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【絶対に夫に親権を渡したくない(30)】お子さんの年齢に応じた手続きの特徴

2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「お子さんの年齢に応じた特徴」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

2.お子様の年齢に応じた手続きの特徴


 一口に親権紛争と言いましても、お子様の年齢に応じて、手続きには一定の特徴があります。
 親権紛争では、様々な要素を総合考慮して、あなたと夫どちらが親権者にふさわしいかが決まるのですが、その中でも、以下の7個の要素は特に重要だと思います。
 お子様の年齢が特に重要な意味を持つのは、下記の「4)過去の児童虐待の有無・程度」、「5)子供の意思」になります。

1)監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思

6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢
 以下詳しく解説していきます。

 

 

3.お子様の年齢区分


 私が親権問題を取り扱っておりますと、裁判所は、大まかに以下の年齢区分に応じて、対応の仕方を変えているように感じますので、以下の区分に応じて解説していきます。

(1) お子様が0歳から4歳ころ(以下では便宜的に「乳幼児時代」と言います)

(2) お子様が5,6歳から小学校低学年(9歳くらいまで)頃(以下では便宜的に「小学校低学年頃時代」と言います)

(3) お子様が小学校高学年(10歳ころ)以上(以下では便宜的に「小学校高学年以上時代」と言います)

 

 

4.「過去の児童虐待の有無程度」について


(1)「乳幼児時代」の場合
 「乳幼児時代」のお子様は、実際に虐待と思われる行為を受けたとしても、その意味等を理解しきれず、また、そのことをしっかりと説明する言語能力も備わっていませんので、家庭裁判所調査官が直接お子様から事情を確認することは基本的にありません。
 そのため、虐待の証明のためには、あなた自身がお持ちの証拠が相対的に重要になってきます。

(2)「小学校低学年頃時代」の場合
 お子様の年齢が5歳以上になってきますと、ある程度の会話は可能になっていることが多いので、裁判所調査官は、直接お子様と会話をすることが多いです(但し、5歳や6歳ですと、まだお子様の言語能力の発達には個人差がありますので、十分な会話が難しいと感じた場合には、家庭裁判所調査官も詳しい会話はしないことも多いです)。
 しかし、お子様の年齢に鑑みますと、事細かく過去の事実を説明することは難しい年齢ですので、調査官が虐待の有無等について事細かく確認するのかというと、そのようなことはなく、「お父さんってどんなお父さんかな?」とか「お父さんとの思い出の中で楽しかった思い出って何かな?」といった質問をして、お子様の反応に応じて虐待のこと等についても尋ねるといったケースが多いように感じます。

 もちろん、虐待の有無が非常に重要な争点になっているケースやお子様が9歳で十分な会話能力があるという場合などでは、ストレートにお子様に直接、虐待の有無や内容について確認するケースもあります。

(3)「小学校高学年頃時代」の場合
 お子様が小学校高学年以上の場合、ある程度の難しい会話も可能になっていることが多いので、家庭裁判所調査官は直接虐待の有無や具体的詳細を尋ねることが多いです。
 なお、このぐらいの年齢になると、お子様自身があなたに対して「調査官からどのようなことを聞かれるのか?」とか「どのようなことを聞かれるのか分かっているなら、事前に準備しておきたい」といったことを言ってくることもあります。
ただ、調査官調査は面接試験ではありませんし、面接試験対策のようにして準備をすると逆効果になるケースが多いので、あまり特別な準備はしない方が良いことが多いと思います(もちろん、どのようなことを聞かれそうなのかについて概要は説明しておいて良いと思いますが「○月〇日どこどこでこれこれのことがあったから、そのことはすごく記憶によく残っていると伝えなさい」といったような面接試験対策のようなことはしない方が良いという意味です)。

 

 

5.「お子様の意思」について


(1)「乳幼児時代」の場合
 「乳幼児時代」のお子様は、現在自分が置かれている状況を正確に理解したり、自分の意思をしっかりと説明する言語能力も備わっていませんので、家庭裁判所調査官が直接お子様の意思を確認することは基本的にありません。
 但し、お子様と夫とを面会交流させてきた場合には、交流時の反応や、交流後のお子様の様子等は、参考情報として考慮されることがあります。

(2)「小学校低学年頃時代」の場合
 お子様の年齢が5歳以上になってきますと、ある程度の会話は可能になっていることが多いので、裁判所調査官は、直接お子様と会話をすることが多いです(但し、5歳や6歳ですと、まだお子様の言語能力の発達には個人差がありますので、十分な会話が難しいと感じた場合には、家庭裁判所調査官も詳しい会話はしないことも多いです)。
 ただ、お子様に対して「お父さんのところとお母さんのところどっちと一緒に住みたい?」といった質問をすることはなく、通常は「今の生活はどうか?」とか「引越前の生活はどうだったか?」といった尋ね方をするケースが多いと思います。
 また、お子様の理解力に応じて、簡単な心理テスト等を行い、内心を確認することもあります。

(3)「小学校高学年以上時代」の場合
「小学校高学年以上時代」の場合も「小学校低学年頃時代」の場合と大きな差はなく、調査官がお子様に直接意思確認をすることが多いです。但し、この年齢になると心理テストを実施することは少ないと思います。

 

 

6.調査官調査の特徴


 お子さんの年齢に応じて、家庭裁判所調査官による調査にも差が生じますので、以下概要をご説明します。

(1)「乳幼児時代」の場合

 乳幼児の場合には、まだお子さんは十分に発言できない年齢ですので、家庭裁判所調査官は、お子さんの発言ではなく、保護者であるあなたの気配りや対応という部分に重きを置いて調査が実施されることが多いです(但し、もうお子さんが4歳に達していて、かなりコミュニケーションをとれる状況になっている場合には、調査官がお子さんと直接会話するケースもあります(これは、お子さんの成長の具合によります))。

 具体的には、まず、家庭訪問の際には、お子さんが誤飲・転倒等をしないような配慮がなされているか(要するに、引出し等にチャイルドロックがかかっているのかとか、小物がお子さんの手の届かないようなところに置いてあるのかといった点)、お子さんの反応に応じてどのようにあなたが対応するのかといった点を中心に確認が行われます。

 また、お子さんが十分に言葉を発することができない年齢ですので、あなたとお子さんが遊んでいる様子などから、あなたとお子さんとの関係性等を見極めようとすることが多いです。

 

(2)「小学校低学年時代」の場合

 お子さんが小学校低学年時代の場合、小学校教育が開始して(または、小学校入学に向けた準備が開始して)いますので、お子さんの学習環境がどのように整えられているのかという点が相対的に重要になってきます(但し、お子さんが小学校入学前であると、ある程度の教育面の確認はしますが、どちらかというと、「乳幼児時代」の際同様、あなたの気配り等の方を重視して調査するケースも多いです)。

 そのため、家庭訪問の際にも、どの程度学習環境が整っているか、学校から出された宿題や課題への取り組み方等を確認することに重きが置かれていきます。合わせて、もうお子さん自身が自発的に挨拶や自宅内の案内等を出来る年齢ですので、その様子等を調査官は見極めようとしてくることが多いです。

 また、お子さん自身が平易な会話は可能なので、調査官はお子さんと1対1で話をすることが多いです。

 

(3)「小学校高学年以上時代」の場合

 お子さん自身が難しい言葉もある程度理解するようになっており、合わせて、家庭環境やそのような環境の中で自分が置かれた立場等についても大なり小なり理解していることが多いため、お子さん自身の発言や意思が、より重要性を増してくることになります。

 このようにお子さんが「小学校高学年以上時代」の場合でも、家庭訪問は行い、その際に、監護環境の確認は行われますが、それ以上に、調査官とお子さんとの1対1での会話の内容がより重要性を増していくことになります。また、そのような会話の際には、お子さん自身が過去の経緯等についても十分自分の経験や意思を言葉にすることができる年齢ですので、より突っ込んだ確認が行われることも多いです。

 

 

7.その他


 その他にも、「乳幼児時代」の場合、監護実績の証明にあたっては、保育園の連絡帳の持つ意味合いが非常に重要になるとか、面会交流にあたっても、お子様だけを預けることが難しいので、交流方法についても慎重な検討を要するなど、お子様の年齢に応じて、証拠集め等の準備や手続きへの取り組み方が異なってくるのですが、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

8. まとめ


・お子様の年齢区分としては、以下の3区分で特徴が変わってくる。
① お子様が0歳から4歳ころ(以下では便宜的に「乳幼児時代」と言います)
② お子様が5,6歳から小学校低学年(9歳くらいまで)頃(以下では便宜的に「小学校低学年頃時代」と言います)
③ お子様が小学校高学年(10歳ころ)以上(以下では便宜的に「小学校高学年以上時代」と言います)
・監護者指定の重要要素の中でも「過去の児童虐待の有無・程度」「お子様の意思」の項目で対応が異なってくることが多い。

・家庭裁判所調査官による調査の際にも、お子さんの年齢に応じた特徴がある。

・その他にもお子様の年齢に応じて対応が異なってくる箇所やケースがあるので、詳しくは弁護士に相談してみるとよい。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(29)】夫から浮気を疑われていることはどこまで影響するか

2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「夫から浮気を疑われていること」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

2.夫から浮気を疑われている


 夫から浮気を疑われているという場合、その浮気が事実なのかどうかによって対応が異なってきます。
 なお、ここでの「浮気」というのは、法律上の不貞行為を意味する言葉として使っておりまして、要するに夫以外の男性と肉体関係に及ぶことを意味します。他の男性と二人で食事に行くこと等は含まないという前提で解説していきます。

 

3.【ケース1】浮気は事実ではないし、それを疑われる事情もないケース


 例えば、こちらが別居を開始したことについて、夫側が、「浮気しているに違いない」などと勝手に想像しているケースなどです。
 その場合には、あなたが浮気しているという事実がありませんし、そのような事実がない以上、疑わしい証拠や事実もないため、夫側が「浮気している」と主張していたとしても、当然親権紛争への影響は全くありません。

 

4.【ケース2】浮気は事実ではないが、疑わしい事情はあるケース


(1)どんなケースか?
 浮気が事実ではないので、それが疑われるということが分かりにくいかもしれませんが、例えば以下のようなケースなどです。
 例えば、別居後、知人を含めた4,5人でシェハウスに住んでいるが、その中に男性も含まれている。特にその男性と関係はないが、その男性と二人で食事に行っているところを夫側の探偵に写真を取られてしまったとか、その男性と日帰りで遊びに出かけたことがあって、その時のメールのやりとりが証拠で提出されてしまったといったケースになります。
 浮気の確たる証拠はないのですが、普段の生活がその男性も含めたものでして、そのことに加え、男性と出かけた証拠もあるとなると、浮気が「疑わしい」状況ではあると思います。

(2)そもそも浮気と親権者は関係があるのか?
 そもそも、浮気の問題と親権者の問題が関係あるのか?という点ですが、基本的には、浮気の問題は、夫婦の間の問題でして、親権者の問題とは切り離されて取り扱われることが多いです。
 要するに、浮気の確たる証拠があるならば、夫側はあなたに対して慰謝料請求をすることができるなど、夫婦としての紛争にはなっても、お子さんを育てていくにあたって的確なのかどうかとは基本的に別問題だということです。
 しかし、浮気との関係であなたの夜間の外出が頻繁だとか、あなたとその男性との外出にお子様も同行させていて、お子様の就寝時間がかなり遅くなることが多いという場合には、それは、お子様の育児にも関わってくる問題になります。
 このように「浮気を疑われる状況がある」ことそのものは親権者選びに直接関係しませんが、そのことでお子様の育児が疎かになったりする場合、その限度では問題になることもあるのです。

 

 

5.【ケース3】浮気は事実だが、夫側が全く証明できていない場合


 仮に浮気が事実だとしても、そのことを夫側が全く証明できていない場合には、敢えてご自身に不利な対応をする必要はないかと思われます。
 証拠がない以上、裁判所も、浮気の事実はないものとして、親権の問題を審理していくことになります。

 

 

6.【ケース4】浮気は事実で、夫側にかなりの証拠を握られてしまっている場合


 実際にあなたが浮気をしていて、夫側にかなりの証拠を握られてしまっている場合でも、前述の通り、浮気そのものは、親権者選びには直接影響しません。
 ただ、この場合、大きく2点問題となることが多いです。

(1) 浮気を認めるか
 夫側は、あなたが浮気しているという事実を強く主張してきて、「そのような不健全な親に親権を任せることはできない」と強く責めてくることが多いです。
 このケースでは、浮気の証拠を握られてしまっているため、浮気そのものを否定することは得策ではないことが多いです。なぜなら、浮気の証拠がある以上、裁判所は、浮気があることを前提に審理を進めますし、あなたが「浮気は事実ではない」と言い張ると、裁判所から見て「嘘をつく人」と見られてしまうリスクがあるからです。

(2) 住居の問題
 浮気をして別居しているケースの場合、新居に浮気相手が関わっているケースが多いです。
 別居先が正に浮気相手の家で、お子様とあなた、浮気相手の3人で暮らしているケースとか、一緒に住んではいないけれども、新居は浮気相手が経営する会社名義の部屋であるといったケースです。
 そのような場合には、新居がお子様の福祉にかなう生活環境と言えるのか、その住居の安定性が保たれているのかという観点から審査が行われることになります。

 このように夫側に浮気の証拠を握られている場合には、親権紛争との関係でどのように対応すべきかの判断が難しいケースも多いため、早めに弁護士に相談した方が無難かと思います。

 

 

6.まとめ


・浮気を疑われていると一口に言っても複数のケースが想定されるので、ケース分けが必要である。
・実際には浮気の事実などなく、疑わしい事情もないなら何も心配はいらない。
・実際には浮気の事実がないとしても、それが疑われる事情があるのであれば、そのことがお子様の育児面で影響がないかの確認が必要になる。
・実は浮気しているが、夫側に確たる証拠がないならば、敢えてこちらから不利になる対応をする必要はないものと思われる。
・実は浮気していて、夫が確たる証拠を持っている場合、浮気は認めた上で、育児面への影響の検討が必要になる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(28)】弁護士へのセカンドオピニオンの活用法

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「弁護士へのセカンドオピニオン」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.セカンドオピニオンとは?


 私のところには、離婚・親権の問題で既に弁護士を雇っているけれども、他の弁護士にも意見を聴きたいということでご相談に来られる方もいらっしゃいます。
 このようなセカンドオピニオンには、①あなた自身の事件について、どの程度有利に手続きを進めているのか、結論はどうなりそうなのか、という点を尋ねてくるケースと、②あなたが提出したいと考えている証拠について、どの程度効き目がありそうなのかを尋ねてくるケースがあります。

 

 

3.セカンドオピニオンの限界


 セカンドオピニオンは、現在あなたが雇っている弁護士よりも、より客観的に状況を把握する利点があります(あなたが雇った弁護士は、あなたと一緒に事件を戦っているため、どうしてもあなたの味方としての立場が表れてしまっていて、客観的な状況把握がしにくくなっていることもあります)。
 また、あなたが今雇っている弁護士の方針に疑問や不安があった場合、セカンドオピニオンで、その弁護士の方針に誤りがないと聞くことができれば、大きな安心材料になります。
 そのため、セカンドオピニオンは、「今雇っている弁護士と違う意見を聴く」ということではなく「今雇っている弁護士と同じ意見を聴いて安心する」というメリットもあります。
 ただ、セカンドピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限があることは否めません。

 

 

4.あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない


 たまに、今後の手続や結論への不安が強く、何人もの弁護士にセカンドオピニオンを繰り返しているという方もいます。
 前述のように、セカンドオピニオンは、、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限がありますので、「弁護士によって少しずつ言うことが違う」と感じることも出てくるかと思います。
 そうなると「沢山の弁護士に話を聞いて、余計混乱した」とか「余計に不安が増してきた」ということにもなりかねません。
 そのため、セカンドオピニオンを求めるにしても、多くても2,3件程度にとどめておいたほうが良いと思います。

 

 

5.定期的アドバイザリーは?


 セカンドオピニオンからさらに進んで、今の弁護士を雇いながら、定期的なアドバイザリーをお願いしたいと依頼されることもあります。
 ただ、定期的アドバイザリーは、裁判所の法廷に足を運ばずに弁護士がアドバイザーになるというものですので、どうしても、裁判所が考えている方向性とずれてしまう側面が否定できません(実際に法廷に足を運ぶと、裁判官の発言や表情を直接見聞きできますので、アドバイザリーとして、そのような直接見聞きができないという点は大きなビハインドと言えます)。
 そのため、私自身は、そのような定期的アドバイザリーを引き受けることはしていません。
 他の弁護士も、「定期的アドバイザリーは引き受けない」という弁護士も多くいますので注意が必要です。

 

 

6.今雇っている弁護士を変えたほうが良いのか?


 セカンドオピニオンを受けていると、「今雇っている弁護士を変更したほうが良いのでしょうか?」という質問を受けることが多いです。
 ただ、私がお話を聞いていると、その弁護士が、そこまでおかしな弁護活動を行っているようには感じず、相談に来られた方も、引き続きその弁護士にお願いするということでお帰りになることが大半です。
 そのため、私が途中から交代して弁護につくことは、「ごく少数」という印象です。

 

 

7.セカンドオピニオンを受けるのが非常に遅いと感じることが多い


 親権紛争でセカンドオピニオンのご相談を受けるタイミングとしては、家庭裁判所調査官からこのように言われたとか、裁判官からこのように言われた、もしくは、調査報告書でこのように書かれてしまったというケースが多く、残念ながら、「そこまで手続きが進んでしまっていると、弁護士を交代して劇的に好転させることは難しいです」という状況のことが多いです。要するにセカンドオピニオンの相談が「遅過ぎる」ということです。
 特に、「知り合いの紹介で弁護士を雇ったんですが、離婚問題の取り扱い経験がほとんどなかったみたいなんです」などと言われることも多いのですが、各弁護士には専門分野がありますので、最初の段階で対応を誤ってしまっている側面が否定できません。
 そのため、離婚・親権問題では、最初から専門性が高い弁護士にお願いするということが重要と言えます。

 

 

8.まとめ


・セカンドオピニオンは客観的な意見を聴けることが多いが、時間的・資料的限界がある。
・あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない。
・定期的アドバイザリーについては、そもそも、そのような契約形態は引き受けないという弁護士も多いので注意が必要である。
・今雇っている弁護士を交代させたほうが良いというケースは稀である。
・事件途中でセカンドオピニオンの相談をするのではなく、最初から弁護士をしっかりと選んだほうが良いケースが多い。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(27)】子供へのモラハラはどの程度考慮されるか

2023.01.09更新

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神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「お子さんへのモラハラ」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

2.子供へのモラハラって?


 モラハラについては 「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと定義されたりしますが、これだけではピンと来ない方が多いと思います。具体的にお子様との関係での夫の発言や行動で「モラハラ」と評価し得るものとしては以下のようなものがあります(これが「モラハラ」の全て、というわけではなく、あくまで代表例とお考え下さい)。
なお、夫がお子様に直接手をあげるケースは、もはやDVに該当しますので、一旦モラハラとは分けて考えます(以下では、このようなDVにまでは達していないケースを想定して解説いたします)

(1)お子様に対して暴言を吐く
 お子様へのモラハラの典型例のようなケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。なお、暴言やあなたやお子様ご本人に向けられるケースだけでなく、パパ友やママ友、お子様の友人等が集まる場所等で発言されると、より一層お子様は傷つくことになると思います。
①お子様を侮辱するような発言をする(「バカ」「アホ」だとかの単純なものから、お子様の容姿を侮辱するもの、お子様の学習能力や知識不足等を侮辱するものなどがあります)
②お子様に危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)
③叱責する際などに敢えてお子様が傷つくようなことを言う(例えば「テストの点が悪かったから、おまえのこのゲームは捨てるからな」、「朝の勉強をさぼっていたから、週末はお出かけ禁止な」とか「遊びに行ってる暇があったら、ドリルを1ページでも進めとけよ」等)

 

(2)執拗な責め立て等
 これもお子様へのモラハラとしてはよく見られるケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。
①些細な問題を執拗に責め立てる(「この前のテストで90点だった理由をしっかりと説明しろ」「昨日音楽の笛を学校へ持って行き忘れたことの反省文を書け」「この前の誕生日会で俺に恥をかかせたことについて、参加者に謝ってこい」等々)
②責め立てが何時間も延々と続く
③責め立てが夜中や早朝など時間を問わず長々と続く
④責め立ての際、正座や土下座を強要する

 

(3)物への八つ当たり等
 例えば、機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)といったものです。
 特にお子様が大事にしているものとか、お子様のデスクや衣装ケースなどを傷つける行動は、お子様にもショックが大きいと思います。

 

(4)行動監視や強要
 例えば、以下のようなものがあります。
①お子様のスマートフォンにGPSアプリを入れて頻繁に位置情報を確認してくる
②門限その他家庭内のルールを作って、お子様に強要する(勉強の時間は何時からとか、入浴の時間は何時からなどと細かく決めた上で、1分でも過ぎると執拗に責め立ててくるとか)
③お子様が口にするお菓子等について夫の気分次第で種類や値段を制限してくる

 

3.お子様へのモラハラは、どこまで考慮されるか


 上記のようなモラハラは、頻繁であったり、執拗であったりすると、お子様はもちろん、あなた自身も非常に窮屈で、普段の生活において常に緊張を強いられるような大きな心理的負担を生じるケースも多いと思います。
 ただ、これらのモラハラがストレートに親権紛争に大きな影響を与えるのかと言いますと、残念ながら、影響は「大きくない」という印象です。
 裁判官や裁判所調査官は、第1次的には暴力行為があったかなかったか、そのことでお子様自身が怪我をしたことがあったかなかったかという点を気にかけ、これらがなかったということになると、虐待事案としては、大きな虐待はなかったと捉えがちなのです。

 

4.お子様への意思確認で生きてくる


 上記のようにご説明しますと、「それなら子供へのモラハラを主張しても意味ないんですね」とか「子どもへのモラハラの証拠は不要ですね」とおっしゃる方もいますが、そうではありません。
 モラハラそのものは、直接親権者指定に大きな影響はないとは言っても、全く無関係ではないからです。
 また、特に、お子様が夫側を嫌がっているとか、接点を持ちたくないと発言しているような場合には、その根拠として意味を持ってきます。
 要するに、親権紛争では、様々な要素が考慮されるのですが、お子様が一定の年齢に達している場合、「お子様の意思」も重要な判断要素の一つになります。
 お子様が夫側を嫌がっているとか、接点を持ちたくないと発言しているような場合、家庭裁判所調査官は、必ず理由を尋ねますので、その際に、モラハラ行為の存在が生きてくるのです。

 

 

5.モラハラ行為をこちらに有利に活かすには


 前述の通り、お子様の意思確認の段階で、モラハラ行為の存在はそれなりに意味を持ってくることになります。
 ただ、こちらが夫のお子様に対するモラハラ行為を主張しても、夫側が全否定してくるケースも往々にしてあります。
 そのため、モラハラ行為を親権紛争で活かしていくにあたっては、やはり、その証拠がどの程度あるのかという点が重要になってきます。
 録音が最たるものですが、夫側が壁や床、物を破壊したといった場合には、その写真も有効な証拠になります。

 

 

6.まとめ


・お子様へのモラハラには、①暴言、②執拗な責め立て、③物への八つ当たり、④行動監視や強要といったものがある。
・DVに至らないモラハラは、裁判官も重要視しないケースが多い。
・だからと言ってモラハラを指摘しなくて良いということではない。
・モラハラの存在は、お子様の意思確認の際に活きてくる。
・重要なのはモラハラの証拠集めである。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(26)】親権紛争で重視される「児童虐待」とはどのようなものを指すのか?

2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「児童虐待」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的には以下の通りです。

 

【児童虐待防止法より引用】

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

3.それぞれの詳しい解説


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。今回は、特に、親権紛争で重視されるような「児童虐待」について解説していきます。

(1)お子様への暴力
 前述の通り、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
 もちろん、このようにお子様に対して直接暴力を振るい、お子様に現実に怪我ができたり、怪我ができる可能性がある場合には、親権者として即不適格ということになろうかと思います。

 ここでの「怪我ができる可能性がある」というのは、それだけの強い威力の暴力ということですので、例えば、①DV夫がお子様を殴ったケースなどで、お子様がよけたので怪我をしなかったけれども、拳が壁に当たって壁が大きくへこんでしまったとか、②お子様が咄嗟に逃げたので怪我をしなかったけれども、DV夫が凶器を振り回したケースなどがこれに該当します。
 ただ、このようにお子様が怪我をする危険性があるような暴力でなくとも、お子様自身がDV夫からの暴力被害を記憶していて、そのことが理由でDV夫のことを怖がっているといった事情がある場合には、親権紛争においても、夫側に大きく不利な事情になります。

 

(2)お子様へのわいせつ行為

 夫側がお子様に対してわいせつ行為に及んだことがあったり、お子様自身にわいせつな行為をさせたことがあるような場合には、直接の児童虐待に該当しますので、親権者として即不適格ということになろうかと思います。
 親権紛争で争われる場合には、上記のような直接的な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。

 このようなケースでは、このような性的虐待についてどこまで客観的に証明できるのか、それがお子様にどこまでの悪影響を及ぼしているのかがキーポイントになってくるかと思います。なお、お子様の年齢によっては、性的虐待の意味合い等をお子様自身が十分認識できず、そのことについて自ら口に出して表現できないことも多いと思いますが、実際にはお子様の心の奥底に傷跡を残していることも多いので、小児心理の専門医に相談してケアをしていったほうが良いケースもあろうかと思います(当該医師から、性的虐待の後遺症が残っているような診断がなされた場合、その診断結果も重要な証拠になります)。

(3)ネグレクト
 上記の通り、児童虐待防止法にて「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」と規定されているものですが、いわゆるネグレクトのことを意味します。
 親権紛争では、同居中の言動や行動を問題にすることが多いので、ネグレクトは取り上げにくいというのが実際のところではないかと思います。

 例えば、あなたが週末出かけた場合で、夫が自宅でお子様の面倒を見ていた際、ネグレクトをしていたというようなケースですと、夫がそのようなことを繰り返していた場合、残念ながら、あなた自身に対しても、裁判所は「どうしてそんな夫にお子さんを任せて出かけたのか」ということで責められる危険性が高いのです。
 このように同居中の夫側のネグレクトは、あまり極端なものであった場合には、どうしてあなたが防止できなかったのか、ケースによっては、防止する意識が薄かったのではないか?とか、黙認していたのではないか?と裁判所から言われてしまい、あなた自身の育児の問題点とされてしまう危険性もあるのです。

(4)お子様への暴言・面前DV
 児童虐待防止法2条4号は、DV夫からお子様への直接の暴言と面前DVを児童虐待と定めています。以下では暴言と面前DVに分けて解説していきます。

ア 暴言
 児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義しています。要するに単なる暴言ではなく「著しい」暴言のみを対象にしているのです。
 ただ、その暴言が「著しい」ものなのかの区別は非常に難しく、こと親権紛争では、著しいものかどうかを問わず、暴言を受けることでお子様にどのような悪影響が生じてしまっているのかという観点を重視する傾向が強いです。実際のところ、DV夫が発した口頭の言動を細かく確定することは不可能に近いので、お子様自身がどう受け取ったのか、どう感じているのかといった観点から検討していく他ないのです。
 特に、お子様が①DV夫からの言動が怖かったとか、そのことで夜なかなか寝付けなかったといった話をしているとか、②DV夫の言動を真似て他の友人にそのような発言をしてしまったといった場合には、DV夫側は親権紛争で大きく不利になるケースが多いと思います。

イ 面前DV
 面前DVは、児童虐待防止法上、児童虐待と位置付けられているのですが、親権紛争では、あまり重視されない傾向が強いです。裁判所は、妻側に対する暴力は、夫婦間の問題と考える傾向が強く、そのことがストレートに監護者としての適格性に大きな影響を与えないと考える傾向が強いのです。
 もちろん、面前DVでお子様の心身に具体的な悪影響が生じてしまっているといったケースでは、そのような事情も親権紛争にあたって重視されますが、そうでない場合には、残念ながら、あまり重視されないとお考え下さい。

 

 

4.親権紛争で争っていくにあたっての基本的な視点


 このように児童虐待のお話をしますと、「夫がそのような発言に及んでいたことがないかよく思い出してみます」と反応なさる方が非常に多いのですが、どちらかと言いますと、昔のことを思い出すというよりも、「どのような裏付けがあるか」をしっかりと確認することの方が重要性が格段に高いです。
 裏付けもなく言い分を述べても、DV夫側は「そのような事実はない」と否定してくることが多いので、そうなると、裁判所も、そのような言動があったかなかったかを明確に判断できないのです。

 

 

5.まとめ

・児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義している。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV
・親権紛争の中での児童虐待の重要性は、児童虐待防止法の定めとずれる部分もあるので注意が必要である。
・親権紛争では、「過去の児童虐待をよく思い出す」というよりも「その裏付けを探す」ということの方が、重要性が高い。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(25)】裁判所はこれまでの監護実績についてどのように認定するのか

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「監護実績の判断方法」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.裁判官は監護実績についてどう判断するのか?


(1)監護実績については言い分が大きく対立することも多い
 これまでの監護実績(同居中、お子様の育児にどのくらい関わってきたのか)は親権紛争の判断にあたって非常に重要な要素です。
 ただ、監護実績については、お互いの言い分が大きく食い違うケースも非常に多いのが実情です。裁判官によっては、アバウトにお互いの監護割合を確認したいので「これまでの育児の割合として、あなたの比率と旦那さんの比率だとどのくらいですか?」と質問してくることも多いのですが、そのようなときに、あなたは9対1と答え、夫側は、自分の方が比率が高く7対3(夫7で妻が3という趣旨)と答えるなど、言い分が大きく食い違うことが往々にしてあります。

 それでは、裁判官はどのように監護実績を判断するのでしょうか。

(2)一番大きな鍵になるのが連絡帳
 お子様を保育園に通わせている場合には、毎日連絡帳を記帳していることも多いと思います。このように連絡帳を誰が記入しているのか、どこまでの内容を書いているのかという点は非常に重要な判断要素になります。
 率直に言いますと、監護実績について端的に証明できる証拠は通常ほとんどなく、連絡帳がほぼ唯一の証拠と言えるからです。連絡帳は、日々、自然な形で記帳していますので、当時の様子を探る貴重な資料とされることが多いのです。

(3)育児日記は?
 親権紛争で時折問題になる「育児日記」というのは、自主的にノートなどに普段のお子様の様子やかかわり方等を定期的に記帳した日記のことを言います。
 当時から毎日記帳していたということを相手側も認めているようでしたら、育児日記も貴重な資料となります。ただ、相手が「妻は普段からそんな日記は付けていなかった。今回の手続きに備えてバックデートで作ったものに違いない」などと言ってきた場合には、それほどの証拠価値は認められなくなってしまうことも多いです。

 特に育児日記とは言っても、大切なイベントなどがあったときのことしか書いていないというものについては、本当にその日に作成したのかという点の証明が難しいのが難点です(連絡帳の場合、毎朝記帳しなければならず、その後に毎日保育園の保育士の返答コメントがありますので、バックデートで作成することは非常に困難です)

(4)お互いの勤務形態も重要
 同居中のお互いの勤務形態も、育児への関わり具合を探る重要な判断要素になります。
 例えば、夫側は毎日遅くまで仕事をし、他方妻側は専業主婦だったという場合には、妻側の方が育児に関わる場面は大きかったということになります。同様に、共働きでも、妻側は時間短縮勤務で、夫側はフルタイム勤務という場合にも、妻側の監護割合の方が大きいと判断されやすいと思います。

(5)写真は?
 写真をどこまで重視するかは裁判官によるところが大きいです。裁判官によっては、お子様との関わりを示す資料になるので、「写真も出してほしい」とリクエストしてくることもありますが、全体的には少数派ではないかと思います。
 写真はどうしても普段の様子というよりは、旅行等特別な行事の時などに撮影することが多いので、「普段の監護実績」の証明資料としては弱いという面があります。

 

 

3.まとめ


・監護実績についてはお互いの意見が大きく対立することが多い。
・連絡帳は監護実績を探る貴重な資料とされることが多い。
・育児日記は、それまでの作成経緯、相手がどこまで争ってくるのかによる
・お互いの勤務形態等も監護実績を探る客観的状況として重要である。
・写真は、あまり重視されない傾向が強い。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(24)】「今後の監護計画」はどこまで重視されるか

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「今後の監護計画」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.「今後の監護計画」って?


 「今後の監護計画」と言われても、初めて聞くとピンとこないことが多いと思いますが、要するに「今後お子様をどのように育てていくのか」といことです。
 より具体的に言いますと、①どこに住んで、②誰と一緒に生活し、③どの保育園・学校に通い、④週末や長期休暇時にお子様にどのような体験をさせ、⑤離れて暮らす夫との面会交流をどうしていくのかといった今後の具体的な計画になります。

 

 親権者について夫婦間で激しい争いがある場合には、裁判官から「子の監護に関する陳述書」を作成するよう指示されることがあるのですが、「今後の監護計画」も当該陳述書の記載項目の一つになります。

 このような監護計画は、短くまとめてしまいますと、「実家の両親が住む○○県○○市の一軒家で、子供にとっては母親である私、祖父母と一緒に暮らしていく予定です。実家から徒歩10分ほどのところに認可保育園がありますので、そこに通園させる予定です。実家の近くには大きな公園や山があるので、週末などは自然に存分に触れ合って暮らしていく予定です。夫とは月1回程度は直接子供と会ってもらう予定です」というような形になります。
 ただ、人によっては、もっとより具体的で、子供にとっても素晴らしい環境であることを強くアピールしたいということを強く仰る方もいます(人によっては、監護計画だけで、3,4ページほどの文章を練り上げてくる人もいます)。

 

 

3.監護計画はどこまで重視されるか


 監護計画については、特に「お子様について特別なケアが必要な場合」には、しっかりと記載する必要がありますが、そうでなければ、そこまで重視される要素ではありません。
 なぜなら、監護計画はあまり具体的な裏付けがなくとも記載できる項目なので、それを全て実現できる保障がないからです。

 なお、ここでの「お子様について特別なケアが必要な場合」というのは、例えば、お子様に障害等がある場合とか、不登校になってしまっていたりとか、現在は児童養護施設に保護されており、施設退所後のケアが必要になるケース等が想定されます。お子様に障害等がある場合には、どのような支援学校に通わせるのか、医療的措置が必要ならば、どのような病院に通院させるなどするのかといったことを具体的に書く必要がありますし、不登校になってしまっている場合には、学校とどのように連絡を取ってケアしているのか、スクールカウンセラー等をどのように利用しているのかといったことを書く必要があります。児童養護施設に保護されている場合には、児童相談所とどの程度連絡を取って、同所とどの程度の信頼関係が築けているのかといった点を記載していくことになります。

 

 

4.実績を伴わない計画は裁判官の心に響かない


 いくら素晴らしい監護計画を披露しても、これまでの監護実績が不十分ですと、そのような計画を実践できるのか、裁判官は疑念を持ってしまうと思います。
 なぜなら、これまでしっかりお子様と関わってこなかった人が、「これからはしっかりと育てていきます」と言っても簡単に信用されないからです。
 従いまして、やはり親権紛争については、今後の監護計画というよりも、これまでの監護実績の方が重要性が高いです。
 これまでの監護実績が十分なものでしたら、今後もその親に任せた方がお子様も安心だと感じるでしょうし、また、お子様のことを大切に思っていたからこそ、それだけこれまでも関わってきたのだと言えるからです。

 そのため、「子の監護に関する陳述書」を記載するときなどにも、「監護計画」よりもこれまでの育児やお子様への関わりの箇所の方に重点的に具体的な事情を記載してもらうよう私の方からお願いすることが多いです。

 

 

5.まとめ


・今後の監護計画は、そこまで重視される要素ではない。

・お子さんのケアが必要な事案では、どのようにケアしていくのかを具体的に記載しなければならない。

・実績を伴わない計画は、裁判官の心には響かない。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(23)】1回家庭訪問をして問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「1回の家庭訪問の持つ意味」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.家庭裁判所調査官があなたの自宅を訪れて家庭訪問を実施し特に問題なさそうだとなった場合、安心して良いか?


 そもそも、離婚・親権に関連して家庭訪問が実施されることは、いくつかのテーマ、タイミングによっていくつかのパターンが想定されますので、今回の家庭訪問がどの手続との関係で行われたのかという点が重要な意味を持ってきます。

 そのため、代表的な例に絞って以下の通り解説していきます。

 

(1)離婚調停の中で家庭訪問が実施された場合

1)面会交流の関係で家庭訪問が実施された場合

 離婚調停の中で親権が激しく争われている場合、親権の適格性を判断するための調査は実施しないことの方が多いです。

 そのため、調停手続きの中で家庭訪問が実施されるのは、①離婚調停と平行して面会交流調停も起こされており、②その面会交流の話し合いの助けになるように家庭訪問を実施するというケースが圧倒的に多いと思います。

 このような面会交流の関係で家庭訪問をする場合、この家庭訪問は、お子様が安心できる場所で調査官と顔合わせすることを目的としており、ご自宅の清掃具合や整理整頓の具合を確認することは目的としていません。調査官も仕事柄多少は室内の様子を確認するでしょうし、簡単に確認して、大きな問題がなければ「あまり問題なさそうですね」といった言葉を発することもありますが、このことは親権とは全く無関係です(あくまで、面会交流との関係で家庭訪問している以上、やむを得ません)

 

2)親権の関係で家庭訪問が実施された場合

 あまりケースは多くないと思いますが、夫婦双方が調査官が示す方向性には従うと事前に決めた上で、家庭訪問等を実施する場合もあります。

このようなケースですと、家庭訪問の際に、調査官から「問題ありませんね」といわれると安心してしまうと思います。

しかし、調停はあくまで話し合いの手続ですので、調査官の調査手法や調査範囲について夫側が納得しないと、後から「やっぱり調査官の調査報告には納得できないので、親権をイチから争う」と言われてしまいますと、調停手続きの中で親権者を決定することはできなくなります。

 もちろん調査報告書が出来上がりますと、その内容には一定の重みがありますが、あくまで夫側が反対した場合には、早期に親権者を決定することは難しくなります。

 

(2)離婚裁判の中で家庭訪問が実施された場合

 離婚裁判の中で家庭訪問が実施され、その際に調査官が特に問題がなさそうだという意見を述べていた場合、基本的には、非常に重要な意味を持つことが多いです。

 ただ、このような場合でも、他の手続との関係では油断禁物の場合もありますので、注意が必要です。具体的には、以下のような場合には、特に注意が必要です。

1)その後に夫側の家庭訪問を予定している場合
 あなたの家庭訪問が終わった後に、夫側の家庭訪問を予定している場合には、要注意と言えます。
 と言いますのは、裁判所が既にあなたに親権を委ねる意向が強い場合には、あなたの家の家庭訪問は実施しますが、夫側の家庭訪問は最初から実施しないというケースも多いです。
 もちろん、夫側の家庭訪問を実施するから敗訴の可能性が高いとまでは言えないのですが、夫側の家庭訪問なしのケースよりは慎重に臨む必要があります。
 また、あなたの家庭訪問時に家庭裁判所調査官が「特に問題なさそうですね」と発言しつつ、夫側の家庭訪問時にも同様に「特に問題なさそうですね」と発言するケースもあります。
 そうすると、あなたの家庭訪問時の調査官の発言だけをもって、あなたが大きく有利になったと考えるのは危険かもしれません。

(2)他にも大きな争点がある場合
 例えば、お子様に対する不適切なかかわり方(特に虐待の有無・程度など)などが争点になっていて、その問題の方がお子様の生活状況よりも重要性が高いケースもあります。
 そのような場合には、家庭訪問で大きな問題がなかったからと言って、安心するのは早いかもしれません。

(3)その後のお子様の発言等
 前述のように家庭訪問を実施しても、その後に、調査官がお子様と直接会って話をする機会が設けられるケースが多いです(お子様の年齢によりますが)。
 家庭訪問の際にも、あなたとお子様とが触れ合っている様子などは確認するのですが、お子様があなたと一緒ですと、あなたに遠慮して話をする可能性もあります。その確認の意味もあって調査官はお子様と1対1で話をしたいと言ってくるのが通常です(お子様があまり小さい年齢の場合には、1対1での話しは家庭訪問時に行うケースもありますが)。
 そのような1対1の話し合いでのお子様の様子や発言も、親権紛争では重要な意味を持つことが多いです。

 

 

3.「現在の監護状況」も総合的な考慮要素の一つであるということ


 家庭訪問は、親権紛争の中でも重要なイベントであることは間違いありません。

 ただ、家庭訪問では、現在のお子様の養育環境等が分かるだけで、別居前の様子までは分かりません。

 親権を決めるにあたって、家庭訪問の中で調査官が把握した「現在の監護状況」はとても大事なのですが、その一点だけで親権者が決まるわけではなく、過去の監護実績や、過去の虐待の有無など、色々な事情を総合して親権者は決定されますので、家庭訪問の結果だけに目を引かれないよう注意が必要です。 

 

 

4.まとめ


・離婚調停の際の家庭訪問は、親権との関係では、あまり大きな意味を持たないことの方が多い。

・離婚裁判の家庭訪問時に特に問題がないとの発言があったとしても、その後の以下の調査の内容によっては安心できない。
 ①その後の夫側の家庭訪問
 ②他にも大きな争点がある場合
 ③その後のお子様の意向調査結果
・親権の判断は色々な要素の総合判断だということを忘れてはならない。

 

 

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【絶対に夫に親権を渡したくない(22)】尋問や調査官面接に対してどこまで対策しておくべきか

2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配


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 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「尋問・調査官面接」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.「尋問」・「調査官面接」って何?


 「尋問」や「調査官面接」と言われましても、ピンとこない方の方が多いと思いますので、ご説明しますと、「尋問」とは、裁判所の事件審理にあたって、当事者本人や証人から事情を聴くこと、などと言われます。
 よくドラマなどで、法廷の真ん中に証人等が座って、お互いの弁護士がそれぞれ証人等から話を聞く手続きがあると思いますが、それが正に「尋問」の手続きです。

 なお、「尋問」というと言葉の響きから、警察が行う「取調べ」似たものとイメージしがちですが、全く異なる手続きです。捜査官が取調室といういわば密室で行う「取調べ」ではなく、公開の法廷でお互いの当事者も参加して実施されるのが「尋問」なのです。

 この「尋問」は離婚裁判になった場合に行われる手続でして、離婚調停の中で「尋問」を行うことは基本的にありません。

 

 これに対して、調査官面接というのは、事件を担当する家庭裁判所調査官が、会議室のようなところで事情を確認する手続きです。
 「尋問」と「調査官面接」の大きな差は、①実施場所、②相手側当事者の手続参加、③所要時間、④代理人の関わり、⑤秘匿可否、⑥その結果がどのような書面に登載されるかという点ではないかと思います。

 詳しく整理しますと
① 実施場所…「尋問」は法廷、「調査官面接」は会議室のようなところ(面接室が多い)
② 相手当事者の手続参加…「尋問」は、相手当事者側が見ているところで実施、「調査官面接」は、相手当事者側が見ていないところで実施
③ 所要時間…「尋問」は短いことが多い(長くても通常は30分程度)「調査官面接」は長いことが多い(一般的には1時間半から2時間程度)
④ 代理人の関わり…「尋問」では、当事者の回答に対して、代理人がすぐに何か口を挟むことは基本的にできないのですが、「調査官面接」の場合、代理人もその場ですぐに意見を差し挟むことができます。
⑤ 秘匿の可否…「尋問」では基本的に秘匿不可、「調査官面接」では一部秘匿可
⑥ 結果として作成される書面…「尋問」では、その概要について尋問調書が作成され、「調査官面接」の結果は、調査報告書に登載されることになります。

 

 なお、「尋問」では、親権というテーマだけではなく、離婚に至る事情や慰謝料の当否など、離婚裁判の中で争点となっている様々なテーマが質問事項になるのですが、調査官面接の場合には、ほとんど親権のことしかテーマにはなりません。このように取り扱う「テーマ」という部分でも、「尋問」と「調査官面接」には大きな差があります。

 

 

3.離婚調停・裁判で実施されるのは?


(1)離婚調停の場合

 前述の通り、離婚調停の中で「尋問」を実施することは基本的にありません。

 これに対して、「調査官面接」は、離婚調停手続きの中で実施されることもあります。ただ、親権について夫婦の対立が激しい場合には、「調査官面接」を実施せずに調停を不成立(終了)させてしまうことの方が多いと思います。そのため、実際に「調査官面接」が行われるのは、面会交流のテーマについて行われることの方が圧倒的に多いです。

 

(2)離婚裁判の場合

 親権について夫婦が互いに妥協しないという場合には、「尋問」と「調査官面接」両方実施するのがオーソドックスだと思います。

 ただ、裁判の場合、「調査官面接」及びそれに続く調査実施の後に、裁判官が強く和解を勧めてくることもあり、和解が成立すれば、「尋問」はせずに事件が決着することもあります。

 

 

4.「尋問」または「調査官面接」は何時頃に実施されるか?


 まず、離婚調停の場合、前述の通り、親権というよりも面会交流のテーマについて「調査官面接」を実施することの方が多いのですが、タイミングとしては、調停のかなり終盤で行われることが多いです。調停はあくまでも両当事者の話し合いの手続ですので、裁判所側も、調査官による調査は極力避けたいと考えることが多いからです。

 次に、離婚裁判の場合も、「調査官面接」や「尋問」は、かなり終盤で行われることが多いです。なお、事案にもよりますが、一般的には、「調査官面接」や家庭訪問といった家庭裁判所調査官による一通りの調査がすべて終了し、調査報告書も出来上がった後に、「尋問」を実施することが多いと思います。

 

 

5.どこまで準備すべきか?


 率直に申しますと、「調査官面接」の場合には、その事件のポイント等を押さえておけばよく、そこまで詳しい準備まではしないことの方が多いです。調査官面接の場合には、あなたの横に弁護士が座って、適宜フォローすることができるからです(但し、あくまで調査官に対して主体的に話をするのは、あなた自身です)。

 なお、「面接」と聞くと、「面接試験」のように誤解してしまう方も多いのですが、「面接試験」とは全く異なります。調査官面接のときに、誤解して発言してしまったような場合には、「誤解してしまいました。実際にはこういうことでした」などと訂正することもできますし、そこまで堅苦しく考えなくても大丈夫です。

 
 これに対して、「尋問」は、あなたの弁護士がその場ですぐにフォローすることが難しいですし、話した内容をすぐに撤回することもできませんので、かなりの準備をして臨むことが多いです(通常は、弁護士事務所で事前にリハーサルなどを実施します)。

 

 

6.まとめ


・「尋問」と「調査官面接」とでは、様々な違いがある。
・離婚調停の中で「尋問」を行うことはないが、「調査官面接」を行うことはある。

・これに対して、離婚裁判の場合、「尋問」と「調査官面接」両方行うこともある。

・離婚調停・離婚裁判いずれについても、「調査官面接」等は最終盤で行われることが多い。
・「調査官面接」ではあまり事前準備はしないことも多いが、「尋問」はしっかり準備する。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【絶対に夫に親権を渡したくない(21)】「子の監護に関する陳述書」の書き方のコツ

2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「子の監護に関する陳述書」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.「子の監護に関する陳述書」って?


 「子の監護に関する陳述書」という文字面だけを見ますと、いかにも重々しい文書のように感じてしまいますが、これは、夫婦の双方が、裁判所が指定するフォーマットに則ってお子様に関する事項を記載して提出する書類のことを指します。具体的にどのようなことを書くのかといいますと、これまでのお子様の成育歴、それに対するあなた自身の関わり方、あなた自身の生活状況や今後の監護計画等を記載していくことになります。これを見れば、裁判所の方も、お子様がどのように育ってきたのか、あなたが今後どのようにお子様を育てていこうとしているのかの概要を把握することができる書類ということになります。
 東京家庭裁判所で提出を要求される書式についてはインターネット上に公開されておりますので、参考になさって下さい。
 なお、「子の監護に関する陳述書」の書式は各裁判所によって記載項目等が少し異なっているので、以下では、東京家庭裁判所の例で解説いたします。

 

 

3.「子の監護に関する陳述書」の書き方のコツ


 「子の監護に関する陳述書」は書式が決まっておりまして、記載例もありますので、記載例を参考にすれば、作成そのものはそこまで難しくありません。ただ、この陳述書の中でも、特に裁判官が重視する部分というものがありますので、漫然と記載するのではなく、「特に裁判官が重視する部分」について手厚く記載していく必要があります。
 特に裁判官が重視する部分は、以下の点になります。

(1)「これまでの監護状況」
 簡単に言いますと、お子様の衣食住に関連して、どのような育児を担ってきたのかという点です。「子の監護に関する陳述書」の記載項目の中で最重要と言っても過言ではない事項と言えます。
 そのため、「これまでの監護状況」の部分については特に重点的に記載する必要があります。
 なお、その記載に当たっては、以下のような点を考慮して下さい。
  ①お子様の成長具合に応じて区分けして記載する。
  ②監護割合については、極力明示する。
  ③習い事での関わりも記載する。

「①お子様の成長具合に応じて区分けして記載する」というのは、例えば、お子様が小学校に入学する前の段階、小学校入学後、中学校入学後といったように時期を分けて記載するといったことです。このように区分けすることで、どの時期にどのような育児をしてきたのかを詳しく記載することができます。

「②監護割合については、極力明示する。」というのは、例えば、「寝かしつけはほぼ100パーセント私が対応していました」とか「保育園への送りは私が80パーセント程度対応していました」というように、どのくらいの比率で対応していたのかを明記するということです。

「③習い事での関わりも記載する。」というのは、そのままの意味なのですが、皆さん、家庭内での様子や保育園、学校との関わりは漏らさずご記載されるのですが、習い事との関わりの記入を失念してしまっているケースが多いので、ご留意して欲しいということです。

(2)「一日の生活状況」
 この項目には、現在の生活スケジュールだけではなく、別居前の生活スケジュールを記載することも多く、そのスケジュールを見ますと、お子様がどのような生活を送ってきたのか、あなたがどのように関わってきたのかが端的に分かるので、これも重要な記載になります。

 なお、「子の監護に関する陳述書」は、色々と情報を盛り込んでいるとどうしても長文になりがちです。このように陳述書が長文になってしまった場合、家庭裁判所調査官は、この「一日の生活状況」の部分を、陳述書の「要約部分」と捉える傾向がありますので、この「一日の生活状況」の部分には、敢えてこちらが注目して欲しい箇所を盛り込むなどして工夫することも多いです。

(3)「今後の面会交流についての考え方」
 一般的に、お子様は両親双方と関わりを持ち、双方の愛情を受けながら育った方が望ましいとされています。
 そのため、夫婦のどちらか一方が親権者になったとしても、もう片方の親との交流をどこまで認めるのか、配慮できるのかという点は、重要な要素とされています。

(4)あとは事案に応じてということになる
 これまでの解説は、どの事件でも一般的に重点的に記載すべき項目についての解説でして、事件によっては、他の項目が非常に重要になってくるケースもあります。
その場合には、当然その項目についても重点的に記載する必要があります。
 具体的には、弁護士に相談し、事件に応じて重点項目の洗い出しを行ったほうが良いかと思います。

 

 

4.夫からのモラハラ被害や虐待行為はどこに書くのか?


(1)あなた自身が夫からモラハラや暴力被害を受けた場合
 あなたが夫からモラハラや暴力被害を受けてきた場合で、そのことでお子様自身も心を痛めてきたというような場合には、親権紛争にも関連する事情と言えます。
 ただ、「子の監護に関する陳述書」は、前述の通り、お子様のこれまでの成育歴等を記載する書面ですので、そこに、夫からのモラハラや暴力を記載することは一般的にしません。
 そのため、これらの事情は別途主張書面と言った書面にまとめて提出することが多いかと思います。

(2)お子様ご本人への虐待について
 お子様ご本人への虐待についても基本的には前述と同様でして、ストレートに「子の監護に関する陳述書」には盛り込まないことの方が多いかと思います。
 ただ、①当該虐待行為があまりに苛烈な場合や②その虐待によってお子様の体調や登校状況等にまで悪影響を及ぼしている場合には、これまでのお子様の成育歴等とも直接関連する事情になりますので、関連する範囲で記載することもあります。

 

 

5.じっくりと弁護士と練り上げて作ること


 私は、セカンドオピニオンを求められることも多いのですが、残念ながら、弁護士によっては「どうせ女性側なら苦労しなくても勝てますから」とか「陳述書は出しておけばそれでいいんです」といった説明をしていることもあり、そのことも災いして親権で敗訴してしまったというケースも目にします。

 「子の監護に関する陳述書」は、親権紛争においては、親権に関するこちらの言い分を総まとめするような極めて重要な書類になりますので、じっくりと弁護士と相談しながら文章を練り上げていくことが重要になります。

 

 

6.まとめ


・「子の監護に関する陳述書」の中では「これまでの監護状況」という項目が最重要である。
・「これまでの監護状況」の記載に当たっては以下の点を考慮したほうが良い。
  ①お子様の成長具合に応じて区分けして記載する。
  ②監護割合については、極力明示する。
  ③習い事での関わりも記載する。
・「一日の生活状況」「今後の面会交流についての考え方」の項目も、他の項目と比較すると重要性は高い。
・他にも事案に応じて重点的に記載したほうが良い項目が出てくることもあるので、弁護士と相談したほうが良い。
・夫からのモラハラ被害や虐待といった事情は「子の監護に関する陳述書」ではなく、主張書面等で別途まとめることが多い。

・「子の監護に関する陳述書」とても大事な書類なので弁護士とじっくり相談しながら練り上げていく必要がある。

 

 

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