弁護士ブログ

【モラハラ離婚で皆さんどうなさっているんでしょうか?⑦】モラハラ夫はどのくらい離婚に抵抗してくるのでしょうか?

2024.11.11更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 

 

2.モラハラ夫は離婚にどこまで抵抗してくるのでしょうか?


 念のため、弁護士が担当する事件で、事件がどのように推移するのかを解説しますと、以下のようになります。

①モラハラ夫に直接コンタクトを取って話し合いをするフェーズ

 ↓

②家庭裁判所の調停という手続きを利用するフェーズ

 ↓

③家庭裁判所の裁判という手続きを利用するフェーズ

 

 あまり離婚問題を長引かせたいという方はいないと思いますので、上記の①の協議離婚のフェーズで決着させるのが利用です。

 ただ、実際に私が担当した事件の傾向を見ますと、モラハラ夫を相手にした事件で①の協議離婚のフェーズで決着した事件はかなり少数です。

 それでは、②の調停で解決したケースと、③の裁判にまで発展してしまったケースの割合がどうなのかと言いますと、私の印象としては五分五分というイメージです。

 モラハラ夫はこだわりが強い人物が多く、離婚裁判にまで至ってしまうケースが相対的に多いと感じます。

 

 

3.なぜ抵抗してくるのか理解が難しいケースも多い


 私が奥様と話をしておりますと、モラハラ夫側がなぜ離婚に抵抗してくるのか理解しがたいというケースも多いです。

 例えば、以下のようなものがあります。

 

(1)同居中はモラハラ夫の方から「離婚だ」「出て行け」と言われることが多かったのに、こちらから離婚調停を起こしたら「離婚には応じられない」などと言ってくる。

(2)同居中あれだけ沢山ひどいことを言ってきたのに、調停の席では「夫婦としてはとても仲が良かった」とか「どうして離婚と言われるのか思い当たるところが何もない」などというので信じられない。

(3)離婚調停の中で、モラハラ夫が暴言などについて謝罪してくるならまだしも、こちらを「嘘つき」呼ばわりしたり、批判してきたりするので、「そんなに私のことが嫌いなら別れればいいのに」と思ってしまう。

(4)離婚調停の中で、調停委員がモラハラ夫に「何か改善するつもりはあるか?」と尋ねたところ、「妻が変われば丸く収まる」などと言っており、話にならない。

 

 

4.モラハラ夫はなぜ抵抗してくるのか?(その理由)


 それでは、モラハラ夫はなぜ離婚にそこまで抵抗してくるのでしょうか?

 

(1)自分はひどいことをしていない

 モラハラ夫側と離婚に関する話し合いをしていると、「あなたは奥さんにこんなひどい発言をしたでしょう?」と尋ねても「そんなことは言っていない」という返事が返ってくることが非常に多いです。

 多少は自分のモラハラ発言を認めても、「怒らせる妻の方が悪い」とか「あまりに妻の家事が行き届いていないのだから怒って当たり前」とか、ひどいケースですと、「俺は妻のためを思って注意している。妻のやり方じゃあ社会で通じないに決まっているから、俺に感謝して欲しいくらいだ」とまで言ってきます。

 このように「ひどいことを何一つしていないから、離婚と言われる理由がない」と主張してくるモラハラ夫はかなり多いです。

 

(2)夫婦の上下関係から反対してくる

 モラハラ夫は妻側を下に見ていることが非常に多いです。

 そのため、「俺の方から離婚というのは良くても、お前の方から離婚というのはまかりならん」という発想のモラハラ夫はかなりの数います。

 モラハラ夫の目から見て、あなたからの離婚要求は、「下の立場の人間」が歯向かってきた、というように見えるので、とことん抵抗するとか反対するという反応になることが多いです。

 

(3)一度も直接の話し合いもできていないのに筋が通らない

 あまりに夫からのモラハラがひどいケースなどでは、別居前に夫側と離婚や別居などの話を一切できずに家を出るというケースもあります。

 このようなケースで夫側が主張してくることが多いのが、「妻と離婚について全く話ができていない」「弁護士に任せっきりで、直接話もせずに出ていくなんて筋が通っていない」「何も言わずに別居してさようならなんて、そんな勝手な話はない」と言ってくるモラハラ夫はかなり多いです。

 

(4)自分の正しさを証明したい

 離婚裁判などで対立していますと、モラハラ夫側が「自分の正しさを証明したい」と考えているように感じるケースが相当数あります。

 離婚裁判では、裁判の時点で、夫婦を離婚させるべきかどうかの決着が裁判官から示されますので、「そこで自分の正しさを証明したい」と考えるようです。

 このようなタイプのモラハラ夫の場合、離婚裁判の結論を見ない限り離婚に応じないというスタンスのため、離婚紛争が長期化してしまうことが多いです。

 

(5)お子さんの親権や面会交流のことを考えて抵抗してくる

 モラハラ夫も内心は離婚を視野に入れているように見えても、離婚になってしまうと妻側に親権を取られてしまうので、「離婚そのものに反対する」というスタンスを取るケースも相当数あります。

 また、モラハラ夫なりに希望する面会交流の頻度などがあり、そのような面会交流が保証されない限り離婚に応じないというスタンスを取るモラハラ夫も相当数います。

 

(6)浮気や暴力でもないと家庭を守るのが妻の務めだという発想で反対してくる

 特にご年配の方で、このようにおっしゃる方が多いのですが「こんなことを言うと考え方が昭和だって言われてしまうかもしれませんけども、私は浮気したり、妻に暴力ふるったこともないから、家庭を守るのが妻の務めだと思うんですけどね」とか「私も多少言い過ぎたことはあったと思いますけど、私の両親の時代は親父がお袋に手を上げるなんてことは日常茶飯事で、それでも離婚なんて話はありませんでしたからね」といったお話をなさる方もいます。

 結婚した以上は、よほどのことがない限りは離婚なんてもってのほかだという考えで、離婚に抵抗してくるのです。

 

(7)単純に寂しい

 特にお子さんがいるケースで多いのですが、妻と子供が出て行って寂しいということで離婚に反対してくるモラハラ夫もいます。

 ただ、寂しいという理由ひとつだけで離婚に強く反対してくるかというと、実際には、前述の(1)から(6)の理由と合わせて反対してくるケースの方が多いかと思います。

 

 

5.まとめ


・モラハラ夫と協議離婚できたケースもあるが全体的には少数である。

・モラハラ夫と調停で離婚できるか裁判まで行ってしまうのかは、五分五分である。

・モラハラ夫は以下のような理由で抵抗してくる。

 ①自分はひどいことをしていない

 ②夫婦の上下関係から反対してくる

 ③一度も直接話し合う機会がなかった

 ④自分の正しさを証明したい

 ⑤お子様の親権や面会交流の観点から抵抗してくる

 ⑥浮気や暴力でもないと家庭を守るのが妻の務めだという発想で反対してくる

 ⑦単純に寂しい

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【モラハラ離婚で皆さんどうなさっているんでしょうか?⑥】結局モラハラ夫は何がきっかけで離婚に応じたのでしょうか

2024.11.04更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 

 

2.結局モラハラ夫は、何がきっかけで離婚に応じたのか?


 私がモラハラ夫と対峙してきたケースの中で、何がきっかけで離婚に応じたのかについて代表的なものをご紹介していきます。

 なお、説明の便宜上、①離婚調停に至らずに離婚に応じたケース(協議離婚で解決したケース)、②離婚調停手続きの中で離婚に応じたケース、③離婚裁判になってしまったが和解が成立したケースの3つに分類してご紹介していきます。

 なお、離婚の話し合いは、まずは協議離婚で解決できないかを調整し、難しい場合には、離婚調停を申し立てて、家庭裁判所の調停手続きの中で離婚の調整ができないかを話し合っていきます。このような調停も決裂してしまうと、裁判を起こして争っていくことになります。

 このように、離婚協議→離婚調停→離婚裁判という3つのステップがありますので、それぞれのステップで夫側が何をきっかけに関係修復を諦めたのかについてご紹介していきます。

 

 

3.全体的な傾向


 モラハラ夫と離婚の件で対峙している中で、モラハラ夫側の言い分としてよく出るのは、「自分は悪いことはしていない」「妻とは仲が良かった」「たまに夫婦喧嘩があっただけで、どこの夫婦でもあるような話だ」というものです。

 このようにモラハラ夫は自分が悪いことをしたという認識が乏しいため、何故離婚と言われるのかが分からないとか、離婚すべき理由がないと言ってくる人間が多いです。

 そのため、全体的な傾向としては、モラハラ夫側は離婚を拒否してくるパターンが多いです。

 

 

4.協議離婚で解決したケース


 私が担当した事件で、実際に協議離婚で解決したケースに絞った上で、モラハラ夫がどうして離婚に応じることにしたのか、そのきっかけ等について代表的なものをご紹介していきます。

 

(1)【ケース①】妻側弁護士が間に入ることで断念した

 前述の通り、大半のモラハラ夫は、こちらが弁護士を立てても、すんなりと離婚に応じません。

 ただ、稀に、「妻がそこまで覚悟しているなら、離婚でも致し方ないです」とか「弁護士さんが間に入っていくれるなら、財産分与なども公平に話ができると思いますので、離婚で話を進めて下さい」などと言ってくるモラハラ夫もいます。

 もちろん、最初は離婚に反対していても、私と話をしているうちに、離婚に応じてくるモラハラ夫も少なからずいます。

 

(2)【ケース②】妻と直接会うことで諦めた

 別居前にあなたと十分別居や離婚の話ができていない場合、モラハラ夫は、こちらが弁護士を立てていても、「妻と話がしたい」「妻と一度も話ができずに離婚なんておかしい」といったことを言ってくることは多いです。

 奥様の方もモラハラ夫と会いたくもないというケースが多いので、基本的には、モラハラ夫と奥様とが直接会うことはしません。

 しかし、話し合いが順調に進まないケースなどでは、奥様ご自身が「交渉が長引いているので、直接会って夫側に引導を渡してやりたい」とおっしゃることがあります(ごく稀ですが)。

 そのような場合には、夫側を私の事務所まで呼んで、私も立ち会った上で、夫と妻とが直接話をする場を設けることもあります。

 妻側からやり直すつもりが一切ないという強く覚悟を見せることで、夫側も諦めて離婚に応じてくることがあります。

 

(3)【ケース③】調停を回避したいということで諦めた

 モラハラ夫の中には、離婚はしたくないけれども、離婚調停もしたくないという人間もいます。

 よくあるケースは、①モラハラ夫が妻に対しては強く出れるけれども外部の人間に対してはうまくコミュニケーションを取ったりすることが難しいとか、②家庭内の話を裁判所などの公的立場の人間に聞かせたくない・恥ずかしい、③裁判所の調停委員から、自分のこれまでの言動等を注意される可能性があると感じ、自信がないといったパターンです。

 こういったケースですと、もうそろそろ離婚調停が避けられないといった話をすると、「調停だけはやりたくない」ということで離婚に応じてくる人もいます。

 

 

5.調停離婚で解決したケース


 私が担当した事件で、実際に調停離婚で解決したケースに絞った上で、モラハラ夫がどうして離婚に応じることにしたのか、そのきっかけ等について代表的なものをご紹介していきます。

 

(1)【ケース①】調停の場で妻側の覚悟を窺い知れて諦めた

 これは稀なケースなのですが、調停委員を介して、妻側の覚悟を知ることができたので、離婚に応じるというモラハラ夫もいます。

 離婚協議をしている間は、モラハラ夫は妻側の窓口としては弁護士としか話ができないので、妻側がどこまで離婚を強く覚悟しているのかは半信半疑だというモラハラ夫もいます。もちろん弁護士の方からは妻側の離婚意思はしっかりと伝えるのですが、あくまで妻が雇った弁護士なので夫側は半信半疑に思うことも多いのです。

 しかし、いざ調停が開かれますと、調停委員の目の前で妻側が真剣に離婚したいという強い覚悟を伝えますので、調停委員はそのことは夫側にも伝えます。

 そうすることで、もう夫婦関係修復の可能性は低いと思って離婚に応じてくる人間もいるのです。

 

(2)【ケース②】録音などを聞いて分が悪いと判断した

 離婚調停は話し合いの場なので、あまりすぐに録音などの証拠を提出することはしません。

 ただ、調停が難航してしまった場合には、録音など決め手となるような証拠があれば、それをモラハラ夫にも見せて、不利になるということを自覚させるという作戦を取ることもあります。

 モラハラ夫は外面が良いことが多いため、録音といった動かぬ証拠を出されてしまったことで体面を保つことができないとか、分が悪いと思って離婚に応じてくることがあるのです。

 

(3)【ケース③】婚姻費用の負担に耐えかねて諦めた

 モラハラ夫は身勝手な人間が多いため、離婚には応じたくない、また、婚姻費用も払いたくないという人間も多くいます。

 その場合、離婚調停よりも婚姻費用調停の調整を先行させ、モラハラ夫側に婚姻費用を早期に支払わせるという作戦を取ることもあります。

 モラハラ夫は、離婚の話し合いが長引けば長引くほど婚姻費用の支払額が積み重なっていきますので、離婚に応じやすくなることがあります。

 

(4)【ケース④】面会交流の道筋が見えたので諦めた

 離婚調停の中で話を続けていく中で、モラハラ夫も段々と妻への愛情というよりも子供への執着という方向へシフトしていくことがあります。

 妻側から嫌われていることは十分わかったけれども、子どもと会う算段だけは立てたいと考え始めるのです。

 このような場合には、子どもと会える道筋が立つと、離婚にはすんなりと応じてくるというケースもあります。

 

(5)【ケース⑤】何としても離婚裁判は避けたくて離婚に応じた

 離婚調停も終盤になってきますと、調停委員から「調停が決裂した場合には、裁判になるんですか?」と質問してくることがあります。

 その場合に、こちらから、「裁判をしてでも離婚したい」という強い覚悟を伝えることもあります。

 モラハラ夫も、調停ならまだしも裁判まではしたくないということも多く、裁判を避けるために、調停での離婚に応じてくるということもあります。

 

 

6.離婚裁判を起こしたが、和解で解決したケース


 私が担当した事件で、離婚裁判を起こすことになったけれども、裁判中に和解が成立して解決したケースに絞った上で、モラハラ夫がどうして離婚に応じることにしたのか、そのきかっけ等について代表的なものをご紹介していきます。

 

(1)【ケース①】別居期間が長期化したので諦めた

 別居期間が長期化すると、裁判で争っても、裁判所の方から離婚の判決が出て強制的に離婚させられてしまうというケースも多いです。そのような将来の見通しも踏まえて、離婚に応じるというモラハラ夫もいます。

この場合、裁判の序盤で和解が成立するケースと中盤で和解が成立するケースがあります。

 序盤で和解が成立するケースですと、大きく①本格的な離婚裁判の紛争になると泥仕合になるので、裁判序盤で離婚に応じることにしたというケースと②これまではモラハラ夫自身で対処していたが、弁護士に依頼することにしてより有利な条件で離婚しようと考えるようになったというケースがあります。

 中盤で和解するケースは、離婚すべきかどうかについて、証拠の提出などもあって、モラハラ夫側も自分が妻から非常に嫌われているということを認識せざるを得なくなって、離婚に応じることにしたというケースになります。

 

(2)【ケース②】判決の見通しが分かったので諦めた

 離婚裁判も終盤まで来ると、裁判官が、判決の見込みを直接話してくるケースも多いです。

 実際に判決を書く裁判官が見込みを話してくるのですから、そのような結論は避けられないということで、モラハラ夫も離婚には応じてくることも多いです。

 

 

7.まとめ


・モラハラ夫は自分が悪いことをしてきたという認識が乏しいので、離婚に反対してくることが多い。

・それでも協議離婚で解決できたケースもあって、代表的なものは以下のようなものである。

  • 弁護士が間に入ることで諦めた
  • 妻と直接会って(弁護士立会)諦めた
  • 調停を避けたくて諦めた

・協議離婚はうまく行かなくても、調停で離婚になったケースの代表的なものは以下の通り

  • 調停の場で妻側の覚悟を窺い知ることができて諦めた
  • 録音などの証拠が提出されて分が悪いと考えて諦めた
  • 婚姻費用の負担に耐えかねて諦めた
  • 面会交流の道筋が見えたので諦めた
  • 離婚裁判を避けたくて諦めた

・離婚裁判の中で和解が成立したケースとしては以下のようなものがある。

  • 別居期間が長期化したので諦めた
  • 裁判官から判決の見通しを告げられて諦めた

 

 

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【モラハラ離婚で皆さんどうなさっているんでしょうか?④】皆さんモラハラの証拠はどのくらい持っているのでしょうか?

2024.10.14更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 

 

2.結論から言うと、決定打になるような証拠は乏しいケースが大半


 私がモラハラ離婚の事件を扱っている中で、決定打になるような証拠があるケースはむしろ稀で、証拠が乏しいケースの方が大半です。

 具体的には以下のように大別できます。

 

(1)そもそもほとんど証拠を残せていない

夫のモラハラ行為は唐突に始まるため、録音のスイッチを押すタイミングがなかったとか、そもそも、夫のモラハラ行為が無視や監視などなので、証拠化そのものが難しいといったケースもあります。

これらの場合にも、当時の状況を綴った日記が少しは残っているという方はいるのですが、ノートやリングファイルに日付と出来事を書いただけの日記ですと、あまり有力な証拠にはなりません。このような形式の日記ですと、本当にその日に記載したかが分かりませんし、日記ですと、その時のあなたの感情などを反映していることもあって、客観性に欠ける面があるからです。

日記アプリでの記録につきましても、日記アプリの内容は一度記載しても、後から修正や編集が可能なものが多いため、それだけでは、残念ながら、あまり有力な証拠にはならないことが多いです。

 

(2)2,3個録音などの証拠はあるが、決定打として使いにくい

 このケースは、夫の発言を録音として記録できてはいるけれども、不十分だというケースです。

 例えば、夫が怒鳴り始めたので録音のスイッチを入れたが、結局怒鳴っていたのは最初の部分だけで、肝心の怒鳴り声の部分の録音ができなかったとか、録音はできているけれども、周りの音などがうるさくて夫の声が殆ど聞き取れない(お子様が泣き出してしまい、その泣き声にかき消されてしまっているとか)といったケースです。

 また、夫の怒鳴り声は聞き取れるものの、妻側もかなり強く言い返していて、夫のモラハラというよりも、夫婦喧嘩の音声に聞こえてしまうというケースもあります。

 LINEなどについても同様でして、確かにモラハラ夫のモラハラ発言はLINEに残っているのですが、妻側もかなり強めの反論をしていて、どちらか一方だけを悪いと評価することが難しいというケースもあります。

 

(3)録音は10個とか、それなりの数があるが、決定打として使いにくい

 このケースは、奥様の方で何かのために沢山録音を取っておいたものの、夫の怒鳴り声をあまり拾えていないとか、夫の怒鳴り声は聞き取れるものの、妻側もかなり強く言い返していて、夫のモラハラというよりも、夫婦喧嘩の音声に聞こえてしまうといったケースです。

 

 

3.モラハラの証拠が乏しいという前提で戦い方を考えることの方が多い


 前述の通り、モラハラの証拠がほとんどないというケースの方が多いので、私としては、①モラハラの証拠がほとんどない状態でどのように戦うか、または、②少ししかないモラハラ証拠をどう活用して戦っていくかという発想で準備、立ち向かっていくことが多いです。

 以下では、モラハラの証拠がほとんどない状態で、私の経験上、どのように戦っているのかをご紹介します。なお、下記の対処方法は代表的なものでして、実際には、事案に応じて、対応策を考えるようにしています。

 

 

4.【対処方法1】別居期間を稼ぐ


 相手が自分のモラハラを認めればよいのですが、証拠がない場合には、そのことを認めないケースも多いです。

 そうなった場合、証拠がない事実ばかりを主張していても離婚の道筋を付けることは難しいです。

 

 このような場合の直接的な方法としては「別居期間を稼ぐ」ということが最も有効な手立てと言えます。

 モラハラ等の明確な離婚原因の証明ができない場合であっても、別居期間が長期間に及ぶ場合には、このような別居生活の方が夫婦としての同居生活よりも安定しているという考えになりますので、離婚が認められやすくなるのです。

 

 どの程度の別居期間が必要かという点は、これまでの同居生活でのやり取りによりますので、一義的なことは言いづらいのですが、3年、4年が一つの目安と言われています。

 あなたとしては、早くモラハラ夫との縁を切りたいと考えているので、3年とか4年の期間は「非常に長い」と感じるとは思いますが、手堅く手続きを進めるという観点から、一定の別居期間を置いてから離婚裁判に打って出るという進め方をすることもあります。

 

 

5.【対処方法2】早めに婚姻費用の支払いを開始させる


先ほど説明した「別居期間を稼ぐ」という方法は、いわゆる手堅い手段ではあるのですが、離婚成立までに時間がかかってしまうというのが大きな難点です。

 

 そこで、次に考えられるのが婚姻費用を支払わせるという方法です。

 モラハラ夫は、自分の気に入らないことに対してはお金を払わないという態度の人間が多いため、「勝手に出ていった人間には生活費は渡さない」と言ってくる人は多いです。

 ただ、正式に離婚が成立する前であれば、あなたは婚姻費用(生活費)を請求する正当な権利がありますので、相手の「支払わない」という言い分が認められる可能性は極めて低いです。

 

 そのため、この権利を早めに行使し、早めに先方に婚姻費用の支払いを開始させることが重要です。

 なぜなら、相手に毎月生活費を支払わせていくと、相手としては納得が行かないお金を毎月支払わなければならなくなりますので、このこと自体がストレスに感じるでしょうし、実際上も毎月婚姻費用を支払うことで自身の収入が減っていきますので、「早く離婚してしまった方が、負担が少なくなる」という発想に結びつきやすくなるからです。

 そのため、早めに婚姻費用の問題に着手すると言うことは重要ですので、相手が支払いを拒むようであれば、早めに調停を起こして、支払いを早めに開始させる手順を踏むことが多いです。

 

 

6.【対処方法3】離婚裁判も辞さないという強い姿勢を示す。


 離婚の問題は協議が決裂した場合、いきなり裁判を起こすことはできず、まずは調停を申し立てる必要があります。

 離婚調停の中で、こちらは離婚したい、他方、相手は離婚したくないと言うことで意見が対立してしまいますと、離婚調停も決裂して終了してしまいます。

 

 ただ、調停も終盤に差し掛かりますと、調停委員から、今後どのようなことを考えているのかを質問されますので、こちらとしては、裁判も辞さないという強い覚悟を持っている旨を示していくことになります。

 「裁判」となりますと、夫側も「裁判までやって夫婦関係を修復することなんて流石に無理だろう」と考える人も相当数いますので、調停で話をまとめようとしてくることも多いのです。

 

 

7.まとめ


・実際のところ、モラハラの証拠がほとんどないとか、証拠がないわけではないが、あまり有効打ではないというケースは多い。

・そのため、私はモラハラの証拠が少ないという前提で戦い方を考えることが多い。

・別居期間を稼ぐと言うことが一番端的な対応策である。

・早めに夫側に婚姻費用の支払いを開始させることが重要である。

・離婚調停の席では、裁判を辞さない旨のしっかりとした強い覚悟を示すことも重要である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【モラハラ離婚で皆さんどうなさっているんでしょうか?③】モラハラする人って皆こんな感じなんでしょうか?

2024.09.30更新

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

1.モラハラとは何だ?


 「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。

 モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。

 

 

2.モラハラ夫にはそれぞれタイプの違いなどがあると感じる


 私は数多くのモラハラ離婚事件を扱ってきましたが、その経験から言いますと、後述のように一定の共通点はあるものの、「それぞれタイプの違いがある」と感じることが多いです。

 例えば、サイレントモラハラですと、気に入らないことがあるとモラハラ夫はすぐに自室に籠ってしまい、妻側とのコミュニケーションがほとんど取れなくなってしまいます。これに対して、すぐに声を荒げてくるようなモラハラ夫は年中怒鳴り散らしてきます。他方で、こちらにきつい言い方はしないけれども、こちらのスケジュールや誰と会っていたのかについてしつこく聞いて来たり束縛してくるというタイプのモラハラ夫もいます。

 また、モラハラ夫はこれらの特色が複合的に絡んでいて、「一つだけの特色におさまらない」というケースも多いです。

 私がモラハラ離婚事件を担当していると、事件に応じて千差万別だと感じることが多いです。

 

 

3.モラハラ夫の共通点って?


 私も数多くのモラハラ離婚事件を担当しておりますと、モラハラ夫と直接会って、離婚を説得することも数多くあり、その中で感じるところがありますので、私がモラハラ夫と対峙している際に感じる共通項についてご紹介させていただきます。

 もちろん、共通点・特徴とは言いましても、その様な特徴は、あるモラハラ夫にはあるけれども、あるモラハラ夫にはほとんど見られないというように、個人差がありますが、「大半のモラハラ夫で見受けられる傾向」というものがありますので、以下でご紹介致します。

 

  

4.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点1】自分の考え方に固執する・絶対正しいと考える


私がモラハラ夫と直接話をしてきた中で一番よく感じる特徴の一つと言えます。

 私の方からモラハラを指摘すると、大概のモラハラ夫は、「原因を作ったのは妻だ」とか「経緯があってこのようなことをしている」という言い訳をすることが多く、自分の非を認めない人が多いです。

 

 特にあなたとの同居生活での言動や行動の中に顕著でして、家事や育児、果てはあなたの働き方などについてまで「俺の言うとおり(方法)にやれ」「間違ったやり方をするな」「そんなやり方は聞いたことがないから、逆らわずにやれ」といった強要をしてくることが多いです(いわゆるマイルールの強要です)。モラハラ夫側があまりに自信満々で話をしてくるため、奥様の側も、「そうなのかな?」と思ってしまうことも多く、いつの間にかモラハラ夫の言う通りに行動等してしまっているということも往々にしてあります。
 なお、この特徴については、弁護士の前では明確に示して来ないというパターンもあります。と言いますのは、後述のように、モラハラ夫は外面が良い、というよりも、「他人からどのように見られているのかを非常に気にする」という人も多いので、「弁護士の前では大人しくしている」というパターンもあるのです。ただ、私が直接話をしておりますと、表情等から「何かを言いたげである」とか「全く納得している様子がない」という姿勢を読み取れることが多いです。

 

5.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点2】内弁慶で外面が良い


 あまりよい表現ではないかもしれませんが、「内弁慶で外面(そとづら)が良い」と言う点もモラハラ夫によく見られる共通点・特徴と言えます。

 このような表現は、むしろモラハラ被害を受けている奥様からおっしゃられることが多いのですが「うちの夫は内弁慶で外面が良いんです。」と説明を受けることが多くあります。

 

 私は、モラハラ夫が家庭でどのように振る舞っているのか直接見ることはできないのですが、奥様から詳しくモラハラ被害の状況を伺っている限り、家庭の中と家庭の外ではかなり使い分けていると感じることが多くあります。

 奥様の話を聞く限り、「このモラハラ夫は社会に馴染んで仕事をできるのだろうか?」と不安に感じることもあるのですが、実際には高キャリアというケースも多くあります。

 

 このように内弁慶の人が多いからでしょうか、私がモラハラ被害を伝えても、モラハラ夫はその様なモラハラそのものを否定してくる場合もあります。

 また、私がモラハラ夫と話をしていると最初のうちは夫側も冷静に話をしているのですが、何度も話をしていると、段々モラハラ夫も本性を現してきて、語気が荒くなる、不合理な要求をしてくるといった傾向が見られることもあります。

 

 なお、極端なモラハラ夫などでは、家庭内だけではなく、職場でも頻繁にトラブルを起こしていて転職を繰り返しているとか、無職の期間が何ヶ月にも及ぶことがあるというケースもあります。その場合には、「内弁慶」というのは当てはまりません。

 

 

6.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点3】言い逃れ・こちらに責任転嫁することが上手い


 これも、モラハラ被害を受けている奥様からよく聞かされるお話なのですが、言い逃れが非常にうまく、話しをしている間にうまく話をすり替えて、奥様の方が悪かったとか、奥様の方が原因になっているからモラハラ夫側は悪くないという方向の話になってしまうということも多いという話が出ることも多いです。これは、モラハラ被害を受けている奥様側に共通する点でもあるのですが、モラハラ夫に責められ続けてきたので、自信を無くしてしまっている方が非常に多いと感じます。これも、モラハラ夫側の責任転嫁の結果と言えます。

 私がモラハラ夫と直接話しをしていても、モラハラ夫側が急に全く違う話題を持ち出してきて、妻のこのような態度はどうだったんでしょうか?といった形で切り返してきたり、こちらの危機感を煽り、自分に優位に話を進めようとしてくることもあります。
 前述の通り、モラハラ夫は高キャリアのことも多く、弁が立つので、上手く言い逃れしたり、いつの間にか奥様側に責任転嫁しているということも往々にしてあるのです。
 もちろん、弁護士として話をする場合には、モラハラ夫側の話には流されませんが、このような特徴はモラハラ夫に共通する部分が多い項目といえます。

 

 

7.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点4】(なぜか)被害者意識が強い


これもモラハラ夫と話をしていると思うことが多いのですが、(なぜか)モラハラ夫側の方が強い被害者意識を持っていることも多いです。
 こちらが、切々と奥様のモラハラ被害のことを話しているのに、モラハラ夫側は「妻の話はそうなのかもしれないのですが、私は妻が勝手に出て行ってしまって本当に精神的に苦しくてやりきれないんです。どうか妻と直接会って話をさせて下さい」とか「突如子供とも会えなくなって、仕事も手につかなくなっています。私はそこまでのことをしてしまったんでしょうか」といった返答が返ってくることも多くあります。
 奥様のお話とモラハラ夫側のお話を総合しても、明らかにモラハラ夫側の方が加害者だと感じても、モラハラ夫側は自分がされたこと・言われたことの被害者意識が非常に強いため、「むしろ迷惑をかけられているのは自分の方だ」という考え方の人が非常に多いです。
そのようなこともあって、奥様の方も、「同居中も、夫の被害者意識が強くて話が噛み合わないことが多かったです」とおっしゃることも多いです。

 

 

8.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点5】急に怒り始めるため、怒り始めた原因が分からない


 これも、私がモラハラ被害を受けている奥様からよく聞く話なのですが、「うちの夫は、急にスイッチが入ると、怒鳴りつけてくるのですが、どうしてスイッチが入ったのかが分からないんですよ」という相談を受けることが多くあります。そのため、モラハラ夫の一つの特徴と言えると思います。

 

 モラハラの最も深刻な問題の一つともいえるのですが、このようにモラハラ夫が何時怒り始めるかが分かりませんので、奥様としては、常に緊張感を持って生活していかなければならず、それが大きなストレスの原因になることも多いです。しかも、後から聞いてみると本当に些細なことが原因であることも多く、奥様からしてみると「そんな些細なことであれだけ怒っていたの?」と困惑してしまうことも往々にしてあります。

 

 ただ、モラハラ夫によっては、こちらに暴力を振るってくる際に、自分が怒っている原因を告げてくることもあり、その内容で、相手が怒っている理由が分かるというケースもあります。しかしながら、前述のようにモラハラ夫は独自の考え方を持っている人も多いため、モラハラ夫の説教を聞いていても、こちらとして、何故その様なことで怒るのかが理解できないというケースも多くあります。

 なお、弁護士に対しても同様で、モラハラ夫の説得のために何度か話をしていると、モラハラ夫が急に怪訝な顔をし始めるとか、こちらの話を誤解して急に立腹し始めるという方もいます。ただ、弁護士の手前ということもあるのか、モラハラ夫が私に対して直接怒鳴りつけてくるような事態はケースとしては少ないです。

 

 

9.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点6】急にやさしくなることがある


これも、私がモラハラ被害を受けている奥様からよく聞く話なのですが、モラハラ夫の態度が豹変するという話になります。

 

 極端なケースですと、昨夜は、こちらを殺すとまで怒鳴ってきていた人が、翌朝には、和気藹々と話しかけて来るというケースもあります。

 最初のうちは、奥様の方も、モラハラ夫の機嫌がよい分には助かると考えるのですが、モラハラ夫の機嫌があまりにコロコロ変わるので、段々と心理的に疲弊してしまう人も多くいます。

 

 なお、モラハラ被害を受けている方の中には、このようにモラハラ夫が急に優しくなることがあるため、モラハラ被害を受けていても「また優しい夫に戻ってくれる」と考えて、ズルズルと離婚を先延ばしにしてしまう方もいます。

 ただ、このように問題を先延ばしにしてしまいますと、モラハラ行為がエスカレートしていき、深刻な被害につながりかねませんので、「また優しい夫に戻ってくれる」という幻想は捨てた方が良いと思います。

 

 このようなことは、弁護士である私の目の前でも行われることがあります。例えば、モラハラ夫がお子様の運動会への参加を強く希望しており、そのような希望が叶った後は、私に対しても異常なまでに上機嫌であるといったこともあります。

 

 

10.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点7】絶対に自分から謝らない


 これも、奥様からよく話が出る事項の一つなのですが、モラハラ夫は謝らない、ということが言えます。
 実際に、別居を開始したり、弁護士を介して離婚を切り出す場合には、離婚を避けるために、形式的に謝罪の言葉を述べてくることもあるのですが、そうでもしないと「絶対に謝らない」というモラハラ夫は多いです。
 なお、モラハラ夫も言い過ぎたと思ったときなどには、翌日プレゼントを買ってくるとか、急に家事を手伝ってくるとか、一定の態度の変化が出てくることはあるのですが、絶対に言葉では謝らないということを貫くことも多いです。また、夫婦喧嘩になった時にも、いつも奥様の方から謝って終わるとか、あやふやなまま終わらせて、結局モラハラ夫は謝らないということも多いようです。このようなことが続くことで奥様の方もどんどんと自信がなくなっていくとか、違和感が心のうちに徐々に積もっていくといった悪循環に陥っていくことも多いです。

 

 

11.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点8】妻や子供のことを監視・制限したがる


 これもモラハラのケースを扱っているとよく聞く話なのですが、奥様の行動等を制限したり、監視・支配したがる、もしくは、お子様の行動を制限等したがるモラハラ夫は多いです。
 このような制限の態様は大小あるのですが、極端なケースですと、妻に携帯電話を持たせてくれないというケースもありました(もしかしたら男性と会話するかもしれないから、携帯電話は持たせないと言うのです)。また、お子様との関係では、お子様の習い事や部活動などに事細かく指図してくるというようなケースも多いです。

 このような監視・制限の厄介なところは、モラハラ夫側が、妻や子供に対する愛情だとか、妻や子供のためを思ってやっていると誤解していることが多いという点です。こちら側が不満を述べると、夫側は「妻や子供達のためを思ってやっているのに」と言って逆上してくるケースが多いのです。
 なお、私がモラハラ夫と対峙していて、この「監視・制限」については、人によって個人差が非常に大きいと感じる項目でもあります。前述の奥様に携帯電話を持たせないというのは最たる例ですが、非常に監視が厳しいご家庭もあれば、監視が緩いご家庭もありまして、「程度の差が大きい」と感じるのです。

 

 

12.【弁護士から見たモラハラ夫の共通点9】離婚理由を理解しようとしない


 これは正確には「理解できない」という方が正しいかもしれませんが、こちらから奥様が離婚したがっている理由を説明しても、相手が理解できないケースが多くあります。これは、モラハラ夫の方も多少は理解しているのですが、離婚するほどの話ではないと考えるケースと、そもそもこちらの話にピンと来ていないというケースがあります。

 

 なお、モラハラ夫が相手の場合、こちらが離婚したいと考える理由をきちんと正確に理解させることは難しいことが多いため、奥様の方でやり直すつもりが全くないということを伝えて離婚の説得をすることが多いように感じます。

 また、「妻の言うことも分かりますよ」といいながら「だけど、…」と自分の言い分を主張して、結局問題の根本を全く理解していないというケースも数多くあります。

 

 

13.まとめ


〇弁護士としてモラハラ夫と対峙しているとその人によってタイプの違いなどがあると感じることが多い。

〇ただ一定の共通点を見出すことができ、弁護士から見たDV夫の共通点は以下の通り

 ・自分の考え方に固執する・自分の考えが絶対に正しいと考える。

 ・内弁慶で外面が良い。

 ・言い逃れ・こちらに責任転嫁することが上手い。

 ・(なぜか)被害者意識が強い

 ・急に怒り始めるため、怒り始めた原因が分からない。

 ・急にやさしくなることがある。

 ・絶対に自分から謝らない。

 ・妻や子供のことを監視・制限したがる。

 ・こちらの主張する離婚理由を理解できない・理解しようとしない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【夫から我が子への虐待(17)】離婚すべきか悩んだ末に「一旦別居」する場合に別居の合意書はどのように作成すべきか?

2024.06.24更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「どこよりも分かりやすい解説」を目指して詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも、合意書を作った方がよいのか?


 一旦別居する際に、夫と口約束ができた場合、それ以上に文書を作るということになると、堅苦しく感じるかもしれません。
 また、わざわざ書面を作成しなくても、メールやLINE、ショートメッセージなどでやり取りの履歴を残しておけば足りると考える方もいるかもしれません。
 ただ、別居の約束事について書面を残しておかないと、夫側は後から約束の存在自体を争ってきたり、自分に都合の良い解釈をする危険性があります。
 メールやLINE等でも、あなたが発言した内容はその通りだとしても、夫側はそれに了解していないとか、そこまで真剣に捉えていなかったなどと争ってくる可能性もありますので、必ずしも十分とは言えません。

 

 

2.合意書と言うと弁護士とかに作成を頼まないといけないの?


 結論から言いますと、「弁護士に作ってもらわないと法律上の効力が認められない」ということはありません。
 また、たまに私のところにご相談に来られた方の中には、「こういう約束事は公正証書にしないといけないんですよね?」と質問してこられる方もいますが、特に公正証書にする必然性はありません。
 ただ、インターネットで調べていると、別居の合意書のひな型なるものを掲載しているサイト等もありますが、これをあまり深く考えずにそのまま利用してしまうと、後で思っていた効力が認められないということになってしまうケースもありますので、以下の手順に従って、しっかりとあなたの実情に即した内容のものを作成して下さい。

 

 

3.合意書に書き込む内容をブロック分けすると


 合意書に書き込む内容を大まかにブロック分けすると、以下のような7個のブロックに分けることができます。
(1)最低限盛り込んでおいた方がよい事項
 ①別居の経緯
 ②別居期間
 ③別居中の生活費
 ④別居中の面会交流
(2)可能であれば盛り込んでおいた方が良い事項
 必須とまでは言えないけれども、合意書に盛り込んでおくのが望ましい事項としては以下のようなものがあります。
 ①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項
 以下ではそれぞれについて詳しく解説していきます。

 

 

4.【第1ブロック】別居の経緯に関する条項


 例えば「令和4年に入ったあたりから夫法律太郎が長男の次郎に対して激しく叱責するといった行動が何回かあり、長男が夫と離れて暮らしたいと強く希望することから、令和4年〇月〇日より妻法律花子と長男は自宅を出て実家で別居生活を送ることにした。」といった書き方をします。
 別居の経緯について、夫婦の共通認識を持つために、もっと具体的な内容を盛り込むケースもあります(例えば「令和4年〇月〇日夫が長男の頬を平手打ちにし、長男は翌日も顔が晴れているため学校を欠席した、令和4年〇月〇日も……といったことがあり、妻は、このような長男が虐待行為を受け続けることが耐えられなくなって令和4年〇月〇日より別居することとなった。」というような形です)。
 このような別居経緯について、沢山の事情を盛り込みたいとおっしゃる方もいますが、あまり事情を盛り込み過ぎますと、夫との対立が激しくなって合意書の締結そのものが危うくなりかねませんし、合意書全体のバランスが悪くなってしまいますので、この「第1ブロック」の内容が細かくなり過ぎないように注意して下さい(第1ブロックの分量としては通常は5,6行以内に収め、どんなに長文にしてもA4用紙1枚を超えることがないよう留意して下さい)。

 

 

5.【第2ブロック】別居期間に関する条項


 例えば「夫と妻とは、令和4年〇月〇日より1年程度別居する。」といった書き方をします。
 別居期間については「1年」とか「半年」と言い切ってしまってもよいですが、「1年程度」というような書き方にしておくと多少柔軟性を持たせることができます。
 別居期間については、夫側は極力短期間にしたがり、あなたの方はそこまで短期間にしたくないということで意見の対立が激しくなりやすいですが、「当分の間」とか「しばらくの間」という定め方にしてしまいますと、あいまいなため、後で争いの種になりやすいので、明確に期間を定めておいた方がよいと思います。

 

6.【第3ブロック】生活費に関する条項


 例えば「夫は、妻に対し、別居中の婚姻費用として、令和4年〇月から別居解消または離婚するまで月額○○万円を、毎月末日限り、妻名義の○○銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○○○)に振り込む方法により支払う。振込手数料は夫の負担とする。なお、夫はこれとは別に、現在夫名義の口座から引き落としになっている妻及び長男の携帯電話利用料及び長男の給食費の引落を継続する。」といった書き方をします。
 生活費のことは法律用語では「婚姻費用」と表現しますので、合意書にもそのような表現を盛り込みます。
  なお、生活費としていくら請求するのかが分からないという場合には、裁判所の算定表のサイトをご覧になると参考になる数字が分かります(インターネットで「裁判所 婚姻費用算定表」と検索すると出てきますので、試してみて下さい)。

 

 

7.【第4ブロック】面会交流に関する条項


 例えば「妻は、夫に対し、夫が長男と週1回程度電話で通話する形で交流することを認める。夫は、長男の体調に配慮し当面直接交流を求めない。電話交流の具体的日時、場所、方法等については、その都度夫婦間で協議して定める。」といった定め方をします。
 面会交流というのは、夫がお子様と会うことについての約束事ということになります。
 別居の経緯が、夫のお子様に対する虐待行為だという経緯に鑑みて、すぐに直接会う形での面会交流は難しいとしても、何も交流させないというわけにもいかないと思いますので、一旦電話で話をする形を認める形の条項です。

 なお、電話の形にすると、夫側から「自由に電話させて欲しい」というリクエストがなされるケースもありますが、自由に電話する形になってしまいますと、際限なく電話してくる危険性もありますので「週1回程度」という形にしています。お子様の体調等を考慮して「2週間に1回程度」など頻度は実情に則して検討してみて下さい。
 もちろん、お子様が月1回会うくらいなら大きな負担ではないと考えているということでしたら、夫側と月1回直接会う形で合意書を作ることも可能です。
 この条項については、お子様の体調や意思を最大限尊重して取り決めるようにして下さい。

 

 

8.【第5ブロック】別居中の誓約事項


 例えば「夫は、飲酒して長男を叱責することが多かったことを真摯に反省し、別居期間中は飲酒を控えることを、妻に対して誓約する。」といった定め方をします。
 なお、この誓約事項の「第5ブロック」については、沢山の事項を盛り込みたいという話が出やすいブロックになりますが、あまり誓約事項を多くしてしまいますと、夫側が遵守し来てなくなりかねませんし、あなたがたくさん誓約事項をリクエストすると、夫側からも「そっちがそういうなら、こっちもこれを約束して欲しい」というように「誓約事項合戦」のようになってしまうことも多いので、あまり誓約事項が多くならないように注意して下さい。
 また、第4ブロックまで出来上がればひとまず合意書としての体裁は整っていますので、この「第5ブロック」のところで夫婦の意見対立が激しい場合には、第5ブロックは盛り込まないとか、最低限のものにとどめるという形で折り合うこともあります。

 

 

9.【第6ブロック】ペナルティー条項


 例えば「夫は前条の誓約事項に違反した場合、来月の小遣いを1万円減額することに合意する」といった定め方をします。
 ただ、このようなペナルティーを盛り込むことについては夫側が強く反発してくることも多いため、この第6ブロックは最初から盛り込まないことも多いです。

 

 

10.【第7ブロック】荷物に関する条項


 例えば「夫は、妻及び長男が残置した荷物を妻に無断で処分等しないことに合意する。」といった定め方をします。
 荷物の件は、第6ブロックまでの条項に比べると重要性がかなり低くなりますので、敢えて盛り込まなくてもよいケースが大半かと思います。

 

 

11.合意書にはお互いがサインと印鑑を押す。


 このようにして別居の合意書が出来上がりましたら、日付を記載し、夫婦がお互い住所と氏名を自署し、押印することで完成します。使用する印鑑は実印である必要はありませんが、厳粛さを持たせるという意味では実印を用いてもよいと思います。

 

 

12.まとめ


・別居中のトラブル防止の観点からは、合意書という書面を作成しておくと安心である。
・合意書は個人でも作成できるので、弁護士に作成を依頼する必要はない。
・但し、インターネットで掲載されているような「ひな型」をそのまま利用するのは禁物である。
・合意書には大きく以下の7個のブロックを盛り込むことが多い。
(1)最低限盛り込んでおいた方がよい事項
 ①別居の経緯
②別居期間
 ③別居中の生活費
 ④別居中の面会交流
(2)可能であれば盛り込んでおいた方が良い事項
 ①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【夫から我が子への虐待(16)】離婚すべきか悩んだ末に「一旦別居」する場合に何を取り決めるべきか?

2024.06.17更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「どこよりも分かりやすい解説」を目指して詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.なかなか離婚を決断できないケースも多い


 お子様が夫から虐待を受けているのに、離婚を決断できないという状況について、残念ながら、外の第三者から見ると、不可思議に見られてしまうこともあります。
 しかし、私のところにご相談に来られる方は、以下のようなことをおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
①私から見ると夫のしていることは虐待だけれども、子供も昨日叱られたことはすっかり忘れている様子で何もなかったかのように夫と接しているので悩んでしまう。
②夫は時折子供を激しく叱りつけるが、普段は子供と優しく接しているので、子供も懐いているから、子供と夫を離れ離れにすることが忍びない。
③夫の叱り方にも問題があるが、子供の側にも叱られる原因がある(お約束を守らなかったなど)ので、一概に夫だけを責められない。
④離婚が頭をよぎるが、夫の収入なしでは生活が立ち行かない。
⑤結婚を機に専業主婦になってかなり年数が経つので、すぐに働き始めるということが難しい(すぐに経済的に自立するということが難しい)。
⑥実家が遠方なので、実家を頼るということが難しい。
⑦子供と夫との仲はかなり険悪化してしまっているが、私と夫との関係がそこまで険悪化していない。

 

2.何を取り決めるべきか


 別居の話をする際に、夫と冷静な話し合いをすることができるようであれば、別居中の約束事を取り決めたほうが望ましいです。何も決めておかないと、混乱等が生じる危険性があるからです。
 具体的には何を取り決めた方が良いのでしょうか。

(1)最低限取り決めておいた方が良い事項
 最低限取り決めておいた方が良い事項としては以下のようなものがあります。
 ①別居期間
 ②別居中の生活費
 ③別居中の面会交流

(2)可能であれば取り決めておいた方が良い事項
 必須とまでは言えないけれども、取り決めておくのが望ましい事項としては以下のようなものがあります。
①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項

 以下、それぞれについて詳しく解説していきます。

 

 

3.【最低限取り決めておいた方がよい事項1】別居期間


(1)別居期間は極力明確に取り決めておくべき
 夫婦の冷却期間としてどの程度の期間を置くのかについては夫婦の共通認識を持っておく必要があります。
 冷静に夫婦関係を見つめ直したいあなたにとっては、相当期間の別居期間を置きたいと考えるでしょうが、夫側は「そんなに長い期間別居するのは許容できない」と考える場合もあります。
 そのため、別居期間が長いと感じるか短いと感じるかは人によって異なりますので、認識の相違がないようにしておいた方が良いと思います。
 今回の別居の発端は、夫のお子様に対する虐待が原因ですから、あまり別居期間を短期間にすることは難しいと思います。現在のお子様の状況にもよりますが、最低、半年や1年程度に設定することが多いかと思います。
 なお、この別居期間は「何月何日まで」というところまでは取り決めず、「1年程度」というように含みを持たせた方が、多少柔軟性を持たせられます。

(2)「当分」とか「しばらく」という取り決め方はあまり望ましくない
 極力夫との話し合いを短く済ませたいということで、「当分の間別居」とか「しばらく別居」というように取り決めてしまうケースもありますが、そうすると、曖昧なので、別居後に夫側から「いつ戻ってくるんだ?」とか「当分というのはいつまでなんだ?」という問い合わせ等が何度もなされ、あなたも落ち着かないという事態に陥りかねません。
 そのため、「当分の間」というような曖昧な定め方は極力避けた方がよいと思います。

(3)「子供の不登校が治るまで」といった決め方は?
 現在、夫からの虐待が原因でお子様が不登校になってしまっている場合、不登校の状況が治るまで別居という約束をするケースも考えられます。
 ただ、このような決め方にしてしまいますと①どのような状況になったら不登校が治ったと言えるのか?という問題が生じますし(要するに、完全に毎日登校できる状況にまで改善したら「治った」と言えるのか、それとも1週間のうち3日間登校できるようになれば「治った」と言えるのかなど、評価があいまいになるという意味です)、②夫側から、不登校が改善したか確認したいから毎週担任教師に電話連絡をするなどと言い始めるなど、夫側から無用な詮索を受けるリスクもあります。
 そのため、お子様の現況を踏まえて、「恐らく今年中に不登校が大きく改善する可能性は低い」とか、ある程度の目処が立っているのであれば、別居期間については「今年の年末頃まで」といった取り決め方をした方がよいかと思います。

 

4.【最低限取り決めておいた方がよい事項2】生活費について


 通常は、夫側の方があなたよりも収入が高額かと思いますので、法律上、あなたは夫に対して生活費(法律用語では「婚姻費用」)を要求する権利があります。
 もちろん、夫との話し合いで「権利がある」という話し方をすると、夫が抵抗する危険性もありますので、「別居中の生活費のことを決めたい」という話し方をした方がよいと思います。
 具体的には、現在夫の口座から差し引かれているあなたやお子様の費用(携帯電話代とか学校の給食費とか)はそのまま支払ってもらい、それ以外に月々いくら払ってもらうということを取り決めることになります。
 なお、夫が賞与をもらう月は多めに貰うという形で調整するケースもありますが、通常は、毎月同じ金額をもらうという形にするケースが多いです(相手がもらった賞与の分はあきらめるということではなく、相手が毎年賞与をもらえるという前提で月々の生活費の金額を多少高めにするという意味です)。

 生活費としていくら請求するのかが分からないという場合には、裁判所の算定表のサイトをご覧になると参考になる数字が分かります(インターネットで「裁判所 婚姻費用算定表」と検索すると出てきますので、試してみて下さい)。
 このような生活費の支払期限は毎月月末とするケースが多いのですが、いずれにせよ支払期限は明確にしておいた方がよいです(月末にしないのであれば、毎月10日までとか、いずれにせよ日にちを確定しておくという意味です)。

 

 

5.【最低限取り決めておいた方がよい事項3】面会交流について


面会交流とは、別居中、夫側がお子様と会うこと(面会交流)について、どの頻度や方法などを定めておくことです。
 今回の別居の発端は、夫からお子様への虐待が原因ですから、当分の間、面会交流はナシにして、お子様が落ち着いてきてから、面会交流のことを話し合う、といった取り決め方の方がオーソドックスかと思います。
 何もお子様の状況が分からないと夫側が納得しないという場合には、お子様の学校の通知表や成績を伝えるとか、お子様が現在カウンセリングなどを受けている場合には、その経過等を共有するといった形で情報共有するという取り決め方をするケースもあります。
 また、今は直接会うことはできないけれども、オンライン通話や電話で話すくらいは構わないというときには、オンライン通話や電話に限定して、1週間に1回認めるといった取り決めをするパターンもあります。

 

6.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項1】別居中の誓約事項に関する条項


 別居中相手に守って欲しい約束事を取り決めるというものです。
 例えば、夫は酒癖が悪く、お子様に虐待行為に及ぶのはいつも酒が入っているときだというような場合には、別居中酒を控えることを取り決めるといった具合になります。
 それよりも夫のアルコール依存が激しい場合には、アルコール依存専門外来の病院に行って治療することを取り決めるといったことも考えられます。
 このような約束事は、あなたにとっては必ず取り決めたい事項になると思いますが、夫側からすると、このような議論は避けたいと考えるでしょうから、このような約束事を取り決めることにこだわり過ぎると話し合いが進展しなくなってしまう危険性もあります。また、あなたの方から夫に対して誓約事項を提案すると、逆に夫の側からも「そっちもこういう約束をしろ」などと逆提案がなされるケースも多いです。
 そのため、お子様の状況に鑑みて、別居を早めたいという場合には、このような誓約事項は一旦保留にして、別居を先行させるということも考え得ると思います。

 

7.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項2】ペナルティーに関する事項


 これは、前述の誓約事項について取り決めることができた時に、違反した場合のペナルティーを取り決めておくというものです。
 例えば、夫が別居中飲み過ぎた場合には、来月の小遣いを減らすとか、夫が別居中こちらに対して乱暴な言葉遣いをした場合には、その後1週間は連絡を取り合わない(連絡禁止)とするといった取り決めになります。
 このようなペナルティーの取り決めは、相手が誓約事項に合意することが前提になりますし、ペナルティーと聞くと夫側が強く反発してくる危険性も高いため、可能であれば取り決めておいた方がよい事項という扱いになります。

 

8.【可能であれば取り決めておいた方が良い事項3】別居中の荷物に関する条項


 今回の別居が冷却期間としての別居で、自宅に戻る可能性もあるということでしたら、普段の生活に必要ないものは自宅に残すケースが多いと思います。または、実家を別居先とした場合で、自宅と実家が近いという場合には、あまり大きな荷物は搬出しない(自宅に残したままにしておく)というケースもあると思います。
 そのような場合には、荷物の運び出しについて取り決めをしておくこともあります。
 例えば、夫側が、あなたが勝手に自宅に入ることに抵抗を示している場合には、荷物を取りに戻るのは夫が在宅の時に限るといった約束をするケースもあります。または、逆に、別居中あなたやお子様の大切なものや思い出の品を夫が勝手に処分等しないことを約束させるケースもあります。

 

 

9.まとめ


・別居の際、最低限取り決めておいた方が良い事項としては以下のようなものがある。
 ①別居期間
 ②別居中の生活費
 ③別居中の面会交流
・別居の際、必須とまでは言えないけれども、取り決めておくのが望ましい事項としては以下のようなものがある。
①別居中の誓約事項
 ②ペナルティーに関する事項
 ③別居中の荷物に関する事項

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【夫から我が子への虐待(15)】離婚すべきか悩んだ末に「一旦別居」する場合、事前に夫に知らせるべきか?

2024.06.10更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「どこよりも分かりやすい解説」を目指して詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.なかなか離婚を決断できないケースも多い


 お子様が夫から虐待を受けているのに、離婚を決断できないという状況について、残念ながら、外の第三者から見ると、不可思議に見られてしまうこともあります。
 しかし、私のところにご相談に来られる方は、以下のようなことをおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
①私から見ると夫のしていることは虐待だけれども、子供も昨日叱られたことはすっかり忘れている様子で何もなかったかのように夫と接しているので悩んでしまう。
②夫は時折子供を激しく叱りつけるが、普段は子供と優しく接しているので、子供も懐いているから、子供と夫を離れ離れにすることが忍びない。
③夫の叱り方にも問題があるが、子供の側にも叱られる原因がある(お約束を守らなかったなど)ので、一概に夫だけを責められない。
④離婚が頭をよぎるが、夫の収入なしでは生活が立ち行かない。
⑤結婚を機に専業主婦になってかなり年数が経つので、すぐに働き始めるということが難しい(すぐに経済的に自立するということが難しい)。
⑥実家が遠方なので、実家を頼るということが難しい。
⑦子供と夫との仲はかなり険悪化してしまっているが、私と夫との関係がそこまで険悪化していない。

 

2.別居を事前に夫に話すか?


 たまに、私のところにご相談に来られた方で「夫は理屈っぽくてこちらを丸め込んでくるので、できれば事前に別居のことは伝えずに家を出たいと思っています」とおっしゃる方もいます。
 ただ、今回のように、あなた自身即離婚を希望しておらず、夫婦円満の可能性もゼロではないという場合、何も伝えずに別居すると、必要以上に夫側を刺激してしまうため、事前に夫側に別居する旨を伝えた方が良いと思います。
 なお、事前に何も伝えずに別居することにどのようなリスクがあるか解説していきます。

(1)【リスク1】夫婦の関係の亀裂悪化等
 何も伝えずに別居を開始してしまいますと、夫側の感情を逆なでしてしまうケースが多いと思います。
 あなたが別居を決断したということは、お子様への虐待だけではなく、夫婦の関係にも亀裂が入っているケースが多いので、今回の別居がそのような夫婦の亀裂を悪化させてしまう危険性が高いです。
 私が担当した事件では、事前の話し合いがなかったことに立腹して、夫側から離婚の申し出がなされてしまったというケースもありますので、注意が必要です。

(2)【リスク2】押しかけのリスク
 事前に何も話をしておかないと、混乱した夫があなたの実家やあなたの職場など、考えられる場所に押し掛けてくるリスクがあります。
 このような場合に、別居の際に置き手紙を残すといった方法が考えられますが、夫からするとあなたの別居を全く予測していなかったため、このような押しかけに及ぶ危険性があります。
 なお、お子様が学校や保育園を転校・転園していない場合、学校や保育園等に夫側が押し掛けてくることもあり得ますので、そうすると、お子様にも悪影響を与えるリスクがあります。

(3)【リスク3】お子様に混乱を生じさせるリスク
 前述のように、夫がお子様の学校や保育園に押し掛けて来たり、通学路等で待ち伏せをするリスクは否定できません。
 そのような際に、夫がお子様に対して、こちら側を混乱させるような話をしてきたりすると、お子様が戸惑ってしまうというケースもあります。

(4)【リスク4】生活費を渡さないなどと言い始めるリスク
 夫側は別居に納得していないと、「生活費を払わない」などと言い始めるケースもあります。
 そうなると、別居後のあなたの生活にも不安を生じさせるリスクがあります。
 もちろん、生活費(法律用語では「婚姻費用」などと言ったりします)は、婚姻費用分担調停などをすればしっかりと支払わせることができるのですが、調停をする労力等のことを考えると、別居当初から今後の生活費にあまり不安がない形の方が望ましいかと思います。

(5)以上のようなリスクがありますので、事前に夫側に別居する旨を伝えてから家を出た方が良いと思います。
 なお、以上の解説は、あなたが即離婚を希望しないケースの解説です。あなたが「即離婚したい」と考えている場合には、事前に何も話さずに別居した方が良いというケースもありますので、誤解等なきようお願い致します。

 

 

3.あなたが夫と1対1の場面で話さなくてはならないわけではない


 前述のように、事前に夫側に別居の旨を伝えた方が良いと思いますが、あなたが夫と1対1の場面で話さなくてはならないというわけではありません。
 例えば、あなたのご両親に間に入ってもらったり、手紙を書いて、事前に渡しておくなど、必ずしも1対1での話し合いにこだわる必要はありません。

 

 

4.緊急の場合などには、別居の後で話すケースも


 例えば、夫がお子様に暴力を振るって、そのことで警察に110番通報し、警察に逮捕してもらったというような場合ですと、夫が釈放される前に自宅を出なければならないというケースも多いです。
 そのような緊急性が高い場合には、事前に別居の話をするだけの時間的余裕がありませんので、事前に別居話をしていなくても致し方ないと思います。
 ただ、このような事態に陥ってもなおあなたの気持ちとして即離婚にするか悩んでいるという場合には、事後的に別居のことを夫側に伝えた方が良いと思います(伝え方については、前述の通り1対1で話し合うことは必須ではありません)。
 なお、刑事事件の件で夫が国選弁護人を立てる場合もあり、その場合には、ひとまず国選弁護人に対して当面別居する旨を伝えるという方法もあります。

 

 

5.まとめ
・あなたが即離婚を希望しない場合、別居の前に夫に話をした方が良い。
・事前に話をせずに別居してしまうと様々なリスクがある。
・別居話は必ずしも1対1で伝えなければならないわけではない。
・緊急の場合には、事前に別居話ができないケースもある。

 

 

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【夫から我が子への虐待(14)】離婚すべきか悩む場合、「一旦別居」はどう伝えればよいか?

2024.06.03更新

弁護士秦

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1.なかなか離婚を決断できないケースも多い


 お子様が夫から虐待を受けているのに、離婚を決断できないという状況について、残念ながら、外の第三者から見ると、不可思議に見られてしまうこともあります。
 しかし、私のところにご相談に来られる方は、以下のようなことをおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
①私から見ると夫のしていることは虐待だけれども、子供も昨日叱られたことはすっかり忘れている様子で何もなかったかのように夫と接しているので悩んでしまう。
②夫は時折子供を激しく叱りつけるが、普段は子供と優しく接しているので、子供も懐いているから、子供と夫を離れ離れにすることが忍びない。
③夫の叱り方にも問題があるが、子供の側にも叱られる原因がある(お約束を守らなかったなど)ので、一概に夫だけを責められない。
④離婚が頭をよぎるが、夫の収入なしでは生活が立ち行かない。
⑤結婚を機に専業主婦になってかなり年数が経つので、すぐに働き始めるということが難しい(すぐに経済的に自立するということが難しい)。
⑥実家が遠方なので、実家を頼るということが難しい。
⑦子供と夫との仲はかなり険悪化してしまっているが、私と夫との関係がそこまで険悪化していない。

 

 

2.別居は誰から誰に伝えるか?


(1)妻から夫に伝えるんじゃないのか?
 「別居は誰から誰に伝えるのか?」と質問されれば、「妻から夫に伝えるんじゃないんですか?」という回答が返ってきそうですが、そう簡単ではないこともあります。
 例えば、①もう何年も家庭内別居の状態になっていて、ほとんど夫と直接話をしていないとか、②夫が子供を虐待している様子を見ていると怖いので、直接話さなくて良いなら直接話したくないとか、③夫はこちらの話をまともに聞こうともしないので私から伝えるのは難しいなど、様々な事情を抱えていることもあります。
 もちろん、あなた自身即離婚とすることは難しいと考えているということですので、夫婦円満の可能性もゼロではないということでしょうから、夫婦一対一で話ができるようでしたら、夫婦一対一で話をするのがベストです。
 ただ、それが難しい場合には、ご実家の両親にも来てもらって話をするとか、お互いの両親も同席して家族会議のような形にするという方法も検討してみて下さい。このような形にした方が、夫婦一対一で話をするよりも冷静に話をすることができる場合もあります。

(2)児童相談所を介して話をすることは?
 お子様の虐待が問題になっているので、児童相談所に間に入ってもらえませんか?と質問される方もいますが、児童相談所が間に入ることはできません。児童相談所は、お子様の福祉を守る立場ではあるものの、夫婦の問題については夫婦で直接話し合ってください、というのが基本スタンスだからです。

(3)弁護士や調停は?
 なかなか間に入ってくれる適任者がいないという場合には、弁護士に間に入ってもらって、別居の道筋をつけて欲しいと言われることもあります。
 ただ、あなた自身即離婚にできない事情がある場合、すぐに弁護士を雇うことはオススメしません。なぜなら、夫側からしてみれば、突如弁護士からの通知等が届くと、必要以上に反発してしまったり、警戒してしまったりするからです。
 また、調停についても、突如夫側に家庭裁判所からの呼出状が届くということになりますので、同様にあまりオススメしません。

 

 

3.どのように話すことを心がけるか?


(1)別居の理由を理解させることは難しいと考えた方が良い
 別居を切り出す際、夫に別居の理由を理解させるというスタンスで話をする方が非常に多いのですが、あまり得策ではないかもしれません。
 と言いますのは、夫からお子様への虐待の問題は、これまでにも長期間で続き、その都度あなたの方からも注意し続けてきたというケースが多いと思います。
 それでも、夫の態度が改善しないというのは、①かなり鈍感なのか、②ある程度は理解しているけれども自分を正当化しているのか、③自分の考えが絶対に正しいという人なので何を言っても聞かないのか、いずれにせよ、特別な事情があるのだと思います。
 そのため、いざ別居のタイミングであっても、夫にあなたの別居理由を理解させるということは、非常に難しいと思います。

(2)理解はしないまでも認識させるというスタンスが大事
 前述のように夫の側に別居理由を理解させることは難しいことが多いのですが、少なくとも、認識させることは重要です(要するに、別居のことなど聞いていないとか、別居の理由の説明もなかったという言い分が来ないようにするという意味です)。
 そのため、「どうせ理解しないのだから別居理由を伝えない」ということではなく、夫の側に認識させるために、別居理由をしっかりと伝える必要があります。
 また、一度話しても夫側は自分に都合の悪い話は忘れてしまうケースも多いので、①何度か伝える、②ある程度時間をかけて伝えるということも大事です。

 

 

4.まとめ


・様々な事情から即離婚と決断できない方も案外多い。
・一旦別居を妻から夫に直接伝えるのがベストだが、場合によっては両親等に同席してもらうといった方法もある。
・別居理由を夫に理解させることは難しいことが多いので、少なくとも別居理由を認識させるというスタンスが大事である。

 

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【夫から我が子への虐待(13)】離婚すべきか悩む場合、「一旦別居」という選択肢はありか?

2024.06.03更新

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1.なかなか離婚を決断できないケースも多い


 お子様が夫から虐待を受けているのに、離婚を決断できないという状況について、残念ながら、外の第三者から見ると、不可思議に見られてしまうこともあります。
 しかし、私のところにご相談に来られる方は、以下のようなことをおっしゃる方もかなりの数いらっしゃいます。
①私から見ると夫のしていることは虐待だけれども、子供も昨日叱られたことはすっかり忘れている様子で何もなかったかのように夫と接しているので悩んでしまう。
②夫は時折子供を激しく叱りつけるが、普段は子供と優しく接しているので、子供も懐いているから、子供と夫を離れ離れにすることが忍びない。
③夫の叱り方にも問題があるが、子供の側にも叱られる原因がある(お約束を守らなかったなど)ので、一概に夫だけを責められない。
④離婚が頭をよぎるが、夫の収入なしでは生活が立ち行かない。
⑤結婚を機に専業主婦になってかなり年数が経つので、すぐに働き始めるということが難しい(すぐに経済的に自立するということが難しい)。
⑥実家が遠方なので、実家を頼るということが難しい。
⑦子供と夫との仲はかなり険悪化してしまっているが、私と夫との関係がそこまで険悪化していない。

 

 

2.そんなときのアドバイスは?


 前述のように離婚するかどうかを悩んでいるという方に対して、私は無理に離婚を勧めません。離婚するかどうかはあなた自身にとっても、今後の人生に関わる大切な話ですから、慎重に検討して欲しいと考えています。
 ただ、私の目から見て、夫からお子様への虐待内容が悪質な場合には、その旨は指摘させて頂きます(「奥様がすぐに離婚を決断できないとしても、今旦那様がお子様に対してやっていることは法律的には虐待になります。そのことは一つの考慮要素にして下さい」とか「奥様はそうおっしゃいますけれども、このような環境はお子様にとっては良くない環境だと思います」いったお話をさせて頂くのです)

 

 

3.「一旦別居」という選択肢はありか?


 あなたの気持ちとして、離婚を即決断できないということでしたら、一旦は別居するということももちろん選択肢としてはありです。
 ただ、その場合には、いくつか留意点があります。

(1)【ポイント1】夫に別居の理由をしっかりと伝える
 一つ目のポイントは、夫側に別居の理由をしっかりと伝えるというところです。
 お子様に対して虐待をする夫は、残念ながら、自分としては正しいことをしているという人も多いです(「子供が叱られるようなことをしているのだから仕方ない」とか、「きつく叱らないと治らない」というような言い方をするのです)。
 そのため、別居の理由はしっかりと伝えて、夫側が理解はしないまでも、最低限、認識はさせる必要があります。
 また、これまでの夫婦喧嘩の中で何度か伝えたことがあったとしても、夫の側にしっかりと伝わっていないことも多いので(夫婦喧嘩の時には、夫も感情的になっているため、しっかりと認識できていないということ)、別居のタイミングで、改めて別居の理由を伝えた方が良いと思います。

(2)【ポイント2】別居の位置付けを伝える
 次のポイントは、別居の位置付けを伝えるということです。
 夫の側は、別居と言われると、「もう離婚が避けられないのか?」と誤解してしまう人も多いので、「今すぐ離婚ということではなく、一旦は別居」という位置づけをしっかりと伝えるのです。
 また、あなたの心の中で、夫とやり直すための条件や改善して欲しい点などがあれば一緒に伝えた方が良いと思います。

(3)【ポイント3】場合によっては厳粛さを持たせる
 夫婦で話をしても、夫の側が軽く考えているとか、こちらの真意が伝わらないという場合には、あなたのご両親にも立ち会って話をするなど、一定の「厳粛さ」を持たせる工夫をすることもあります。
 折角別居をしても、夫の側から「あなたのわがまま」などと捉えられてしまいますと、別居の意義が半減してしまうと思いますので、必要に応じて話し合いの「厳粛さ」を持たせることも一つの方法かと思います。

(4)【ポイント4】可能であれば、ある程度時間をかけて話をする
 次のポイントは、ある程度時間をかける、という点です。
 夫は鈍感であったり、自分に不利なことには極力目を瞑りたいというタイプだと思いますので、一言二言話をしても、認識は深まらないと思います。
 そのため、少なくとも何回か同じ話をして、夫の側の理解を深めた方が良いと思います。
 ただ、夫とお子様との喧嘩が絶えないとか、警察沙汰になったことがある、というような場合には、お子様だけでも先に別居させた方が良いと思いますので、一旦、お子様だけ先に実家に避難してもらうという進め方をすることもあります。

(5)【ポイント5】可能であれば、別居中の約束事を決める
 夫があなたの別居に理解を示した場合には、別居中の約束事を決めた方が良いです。
 例えば、何も約束事を決めておかないと、毎週末夫がこちらの別居先まで来るので、これでは同居しているのと変わらなくなってしまったなど、失敗談もありますので、そのようなことにならないように約束事を決めるのです。
 ただ、夫側があなたの別居に渋々同意したという場合には、約束事を決めることまでは難しいかもしれませんので、「可能であれば」約束事を作るくらいのイメージでお考え下さい。

 

 

4.まとめ


・夫が子供に虐待をしていると思っても、様々な事情から即離婚は難しいと悩むケースは案外多い。
・そんな場合、私は無理に離婚を勧めない。
・一旦別居を選択する場合にも以下のようなポイントがある。
①【ポイント1】夫に別居の理由をしっかりと伝える
②【ポイント2】別居の位置付けを伝える
③【ポイント3】場合によっては厳粛さを持たせる
④【ポイント4】可能であれば、ある程度時間をかけて話をする
⑤【ポイント5】可能であれば、別居中の約束事を決める

 

 

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【夫から我が子への虐待(9)】別居にあたっての11個の手順

2024.04.22更新

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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

以下では、このような虐待夫と別居するにあたって検討すべき事項11項目について解説していきます。

 

 

1.事前に夫に相談した方が良いか?


 何も言わずに別居してしまうと、後から何を言われるか分からないし、他方で、事前に話してしまうとその際にどのような仕打ちを受けるか分からないと言うことで、悩まれている方も多くいます。

 基本的に、これまでにもあなたへの誹謗中傷等がひどく、別居を相談すると、さらにどんな誹謗中傷を受けるか分からないといった場合には、事前に話をすると重大な被害につながりかねないため、自分の身の安全を守るためにも、事前に話をしない方が良いと思います。また、夫からの度重なる暴言であなたが精神的に不調を来しているというような場合にも、無理に事前に話をしない方がよいと思います(児童虐待をするような夫は、あなたに対しても暴言等を浴びせていることが多いと思いますので)。

 他方で、そこまで極端な被害はないという場合には、事前に離婚や別居を切り出した方が良いケースの方が多いかと思います。ただ、この場合にも、相手がどのような行動に出るか予測できないという場合には、事前に別居話や離婚話をするか慎重に検討する必要があります。

 事前に何も相談せずに別居を開始してしまうと「悪意の遺棄」になってしまい、後から離婚しづらくなるのではないかと考えている方もいます。しかし、きちんとした離婚の理由がある場合、事前に相談せず別居したからと言って離婚にあたって不利になることはほとんどありません。

 

 

2.絶対にこちらの動きを察知されないこと


 事前に夫側に別居を切り出さずに別居しようとする場合、別居の準備をしていることを夫側に察知されないようにすることが非常に重要になります。これを察知されてしまうと、別居を妨害されたり、別居準備を進めていることを厳しく批難されることになりかねません。

 私が担当したケースでも、別居準備中に夫側に察知されてしまい、なかなか別居できなかったというケースもありますので、細心の注意が必要です。

 夫側に別居準備のことを知られてしまった原因としては、①夫が奥様の携帯電話をこっそり盗み見ており、その中で発覚してしまったケース、②別居準備のために子どもの小学校転校の話等を現在の通学先小学校に相談していたところ、夫側が小学校に問い合わせて発覚したケース、③区役所に児童手当や保険切替の相談をしていたところ、夫側が区役所に問い合わせて発覚したケース等があります。

 別居準備中は別居先住所等の情報は最大限外部に知られないようにし、自身の携帯電話等も夫が勝手に見られないようにする等の注意を払って準備を進めていく必要があります。

 

 

3.親族・友人等の支援体制を整えること


 特に夫側に事前に告げずに別居を開始した場合、夫があなたの両親等の親族や親しい友人等に執拗に連絡を取るというケースもあります。

 そのため、少なくとも夫側が連絡をしそうな先については予め別居のことを話しておいた方が良いケースが多いです。合わせて、ご自身の状況等を相談できるようであれば相談すると心強いかと思います。

 このように支援の輪が広ければ心強いとは思いますが、情報が拡散し過ぎますと、どこかで夫側が別居先の情報等を察知してしまう危険性が増して行くことになりますので、支援の依頼先の範囲については慎重な検討が必要です。

 

 

4.置き手紙の活用


 別居の際には、自宅に置き手紙を残すことを私は推奨しています。古典的ですが、あなたが事故や事件に巻き込まれたわけではないことを伝えておく必要がありますし、執拗に居場所を探されないようする必要があるからです。

 置き手紙の内容は、旦那と一緒にやっていくことができないと考えたので別居を決断したこと、元気にしているので探さないで欲しい、といったことを簡単に記載しておけば構いません。

 私の依頼者の方からは「LINEやメールで伝えるのではダメですか?」と質問されることが多いのですが、置き手紙の方が無難なことが多いです。といいますのは、LINEやメールで伝えると、夫側に対して「LINEやメールが連絡手段として生きている」と伝えるようなものなので、その後、夫側からしつこくLINEやメールが来る危険性が増すからです。

 

5.捜索拒否願の提出・警察への事前相談


 これはケースにもよると思いますが、突如別居を開始すると、夫側が大騒ぎをしかねないという場合には、予めあなたの方から警察に対して「捜索拒否願」を提出することも検討して下さい。

 捜索拒否願を提出しておけば、警察が捜索願を受理することはありませんし、夫側が警察に相談しに来た際に「奥さんがどこにいるかは教えられないが無事だから探すようなことはしないように」と伝えてくれますので、安心です。
 なお、警察署によっては、捜索願が出る前の捜索拒否願の受付はしていない、とか、捜索願が出ても旦那さん側にあなたの住所は教えないから、拒否願は出さないで大丈夫だと指導を受けることもあります。そのような場合には警察の指導に従う形で結構かと思います。
 また、夫側があなたの職場を知っていて付きまとい行為をする可能性があるとか、子供の学校を知っていて子供を尾行してきそうだといったケースの場合には、捜索拒否願ではなく、警察署の生活安全課に事前に相談をし、別居時に警察から夫側に電話連絡をしてもらうよう依頼するとか、実際に付きまとい行為が始まった場合には注意・警告をしてもらうということもあります(なお、別居時の電話連絡は、応じてくれる警察署と応じてくれない警察署があります)。

 

 

6.別居のタイミングの見極め


 お子様が小学校に通っているというような場合には、夏休みの時期が最もお子様の休みが長く動きやすいというケースも多いと思います。実際にも夏休みの別居に備えて事前に準備を進めているという方も多くみられます。
 ただ、児童虐待の内容が悪化していて夏休みまで待つことができないということもあると思いますので、別居のタイミングは、①事前の準備がどこまで整っているか、②お子様の長期休みなど身動きがとりやすいタイミングがいつか、③児童虐待がどこまで悪化してしまっているのか、といった点を総合して検討すべきかと思います。

 

 

7.住民票の移動は慎重に


 別居先に転居した際には、住民票を移動すべきかという問題があります。各種行政サービスを受けるにあたっては住民票を移動しておいた方が手続は円滑なことが多いですが、安易に移動してしまいますと夫側に居場所を知られる危険性が生じます。

 夫が同居中暴力をふるってきていたといったような場合、その被害者として役所に申請を提出しておけば、夫側があなたの住民票を入手することはできなくなりますが(これを「支援措置」と言ったりします)、役所のミスで住所が発覚してしまうというケースも実際にはあります(ただ、最近はこのようなミスはほとんどなくなっていると聞きます)。
 そのため、行政サービスを受けるため等、その他現実の必要性が生じてから住民票は移動した方が安全だと思います。

 

 

8.健康保険の件


 あなたやお子様の健康保険が、旦那様の健康保険の被扶養者になっている場合、あなたやお子様が病院にかかると、その情報が旦那様側に通知されます(これは1か月ごとであったり、1年でまとめて通知されたり、健康保険組合によって取り扱いが異なるようです)。
 そのため、今後もその健康保険証を使い続ける場合には、病院にかかる場合には極力別居先付近の病院ではなく、元の自宅付近の病院に通うようにするなどの配慮が必要です。
 なお、同居中から、あなた自身が独自に健康保険に加入していて(要するにあなた自身に相当額の収入があって、勤務先の健康保険に加入しているということ)、お子様の健康保険もその保険に入れたいというケースもあるかもしれませんが、通常は夫側の協力が必要であったり、健康保険組合によっては正式に離婚が成立しない限り被扶養者資格の喪失が認められないということもあります。

 

 

9.お子様の携帯電話


 お子様の利用する携帯電話に位置情報機能が付いており、そのことを失念したままお子さまの携帯電話をもって別居先に転居してしまいますと、当然、位置情報から、夫側がこちらの居場所を知ってしまうケースもあります。
 位置情報機能は解除したつもりでも、夫側の遠隔操作で再設定できるということもあるようですので、この点は細心の注意が必要です。
 そのため、可能な限り、お子様の携帯電話は自宅に置いて別居するとより安全です(お子様の携帯電話の中に、夫側に知られたくない情報が入っている場合にはその消去やデータ初期化も必要です)。

 

 

10.必要に応じて、早めに弁護士に相談する


別居の手順等について悩むような点がある場合には、弁護士を雇うかどうかは別として、直接質問すべく相談することをオススメしています。

このブログでかなり詳しめに解説いたしましたが、ご家庭の状況は皆さま異なると思いますので、ご家庭の状況に応じた疑問点等もあると思いますから、そのような点は直接質問することで初めて解消できると思うからです。

 

 

11.別居時の持ち物リスト


別居の際には持ち出し漏れ等がないよう、以下の関連記事を参照の上、荷物の整理をしてみて下さい。

関連記事>>「ついに別居を決意!これだけは持って出よう!」
 これはDVのケースですが、別居後程なくして旦那が奥様やお子様の荷物の大半を勝手に捨ててしまったというケースもありますので、ご留意下さい。

 

12.まとめ


○事前に夫側に別居する旨を相談した方が良いかはケースによる。
○別居準備は絶対に夫側に察知されないように進める。
○別居にあたっては、親族・友人等の支援体制を整えた方が良い。
○別居の際は自宅に置き手紙を残す方が良い。
○ケースによっては、警察には捜索拒否願を提出したり、付きまとい防止のために相談しておいた方が良い。
○別居タイミングについては、お子様の長期休みを一つの目安として、児童虐待の悪化の程度も見極めながら判断した方が良い。
○住民票の移動は、時期を含めて慎重に検討した方が良い。
○健康保険が旦那側の健康保険の被扶養者になっている場合には、別居後の受診には注意が必要である。
○お子様の携帯電話(位置情報の検索ができるもの)については、自宅に置いて別居したほうが良い。
○別居の方法等で悩むようなことがあるなら、早めに弁護士に相談だけでもしておいた方が良い。
○別居の際には持って出る荷物についても検討しておく必要がある。

 

 

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弁護士 秦(はた) 真太郎
TEL03-3666-1838|9:30~18:00
東京都中央区日本橋兜町1-10日証館305号
【アクセス】
5路線直結で便利です。
<東京メトロ>
・東西線 「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・日比谷線「茅場町」駅(11番出口)より徒歩5分
・銀座線「日本橋」駅(C5出口)より徒歩6分
・半蔵門線 「三越前」駅(B6出口)より徒歩7分
<都営地下鉄>
浅草線 「日本橋」駅(D2出口)より徒歩5分

 

投稿者: 弁護士秦真太郎

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弁護士 秦真太郎 -雨宮眞也法律事務所- 受付時間 9:30~18:00 定休日 土日・祝日 住所 東京都中央区日本橋兜町1-10日証館3階

※事前予約があれば平日夜間(22時まで)も対応可能です。