【モラハラ離婚で皆さんどうなさっているんでしょうか?⑧】別居や離婚のことをどのように夫側に伝えているか?
2024.11.25更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。
1.モラハラとは何だ?
「モラハラ」最近よく耳にするようになった用語のため、モラハラとは何なのか分かったような分からないようなぼんやりとしたイメージでこの用語を使っている方も多いと思います。
モラハラとは、一般的には「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと言われます。「暴言」が典型例ですが、「暴言」に限らず、精神的虐待と言える行為は広くモラハラ行為に含まれます。
2.事前にモラハラ夫に話した方が良いか?
モラハラ離婚のケースで一番悩まれるのは、離婚することや別居することを事前に相手に伝えるべきかという問題だと思います。
何も言わずに別居してしまうと、後から何を言われるか分からないし、他方で、事前に話してしまうとその際にどのような暴言・態度を受けるか分からないと言うことで、悩まれている方が多いです。
基本的に、モラハラの内容がDVの一歩手前といえる様な深刻な内容の場合には、事前に離婚や別居を切り出さずに別居を開始した方が良いことが多いと思います。事前に話をすると重大な被害につながりかねないため、自分の身の安全を守るためにも、事前に話をしないのです。また、度重なるモラハラで精神的に不調を来しているというような場合にも、無理に事前に話をしない方がよいと思います。
他方で、モラハラ被害がそこまで大きくはないという場合には、事前に離婚や別居を切り出した方が良いケースの方が多いかと思います。ただ、この場合にも、相手がどのような行動に出るか予測できないという場合には、事前に別居話や離婚話をするか慎重に検討する必要があります。
事前に何も相談せずに別居を開始してしまうと「悪意の遺棄」になってしまい、後から離婚しづらくなるのではないかと考えている方もいます。しかし、モラハラ被害防止というきちんとした理由がある場合、事前に相談せず別居したからと言って離婚にあたって不利になることはほとんどありません。
ただ、事前に何も伝えておかないと、①こちらの真意がいつまでもモラハラ夫に伝わらない、②離婚協議を始めても、先方の反発が強くて手続が大きく遅延していってしまうというリスクもありますので、事前に話ができるようなら、極力話はしたほうが良いと思います。
以下では、基本的な注意点について詳しく解説していきます。
3.モラハラ夫から猛反発される危険性が高いなら、事前に話さないほうが良いかもしれない
前述の通り、モラハラ被害がどの程度のものなのか、あなた自身の体調面を考慮して、事前に話をするかどうかは決めたほうが良いと思いますが、モラハラ夫がどのような反応を示すのかということも考慮要素にしておいたほうが良いと思います。
と言いますのは、こちらから別居話をした際に、モラハラ夫が猛反発してくることが強く予測される場合には、「話をしたことで余計に別居しづらくなる」という事態に陥りかねませんので、そのような場合には、事前に話をしない方が良いかもしれません。
モラハラ夫が猛反発し始めた場合、そんな中で別居を開始すると、「こちらが大反対している中で勝手に出ていった」と言われるリスクが高まってしまうと思います。
4.実際皆さんどうしているのか?
これは全体的な傾向になるのですが、ご相談に来られる方が、弁護士への依頼をどこまで真剣に考えているかによって大きく異なるように感じます。
既に弁護士に頼むことを決断している場合には、多少はモラハラ夫に話をするけれども、その後の話は弁護士に任せてしまうとか、ほとんど話をしないで別居をする(置き手紙だけを残す)というパターンが多いように感じます。
これに対して、弁護士を立てるとモラハラ夫が強く反発してきそうだと考えて、自分でできるところまで話をしたいという方の場合は、時間と根気をかけて話をしている方が多い気がします。
どちらが絶対的な正解ということはありませんので、あなた自身でよく考えて決断して欲しいと思います。
5.自分で夫に話をすると決意した場合、伝え方の工夫等はあるか?
自分でモラハラ夫に話をすると決意した場合、どのように伝えるべきかと相談を受けることがあります。その場合、私からは以下のようにアドバイスしています。
(1)【離婚を切り出すポイント1】お互いが冷静な状況・環境で離婚を切り出す
夫婦を長年続けておりますとどうしてもカッとなってしまうこと、喧嘩をしてしまうこともあると思います。
そんなときに、つい「離婚してやる」とか「離婚して欲しい」と口走ってしまうこともあるかもしれませんが、これではお互いに冷静な話し合いは期待できません。
また、酔った勢いで離婚を申し入れても相手は真剣に受け取らないでしょうし、相手が酔った状況で話をしても、話は進展しないと思います。
上記のシチュエーションは極端な例ですが、そうでなくとも、①家庭内別居の期間が長く、モラハラ夫が何を考えているのか、何を言い出すのかわかりにくい状況や②モラハラ夫が不機嫌で冷静な話し合いが期待できない状況の場合もあると思います。モラハラ夫が不機嫌な場合には一定期間を置いて冷静になるのを待ったり、事前にメールやLINE等にて「大切な話があるので時間を取って下さい」と伝えた上で話し合いの日時を決めるなどすることも考えてみて下さい。
いずれにしましても、お互いが冷静な状況・環境で話をすると言うことは当たり前のことのようでも重要なことです。
(2)【離婚を切り出すポイント2】具体的なエピソードを思い出す
離婚のご相談を受けておりますと、抽象的な理由ばかりで具体的に相手のどのようなところが悪いのか、合わないのかがはっきりしないということがあります。
例えば、「頻繁に暴言を浴びせてくる」とか、「相手はモラハラ夫なんです」と訴えてくる方もいらっしゃいますが、具体的にどのくらいの頻度で(ほぼ毎日なのか、1週間に1回程度なのか等)どのようなことを言ってくるのかが分かりませんと、対応ができません。
ただ、モラハラ夫の嫌いなところを列挙すると、とりとめがなくまとまらなくなってしまうと言うこともあります。
そのため、まずは、自分が相手とやっていけないと思う「一番の理由」を考えてみて下さい。
その理由を選び出したら、婚姻中、具体的にどのような行動や言動があったのか重要なことだけでも良いので良く思い出して列挙してみて下さい。
例えば、以下の様なものになります。
(参考例)
先月上旬にモラハラ夫から「お前のように家事ができない女は要らないから今すぐ出て行け」と言われた。このような発言は、モラハラ夫の指示通りの献立で夕食を準備したのに、帰宅すると「今日はこんなに暑かったんだから涼しいメニューを作れ」などと発言してきて上記の発言につながった。
相手の言うとおりに作り直していると、モラハラ夫は、空腹に耐えられないと言って家を出て、一人外食をして帰ってきた。
このようにあなたが考える離婚理由を整理しておきますと、いざモラハラ夫と話をする際にも離婚話にメリハリをつけることができます。
相手がモラハラ夫なのですから、こちらが離婚したい理由を話すと、即座に反論してくる、こちらを批判してくると言うことも予想されます。その反論や批判にすぐには負けないだけの準備をしておいた方がよいでしょう。
なお、口頭だと十分に自分の意見を伝えられないという場合には、事前に手紙を作成しておいて、その手紙を渡してその場で読んでもらうという方法を取ることもあります。
(3)【離婚を切り出すポイント3】こちらが本気だと分かってもらう工夫をする
離婚を切り出す相手はモラハラ夫なので、最初からこちらを下に見ていると言うことも往々にしてあります。特にこちら側が専業主婦という場合には、現状収入を得ていないと言うこともあって、モラハラ夫の側は本気にしてくれないと言う可能性も出てきます。そのため、こちらとしては悩んだ末に、やっていけないと考えて離婚を真剣に切り出しているのに、モラハラ夫からほとんど相手にされないという事態が発生し得ます。
このような事態を避けるために、どのような方法が考えられるのかを、以下の通りご説明します。
①きちんと「離婚」というフレーズを使う
長い間モラハラ被害受け続けていると、モラハラ夫の機嫌を損なう発言をしにくいというケースも多いです。そのため、遠慮がちに「もうやっていけないと思ってるんだけど」とか「夫婦の今後のことについてどう思ってるの?」と言った曖昧な表現になってしまうこともあります。
しかし、このような曖昧な表現ですと、モラハラ夫はこちらの離婚意思をしっかりと受けとめてくれないかもしれません。
そのため、あなたの口から離婚を切り出すと決めたのでしたら、きちんと「離婚」というフレーズを使ってモラハラ夫にきちんと話をして下さい。
②実家の両親などに間に入ってもらう
あなた自身の口で離婚のフレーズを伝えたのにモラハラ夫が真剣にとらえてくれないというケースもあります。そのような場合には、こちらが真剣に離婚したいと思っていることをアピールするため、ご実家の両親や親戚なども交えて離婚の話をするという方法が考えられます。
この場合には、相手の両親も一堂に会して家族会議のような形で話をしてみるのもよいと思います。
ご夫婦同士の直接の話し合いだと、相手が真剣に受けとめないという場合には、このような方法は有効打となることがあります。
③どうしても真剣に捉えてくれない場合「別居する」というのも選択肢の一つ
身内が間に入って話をしてもモラハラ夫が真剣に受けとめないとか、自分に都合の良い捉え方しかしないため話が進まないという場合、別居という手段を取ることも検討してみて下さい。
この場合は、一時的に実家に戻るという形が多いと思います。
なお、相手に無断で別居を強行してしまいますと、相手がこちらの実家まで乗り込んでくるなど、話が複雑になりがちなので、別居については相手に相談をした上で進めるのが望ましいと言えます(もちろん、モラハラ被害が深刻な場合等には、くれぐれも無理をせず、場合によっては夫に事前に告げずに別居することもご検討下さい)。
④家庭裁判所に調停の申立をする
ご夫婦が直接話し合うだけでは話が進展しないという場合、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法もあります。
ただ、調停の申立が必要かもしれないと迷われているという場合には、まずは、弁護士に相談してみることをオススメします。
(4)【離婚を切り出すポイント4】メールやLINEで切り出すことは避ける
私が相談に乗っておりますと、たまに「もう何年も夫と家庭内別居生活で、必要なことはLINEでやり取りするようにしていますので、離婚のこともLINEで切り出そうと思います」とお話になる方もいます。
しかし、離婚という重大なトピックですので、メールやLINEでは、モラハラ夫側にこちらの意図が伝わらないケースが多いと思います。
家庭内別居期間が長い場合、急に夫と顔を合わせて話をすることが難しいということも多いと思いますので、例えば、事前に「大事な話がありますので、今週末時間を作って下さい」とLINEをし、その週末に顔を合わせて話をするとか、あなたの実家のご両親にも立ち会ってもらって、話をするなどの方法も検討してみてください。
(5)【離婚を切り出すポイント5】冷静な話し合いを維持する工夫をする
前述の通り、離婚を切り出す際には、冷静に話ができる状況で切り出すべきだと思いますが、話をしていると、お互いにヒートアップしてしまうというケースも往々にしてあります。
特に、前述のように、あなたの方から離婚の理由を説明し始めると、モラハラ夫側からは「そんなことは言っていない」「誤解している」とか「そんな昔の話を持ち出すなんておかしい」「その話は解決済みだから今更持ち出さないで欲しい」等々様々な反論が返ってくることもあります。売り言葉に買い言葉で夫婦喧嘩になってしまいますと、折角最初は冷静な状況だったのに、途中から、あの時はこうだった、どうだったという話が延々と続いて、収拾がつかないというケースも多いです。
いずれにしましても、話をしている途中で冷静な話し合いを維持できなくなりそうになった場合には、一旦話は打ち切って、後日改めて、前述のように両親にも立ち会ってもらって話をするとか、冷静な話し合いを維持できる工夫をした方が良いと思います。
(6)【離婚を切り出すポイント6】今後の経済面についても考えておく
元々、モラハラ夫が自分の稼ぎを誇示してきたり、こちらの稼ぎがない・もしくは低いことを酷評してきているような場合には、離婚を切り出したときにも、「離婚してもお前だけでは生活できない」と言われてしまう事が強く懸念されます。
また、いずれにしても、離婚した後の生活費のことはある程度計画を練っておく必要があります。
現状専業主婦という場合には、離婚後、実家で暮らし、再就職先を探しつつ生活をしていくという形が一番現実的かもしれませんが、いずれにしましても、離婚後の経済面のことは具体的にイメージしておかないと、モラハラ夫側から、つけ入る隙を与えてしまいます。
(7)【離婚を切り出すポイント7】あまりズルズルと引き延ばさない
離婚というトピックは重たいトピックになりますので、「話しづらい」「気が重い」「夫の反応が怖い」といったことで、ついつい先延ばしにしてしまう事もあります。
もちろん、現状の生活に決定的な不満があるわけではないということでしたら、離婚を切り出すタイミングを急ぐ必要はないのですが、離婚を固く決意しているようでしたら、あまり話を先延ばしにするメリットはないと思います。
そのため、しっかりと離婚を決意した場合には、あまり先延ばしにせず離婚話を切り出した方が良いと思います。
また、一度離婚を切り出した後は、一定期間モラハラ夫側の反応や様子を見る必要があると思いますが、あまり長く引き伸ばしてしまいますと、こちらの離婚の本気度が疑われてしまいます。
そのため、一度離婚を切り出した後も、あまり長期間間を置かずに、改めて話をしたり、話が進展しない場合には、伝え方を変えるなどの工夫をしていった方が良いかと思います。
6.伝える前の準備
あなたの方から別れ話を切り出すと決意した場合、どのように話を持って行ったほうが良いか、どこまで話をするのかという点についてはしっかりと準備することが多いと思いますが、その前に別の準備が必要になります。
と言いますのは、こちらが別れ話をすると、先方は、最悪離婚になっても良いように自分名義の資産を隠し始めるといったケースがあるのです。
そのため、別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要になります。
7.まとめ
・モラハラの被害が深刻な場合には、事前に別居のことを伝えないほうが良いことが多く、逆に、深刻とまでは言えない場合には、伝えたほうが良いことの方が多い。
・モラハラ夫が猛反発しそうなら、事前に話をしないほうが良いかもしれない。
・これは全体的な傾向だが、既に弁護士に頼むことを決めているような場合には、自分ではあまり深く話をしないことが多く、逆に一旦は頼まない前提の場合には、しっかりと話をすることが多い印象である。
・ ご本人で離婚を切り出す場合、お互いが冷静な状況・環境で離婚を切り出す。
・ 具体的なエピソードを元に離婚の理由を話す。
・ こちらが本気だと分かってもらう工夫をする。
・メールやLINEで切り出すことは避ける。
・冷静な話し合いを維持する工夫をする。
・今後の経済面のことも考えておく。
・あまりズルズルと引き延ばさない。
・別れ話を切り出す前に、①集められるモラハラの証拠は集めておく、②相手の財産のありかを把握しておくということが必要
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