払われない場合には、一旦は、婚姻費用の支払いが期待できないことを前提に家計を維持できるかを確認する必要があります。
 もちろん、婚姻費用は夫側に支払い義務がありますし、いずれは支払わなければならないものなのですが、現段階で支払われていないという場合には、「今は、今月分の婚姻費用も入ってきていませんが、いずれ、今月分も後から払われるから、その後払い分も考慮して下さい」と主張しても、現実に「今」あなたの手元に入ってきていない収入なので、家計維持にあたって考慮することは難しいです。

 

 

6.いつまでに就職すればよいか?


 たまに監護者指定等で有利に話を進めたいということで、就職活動に熱心に取り組んでくださる方もいます。
 もちろん、あなた自身がしっかりと稼いで、家計の状況がもっと良くなるようであればプラス材料にはなります(但し、前述のように現状でも家計を維持できているのであれば、あまり無理をする話ではありません)。しかし、一つ気を付けなければならない点があります。
 それは、就職活動や仕事をすることによって、お子様の世話や家事が疎かにならないかという点です。
 監護者指定事件では、現在のお子様に対するケアが行き届いているかどうかという点を重視することが多く、あなたが就職しているかどうかという点よりも重要性が断然高いです。
 そのため、就職活動や業務開始に伴って、お子様へのケアが疎かにならないようにして下さい。

 

 

7.将来の教育の充実等は、そこまで重視されない


 夫の方が経済力がある場合には、夫側から、「自分が育てていくのであれば、私立の小学校に入学させ、小学校時代から、遠足で海外に行かせたり、小学校高学年からは英語学習にも力を入れ、グローバルな教育を受けさせられる」というように、教育面で充実させられるといったことが主張されることがあります。逆に、あなたの元では、小学校受験や中学校受験をするだけの費用も出せないといったことを批判してくるのです。
 確かに、経済力の差がある場合、ある程度教育を受けさせる資金面での差は否定できません。
 ただ、裁判所が重視するのは、これまで誰がお子様の面倒を見て来て、今後もお子様のケアをしっかりと行っていくことができるのか、という点でして、教育を充実させられるかどうかといった点は「二の次」というように考えることが多いです。

 

 

8.お子様も充実した教育に期待してしまっている場合


 同居中、あまりに夫側がバラ色の教育のように話をするので、お子様の方も、詳しいところは分からないまでも、そのような「バラ色の教育」に期待してしまうというケースもあります。
 ただ、お子様の年齢からして、その「バラ色の教育」の詳しい内容が分からないまま、「なんとなくパパが言ってたから、そっちの方が良いと思っていました」という程度の話であれば、そのことが影響することはほとんどありません。
 また、お子様がもう中学生や高校生で、そのような教育に期待している面があったとしても、普段の生活面では、母親であるあなたとの生活でないと、生活が成り立たないと考えているのであれば、やはり、教育面よりも普段の生活面の方が重視されます。

 

 

9.まとめ


・妻側よりも夫側の方が経済力があるケースの方が多い。
・だからと言って、それだけで夫側が有利になるというわけではない。
・むしろ、普段の生活のケアを夫と妻どちらの方が担えるのかということの方が重要なので、経済面は「二の次」とされることの方が多い。
・経済面で重視されるのは、こちらの家計が維持できているかどうか、である。
・あまり就職を焦って、お子様へのケアが疎かにならないよう注意が必要である。
・現に婚姻費用が支払われているのであれば、婚姻費用が支払われることで家計が維持できていれば、それで差し支えない。
・お子様が将来の充実した教育に期待していても、普段の生活の方が重要性が高い。

 

 

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夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(37)―関係機関調査ってなんだ?

2022.12.19更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.関係機関調査って何だ?


 関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることを言います。通常は、家庭裁判所調査官がその関係機関まで直接足を運んで話を聞くという形をとります。
一般的に関係機関調査の対象になるのは、①現在お子様が通っている保育園・小学校、②お子様がメンタルケアなどを受けている場合には、通院している病院、③児童相談所が関わっている事件の場合には、児童相談所等となります。

(1)関係機関調査の位置付け
 児童相談所が深く関わっている事件の場合、お子様への虐待の程度や頻度、虐待親の危険性等の判断にあたって、児童相談所の見解は非常に重要になりますが、①児童相談所が関わってはいるが、かかわりが薄い場合や、②児童相談所が全く関わっていない場合などでは、関係機関調査の重要性は、そこまで高くないことが多いです(家庭訪問やお子様の意思確認の方が、格段に重要性が高いです)。
 要するに、普段の学校での生活に問題等がないかを確認するといったものですので、あまり関係機関調査の結果を心配し過ぎない方が良いと思います。

(2)各関係機関調査ごとの特徴等
ア 保育園・小学校の調査
 保育園や小学校の調査は、現在お子様が通っている保育園・小学校の調査を行うことが多く、別居直前の保育園(転園前の保育園)・小学校(転校前の小学校)の調査までは行わないことの方が多いです。
 一般的には、家庭裁判所調査官が、その保育園・小学校まで足を運び、保育園ですと担任の保育士と園長先生から話を聞く、小学校ですと担任教師と教頭先生(又は校長先生)から話を聞くという形がオーソドックスかと思います(但し、保育園によっては、「うちは書面での回答しかしない」という方針のところもあって、その場合には、調査官が書面で質問事項を送り、保育園から書面で回答が来るということになります)。
調査の際、調査官は、お子様の普段の保育園・学校生活の様子(積極性や普段の態度、他の児童とのトラブルの有無・内容、宿題など提出物や授業準備の状況)や、小学校の場合、学校成績等を尋ねることが多いです。
 このような調査に先立って、あなたまたは夫側から保育園の連絡帳コピーや小学校の通知表コピーなどを事前に裁判所宛に提出し、調査官もある程度も事前に情報を得た上で、調査に臨むことが多いです。

イ 病院の調査
 ここでの病院の調査というのは、お子様が現状もメンタルケア等で病院に通院している際に、その病院医師から調査官が事情を聴くというものです。
 たまに、夫が過去に心療内科等への通院歴がある際に、こちらから、その病院への調査を希望する場合もありますが、裁判所側は、まず、夫側から診断書を提出させ、診断書で症状等が把握できるのであれば、それ以上に調査まではしないケースがほとんどだと思います。
 お子様の病院への通院期間が長い場合、調査の事前準備として、カルテを提出したり、または、主治医の意見書を提出するケースが多いと思います。このように事前にある程度の情報を把握した上で、調査を実施するのです。
 その後の対応は、主治医がどこまで協力してくれるかにもよるのですが、多忙な医師の場合、調査官が来訪して直接話をする時間をとることが難しいということで、電話での事情確認にとどめるケースもあります。
 なお、病院への調査の場合、カルテのコピー、主治医の対応、いずれも、費用が発生するケースも多いです(要するに、その医師に対して手間賃を支払うということです)。費用負担について両当事者間で話し合いが円滑に進めばよいのですが、円滑に進まない場合には、病院への調査(専門用語では「医療機関調査」などと言ったりします)をどこまでどのように実施するかに影響を及ぼすケースもあります。

ウ 児童相談所への調査
 お子様の関係で児童相談所が関係している場合、基本的には、家庭裁判所調査官の調査を実施していくことになります。
 ただ、あなた又は夫側が児童相談所に事情を話して相談しただけ(要するに、児童相談所としては調査等を一切実施していない)といった場合には、調査官の調査までは行わないこともあります。
 児童相談所は、調査官からの質問をまとめた書面を受け取り、書面で回答するという対応が多いですが、各児童相談所で対応が統一されているわけではないようで、調査官と直接面接して事情を話してくれることもあります。
 また、調査に先立って、あなた又は夫側から児相側に個人情報の開示申請を行い、その資料を事前に提出するよう裁判所から求められることもあります。

 

 

3.関係機関調査の順序


 関係機関調査を実施する場合、同時期に実施してしまうことが多いのですが、家庭訪問との先後では、①関係機関調査を早急に実施する場合と②家庭訪問と同時期に実施する場合とがあります。
①の進め方にするか、②の進め方にするかは、裁判官によっても異なるのですが、一般的には、②のパターンが多いかと思います。

 

 

4.まとめ


・関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることである。
・関係機関調査としては、保育園・小学校、病院、児童相談所などが対象になることが多い。
・虐待の事案の場合、児童相談所への調査の重要性は非常に高いが、そうでない場合、関係機関調査はそこまで重要ではないことの方が多い。
・関係機関調査は、関係機関ごとに特徴がある。特に医療機関調査は、費用が発生する可能性がある点で注意が必要である。
・関係機関調査のタイミングは家庭訪問と同時期に行うケースが相対的に多い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(36)―調査報告書の重み

2022.12.05更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.調査報告書って何だ?


(1)調査報告書とは?
 調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものです。調査報告書は、家庭裁判所調査官が担当裁判官宛に報告するというスタイルを取っていますので、その内容を確認するには、弁護士が裁判所にて調査報告書のコピーをとってくる必要があります。

(2)調査報告書作成の流れ
 調査報告書がどのようなものなのかについては前述にて説明した通りですが、この説明だけでは、まだ今一つ理解しにくいと思いますので、時系列に沿って、より具体的にご説明しますと以下の通りです。
①裁判所の審判廷にて、裁判官が調査内容を宣言(調査発令などと言ったりします)
 合わせて次回審判期日を設定

②期日間で、調査官が必要な調査を実施

③調査官が調査報告書を書き上げて裁判官に報告

④弁護士がコピーをとって、あなたや夫側も調査報告の内容を把握

⑤調査報告の内容を踏まえて、次回審判期日で今後の進め方等を議論

(3)調査報告書はどのように章立てされているの?
 前述の通り、調査報告書は、期日の間に調査官が実施した調査経過や結果をまとめたものなのですが、監護者指定事件ですと、ボリュームが多いものですと30ページ近くに及ぶものもあって、最初から最後まで順に通読していると、概要は分かったけれども、詳しいところまでは理解が難しいということもあります。
 実際上、ボリュームが多い調査報告書でも、章立てがされていまして、特にあなたの関心が強い部分を何度か読み返すといったことをすると、より理解が進むと思います。
 具体的な章立ては、事件の内容によって順番が変わったりもするのですが、大きくは、以下のような章立てとすることが多いように感じます。
 なお、調査報告書では「第1章」「第2章」といった書き方はせず、ページトップに


 監護の経過


といった表記をして、このページ以降は「監護の経過」の調査結果を記載しているということが分かるようにしてあります。逆に言いますと、調査報告のページトップのタイトルを見れば、このページには何についての調査結果が書かれているのかが分かるようになっています。

 具体的な章立て(オーソドックスなパターンであって、タイトルの付け方や順序は調査官によって千差万別です)は以下の通りです。
①調査経過
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、調査官がいつ何を調査したのかということが分かる部分です(「令和4年4月10日 母及び母手続代理人弁護士と当庁において面接」というように端的にいつ何をしたのかだけが記載されています。

②関係者一覧
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、当事者やお子様、親族等を簡単に記載しています。稀に、調査官によっては、関係者一覧を省略するケースもあります。

③監護の経過
 これまでの育児における両当事者のかかわり方などを記載しています。お互いの言い分が食い違っている場合には、「父はこう説明した」「母の説明はこうであった」といった形で記載してあります。

④当事者双方の状況
 お子さんのことではなく、両当事者の現在の生活状況や心身の状況、経済状況等を記載しています。

⑤○○に対する当事者双方の主張
 どちらかの親からお子様に対する虐待が疑われるケースやお子様の障害や疾患等との付き合い方でお互いの言い分が大きく食い違っているような場合には、別に章立てして、詳しくお互いの言い分を記載することもあります。

⑥現在の未成年者の状況
 現在のお子様の登校(登園)状況、生活ぶり、面会交流の状況等について記載してあります。この箇所の記載は、現在お子様の育児を担っている奥様側の陳述内容をかいつまんで記載するケースが多いです。

⑦関係機関の調査結果
 調査官が小学校・保育園、病院や児童相談所から見聞きした内容が記載されています。なお、児童相談所等からの回答が書面で回答された場合には、調査報告書の末尾に回答書が添付されているケースが多いです。

⑧家庭訪問の結果
 調査官が、あなたの家を家庭訪問した際の様子等が記載されています。

⑨未成年者との面接結果
 調査官がお子様と1対1で話をした際の様子等が記載されています。

⑩調査官の意見
 今回の調査結果を踏まえ、今後どのような進行が望ましいといったことが記載されています。今後の手続の進め方を見極めるにあたって、最も重要な記載箇所です。
 このように「調査官の意見」が最も重要な記載箇所なので、当職は依頼者に対して、調査報告書はボリュームがあるので、最初から順番に読むのではなく、まず、最後の方の「調査官の意見」の箇所を先に読んでみて下さい、とお伝えすることもあります。

 

 なお、上記の章立ては、調査官が期日間に関係機関調査や家庭訪問、子の意向調査といった調査を一挙に進めてしまうケースでの章立てです。事案によっては、まずは、関係機関調査だけを先行して実施するというケースもあり、その場合には、調査報告書には関係機関調査の結果だけが記載されます。

 

 

3.調査報告書については、明確に結論が書かれてしまうケースが多い


 前述の通り、調査報告書は、家庭裁判所調査官が裁判官に対して結果報告するレポートです。このように聞くと、裁判官がそのレポートも参考にして結論を下すように捉えられがちですが、実際はそうではありません。
 前述の「調査官の意見」の章の中に結論、要するに、父母のどっちが監護者としてふさわしいといったことまで書き込まれてしまっているケースが大半です。
 そのため、それを受け取った裁判官は、よほどの事情がない限り、調査官の意見の通りに審判を下してしまいます。
 このように、調査報告書は非常に重みのある書類と言えます。

 

4.こちらの資料の準備


 前述の通り、調査報告書の中にほぼ結論が書きこまれてしまいますので、こちらの資料の準備も、調査着手前にほぼ出し尽くしてしまう必要があります(要するに、「調査報告書が出た後に、資料の補足などをしよう」というように悠長に構えていてはいけないということです)。
 このように監護者指定事件では、調査発令のタイミングを見極めながら、調査発令前、または、調査発令直後まで(遅くとも、調査官が本格的な調査に着手する前まで)に資料を出し尽くしてしまう必要があります。

 

 

5.まとめ


・調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものである。
・調査報告書はボリュームが多くなるケースも多いので、各章立てを意識して読み解くと理解が深まる。
・調査報告書の中でも「調査官の意見」の章が最重要である。
・調査報告書の中の「調査官の意見」の章には、父母のどちらが監護者としてふさわしいといった結論まで明記されるケースが多い。
・そのため、資料の提出は調査官の調査着手前までに出し尽くしてしまった方が良い。

 

 

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