弁護士ブログ

モラハラ夫との別居準備(2)―そもそも、「別居」という選択をすべきか

2022.04.01更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。なお、>>「モラハラの連鎖を断ち切る!!」モラハラ被害女性のための総合サイトはこちら<<になります。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.「別居」と言っても大まかに二通りの「別居」がある


 「別居」と一口に言いましても、大まかには、以下の二通りがあります。
  ①離婚を決意して、もう自宅には戻らないという意味での別居
  ②まだ離婚を決意しきれておらず、冷却期間としての別居
 以下では、この二通りについて、それぞれ詳しく解説していきます。

 

 

2.離婚前提での別居


 私のところにご相談に来られる方は、既に離婚の決意を固めてご相談に来られる方も多いですが、まだ悩んでいるという方も相当数います。
 そして、「秦弁護士はモラハラに詳しいと聞いていますので、私が離婚したほうが良いか教えて下さい」とか「このような状況だと離婚したほうが良いと思いますよね?」と質問を受けることも多いです。
 ただ、離婚するかどうかはあなた自身の人生に関わるお話ですので、私が決めることはできません。
 そうはいっても、モラハラ夫と離婚したほうが良いのかどうかは、大きく以下のような検討事項がありますので、参考になさって下さい。

 

 

3.モラハラの重症度?


 離婚するかどうかはあなた自身が決める事であって、私で決められる話ではないとお話しますと、「皆さんどうなさっているんですか?」とか「私のケースって皆さんのケースと比べてどうなんでしょうかね?」といった再質問を受けることも多いです。
 そのため、私のご相談に来られた方には、おおよそのモラハラ被害の重症度をお話することもあります。ただ、初回の無料相談ですと、時間が限られているというところもありますし、正確な数値化が難しいというところもありますので、「100点満点の中での○○点です」といった点数化まではしていません。
 要するに、深刻なものだと感じたときには、私の方からも、「それなりに深刻なものだと感じます」とお伝えしますし、逆に、そこまで重くはないと感じたときには「残念ですが、当事務所にいらっしゃる方はもっと重い方の方が多い印象です」といったご回答をすることもあります。

 あくまで重症度の目安をお伝えするというイメージになります。

4.「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」というわけではない!


(1)必ずしも相関関係にはないこと
 ここまで説明をしますと、皆さん、「私の場合重症なのかしら?」ということを気になさると思います。そして、「重症だと言われたら別れなくっちゃ」と考える方も多いと思います。
 ただ、そこまで単純に割り切れる話ではありません。
 弁護士の目から見ても重症と思われるケースですと、率直に言って同居生活を続けていくことはオススメできませんので、私の場合、目の前の相談者の方には「重症と思われますので、同居を続けることはオススメしません」と率直にお伝えすることが多いです。

 

 しかし、それでも離婚まではしたくないという方も相当数いらっしゃるのも事実です。大きな要因としては以下のようなものがあると思います。
①その人の感じ方の問題
②お子様のことを考えての結論
③今後の生活の問題
以下、それぞれについて詳しくご説明します。

 

(2)その人の感じ方の問題
 より分かりやすく言いますと、許容性とか寛容性といったお話になります。
 どんなに言われようと受け流すことができたり、逆に、必要な範囲で言い返すことができるので、離婚という最終決断まではしなくてもやっていけるといったことです。
 このことは逆も然りでして、重症とまでは言えないケースでも、そのことで、気に病んでしまっているとか、心身に不調が生じているというような場合には、今後の同居継続は見直した方が良いかもしれません。

 

(3)お子様のことを考える
 片親にすると子供に不憫であるといった話です。このことは、お子様が旦那様にどのくらい懐いていて、また、旦那様の方もお子様とどのように接しているのかといった点も大きく影響すると思います。
 ただ、最近は離婚される方も増えてきていますので、片親だと子供が差別されるということは以前よりもかなり減ってきているように感じます。
 また、モラハラやDVによってあなたの心身に不調をきたしているようなケースですと、これ以上我慢はしない方が良いとアドバイスさせていただくことも多いです。

 

(4)今後の生活のこと
 いざ離婚したとしても、今後の生活に大きな支障を来すようであれば、簡単に離婚できないということもあろうかと思います。
 金銭的なお話は、弁護士としても色々とアドバイスできるところでもありますので、必要に応じてシミュレーションさせていただくこともあります。
 なお、都内で部屋を新たに借りることは経済的に厳しいということでご実家を別居先に選択する方も多くいらっしゃいます。

 これらの点を踏まえて、じっくりとモラハラ夫と離婚すべきか、離婚を目指して別居すべきかを検討してみて下さい。

 

 

5.離婚を前提としない別居


 前述のような要素を考慮して、あなた自身モラハラ夫と決別すると固く決意できれば良いですが、決めきれないということもあると思います。
 そのような場合には、無理に離婚を急ぐ必要もないと思いますので、一旦別居という選択をする人もいます。

 離婚するか決めきれていないけれども別居するという選択には以下のような意義等があります。
  ①あなた自身の体調が悪く、一旦離れて体調を回復したい。
  ②モラハラ夫のひどい行動・言動があったので、反省させるために一旦別居する。
  ③夫婦喧嘩が絶えず、自宅にいると冷静に考えをまとめられないので、冷静に考えるために別居する。
  ④自宅という場所から一旦抜け出して、これまでの生活を客観的に見つめ直すために別居する。
  ⑤モラハラ夫の本当の気持ちを確かめるために別居する。(例えば、夫婦喧嘩の時などに、モラハラ夫は「もう離婚だ」ということを口にするが、それが真意なのかを確かめるために一旦別居するといったケースです)

 なお、夫婦としての再生の道を諦めていないのでしたら、別居ではなく、モラハラ夫の両親その他の親族等にも間に入ってもらって話し合いをするとか、夫婦カウンセリングを受けるという選択をする方もいますので、そちらも検討してみて下さい。

 

 

6.まとめ


・「別居」には、大まかに離婚前提の別居と、離婚するか悩みながらの別居の二通りがある。
・「重症イコール離婚」、「重症ではないイコール離婚しない」という相関関係では必ずしもない。
・離婚前提の別居に踏み切るかは、①夫のモラハラが許容限度内なのか、②お子様のこと、③今後の生活の経済的問題等も考慮に入れて検討する必要がある。
・離婚するか悩んでいる時点で、一旦別居するという選択もある。
・ただ、離婚するか悩んでいる場合、「別居」ではなく、親族等に間に入ってもらって話し合いをしたり、夫婦カウンセリングを受けるといった手段もある。

 

関連記事


>モラハラ夫との別居準備(1)ー別居先は近場が良いか遠くが良いか?

>モラハラ夫との別居準備(3)―別居前にモラハラ夫にどこまで話をしておいた方がよいか

>モラハラ夫との別居準備(4)―別れ話をした時のモラハラ夫の反応は?

>【弁護士が解説】これってモラハラ?(夫婦の間でどこまでが許されるのか)

>【弁護士が解説】モラハラ証拠の決定版はこちら

>【弁護士が解説】別居から離婚の話し合いで決めなければならない全事項

>【弁護士が解説】別居後、離婚の話し合いがまとまらない場合に踏むべき全手順

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力フォームで簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(14)】こちらの面会交流姿勢はどこまで考慮されるか?

2022.03.21更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、妻側の面会交流姿勢にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.面会交流姿勢は、親権紛争の際と監護権紛争の際とではもつ意味合いが異なる。


 一般的に監護者指定の判断要素と親権者の判断要素とはほとんど異ならないと解説されることが多いです。
 監護者というのは、親権という権利の中の、お子さんの身の回りの世話等を行う権利を切り出したような権利というイメージですので、両者の判断要素が似通ってくるのは当然と言えば当然です。
 しかし、実務的には、監護者指定審判等では、妻側の面会交流姿勢がかなり重視されている印象でして、裁判官から直接、面会交流を強く打診してくること等も多くあります(もちろん、裁判官からのこのような打診を拒絶したからと言って、それだけで監護者の指定が覆るということはあまりないのですが、裁判官から直接打診されると断りにくいのも事実です)。
 これに対して、親権の指定の場面では、裁判官が直接面会交流を打診してくるようなケースは稀で、実務の運用上、大きな差があるという印象です。

 

 

3.親権紛争における面会交流姿勢の持つ意味合い


 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 ただ、この7個の要素の中でも、優先順位はあり、面会交流姿勢は、優先順位としては低めになると思います。
 もちろん、面会交流姿勢以外の判断要素において夫婦の実力が伯仲するというケースはあり、そのようなケースですと、面会交流姿勢の持つ意味合いは相対的に高くなりますが、そのような特殊なケースでなければ、やはりほかの要素の持つ意味合いの方が高いです。

 

 
4.それでは、理由もなく面会交流を拒否して良いのか?


 ただ、そうだからと言って理由もなく面会交流を拒否して良いというわけではありません。
 お子様自身がお父さんである夫と会いたいと切望しているような場合にまで、これを制限することが子の福祉にかなうとは思えません。
 また、面会交流できない期間が長期化していくと、夫側も態度を硬化させていき、紛争の長期化を招きかねません。
 そのため、お子様自身、夫との面会交流を希望しており、これを拒否する合理的な理由がなければ、面会交流には応じた方が良いことの方が多いと思います。

 

 

5.まとめ


・監護者指定事件では、面会交流姿勢は事実上重視される傾向だが、親権者指定では、それほど大きく重視されることはない。
・少なくとも親権を判断する際の7個の考慮要素の中では相対的に重要性は下がる。
・そうはいっても、理由もなく面会交流を拒否することは望ましくない。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース
 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(13)】夫の児童虐待をどう証明すればよいか?

2022.03.14更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、児童虐待にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.「児童虐待」の位置付けの確認


 たまに、私のところにご相談に来られる方の中には、夫の児童虐待をしっかりと証明できれば親権を確実に獲得できるので、児童虐待の証明だけに全力を注ごうと考えている方を見かけます。
 確かに、児童虐待をしっかりと証明できれば、親権の争いで大きくリードできることは間違いないのですが、親権の争いの中では、現在の監護状況と別居前の監護実績といった点も非常に重視されます。そのため、児童虐待にばかり目を奪われて、他の対策が疎かにならないよう注意する必要があります。

 

以下では、どのような証拠が児童虐待の証明として効果的なのかを解説していきます。

 

3.一番強力なのは、お子様の診断書や怪我の写真


 お子様が重大な児童虐待に曝されており、夫がお子様に対して直接殴る蹴るの暴力を加えてきたような場合には、怪我をした際の診断書や怪我の写真は、児童虐待を直接証明する証拠になります。

そして、このような診断書や痣の写真等があれば、夫側の直接暴力を証明できますので、親権争いにおいて決定的に有利になるケースも多いです(但し、痣と言っても、写真だと判別しにくいというような場合には、決定的とまでは言えないケースもあります)。

 

 

4.その次に確実なのは録音データ


 

夫側がお子様に対して手を上げるものの、怪我をするほどのものではないとか、直接手を上げないけれども、あまりにも叱り方が高圧的でお子様も怖がっているというような場合には、その様子を録音した録音データが確実な証拠になります。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。
(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなた自身がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、お子様がどのように反応したのか、あなたが間に入ったのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかったと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、お子様の反応やあなたの対応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。

 

5.LINEやメール


 

 例えば、お子様が既に自身のスマートフォンを持っていて、夫がお子様に対して直接メールにて中傷する発言をしてきたというような場合、有力な児童虐待の証拠になり得ます。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分児童虐待の証拠にはなります。

 ラインやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやラインをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、ケースによってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやラインをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。ラインのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやラインの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、お子様によっては、実の父親からの中傷メールやLINEはすぐに消してしまうということも多いと思います。あまり期間が経過してしまっていると復元は難しいと思いますが、消してしまったデータの中に、決定的なフレーズがあったというような場合には、本格的に復元を検討してみたほうが良いケースもあります。

 

6.物の被害


 夫がお子様めがけて物を投げつける場合はもちろん、お子様が見ている目の前で壁に向かってお子様のものを投げつけて壊すといったことも当然児童虐待に該当します。
例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性がありますので、証明できる範囲に限界があることには注意が必要です。

 

7.警察署・子ども家庭支援センター等への相談記録


 夫からの児童虐待に悩まされてきた場合、その間に警察署、子ども家庭支援センターや児童相談所にご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。なお、警察署・子供家庭支援センターの記録は、一般的には警察・センター側の応答も開示されるケースが多いのですが(但し、ところどころ黒塗りにされることも多いです)、児童相談所への相談記録は、基本的に、こちら側の発言内容しか開示されず、児童相談所担当職員の応答内容は開示されません。この点には留意する必要があります。

 なお、児童虐待の証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、子ども家庭支援センターへの相談記録ですと、育児の悩みがメインで記載されていて、児童虐待の件があまり記載されていないこともあります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ警察に相談するはずないんだから、相談をしているだけで、児童虐待の証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「警察に相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 

8.証言


 

 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、下の子が虐待を受けている様子を、上の子が直接目撃していて証言してくれるという場合には、直接の目撃証言になりますが、下の子が虐待を受けている様子を、あなたが直接目撃していたが、それをあなたのご実家に相談したという場合、ご実家の証言は直接の目撃証言にはなりません。
 また、虐待を受けた当事者であるお子様本人も、虐待を受けていた当時すでに小学校高学年だったというような場合には、その証言は直接の証言になり得ます。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の児童虐待を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 

9.児童虐待の証拠が少ない、ほとんどないという場合


 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。
 その場合には、あまり児童虐待の点に固執せずに、監護実績等他の点で親権を確実に獲得できるよう努力したほうが良いと思います。

 

10.まとめ


・児童虐待は親権者を決めるにあたって重要なポイントではあるが、それだけで親権者が決まるわけでもないので、他の判断要素を疎かにしてはいけない。

・児童虐待の強力な証拠としては、お子様の診断書や写真が強力である。

・録音データは虐待の有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。

・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、誹謗中傷発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。

・警察署や子ども家庭支援センター、児童相談所等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。

・物の被害を写した写真は、直接虐待の証明にすることは難しいケースもある。

・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。

・虐待の証拠が少ない場合には、他の親権の重要要素で勝負したほうが良いかもしれない

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(12)】子供が不登校になっていることはどの程度不利になるのか?

2022.02.28更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、お子様の不登校にスポットライトを当てて解説していきます。
 なお、お子様の不登校については、①お子様が同居中から不登校だった場合と、②お子様が同居中は不登校ではなかった場合とで状況が異なりますので、場合分けして解説していきます。

 

 

2.お子様が同居中から不登校だった場合


 お子様が同居中から不登校だった場合、その責任があなたの方だけにあるというケースはごく少数だと思います。
 夫が頻繁にモラハラ発言に及ぶような場合、あなたに対して「専業主婦なんだから、子供を学校に行かせられないなんてありえない」とか「学校に行けないなんて子供を不幸にしている」とか色々と言ってくるかもしれませんが、逆に、夫側は奥様に育児を任せっきりにしていたので、このような事態になっているので、奥様だけの責任とは言えないと思います。

 ただ、同居中から不登校だった場合でも、別居後徐々に学校に行けるようになった方が、お子様のためになることは間違いありません。
 そうはいっても、お子様が学校に行くという状況を無理に作り出すことは、かえってお子様の負担を増やすことにもなりかねませんので、スクールカウンセラーやお近くの子供家庭支援センター、療育施設や小児心療内科等にもご相談されながら、お子様にとって最も良い方法を模索していくことが重要かと思われます。

 

 

3.お子様が同居中は不登校ではなかった場合


(1)どのように対策すべきか
 お子様が同居中は不登校ではなかったのに、別居後に不登校になったような場合、特に夫側からは、奥様の育児についての批判を強めていくと思いますし、親権獲得にあたっても重要なポイントになりますので、不登校になった原因をしっかりと究明していくことが重要になります。
 特に、夫との同居中は、家族全員が夫に従わざるを得ず皆が窮屈な生活を送っていたというような場合、同居中は、学校に行かないと夫から何を言われるか分からないという強迫観念から登校していたが、いざ別居すると、そのような強迫観念から解放されたが、他方で、力が抜けてしまって登校できなくなってしまうとか、同居中の心理的ストレスの影響が別居後に大きく表れるというケースもあります。

 同居中は登校していたのに、別居後不登校になったというような場合には、同居中の心理的ストレスが非常に大きかったというケースも多いので、スクールカウンセラーやお近くの子供家庭支援センター、療育施設や小児心療内科等にもご相談されながら、丁寧に不登校の原因を究明していく必要があります。
 このような原因究明の結果、お子様の不登校の原因が同居中の夫からの言動に起因するような場合、あなたの責任ではありませんので、不登校そのものが親権獲得にあたりあなたに不利になることはほとんどないかと思います。

(2)具体的にはどのような例がある?
 同居しているときは、学校に登校できていたのに、別居してから学校に登校できなくなってしまったケースとして、私自身が担当したケースとしては以下のようなものがあります(もちろん、実際にはもっと様々なケースがあると思いますが、私自身が担当した事件としての事例として以下のようなケースがあるという意味です)。
①夫側が非常に厳格な人間で、同居中は夫の目もあって不登校など許されるような雰囲気がなかったが、別居すると緊張の糸が切れたように登校できなくなってしまった。

②夫は妻に対して事あるごとに暴言を吐いており、妻が家庭内で一番立場が下であった。別居後も、そのような立場関係が引き継がれてしまい、子供が妻の言うことを全く聞かなくなってしまって登校も拒否するようになった。

③元々学校のカリキュラムが厳しく、お子様に合っていなかったが、別居後にその問題が一層顕在化して、不登校になった。

④別居後も新型コロナウイルス感染予防の観点から学校のオンライン授業期間が長く、自宅での生活が乱れてしまったせいで、いざ通常授業が始まっても登校できなくなってしまった

 

 

4.まとめ


・お子様の不登校の問題については、同居中から不登校だったかどうかが一つの大きなポイントである。
・同居中から不登校だった場合、別居後も不登校が続いても、そのことだけで親権者として不適格ということにはならない。
・同居中は登校していたのに、別居後不登校になった場合には、不登校になった原因の究明が非常に重要になる。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(11)】うちの夫は結構「育メン」なんだが大丈夫か?

2022.02.21更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「夫側が育メンの場合」にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.育児負担がほぼ夫婦対等という場合、徹底的な準備が必要


 一概に育メンと言っても、実際には夫側の関わり方は多様でしょうし、その割合にも差が大きいのが一般的かと思います。
 例えば、週末の土日のどちらかは、夫側が食事の支度も含めてすべて担当するという関わり方であったり、共働きなので平日も含めてほぼ育児負担は対等だというケースもあると思います。
 特に、共働きで、かつ、平日も含めて育児負担がほぼ対等だというケースですと、親権について夫側が強く争ってくることも想定して、あなたの方でも徹底的に準備していく必要があります。
 なぜなら、別居前の育児の負担度合いが、親権者を決めるに当たって最も重視される要素だからです。

 ただ、具体的に何をどのように準備するのかという点を解説する前に、今あなたが置かれている状況によって、勝率が大きく変わってきますので、その点についてまずは解説します。

 

 

3.あなたが置かれている立場(あなたが現在お子様を育てているのかどうか)


(1)あなた自身がお子様を今育てているケースの場合
 以下は、あなた自身が現在お子様と暮らしており、お子様自身もその暮らしに大きな不満を持っていないという前提でのお話になりますが、しっかりと基本的な準備を整えておけば、勝訴の可能性はかなり高いと考えてよいと思います。

そして、この場合の基本的な対策の最重要ポイントになるのは、この現状の監護状況を極力長期化させることです。もちろん、お子様自身が夫側との生活を強く望んでいるのに、無理やりこちらとの生活を長期化させるようなことはしてはいけませんが、お子様自身も望んでいるようでしたら、現状の状況を長期・安定化させることは、お子様のためにもなります。
特に、夫側は監護者指定審判の申立をしてきたり、面会交流の機会を利用して、連れ去りやお子様への圧力を強めるといったことも考えられますので、夫側の対応に応じて、こちらも対策を練る必要があります。

 

(2)あなたがお子様と一緒に生活していない場合
まず、あなたが現在お子様を育てていない状況になった経緯が非常に重要になります。大きく分けると、①旦那側がお子様を連れ去ってしまったケースと、②(体調や仕事その他の理由で)あなた自身が旦那側にお子様の監護を委ねたケースの二つに分かれると思います。

ア 旦那側がお子様を連れ去ってしまったケース
 この場合、旦那側がお子様の育児を一手に担うという状況が長期化することを防止する必要があります(この状態を認めると、親権紛争で大きく不利になってしまうため)。
 そのため、この場合には、離婚や親権の紛争の前に、まずは、監護者指定・子の引き渡し審判の申し立てをしていくことになります。
 要するに、離婚が成立する前には夫婦がお子様の共同親権をお互いに持っていますが、その中でもお子様の実際の身の回りの世話をする方(監護者)を決めるよう裁判所に求めるのです。
 この監護者指定手続きで勝訴することができれば、今後の親権紛争でも一歩リードすることができます。
 監護者指定手続きの勝率については、①別居前の監護状況(要するに、夫婦どちらがメインで子育てに関わってきたのか)、②連れ去りの経緯、③お子様の意思等を考慮して決定しますので、一概にあなたが有利と言い切れるものではありません。
 いずれにせよ、監護者指定審判を申し立てるにあたっては、弁護士はほぼ必須になりますので、弁護士に頼む前に、あなたの具体的な事情を説明して、勝率等を尋ねてみたほうが良いと思います。

イ あなた自身が旦那に育児を委ねたケース
 この場合には、①あなたが育児を委ねた経緯・理由、②旦那側のみが育児を担ってきた期間がどのくらいの期間に及ぶのか、③現在はあなたがお子様を育てられる事情の詳細、④お子様の意思等を考慮して夫婦どちらが親権者として適格か判断されます。
 特に、旦那側のみで育児をしていた期間が長期間に及べば及ぶほどこちらには不利になっていきます。
 この点も、上記の①から④を含めた様々な事情を考慮して、親権者の適格性が決まりますので、詳しくは弁護士に相談することをオススメします。

 

 

4.どのような対策を取るべきか


(1)どのように対策すべきか
 あなたが現在お子様を育てている場合とそうでない場合の対応は上記の通りです。
 それでは、この点を一旦置いたうえで、どのような対策が必要なのかについて解説していきます。
 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 夫側が育メンだという場合でも、上記の7個のポイントが重要になることは変わりありません。
 そのため、それぞれのポイントに応じて対策を取っていく必要があります。
 上記の「1)現在の監護状況」については、既に前述したとおりです(あなたがお子様を育てているのかどうかで場合分けしてご説明いたしました)。
 特に、相手が育メンだという場合の対策では「2)(別居前の)監護実績」と「4)過去の児童虐待の有無・程度」が非常に重要なポイントになります。

(2)別居前の監護実績
 要するに、別居前に、育児をどのように分担して担ってきたのかというお話です。
 この別居前の監護実績の準備にあたっては、(お子様の年齢がまだ幼少の場合には)お子様の連絡帳が非常に重要な役割を果たします。特にきめ細かく保育園・幼稚園との連絡やり取りをしている場合、誰が連絡帳を記帳していたのか、誰が園への送迎をしていたのかといった点がかなり明確に分かるケースも多く、非常に有力な証拠とされることが多いです。
 また、あなただけがお子様と一緒に出掛けた際の写真、お子様に料理その他家事を手伝ってもらったとか、一緒に家事を行った写真などの証拠があれば、あなたの育児の実績を客観的に証明できますので、これも有力な証拠となり得ます。

(3)過去の児童虐待の有無・程度
 夫側が育メンという場合、お子様に熱心過ぎる反面、躾の範囲を超えて手が出るとか、怒鳴りつけるとか、度を越してしまっている場合もあります。
 いくらお子様とのかかわりが深いとは言っても、その関わり方が虐待に陥ってしまっているような場合には、夫側は親権者としてふさわしくありません。
 このような虐待の証明が容易であれが問題はないのですが、その証明が困難な場合、夫側は虐待の事実を認めないことも多いので、要注意です。
 夫側の暴力でお子様が怪我をなさっているのであれば、診断書や痣の写真、夫側が暴言を吐いているようであれば、その録音などがあると、暴力や暴言を直接証明できますので、非常に有力な証拠になります。
 このような明確な証拠がない場合でも、対策の方法はありますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

5.まとめ


・育児負担がほぼ対等だったような場合には、徹底的な準備が必要になる。
・現状あなたが子育てを担っている場合、基本的な準備を怠らなければ勝訴の可能性は高い。
・現状あなたが子育てを担っていない場合には、大きく以下の2パターンがある。
① 旦那側が連れ去った場合→まずは、監護者指定審判事件の対応を要する。
② 旦那側にこちらから委ねた場合→その経緯等の詳しい事情の確認が必要になる。
・そのほかの対策としては「別居前の監護実績」と「過去の児童虐待の有無・程度」が重要なポイントになる。
・この二つのポイントについて、どこまでの証拠を揃えられるのかが非常に重要である。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(10)】夫が親権にこだわる思惑は何か?

2022.02.07更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、夫側の思惑にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.大半のケースは、夫側のお子様への愛情の強さの表れというケースである


 今回のブログのタイトルが「夫が親権にこだわる思惑」としているため、実際にはお子様への愛情以外の理由で親権を主張する夫が多いという印象を与えてしまったかもしれません。
 ただ、実際、私が様々なケースを担当しておりますと、親権問題について激しく対立するケースでは、夫側がお子様への愛情の強さがゆえに争っているケースが大半だと感じます。いわゆる「夫が子供を溺愛している」というケースが多いということです。

 しかし、この「溺愛」というのが、あなたの方でも理解できるような形であったり、方法であれば、家庭内の不和には結びつかないのですが、理解しにくい形であったり、その方法に違和感を覚えるようなものだと、そのこと自体が離婚理由になることもあります。
 いずれにしましても、夫側がお子様を溺愛し、親権について一歩も譲らないというような場合には、離婚紛争について裁判まで視野に入れなければならないケースも多いです。

 

 

3.少数ながら「お子様への愛情」とは言えないケースとは?


 前述の通り、夫側が親権を激しく争ってくるケースでは、夫がお子様を溺愛しているケースの方が多いとは思いますが、そうではないケースも相当数あります。
奥様の目から見ていても、同居中に夫側がほとんどお子様の面倒を見たことがないとか、お子様と週末一緒に遊ぶこともほとんどなかったというようなケースですと、とても、お子様への愛情から親権を主張しているとは考えにくいです。
そのような場合、夫側の思惑としてはどのようなものがあるのでしょうか。

 私が取り扱った事件では、以下のようなケースがありました。

(1)【夫側の思惑1】とにかく勝ち負けで主張しているというケース
 男性心理として、何としても妻よりも優位に立ちたい、負けたくないという発想の男性は相当数います。その場合、とにかく勝ち負けで物事を考えますので、親権だけではなく、離婚すべきかどうかについても争ってくるケースが多いです。要するに、自分が悪くないということを証明したいと考えるのです(自分が悪くないので、離婚する理由がないし、自分が悪くないので、子供も自分の手元で育てるという発想のようです)
 このような発想が非常に強い人物ですと、「離婚に応じる」イコール「自分に悪いところがあったことを認める」という考え方になりますので、離婚を断固拒否してくることも多いです。親権を譲ることについても、「これを譲る」イコール「自分が子供に悪いことをしたことを認める」という考え方になり、激しく親権を争ってくることも多いです。

(2)【夫の思惑2】後継者としての期待
 特にお子様が男の子の場合、自分の後継者として自分の手元で育てていきたいと考えるのです。
 このケースは、夫側の両親も同じような意向を持っているケースが多く、むしろ、夫本人よりも夫の両親が、孫の親権を手放したくないと強く考えているケースもあります。
 夫側が会社を経営していたり、家業を営んでいる場合には、その仕事を子供に引き継がせたいというのもあるのでしょうが、特に家業のようなものがないケースでも、自分の名前を残しておきたいとか、昔ながらの家督承継のように、いわゆる家を継がせたいという発想で親権を主張してくるケースもあります。

(3)【夫の思惑3】夫の利己的な考え
 最後にご紹介するのは、夫側の利己的な考えによるものです。
 例えば、奥さんやお子様達が全員別居してしまいますと、夫側は広い部屋にたった一人取り残されることになっていますので、単純に寂しいので、子供と一緒に暮らしたいとか、老後の心配等があるので、子供に身の回りの世話を期待しているといったケースが該当します。

 

 

4.夫の思惑は、親権紛争に影響するか。


 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の7つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 そのため、夫側の思惑は、親権の判断にあたって直接影響を及ぼす事情ではありません。
 ただ、事前に夫側の思惑を予測できれば、例えば、面会交流の回数を多少融通することで、離婚裁判を避けられるとか、対応に幅を持たせることもできます。
 そのため、今後の手続の選択や対応方針を決定するにあたっては、夫側の思惑が分かるようならわかっていた方がベターと言えます。

 

 

5.まとめ


・夫が親権を強く争うケースの大半は、お子様への愛情の強さによるケースである。
・少数ながら、以下のような理由で親権を争ってくるケースもある。
 ①勝ち負けで物事を判断するがゆえに争ってくる
 ②後継者として期待している
③利己的な考え方で主張している
・ある程度夫側の思惑が分かると、今後の対応等の判断の参考になる。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(9)】こちらの体調はどこまで考慮されるか?

2022.01.31更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、こちら(妻側)の体調面にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.妻側の体調はどこまで重視されるか?


(1)旦那側からどのような言い分が述べられるのか?
 旦那側が親権にこだわりを見せる理由は様々なのですが、親権を争っている以上、その理由付けをしていく必要があります。簡単に言いますと、旦那のもとでお子様を育てたほうが良いという理由付けをしなくてはいけませんので、裏を返すと「妻のところで育てていくことは不適当だ」という主張を展開してくるのです。
 概要ですが以下のような主張がなされたりします。
① 同居中から妻は飲酒量が多く、酔ってしまうと子供の面倒がおろそかになっていた
② 妻は疲労のためかボーっとしていることが多く、調理している食材を焦がしてしまったり、キッチンでボヤ騒ぎになってしまったこともある
③ 妻は持病持ちで、症状が出ているときは数日寝込んでしまうこともあったので、その間子供の面倒を見られるはずがない
④ 妻は精神疾患を患っており、感情の制御が利かないので、子供にきつく当たっていないか心配である
⑤ 妻は元々朝が弱く、専業主婦をしているときから朝食の準備をしたことがないし、子供の通学準備等をしたことすらも一切ないくらいである
⑥ 妻は元々体が弱く、そのため、一度も社会に出て働いた経験がないので、子供を一人で育てていけるとは思えない。
 上記をご覧いただくと分かりますように、半ば言いがかりに近いような主張もありますが、裁判所が、あなたの体調面で不安を感じてしまいますと不利に扱われる可能性もありますので、十分注意する必要があります。

(2)体調面はどこまで重視されるか?
 大まかに言いますと、あなたの体調面で医師の正式な診断が出ているかどうか、その症状が日常生活にどの程度の支障を及ぼすのかが大きなポイントになります。
 逆に言いますと、あなたが日常生活で多少体調を崩すことがあったとしても、「病院に行くほどではない」ということであれば、体調面が親権争いで悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
 他方で、医師の診断が出ており、現在も通院中であるといった場合には、慎重に臨む必要になります。特に裁判所の手続きの中で、裁判所側からあなたのカルテの開示を求められるような場合には、裁判所もあなたの体調について不安を持っているという証拠ですので、必要に応じてカルテの詳細をしっかりと説明するなど、十分な準備を整えていく必要があります。

(3)体調不安を払しょくするには、働いてしまうことが端的ではある
 あなたが夫と離婚しお子様との生活を希望している場合には、遅かれ早かれ仕事に就くことが必要になってくると思います。
 そして、例えばフルタイムで週5日働いているようであれば、裁判所もあなたの体調について不安に感じることは少ないと思います。
 ただ、お子様がまだ幼いような場合には、とても週5日も働くことができないということも多いでしょうし、「働く」ということを優先した結果、お子様の育児がおろそかになってしまっては本末転倒です。
 また、専業主婦をしていた期間が長い場合には、急に週5日も働くということは一般的に難易度が高く、長続きしないこともあります。そのことであなた自身が大きく体調を崩してしまっては元も子もありません。
 そのため、実際に働き始めるということは、体調不安を払しょくする切り札になり得るものの、お子様の年齢や状況、あなた自身の体調も考慮しながら慎重に検討する必要があります。

 

(4)夫からのモラハラ等が体調不良の原因だという主張は有効か?
 私は、親権争いの事件だけではなく、モラハラ・DV離婚のケースも数多く手がけますので、「夫と一緒にいると滅入ってしまうが、別居して生活するとかなり安心して体調も良くなってきています」とおっしゃる方も多いです。
 ただ、あなたの主治医が、あなたの体調不良の原因を夫からのモラハラと明確に断言してくれれば良いのですが、なかなかそこまでは断言してくれないケースの方が多いと思います。
 そうすると、いくらモラハラ被害を数多く訴えても、そのことが体調不良につながっているということを裁判所に理解してもらうことは難しいと思います。
 もちろん、そのモラハラの内容が暴力にまで発展しているなど程度が重いケースであれば、あなたの体調不良に直接関係すると判断される可能性も高いのですが、そこまでに至らないような場合には、あまり過去の経緯を体調面と絡めて主張することは有効ではないかもしれません。

 

3.神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切


 旦那側も親権獲得にあたって決定打になるような言い分がない場合には、こちらの体調面を執拗に責めてくるケースもあります。ただ、その内容が言いがかりに近いような内容の場合、そのことに神経質になり過ぎてしまいますと、余計にこちらは体調を崩してしまうと思います。
 詳しい内容は弁護士にご相談されたほうが良いとは思いますが、相談している弁護士から「旦那側の言い分は言いがかりに近いですよ」といったお話があるようなら、あまり夫側の言い分を真に受けずに、粛々と手続きを進めていったほうが良いと思います。

 

 

4.まとめ


・あなたの体調面が重要視されるかは、あなたの体調について正式な医師の診断が出ているかどうかが重要である。
・正式な病名がついているような場合には、その症状が日常生活にどのような支障を及ぼしているのかという点も重要になってくる。
・体調不安を払しょくするには、あなたが働き始めてしまうのが端的だが、お子様の年齢や状況、あなたの体調面にも十分配慮する必要がある。
・あなたの体調面に絡めて同居中のモラハラを主張することは、そのモラハラ等が重い場合には有効だが、そうではない場合有効とは言いにくい。
・神経質になり過ぎて余計体調を崩さないことの方が大切である。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(8)】親権紛争で子の心情調査は避けられないのか?

2022.01.17更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、お子様の心情調査にスポットライトを当てて解説していきます。

 

2.子の心情調査って何だ?


 子の心情調査が不可避なものかについて解説する前に、まずは、「心情調査」というのがどのようなものなのかについて解説します。
 子の心情調査とは、お子様の意向を家庭裁判所調査官が直接顔を合わせて確認する手続きのことを言います。
 「心情調査」と堅苦しい言い方をしますと、何かの脳波検査等をするのかとか、うそ発見器をつけられて話をするのか、とか色々と心配になってしまうかもしれませんが、要するに、お子様と調査官が面接をして、その内容を調査官が聞き取る・書き取るという手続きになります。

 私もこのような事件の担当をしておりますと、ご依頼者の方からいろいろとご質問を受けるものですから、その中から特によく質問を受ける内容等について、解説していきます。

 

(1)何歳くらいから心情調査を行うのか?
 実務の様子を見ておりますと、手続きが調停中と裁判中とでは、心情調査を行う年齢に開きがある印象です。
 東京家庭裁判所の調停事件での運用を見ておりますと、就学年齢(既に小学校に通っている年齢)に達した後ですと、一般的に心情調査を行っていると思います。
 これに対して、東京家庭裁判所の訴訟事件での運用を見ておりますと、10歳以上に達した後ですと心情調査を実施することが多くなっているという印象です。
 なお、お子様が15歳以上の場合には、必ず、そのお子様の意思を確認することが法律上義務付けられています。

 

(2)どのように行うのか?
 一般的には、お母様とお子様とで裁判所に来てもらい、家庭裁判所調査官とお子様の二人だけで話をして確認するケースが多いです(つまり、お母様はその場に立ち会えず、お母様だけ裁判所の待合室等で待っているという形をとる)。なお、お子様の様子の確認等の目的で調査官補が一緒に立ち会うこともあります。
 お子様がお二人、三人というケースでも、心情調査は、個別面接で行うことが多く、兄弟姉妹全員が一緒に調査官と面談するということは基本的にしません。

 

(3)どんなことを聞かれるのか?
 一般的には現在の生活状況のこと、別居の経緯とそのことについてのお子様の認識、別居前の生活状況、今後のこと等を尋ねられることが多いです。
 調査官はご夫婦のお互いの言い分を踏まえたうえで、お子様に確認したい事項をその場で全て確認することになりますので、所要時間は1時間程度になることが多いです(但し、心情調査の直前に交流場面調査を行っている場合や別居経緯等について夫婦の意見対立が少ないなどの事情がある場合には、30分程度ということもあります。一般的にはお子様の年齢が小さいほど調査時間を短めにしようと努める調査官が多い印象です)。

(4)学校を休まなくてはいけないのか?
 一般的には、①長期休暇(夏休みとか)が近い時期に心情調査を実施する場合には、長期休暇中に心情調査するという形が多いですし、②夕方の時間に心情調査を行うという形にして、極力通学に影響しない形で日程調整することが多いです。なお、裁判所は土日祝日は開いていませんので、平日での日程調整ということになります。

(5)事前にレクチャーしておいたほうが良いのか
 たまに、どのようなことを聞かれるのかを事細かに想定して、「こう聞かれたらこう答えて」というようにきめ細かく準備しようという方もいらっしゃいます。
 ただ、このようにきめ細かい準備をすると、お子様は調査官に対して「事前に決まっていること、覚えていることを話そう」と必死に考えてしまいますので、そのことを調査官に見破られてしまうことの方が多いです。
 心情調査は、お子様の面接試験ではありませんので、①今お父さんがあなたと一緒に暮らしたいということで裁判所の手続きになっている、②そのことで調査官という人があなたの気持ちを聞きたいと言っているので、思っていることを話してね、という程度の伝え方のほうが良いと思います。

(6)家庭訪問の時に一緒にやるのか?
 一般的には家庭訪問とは別日に、裁判所の一室で実施するケースの方が多いです。
 お子様もいきなり初対面の家庭裁判所調査官に対して、率直な意見を述べることは難しいと思いますので、家庭訪問の時に、いわゆる「顔合わせ」をし、その後に「別日」で改めて詳しい事情を確認するという形を取るということです。

 

3.子の心情調査は避けられないのか?


 前述の通り、お子様が既に小学校に通う年齢(または、10歳以上)に達している場合には、通常心情調査を行います(逆に、未就学(又は10歳未満)という場合には、お子様も自分の意思等を正確に表明できないことも多いので、心情調査は行わないということの方が多いです)。
 ただ、「お子様が調査官と面接する」と聞くと、面接試験を受けるようにイメージしてしまうかもしれませんが、特に調査官もお子様を問い詰めたりはしませんので、面接試験というのとは異なります。
 お子様にとっては心理的負担となる手続きではありますが、親権者が決まると、お子様は父親と母親どちらかと一緒に暮らしていかなければならず、このことは、お子様にとっても非常に大事なお話になります。そのため、裁判所も、お子様の意向を確認しておきたいということになるのです。

 

4.まとめ


・お子様が就学年齢に達していると、通常心情調査が実施される。
・心情調査は、お子様の面接試験というのとは性格が異なる。
・心情調査は、裁判所内の一室で調査官とお子様の二人が面接して行う形がオーソドックスである。
・心情調査の所要時間は1時間から1時間半程度のことが多い。
・心情調査の日程は学校の予定等にも極力配慮してくれる。
・心情調査はお子様の面接試験ではないので、細かいレクチャーはしない方が良い。

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(7)】親権紛争で家庭訪問は避けられないのか?

2022.01.10更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、家庭訪問にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.家庭訪問は避けられないのか?


 夫側が親権獲得に強いこだわりを見せる場合、ほとんどのケースで家庭訪問を実施します。
 但し、例えば、夫側が実際には面会交流の交渉を有利に進めるために親権を争ってきていることが明らかなケースで、あなたの方でも面会交流で多少は妥協するという場合には、話し合い又は調停で解決して、家庭訪問まで進まないケースもあります。

 

3.実際の家庭訪問は?


(1)誰が来るのか?
 家庭訪問と聞くと、「実際誰が来るの?」というのが一番の疑問かと思います。
 家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問します。この家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所の手続きで必要な調査を行うことを主な業務とする裁判所職員のことを言います。
 家庭裁判所調査官は、心理学といった人間科学の知見を持っていますので、そのような知見を活かした調査を実施していくことになるのですが、その調査の一環として家庭訪問も実施するのです。

 通常は、家庭訪問の前に、調査官面接を実施するのですが、その調査官面接を担当した調査官が家庭訪問するケースが多いです。

(2)何をしに来るのか?
 イメージとしては、お子様の生活環境や普段の生活ぶりを確認しに来るということになります。
 いわゆる小学校の先生が自宅訪問に来た際には、母親であるあなたやお子様と話をして帰るというイメージだと思いますが、家庭裁判所調査官の調査は、現在の生活環境がお子様の福祉にかなうものかという観点から行いますので、より分かりやすく言いますと、より突っ込んだ調査になります。

 このように言いますと、「いろいろと根掘り葉掘り質問されるのか?」と身構えてしまいそうですが、たくさん質問されるというよりは、家庭訪問の際のお子さまの様子やあなたとお子様との接し方等について細かくチェックしているというイメージになります。
 実際の家庭訪問にはチェック項目があり、事前に対策を行っておく必要がありますので、詳しくご確認になりたい方は弁護士秦(はた)までお気軽にご相談ください。

4.家庭訪問の回数は1回だけ?


 通常、一つの離婚事件については、家庭訪問は1回というケースが多いです。
 但し、お子様に関して複数の事件が提起されていて、一回目の家庭訪問からかなり期間が空いているようなときには、再度家庭訪問が行われることもあります。
 例えば、旦那側から監護者指定審判の申立が行われ、その手続きの中で家庭訪問が行われ、その手続きは一旦終了したとします。その後、あなたの方から離婚調停を起こし、調停手続きを進めていたが、財産分与の整理に時間がかかってしまって2年ほどが経過、結局調停では決着がつかず、離婚訴訟で本格的な親権紛争に至った場合、その訴訟手続きの中で再度の家庭訪問が行われるということもあります。

 再度の家庭訪問が実施されるかどうかは、①1回目の家庭訪問からどれだけ期間が空いているか、②1回目の家庭訪問後のこちらの家庭環境の変化の程度(例えば、1回目の家庭訪問時には都会で暮らしていたが、この間実家での地方暮らしになったとか)、③旦那側が指摘するこちらの監護状況の問題点の内容、④1回目の家庭訪問でどこまでの調査を実施したかといった点を総合して検討されますので、詳しくは弁護士に相談してみて下さい。

 

5.家庭訪問が行われてしまうとこちらの所在がバレてしまう?


 あなたが旦那様に対して現住所を秘密にしている場合、家庭訪問を行うことで現住所がバレてしまうことを心配すると思います。
 ただ、実際こちらの住所を秘密にしている場合、家庭裁判所調査官も、調査報告書に盛り込む内容等をこちらに相談してくれることが多いので、家庭訪問をしたからと言って、こちらの住所がバレる可能性は非常に低いとお考え下さい。

 

6.まとめ


・旦那側が親権に強いこだわりを見せる場合、ほとんどのケースでは家庭訪問を実施する。
・家庭訪問は家庭裁判所調査官が訪問してくる。
・家庭訪問は、お子様の生活環境や生活ぶりを調査しに来る。
・同じ離婚事件で行う家庭訪問は1回きりのことが多い。

 

 

関連記事


 

>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(6)】監護補助者の有無はどこまで重視されるか?

2021.12.27更新

弁護士秦

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかりと戦ってしっかりと勝つ」をモットーに分かりやすく解説していきます。

 神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、監護補助者にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.監護補助者って何だ?


 監護補助者とは、字句の通りなのですが、あなたの育児を補助してくれる人のことを言います。
 今後継続してあなたのことを補助してくれる特定の人物になりますので、あなたの両親や兄弟姉妹・親戚等の親族が監護補助者になることが一般的です。
 なお、家事代行業者等は、育児の補助をしてくれることもありますが、こちらが対価を支払って依頼しているものですし、派遣される担当者の変更が生じることもありますので、基本的に監護補助者には当てはまりません。
 監護補助者については、あなた自身で適任者を探し、「子の監護に関する陳述書」などに、補助者の氏名・住所等を明記していくことになります。

 

3.監護補助者の有無等は重要か?


 たまに、旦那側は両親や兄弟など複数人監護補助者を立てているのに、こちらは、実家が遠方等の理由で監護補助者がいないというケースもあります。
 そのような場合多勢に無勢で、こちらの方が不利に感じてしまうこともあります。
 ただ、監護補助者はあくまで補助してくれる人物にとどまりますので、その有無や人数はあまり大きな判断要素にはなりません。
 もちろん、監護補助者がいれば、あなたが突発的な病気で体調を崩しているようなときも安心ですから、簡単に依頼できる親族等がいるような場合には、頼んでおくに越したことはありません。
 ただ、実家が遠方等で依頼することが難しいような場合には、無理に監護補助者をつける必要性は低いと思います。

 

4.重要な判断要素で拮抗していると重視されることもある


 前述の通り、監護補助者の有無等は、本来重要な判断要素ではありません。ただ、「全く考慮されない」というわけでもないことには注意が必要です。
 以前、他のブログに書かせて頂きましたが、監護者指定に当たっての重要な7個の判断要素は以下の通りです。
1)現在の監護状況
2)(別居前の)監護実績
3)連れ去りの違法性
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢

 多くの事件では、上記の7個の重要判断要素を総合して検討し、有利な方が勝訴するということになります。

 

 ただ、ケースによっては、この7個の重要判断要素を総合検討しても、裁判官が判断に迷うというケースがあります(例えば、過去の監護実績という点では夫婦同等程度で、別居が奥さん側がかなり強引だった、現在のお子さんの様子を見るとそれほど不安定ではないが、別居がかなり強引だったので、登校面でも多少支障がある、しかも、奥さんは旦那側との面会交流を断固拒否しているというように、お互いに有利不利な点が数多くあるため、裁判官が判断に迷っているといったケースです)。
 そのような場合には、裁判官は上記の重要判断要素ではない、他の点で優劣を決する場合があります。その時に監護補助者の有無が重視されることもあるのです。

 

 

5.重要性が増してくるケース


 前述の通り、基本的に監護補助者の有無は、それほど重要なポイントにはならないケースの方が多く、他の重要判断要素で拮抗している場合には、重視されるというような位置付けです。
 ただ、例えば、以下のような要素がある場合には、相対的に監護補助者の重要性が増してきますので、注意が必要です。
①あなたの体調があまり思わしくない場合
②お子様の人数が3人以上など多い場合
③お子様が障害や持病等を抱えている場合
④あなたの業務が多忙過ぎる場合

 

 

6.まとめ


・監護補助者の有無や人数は本来重要な判断要素とまでは言えない。
・ただ、重要な判断要素で拮抗しているときには重視されることもある。
・また、例えば、以下のような要素がある場合には、相対的に監護補助者の重要性が増してくる。
①あなたの体調があまり思わしくない場合
②お子様の人数が3人以上など多い場合
③お子様が障害や持病等を抱えている場合
④あなたの業務が多忙過ぎる場合

 

 

関連記事


>【まとめサイト】絶対に夫に親権を渡したくないー記事総覧

>【弁護士秦の解決事例】裁判で徹底的に争った末、親権を獲得したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権を取得しない限り絶対離婚しない!と言っていた旦那様と離婚したケース

>【弁護士秦の解決事例】親権の帰属につき最高裁判所まで争われたケース

 

>>このブログを書いた弁護士秦(はた)に直接会って相談したい方はこちら!
(仕事帰りでも安心!事前予約があれば平日夜間22時まで相談可能 : 相談予約は入力で簡単日程調整)

 

雨宮眞也法律事務所
弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

entryの検索

カテゴリ

弁護士 秦真太郎 -雨宮眞也法律事務所- 受付時間 9:30~18:00 定休日 土日・祝日 住所 東京都中央区日本橋兜町1-10日証館3階

※事前予約があれば平日夜間(22時まで)も対応可能です。