離婚問題

DV保護命令を申し立てた方が良いかの5個のチェックポイント

2019.08.23更新

弁護士秦 

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1.DV保護命令とは?


 

 DV保護命令とは、DV夫があなたに接触するために付きまといや徘徊することを禁止したり(接近禁止命令と言ったりします)、一定期間DV夫に自宅から退去させる(退去命令と言ったりします)裁判所からの命令になります。

 

 DV保護命令を発令させるためには、保護命令の申立書を提出し、裁判所はDV夫からも事情を聴く必要があります。

 DV保護命令が発令されますと、警察も連携して対応してくれますので、実効性の高い手段になります。

 

 

2.DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイント


 

 DV保護命令を申請した方が良いかの検討ポイントは主に以下の5個のポイントがあります。

 

①DV夫の危険性の程度

 まず、一番検討しなければならないのは、保護命令の対象になる夫の危険性の程度ではないかと思います。

 普段から手や足が出ることが多かったという場合には、これまで怪我することが少なかったとしても危険性は高いと思いますし、他方で、これまでの長期間の婚姻生活の中で暴力を振るってきたのは1回だけという場合には、保護命令を申し立てるほどではないかもしれません。

 

 このような危険性の程度は、以下のような要素を総合的に検討して判断して下さい。
・暴力の頻度や回数
・暴力を振るってきた期間
・暴力の内容・程度
・凶器使用の有無
・あなたが負った怪我の程度
・暴力を振るうシチュエーション(飲酒すると暴力してくるとか)
・DV夫の気質や疾患の有無(特に、精神疾患等を抱えていないか)

 

 なお、たまに豹変するけれども普段は優しい旦那なので大丈夫という発想は危険ですので、前述のような要素を慎重に検討して、危険性を判断して下さい。

 また、保護命令の申立まではしなくとも、警察署から警告してもらえば十分であるというケースもあります。そのような場合には、あなたの方で自宅の最寄りの警察署に相談に行ってもらい、警察官の方からDV夫を警察署まで呼び出してもらい、直接注意してもらったり、DV夫から誓約書を提出させるという方法で済ませて一旦は様子を見ることもあります。

 

 
②現住居の安全性

 例えば、あなたが現在シェルターに居住しているというような場合には、現住居の安全性は非常に高いということになりますので、敢えて保護命令の申立までする必要性に乏しいということになる可能性もあります。

 他方、実家という場合、相手にこちらの所在は分かってしまっているのですが、ご実家のご両親等もいるため、実家で暴力まで振るう危険性は高くないというケースもあると思います。

 ただ、相手にこちらの住所が知られてしまっている場合には、裏を返すと相手がこちらの現住居付近を訪れることはできてしまうことになりますから、現住居を知られているか否かが、現住居の安全性の判断にあたって一番のポイントではないかと思います。

 

③弁護士費用の負担

 DV保護命令の申立をする場合、ご本人だけで申立をすることは難しいため、通常は、弁護士を立てて申請することになります(あなた自身の身の安全のためにもそうすべきかと思います。)

 そして、通常は、保護命令の申立事件は、離婚事件等とは別の事件として別途弁護士費用が発生することが多いため、あなた自身の負担が増えます。

 そのため、弁護士費用の負担についても保護命令申立の一つの判断材料にすべきかと思います。

 

④手持ち証拠の確認

 DV保護命令は申立をすれば簡単に認められるというものではなく、あなたが暴力を受けたことの証明をする必要があります。診断書や怪我をしたときの怪我の写真等の客観的な証拠が一切ない場合、保護命令が認められる可能性は残念ながら低いと言わざるを得ません。

 なお、暴言のみと言う場合にも、保護命令が認められることがありますが、あなたの生命や身体に危害を加えるような暴言がなされる必要がありますし、その暴言について録音データが複数存在しないと難しいことが多いかと思います。

 いずれにせよ、保護命令事件の審理に耐えられるような証拠の有無はしっかりと検討する必要があります。

 

⑤有効期限

 保護命令は、一度認められると半永久的に効力が認められるというものではありません。

 接近禁止命令は6か月、退去命令についても2か月が有効期間とされています。

 接近禁止命令、退去命令いずれについても再度申立をすることはできますが、当初の保護命令の有効期間中に相手方に何も問題行動がないという場合には、認められないことも多いです。

 そのため、上記のように有効期間が限定されるということは認識した上で、保護命令を申し立てる必要があります。

 

 

3.保護命令を申し立てるかは慎重に検討する必要がある


 事実としてあなたがDV夫から頻繁に暴力被害を受け続けてきたような場合、保護命令を申し立てて身の安全を確保したいと思うでしょう。しかし、前述のように、証拠が不十分ですと、折角保護命令を申し立てても、保護命令が認められないということもあります。

 そのため、申立をする前に、しっかりと保護命令発令という結論を得られるかを慎重に見極める必要があります。

 なお、前述の接近禁止命令が認められるとしても、退去命令までは認められないというケースもあります。

 そのあたりも、事前にしっかりと見極めた上で、申立を行うかどうかを慎重に検討する必要があります。

 保護命令が認められるかどうかは、専門的な検討が必要になりますので、弁護士に相談して見極めるようにして下さい。

 

 

4.まとめ


・DV保護命令を申し立てた方が良いかどうかは以下の点を考慮して判断すべきである。

 ①DV夫の危険性の程度

 ②現住居の安全性

 ③弁護士費用の負担

 ④手持ち証拠の確認

 ⑤保護命令の有効期間

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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