離婚問題

【弁護士が解説】令和元年12月23日算定表改定発表を受けての考察2

2019.12.23更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.令和元年12月23日算定表改定発表


 

 報道もされていますのでご存じの方が多いと思いますが、最高裁判所の司法研修所が令和元年12月23日改定算定表を公表しました。詳しくは下記リンクの通りです。

>>改定算定表<<

 

 婚姻費用と養育費の決め方については、2003年に東京・大阪養育費等研究会が提案・発表した算定表が家庭裁判所にて広く活用されていました(但し、調停の手続の中では、ご夫婦がこの金額で双方納得すれば、合意が形成されますので、調停手続き上は「目安」という位置づけにはなりますが)

 このような算定表は、今から16年近く前に作られたものということもあって、その後の経済情勢の変化を反映していないという問題がありました。

 そのため、今回、経済情勢の変化等を踏まえ、改定が行われ、上記の通り公表されました(算定表の基礎となる計算式等には変更を加えず、各指数等を最新の統計結果等を踏まえた数字に変更したようです)。 

 

 

2.増額調停を起こすべきか否か


 

 先ほどのブログでは、算定表改定を受けた一般的な事項について考察しましたが、今回は、増額調停を起こすべきかどうかの検討項目等について解説していきます。なお、本ブログ記事は、弁護士秦の私見ですので、裁判所のオフィシャルの見解等では一切ございません。この点はご留意しながらご覧下さい。

(1)表の改定だけを理由にする増額調停は難しい。

この点は、改定表の説明にもありますとおり「本研究の発表は、養育費用の額を変更すべき事情変更には該当しない」とされていますので、表の変更それだけを理由とする改定は難しいと思われます。

 

(2)増額調停を申し立てるべきかの検討項目

 上記の通り、表の改定だけを理由とする増額要求は難しいと思いますので、どの様な事情があれば増額調停を申し立てた方がよいのか、検討項目をご説明していきます。

 具体的には、①お互いの収入変化、②お互いの家庭環境の変化、③先方が調停に出席するか否か、④これまでの面会交流の状況、⑤その他検討項目等を検討すべきかと思います。以下具体的に検討していきます。

 

①お互いの収入変化

 例えば、離婚の際にはこちらにもそれなりの収入があったけれども、事故等で収入が大きく減ってしまったとか、相手が昇進して収入が大きく上がったといったケースが想定されます。

 養育費等は、お互いの収入状況がもっとも大きな決定要因になることが多いので、収入状況に大きな変化が生じた場合には、新たに養育費増額調停等を申し立てる大きな要因になろうかと思います。

 ただ、相手の収入状況があらかじめ分かっていればよいのですが、分からない場合には、いざ調停を申し立てたところ、相手の収入が減ってしまっていて、減額されることになってしまうというケースもあり得ますので、相手の収入状況の見極めは慎重に行う必要があります。

 そして、このような収入変化がこれまでの養育費の金額を変更するだけの事情となるような場合には、今後は、改定後の算定表を目安として調停が進行していくものと思われます。

 

②お互いの家庭環境の変化

 例えば、先方が再婚し、新たに子供ができたことを前提に養育費を決めていたけれども、最近先方が離婚したとか、こちらが養育費等を請求するにあたって、有利な身分関係の変更があったようなケースを想定しています。

 お互い扶養すべき子や配偶者の増減がある場合には、養育費等の増減要因になることが多いので、新たに養育費増減調停を申し立てる大きな要因になろうかと思います。

 そして、このような家庭環境の変化がこれまでの養育費の金額を変更するだけの事情となるような場合には、今後は、改定後の算定表を目安として調停が進行していくものと思われます。

 

③相手が調停に出席するか否か

 相手が調停に出席するかどうかは、養育費等増額の直接の要因にはなりません。相手が欠席したからと言って、ペナルティとして養育費が増額されやすくなるとか、相手が誠実に調停に対応したからと言って増額が通りにくくなると言うことはありません。

 ただ、いざ増額調停を起こすとなると、相手が出席しないことには、調停手続は進まなくなってしまいます。

 そのため、調停を起こしたときに、先方が出席しそうかどうかという点は慎重に見極めておく必要があります。

 なお、先方が出席しない可能性が高いという場合には、当初から審判も視野に入れた上で、対応した方がよいケースもあると思います。

 

④面会交流の実施状況

 面会交流の実施状況は、養育費等増額の直接の要因にはなりません。これまで面会交流をほとんど実施していなかったとしても、そのことで養育費増額が認められにくくなると言うことはありませんし、面会交流をしっかり実施してきたからと言って増額が認められやすくなると言うこともありません。

 ただ、いざ増額調停を起こしますと、、「子供に会えてもいないのにお金だけ取られるのは納得行かない」という言い分が出ることが多く、ケースによっては元旦那様側から面会交流調停も一緒に取り扱ってほしいと言うこともあります。

 そのため、増額調停を起こす際には、このような面会交流の件も話題にあがる可能性が高いことは考慮に入れておく必要があります。

 

⑤その他検討項目

1)これまでの支払状況

 これまでの先方からの支払状況そのものは、養育費変更の直接の要因にはなりません(あまりに支払状況が悪いからペナルティとして増額しやすくなると言うことはありません)。

 ただ、先方があまりに養育費の支払いを滞納し続けているという場合には、先方にしっかりと養育費等を支払わせる意味で養育費支払いの調停を起こしたり、もしくは、上記①や②の状況も踏まえて増額調停を申し立てることも考え得るかと思います。

2)相手の資産状況等

 相手の資産状況等は、直接養育費増額の要因にはなりません(例えば、相手が相続で多額の土地を取得したとしても、そのことは、養育費増額の要因にはなりません)

 但し、相手が現在どこに勤めていて、どこに資産があるのかはある程度把握しておいた方が、今後の手続を円滑に進めることができます。

 この点では、来年改正民事執行法が施行され、相手の勤め先等を把握する制度が創設されましたが、相手の勤め先把握のためには、まずは、財産開示の手続きを取らなければならないなど、手続に時間がかかることも予想されますので、今後の円滑な進行のためには、事前に相手の勤め先等を把握しておいた方が望ましいと思われます。

 

3.増額調停を起こすタイミング


 

 

 前述の通り、算定表の改定そのもののみを理由とした改定は認められないと思われますので、まずは、増額の前提として相手の収入増加やこちらの収入減といった客観的な状況変化の有無を検討していくことが必要になろうかと思います。

 もちろん、算定表改定と言うことが報道でも大きく取り上げられていますので、そのことを踏まえて、このタイミングに敢えて増額調停を起こすと言うことも検討してよいかと思います(相手も特に増額を意識する時期という意味では調停を申し立てるよいタイミングと言えなくもありません)。

 ただ、繰り返しになりますが、一度養育費を決めている場合には、その後の状況変化の有無が増額できるかどうかに大きく影響しますので、ほとんど状況変化がないとか、相手の収入が減ってしまっているような場合には、むしろ減額されてしまうリスクもありますので、この点は十分注意する必要があります。

 

 また、お子様の進学先等をしっかりと相談し、学費の支払い割合等も議論したいという場合には、なるべく早めに調停を申し立てるなどして議論する場を設けた方がよいと思います(もちろん、調停ではなく、調停外での話し合いで議論できるようであれば、調停外で話し合いをした方が望ましいことは言うまでもありません)。

 

4.まとめ


・養育費等増額調停を起こすか否かの検討項目としては以下のようなものが考えられる。

 ①お互いの収入変化

 ②お互いの家庭環境の変化

 ③先方が調停に出席するか否か

 ④これまでの面会交流の状況

 ⑤その他検討項目

・増額調停申し立てのタイミングとしては、相手の収入状況等を把握してからの方が望ましい。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

【弁護士が解説】令和元年12月23日算定表改定発表を受けての考察1

2019.12.23更新

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1.令和元年12月23日算定表改定発表


 

 

 報道もされていますのでご存じの方が多いと思いますが、最高裁判所の司法研修所が令和元年12月23日改定算定表を公表しました。詳しくは下記リンクの通りです。

>>改定算定表<<

 

 婚姻費用と養育費の決め方については、2003年に東京・大阪養育費等研究会が提案・発表した算定表が家庭裁判所にて広く活用されていました(但し、調停の手続の中では、ご夫婦がこの金額で双方納得すれば、合意が形成されますので、調停手続き上は「目安」という位置づけにはなりますが)

 このような算定表は、今から16年近く前に作られたものということもあって、その後の経済情勢の変化を反映していないという問題がありました。

 そのため、今回、経済情勢の変化等を踏まえ、改定が行われ、上記の通り公表されました(算定表の基礎となる計算式等には変更を加えず、各指数等を最新の統計結果等を踏まえた数字に変更したようです)。 

 

 

2.改定を踏まえた今後の調停・審判の進行は?


 

 

 既に調停や審判が開始していて、手続の途中だという場合、これまでの調停や審判の進行が大きく影響すると思いますので、改定表がどの様な影響を与えるかはケースバイケースであり、個別の事例次第と言うことになろうかと思います。 

 そのため、以下では、一般的な考え方として、ケースに分けて、算定表改定がどの様に影響するかという視点からご説明します。なお、以下の説明はすべて弁護士秦の私見でして、裁判所のオフィシャルの見解等では一切ありません。この点ご留意しながらご覧下さい。

 

(1)【ケース1】これから調停を申し立てようとしているというケース

 別居を開始したけれども、旦那が生活費を払ってくれないので、これから婚姻費用分担調停を申し立てようと考えているとか、旦那が生活費を払ってくれているけれども、こちらの要求額よりも少額しか払ってもらえていないのでこれから婚姻費用分担調停を申し立てようと考えているといったケースを想定しています。

 このようなケースでは、第1回調停期日が開催されるのは、早くとも年明けになると思いますので、調停においては、改定算定表での数字を目安として調停が進んでいくことになります(もちろん、ご夫婦がともに算定表を使わずに金額を取り決めたいという希望を持っている場合には、ご夫婦の希望する方法で進行することになりますが)

 なお、このケースは「これから新たに婚姻費用や養育費を取り決めようというケース」を想定していますので、既に決まっている婚姻費用等を変更しようというケースについては、後述の「ケース3」をご覧下さい。

 

(2)【ケース2】既に婚姻費用分担調停の手続中の場合

 このようなケースですと、前述の通り、これまでの調停の進行が大きく影響しますので、これまでの調停経緯をふまえた進行が行われます。ただ、当職が多数抱える調停の実情を踏まえますと一般的な傾向は以下の通りではないかと思います。

 そもそも、当職が抱えている家事調停では、11月中旬以降の調停期日では、必ず調停委員より「12月23日に算定表の改定版が公表されますので、改定版の公表内容を見てから婚姻費用・養育費を決めるか、今の算定表を元に決めるか考えて下さい」と質問してきており、通常の奥様側は、改定内容を見てから決めたいという意見を述べますので、ほとんどのケースで改定後の表に基づく算定を希望しています。

 そのため、ご夫婦の一方が改定表による議論を希望する場合、基本的には改定表を目安として婚姻費用や養育費を決定することになります(もちろん、調停委員から上記のように質問されたときに、敢えてご夫婦双方が「改定前の表で決めて欲しい」という意見を述べた場合には、改定前の表で決めていくことになろうとは思いますが)

 

(3)【ケース3】ついこの前婚姻費用の額を取り決めたけれども、表の改定を受けて、金額の見直しを希望する場合

 例えば、半年前に婚姻費用の金額について「5万円」と正式に合意したのに、表が新しくなって、より多くの婚姻費用をもらえそうなので、改定を求めて調停を起こすというケースになります。

 

 この場合、当初の「5万円」の取り決め方に大きく影響するかと思いますので、ケース分けしてご説明します。

①旦那が5万円で足りるだろうと言うから、もらえないよりマシだと思って5万円で合意したケース

 このように、当初から算定表を目にもせずに、旦那側の言うなりに金額を決めている場合には、この「5万円」そのものが、旧算定表の数字よりも低い金額にとどまっているというケースもあります(要するに、例えば、今は5万円しかもらっていないけれども、旧算定表だと10万円もらえるはずだった、改定算定表だと11万円もらえるはずだ、というようなケースです)。

 そのような場合には、当初取り決めた婚姻費用の額が少額に過ぎますので、その改定を求める調停(正式には婚姻費用増額調停) を起こすことができ、奥様側が改定表での数字決定を希望する場合、改定表によって算出された数字を目安に調停が進んでいくと思います。

 

②旧算定表で算出した数字が5万円というケース

 例えば、半年前に弁護士同士で話し合いをして、旧算定表で算出される5万円ということで合意したという場合、今回の改定要求は、表の変更のみを理由とする改定要求と言うことになります。

 この点は、改定表の説明にもありますとおり「本研究の発表は、養育費用の額を変更すべき事情変更には該当しない」とされていますので、表の変更それだけを理由とする改定は難しいと思われます。

 但し、婚姻費用を取り決めてから随分期間が経過し、その後のお互いの収入が大きく変化しているようなケースでは、改定表に基づく変更が認められるケースも出てくるかと思います。

 

3.その他の影響等は?


 

 

(1)自動計算ソフトへの影響

 当職自身は、これまでも婚姻費用や養育費の計算は、算定表の基礎となる算定式によって手作業で計算しておりましたので、インターネット上でよく見かける「自動計算ソフト」を使用したことはないのですが、この計算ソフトは、一般の方では利用なさっている方も多いのではないかと思います。

 ただ、この計算ソフトは旧算定表を元に作成されているものが多いと思います(令和元年12月23日現在)。

 そのため、今後インターネット上の自動計算ソフトのご利用をお考えになる方は、そのソフトが令和元年12月23日算定表改定公表を踏まえた修正を行っているかを慎重に見極めた上で利用するようにして下さい(おそらく、自動計算ソフトの注意書きにて同ソフトの更改日等が記載されていると思いますので、そちらをご確認下さい)。

 

(2)日弁連公表の新算定表との関係

 今回の司法研修所での改定の報道を受け、多くの方からご質問を受けたのですが、日弁連が公表しております新算定表と、上記の司法研修所の改定表とは全くの別物です。

 おそらく、今後の実務におきましては、今回発表されました最高裁判所司法研修所の改定表が大半のケースで利用されていくことになると思いますので、日弁連の新算定表と混同等なさらないようご注意下さい。

 

(3)算定表では決められないケースでは?

 例えば、旦那の収入が年収2000万円を超えるケースとか、離婚に伴ってお子様が分属するケースでは、ストレートに算定表を利用することはできません。

 そのようなケースでは、算定表の元となる算定式によって正確な数字を計算していたのですが、今後もこのような算定式による計算を行っていくことになると思います。

 ただ、この算定式における各指数等の数字が算定表改定に伴って変更になっていますので、今後の算定式への当てはめ等は、弁護士等の専門家にご相談なさった方がよいと思います(但し、改定表の元となる司法研修所報告原文は書籍として令和元年12月末日頃発刊予定ですので、具体的な計算は年明け以降可能になると見込まれます)。

 

 

4.まとめ


 

・これから調停にて新たに婚姻費用等を決めようというケースでは、改定表を目安に調停が進んでいく可能性が高い。

・既に調停手続中・審判手続中という場合には、これまでの進行を踏まえて手続が進んでいくが、既に改定表に基づいて手続を進めたいと奥様側が希望している場合には基本的に改定表を目安に手続が進む可能性が高い。

・既に決まっている婚姻費用等を改定する調停を申し立てようという場合、従前の婚姻費用の決まり方等によって今後の手続の進行が異なる。

・インターネット上の自動計算ソフトは、今回の改定を盛り込んだ計算になっているかを慎重に見極めた上で使用する必要がある。

・日弁連公表の新算定表と今回の改定表とは全く別物なので注意が必要である。

・算定表で決められないケースでの具体的計算は弁護士に相談した方がよい。

 

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突如家内が別居した-家内は精神疾患なのでは?

2019.12.23更新

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1.別居前の妻の言動に不審な点があった


 

 奥様との同居生活中、奥様が突拍子もない話をし始めるとか、こちらが予想もしないような反応をするといったことがあります。特に、突然の別居直前の時期に奥様の言動に違和感を持ったというケースもあることでしょう。

 そして、その原因が自閉症、抑うつ状態その他何らかの精神疾患の疑いがある場合、それを確認する手段はあるのでしょうか。

 

 

2.妻を措置入院させられないか


 

 措置入院とは対象人物を強制的に入院させる手続になりますので、この手続を活用することができれば、奥様の精神疾患について確定的な診断を得ることができます。

 しかし、措置入院は、精神疾患によって自傷他害の可能性が高い場合にしか利用することができませんので、奥様が自殺を現に実行しようとしているとか、こちらやお子様に危害を加えそうな現実的な危険性がない限り活用することができません。

 そのため、通常のケースでは、措置入院させるという手段は利用できません。

 

 

3.任意に確認する方法


 

 前述の通り、措置入院の活用場面は非常に限られますので、既に奥様が別居を開始してしまった後に、これを活用することは極めて難しいです。

 そうすると、任意に奥様に病院に行ってもらう必要があるのですが、これを実現させられる方法はあるのでしょうか。

 

(1)奥様の病状を確認する意味

 奥様の病状を確認する意味としては、大きく分けて、①今後の夫婦関係を良好なものにしたいので、その原因を突き止める意味で確認したいというケースと、②今後の離婚手続きを有利に進めたい、相手と対立することは厭わないというケースがあろうかと思います。要するに、①夫婦円満を目指すのか、②夫婦対立を目指すのかということです。

 上記②の夫婦対立を目指す場合、対立していく中で奥様に病院へ足を運ばせることはほぞ無理でしょうし、仮に病院に足を運んで病状が明らかになっても、奥様がそのことをこちらに開示してくる可能性は低いと思います。仮に開示してきたとしても、夫婦生活の中でのストレスが大きくて、このような症状になったという言い分を述べてくるのではないかと思います。

 

 そのため、奥様に病院へ足を運ばせるメリットは少ないと思います。

 他方、①のように夫婦円満を目指す場合で、奥様の精神疾患が夫婦対立の根幹になっているようなケースですと、奥様に病院へ足を運んでもらうメリットは大きいと思います。

 

(2)円満を目指す場合に、どのような方法で病院に足を運ばせるか

 ストレートに先方に対して、奥様にはこのような問題行動があった、問題発言があったと主張しますと、奥様の側は攻撃されていると誤解するリスクがあります。また、精神疾患を抱えている場合、感情が高ぶっているときの行動を自分でも覚えていない、とか、こちらからの言葉ばかりがクローズアップされて記憶に残っているというケースもありますので、奥様は「自分のことを棚に上げて」と感じてしまうリスクもあります。

 そのため、建設的な提案としてあり得るのは、夫婦カウンセリングのような形で「お互いに」心療内科に相談に行こうという提案かと思います。

 

 奥様の感情が高ぶっておりますと、このような提案ですら「病院に行くならあなただけが行ってくれ」という返答が戻ってくることもありますので、このような提案の時期やタイミングは慎重に検討する必要があります。

 また、奥様の精神疾患といっても、その可能性が低いと思われるケースや、精神疾患が夫婦不和の直接の要因ではないという場合には、敢えて奥様の精神疾患の問題に言及しない方が良いかもしれません。

 

(3)病院に足を運んで上手く行くか

 正直に申しますと心療内科・精神科の医師には様々な方がいらっしゃいますので、仮に奥様が病院に足を運んだとしても、①明確な診断名が付かない、とか、②じっくりと奥様の様子を見ながら経過観察する(要するに診断名が付くにしても相当先になる)、③奥様が主治医を信用できないと言うことで通院継続を拒否するというケースもあり、こちらの思惑通りに進めていくことは難しいことの方が多いです。

 

 

4.まとめ


・奥様に精神疾患の疑いがあっても措置入院させると言うことは難しいケースが多い。

・奥様と対立していく方向性の場合、奥様に病院へ足を運ばせることは難しい。

・奥様との円満解決を希望する場合でも、夫婦カウンセリングの形のように、お互いに心療内科の相談を受けるという形の方が望ましい。

・ケースによっては、奥様を刺激しないため精神疾患の話題は敢えて持ち出さない方が良いケースも多い。

・仮に、奥様が病院に足を運んだとしても、こちらの思惑通りに進まないケースも多い。

 

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【弁護士が解説】モラハラ・DV夫との離婚難易度

2019.12.09更新

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 正直に申しますと、モラハラ・DV夫が激しく離婚に反対してくる場合、最終的には離婚訴訟を提起しなければならなくなりますので、離婚に漕ぎつくためにはそれなりの期間を要することになります。そのため、あなたの離婚問題が長期化するかは、夫側のキャラクターや心情に大きく左右されます。

 ただ、状況等に応じて、ある程度離婚の難易度がどの程度なのかについては類型化することができますので、一般的な傾向として解説していきます。

 

 

1.法律的な難易度


 

 民法770条には、法律上の離婚原因が明記されているのですが、法律上の離婚原因は浮気や暴力等かなり限定的です。

 離婚の手順として、協議離婚(離婚届を提出して離婚するケース)できるのであればよいのですが、それが難しい場合には調停離婚(裁判所の調停で離婚するケース)、最後には裁判離婚(裁判所の裁判で離婚するケース)が必要になります。

 

 ただ、裁判をすれば必ず離婚できるのかというと、そうではなく、民法770条の離婚原因の存在が要求されているのです。

 夫婦の問題は当人同士で話し合いをすることが望ましいとの考え方から、裁判所によって強制的に離婚ができる事情は限定されているのです。

 

 逆に言うと、この民法770条の離婚原因がある場合には、裁判をすれば離婚できると言うことになりますので、例えば、継続的にDVが行われたケース等ですと、法律的な難易度は「低い」ということになります。

 他方、DVがあったとしても軽微であったり、お互いが手を出し合ってしまったケース、こちら側が過度に挑発してしまったケース等では、それだけでは直ちに離婚原因とは言えないと評価されてしまうケースもあります。

 

 また、モラルハラスメントのみのケースですと、当該モラハラのみをもって離婚原因とすることは難しいケースが多いと言えます。その意味では、法律的な意味での離婚難易度は「高い」ということになります。

 

 

2.実際の難易度は?


 

 これまでの解説は、「離婚裁判をした場合に勝てるのか?」というお話しです。

 そもそも、離婚裁判をせずに解決できるのであれば、短期間で解決できることになりますし、裁判に要する手数もかからないため、それに越したことはありません。

 

 そのため、離婚難易度といった場合、どの程度離婚調停で話をまとめられるか(もちろん、協議離婚ができればより一層望ましい)というところにかかってきます。

 

(1)難易度が高くなる要素

 離婚難易度(離婚調停までで離婚できる難易度)を高める要素は様々な要素があるのですが、私が弁護士として事件を担当している際によく感じる項目として以下のようなものがあります。

①モラハラ・DV夫の独自の発想・こだわりが強い。

②同居中のモラハラ・DV行為が執拗であった。

③モラハラチェック項目の項目に多数該当する。

 これらのケースですと、一般的に離婚難易度は上がる傾向にあると思います。

 

 なお、上記の①については、モラハラ夫の特徴の一つとも言えるものなので、該当する夫も多いと思うのですが、その全てのケースで離婚難易度が上がるというより、「突拍子もないような発想・こだわりを持っている」というイメージで考えてもらえれば分かりやすいと思います。そのような夫を相手にした場合、思わぬところで議論が紛糾してしまって解決までに時間がかかってしまうのです(実際に私が取り扱ったケースですと、夫側に私から電話をかけたところ「どうして私の携帯電話番号を知っているのか、妻が話したのかもしれないが、そのような個人情報を勝手に流用していることについてどう考えているのか」などと言っていつまでも議論を始められないといったことがありました)

 また、②や③のケースですとモラハラ・DV夫は、自身の行為が問題行為だったという認識が薄いため、離婚に反発する人が多く、離婚難易度を上げる原因になります。②や③のようなケースですと、より夫側が悪質なのですから、「離婚しやすくなるはずでは?」と感じるかもしれませんが、全く逆でして、このような夫は、調停委員からの説得などにも応じないため、解決に時間がかかってしまうのです。

 

(2)特定の夫を対象にした対策

 上記のような事情があると一般的に離婚難易度が上がるのですが、特徴に応じた対策を取ることによって早期離婚につなげる方法もあります。

 

①金銭に細かい夫を相手にする場合

 このような夫を相手にする場合、早急に婚姻費用を請求して、相手に金銭的負担をさせるという方法が効果的なことが多いです。

 要するに、夫側に「離婚しない限り毎月毎月お金を取られる」という意識を持たせることで、早期離婚に結びつけるのです。

 

②外面を強く気にする相手の場合

 このような夫を相手にする場合、調停等裁判所の手続を避けたがる人も多いので、そのようなケースであれば、極力協議離婚で解決することを目指します。私が担当したケースでも、3か月ほどで協議離婚にこぎつけることができたケースもあります。

 

 他にも夫の特徴に応じて対抗策はありますので、気になる方はお気軽にご相談下さい。

 

 

3.同居中に夫の方から「もう離婚だ」と言われることが多かった。


 モラハラ夫が離婚というワードを使う場合、こちらに対する「脅し文句」として使っている場合も多いため、必ずしもすぐに離婚できるとは限りません。

 実際に、私が弁護をしたケースでも、こちらから離婚を申し入れると、離婚したくないと言われてしまうケースはかなり多いです。

 もちろん、このような場合、(少数派ながら)相手がすんなり離婚に応じてくれることもあるのですが、離婚には応じても、離婚の条件(親権・養育費や財産分与の負担等)について対立が激しく、手続に時間がかかってしまうというケースもあります。

 

 

4.まとめ


・法律的な離婚難易度は、継続的な暴力等があれば下がる。

・実際の難易度としては、①独自の発想が強い夫や、②モラハラ・DVが執拗であったケース、③モラハラチェック項目に多数該当するケースだと難易度は上がる傾向にある。

・夫の特徴によっては効果的な対策を取ることで早期離婚にこぎ着けるケースもある。

・同居中モラハラ・DV夫が「もう離婚だ」といっていたからと言って簡単に離婚できるとは限らない。

 

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雨宮眞也法律事務所

弁護士 秦(はた) 真太郎

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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