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【弁護士が解説】会社を破産させて個人で事業継続できるか

2018.11.07更新

弁護士秦

 こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.会社を破産させて個人で事業継続できるか。


 

 

 あなたが会社の代表者をしている場合で、その会社は、これまでの借金が累積しており、維持していくことは難しいけれども、会社の事業そのものは良い事業のため、あなた個人の事業として継続できないのか、と言う問題です。

 これは、①会社もあなた個人も両方一旦破産手続きはしながら、事業は個人として続けていくというケースと、②破産手続きを取るのは会社だけで、あなた個人は破産手続きを取らないというケースが考えられます。

 

 結論から申しますと、個人として同業を続けていくことは可能ですが、手続きを取るタイミング等については細心の注意を払う必要があります。

 

2.その事業の魅力が高い場合には、民事再生手続きを取るのが原則


 

 

 今は、借金が累積しているため、何らかの借金整理の手続が必要だとしても、現在行っている事業の魅力が高いという場合には、スポンサー等をつけるなどして、民事再生手続きを取るといった手段を第1に考えるべきかと思います。

 但し、民事再生手続きで進める場合には、債務総額の過半数を握る債権者(通常はメインバンク等)が民事再生手続きに同意していることなどの条件整備が不可欠になります。

 以下では、民事再生や事業譲渡等によって会社自体を存続させることが難しいという前提で、個人事業として仕事を継続できるかどうかについて解説していきます。

 

3.会社もあなた個人も両方破産手続きを取るケース


 

 例えば、会社が多額の借金を負担しており、あなた自身もその保証人になっているため、会社としても個人としても借金の返済が難しいというケースや、あなたが保証人になっている借金は少ないけれども、会社の運転資金のために、あなた自身別途貸金業者等から多額の借金をしているケースなどの場合、会社のみ破産手続きを取っても、問題の抜本的解決を図ることができませんから、会社もあなた個人も一緒に破産手続きを取ることになります。

 なお、会社の代表者であるあなただけではなく、あなたの奥様も保証人になっているという場合には、会社、あなたに加え奥様も一緒に破産した方が良いというケースもあります(通常、一緒に手続きを取った方が、裁判所に納める手数料が安くなります)。

 

 このように会社とあなた個人両方破産手続きを取る場合でも、あなたが事業を続ける方法はありますが、以下の点に注意していく必要があります。

①得意先や仕入れ先の理解を得ること

 仕入れ先は、あなたが会社という形態なので、そのことを信用して商品を取引しているだとか、得意先も、あなたが個人ではなく会社なので、商品を発注しているということも多くあります。

 そのため、今後の取引が会社ではなく個人としての取引になることを説明し、今後も取引を続けてくれることの確約を得る必要があります(その説明の際に、会社が破産手続きを取ることは①相手との取引基本契約でこちら側に説明義務が課せられている場合には説明が不可欠になりますが、②そのような取引基本契約の規程等がない場合、説明した方がベターですが、他の理由できちんと説明できる様であれば、必ずしも破産のことを説明する必要はありません)。

 

②一時的に取引を中断する必要が出てくることが多い

 得意先や取引先に破産手続きを取ることをしっかりと伝えた上で、事業を引き継ぐのであればよいのですが、そうでない場合、破産手続の申請時には売掛金が残っていない状態にする必要があります。

 何を言っているのかというと、破産手続申請時点で売掛金が残っている場合、その売掛金債権は破産管財人の管理財産になってしまいます。このような「破産管財人の管理財産」については、破産手続の中で、破産管財人が回収すべき財産として、得意先に売掛金の支払いを請求していく事態になってしまいますので、得意先の信用を失ってしまうのです。

 

 一つの得意先に知られるだけならばまだしも、業界内での情報の流通が早い場合、複数の得意先で情報を共有されてしまい、あなたが今後事業を続けられないという事態にも陥りかねません。

 そのため、以下の様にタイミングを計る必要があります。

A.スケジュールとして破産申請予定日(平成31年4月1日に申請を行う等)をあらかじめ決めてしまう。

 (この申請予定日は、あなたの事業の受注が例年少ない月を選ぶのがベターでしょう)

 ↓

B.既に納品が完了しているものについては、破産申請予定日よりも前に売掛金を全額回収しきってしまう。

 ↓

C.納品から代金請求までの期間を考慮し、破産申請予定日の1ヶ月前等から受注を断っておく。

 (破産申請予定日よりも前に受注し、支払期限が到来していない売掛金が残ってしまうと、破産の際、破産管財人の管理財産になってしまいますので、取引の受け控えをすることになります)

 ↓

D.上記のBやCと平行して、得意先や仕入れ先に対して、今後は会社ではなく個人としてお付き合いしたい旨を伝えて理解を得ておく。

 

③あなた自身今後の融資を受けづらくなることを前提に取引を続けられるか慎重に見極める

 あなた自身が破産手続きを取る場合、あなた自身の資産も基本的にはすべて処分して、貸金業者等への配当資金にする必要があります。また、破産手続きを取るため、一般の金融機関等は、あなたに対して新規融資はしてくれません。

 そのため、あなた自身のまとまったお金もなければ、新規融資も受けられないという前提で、今後事業を続けられるのか慎重に見極める必要があります。

 

4.破産手続きを取るのが会社のみのケース


 

 

 例えば、あなたが会社の経営を引き継いだものの、前代表取締役の際に負担した借金が多額で、あなたの代で会社を破産させることを決断したという場合や、銀行借り入れ等はほとんど残っておらず、仕入れ先への仕入れ代金債務ばかりが残っている場合などでは、あなた個人として負担する借り入れはほとんどないため、あなた個人の破産手続は必ずしも必要ありません。

 ただ、その場合でも、会社は破産手続を取ることになりますので、以下の点に注意しながら進めていく必要があります。

 

①得意先や仕入れ先の理解を得ること

 会社と個人両方が破産する場合同様、取引主体が会社から個人に移ることは変わりがありませんので、個人との取引で構わないか得意先や仕入れ先の理解を得る必要があります。

 なお、仕入れ先への代金未払が多いという場合には、仕入れ代金も破産の対象債券になりますので、今後は、その仕入れ先からの商品供給を受けることは難しくなると思います。そのような前提で他の業者からの仕入れが可能なのか等についての見極めも必要になってきます。

 

②破産申請のタイミングは見極めること

 会社が破産する以上、破産申請時に売掛金のみ回収金があると、それは破産管財人の管理財産になってしまいます。そのため、破産申請時に売掛金未回収が存在しない状態にしておく必要があります。

 ただ、このケースでは、あなた個人は破産手続きを取りませんので、破産申請前までに、取引を会社から個人に完全に移行してしまっていれば、問題がありません。そのため、あなた自身は破産しない場合、一旦仕入れ先や得意先との取引を中止するという必要はありません。

 

③あなた個人についても新規融資が難しくなるケースは多い

 あなた個人としては破産しないとしても、あなたが経営する会社が破産手続きを取ることになったのですから、金融機関等は新規融資に消極的になるケースが多いでしょう。

 そのため、あなた個人で事業を引き継ぐ場合にも、あなた自身の資産のみを活用して事業を行っていく必要があります。新規融資は受けづらくなるという前提で事業計画を作成する必要があります。

 

5.まとめ


 

・あなたが営んでいる事業の魅力が高い場合、破産ではなく会社の民事再生手続きを取るのが基本である。

・会社のみ破産、またはあなた個人も一緒に破産した場合でも、事業を引き継いで実施していくことは可能である。

・事業を引き継ぐ場合、以下の点に留意する必要がある。

 ①個人との取引になることについて、得意先や仕入れ先の理解を得ること

 ②売掛金の回収タイミングを考慮しつつ破産申請時期を見極める必要があること

 ③あなた自身が新規融資を受けていくことが難しくなるという前提で事業計画を考えること

 

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