内縁(事実婚)はどのように証明すればよいか?
2018.06.05更新
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。
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1.内縁(事実婚)かどうかは非常に重要
内縁関係とは、婚姻届を提出していないけれども、婚姻意思を持って、夫婦共同生活を営んでいる関係などと言われたりします。事実上夫婦としての生活を送っているため「事実婚」と言われることもあります。
あなたと同居男性との関係が、この「内縁関係」といえる場合、あなたは、その男性に対して生活費(法律用語としては「婚姻費用」等といいます)を要求したり、内縁関係解消の際には財産分与として一定の財産の支払いを要求する権利が生まれます。
そのため、内縁関係(事実婚)なのか、それとも内縁関係(事実婚)ではないのかという点は、重要なポイントになります。
2.内縁(事実婚)の証明手段にはどのようなものがある?
ここでは、内縁を証明する証拠としてどのようなものがあり、どの程度の重要性があるのかを解説致します。
なお、以下の証拠のうち一つでもあれば「決定的」ということはなく、以下の証拠の存在も踏まえ、相手の言い分等からどこまでの事実が認められるかによって、判断されますので、この点は留意してご覧下さい。
また、上記のように内縁とは①「婚姻意思をもって」②「同居して夫婦同様の生活を送る」事を意味しますので、証拠によっては、②の証明にはなるが、①の証明にはならないという証拠もありますので、この点も注意してみていく必要があります。
(1)住民票
おそらく内縁の判断にあたって公的書類の中でも一番重視される証拠ではないかと思われます。
住民票の続柄の覧に「妻(未届)」や「夫(未届)」と記載されていれば、有力な証拠になります(但し、前述の通り、これだけで内縁の「決め手」となるわけではありませんので、ご注意下さい)。
逆に、同一住所に住んではいるものの、住民票が男女で別々になっているケースや住民票の続柄に「同居人」と記載されている場合には、その記載から「婚姻意思」を証明することは難しいと思います。但し、住民票上の住所が男女で同じと言うことになりますので、「同居して生活していた」ことの証明にはなると思います。
(2)賃貸借契約書上の記載
あなたがその男性と同居生活を始めるにあたり、新たに賃貸借契約を締結したという場合、その賃貸借契約には、あなたのことが同居人として記載されているケースが多いと思います。その場合には、同居人の「続柄」という覧が設けられていることも多く、そこに「内縁の妻」とか「妻(未届)」等と記載されていると、こちらも有力な証拠になります。
なお、賃貸借契約書の続柄覧に「婚約者」と記載されている場合にも、その契約日から何年も同居生活を送っているという場合には、内縁の証明になります。
(3)健康保険の被扶養者になっていること
あなたが、男性側の健康保険の被扶養者になっている場合も、有力な証拠になります。通常男性側がサラリーマンの場合、勤め先から健康保険証が発行されますが、あなたの分の健康保険証もその勤め先から発行されている場合、男性側の健康保険の被扶養者になっている事になります。
その他、男性と同じ健康保険組合からあなたの健康保険証が発行されている場合には、通常男性側の健康保険の被扶養者になっていると見込まれます。
(4)男性側の給与明細書の記載
前述の健康保険の被扶養者と似た話になりますが、男性側が勤め先に対して、あなたのことを被扶養者として申告している場合、扶養手当等の手当が給料に加算される場合があります。また、被扶養者の人数に応じて住宅手当等が加算されることもあります。
このようにあなたが被扶養者とされていることで給料の金額に変更がある場合、給料明細書には「扶養人数 1名」といった記載がなされることが多く、このような記載も内縁の証拠となり得ます。
(5)民生委員発行の事実婚証明書または内縁関係証明書
お近くの民生委員会所属の民生委員によっては、あなたが依頼すると事実婚証明書や内縁関係証明書という書類を書いてくれることがあります。そして、遺族年金等を保険会社に請求すると、このような民生委員発行の事実婚証明書や内縁関係証明書を要求されることもあります。
このような証明書の位置付けですが、以下の点に留意すべきとされています。
①このような証明書を発行してくれるかどうかは、地域差や民生委員の考え方によって大きなばらつきがある。
②基本的にこのような証明書は民生委員があなたの話を聞き取るだけで発行するケースも多いが、証明書の裏付けとして民生委員がどこまでの資料を確認したかが重要である。
③民生委員が確認した裏付けもそうであるが、どのような事実関係からその様な証明書を発行したのかという点も重要である。
そのため、分かりやすく言いますと、証明書の内容次第で、内縁の有力な証拠になる可能性もあれば、あまり証拠価値が高くないというケースもあるということになります。
(6)結婚式場等の証明書、披露宴挙行の証明書
結婚式や披露宴を実施したと言うことは、男女が婚姻の意思をもっていたことの有力な証拠になりますので、その資料も内縁の証拠になります。
(7)男性側が以前提出してきた書面
内縁の妻は、きちんと届出をした婚姻関係よりも法律関係が明確ではなく、不安定な状況にあります。
そのため、今後の自身の生活のためにも、男性側に約束事を書面で書いてもらっていることもあります。
例えば、今後の生活費を保障するとか、今後二度と浮気はせずあなただけを愛する旨の書面、子供が生まれた場合には必ず認知する旨の書面といったものがあります。
これらの書面がどこまでの証拠になるかは、その記載内容等によるということになると思います。
なお、その書面に男性側の印鑑が押されているかどうかと言うのは重要なポイントになります。
(8)遺族給付等を受けた証拠
内縁の妻には、夫が死亡した際に遺族年金等の遺族給付を受け取る権利が認められます。そのため、遺族年金証書等の写し等は一つの資料になります。ただ、このような給付書類は、夫が加入していた保険会社や勤め先が、あなたを内縁の妻と認めたというだけで、法律の専門家が内縁の妻と認定したわけではありません。
そのため、このような遺族年金証書等のみが証拠になるというよりは、保険会社や勤め先に対してどのような資料を提出することで遺族年金を受け取ることができるようになったのかという点がより重視されると思います。
なお、仮に内縁の妻と認定されましても、内縁の妻には相続権はございませんし、内縁の夫が死亡した場合、財産分与を請求する権利はありませんので、これらの権利者としての保護は受けられません。
(9)LINEやメールのやり取り
その男性との間の直接のLINEやメールのやり取りは、その記載内容によっては内縁の有力な証拠になることもあります。
視点としては、相手男性があなたと結婚する意思をもっていたかどうかと言う点がポイントになりますので、相手の結婚意思を証明できるような内容であれば、証拠となる可能性があります。
なお、あなたが友人に相談したメールやネット上でお悩み相談した内容等は、あまり有力な証拠にはならない可能性が高いと思います(要するに、「その男性との直接のやり取りである」かどうかが重要なポイントになります)
他方、相手男性が自身のブログやツイッターその他SNS等にあなたの写真をアップして「妻です」と記載していたりした場合には、内縁関係の証拠になりうる場合もあります。
ただ、LINEやSNSでの記載内容は、前述のように書面で男性側が直筆で記載した書面よりも証拠力は一般的に落ちると言われています。LINEやSNSは、それほど深刻に考えずに記載等をすることが多いのに対して、覚書や誓約書と言ったタイトルで直筆の書面を提出する場合、通常は深刻に受けとめて作成している可能性が高まるからです。
(10)男性側との会話の録音テープ
男性側も裁判や調停になると、これまで言ってきたことを覆すというケースも相当数あります。
そのため、男性がこれまでの同居生活や生活の実態を否定してきそうな場合には、男性との会話を携帯電話等で録音し、紛争になったときに男性側が言い逃れできないようにしておくと良いでしょう。
ただ、もちろん会話録音の内容がどの程度の証拠になるかという点は、会話の内容次第と言うことになります。
(11)他人の証言
他人の証言とは、あなたの身内や友人の証言と言うことになります。
あなたが、その男性と披露宴を行ったり、双方の両親への挨拶をしたというような場合、これまでの男女の状況を身内や友人に証言してもらうという方法も考えられます。
この証言がどこまでの証拠価値があるかについては、証言内容によるところが大きいのですが、証言者が直接目撃した内容であれば一般的に重要性は高くなりやすく、他人から伝え聞いた内容だと重要性は低くなる傾向にあります。ただ、人間の記憶には限界がありますし、あくまであなたの身内や友人の証言になりますので、上記の様な公的書類等に比較すると証拠の客観性で劣るという面は否定できません。
そのため、基本的には、第三者機関等が発行してくれる上記のような証拠等を第1に考え、それを補完する意味で、証言も証拠として活用するというように、「補助資料」のような位置付けで考えるのがよいと思います。
3.内縁(事実婚)と言えるか不安があるなら弁護士に相談してみよう。
上記のように内縁の証明手段は多様なものがありますし、その記載内容等によって、証拠としての価値が大きく異なってきます。
そのため、男性側が内縁関係の成立を強く争ってくるような場合には、あなたと男性との関係が法律的にも内縁(事実婚)と言えるか弁護士等の専門家にしっかりと確認した方が安心です。
4.まとめ
・内縁関係(事実婚)が認められるための決め手となる証拠というものは基本的にないと考えた方が良い。
・内縁関係を示す証拠として、住民票の記載、賃貸借契約書の記載、健康保険や給料明細の記載は有力な証拠となりうる。
・民生委員が発行する証明書の証拠価値は、証明書の内容次第である。
・結婚式や披露宴の証拠も内縁の証拠になりうる。
・遺族給付を受けた資料は、それだけで内縁の証拠になることは少ない。
・男性との直接のやり取り(LINEやメール、会話録音)は、内容次第では、内縁の証拠になりうる。
・他人の証言も、内容次第で証拠としての価値は大きく変動する。
・あなたが内縁の妻か不安がある場合には弁護士に相談してみると安心である。
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