夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(45)ー子供が「パパとママ3人で暮らしたい」と言いそうだが、大丈夫か?
2023.03.13更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.そもそも「監護者」って何だ?
(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。
(2)親権の意味のおさらい
そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)
(3)要するに監護権って?
上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。
(4)監護者指定審判とは?
離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。
2.お子様の意向確認
監護者指定事件では、お子様が就学年齢以上の場合には、その意向確認を実施するケースが大半で、就学年齢未満の場合でも、お子様の理解力によっては、その意向確認を実施するケースも多々見受けられます。
お子様の意向確認は、まだ年齢が小さい子の場合には、家庭訪問時にご自宅で行うこともありますが、年齢が上がっていくにつれて、裁判所の一室で行うことが多いです。
このような意向確認は、家庭裁判所調査官が行います。
お子様の年齢が小さい場合、過去の経緯等について詳しく事実確認をすることはほとんどないのですが、現在の生活についてどう考えているのか、今後の生活についてどうしたいのかといったことは質問することが多いです。
そういった時に、お子様の口から「パパとママ家族3人で暮らしたい」という言葉が出ることもあります。
3.こういう発言って多いの?
あなたにとって良き夫でなかったとしても、お子様にとっては良き父親であるということもあります。
そのため、お子様が素直な気持ちとして家族全員で暮らしたいと主張することはやむを得ないことだとも言えます。
また、私もこのような仕事をしていますと、お子様が家族全員で暮らしたいという意見を述べることも相当数あります(全体的な傾向としては、お子様の年齢が小さい場合の方が、お子様がこのような意見を述べやすいように感じます)。
4.そのことで直ちに夫に有利にはならない
このようなお子様の発言があると、夫側は、妻であるあなたよりも夫の方がお子様の意思に沿っていると主張してくることが多いです。
つまり、夫は妻との復縁、家族全員での暮らしを希望しており、子どもも同じ気持ちである、これに対して、妻だけが、夫とバラバラの生活を希望しているというように主張してくるのです。
ただ、あなた自身が夫が待つ自宅に戻る意思が全くないことを裁判所に伝えると、裁判所としても、家族全員での暮らしは難しいという前提で、夫と妻どちらが監護者としてふさわしいかを判断して行くことになりますから、夫の希望と子供の希望が合致するからと言って、夫側に有利にはなりません。
5.面会交流への対応
上記のようなお子様の発言は、夫に対する親しみ等を表現しているものとも言えますので、お子様が夫との面会交流を希望しているような場合には、極力、そのようなお子様の意思は尊重した方がプラスになります。
いざ面会交流させるとなると様々に検討しなければならない点があるのですが、お子様が希望するのであれば、交流を実現する方向で検討したほうが良いと思います。
6.まとめ
・家庭裁判所調査官によるお子様の意向確認の中で今後の生活の希望も尋ねることは多い。
・お子様が家族全員での生活を希望するケースは相当数ある。
・夫側とお子様の意向が合致するからと言って、夫側に有利になるわけではない。
・ただ、お子様が父親との面会交流を希望するようであれば、実現した方がプラスに働く。
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