離婚問題

婚約者が浮気した!慰謝料を請求する場合の5つの注意ポイント

2018.08.07更新

 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説いたします。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 婚約者の不倫に直面した時、初めはショックで何も考えられない、ということも多いと思います。気持ちを建て直して、まず考えなければいけないのは、婚約関係を解消するかどうかの問題だと思います。

 

それでは、婚約関係解消を決意した場合、婚約者がしたことに対して何もしないということは到底許せないと思いますが、慰謝料請求する場合、どのような注意ポイントがあるのでしょうか。

 

特に弁護士に依頼するかどうかは悩みどころだと思いますので、以下のような事情も参考にして弁護士に依頼するかどうかを検討していただければと思います。

 

 

1.婚約関係の証拠


 

 婚約者が婚約関係の存在を認めていればあまり大きな問題になりませんが、これを争ってくる可能性があるという場合には、その証拠を準備しておいた方が安心できます。

そもそも、婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 しかし、相手が「婚約していない」と主張してきた場合には、こちらから婚約の存在を証明しなければならなくなるため、証拠としてどのようなものがあるのか準備しておく必要が出てくるのです。

 

 

2.不倫の証拠


 

2つめの注意ポイントは不倫の証拠の有無になります。

 

不倫とは他の女性と肉体関係を持つことを意味しますので、「デートをしているところを目撃した」とか「手をつないでいるところを目撃した」というだけでは十分とは言えません。

 

また、婚約者と話をして一旦は不倫を認めたとしても、ICレコーダー等で録音しておかないと、後から婚約者が発言を翻す危険性もあります。

 

そのため、婚約者の不倫の証拠としてどのようなものがあるのか、その証拠がどの程度客観的なものなのかについては慎重に検討する必要があります。

 

もちろん、私の方から婚約者宛に通知を送ったところ、婚約者側が不倫を争わないというケースは相当数あるのですが、逆に、徹底的に争ってくるというケースもありますので、十分準備しておきたいところです。

 

 

3.相手の支払能力


 

3つめの注意ポイントは、相手の支払能力になります。

 

簡単に言いますと婚約者が十分な貯蓄をもっているか、または、キチンとした定職に就いているかの問題です(つまり、お金を支払う十分な能力があるかどうかの問題です)。

 

仮に、裁判で慰謝料の支払を命ずる判決が言い渡されましても、相手が無職で、ほとんど貯蓄もないようでしたら、金銭の支払いを受けることは難しくなります。

 

そのため、慰謝料請求にあたっては、婚約者の支払能力も見極める必要があります。

 

 

4.いくら請求するか


 

 上記の様な婚約者の側の支払能力も考慮に入れつつ、相手に請求する金額を決定することになります。

 なお、最終的な落としどころと考えている金額よりも、最初の請求額は高めにすることが多いです。最初の請求額を相手が受け入れてくれればよいのですが、値引きを要求してくる可能性もありますから、最初は多少高めの数字を請求していくことになります。

 

 ただ、あまり高額の慰謝料を要求してしまいますと、相手が強く反発してくる危険性もありますので、相手の性格も多少考慮しつつ請求額を決定していく必要があります。

 ちなみに、婚約者に対する不倫慰謝料は、結婚している夫への不倫慰謝料よりも低額になりがちだと言われておりますので、この点は考慮する必要があるかもしれません。

 

 

5.不倫相手を訴えるかどうか


 

 この問題は大きく二つの問題を含んでいます。

 

具体的には、①不倫相手の住所などを調べられるのか、②不倫相手の住所などが分かっているとして不倫相手を巻き込むかの二つの問題です。

 

まず、一つめの問題ですが、弁護士の調査権限には限界も多いため、弁護士に相談すれば不倫相手の住所も調べてくれると考えないで頂いた方がよいと思います。もちろん、ご依頼がありましたら、調査を致しますが、不倫相手の住所を突き止められないと言うことも往々にしてあります。

 

次に、不倫相手まで巻き込むかという問題ですが、これは、婚約者への請求との兼ね合いで問題になります。

 

少し難しい話になりますが、不倫は、婚約者と不倫相手の共同加害行為と言うことになりますので、婚約者側から慰謝料全額を回収した場合、不倫相手には慰謝料請求できないという関係にあります。

 

簡単に言いますと、慰謝料の金額が、200万円が妥当であるというケースの場合、婚約者が200万円を支払ってきた場合、不倫相手からは慰謝料をもらえないと言うことになります。

 

慰謝料200万円が妥当という場合、婚約者側から200万円プラス不倫相手から200万円の合計400万円もらえると誤解されている方もいらっしゃいますが、そうではなく、どちらかから200万円ということになります。

 

ですので、不倫相手に請求するのは、婚約者が支払いを渋っているだとか、不倫を認めていないといった場合が多いと思います。

 

ただ、お金の問題はさることながら、不倫相手の女性が何事もなく生活して行くことは許せないと思いますので、不倫相手の女性への制裁の意味も込めて、慰謝料を請求するというケースもあります。詳しくは弁護士秦(はた)までご相談いただければと思います。

 

 

6.まとめ


・婚約者が浮気した場合の不倫慰謝料請求については大きく分けて5つの注意ポイントがある。

・請求前に婚約関係の証拠は確認しておいた方がよい。

・請求前に浮気の証拠は確認しておいた方がよい。

・請求にあたっては相手の支払能力を考慮する必要がある。

・請求にあたっては請求額をいくらにするか決める必要がある。

・婚約者だけではなく不倫女性も相手にするかを決める必要がある。

 

  

弁護士に会って相談することは、少し勇気のいることかもしれませんが、ほとんどの方が「弁護士と話をするのが初めて」という方ばかりです。

 

費用のことや依頼する場合の流れ、注意点など不安なことがあれば無料相談で解消いたします。

 

平日は夜間22時までご相談を受け付けております【午後6時までに予約が必要】ので、いつでもお気軽にご予約をいただければ幸いです。

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

婚約者の浮気が発覚!どのように対処すべきか?

2018.07.31更新

 

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1.そもそも相手と婚約が成立しているか?


 

 あなたと男性との関係が婚約と言える場合には、お互いに貞操義務を負っておりますので、相手の浮気に対して慰謝料請求と言った法律上の権利が発生しますが、婚約関係にないという場合には、法律上慰謝料と言った権利は発生しません。

そのため、あなたとその男性との関係が婚約と言えるかどうかは重要なポイントになります。

 

 婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 ただ、紛争になると相手男性も「婚約していない」と主張してくる可能性もありますので、その場合には、婚約の裏付けを提出しなければならなくなるケースもあります。

 以下では、婚約関係にあるという前提で解説いたします。

 

 

2.婚約者が浮気しているかもしれない―まずしなければ行けないことは


 

 

 唐突に婚約者との連絡が途絶えがちになった、共通の友人が婚約者の疑わしい行動を目撃したなどなど、婚約者の浮気が疑われる事情はいくつかあると思います。

 婚約関係が上手く行っている間は、基本的に婚約者の言葉を信じて、「仕事が忙しくて連絡が取りにくいんだ」と自分に言い聞かせていたことと思います。

 

 しかし、ふとしたことから婚約者が浮気をしている疑惑が生じた場合、まずは、その裏付けを得ることが非常に重要だと思います。

 単なる疑惑の段階で婚約者を直接問いただすという方法もあるのですが、そうしますと婚約者はしらを切る可能性もあり、リスクがあります。

 

 そのため、浮気の疑いを持った場合、婚約者が本当に浮気しているのか自分でも確証を得られるだけの証拠を掴むのがベストです。

 合わせて、相手が婚約関係を否定する可能性もありますので、その場合に備えて、あなたと男性との関係が婚約と言える様な証拠も集めておくのが無難です。 

 

 

3.その後は婚約者との話し合い 


 

 

 婚約者の浮気に関する裏付けが取れた後は、直接婚約者を問いただすことになります。

 婚約者の口から直接浮気していたとの言葉を聞くこと自体が非常にショッキングで、大きな精神的苦痛を伴う作業ですが、この点を確認せずに将来の結婚生活を目指して良いはずはありませんので、気力を振り絞って対応して頂ければと思います。

 

 この話し合いでは、ただ単に浮気をしていたかどうかだけではなく、その経緯や浮気の頻度・回数、不倫相手がどのような人物なのかなどについても問いただすことができればベストです。また、婚約者が嘘の説明をしてくる場合もありますので、場合によっては婚約者側の携帯電話におけるメールやSNSでの不倫相手とのやり取りを全て開示するよう要求すべきケースもあります。

 

 

4.婚約者との話し合いを進めて行くにあたっては信頼できる人物に相談しながら進めた方が良い 


 

 

 婚約者の浮気という事実は、あなたにとって非常にショッキングな出来事になりますので、通常は冷静に対処することは難しいことが多いです。

 そのため、何かを決断するにあたっても、どのような方法がよいのかについて冷静に判断できないことも多々あります。

 

 そこで、ご実家のご両親や親しい友人など信用できる人物に相談しながら、婚約者との話し合いを進めた方が良いです。

 

 たまに、「こんな話を両親にすると心配をかけるから、話せない」とか「私ももういい歳なので、こんな話を両親にするのは恥ずかしい」というようなことをおっしゃる方もいますが、誰かに話を打ち明けるというだけでも、随分気持ちがスッキリします。

 そのため、自分一人で抱え込まないで信頼できる方一人でよいので、相談しながら進めることをオススメします。

 

 また、婚約者本人同士での話し合いが上手く行かない場合には、お互いのご両親も交えて話し合いをするといった方法も検討してみて下さい。

 

 

5.自分の向かうべき方向性を決めること


 

 婚約者との話し合いで、浮気の全体像を把握した後は、あなた自身が婚約関係を今後どのようにしていきたいかを慎重に検討する必要があります。

 要するに婚約を解消したいのか、相手の浮気を今回に限って許すのかということです。

 

 これまでの婚約者との話し合いの中で、あなた自身も感情的になって婚約解消といった言葉を口にしてしまったり、婚約者からも同じような話があったかもしれませんが、その点はまず置いておいて、今のあなた自身の心境として別れたいのかやり直したいのかを慎重に考えて下さい。

 

 このような検討は重要な話ですから、前述のように信頼できる人物とも相談しながら決定するのが望ましいと思います。

 ちなみに、相手の浮気を理由にして婚約を解消する場合、あなたが解消を言い出すことにはもっともな理由がありますので、相手の方から「婚約の不当破棄だ 」といったことを言われてもあまり気にする必要はありません。

 

 

6.向かうべき方向性が決まったら、その方向に向かって進んでいく


 

 あなた自身が内縁解消をご判断されたのであれば、相手と内縁解消の条件について話し合いをしていくことになります。

 内縁解消の条件は重要な事柄ですから、協議書や覚書といった書面でしっかりとまとめていくことをオススメします。

 他方、あなたが今回に限りやり直すという選択をした場合、内縁の夫側には不倫誓約書を書かせるということになります。

 

 

7.最後に


 

 このような不倫の問題は、発覚に伴ってあなた自身が精神疾患にかかるなど、大きく体調を崩してしまうことも多々あります。

 このような問題はあまりズルズルと引き延ばしたくはないでしょうが、性急に進めると後悔してしまうこともありますので、ご体調にも配慮しながら、じっくりと進めていくことをオススメします。

 

 

8.まとめ


・ 婚約者の浮気が発覚した場合、まずは証拠固めをした方が良い。

・ 婚約者と話をする際には、浮気の詳しい内容も確認しておいた方が良い。

・ 信頼できる人物と相談しながら話を進めていくと良い。

・ 今後の方向性をキチンと自分の中で固める。

・ あなた自身の体調面にも気を遣いつつ、焦らずに話を進めない方が良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が解説】婚約破棄で請求できる慰謝料額は?

2018.07.24更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.婚約って?


 

婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 

 

2.婚約破棄の問題は最終的には慰謝料で調整せざるを得ない問題になってしまう。


 

 婚約が成立している場合、お互いに誠実交際義務が発生しますので、一方的に相手との連絡を絶ったり、一方的に交際中止を宣告すると、この誠実交際義務違反になります。

 このように相手の一方的な行動は「約束違反」にはなるのですが、法律で誠実に交際することを強制することはできません。交際は男女の自発的意志によって営まれるべきものであって、法律が強制することに馴染まないからです。

 従って、婚約破棄の問題は、最終的には慰謝料という金銭的な問題として解決するしかないと言うことになります。

 

 

3.では慰謝料はいくらもらえるの?


 

 婚約破棄のケースは、交際状況や破棄理由、経緯等を含めて多様ですので、一概にいくらぐらいという相場をお話しすることは難しいのが実情です。

 但し、相手に明らかな問題点(浮気や暴力)がないケースですと数十万円から100万円程度とされることが多いように思われます。繰り返しになりますが、婚約破棄の慰謝料額はケースによって千差万別ですので、「100万円程度はもらえる」と誤解しないようにして下さい。数十万円から100万円というのはあくまで目安の一つに過ぎないとお考え下さい。

 

 また、判例を見ておりますと、相手の浮気や暴力等大きな問題があるケースですと100万円以上の高額な慰謝料額を認めたものもあります。

 なお、たまに婚約関係は維持するけれども彼氏の浮気が許せないので慰謝料を要求したい、というご相談を受けることがありますが、法律的には婚約破棄に至った場合にしか慰謝料は発生しないケースが多いように思われます。そのため、相手が任意に慰謝料を払うのであれば別ですが、裁判なども視野に入れなければならないとすると、婚約関係を維持しつつ相手に慰謝料を請求するのは難しいかもしれません。

 

 

4.慰謝料の金額はどのような要素から決定するの?


 

 上記の通り、慰謝料の金額はケースによって様々ですが、判例上、どのような点が重視されるのかというポイントはあります。以下では、その様なポイントについて解説していきます。

 

(1)相手に重大な有責性があるかどうか

 この点はおそらく慰謝料額算出にあたって最も重視される項目ではないかと思います。

 なお、相手の行動や言動が原因で婚約解消になったというだけでは足らず、明らかに相手の行動に大きな問題がある必要があります。

 

 より分かりやすく言いますと、相手が浮気をしたとか相手が頻繁に暴力をふるってきて怪我させられたことがあるといったケースです。

 これらのケースですと明らかに相手に大きな問題点がありますので、婚約破棄の慰謝料増額の事情となります。

 

(2)妊娠等お子様に関連する事情

 あなたが相手男性との間で妊娠した場合や中絶・流産してしまったケース、出産したものの、それをきっかけに相手が疎遠になったというような場合、あなたには身体的な負担も生じておりますので、慰謝料増額事由になり得ます。

 

(3)婚約破棄によってあなたの体調に変化等があったかどうか

 相手からの一方的な婚約破棄によって、あなたもショックで体調を崩してしまうと言うこともあると思います。

 その様な場合に、あなたが心療内科等に通い始め、心療内科等から正式な診断を受けたという場合には、慰謝料増額事由になり得ます。

 

 なお、心理的な不調については、医学的には原因の特定が難しいと言われることもありますが、婚約破棄と時期を近くしてあなたが心療内科に通わざるを得なくなったといったケースでは、婚姻破棄が原因の可能性が高まると思います。

 

(4)結婚に向けての準備がどこまで進んでいたか

 結婚に向けては、結婚式の挙式や披露宴、結納の授受、婚約指輪の授受、お互いの両親への紹介や友人への紹介、新居の購入や賃貸借契約の締結、婚姻届の作成といった事が行われます。

 これらの行為のうちどれについてどの程度の準備が行われたかという点が慰謝料の考慮要素になります。

 

 例えば、既に先方も婚姻届にサインまで完了していたり、新居の賃貸借契約を締結し家具も既に購入していると行った場合には慰謝料増額事由になりやすいでしょう。

 

(5)交際期間等

 慰謝料の金額を決めるにあたって交際期間も考慮要素の一つにはなっているようですが、上記の(1)~(4)と比較すると考慮される程度は大きくないと思われます。

 なお、この交際期間には、半同棲期間や同居期間が含まれるのかどうかという点や婚約する前の交際期間がどの程度で婚約した後の期間がどの程度なのかという点も考慮されることがあります。

 

 

5.裁判も視野に入れるならば証拠が必要


 

 相手が過去の経緯等について自分に都合よく話してくる可能性があるようでしたら、こちらとしては裏付けを取っておく必要があります。

 婚約破棄の慰謝料で考慮すべき事情は上記の通りですので、それに沿うような資料を準備しておく必要があります。

 

 なお、相手男性との間のLINEのやり取りやメールも証拠になることがありますので、機種変更前の携帯電話のデータ等を確認する必要がでてくることもあります。

 

 

6.相手が婚約が成立していないと言ってきた場合の証拠の準備も


 

 また、婚約破棄のケースでは、相手から①そもそも婚約していない(通常の男女の交際の範囲である)とか、②一度は婚約したがこちらも同意して解消している、既に自然消滅しているといった反論が出されることがあります。

 そのため、婚約破棄の前提として、婚約が成立していること、その婚約関係が相手の破棄直前まで続いていたことを主張し、裏付けていく必要があります。

 

 

7.その他


 

 上記の通り、婚約破棄によってあなたが請求できる「慰謝料」の問題について解説してきましたが、慰謝料以外にも相手に損害賠償できるケースもあります。

 例えば、結婚式直前に相手の浮気が判明して破談になったというような場合には、結婚式のキャンセル料等も損害として相手に請求するといったケースです。このような挙式費用を損害として請求できるかは婚約破棄の時期や事情によるところが大きいと思います。

 

 また、婚約に伴って相手から強く退職を要請されたといった事情がある場合には、実際に再就職が成功する前の無職の期間の平均賃金を損害と認めたケースもあります。ただ、婚約に伴う退職については、昨今婚約・婚姻しても共働きをする夫婦が増えてきていることを踏まえ、男性側が強く退職を要求してきたといった事情がないと損害として考慮されにくいと思います。

 

 

8.まとめ


・婚約破棄で相手に請求できる慰謝料額に相場のようなものはない。

・慰謝料額決定にあたっては以下のような要素が考慮される。

 ①(暴力や浮気など)相手に重大な有責性があるかどうか

 ②妊娠等の事情があるかどうか

 ③婚約破棄によるあなたの体調変化

 ④結婚に向けた準備の程度

 ⑤交際期間等

・相手に慰謝料を請求して行くにあたっては、上記考慮要素についての裏付けを準備する必要がある。

 

 

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【弁護士が解説】婚約破棄の正当な理由とは?

2018.07.17更新

弁護士秦 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.婚約って?


 

 婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 

 

2.婚約は簡単に破棄できない?


 

(1)実際どうなの?

 インターネット記事などを見ていると、このような説明が多く見受けられるように思います。「相手から一方的に婚約破棄の話がされた場合、正当事由がないと、相手に慰謝料を請求できます」

 このような文章を見ると、相手が「破棄する」と言えば、それ自体は認められてしまい、後はお金で解決するしかないようにも読めます。そのため、今一破棄そのものができるのかできないのかがはっきりしないのです。

 

(2)法律的には債務不履行という見方をする。

 婚約が成立している場合、その男女は互いに誠実に交際する義務があります。そのため、相手が一方的に婚約を解消したいと言ってきて、こちらからの連絡に応じないようにすることは、この誠実交際義務に違反することになります。

 このように約束したことを守らないことを、法律上は「債務不履行」などと読んだりします。相手の一連の言動や行動は、この「債務不履行」と評価されるのです。

 そして、この誠実交際義務の債務不履行に対して、法律は、直接強制する手段を用意していません。「誠実に交際すること」というのは、本人の自発的意志に基づいて実施されなければ意味がありませんので、法律が強制することに馴染まないからです。

 

より分かりやすく言いますと、婚約は婚姻届の提出を目指した男女間の合意ですが、婚姻届を提出するという行為は他人が強制すべき内容ではありませんし、相手との愛情が失われた人に婚姻届の提出を義務付けることは望ましくないようにも見えると言うことです。

 そして、実際に入籍している場合には、こちらも同意して離婚届にサインしないと離婚できませんが、婚約の場合、戸籍などの手続はしていませんので、こちらが同意していなくとも、相手が交際を拒絶することで婚約関係を解消したのと同様の状況が作り出せてしまうのです。

 そのため、結局、婚約の破棄の問題は、慰謝料と言った金銭的な問題になってしまうのです。

 

 

3.それではどのような事情が婚約解消の正当な理由になるか?


 

(1)法律で離婚原因と定められている事情

 民法770条には離婚を強制できる事情が列挙されており、その様な事情があれば、基本的には婚約解消にも正当な理由があるとされます。具体的には以下の通りです。

①相手が浮気した場合

②相手が生死不明になり3年が経過した場合

③相手が強い精神疾患にかかり、回復の見込みがないとき

④相手が頻繁に暴力をふるい、今後婚約関係を継続することが難しいとき

 

(2)社会常識的に今後の婚姻を断念してもやむを得ない事情がある場合

 上記のような事情は、極端な事情でして、ある意味婚約解消が認められて当然のような内容と言えます。

 他方で、それ以外の事情として婚約解消の正当な理由とされるかどうかは、その男女の交際状況や交際期間等も考慮しつつ、社会常識的にやむを得ないというような事情と言えるかどうかと言う点から判断されることになると思います。

 

 判例上は、相手が結婚式直前に家出をして帰ってこなかったケースや相手に性的異常があるケースなどで婚約解消の正当な理由有りとされていますが、男女間のこれまでの交際状況や問題となった行為のタイミング等を総合的に考慮して判断していますので、単純に「相手に性的異常があれば婚約の正当理由があるとされる」と言うように一律に考えることはできません。

 

(3)では逆にどのような事情は「正当な理由」とみなされないのか?

 よく挙げられる例としては、相性・方位が悪い、家風が合わないといった事情は婚約解消の正当理由にならないとされています。

 また、判例を見ますと、親の反対や性格の不一致は、直ちに正当理由とはされていないようです。

 ただ、性格の不一致と言った点は、より詳しく事情を聴いてみると、実は男性側のモラハラだったというケースなどもありますので、あなたが相手と結婚が無理だと考えた詳しい事情を確認していく作業が必要になります。

 

 

4.婚約解消の前に婚約が成立しているのか、婚約が継続しているのかの確認を!


 

 あなたとしては婚約が成立していると考えていても、男女の交際の中での相手側からのリップサービスの類で、法律的には婚約とは言えないというケースもあります。

 

 また、一度婚約したと言えても、関係が冷え込んで、自然解消していると思われるようなケースもあります。

 このように現時点で婚約関係が残存していなければ、婚約の解消といった問題を考える必要もなくなります。

 そのため、婚約解消の正当理由云々の検討よりも前に、現実に今婚約関係がそもそも残っていると言えるのかをしっかりと検討した方が良いでしょう。

 

 

5.まとめ


・婚約しているとお互いに誠実交際義務が発生する。

・相手が一方的に連絡を絶ったような場合には、誠実交際義務に違反するが、「誠実に交際せよ」と法律で強制することは難しい。

・結局、婚約解消に正当な理由がないと、慰謝料責任の問題になる。

・相手の浮気や暴力等は婚約解消の正当な理由になるが、他の事情が正当な理由になるかどうかはケースバイケースである。

・婚約解消の正当理由を検討し始める前に、現状も婚約関係が残っているのか、そもそも最初から婚約が成立していないと言えないかを検討する必要がある。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が徹底解説】乳児を面会交流させる際の注意ポイント8選

2018.07.12更新

 

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1.そもそも乳児との面会交流に応じるべきか


 

(1)断固拒否すべき場合は断固拒否する

 夫の側が強く面会交流を求めてきても、あなたとしては、不安を抱えながら乳児を連れて面会交流場所に行き、その様子を見守るという作業そのものが、苦痛であったり、負担であると思います。

 夫があなたやお子様に対しても暴力をふるってきたといった事情がある場合には、面会交流そのものがお子様の福祉に反することになりますから、断固面会交流は拒否すべきかと思います。

 他方、面会交流そのものがお子様の福祉に直接反するとまでは言えないような場合、夫の態度を軟化させるための作戦として、敢えて面会交流を認めるという進め方をするケースもあります。

 

(2)面会交流させる場合でも、弁護士としては調停段階での面会交流がオススメ

 仮に、あなたが弁護士を立てたとしても、夫の側が面会交流の約束を反故にするというケースは少なからずあります。

 そのため、仮に、あなたが面会交流そのものを全面拒否するつもりではなく、しっかりとしたルールの下であれば応じて良いというお考えの場合、面会交流調停または離婚調停の手続の中で面会交流を進めていくことをオススメします。

 

 もちろん調停の手続の中での面会交流というのは、調停室でお子様を会わせるという意味ではなく、随時調停委員とも相談しながら面会交流の条件を決めて毎回の面会交流を実施すると言うことです。

 通常調停中に面会交流を行う場合には、次回調停までに1回面会交流させるという頻度のことが多いので、1回1回の面会交流の様子を見ながら、面会交流を進めていけますし、調停中に相手がルール違反をした場合、裁判所から見た相手の印象は非常に悪くなりますので、相手がルール違反をしにくいというメリットもあります。

 

 以下では、あなた自身が乳児であるお子様との面会交流を決意した場合に、どのような方法、進め方で面会交流を行うのがよいのか注意点等を解説していきます。

 

 

2.面会交流頻度


 

(1)一般的なケースでの頻度は?

 当然夫の側は頻繁にお子様に会いたいと主張してくるでしょうが、こちらとしては、あまり頻繁に会わせるというのは負担が増すことになりますから避けたいところです。

 面会交流の実務としては、月1回程度が一つの目安と言われることが多いのですが、乳児の場合には、一度体調を崩すと回復が遅れがちであるといった事情もありますので、このようなことも考慮して2か月に1回程度といった頻度で相手と交渉するケースもあります。

 

(2)敢えて最初は頻度を決めずに面会交流させることは?

 また、あまり最初から面会交流の頻度を決めずに、まずは、相手との面会交流を進めていく中で、問題点を整理していく形にし、最初から頻度を決めてしまわないというやり方をすることもあります。

 ただ、最初に頻度を決めずに面会交流を実施し始めてしまいますと、相手からすると、支障なく面会交流を実施したという実績を作っていくことにもなってしまい、今後面会交流の調停や審判を予定している場合、こちらに不利になる可能性があります。そのため、上記のような試験的な面会交流は、面会交流調停が開始した後にスタートさせるなどタイミングも考慮して進めていくのが望ましいと思います。

 

(3)監護権者指定仮処分や審判係属中の場合は? 

 監護権者指定仮処分や審判の手続が進んでいる場合、そちらの審理の様子も考慮する必要があります。

 これらの手続が進んでいるケースですと、面会交流を拒否する姿勢を取ることは、こちらにとって不利に扱われる可能性が非常に高まりますので、特別な事情がない限り面会交流を拒否することは望ましくないケースが多いです。

 そして、特別支障がなければ、月1回程度よりも頻度を多く面会交流させた方が、こちらにとっても有利だといわれることが多いです。

 監護権者指定の手続が開始される経緯等を詳しく検討しなければなりませんので、ケースバイケースにはなるのですが、状況に応じて面会交流の頻度は慎重に検討すべき場合が多くなります。

 

 

3.面会交流日時


 

(1)基本的にこちらの休日を優先させる

 たまに、夫が土日出勤日で平日休みという場合があります。その場合、こちらの休日の曜日と夫の休日の曜日が合わないと言うことになりますが、その様な場合には、基本的にこちらの休日を優先させるという姿勢でよいと思います。

 

(2)時間帯は?

 面会交流の時間帯は、乳児の生活スタイルを考慮する必要があります。私が担当したケースでは、お子様が午前中はぼんやり過ごしていることが多く午後イチの方が活発になると言う方のケースでは、午後1時から午後3時と指定したことがあります。他方、午後イチは昼寝をしてしまうというお子様の場合には、むしろ午前10時から12時までとしたケースもあります。

 一般的に乳児の負担も考慮して面会交流時間は2時間程度にすることが多いように思われます。

 

 

4.面会交流場所


 

 乳児との面会交流で最も悩ましい事情の一つが面会交流場所ではないかと思います。

(1)自宅や実家は極力避けた方が良い

 まず、相手の自宅や実家については、そのままお子様を戻してもらえないとか、面会交流時間が緩慢になりやすいというデメリットが大きいため、オススメできません。

 他方、あなたの自宅や実家についても、通常は離婚条件等で対立が大きくなっているため、感情的にあなたの自宅や実家に入れることはよろしくないことが多いと思いますし、こちらの暮らし向きが分かると、相手は揚げ足を取ってくる可能性もあります(例えば、相手が「この前の面会交流で家内の自宅に上がったのだが掃除が全く行き届いていなかった」といったことを言い始める人もいます)ので、避けた方が良いことが多いと思います。

 

(2)ショッピングモールのキッズスペース等

 お子様がその様なスペースで特に飽きないということでしたら、キッズスペースにて面会交流を実施するというケースもあります。最近は乳児も入室できるキッズスペースも増えていますので、あなたのお近くにその様な施設があれば、利用を考えてみて下さい。

 なお、乳児も利用できるミュージアム等にするケースもありますが、あまり混雑する施設ですと、お子様が披露してしまうこともありますので、混雑状況等を考慮する必要があろうかと思います。

 

(3)自治体が運営する施設等

 例えば児童館等が代表的ですが、場所によっては児童館は幼児以上のお子様が数多く利用していて乳児の利用には適さないという場合もあります。

 自治体によっては、面会交流に熱心に取り組んでいる自治体もありまして、区役所に面会交流できるスペースを確保していることもありますので、お近くの区役所や市役所等に問い合わせてみると情報を得られることがあります。

 

(4)第三者機関の利用

 あなたの住まいのお近くに面会交流をサポートする第三者機関がある場合には、その施設を利用してみるという方法もあります。

 第三者機関を利用する場合、面会交流に当たっての連絡もその第三者機関が行ってくれるケースが多く、夫と直接連絡をする心理的負担が軽減されるメリットがあります。

 

 ただ、第三者機関の場合、面会交流実施の前に親子面接等の手順が必要なことが多く、実際の実施までに2か月程度を要すると言うこともあります。そのため、柔軟に利用しにくいという面がある施設も多いので、注意が必要です。

 また、第三者機関を利用する場合、第三者機関に利用料を支払わなければならず、利用料をあなたと夫のどちらが負担するのかで争いになるケースもあります(利用料を折半するというケースも多いのが実情です)。

 

 

5.あなたの立会い


 

 特に乳児の場合、急に泣き出してしまって、あなたがあやさないと安定しないと言うことも多いですし、こんな小さなお子様を無防備に夫に預けることには抵抗が強いと思います。そのため、面会交流時に、あなたが立ち会うというケースもあります。

 ただ、お子様が直接見える形であなたが立ち会うことには反対の姿勢の家庭裁判所調査官も多くいます。あなたが、お子様が見えるところにいると、お子様があなたの方にばかり来てしまい父子の面会交流が円滑に進められないというのが調査官の言い分になります。

 

 そのため、こちらも折り合える条件として、お子様に分からない形でこちらも立ち会うという方法を取ることもあります。

 あなたとすれば、乳児のお子様を無防備に夫に預けることには強い抵抗感があることも多いと思いますので、その様な場合には、断固立会を要求するという姿勢で交渉に臨むケースもあります。

 

 

6.夫の親族の立会い


 

 特に、夫の側から、夫の両親等も孫の顔を見たいと言っているという形で問題になることが多いです。

 面会交流は子どもが父親と接する機会を保障するものなので、親族の立会まで認める必要はないのですが、これを認めることで、相手の態度が軟化するというケースもありますので、戦略的に面会交流を認めるというケースはあります。

 ただ、乳児の場合、まだ小さいので、大人が何人もゾロゾロと居ると恐がってしまうというケースもありますので、この点には配慮する必要があります。

 

 

7.その他


 

 上記のような面会交流条件が決定すれば、以下の事項はあまり大きな問題にはならないことが多いのですが、面会交流実施に当たっては以下のような事項も通常は定めます。

 

(1)受け渡し場所

 面会交流場所等が決まれば、面会交流場所の入り口付近だとか、あなたの最寄り駅の駅改札前といった形にすることが多いと思います。

 

(2)受け渡し方法

 お子様が乳児と言うことでしたら、あなたが直接夫に受け渡しをすることが多いと思います。お子様が大きくなってきた場合で、あなたが直接夫と顔を合わせたくないという場合には、あなたの親族等に受け渡しをお願いするというケースもあります。

 

(3)連絡方法

 予め面会交流のやり取りはメールやLINEに限定するという場合もあります。特に夫側が約束をすぐ破るとか、約束したことを後から「聞いていない」などと言ってくる可能性がある場合には、口頭だと行き違いの元ですから、メールやLINEに限定するという場合もあります。

 

(4)昼食の要否等

 面会交流時間帯が昼食時間帯をまたぐ場合には、面会交流中に食事を摂ってもらうのか、こちらで摂らせるのかは予め決めておかないとトラブルの元になります。

 

(5)プレゼント

 夫によっては、面会交流の都度おみやげを持たせるというケースもありますが、こちらとしては嵩張るだけというケースもあります。相手から子どもへのプレゼントは誕生日やクリスマスだけにして欲しいと予め断っておくべきケースもあります。

 

 

8.まとめ


・乳児との面会交流については、そもそも断固拒否すべき場合もある。

・連れ去りの危険性等がある場合には、調停手続中の面会交流とした方が安心である。

・面会交流に当たっては以下のようなことを検討する必要がある。

 ①面会交流頻度

 ②面会交流日時

 ③面会交流場所

 ④あなたの立会要否

 ⑤夫の親族の立会要否

 ⑥受け渡し方法

 ⑦受け渡し場所

 ⑧連絡方法

・各検討項目について、乳児特有の注意点もあるので、注意しながら決定する必要がある。

 

 

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>面会交流を一切拒否することは親権獲得にどの程度不利になるの?

 

 

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【弁護士が解説】婚約履行請求調停って何だ?

2018.07.10更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.婚約履行請求調停って何だ?


 

 婚約履行請求調停とは、一般的には、婚約者が当人同士でお話し合うことが難しい時に、家庭裁判所の調停委員を間に入れて話し合いを円滑に行いお互いの合意を目指す手続などと言われたりします。

 しかし、この説明だけでは漠然としていて婚約履行請求調停のイメージを掴むことは難しいと思いますので、できる限り具体的に婚約履行請求調停というものがどのようなものなのかをご説明します。

 

 

2.そもそもこの調停は何を目指す調停なのか?


 

 通常この調停を起こす場合、婚約は成立しているけれども、相手が急に態度を豹変させたとか、連絡が取れなくなってしまったという場合に、相手の真意を確認したり、婚約者間のとげを取り除いてやり直すために行われる手続になります。

 調停の席での話し合いが順調に進めば、挙式の日取りや婚姻届の提出日等についても合意できる可能性があり、最終的にはその様な婚姻届の提出までを目標にした手続にはなります。

 ただ、相手が頑なに婚約関係の継続を拒否する姿勢の場合、婚約解消に向かって話が進んでしまうリスクはあります。

 

 

3.調停を申し立てる前にすべきこと


 

(1)相手に最後通告を送る

 いきなり調停を起こしますと、裁判所からの封書が来て相手は驚いてしまうと思います。そのため、相手には最低1回は婚約履行請求調停を起こす旨の最後通告はしておいた方が良いと思います。

 このような最後通告を行うことによって、相手が話し合いに応じてくる可能性もありますので、極力事前に通告をしておいて下さい。

 

(2)相手が婚約を否定してきた場合に備えて証拠の準備

 相手が調停の場で、婚約の存在そのものを否定してくる可能性もあります。そのため、婚約を証明できる証拠があれば、事前に証拠集めをして、調停の場でも調停委員に見せられるように準備しておいた方が良いと思います。

 

 

4.調停委員ってどんな人?


 

 婚約履行請求調停は、裁判官1名と調停委員2名(男性1名、女性1名)の合計3名が間に入って執り行われます。と言っても、裁判官は複数の事件を担当していますので、実際に調停室で直接話をするのは基本的に調停委員2名と言うことになります。

 

 では、この調停委員というのはどういう人なのかと言うことですが、原則として40歳以上70歳未満の人で、社会生活上の豊富な知識経験や専門的知識を有する裁判所職員になります。弁護士、大学教授や裁判所書記官OBなどが調停委員になるなどしています。

 

 

5.婚約履行請求調停ってどこで行うの?


 

 婚約履行請求調停は家庭裁判所の建物内の一室で行われます。調停委員に、こちらの自宅などに出向いてもらって話し合いをするということはできません。

 

 テレビのドラマなどを見ていますと、いわゆる裁判所の法廷の場面が映し出されていますが、調停が行われるのは一般的な法廷ではなく、イメージとしては会議室のような場所で行われます。

 会議室と言っても何十人も座れるような広い会議室ではなく、6人掛け(いわゆる誕生日席2席を加えると8名が座れる程度)のテーブルが入って多少余裕がある程度の部屋とイメージしていただければ分かりやすいと思います。

 

 

6.婚約履行請求調停って何時行うの?


 

 調停が開催される期日は完全事前予約制なので、予め日時を決定しておき、その日に裁判所に足を運ぶという方式になります。

 調停が行われるのは平日の日中ということになりますので、土日祝日や夜間に調停を行うことはできません。そのため、平日お仕事をされている方は、調停の日はお仕事を休むか早退するなどして出席することになります。

 

 この調停期日は一方的に裁判所から決められることはなく、基本的にはご本人の都合を聞いて日時が決定されます(但し、第1回調停期日については、相手方の都合は聞かずに日時が決定されます)。

 

 ただ、担当調停委員によって担当曜日が決まっているのが一般的ですので、その曜日の中から日時を選択するという形式が一般的です。つまり、担当曜日が月曜日と木曜日というように決まっているという場合、月曜日か木曜日の中から期日を選択して行くことになります(逆に言うと水曜日を希望しても水曜日に調停を開催することは難しいということになります)。

 

 

7.1回の調停はどのくらいの時間がかかるの?


 

 1回の調停は2時間程度で終わります。ただ、話し合いの状況に応じて2時間よりも長くなったり短くなったりすることもありますので、2時間というのは一つの目安だと考えて下さい。

 

 

8.当日の調停の流れは?


 

 調停の流れは裁判所や調停委員によって差があるので画一的ではないのですが、一般的には以下のような流れで進むケースが多いです。

①婚約者はそれぞれ別々の待合室で待機

        ↓

②調停委員に事件番号(またはお名前)を呼ばれるので、調停委員の案内で調停室に入室

        ↓ 

③婚約者双方が揃った調停室にて調停委員から調停手続の概要を説明(第2回目の場合、前回の調停での話し合いのおさらい及びその日の調停での目標等の確認)

        ↓

④申立人のみが調停室に残って調停委員と話し合い(30分程度が目安)(相手方は待合室で待機)

        ↓

⑤申立人が調停室を退室し、入れ替わりで相手方が調停室に入室、相手方のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)

        ↓

⑥相手方が調停室を退室し、入れ替わりで申立人が調停室に入室、申立人のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(相手方は待合室で待機)

        ↓

⑦申立人が調停室を退室し、入れ替わりで相手方が調停室に入室、相手方のみが調停委員と話し合い(30分程度が目安)(申立人は待合室で待機)

        ↓

⑧婚約者双方が揃った調停室にて調停委員と次の調停の日時を決定し、同時に次回までの宿題などの確認をする。

 

 なお、上記の③と⑧については、調停委員によっては婚約者別々で確認を行うということもあります。

 

 

9.調停室内に入れるのは誰?


 

 よく自分一人で調停室に入っても上手に話ができるか不安があるので、ご自身のお姉様やお母様も同席させて欲しいとおっしゃる方もいます。

 しかし、調停の手続は非公開の手続(御本人以外の方の傍聴などが認められていないということです)ですので御本人以外が入室することはできません。

 なお、弁護士に事件を依頼した場合には、弁護士も調停室に同席することができますので、その面では安心です。

 

 

10.調停が開催される頻度は


 

 調停の期日の間隔は1か月程度になります。ただ、夏期や年末年始は調停を行わない時期がある関係で、この時期の調停の間隔は1か月以上空くことが多いです。

 

 

11.そもそも相手は調停に来るか?


 

 調停把握まで裁判所を利用した話し合いの場になりますので、相手が法律的な出席義務を課されることはありません。

そうすると、相手が欠席するのではないかと不安に思われる方もいますが、家庭裁判所から封書が届きますので、相手も出席してくることの方が多いと思います。そのため、最初から「相手が出てこないかもしれない」と考えて調停を起こさないのではなく、相手も来る可能性が高いものとして調停は活用して行ければと思います。

 

 

12.調停が成立した場合の拘束力は?


 

 よく「調停が成立すると判決と同様の拘束力がある」と言われたりします。

 ただ、これは調停の内容次第です。

 

 例えば、相手に金銭を支払わせるという内容の調停調書には、強制力がありますが、「今後互いを尊重し、コミュニケーションを絶やさず円満な夫婦関係を築くことができるように努力する」と言った条項は、ある意味精神論を謳った条項に過ぎず、この内容に強制力を認めることはできません。

 婚約履行請求調停にてお互いの話がまとまった場合「当事者双方は、平成○年○月までに結婚式を挙行し、平成○年○月○日に婚姻届を提出することを合意する」と言った合意をしますが、この合意には残念ながら強制力はありません。

 

 強制力とは「相手が反対しても無理矢理実行させる」という効力になりますが、国家権力が相手を無理矢理区役所の戸籍課まで連れて行って、婚姻届にサインさせると言うことは人権上問題になりますので、認められないのです。

 ただ、このように約束すれば、相手もなかなかその内容を反故にすることは難しいと思います。

 また、あまり期間が空いてしまうと相手が婚姻届の提出を渋る可能性があるという場合には、上記のような調停成立の日に、その足で区役所まで行って婚姻届を提出してしまうと安心です。

 

 

13.まとめ


・婚約履行請求調停とは、最終的には婚姻届の提出を目指した調停手続である。

・調停を申し立てる前に相手に最後通告をした方がよく、また、婚約の証拠準備もしておいた方がよい。

・調停委員は40歳以上の学識経験者が選ばれる。

・調停は家庭裁判所の一室である調停室という打合室の様な場所で行われる(法廷では行わない)

・調停は平日の日中に開催される。

・1回の調停は2時間程度を目安とする。

・調停期日は交互に調停委員に話をする順番で進めることが多い。

・調停室には本人のみしか入れない(弁護士がいれば弁護士は入室可) 

・調停は約1ヶ月おきに開催される。

・調停がまとまった場合、その内容には確定判決と同様の効力が認められるが、常に強制できるわけではない。

 

 

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【弁護士が解説】婚約者が音信不通となってしまった場合の対処法5選

2018.07.03更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

婚約者が突然音信不通になり、数週間、1か月も連絡が取れないという場合、心配だと思います。今回は、その様な場合に、どのような対応が考えられるのか、最終的には「最後の手段」としての婚約履行請求調停についても解説していきます。

 

1.そもそも婚約って?


 

 婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 ただ、相手が婚約の存在を否定する可能性がある場合には、こちらの方から婚約の存在を証明していく必要があります。

 

 

2.急に相手が音信不通になった場合どう対処すればよいか?


 

(1)音信不通になる直前の相手の言動や行動等を良く思い出す

 相手が音信不通になった場合、通常はその様な行動を取る原因がありますが、その原因を探るのは、音信不通になる直前の相手の言動や行動を思い出してみると解明できる場合があります。

 音信不通になる前で最後に相手と会ったときの相手の行動や言動、または、最後に電話で話をした会話内容等で、こちらとして聞いていて、または見ていて引っかかるような言動や行動がなかったのかを良く思い出してみて下さい。

 

 また、音信不通になる直前ではなく、その一定期間前から相手の表情や言動等が冷めているように見えたという場合には、相手の態度が変わった原因を探っていくと、今回の音信不通の原因を見付けられる場合もあります。

 

(2)相手が音信不通になった原因がほぼ確定できた場合

 原因が分かっているのであれば、それに対する対処法を考えればよいと言うことになります。

 あなたが、相手を怒らせてしまうような言動や行動を取ってしまったという場合、真摯に謝罪すると言うことを考えても良いと思います。もしくは、些細なことで相手が感情的になっているという場合には、敢えて1,2週間こちらからも連絡を取らないという方法の方が良いと言うこともあるでしょう。

 いずれにせよ、原因が分かっているのですから、あなた自身で答えを出さずに、友人等とも相談して、対応を考えていけばよいと思います。

 

(3)音信不通の原因に全く心当たりがない場合

 このような場合には、あなたの言動や行動が原因ではないというケースもありますが、他方で、これまでのあなたの言動や行動等が積もり積もって相手が怒ってしまっているという場合もあり得ます。

 あなたとして全く心当たりがないという場合には、身内や友人等に詳しい経緯を相談するなどして、何か原因が考えられないか等を検討してみると良いと思います。

 

 なお、その際には、相手に積極的にコンタクトを取る方が良いか、逆に、一定期間連絡を取らない方が良いのかと言った点も友人等に相談してみるとよいでしょう。

 このような友人等へのご相談をオススメするのは、あなた自身では焦り等の気持ちで冷静に判断できていないと言うこともありますので、友人等から状況を客観的に見てもらうと、原因等も簡単に分かってしまうと言うケースもあるからです。

 

(4)相手がこちらとの話し合い等に全く応じない場合

 相手と連絡が取れなくなった原因が分かり、キチンと謝ったのに、全く関係が回復しない場合、または、結局原因が分からず相手にコンタクトを取っているのに、全く相手にしてもらえないという場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

 

 この場合には、あなたと直接話をすることを相手が嫌がっている場合もありますので、両親や友人等に間に入ってもらうという方法が考えられます。

 ただ、音信不通になってからそれほど期間が経たないうちに、このような第三者を間に入れる方法を取りますと、相手はより態度を頑なにしてしまう危険性がありますので、第三者を入れるタイミングは慎重に探った方が良いと思います。

 

(5)長期間相手の態度がはっきりしない場合

 せっかく正式に婚約したのに、半年も連絡が取れないとか、相手の態度がはっきりとせずきちんとした話し合いもできないという場合の最終手段としては、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法も考えられます。

 ただ、このような手段は本当に最終手段として、極力、第三者を入れて話し合いをする程度にとどめておくのが望ましいと思います。

 

 そして、仮に調停を申し立てるにあたっても、調停申立前に相手に対して「最後通告」(「これ以上全くこちらからの連絡に応じない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てます」といった内容のメール等を送ることになります)はしておいた方が良いと思います。

 相手も裁判所というとビックリするでしょうから、このような最後通告がなされると、話し合いに応じてくる可能性もあります。

 

(6)調停という場合、どんな調停を起こすの?

  あなたが相手と婚約している場合には「婚約履行請求の調停」という調停を申し立てることになります。

 あなたとしては、それなりの期間相手の態度がはっきりしない状態が続いているため、婚約を破棄したいと考えているかもしれませんが、こちらから婚約破棄を言い出しますと不利に扱われるリスクがありますので、「婚約解消の調停」を申し立てるのではなく「婚約履行請求の調停」を起こした方が良いと思います。

 

 もちろん、最初は「婚約履行請求の調停」を申し立てても、調停時の相手の態度等を見て婚約を解消したいと思えば、婚約解消の調停に衣替えするということもできますので、相手の態度等に応じてこちらも対応を考えればよいと思います。

 

 なお、たまに調停になると相手と直接顔を合わせると考えている人もいますが、基本的に調停は別々に部屋に入りながら進めていきますので、直接顔を合わせることは基本的にありません。そのため、家庭裁判所にて相手の顔を直接見ることはできませんので、その様な目的で調停を申し立てない方が良いと思います。

 また、調停というと、相手が欠席するのではないかと不安に思われる方もいますが、家庭裁判所から封書が届きますので、相手も出席してくることの方が多いと思います。そのため、最初から「相手が出てこないかもしれない」と考えて調停を起こさないのではなく、(最終手段としてですが)調停は活用して行ければと思います。

 

(7)慰謝料という話をして相手を驚かせる方法は?

 詳しくは別のブログで解説しますが、相手が正当な理由なく婚約を破棄した場合、こちらは相手に対して慰謝料を請求することができます。

 たまに「相手の態度が許せないので慰謝料の話をすれば、相手もビックリしてヨリを戻したいと言ってきませんかね?」という質問を受けることもあります。

 

 ただ、慰謝料の話をしますと、もちろん相手は驚くでしょうが、同時に、あなたのことを金銭欲が強い女性と考える可能性もありますので、慰謝料請求が婚約を上手く成就させることにはならないかもしれません。

 このようなリスクがありますので、弁護士としては、「相手との婚約を諦めた上で慰謝料請求はした方が良い」という話をさせて頂くことが多いように思えます。

 

 

4.まとめ


・婚約相手が音信不通になってしまった場合、その直前の相手の言動や行動を良く思い出してみる必要がある。

・原因が究明できた場合、相手に積極的にコンタクトを取るのがよいか、それとも多少冷却期間を置くのがよいかを慎重に見極める必要がある。

・当人同士の話し合いが上手く行かない場合、身内や友人に間に入ってもらうことも考えて良い

・最終手段としては婚約履行請求調停を考えてみる。

・相手との婚約を維持したい場合、あまり慰謝料請求の話はしない方が良い。 

 

 

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【弁護士が解説】婚約とは?婚約の証拠決定版はこれだ!

2018.06.26更新

弁護士秦

 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.婚約って?


 

 婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言います。

 法律上正式に夫婦になる際には当然婚姻届を提出する必要がありますが、婚約そのものには何かの書面や手続は要求されません。

 婚約が成立しているためには、婚約指輪を購入しておく必要があるとか結納のやり取りが必要と誤解している人もいますが、その様な方式は要求されません。

 

 

2.婚約するとどんなメリットがあるの?


 

 婚約すると男女が今後婚姻することを契約しているような関係になりますので、単なる男女間の交際とは異なってきます。具体的には以下のような効果があります。

①婚約中はお互いに貞操義務を負いますので、他の女性と性交渉をすると慰謝料責任を負います。
②十分な理由もなく婚約を破棄した場合、慰謝料責任を負います。
③婚約破棄の際、嫁入り道具や結納金の返還を求められる場合があります。

 

 

3.婚約の証拠って?


 

 こちらが誠実に交際しているつもりなのに、相手が一方的に「別れたい」と言ってきたり、急に連絡が取れなくなってしまうということがあります。

 相手がこのような態度を取ることに十分な理由があれば別ですが、そうでない場合、一方的に婚約を破棄すると、前述のように相手には慰謝料責任が課されます。

 

 しかし、相手はこのような責任を負いたくないため、「あなたとは婚約していない」「ただ付き合っていただけだ」といった言い分を述べてくることがあります。

 前述のように、婚約が成立するためには、特に様式や書面等は必要ないのですが、相手がこのような態度を取ってきた場合、こちらから「婚約の存在」を証明しなければならなくなりますから、その際に「婚約の証拠」が必要になってくるのです。

 

 

4.どのようなものが婚約の証拠になるか?


 

(1)賃貸借契約書上の記載

 既にあなたが相手と同居を開始している場合や同居する部屋の賃貸借契約を締結している場合、あなたのことが同居人として記載されているケースが多いと思います。その場合には、同居人の「続柄」という覧が設けられていることも多く、そこに「婚約者」と記載されている場合、婚約の証明になり得ます。

 

(2)結婚式場等の証明書、披露宴挙行の証明書等

 既に結婚式や披露宴を実施したと言うことは、男女が婚姻の意思をもっていたことの有力な証拠になりますので、その資料も婚約の証拠になります。

 なお、このような会合については、その規模や場所等によっては、相手が、「これは結婚式ではなく、友人等を集めてのパーティーの一種である」と主張してくるケースもたまにありますので、出席者に対してどのような招待状を送ったのかや、会場にはどのように言って予約等をしたのかといった証拠が必要になるケースもあります。

 

(3)婚約指輪を購入した際の資料等

 男性側から女性側に対して婚約指輪のプレゼントがされている場合、婚約の有力な証拠になり得ます。ただ、これについても、相手が「単に付き合っていたときのプレゼント」と言われないよう、婚約指輪であることの証明が必要になるケースもあります(かなり高額であるとか、指輪に婚約と捉えられるような刻印等がされているとか)。

 

(4)結納の授受を証明する資料等

 結納として男性側から物品や金銭の支払いがなされた場合、これも婚約の有力な証拠になります。

 ただ、最近は結納を実施しない家庭も増えており、その代わりに、お互いの両親を招いて会食を開くことの方が多いようです。その様な会食を開いたことを証明できる資料があれば、これも婚約の有力な証拠になります。

 

(5)男性側が過去に提出してきた書面

  以前婚約が危うくなるような場面があった場合、例えば、相手が浮気してしまったとか、相手が手を上げてきたことがあると行った場合には、今後同じようなことをしないように誓約書等を提出させているケースも稀にあります。

その様な書面の中で婚約と捉えられるような表現があれば、それも婚約の証拠となります。

 なお、その書面に男性側の印鑑が押されているかどうかと言うのは重要なポイントになります。

 

(6)LINEやメールのやり取り

 その男性との間の直接のLINEやメールのやり取りは、その記載内容によっては婚約の有力な証拠になることもあります。

 視点としては、相手男性があなたと結婚する意思をもっていたかどうかと言う点がポイントになりますので、相手の結婚意思を証明できるような内容であれば、証拠となる可能性があります。

 

 なお、あなたが友人に相談したメールやネット上でお悩み相談した内容等は、あまり有力な証拠にはならない可能性が高いと思います(要するに、「その男性との直接のやり取りである」かどうかが重要なポイントになります)

 

 他方、相手男性が自身のブログやツイッターその他SNS等にあなたの写真をアップして「婚約者です」と記載していたりした場合には、婚約の証拠になりうる場合もあります。

 ただ、LINEやSNSでの記載内容は、前述のように書面で男性側が直筆で記載した書面よりも証拠力は一般的に落ちると言われています。LINEやSNSは、それほど深刻に考えずに記載等をすることが多いのに対して、覚書や誓約書と言ったタイトルで直筆の書面を提出する場合、通常は深刻に受けとめて作成している可能性が高まるからです。

 

(7)男性側との会話の録音テープ

 婚約相手との会話内容を録音したテープがある場合、その内容次第では、婚約の証拠となり得ます。ただ、男女の関係では、相手の気を引くために多少脚色したような発言をすることもありますので、会話全体の流れや会話がなされた場所等を考慮して、その会話の証拠価値を判断する必要があります。

 

(8)他人の証言

 他人の証言とは、あなたの身内や友人の証言と言うことになります。

 あなたが、その男性と披露宴を行ったり、双方の両親への挨拶をしたというような場合、これまでの男女の状況を身内や友人に証言してもらうという方法も考えられます。

 

 この証言がどこまでの証拠価値があるかについては、証言内容によるところが大きいのですが、証言者が直接目撃した内容であれば一般的に重要性は高くなりやすく、他人から伝え聞いた内容だと重要性は低くなる傾向にあります。ただ、人間の記憶には限界がありますし、あくまであなたの身内や友人の証言になりますので、書面等による証拠よりも証拠価値は下がることが多いと思います。

 

 

3.婚約関係の継続が問題となるケースもあるので要注意


 

 たまに、相手から、婚約はそちらの方から破棄されたと言った言い分が提出されることがあります。

 よく事情を聴いてみますと、相手の身勝手な発言に対して感情的になってしまい、「もうあんたなんかと結婚するつもりなんかないわよ」と発言してしまっているようなケースがこれにあたります。

 

 一時期婚約していたとしても、あなたの方から明確に婚約を破棄するような発言等をしてしまっていると、その時点で婚約関係は解消されていると評価されてしまうことがありますので、相手からこのような反論が予想される場合には、相手がどのような証拠をもっているのか等も含めて対策が必要になる場合もあります。

 

 

4.婚約と言えるか不安があるなら弁護士に相談してみよう。


 

 上記のように婚約の証明手段は多様なものがありますし、その記載内容等によって、証拠としての価値が大きく異なってきます。

 そのため、男性側が婚約の成立を強く争ってくるような場合には、あなたと男性との関係が法律的にも婚約と言えるか弁護士等の専門家にしっかりと確認した方が安心です。

 

 

5.まとめ


・ 婚約とは男女間で将来婚姻することを約束することを言い、書面や様式は必要とされない。

・しかし、相手が婚約を否定する場合もあるので、その様な場合には婚約に至っている証拠が必要になる。

・婚約の証拠として、賃貸借契約書の記載、結婚式・披露宴の資料、婚約指輪購入の資料、結納授受の資料、両家顔合わせの資料等は有力な証拠となりうる。

・男性との直接のやり取り(LINEやメール、会話録音)は、内容次第では、内縁の証拠になりうる。

・他人の証言も、内容次第で証拠としての価値は大きく変動する。

・あなたが婚約していると言えるか不安がある場合には弁護士に相談してみると安心である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が徹底解説!】面会交流で問題となる全事項

2018.06.22更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.お子様との面会について大きな争いがないケースだとシンプルでよい。


 

 面会交流とは、婚姻中、お子様を育てていない側の配偶者にお子様を会わせること、または、離婚後に元旦那にお子様を会わせることを言います。

 これだけを読むと、面会交流の頻度だけを決めて、後は元夫婦同士で面会交流の日時等を決めるだけの問題のようにも思えます。

 

 実際上、離婚調停などでも、「月1回程度面会交流することを認め、その日時・場所・方法については、この福祉に配慮し、当事者双方で協議して定める。」といった簡単な決めごとにするケースも多くあります。

 

 

2.詳しく見てみると検討しなければならない点は、かなり多い。


 

 前述の通り、夫側があまりお子様との面会に強くこだわっていないとか、離婚しても元夫婦の関係が険悪とまで言えないケース等では、面会交流の条件はシンプルに取り決めるだけで済みます。

 他方、夫側はこちらに親権を譲るため、離婚後にお子様とほとんど会えなくなるのではないかと心配したり、離婚後の生活を想定して寂しく思い、過度に面会交流の条件を要求してくることもあります。

 そうなりますと、実は面会交流の条件として取り決めなければならない問題は多数あります。

 

 

3.【検討項目1】面会交流の頻度


 

 敢えて面会交流の頻度も定めずに離婚を成立させるケース等もありますが、基本的に離婚する場合には、面会交流の頻度は最低限定めることが多いと思います。

 そのため、面会交流の頻度は、面会交流の取り決めの中で最も基本的な検討項目と言えます。

 

 現在の実務でどの程度の頻度とされることが多いかと言いますと、離婚の際の面会交流の頻度としては月1回という頻度とすることが多いように思えます。

 なお、この頻度の記載方法にも工夫がありまして、「月1回」と「月1回程度」とでは意味合いが異なってきます。

 「月1回」だと法律的には毎月1回必ず面会交流させなければならないという意味に捉えられ、他方「月1回程度」ですと、お子様の体調等によっては面会させない月が出てくることも許容する表現になります。

 

 

4.【検討項目2】受け渡し方法


 

 面会交流を実施するにあたっては、こちらから相手に対してお子様を預ける作業と、面会終了後に、お子様を迎えるという作業が必要になります。

 

 このような受け渡しにあたっては以下のような検討ポイントがあります。

①あなたが直接夫と受け渡しをするのか、他の人に受け渡しを頼むのか

②受け渡しの場所

 

 以下で詳しく解説していきます。

 ①のあなた自身が受け渡しを行うのかという問題は、あなたが直接受け渡しを行うのが不適切と言える事情等の有無と言うことになります。例えば、あなたが夫から暴言を浴びせられてきたという場合、あなたが直接受け渡しを行うべきではないということになります。その場合には、あなたのご親族等、代わりの人に受け渡しをお願いすることになります。

 

 次に、②の受け渡し場所ですが、大きく分けますと、①夫側に、こちらの自宅近くまで来てもらって、受け渡しをする方法、②夫側の自宅近くまでこちらが行って受け渡しをする方法、③お互いの自宅の中間地点で受け渡しをする方法、④夫が希望する面会交流場所での受け渡しとする方法といったものがあります。

 ②は、夫側にこちらの住所を隠しておきたい場合等に、このような方法が取られることがあります。④は、例えば、今回の面会交流では○○水族館に行くことが決まっているという場合、その水族館前待ち合わせにするとか、水族館の最寄り駅での待ち合わせにするといったことが考えられます。

 

 なお、「離婚の際の面会交流条件」となりますと、お子様が成人するまでの長期間実行される条件なりますので、受け渡し方法や受け渡し場所については敢えて明記しないという方法もあります。

 なお、離婚直後だと、こちらも元夫と直接顔を合わせるのが精神的にきついという場合には、当面の間はあなたの母親に受け渡しをお願いするといった条件を定めるといった方法もあります。

 

 

5.【検討項目3】連絡方法


 

 面会交流日時や場所は基本的にその都度決定することになりますので、その連絡方法について定めておくこともあります。

 よくありますのは、離婚後夫と直接電話で話をしたくないという場合に、メールやLINEメッセージのみを連絡手段に限定するといった方法があります。

 

 また、元夫婦で話をすると円滑に話が進まないというケースで、お子様も中学生以上の年齢といった場合には、お子様と元夫で直接連絡を取り合うという方法にするケースもあります。なお、お子様がまだ小学生と行った場合には、お子様が直接細かい決めごとをできるのかという問題がありますので、直接の連絡というのは難しいかもしれません。

 

 

6.【検討項目4】面会交流実施場所


 

 面会交流実施場所は基本的には、面会を希望する夫側が指定してくるケースが大半かと思われます。公園であったり、ショッピングモール、遊園地、水族館、動物園等々、色々な場所が考えられるところです。

 ただ、相手の連れ去りの危険等がある段階では、夫の自宅での面会交流には応じられないとか、夫の実家での面会交流には応じられないという消去法的な条件を提示するケースもあります。

 「離婚の際の面会交流条件」という場合には、具体的な面会交流場所までは指定しないことの方が多いかと思います(今後お子様が成人するまでずっと同じ場所での面会交流というのは現実的ではないため)。

 

 

7.【検討項目5】面会交流への立会人の制限


 

 これも、「離婚の際の面会交流条件」で定めることはほとんどないのですが、面会交流が始まったばかりといったケースでは、夫以外の身内の参加を拒否するといったケースはあります。

 特に嫁姑の仲が険悪な場合には、義母の参加は認めたくないといったケースも多くあります。

 

 

8.【検討項目6】あなた自身の立会い要否


 

 特に面会交流をスタートしたばかりの場合、夫がお子様とどのように接するのか不安があったり、連れ去りの危険を防止する観点から、あなた自身が立ち会いたいとの要望を出す場合もあります。

 ただ、家庭裁判所の調停中に、このような要望を出した場合の調停委員の反応は大きく分かれているのが実情です。反対意見を出す調停委員が理由として挙げるのは、奥様が面会交流に立ち会うとお子様は奥様のことを強く意識してしまい旦那様との自然なスキンシップが図れないとか、旦那様も監視されているようでやりづらいと言った点になります。

 

 なお、あなた自身が立ち会う場合、よく問題となるのは面会交流中の昼食時の対応でして、レストランの空席が多ければ、あなたは夫側と別の席に座れば良いのですが、混雑している場合、夫と同席を強いられることになり、これから離婚したいのに、一緒の席に座らなければならず精神的ストレスになるというケースもあります。

 

 

9.【検討項目7】宿泊付き面会交流


 

 この点は、「離婚後の面会交流条件」としても良く問題となる項目になります。

 お子様の春休み、夏休みや冬休みといった長期休みに、夫側としては、宿泊付の面会交流を認めて欲しいといった要望が出されて問題になります。

 

 宿泊付き面会交流をどこまで認めるかは、これまでの夫側とお子様との面会交流の様子等を踏まえて決められることが多いです。

 例えば、昨年まで毎年お正月は夫の実家で子どもが過ごしてきたという場合には、少なくとも冬休みの期間中に1回は宿泊付き面会交流を認めるべきという結論になりやすいと言えます。

 

 

10.【検討項目8】旅行を認めるかどうか


 

 前述のように夫の実家に帰省することは認めるにしても、通常の国内旅行まで認めるのかどうかは別途検討が必要になります。

 特に、夫側が旅行の際にはお子様を連れ回して、お子様が全然楽しめていなかったというような場合には、旅行は認めない方向で議論すべき場合もあります。

 また、国内旅行はよいとしても、海外旅行は認めないといった形で問題になることもありますので、検討が必要になります。

 

 

11.【検討項目9】行事や発表会への参加


 

 お子様が高校生といった年齢になっている場合には、お子様ご自身が学校行事に来て欲しいかどうか等についてしっかりと自己判断できますので、あまり問題になることはないのですが、お子様がまだ小さい場合には、行事参加については大きな問題になることがあります。

 特に夫側の学校行事参加を拒否しなくとも良いという場合には、奥様側から学校行事予定を夫側に伝え、参加方法等について協議するといった形の約束にすることもあります。

 

 また、お子様が習い事をしていて、発表会があるといったケースや、お子様がスポーツをしていて、その試合があるといったケースでは、発表会や試合への観戦可否という形で問題になるケースもあります。

 

 

12.【検討項目10】就学年齢になった後の協議条項


 

 特にお子様が乳児であったり、幼児の場合には、今後お子様がどのような学校に進学し、習い事等を始めるのか分からないと言うこともあり、就学年齢になった場合(要するに小学校に入学した場合)、別途面会交流の方法等を当人同士で協議するという定めを置くこともあります。

 このようにしておけば、お子様の成長に応じて就学時に柔軟に話し合いができるというメリットがありますが、反面で、そのときに元夫婦同士で激しい意見対立になるというケースもありますので、このような条件を定めるかどうかは良く検討する必要があります。

 

 

13.【検討項目11】生活環境等変更後の再協議条項


 

 例えば、離婚後夫婦の再婚や転職・転居等で生活環境が変化した場合には、面会交流条件を再度協議し直すといった条項になります。

 このような条項も、生活環境の変化に柔軟に対応できる反面、再度元夫婦同士での話し合いが必要になりますので、このような条項を入れるべきかは慎重に検討する必要があります。

 

 

14.【検討項目12】第三者機関の利用要否


 

 特に夫側があなたに対して激しいDV暴力をふるってきたというケースでは、あなたが夫に直接顔を合わせることが危険だと言うことも多くあります。

 その場合には、当然あなたがお子様の受け渡しに立ち会うべきではありませんが、あなたの身内を巻き込むことも危険を伴うことになります。

 

 そういった場合には、第三者機関の利用を検討すべき場合もあります。

 なお、第三者機関を利用するという場合、第三者機関への面会交流申請から実際の実施までに2か月程度を要するという場合もありますので、この点は予め検討しておく必要がありますし、第三者機関利用の費用を夫婦どちらが負担するのかという点も検討が必要になります。

 

 

15.その他の検討項目


 

 その他の検討項目としては、お子様の誕生日、その他のイベント(こどもの日やクリスマス等)の際に夫側からのプレゼントを認めるかどうかといった問題や、面会交流時の約束事を明記すべきかという問題があります。

 約束事というのは、連れ去りをしないという点や、こちらの悪口を言わない、こちらの居場所等を詮索しないといった内容になります。

 

16.まとめ


・シンプルな面会交流の約束にして解決するケースも多い。

・他方、夫側の要望が出ると検討すべき項目はかなり多い。

・【検討項目1】面会交流の頻度

・【検討項目2】受け渡し方法

・【検討項目3】連絡方法

・【検討項目4】面会交流実施場所

・【検討項目5】面会交流への立会人の制限

・【検討項目6】あなた自身の立会い要否

・【検討項目7】宿泊付き面会交流

・【検討項目8】旅行を認めるかどうか

・【検討項目9】行事や発表会への参加

・【検討項目10】就学年齢になった後の協議条項

・【検討項目11】生活環境等変更後の再協議条項

・【検討項目12】第三者機関利用の要否

 

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内縁(事実婚)の妻にはどのような法律上の権利が認められるか

2018.06.19更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.そもそも内縁(事実婚)って何だ?


 

 内縁関係とは、婚姻届を提出していないけれども、婚姻意思を持って、夫婦共同生活を営んでいる関係などと言われたりします。事実上夫婦としての生活を送っているため「事実婚」と言われることもあります。

 要するに、①婚姻意思を持って(要するに「結婚するつもりがあって」)、②夫婦共同生活を営んでいる(同居して夫婦同様の生活を営んでいる)事が必要になります。

 

 

2.権利の分類


一口に内縁の妻の権利と言いましても、様々なものがあります。

 概観してみますと、以下のように分類できます。

①結婚に準じて保護される権利

②交通事故等のケースで保護される権利

③内縁の相手が死亡した場合に遺族給付金等の関係で保護される権利

 

 今回は、上記の「①結婚に準じて保護される権利」の中でも、内縁(事実婚)解消までの生活費の問題、相手が浮気をした場合の慰謝料請求の問題、財産分与の問題に焦点を当ててご説明致します。

 

 

3.そもそも結婚に準じて保護されるって、どういうこと?


 もちろん、内縁関係は、入籍しておりませんので、戸籍上相手の氏を名乗ると言うことは原則としてできませんし、内縁相手の両親等を法律上義母や義父とすることもできません。

 但し、内縁関係の実態は、婚姻関係と同様の実質を備えていますので、基本的に結婚している夫婦同様の権利を与えるべきとされています。

 特にあなたの生活に直結する権利としては、①内縁解消までの婚姻費用(生活費)の請求、②相手が浮気した場合の慰謝料請求、③内縁解消時の財産分与請求がありますので、以下具体的に解説していきます。

 

 

4.婚姻費用分担請求権


 

 結婚している夫婦は、お互いに協力し扶助する義務がありますので(民法752条)、婚姻時に要する費用の分担を請求することができます(民法760条)。内縁夫婦においても、この民法の規定が準用されますので、結婚している夫婦同様お互いに協力し扶助する義務があり、婚姻費用を請求することができます。

 そのため、あなたの収入が内縁の夫の収入よりも低い場合には、同等の生活を保障するように婚姻費用分担請求権を有することになります。

 

 ただ、婚姻費用分担請求は、何らかの事情で内縁夫婦が別居を始めた後に問題になることも多く、その場合には、相手から以下のような主張が行われることがあります。

①最初から結婚するつもりがなかったから内縁関係ではない。

②内縁関係が解消したから別居しているので、別居後の生活の面倒を見る必要がない。

 

 このような相手の主張のうち、①については、いずれにせよ内縁関係の有無はこちらから証明しなければ行けませんので、その中で証明していくことになります。

 

 これに対して、②については、別居の経緯が重要になります。内縁関係が成立している場合、相手が一方的にこれを解消することはできないのですが、相手が「そっちも別れることには同意してくれた」といった話をしてくるケースがあるのです。

法律上の結婚の場合には、離婚届が受理されていない限り、婚姻関係は継続していることになりますから、戸籍謄本を取得すれば、現在婚姻しているのかどうかははっきりと分かります。他方、内縁関係については、これを明確に証明する公的書類は存在しませんので、別居イコール内縁解消ではないと言うことを証明していく必要が出てきます。

 

 そのため、相手から別れ話を切り出された場合等には、早めに相手との会話を録音しておく必要があると思います。もちろん、会話の中であなたとしては内縁解消という話が一方的な話であると主張しておく必要があります。

 

 

5.相手が浮気した場合の慰謝料請求権


 

 結婚している夫婦は、お互いに貞操義務があります(民法752条)。内縁夫婦においても、この民法の規定が準用されますので、内縁の夫が浮気したような場合には慰謝料責任が発生します。

 問題はこの慰謝料の金額ですが、法律上の夫婦の場合よりも慰謝料請求額は多少下がると言われております。

 

 なお、慰謝料額は以下のような要素を考慮して決定します。

①浮気の悪質性

 より具体的に言いますと、不倫の発端・不倫期間や頻度・不倫相手の人数・こちらを裏切った回数(例えば、一度目の不倫発覚時に今後一切不倫をしない旨誓約したのに何度もその誓約に違反した等)・不倫後の生活状況(不倫相手の自宅に入り浸りになるとか、不倫相手に生活費の大半を貢ぐようになったとか)等が考慮されることになります。

 

 ②内縁の夫の反省の程度等

 特に内縁の夫が頑強に浮気を否認し、謝罪も一切しないと言うことになりますと、慰謝料額は増額傾向になります。

 

③こちらが受けた精神的苦痛や肉体的苦痛の程度

 この点は、内縁の夫の不貞でこちらが精神疾患になったと言った事情があれば、慰謝料額は増額傾向になります。

 

 ④内縁期間の長さ・破綻の有無等

  内縁関係の長さに加え、お子様の有無・人数等も考慮されることになります。また、今回の不貞が原因で内縁関係が解消されたような場合には、慰謝料は増額傾向になります。

 

 なお、浮気の問題とは別の問題になりますが、内縁期間中に内縁の夫から暴力を受けて怪我をしたという場合には、DV慰謝料を要求できるケースもあります。

 

 

6.内縁解消時の財産分与請求


 

(1)財産分与というのはそもそもどんな話なのか

 財産分与というのは、内縁期間中に内縁夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを取り決めると言うことです。

 内縁生活中は、別れることを見越して準備しているという内縁夫婦はいないと思いますので、通常内縁夫婦の財産は均等ではないことが多いと思います。例えば、内縁の奥様が専業主婦で、内縁の夫が仕事をしているという場合、内縁の夫名義の預金はそれなりの額貯まっているとしても、内縁の奥様の預金はそれほど貯まっていないというケースもあると思います。

 

 そんなときに、内縁の夫側が「これは俺の名義の預金だから離婚の時には、びた一文お前には渡さない」としてしまいますと、内助の功があった内縁の奥様にとって酷な話になってしまいます。

 そこで、別れる時には、内縁夫婦どちらの名義になっているかを問わず、内縁中に築いた財産は半分ずつに清算すべきだというのが財産分与の基本的な考え方になります。

 

(2)慰謝料とは別問題なのでご注意

離婚に伴うまとまったお金の問題と言うことで、慰謝料の問題と混同している方が多いのですが、財産分与と慰謝料は別の問題とお考え下さい。

即ち、慰謝料というのは、相手に浮気や暴力といった一方的有責性がある場合に、こちらが受けた精神的苦痛を慰謝させるものになるのに対して、財産分与は、このような有責性の問題を抜きにして、夫婦の財産を清算しようという話になりますので、別次元の話と言うことになるのです。

(一昔前には、「財産分与の慰謝料的要素として、慰謝料分も考慮する」といった議論をすることもありましたが、最近は、財産分与は財産分与、慰謝料は慰謝料として話し合うのがオーソドックスです)。

 

(3)実際問題どのような手順で話をすべきか

 厳密に財産分与の計算をする場合には、①対象財産の特定→②財産の評価→③総合計額の算出→④分与方法の検討という手順を踏むことになります。

 

 以下具体的に解説いたします。

①対象財産の特定

 財産分与は内縁夫婦で築いた財産を分ける仕組みですので、内縁夫婦で築いた財産以外の財産は対象外になります。

 例えば、独身時代に貯めていた預金や相続で取得した財産は対象外になります。

 対象財産として代表的なものは、内縁生活の中で購入したご自宅、自動車、預貯金、生命保険や学資保険、株式等になります。

 まずは、内縁夫婦で築いた財産としてどのようなものがあるかを割り出して行く作業をすることになります。

 

②財産の評価

 預貯金などは金額が明らかなので問題は少ないのですが、例えば自宅などはいくらになるのかおおよその評価額を調べる必要があります(住宅ローンが残っている場合、通常はローン残高は差し引いて評価することが多いです)。

 他にも、生命保険等については今解約したらいくらになるのかを保険会社に問い合わせる必要があります(実際には解約しませんが、いくらの価値があるかを確認するために、保険会社に「今解約した場合いくらになるか教えて下さい」と電話するのです。

 

③総合計額の算出

 上記のように各財産の価値を算出することができた場合、それらの数字を全て足し算して総合計額を算出していくことになります。

 

 例えば、内縁の夫名義の資産がご自宅(評価額3000万円、ローン残高2400万円)、学資保険(解約返戻金額200万円)、預金(3つの通帳の残高合計が300万円)で、内縁の奥さん名義の資産が預金のみ(2つの通帳の残高合計が100万円)というケースですと、総合計額は(3000万円-2400万円)+200万円+300万円+100万円で、総合計は1200万円になります。

 この総合計額を算出する際には、内縁の夫側の資産だけではなく、あなたの資産分も加算する必要がありますので、ご注意下さい。

 

④分与方法の検討

 前述の例ですと、総合計額が1200万円になりますので、あなたの取り分は半額の600万円になります。

 

 このような600万円の取り分で何を取得するか、あなたの希望を検討することになります。

 即ち、自宅の価値が600万円なので、自宅を取得し、同時に住宅ローンの名義もあなたに変更するという方法もあり得ますし、逆に、自宅は内縁の夫側に渡して、内縁の夫名義の学資保険をこちらに名義変更し、旦那さんの預金額全額を取得するという方法もあります。

 要するに、取り分の範囲で何を要求していくのかという問題です。

 

 

7.まとめ


・内縁の妻には、大別すると①結婚に準じて認められる権利、②交通事故等で認められる権利、③遺族給付等に関する権利が認められる。

・特に内縁の妻の生活に直結する権利としては、①婚姻費用分担請求権、②慰謝料請求権、③財産分与請求権がある。

・慰謝料請求権は、相手が浮気した場合や、相手から暴力被害を受けた場合などに認められる。

・逆に財産分与は相手に何か責任(有責性)がなくとも認められる権利である。

 

 

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雨宮眞也法律事務所

弁護士 秦(はた) 真太郎

TEL03-3666-1838|9:30~18:00

東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号

 【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

投稿者: 弁護士秦真太郎

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